【咲-saki- ss】穏乃「阿知賀で麻雀部を作って全国優勝するんだ!」 (539)

穏乃「うおおおおおお! 和と遊ぶために麻雀で全国に行くぞ!」

穏乃「でもまずは人を集めなきゃなー。麻雀部行けば一人くらいいるかと思ったけど誰もいないや」

穏乃「まずは一年からだね。行くぞーおー」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429888301

一年教室・穏乃とは別クラス

穏乃「たのもー!」

穏乃「あ、誰もいないや。うーん、麻雀部寄ってたから遅くなっちゃったかな」

「あの」

穏乃「ひゃい!?」

「そこ、どいて貰っていいですか?」

穏乃「ああ、ごめんなさい……って人がいたー!」

「?」クビカシゲ

穏乃「麻雀部に入りませんか!」

「すみません、よく事情が分からないのですが」


説明中……


「はあ。つまり、昔の友達と遊ぶために、全国に行きたいと」

穏乃「うん、そういう事。だから部員を、できれば経験者を探してるんだ!」

「なるほど。そういう事でしたら、お力になれると思います」

穏乃「ほんと!? やったー! あ、でも他の用事とかない? 私ってばテンション上がっていきなり声かけちゃったし」エヘヘ

「いえ、大丈夫です」

「私は」

真屋由暉子「誰かに頼られるのって、とても好きですから」

穏乃「よーし、これで二人目! この調子でいこう!」

由暉子「穏乃ちゃん、だれか心当たりいますか?」

穏乃「それが全然なんだよねー。昔ここで麻雀教室とかやってたんだけど、その時に一緒だった人全員別の学校行っちゃったし」

由暉子「そうですか……」

穏乃「落ち込まない落ち込まない! とりあえず学校に残ってる人で誰か探そうよ」


二年教室


由暉子「一年生はダメでしたね」

穏乃「みんな部活選んでて、即決とはいかなかったね。何人か見に行くかもとは言ってくれたけど」

由暉子「先輩は……誰かまだ部活に入ってない方はいるでしょうか?」

穏乃「お、早速人影発見! せんぱーい! せん……ぱい?」

「なぜ疑問系なのだ」

穏乃(私より小さい)

由暉子(小さくて可愛いです)

「なぜ黙る……!」

穏乃「先輩? いきなりですみませんが、部活に入っているでしょうか!」

「む? 入っていないが」


説明中……


「なるほど、そういう事か。いいだろう!」

「クビかシゲ」

シゲ「すまねえ」

「この、二年生の! お前達の先輩の!」

天江衣「衣が力を貸してやろう!」

穏乃「やったー!」

由暉子「やりました」

穏乃「あとふた……あー!」

由暉子「?」

穏乃「あそこにも人が! 確保ー!」

衣「かくほー♪」

由暉子「え。あ、はい、捕まえます!」グッ

「ええっ! わ、わっ、何なんですかー?」

由暉子(あ、三年生です)

穏乃「先輩、麻雀しませんか?」

「へあ? 麻雀? いいですけど。私、こう見えて強いですよー?」

衣「勁烈無比なる打ち手は枉駕来臨だぞ!」

由暉子「これで四人ですね」

(えっと、結局何なんでしょー?)

薄墨初美(ま、麻雀打てるなら何でもいいですけどー)

阿知賀女子学院・麻雀部部室


胡桃「はー……」

胡桃(今年も全く人来なかったなあ。大会に出るとは言わないまでも、せめて四人集まってくれれば)

胡桃(またネト麻に雀荘通いかな。高校で四人麻雀、したかったなぁ)ジワ

「あと一人、ぜったいどこかにいますって!」

「はい。明日こそ五人揃えましょう」

「とりあえず今日は四人で打ちましょー」

「わーい、たくさん打つぞー」

胡桃(なんか外が騒がしいな)

ガラッ

胡桃「え?」

穏乃・由暉子・衣・初美「え?」

穏乃「あ、ああ……」ガタガタ

穏乃「もしかして、麻雀したりしますか……?」

胡桃「うん、するけど……?」

穏乃「やったー! 五人そろったー!」

由暉子・衣・初美「わーい!」

胡桃「なに? なに?」キョロキョロ


…………


胡桃「と、ゆーわけで!」

穏乃「阿知賀女子麻雀部、始動だよー!」

衣・初美・由暉子「わー」パチパチ

胡桃「早速麻雀! と言いたいところだけど、せっかく団体戦に出られるので目標を決めます」

穏乃「全国に出場して和と遊ぶ!」

胡桃「それはもちろん。でもそれだけじゃダメだよ! 小さい!」

穏乃「ええっ!」

背が低いつながりか

衣「どうせやるなら優勝だぞ」

初美「そうですよー。どうせやるなら全部勝つ!」

由暉子「はい。みなさんと一緒に頑張ります」

初美「部活申請、は明日でいいとして。今日はまず打つですよー」

衣「わーい♪ 衣はこの席がいー」

由暉子「ずいぶん埃が積もってますね。動くでしょうか?」

穏乃「三年前までは毎日のように使ってたし大丈夫だと思うけど。あ、でもちょっと変な音してる?」ギギ

胡桃「…………」

胡桃(まさか最後の年に、こんなに人が来るなんて思わなかった)

胡桃(人が集まると、寂しかった部室がこんなに楽しく見える!)

胡桃(でも一つ……)

胡桃(140センチ以上が一人もいない……!!)

平均身長140以下とか高校生の大会に小学生がまぎれてきたと思われても仕方ないな

ちっちゃいものクラブ

本日はここまで
続きはまた明日に投稿します

>>12
そうです。ここまでやるとどんな人が集まってくるかとか一発ですよね
ちなみに145センチが混ざっても平均身長が140センチに届きません


監督はうたたんでお願いします

>145センチが混ざっても

三尋木さんが来るフラグですね、わかります。
てかこの5人だと平均135にも届いてないですね…
平均身長でみると8歳から10歳…うん小学生に間違われても仕方ない

カツ丼さんの解説が楽しみだな

身長に比例して体重も軽くなるはずなので平均体重とかも気になるな。
らぶじゃんとかにその辺のデータあるのかね

これは良いな

期待してみよう

乙です

確かに全員背が低いが、一人だけ仲間外れがいます…
由暉子だけ、胸がデカい!!

おつー
ユキが異彩を放っている...

奈良県某所


咏「やっべー! いや、やばくない? 知らんけど!」ケタケタ

咏「ふらっと観光に来ててきとーに電車乗ってみたけど、見事に知らない場所な上に帰り方もわっかんねー」フリフリ

咏「ま、人がいない訳じゃないし、いざとなったらそこらの人に案内してもらえばいいか。とりあえず……知らない町を地図も見ず歩く、これが旅の醍醐味だよねぃ」

咏「お、和菓子屋発見。ちょいと小腹が空いてきたし、何かいただこうかね」

「お母さーん、行ってきまーす」

咏「んー? 中学生かな? 元気だねぃ」フリフリ

「あ……!」

穏乃「み、三尋木プロ!?」

咏「お、私を知ってるのかい。嬉しいねー」

穏乃「うおー! すげー!」

咏「あっはっはっ、喜んでくれるのは嬉しいけどね。何か用事があるんじゃないんかい?」

穏乃「あ、そうだ! これから麻雀部の部活なんです!」

咏「へー、麻雀部の。……おお、そうだ。私もついて行っていい?」

穏乃「はい! ……え!?」

咏「あちゃあ、ダメかい」

穏乃「いえいえいえ! 大歓迎ですよ! でも大丈夫ですか? プロだし忙しいんじゃ」

咏「今日はふらっと観光で来てるから、大丈夫だよ」

穏乃「お、おおお! プロと打てる! おっしゃー!」

咏「ほれ、喜ぶのはいいけど案内案内。

穏乃「こうしちゃいられない! 急いで行かなきゃ!」ビュン

咏「あっはっはっ、和服姿の人が居るのに走っていくとか割と鬼畜だねぃ」パタパタ

麻雀部部室


穏乃「ここですよ!」

咏「わりかし遠かったねぃ」

咏(と言うか高校生だったのか。ぜんっぜん見えねー。人のこと言えんけどっ)パタパタ

衣「わーい、衣がいちばーん」

由暉子「ふぅ、なんとか二位です」

胡桃「んぐぐぐ……先輩としての威厳が」

初美「うーん、やっぱりしっかり対策取られると厳しいですねー」

衣「でもはまったらハツミはすごいぞ。衣が絶好調で支配を振り切られたのは初めてだ」

初美「そりゃ条件発動型と全体支配型じゃ前者が勝つですよー」

由暉子「やっぱり衣先輩がいるときは、穏乃ちゃんがいないと厳しいですね」

衣「ふふん、衣は強いのだ。有象無象が相手では話にならぬのだ」

胡桃「と言うかいい加減口の利き方に気をつける!」

衣「あびびび……」グニー

咏「おう、元気な声が聞こえてくるねぃ」

穏乃「新しくできたばっかりですけど楽しい部ですよ!」

穏乃「おはようございまーす!」

由暉子「おはようございます」

胡桃「遅かったけどどうかしたの?」

穏乃「むふふふ。実はですね、なんと!」

咏「やほ」フリフリ

胡桃「え……? うそ……」

衣「誰だ?」

初美「誰ですかー?」

由暉子「どなたでしょうか?」

胡桃「え!?」ガクゼン

咏「うはは、なんだこの問答無用の敗北感」

穏乃「あわわわ……ごめんなさいごめんなさい!」


説明中……


由暉子「そうですか、プロのお方でしたか。調べていたのは現在高校生の方ばかりでしたので。無知で申し訳ありません」

初美「右に同じですよー。テレビも見ませんし」

衣「そもそも興味がなかったぞ」

胡桃「それでもトッププロくらいは知っててよ……」

咏「みんな肝が太いねぃ」ケタケタ

穏乃「本当にごめんなさい!」

咏「いいよいいよ。創部数日じゃしゃーないんじゃね。知らんけど。それに――あの白糸台を倒そうってんなら、これくらいじゃなきゃねい」フリフリ

咏「でも、それだけじゃ癪だし。ついでに私の名前を忘れられなくしてやろうかねぃ」ニヤリ


…………


衣「つ……強い」

由暉子「まるで歯が立ちませんでした……」

初美「うぐぐ、鬼門を発動できなかったり防がれたりした事はありますけど、発動して上回られたのは初めてですー」

胡桃「分かってたつもりだったけど、本当に分かったつもりでしかなかった」

穏乃「まさか、全局飛び終了だなんて」

咏「これでも一応トッププロだしねー。みっともない所は見せらんないんよ。知らんけどっ」

穏乃「あはは、それは知ってましょうよ」

衣「ウタ! もう一局打とう! 今度こそ勝つぞ!」

初美「あ、ずるーい! 私も入るですー!」

由暉子「できれば私も入れていただきたいです」

胡桃「ちょっと、あんまり無理言っちゃダメでしょ!」

咏「別にきにしなくてもいいよ。暇人のぶらり奈良散歩がプチ麻雀大会、というか教室? になるだけだし」

胡桃「すみません、休日をじゃましてしまって……ん? きゅう、じつ?」

由暉子「胡桃先輩、どうかしたんですか?」

胡桃「あれ? え? え? ちょっと待って!」ガサゴソ

胡桃「確か雑誌のこのページに。あ……ああぁ……」ガタガタ

胡桃「み、三尋木プロ……」

咏「んー? なにー?」

胡桃「所属クラブ……横浜ロードスターズ、ですよね?」

咏「そーだよー」

胡桃「今日関東リーグの初日じゃないですか!」

穏乃「ええ!?」

衣「それがどうかしたのか?」

胡桃「どうかしたも何もないでしょ! この人先鋒! エース!」ビッ

咏「うはは、扱いがこの人になっちまったぜぃ」ヒラヒラ

胡桃「ああいや、そんなつもりじゃ……」アタフタ

小さいと思ってた咲さんは以外と大きかった

咏「いやーこれには聞くも涙、語るも涙な事情があってねー」

咏「知ってる子は知ってるだろうけど、私年始めあたりに結構大きな病気したじゃん?」

初美「大丈夫そうに見えますがー」

咏「そりゃ治ったからねぃ」

咏「で、契約更新の時期とかぶっちゃったから今年どうしようかって話になったんよ。なんとか治って更新はしたんだけど……」

由暉子「…………」ゴクリ

咏「ゴタゴタで団体戦オーダーの登録変更、みんなで忘れちゃってたんだこれが」ケタケタ

穏乃「オフゥ……。あ、でも結構笑い事にはなりませんよね」

咏「ま、やっちゃったもんは仕方なし。それにプロ活動全部できない訳じゃないしね。今まで働きすぎてたから、今年はちょいと休憩の年って事にするさ」ヒラヒラ

衣「とにかく今日一日は暇なのだな。じゃあ夕方までできるぞ!」

胡桃「ちょっと、それはさすがに……」

咏「いいのいいの。いくらでも打ってあげるさ。でもその前に、おなかすいたからお昼食べに行こーか」

穏乃「はい! 私ラーメンがいい!」

衣「衣はハミレス!」

初美「和食がいいですよー」

由暉子「えっと……お蕎麦?」

胡桃「全くもう! 揚げ物で!」

咏「わはは、好き勝手言って困らしてくれちゃって。ファミレス行けば全部あるかな。じゃ、お姉さんに着いてこーい」

本日はこれまで。続きはまた明日書きます

なんと微笑ましい光景

乙!
うたたんのツッコミがいい感じで読んでて楽しい

うたたんいぇい~

乙やでー
念の為に酉をお願いします

シノハユ的に考えると「治った」は優しい嘘なんだけど

まさかな

うたたたたたたん

未完だけど似たようなタイトル前にあったな
同じ作者さん?

副会長歓喜

え?うたたん病気なの?シノハユ見てないからわかんね

夕方


咏「ツモ、4300オール。で、初美のトビしゅーりょー」

初美「あうぅ、またやられちゃったですー……」

衣「ウタは本当に強いな! 凄く楽しかったぞ!」キラキラ

胡桃「結局、一度もトップから下ろせなかった」

咏「ま、おなめでないよ、ってね。さすがにプロが、それも世代を代表してるのに高校生相手に負けたら、格好付かないからねぃ」

穏乃「咏さん!」

咏「気合いいれてどしたんだぃ?」

穏乃「私たちは全国優勝できる力があると思いますか?」

咏「無理」

穏乃「即答!?」

由暉子「理由を聞いて、宜しいですか?」

咏「そりゃかまわないけど。請われたからには厳しいこと言うから、そのつもりでね」

咏「まず一個。君らの麻雀は才能に頼りすぎ。多分だけど、ちゃんとした指導を受けたことがあるのは穏乃と初美だけなんじゃない?」

咏「例えば……そうだねぃ、分かりやすく強力な才能を持った衣」

衣「む? 衣か?」

咏「私と打って、いつも通りに能力を発揮できた?」

衣「いや、遠路を迷夢に塞がれるが如くだった。鈍いというか、掴めていないというか……」

咏「だろうねー。ま、何が言いたいかと言うと、相手の得意な所で勝負せず横からちょいと小突いてやれば、支配から抜け出すのは難しくとも不可能じゃないって事なんだよねぃ」

咏「私が推測したところ、衣は時間と条件で力を増すタイプだと思うけど。二つ質問」

咏「最高状態で私を押さえきれると思うかい? 逆に、全力の私に支配そのものを破壊されない自信はあるかい?」

衣「当然だ! ……と言いたい所だが、どちらも否だ。ウタが本気でないのはよく分かってる。縁木求魚だ」

咏「だねー。で、全国には山ほどいるわけだ。尖った才能と自力両方を持った奴、才能はなくとも対策を練ってそれを崩してくる奴。才能だけで勝てるほど甘くはない。才能に振り回されてればなおさら」

咏「衣に初美、お前達の事だぞー」

衣「はうっ」

初美「あうぅ」

咏「そういう所を加味すると……尖った才能は初見殺しだから一回戦は抜けられるとしても。間違いなくシード校に潰されるね」

咏(ま、本当は衣の才能だけでも準決勝レベルはあるだろうけど。そんな甘やかし方しても、本人の為にならんしね)

咏「そもそも全国優勝どうのより、奈良で優勝できるかって所から悩むべきだと、私は思うね」

由暉子「晩成高校ですね」

胡桃「最多全国出場校……40年の歴史で、全国出場を逃したのは、僅かに一回……」

咏「勝てないって事はないと思うよ。一回戦、ノーデータの状態で当たることができれば、だけど」

穏乃「そ……そうじゃなかった場合は?」ゴクリ

咏「ま、知らんけど。悲惨な負け方をしなければ、運がいい方なんじゃないかねぃ」

シン……

咏(あちゃあ、ちょっと脅し過ぎちゃったかな? でも、どっちみち今のままじゃ、どんなに運がよくいっても白糸台に歯が立たないからなー)

穏乃「咏さん、私たちを指導して下さい! お願いします!」

胡桃「ちょ、ちょっと穏乃!」

穏乃「咏さんがプロで忙しいのも、自分がすごいわがままを言ってるのも分かってます! でも、ここで図々しくなれなきゃ、強くもなれないって思うんです!」ペコッ

由暉子「……私も。お願いします」ペコッ

胡桃「由暉子まで!」

衣「衣は自分が強くて、それで独りだと思ってた。……強くも、独りでもなかった。お願いします、麻雀を教えて下さい。みんなと一緒に勝ちたいです!」

初美「お願いしますー。強い雀士の麻雀、教えて下さい」

胡桃「二人も……っ! っああもう! わ……私からもお願いします!」

咏「いいよー」

穏乃・由暉子・衣・初美・胡桃「軽っ」

穏乃「今のとこはちょっとこう……了承するにしても、みんなの覚悟を確認しつつ、感動した的な雰囲気を出す所じゃ……」

咏「あっはっはっ、空気など読まん」

胡桃「なんか三尋木プロが強い理由、分かった気がするわ」

由暉子「ちょっと宜しいですか? 衣先輩がふさぎ込んでしまったのですが」

衣「あううぅぅ」

初美「よしよし。勢い余って告白したけどさらっと流れて恥ずかしかったですねー」

衣「うわぁん!」ピー

胡桃「そこ! とどめ刺さない!」

咏「わはは、ほんとここおもしれー」パタパタ

松実館・咏の泊まっている部屋


咏「うーん、とりあえず教えるとは言ったけど、どうしよっかな~」

咏「スケジュール組むのはこれからだし、余裕なんていくらでも作れるんだけど。ネックはやっぱ距離かねぃ」

咏「そしたら……うん、そうしようか。半端な事やるのは性に合わんし。そうと決まれば電話電話」

咏「あ、マネージャーさん? 今年の予定なんだけどさ、うん、全パス。……もー、そんな怒らないでよ」

咏「ちょっとやりたいことがあってねぃ。だいたい半年くらいは最低限の大会のみで……そーそー。可能な限り余裕を作るの」

咏「え? うん、大丈夫。裏切るような真似だけはしないよん。こう見えてちゃんとやって……うはは! そう言われちゃうと厳しいねぃ」

咏「あ、ちなみに私、これからずっと奈良にいるから。じゃヨロシクッ!」ピッ

咏「さてと。これから忙しくなりそうだねぃ」

ちょっと短めですが本日はこれまで。トリップつけました

>>48
別人です。阿知賀麻雀部キャラ入れ替え作品はこれが初めてです

おつー

ほかの阿知賀メンバーはどこに行っちゃったのかな?今いるメンバーのところに交換?

乙やでー
続きが楽しみです

うたたんかっこいい!

おつおつ

乙乙

月曜日・阿知賀女子麻雀部部室


先生「と言うわけで、本日よりコーチとして就任していただいた、プロの三尋木咏先生です」

咏「やっほー。よろしくねー」

穏乃・由暉子・衣・初美・胡桃「早ぁ!」

先生「それでは三尋木プロ、よろしく願いします。私は顧問ですが麻雀に関しては素人です。そちらのお手伝いはできませんが……それ以外でしたら可能な限りご要望を実現しますので」

咏「おおう、頼もしい言葉ありがとうございます。ま、学校上げてどんちゃん騒ぎできるくらいには鍛えるんで、期待してもらって大丈夫ですからねぃ」ニヤリ

先生「はい、重ね重ねよろしくお願いいたします。お前達、せっかくプロの先生が来て下さったんだからちゃんと言うこと聞くんだぞ。それでは私はこれで」ペコリ

咏「はーい」ヒラヒラ

咏「んじゃ改めて、咏さんプロだよー。ビシバシ指導してくんでそのつもりでねぃ」

胡桃「あの……」

咏「お、なんだいなんだい質問かい? いいねー積極的なの。はい鹿倉くん!」ビシ

胡桃「現役プロが監督になっていいんですか?」

咏「監督じゃなくてコーチね。まあどう違うかわかんねーけど。高麻連の規則って結構がばがばだから気にしなくていいよ」

咏「インハイ雑誌なんてものによっちゃアイドル雑誌じみてるっしょ? 新道寺や姫松なんてプロ呼びまくって指導して貰ってるし。少なくとも、プロアマ分離に関する規定に抵触しないのは調査済み」

由暉子「はい」

咏「はい真屋くん!」ビッ

由暉子「こんなに早く就任できるものなんですか?」

咏「最近の先生は勤勉だよねー。知り合いにOGと連絡取って貰って、校長先生に直接話つけたら一発だった」フリフリ

初美「どちらかというとプロ活動の方についてだと思うのですがー」

咏「あっはっはっ、マネージャーさんっていると便利だよねぃ」

衣(マネージャー、苦労しているのだな……)

穏乃「う……うおおおおおぉぉぉ!」

由暉子「」ビクッ

穏乃「じゃあこれから、すっごく指導してもらえますか?」

咏「うん、すっごく指導しちゃうよ」

穏乃「全国にも行けますか!?」

咏「あっはっはっ、しずもんはおバカだねぃ」ヒュッ

穏乃「あいたっ! おバカって……」ペチン

咏「私はね、全国優勝させに来たんだよ。地区優勝くらいで喜ぶんじゃないの」

穏乃「おおおお! ひゃっほー!」

咏「ほんと穏乃はテンション高いねぃ。見てて気持ちがいいよ」ケタケタ

咏「で、指導を始める前に考えなきゃいけない事がある。穏乃の目的は、相手が強ければ勝手に達成されるからいいとして。全国優勝するには絶対に考慮しなきゃいけない壁がある」

由暉子「白糸台ですね」

咏「そ。あそこは一軍全員がプロを現実的に目指せるレベルだし……とりわけエースはすっげぇねぃ。下手すりゃ現時点で私らと戦えるレベルだ」

咏「ここで問題! 白糸台には去年の秋大会で活躍したメンバーの内、四人が今年の一軍です。その四人の特徴言える人~」

穏乃・由暉子・胡桃「はい」

初美・衣「…………」

咏「うはは、この部はスパッと分かれてるねぃ。ちゃんとしてる子とダメな子と」

初美「わ、私は最近勉強してるからこっちですよー」ピュー

衣「あ、初美が裏切った!」

衣「うわぁん! 衣だって勉強するもん!」ピー

由暉子「私もまだまだなので、一緒に勉強しましょう、衣先輩」ナデナデ

咏「君たちは今後に期待だねぃ。じゃあ穏乃、エース宮永照の特徴は?」

穏乃「とにかくすっごい強いです!」

咏「あんたあっちに移りなさい」

穏乃「ふぎゃあ!」

咏「で、宮永照の特徴だけど、一番印象強いのは打点が上昇する連続和了だねぃ。でも私だったら、まず振らない読みと、大物手を察知して上がらせない力の方を評価するね」

胡桃「…………」

咏「ん? どうかしたん?」

胡桃「それを解説の時に言えばいいんじゃ……」

咏「あはは、無理無理。だってあれだ、知らんしっ!」ケタケタ

胡桃「………………」ジトッ

咏「なんだよーそんな胡乱な視線を向けるなよー。そんな胡桃には弘世菫の特徴を話してもらおっかな」

胡桃「ロン上がり率が高いのが特徴です。それもただのロンじゃなくて、狙った相手から直撃を取るのが凄いよ! 二位でも厄介な打ち手が控えてる所でも、どこでも好きな所をへこませられる」

胡桃「狙われた所は萎縮しちゃうし……なにより無理な寄せをしてる筈なのに3飜以上の確率も高い」

咏「おおう、百点を上げよう。私のかわりに解説やってみる気ない?」

胡桃「怒るよ?」

咏「おおぅ、敬語までなくなってしまった。んじゃ次由暉子、渋谷尭深はどーだい?」

由暉子「打筋自体は特別な所がないように思えました。ただ、オーラスの配牌が異常です。恐らく初美先輩に似た、条件で強い力を発揮するタイプだと思われます」

咏「九十点。ちょっと足りないけど、そこまで分かれば十分だねー」

咏「で、最後に亦野誠子だけど。この子は唯一打点が低いね。ただし和了率はチャンプに続いて高い。基本は鳴き速攻だけど、鳴いてない時でもピンフ上がり率高め」

咏「つまり全員《能力》と呼ばれるものを持ってる訳だけど。この子らに共通するのは、才能に頼らず普通に麻雀しても、全国出場校レギュラークラスの実力があるってところなんだよねぃ」

咏「少なくとも白糸台で、君らより麻雀を分かってない子は一人もいない」

穏乃「う……私たちってそんなにダメですか?」

咏「正直言って、こればっかりは白糸台が良すぎだねぃ。高校レベルなら飛び抜けた才能があって、それを順当に伸ばせば最強クラスになるもんだしね。知らんけど。全員って所はまずない」

初美「なるほど。つまり私たちは、これから基礎をがっちり覚えるですね」

咏「察しがいいねー。そっちに居ることを許す!」

咏「ここは全員が能力と言われる才能を持ってるから、やること基礎を覚えつつ、能力を伸ばす」

衣「ううん……衣はどうもその理に従うというのは苦手だ。才こそ信ずるに値する、と考えてしまう」

咏「いや、それはそれでいいんじゃね。知らんけど」

衣「む? いいのか? ……知らぬのか?」

咏「麻雀にとって基礎なんてのは、所詮選択肢の一つだからねぃ。ただし、それだけじゃ勝ち続けられない」

咏「名門と言われる学校の一軍、あとはプロなんかは、自分が研究し尽くされている事に慣れてるんだよねー。だから勘と基礎と経験、どれが信じられるか。選べるようになんなきゃ」

咏「一つしか出来ない奴の攻略って簡単だしね~。しかもいっぺん崩れれば立ち直るまで銀行ちゃん扱いされちゃう。ま、そこらは私がしこたまぶっ飛ばすから、体で覚えて貰うけどっ」ケタケタ

由暉子「一昨日のようにですか……」

咏「あんなもんだと思われたら困るねぃ。言ったでしょ。教えるとしたら本気だって」ニヤ

穏乃「あれ以上ですか! うおおおおおっ! 燃えてきたー!」

胡桃(ほんといいタイミングで入れてくれるなあ)

初美(天性のムードメーカーなんですかねー)

咏「ちょっともびびってくれないとはお姉さん悲しいなー。でもこういう雰囲気出せるのはピンチの時に強いかね」

咏「あ、あと一つ。これ重要だからしっかり聞いて、ちゃんと答えてね」

穏乃・由暉子・衣・初美・胡桃「はい」

咏「私はちゃんとした指導の経験はないし、そういう資格も持ってない。セオリーだって知らない。だから本人の資質に合わせた打ち方なんて教えられない」

咏「教えられるのはあくまで私の麻雀だ。今より強くなれる事は保証するけど、もっと合った打ち方があるかもしれない。それでも……私に習うかい?」

穏乃「とーぜんですよ!」

衣「衣はウタみたいに打ちたい!」

初美「元々私の打ち方とは相性がいいですー」

由暉子「咏さんみたいに、なりたいです」

胡桃「そんなの今更だよ!」

咏「うん……よく分かった! それじゃあ今から……あー、もう下校時間だねぃ。じゃあ明日から特訓始めよーか。本日は解散!」

穏乃・由暉子・衣・初美・胡桃(本当に締まらない……)ガックリ

今日はここまで

おつ!
うたたんイイねえ

 乙。

 ほんとに締まらないwwww

乙です
なんという締まらなさ

おつー

咏「君たちは私が能力持ちだと思ってるかい?」

穏乃「え? よく分かんないけどない気がします」

由暉子「あると思うのですけど……法則が全く掴めません」

初美「ないと説明できない切り引きが多いのであると思うですー」

衣「むぅ……全然分からない。ハツミの言うとおりだが、そういう気配を感じない」

胡桃「どっちかと言うとある方かなー」

咏「んっふっふっ、割れたねぃ。答えは《ない》。私は単純に運が良くて腕があり、運の使い時を知ってて、なにより使うべき時に運を投入できる」

穏乃「そんなことできるんですか!?」

咏「これができるんだねー。しかもだれでも!」

咏「だから私の指導は主に三つ! 一つ、勝てる麻雀の基礎を覚える! 二つ、運を使えるようになる! 三つ、無茶でも読みを深める!」

由暉子「三つ目がよく分かりません」

咏「そーだねぃ。高い手を作るどうすればいい? はい一番勘がいい穏乃!」

穏乃「はい! 引かずにがんがん攻めればいいと思います!」

胡桃「いやそれじゃ事故振りがたくさん出てくるでしょ」

初美「素人的な危険な麻雀になっちゃいますよー」

咏「いいや、穏乃正解。ほんとほれぼれする勘だねぃ」

穏乃「いやー、えへへ」

胡桃「うっそぉ!」

初美「それで正解ですかー!?」

咏「これは持論なんだけどね、読みは「この牌なら当たらない」じゃ意味がない。「この牌以外なら当たらない」ってとこまで寄せなきゃいけないんよねー」

咏「相手の手にびびらない。読みに失敗しても及び腰にならない。徹底的に手を追求できればこそ火力が生まれる。追求するためには、読みの力を強くするしかない」

衣「なるほど……だからチャンプは強いのか」

咏「そ。連続和了だけじゃあの強さは説明できない。局が進めば進むほど速度が落ちるんだから。「相手が張っても振らずに手を進められる」からこそあの成績なんだよねぃ」

咏「あそこまでできるようになれとはさすがに言えないけどねー。でも、似たような事は出来るようになって貰うよ」

咏「さ、昨日みたくあんまりグダグダしてても仕方ないし……始めるぜぃ」グッ

咏「穏乃、考えなしに打つんじゃない! ちゃんと当たり牌を予測する!」

穏乃「うぐぐぐぐ……こうかー!」

咏「ロン。これでまた飛んだ。穏乃は局が進めば無類の強さを発揮するスロースターターな能力だね。でもそこまでたどり着けなきゃ何の意味もない」

咏「だからって凌ぐだけでもダメ。いいかい? 能力が発動してないなら発動してないなりの、発動したなら発動したなりの打ち方を身につけるんよ」

咏「ノってる時だけ強い、なんてのは、本当の強者とは言えないからねぃ」

穏乃「ぬあー! もう一度お願いします!」

咏「勘と負けん気は評価するけど、それだけじゃ勝てないよ。手作りはいいから、まずは上手い逃げ方を覚えるんだねぃ」

穏乃「まだまだー! いくらでも、できるまでやってやる!」

咏「由暉子の麻雀は一番私に近いねぃ。ただし、性格のせいか防御方面に寄りすぎてる」

由暉子「分かってはいるのですが、どうしても振らない事に集中しすぎてしまいます……」

咏「そのままでいい、とは言えないけどねぃ。自力を上げ、読みに自信が持てるようになれば、自然と要所以外でも力強い打牌ができるようになるさ」

咏「運の投入も能力頼りじゃあるけどできてる。とにかく全ての精度を上げて自信をつける。それだけで二回りも三回りも強くなるよ。あれだ、えーと……保証するねぃ」

由暉子「はい、期待に応えられるよう頑張ります。あ、その……」

咏「どうしたん?」

由暉子「咏さんでも恥ずかしがる事があるのですね」

咏「うるさいよっ」マッカ

由暉子「はうっ」ペチン

咏「河は自然と迷彩されててダマで聴牌気配を悟らせないってのは、長所ではあるよ。でもそれは聴牌しても相手が引かないって事だからねぃ」

胡桃「むぐぐ……振らないくせにぃ」

咏「そりゃあちょっとわかりにくいくらいじゃ私に放銃させらんないねー」ケタケタ

咏「で、胡桃の欠点は単純に遅くて安い。聴牌気配が分からなくても遅いから手を進められるし、万が一振っても安いから恐怖感がない」

咏「ある意味一番難しい課題だねぃ。手を早く作れるようにして、たまに大きな手も用意する。さらに、相手を一番牽制できる割合でやらなきゃいけないね~」

胡桃「それってもう別人の麻雀!」

咏「うはは、その通り! でも大丈夫。ちゃーんとできるように鍛えてあげるからねぃ」

胡桃「あーもう! ほんとお願いします!」

咏「お、敬語に戻ったねー。ちょっとは尊敬しなおしてくれたかい?」

咏「役満確定能力が強いのは分かるよ。能力の強度が高いのもね。でもその分制限がキツいんだから。まずは典型的な才能麻雀をしないことからだねぃ」

初美「あうぅ、でもでもー」

咏「頼るのは悪いとは言わないよ。でも振り込むのはやりすぎだねー。地力は一番なんだから。どっかでみっちりやってたんじゃない?」

初美「ちょっと前までは永水にいたですよー」

咏「うっは強豪じゃん。それでこれなら、初美の場合は、まず意識改革からしなきゃならんねぃ」

咏「裏鬼門だっけ? じゃなくても、自分が満足できるだけの手を作れるようにすべきだねぃ。そうすれば、能力が本当の意味で切り札として機能するか……」

咏「んじゃ初美には役作りを指導しつつ……場が回らない麻雀、しよっか」

初美「ええーっ! うわーん! 鬼ですー鬼畜ですー!」

咏「終わる頃には、初美が相手チームからそう言われるようになってるねぃ。知らんけど」

咏「うーん……ちびっこちゃんは一番たちが悪いねぃ」

衣「ちっびこ言うな! 衣だ!」

咏「能力頼りどころじゃない、百パーセント能力麻雀かー。ご丁寧に牌の選択まで勘ときた。才能が服着て歩いてるような子だねぃ」

衣「でも、本気のウタと打ったら、どんな役を作って何を切ればいいかまで分からなくなった……」ショボン

咏「才能の強さであり脆さだねぃ。これは本気でまずいかも……一度崩れたら飛ぶまでエサにされかねないか。ああまずい、今年の名門校には、結構研究からの崩しが得意な子がいるわ」

咏「どんだけの腕前かはわかんねーけど。私の半分でもできたら、その時点で負けちゃうなぁ」マイッタ

衣「どうにもできないのか……」シュン

咏「んにゃ。まずは私が支配を崩して感覚を削るから、とにかく基礎の基礎を叩き込む。能力なしの地力が上がれば、能力自体も崩れにくくなるしねぃ」

咏「子供がやるような地味ーな訓練ばかりになるだろうけど、乗り越えれば強さは保証するから。ほら、泣かない泣かない」

衣「いや、泣いてはいないが。というか子供扱いはいい加減やめろー!」シャー!

七月・麻雀部部室

咏「さーて、そろそろ予選が迫ってきたねぃ。そろそろオーダー決めるんだけど……どうする? じゃんけんで決める?」

胡桃「い・い・か・ら・ちゃんとやる!」

咏「はい」セイザ

穏乃「すっかり尻に敷かれてるね」ヒソヒソ

由暉子「性格的には、あまり愛称が宜しくない気がします」ヒソヒソ

胡桃「そこ、静かにする!」

穏乃「はいっ!」

由暉子「ごめんなさい」ペコリ

咏「まー一応、案はあるんだよねぃ」

初美(最初からそれを出せばいいのに。なんで怒られる方向に行くんですかねー)

咏「とりあえず確定してる所から。大将は衣」

衣「わーい! 衣が一番上だー!」

胡桃「これは当然だね」

初美「月の高さによって力が変動するから、他の位置に据えようもないですよー」

咏「で、こっからちょっと悩んだけど、先鋒は由暉子に任せようと思ってる」

由暉子「え……? 私ですか?」

咏「うん。四人の中じゃ一番安定してるし、打点も高い。なにより要所での運の使い方が頭一つ抜けてるから、他校のエースと比べても遜色ないしねぃ」

由暉子「私などが先鋒で、いいのでしょうか?」

咏「それは、チームメイトに聞いてみな」

穏乃「大丈夫! 由暉子ならいけるよ!」

胡桃「悔しいけど、私より火力あるからね」

初美「いざとなったら後ろで挽回するから大丈夫ですよー」

衣「深く悩む必要はないぞ。皆で一つのチームなのだからな!」

由暉子「……! 分かりました。先鋒、勤めさせていただきます!」

咏「で、中堅、次鋒がそれぞれ初美と胡桃。二人はうちのブレーンでもあるから、あんまり負担のかかるポジションに置きたくなかったっていうのもある」

初美「お任せですよー! 新生した打筋で稼ぎまくってやるですー」

胡桃「私も前とは比べものにならないくらい強くなったからね! しっかり仕事はこなすよ!」

穏乃「と言うことは、私は副将ですね!」

咏「次鋒と副将は、割と局数が増えやすい傾向にあるからねぃ。うってつけでしょ。真ん中は交代してもいいと思うけど……」

穏乃「私はこれで大丈夫です」

胡桃「私は、どっちでもいいかな?」

初美「むしろ中堅は譲りませんよー」

咏「これで確定かねぃ」

咏「それじゃ、最後に部長の激励をどうぞ」

胡桃「なんでいきなり振るの……。ゴホン、阿知賀女子麻雀部、全国優勝、するぞー!」

穏乃・由暉子・衣・初美「おー!」

咏「まあ、予選はもうちょい後だけどねぃ」

胡桃「な ら な ぜ や ら せ た し !」クワッ

穏乃(絶対に締めさせないんだよなあ……)

晩成高校・通学路


初瀬「せんぱーい、まってくださーい!」タタタタッ

やえ「どうしたんだ、そんなに急いで」

初瀬「だっ……、あれっ……、聞いっ……」ゼェハァ

やえ「落ち着け。ほら、しっかり深呼吸して」

初瀬「すー……はー……すー……はー……」

初瀬「すみません、もう大丈夫です」

やえ「で、そんなに慌ててどうしたよ」

初瀬「阿知賀女子の事、聞きましたか!? 今年創部して、それで……!」

やえ「何かと思えばそのことか。麻雀部が新しくできて参加校が増えて。よくある事じゃないか。逆もね」

初瀬「そ、そうだけどそうじゃなくて! もう! 分かってるのに意地悪しないでくださいよ!」

やえ「……、別に、監督が誰だったとして、実際に戦うのは選手さ。むしろ分かりやすくていい。選手がにわかじゃないと事前に分かるんだから、油断だけはしなくて済むんだからね」

初瀬「でも、それだけじゃ……」

やえ「まだ何かあるのかい?」

初瀬「いえ……小走先輩がそれでいいなら。むしろ先輩が取り乱してるんじゃないかと思ってましたし……」

やえ「ははは、そんなわけないだろう。それじゃあ、話はこれで終わりだ。早く帰るよ」

ズルッ←やえが足を滑らせる音

ずでん!←思い切りしりもちをつく音

やえ「~~~~~ッッッ!!」プルプル

初瀬(めちゃくちゃ動揺してるじゃないですか……)

やえ「~~~~~! っなんで……」

初瀬「え?」

やえ「なんでうちじゃなくて阿知賀の監督なんだー! 晩成でいいじゃないかー! なっんっでっ! 阿知賀なんだー!」バンバン

初瀬「やっぱり未練あったんですね」

やえ「当たり前だろう!? あの三尋木咏の指導だぞ! くそー、なんで私は阿知賀に入らなかったんだ!」

初瀬「そりゃインハイ目指してるのに麻雀部もない所には入学しませんよ……」

やえ「指導……受けたかったっ……!」

初瀬「大ファンですもんね。私もですけど」

やえ「ちくしょー! 見てろよ阿知賀めー! ぜったい、ぜっっったい! ボコボコにしてやるからなー!」

今日はこれまで
ちなみに闘牌シーンはぼろを出さない自信がないのでかなりざっくりです

おつ

やえ先輩かわいすぎるwwwwww
やえさんって作者によってそれぞれ違う個性が出る一番のキャラだと思う
そしてどのキャラ設定もアリに思えるんだよなー

乙。

 確かに能力無しで咏の実力なら小走さんが憧れるよね。

微笑ましいなあ

おつおつ
他校は身長の代わりに精神年齢が子供に!?

おつー


穏乃副将ってことは和と遊べるね

県予選決勝


やえ(ついに決勝まで来た……)

やえ(ここまでは順調だったが、決勝だけはそうもいかなそうだね。二校は、言っちゃ悪いけど相手にならない)

やえ(問題は阿知賀! 決勝までに、いずれもどこかを飛ばして大将まで回ってない。うちじゃとても真似できないな。どんなにひいき目に見ても、総合力で負けてる)

やえ(王者のつもりでいた……。が、そんなものは所詮県内のみの、御山の大将でしかない。これから私は挑戦者か。フッ、それも悪くない)

やえ(敵は強大、大いに結構! どれだけ相手が強くとも……)

やえ「勝つのはうちだ……!」

由暉子「はい? 何でしょう?」

やえ「いや、なんでもないさ……」

由暉子「そうですか。失礼しました」ペコリ

やえ(…………)

やえ(もう来てたのか! 恥ずかしいいぃぃぃ!)マッカ

由暉子(大丈夫でしょうか?)

ビー

やえ(始まったか。起家は私……できればもう少し後がよかったな。様子を見たかった)パチ

やえ(まあいい。幸いな事に、今日の私はかなりついてる。手なりで打っても……)

やえ「ツモ! 4000オール!」

やえ(これくらいは行ける! 高さは求めない! ガンガン走って、私のうちにできる限りのリードを作る!)


穏乃「4順リーチで一発自摸、それも親満!」

初美「晩成の小走、凄くついてますねー。元が全国上位レベルですし、押さえるのはちょっとキツいですねー」

胡桃「それに比べて由暉子は……普通より下くらいの運だね。もう、ついてるんだからちょっとくらい調子に乗ってくれれば、やりようがあるのに!」

初美「うちを完全にマークして、常に警戒してますねー。速度重視で攻めてこられてますよー」

穏乃「ああっ、またツモった! あの人強いし……なにより上手い!」

衣「問題無い」

衣「あそこにいるのは由暉子なのだからな!」


由暉子「ロン。タンヤオのみ」

やえ(鳴き速攻……他家の動向まで含めて無駄な手順なしか。どんなに上手くやっても追いつけなかったな)パタン

すみません、いきなり馬鹿なことしました。修正します


初美「うちを完全にマークして、常に警戒してますねー。速度重視で攻めてこられてますよー」

穏乃「ああっ、またツモった! あの人強いし……なにより上手い!」

衣「問題無い」

衣「あそこにいるのは由暉子なのだからな!」


由暉子「ロン。役牌のみ」

やえ(鳴き速攻……他家の動向まで含めて無駄な手順なしか。どんなに上手くやっても追いつけなかったな)パタン

やえ(私の能力を全部10だとして、真屋の能力は攻め11に守り8、私がやや有利。好調の運と比べれば、相手はいいとこ7程度だが……)

…………

由暉子「すみません、左手使います」

やえ(来たか、運の投入!)

やえ(要所で必ず有効牌を引く、か。そう何度も使ってくる技じゃない……恐らく使えないんだろうが。例え半荘に一度であっても効果は絶大!)

やえ(まったく、嫌になるほど勝てるプロの……いや、三尋木咏の弟子だよ!)

由暉子「ツモ! 2000・4000は2200・4200です!」


咏「おおう、由暉子やったねぃ」

穏乃「いいぞー由暉子ちゃーん!」ヒャッホー!

衣「うむ、見事だ!」

初美「あれって咏さんが指導したやつですよねー」

咏「そだよん。あの子一手に運を全投入してたから、必要な分だけ注げるようにした。おかげで数局に一度くらいは使えるようになったねぃ」フリフリ

胡桃「私も教えて貰っといてなんだけど、なんでそんなこと教えられるんだろう?」


由暉子「ツモ! 1600・3200!」

やえ「ぐっ!」

やえ(またやられた! 自分がついてないと知って、私の親を流す事に集中して左を使ってくる!)

やえ(どうする……? 親番流されるなら速度よりちょと腰を据えて手を作った方がいいか? いや、余裕を作れば相手の思うつぼだ。ただでさえ他二校があちに協力してる)

やえ(後ろを考えれば、ここでなるべくリードしたいって言うのに! 阿知賀の他のメンツは放銃する事もあるのに、こいつだけは差し込み以外振りゃしない!)

やえ(仕方ない。子は今のままでいいとして……親番でさらに速度を作るか!)


『先鋒戦、終了!』

『トップは以前晩成高校! 王者の意地を見せました!』

『阿知賀女子も奮闘しましたが一歩及ばず! 大きく差をつけられる形となりました!』

『晩成と阿知賀の叩き合いに巻き込まれ、他二校が点を削られています!』

『晩成がこのまま逃げ切るか! それとも阿知賀が追い上げるのか! はたまた、割を食った二校が追い上げるか! 次鋒戦も目が離せません!』


由暉子(109300……トップとの差は約二万点。負けてしまいました……)トボトボ

由暉子(せっかくみんなが私を信じ、先鋒を任せていただけたと言うのに……)

胡桃「ほら、しゃきっとする!」

由暉子「ひゃあ!」パチン!

由暉子「あ……胡桃先輩……」

胡桃「相手がバカヅキしてたんだから仕方ないの! むしろよく要所で押さえたって、咏さんも言ってたよ!」

由暉子「でも、私が……」

胡桃「いい!?」ズイ

由暉子「は……はい」

胡桃「団体戦なんだから皆で勝てばいいの! 由暉子が負けたらもう勝てないっていうくらい、私は弱い!?」

由暉子「いえ! そんな事ないです!」

胡桃「由暉子は走りそうだった晩成を押さえた! ちゃんと自分の仕事をした! 後は頼りになる先輩に任せる! 分かった!?」

由暉子「はい、分かりました」

胡桃「ん、行ってよし。いい仕事したんだから、ちゃんと胸を張って行きなさい」

由暉子「はい!」タタタ

胡桃「ふぅ」

胡桃(由暉子はいい子なんだけど、責任感強すぎるのが難点だね。ま、そこがかわいくもあるんだけど)

胡桃(さ、ああ啖呵切った手前、みっともない戦いはできないね。とりあえずは……)

胡桃「晩成、沈めますか」キッ


胡桃「ロン! 1000!」

胡桃「ロン! 3900!」

胡桃「ロン! 1500は2700!」

紀子(ぐっ……! 一体何連荘する気なの!?)

紀子(ただでさえ速度が速いのに徹底したヤミテン、河も微妙に変で聴牌気配が分からない! 分かってても追いつけないじゃない! リーチくらいしてよ!)

紀子(打点が低いからっと思って攻めれば……)

胡桃「ロン! 11600は13100!」

紀子(たまにこんなのが出てくるし!)


日菜(薄墨初美……阿知賀の中でも一番分かりやすい能力持ち)

日菜(役満確定は卑怯くさいけど、対策自体は簡単。分かってるのかいないのか、他校から東も南も出てない。後は普通に上がれば……)

初美「それ、カンですよー」

日菜「え!?」

日菜(数牌をカン? って……新ドラ! ドラ4!?)

初美「ツモ! 6000・12000ですよー!」

日菜「ばっ……!」

日菜(新ドラが何か分かってた!? いや、それよりも元から四暗刻寸前だった! 役満回避できたって、三倍満なんて来たら意味ないじゃない!)


良子「ロン。5200」

穏乃「うっ!」

穏乃「なんの、ツモ! 2000・4000!」

良子(完全に殴り合いだ。次鋒中堅みたいな訳分かんない力があるわけじゃなく、先鋒ほど上手くも安定感もない。対抗はできてる……)

良子(でも、ただでさえ10万点を軽く超える差があるんだぞ! しかも、相手の方が平均して1飜は高い。展開も早いし、これじゃ一方的に削られる!)

良子(どうにか大きな手を作って、なんとか由華がまくるのに現実的な点差にしないと……いけないのに!)

穏乃「ロン! 5200!」

良子「っ! はい……」

良子(ただでさえ逃げ切りに速度が上がってるのに、打点も低くはない……。どうすればいい!)



衣「」プクー

穏乃「衣先輩、怒らないで下さいよー」

由暉子「そうです、みんなで頑張ったんです」

咏「ねえねえ、あれどしたん?」ヒソヒソ

初美「私たちが削りすぎて、殆ど遊べないってすねちゃったですよー」ヒソヒソ

胡桃「強い打ち手もいないから、親番一回で終わっちゃうって」ヒソヒソ

咏「うっはー、晩成以外だってまだ二万点残ってるのにおっかないねぃ」ヒソヒソ

胡桃「それは咏さんが言っていい台詞じゃないよ……」ヒソヒソ

初美「それで、上級生が言っても逆効果だって事で、二人になだめて貰ってるです」ヒソヒソ

咏「仕方ない、ここはみんな大好き咏さんが頑張りますかねぃ」

胡桃「……、大好き……?」

咏「うはは、何も聞こえないねー。おーい、ころたんやー」

衣「ころたんではない、衣だ」プクー

咏「全国に行けばもっと強い人がたくさんいるんよー。こんなとこでふくれてていいのかい?」

衣「……由暉子を上回った小走やえよりもか?」

咏「あー、ありゃあ去年の個人戦上位だねぃ。でも、トップテンには入れなかった。三年が卒業してるから、もうちょい上には入ってるだろうけど」

咏「ちなみにうちみたいに団体戦専門の学校も結構あるし……。ま、あれより強い子はたくさんいる。それは保証するよ」フリフリ

衣「行ってくる!」ビュン

穏乃「ふー……咏さん、ありがとうございます!」

由暉子「やっぱり咏さんは凄いです」

穏乃「でも、よく衣先輩のツボが分かりましたね」

咏「あー……うん、まあ……ねぃ」

咏「私にも若い頃はあった、って事かな……」メソラシ

穏乃・由暉子「?」


由華(…………)

由華(こ…………っ)

由華(こんなの…………)

由華(どうにかできるわけ……ないじゃないっ……!)

衣「ツモ。12000は12200オール。二家飛びで終了だ」

うたたんもこんな時代があったのか...

今日はここまで
小走さんの出番があっさり終わってしまって申し訳ありません。その内また出てきます

おつですー

おつですよー


胡桃がいい先輩してて和む

追いついた乙乙
組み合わせが新鮮でいいっすな


全国大会出場したらヘンな意味でも人気でそうだww

恒子『ふくよかすこやかインハイレディオー!』

恒子『この番組の提供、はぶん投げてー!』

健夜『投げちゃダメだよ!? す、スポンサーのみなさん安心してください! 番組の最後に必ず言いますんで!』

恒子『さて今週は。続々とインターハイ出場校が決まって参りまったぞー! 日程の早かった12校が決まりました。だよね?』

健夜『そうですね。特に近畿圏は京都と滋賀以外が決まりました』

健夜『南大阪地区の姫松高校、兵庫地区の劔谷高校と、名門と言われる高校の参加が続々決定しています。他にも、シード校である北大阪地区の千里山女子』

恒子『ふーん』ニヤニヤ

健夜『な、なんですか福与アナウンサー……』

恒子『いやー、ね? 小鍛治プロはわざと注目の高校を抜いてるなーと思って』ニヤニヤ

健夜『う……だってちゃんとお仕事しなきゃ』

恒子『それじゃあ――みんなが大・大・大ちゅうもーく! 大穴にして大本命、奈良県から阿知賀女子がインターハイへ駒を進めてきたああぁぁぁ!』

恒子『前述の三校と同じくド本命と思われていた、名門晩成高校を圧倒的大差、なんと24万点近い差をつけ、二校同時飛ばしという荒技でやってきたぞー!』

恒子『チームコンセプトは当然圧倒的火力! 卓を焦土と化すチームを率いるのはもちろんあの人! 今年に入って殆ど姿を見られなかった三尋木咏プロだー!』

健夜『三尋木プロは今年頭に病気になり、その後もしばらく療養していました。治ったとアナウンスされていましたが、団体戦のオーダーからは外れ、心配していた方も多いと思います』

健夜『四月に入ってさらに露出がなくなり、一時は引退も噂されていたのですが……まさか高校のコーチになっているとは』

恒子『ちなみに、小鍛治プロから見て、あのチームはどうですか?』

健夜『そうですね、はっきり言って強いです』

恒子『おおっ! 辛口すこやんからの思わぬストレートな称賛の声!』

健夜『辛口じゃないよやめてよ! おほん、阿知賀女子最大の特徴は、全員が三尋木プロの上辺だけではなく理解し、それを卓上で表現してる事だと思います』

恒子『なにぃっ! ……つまり、どういう事?』

健夜『分からないのに驚いたの!? ええと、三尋木プロは高火力で有名な雀士ですが、その高火力を作りにはどうすればいいか、という事です』

健夜『振らずに手を追求する、というのは恐ろしく難しいです。特に毎回当たり牌をピンポイントで掴む、なんて、もう人間業じゃありません』

恒子『え……じゃあ阿知賀女子の選手は、みんながそんな事をできてると……?』

健夜『いえできてません。特に次鋒から副将までは、ちょっと振り込み多すぎますし。大将は最後数局しか出てませんから、まだ分かりませんが』

恒子『はーい、いつもの辛口小鍛治プロでしたー』

健夜『だから違うってぇ! つまり高い手を作り続けるには、高度な読みと、なによりその読みに絶対の自信を持たなきゃいけないって事なの! そもそも三尋木プロだって完璧にはできませんから!』

健夜『この場合、放銃というのは必ずしも下手という訳ではありません。いえ、上手いわけではありませんし、しないに越したことはないのですけど』

健夜『彼女たちにとって放銃とは、オリの失敗ではなく読みの失敗です。相手に聴牌気配があれば、当たり牌を使い切った役に作り替える、というだけなんです』

健夜『当たり前の事に聞こえるかも知れないけど、これは結構違いがあって……なんかこう、表現が難しいんですけど……』

恒子『ふーん。なんとなく分かったような分からないような。じゃあ放銃が多いっていうのは?』

健夜『あくまで三尋木プロの場合はですが、読み切れない場合読みの範囲をほんの少しだけ広げるんです。その上で手を作れない、もしくは間に合わないと思ったとき、初めてオリます』

健夜『選手が読み切れない、これは仕方ないことです。でも読み切れない事に気付かないのはダメです。こう、厳しいことを言うようですが、自信の持ちすぎ。もっと熟慮しないといけません』

恒子『おおう、本当に厳しい……。まさか小鍛治プロがここまではっきり言うとは』

健夜『見切り正否判断の失敗は、指導者の顔に泥を塗る行為だからね。ここははっきり言っとかないと』

健夜『ちなみに先鋒の真屋選手は、もう少し大胆に行ってもいいと思います』

恒子『とにかくそこまでやって、あの火力が再現できると』

健夜『そうですね。何か特殊な才能でもない限り、そこまでやってやっと、トップレベルの火力が手に入ります』

恒子『なるほど。おおっと、こーこーでー! 小鍛治プロの予想ターイム! リスナーのみんなが気になるあれやこれやを、小鍛治プロに予想して貰います!』

恒子『まず一つ目、阿知賀女子と白糸台が激突した場合、どちらが勝つと思いますか?』

健夜『ええと、そうですね。大将である天江選手の露出が少ない以上、はっきりとした事は言えませんが。白糸台有利ではないかと思います』

恒子『はっきりと言えない、という割にはしっかりした口調だね』

健夜『そうですね。火力で阿知賀有利と見ても、現時点では失点の差がおおきくのしかかる、という点が一つ。もう一つは、やっぱりチャンプが圧倒的すぎます』

恒子『現高校生最強は伊達ではないと』

恒子『そしてもう一つ。ある意味前の質問より気になっている人が多いと思いますが……』

恒子『ズバリ! 三尋木プロの後継者は誰でしょうか!』

健夜『そうだなあ……雰囲気的には薄墨選手か高鴨選手が近いと思いますが。技術的には、間違いなく真屋選手です』



阿知賀女子・麻雀部部室・朝


穏乃「つ、疲れた~~~。おはよーございまーす……」

胡桃「……おはよー……」

初美「ですー……」

由暉子「」グッタリ

穏乃「ああ、みんな元気ないですね。気持ちはすごい分かりますけど……」

胡桃「確かに予選で派手な勝ち方したけど……まさかあんなにマスコミが来るとは……」

初美「ただでさえ「あの三尋木咏が高校麻雀のコーチに!」ですからねー。それに恥じないだけの結果も出しましたし……」

穏乃「あと、なんで由暉子は死んでるんですか?」

由暉子「」ボウゼン

胡桃「『ふくすこ』聞いた?」

穏乃「え? いえ、早く寝ちゃって。今日部活後に聞こうかなと」

胡桃「小鍛治プロが爆弾予想してくれたのよ。『真屋由暉子こそ三尋木咏の後継者』って」

穏乃「あー……。ああぁーーー………………」

初美「インタビューが卒業後の進路にまで及んでて、本当に凄かったですよー」

穏乃「そっかー、由暉子に比べれば私はまだマシだったかー」

胡桃「…………」

初美「…………」

穏乃「………………、」

胡桃「もっと聞きなさいよ」ヒソヒソ

穏乃「だって、なんか触れちゃいけない雰囲気出てるんですけど」ヒソヒソ

初美「いいから早く聞くですよー」ヒソヒソ

穏乃「ホントに聞くんですかぁ? 隅っこで体育座りして外を眺めてる衣先輩に?」ヒソヒソ

胡桃「いいから行く!」ヒソヒソ

初美「割を食うのはいつでも年下なんですよー」ヒソヒソ

穏乃「ううぅ、なんて先輩たちなんだ……」

穏乃「あの、衣先輩? 何が、あったんでしょうか」

衣「…………」

衣「………………」チラリ

穏乃(すっごい濁った遠い目してる)

衣「……衣に……モデルとして活動しないか、という話が来た……」

穏乃「い……いい、話、なんですよ、ね?」

衣「………………小学校低学年向けの服だった……」

穏乃(あ、これいけないやつだ)

咏「おっはよー諸君! 今日もいい一日だねぃ」バン

穏乃「あ、おはようございます」

由暉子「うぅ……おはようございます」

初美「おはよーですー」

咏「みんな見事に死んでるねぃ」ケタケタ

咏「で、人にもみくちゃにされた感想はどうだった?」ニヤニヤ

胡桃「最悪だったよ、色んな意味で。死ねばいいのに、目の前の人が」

由暉子「咏さんは大丈夫だったのですか? 私はもう、その……ダメです」

咏「がんばんなきゃダメだねー。私もめっちゃ囲まれたよ。ちなみにここに来る前に、別の場所で三倍の人に囲まれてた」

胡桃「生意気な事言って申し訳ありませんでした。三尋木プロを尊敬しています」ペコリ

咏「うむ、くるしゅーない。山よりも深く谷よりも高く尊敬してくれて構わないからねぃ」フリフリ

初美(それってマイナス……)

穏乃「咏さん、今更だけど今日だけでも部活は別の場所にした方がよかったんじゃないですか?」

咏「無駄無駄。この辺の私らが行けそうで雀卓のある場所は、ぜーんぶ張られてるから。しかもそういう所に限ってたちの悪いマスコミばかりなんよ」

咏「人が多ければ、そこまでヘタな事はできないからねぃ。多少は苦労するだろうけど、身を守るためにも避けちゃいけないよ」

由暉子「注目を浴びるというのは、こんなにも大変なのですね」

咏「ま、慣れさ。そのうちほどほどで抜け出せるようになるさ。知らんけど」

初美「コツを教えて欲しいですよー」

咏「わかんねー」アハハ

胡桃「まあいいや。はい、みんなしゃきっとして! 部活始めるよ!」パンパン

衣「もうネト麻は飽きた。みんなと打ちたい」

咏「んー? 今のレートは……おおう、なかなかのもんだねー。感覚を揺さぶられた状態でこれなら十分かねぃ」

衣「え……つまり」パアァ

咏「ん。今日からこっちで普通に打ってよし」

衣「わーい! たくさん打つぞー♪」

穏乃「良かったですね!」

咏「まあ穏乃は、というか穏乃と胡桃と初美は人のこと言ってらんないけどねぃ」

穏乃・胡桃・初美「え?」

咏「すこやんに酷評されたっしょー? 今のままじゃ白糸台にまず勝てないのもズバリだし。地獄の特訓次鋒から副将バージョン始まるよー」フリフリ


今日はこれまで
次回より「あの人は今」

おつ


あの「人」って個人を指定してるのが気になるな
抜けたメンバーの高校の面子ってわけでもないし

乙やでー
次も期待やでー

おつ
ちっこいものクラブみたいな曲あるよね
おじゃる丸だったっけ

面白い、乙です

永水女子


小蒔「ええと……どにいるんでしょう?」テクテク

小蒔「あ、いました! おーい!」

「こま、そんなに声上げなくても分かるわよ」

小蒔「すみません」エヘヘ

小蒔「でもこれ、早く見て欲しかったんです!」

「麻雀ウィークリー? わ、表紙にでかでかと」

小蒔「これ! この子なんですけど」

「ああ、かすみんに聞いたわ。薄墨初美って人、幼なじみなんだって? 私と入れ替わるように転校しちゃったっていう……」

小蒔「そうなんです。あっちでお勉強の為にっていって、しばらく姿を見れなかったのですが。元気そうで安心しました!」

「ちなみにそこの真ん中の子、私の幼なじみなんだ」

新子憧「高鴨穏乃って言うのよ」

小蒔「わあ! じゃあ本当に入れ替わりだったんですね!」

憧「みたいよね。廃部になってた麻雀部を復活までしてインターハイに来るし。ほんと、すごい偶然だわ」ハハ

小蒔「対戦が楽しみです!」ムン!

憧「そうよね。けど、うちだって負けてらんないわ。しずもめちゃくちゃ強くなってるみたいだし、私たちも強くなんなきゃね」

小蒔「ですね!」

霞「あら、小蒔ちゃんに憧ちゃん。二人とも早いわね」

巴「あ、姫様が持ってるそれって……」

憧「かすみんに巴さん。あ、うしろにはるるもいた。おつかれでーす」

春「おつかれ……」

小蒔「これ、見て下さい! 初美ちゃんが乗ってるんですよ!」

霞「あらあら……」

巴「姫様も買っちゃったんですね。実は私たちも、二人で一冊……」

小蒔「被っちゃいましたね」エヘヘ

小蒔「それで、この中に憧ちゃんの幼なじみもいるんですよ!」

霞「まあ、すごい偶然ね」

憧「そうよねー。私も最初に気付いたときはびっくりしたわ」

巴「それで、どの子がそうなの」

憧「ええと、この……」

霞「……ジャージね」

春「ジャージ……」ポリポリ

巴「ジャージだね」

小蒔「ジャージですね……なんで?」

憧「まあジャージだけどさ。私もまだジャージな事にびっくりよ」

春「動きやすそう……」

憧「しずの場合、動きにくい服を着て、ちょっとは落ち着いた方がいい感じだったわ」ニガワライ

憧「それで、阿知賀が凄く強いから私たちもつよくなんなきゃねって話してたの」

霞「そうよね。懐かしむのもいいけど、それで負けてはられないものね」

巴「じゃあ、部活もう始めますか?」

憧「あっ。ごめん、促すような事しといて悪いんだけど、ちょっと喉渇いちゃった。飲み物買ってきていい?」

小蒔「じゃあ私も行きます」

春「私も……」ポリポリ

憧「いいけど、本当に買って戻ってくるだけよ。あとはるるはポリポリしない」

春「それはムリ……」ポリ

憧「かすみんと巴さんは何が欲しい?」

巴「憧ちゃんに任せるわ」

霞「私もお任せね。……ねえ憧ちゃん、ちょっといい?」

憧「なに?」

霞「なんで巴ちゃんはさんなのに、私はかすみんなのかしら」

憧「えっ……嫌だった?」

霞「そういう訳じゃないの。訳じゃないんだけど、なんかこう……私部長だし……」

憧「えー。だって巴さんは、ぴっという感じで、さんが似合うし。かすみんは見るからにとろんとしてて、かすみんって感じあるもの。ねえ?」

春「ああ……」

小蒔「なんとなく分かります」

霞「ええっ」ガーン

憧「じゃ、買い出し行ってきまーす」

小蒔「あっ、憧ちゃん待ってください」タタタ

春「…………」タタタ

霞「そんなに威厳、ないかしら……?」ペタペタ

おばさん呼ばわりされるよりはいいんじゃねー?知らんけど

巴「霞さんは部長としてしっかりやれてますよ。ただ、あれが憧ちゃん流の接し方ってだけですって」

霞「そうなのかしらね。でも……しっかりしてるって言ったら、私より憧ちゃんの方がよっぽどだし、自信はなくなっちゃうわ」

巴「あれは……仕方ないですよ。私たちじゃ絶対にできない事でしたから。だからこそ、姫様が憧ちゃんにあんなに懐いてるんですし」

憧『へあ? 姫様? なにそれ……。ふーん、こまも大変なのね。でも私は実家が神社だからここに来ただけだし、そういうのは一切関係なし!』

憧『だから私とこまはただの普通の、よくある友達! 以上! 反論は許さない! そういう訳だから、じゃあ、一緒に買い物行きましょ』

霞「憧ちゃんには感謝してもしたりないわ」

巴「姫様が普通に麻雀打つきっかけにもなりましたからね。今では姫様の先生ですよ」

憧『うっわぁ、こま、すっご! それどうやってやってるの? え……わかんない? 神降ろし? ……なにそれ?』

憧『悪いとは言わないわ。でもそれじゃあ、どこにもこまがいないじゃない! 麻雀強くなるわよ! 神様に勝つほどとは言わなくても、こまが勝てれば神様に頼り切りにならなくていい』

憧『それに、私はこまと麻雀がしたいのよ……』

憧『修行……? 役割? う……っ、うるっさぁい! 外野は黙ってなさい!』

憧『ここはどこ!? 神社でなければ霊感あらたかなどこそこじゃない、ただの麻雀部! これはだれ!? 神降ろしの道具じゃない、ただの神代小蒔っていう女の子よ!』

憧『文句がある奴は前に出ろ! 私が相手になってやる!!』

霞「ちょっと憧ちゃんの思い込みがあったとはいえ、確かにそういう所はあったものね……」

巴「憧ちゃん後から死ぬほど悶えてましたもんね。でもあれ以来、ずいぶん雰囲気が変わりました」

霞「…………」

巴「…………」

霞「あのときの憧ちゃん、凄く怖かったわね……」カタカタ

巴「私に向けて言ってるんじゃないって分かってても、泣きそうになりました」カタカタ

憧「ただいまあー」

霞・巴「」ビクッ

憧「え、なに? どうしたの」

霞「いえ、なんでもないわ」

小蒔「ただいまです。霞ちゃん、巴ちゃんもジュースどうぞ」

巴「ありがとう。あれ、姫様と憧ちゃんはジュースじゃないんですね」

小蒔「はい。それが……」

春「黒糖ジュース、凄くおいしい……」

憧「ちょっと貰ったら口の中がめちゃくちゃ甘い事になってしまいました」

小蒔「今日はもうジュースを飲みたくないです」

巴「あはは、ほどほどに……。じゃあ部活を始めるけど、面子は……」

小蒔「はいっ、入りたいです!」

春「積極的……」

小蒔「昨日憧ちゃんに鳴きからのいい手の作り方教えてもらって、誉めてもらえたんです」エヘヘ

霞「姫様も、すっかり麻雀上手くなったわねぇ」

霞(「神代」としては、それが必ずしもいいこととは言えないけど……。私はやっぱり、こっちの小蒔ちゃんの方が好きだわ)

某所


晴絵「はー……。『阿知賀女子、最強の布陣で全国堂々出陣!』かぁ。すっごい事になったなあ」

晴絵「しかもあの穏乃がねえ……。すっかりおっかない麻雀打つようになっちゃって」

晴絵「あ、この比較『前回全国出場時』って事は、私らの事か。しかも現阿知賀チームが圧倒的大差で勝利ね。こりゃくやしいわ。ま、比較対象がチャンプチームって時点で仕方ない事だけど」

晴絵「あーあ。私も頑張らないとなあ」

「ハルちゃーん…………」

晴絵「お、灼ーーー! こっちだよーーー!」

灼「もう、ハルちゃんなんでこんな所にいるの? 時間になっても全然来ないし」

晴絵「悪い悪い。ちょっとこれ見てたんだよ」

灼「麻雀雑誌……? あ、これ阿知賀の」

晴絵「そ。私の母校二度目のインターハイ進出記事。にしてトップエースプロが鍛えたチームの前評判だね。おまけに元教え子まで一人いるときた」

灼「うれしい?」

晴絵「そりゃ嬉しくないわけはないけど、そんな気持ちより遙かに悔しいかな」アハハ

晴絵「プレイヤーとしても指導者としても、昔も今も完敗なんて書かれちゃ、さすがの私でもね」

灼「そんなことない! ハルちゃんは……」

晴絵「大丈夫、分かってるよ。それに、これから取り返すつもりだしね」

灼「それはどっちを?」

晴絵「もちろん――プレイヤーとしても指導者としても。両方さ」

晴絵「しかし、阿知賀の記事なんて見ると、昔を思い出すよ」

灼「昔って、インターハイの事……?」

晴絵「どっちかって言うと、二年前の事かなー」ニヤ

灼「う……」

晴絵「会社首になって失意の私に、見覚えのあるちびっ子が噛みついてきたかと思ったら無理矢理弟子入り。まさか、知り合いに紹介して貰った地方のプロクラブにまで着いてくるとは思わなかったわ」

灼「だ、だってあれは……ハルちゃんが悪いんだし、私は悪くな……」

晴絵「ほーんと、でかくなっちゃって」

灼「……成長期なんだから背くらい伸びるし……」

晴絵「身長もだけど――麻雀の腕の方さ」

灼「う、うううぅ、うわぁん! またそういう事言……」カア

晴絵(ほんとかわいい子だなあ)

晴絵(こんな話してると、本当に当時の事思い出すなあ)

晴絵(プロに転向とは言っても所詮下の下だし、当時は悲惨なほど仕事なかったっけ。結局臨時職員と兼業始めたんだよなあ)

晴絵(灼もそういう感じのしない子だっただけど、高校の麻雀部に入って。監督なんかお願いされて)

晴絵(今じゃプロも監督も、両立が難しくなる程度には仕事増え始めたからなあ。いいことじゃあるんだけど大変だ。……問題児ばっかりだしね)

「お、いたいた。おーい、みんなー。二人してこんなところにいるぞー」

「わはは! っべー! なんでこの寒い中日陰にいるんだ!」

「ひ、日陰ぼっこととかでしょうか?」

「それもう完全に迂遠な自殺よね」

晴絵「お、来たなー問題児軍団」

獅子原爽「なんだよーそれが可愛い生徒に言う事かよー」

岩館揺杏「そーだそーだ! もっと優しくしろー!」

晴絵「優しくされたかったらもうちょっと大人しくしなさいよ、まったく」ニガワライ

本内成香「灼ちゃんどうしたんですか?」

桧森誓子「顔を伏せてぴくりとも動かない……」

晴絵「ちょっと精神ダメージがね」

誓子「何があったの……というか私まで問題児扱いは、こう、釈然としないんですけど」

晴絵「お、言ったな? 私は忘れてないぞ、去年の闇鍋事件」

誓子「ゔ……!」

晴絵「どっかの馬鹿五人が、あろう事かインハイ予選直前に闇鍋なんてやって、大馬鹿二人以外食中毒なんて起こして……」

晴絵「オーダー表提出後だからメンバー交代もできなかったし、結局団体戦は辞退だよ」

晴絵「個人戦にはギリギリ間に合ったからよかったものの。後にも先にもあれっきりだぞ。私が生徒に向かって、本気で「死ね馬鹿!」と思ったのは……」

誓子「そ、そんなの昔の話だし……」

成香「チカちゃん、それは無理があります……」

揺杏「ひゅ~~、ひゅ~~~~」パタパタ

爽「息しか出てないぞ」

晴絵「いいか、今年は絶対、ぜぇっっっったい! 私の見てない所で何かするんじゃないぞ!」

爽「信用無いなー」

晴絵「あるか主犯!」

誓子「はい、もう二度としません」ペコリ

成香「ごめんなさい」ペコリ

晴絵「ま、分かれば良いさ」

揺杏「おっし許された! ……で、これが例の、ハルセンの古巣?」

晴絵「いつの間に雑誌を……」

爽「へー。優勝候補か。すげー」

誓子「全員なるかよりちっちゃいのねえ」

成香「チカちゃん、あんまりそういう事言っちゃダメですよ……」

晴絵「話したことないのによく知ってたな……」

誓子「そりゃ灼がいますし、あとは先生の回りにいるプロの人がもらしたりとか」

揺杏「やっぱトッププロはうだつの上がねープロとは違うなあ」

晴絵「おまっ……気にしてる事を……」

爽「ま、あんま気にすんなよ。どーせうちらが優勝するんだし、そうすりゃ少なくとも、指導者としては三尋木咏より上だろ?」

誓子「後は先生がトッププロになれば万事解決!」

成香「先生にはたくさんお世話になったし、同じくらい迷惑かけたし……」

晴絵「…………お前ら……」

揺杏「私らが優勝したくらいで何が変わるとは思わないけどさ。ま、ハクくらいはつくっしょ?」

灼「ハルちゃん……」

晴絵「灼……」

灼「優勝できるくらい強くなれば、もう指導はいらないよ。わがまま言って面倒見て貰ってごめ……。だから、インターハイを最後に……プロに戻ってよ」

晴絵「な、なんだよお前ら……。問題児しかいない癖に、っ……くそっ! こういう事するのは反則だろ!?」

晴絵「見てろよ、絶対に優勝させてやるからな!」

本日はこれまで。次回も引き続き「あの人は今」です
>>155
期待を裏切るようで申し訳ないです

おつおつー
アコチャーはやさしいね!


宥姉が有珠山じゃなくてホント良かった

乙~
アコチャーは永水だと思ったけど灼が有珠山メンバーとは予想が外れました~

記者A「あーあ、惜しいなあ……」

記者B「どうしたんだ?」

記者A「見て見ろよこれ。どこもかしこも阿知賀と三尋木プロ一色だ」

記者B「……仕方ないさ。火力に次ぐ火力、飛ばしに次ぐ飛ばし。それだけセンセーショナルだったんだ」

記者A「ちくしょー……阿知賀さえいなけりゃ、いや、あと1年ずれてくれてれば、話題を北海道で独占できたのによ」

記者B「言うな空しい。ボヤいてる暇があったら次のタネを探すんだな」

記者A「はぁー……」

記者A(有珠山神話! 全試合10万点以上の大差で勝利! 今となっては空しい見出しだ……)

記者A(昨年個人戦地方予選1位、全国7位、今年も予選1位のエース獅子原爽。同予選2位、全国13位、今年予選2位の鷺森灼。ダブルエース布陣で見劣りするって何なんだよ……)

記者A「こうなりゃ勝ちまくってくれよ有珠山。そんで、俺にでかい記事を書かせてくれ」

すみません、忘れてました。これで本当に今日は終了です

乙、やっぱり永水には憧が言ってたか。そして有珠山には赤土さんも含めて灼がいるのか。赤土さんがいる分、前三人も強化されてそうだな……
あれ残り欠けがある学校は全員二年生と全員三年生……宥姉大丈夫かな?

??「あはは、あの阿知賀とかいうとこの選手全員中学生みたいだじぇ」

乙!>>155だけど全然面白いからかまわんですよ
次回も楽しみです

>>186
岩手もけっこう、長野でも冬はそれなりに寒そう…何より玄ちゃと離ればなれになって生きていけてるか心配だ

>>191
嘘みたいだろ?唯一140cm越えの咏さんを含めても
中学生はおろか小6の平均身長すら誰一人達してないんだぜこのチーム

小学生と言えなかったタコスの気持ちも考えてやれよ

清澄高校


久「あー……本当に疲れたわー」

和「部長はさっきから何をやってたんですか?」

久「先日予選が全部終わったじゃない? だから参加校全校の牌譜を収集、解析してたのよ。春の分と予選の分全部やるのは、さすがに苦労したわ」

久「ま、試合数が少なかったり本気を出してるか怪しかったりで、どこまで信じられるか分からないけどね」

咲「あの……試合数だけでも500近くありませんか?」

久「実際には春には負けてるけど夏は勝ってる所の分と、可能な限り個人戦の分も集めてるからね。結局1000試合超える量を解析する羽目になったわ」アハハ

まこ「笑い事じゃなかろ。副会長のあれ、なんちゅーたか……」

久「内木くん?」

まこ「そう、そいつじゃ。あれがフラついとるあんたを見て、えらい心配しとったぞ」

久「う……そんなに酷かったんだ。でもうちにはちゃんとした指導者がいないから、こういう事は私がやんないといけないのよね」

和「それで体をこわしたら元も子もありませんよ」

久「ここまで頑張ってるのに、私の助言をぜんっぜん聞いてくれない子がいて悲しわー」チラ

和「う……だ、だってですね、私には私の打ち方とかが……」ワタワタ

久「あはは、嘘よ嘘。そこまで考えて作戦立ててるから大丈夫。ま、ちょっとくらい耳を傾けておいては欲しいけどね」

咲「それで、もう終わったんですか? まだなら、お手伝いできることがあればしますけど」

久「終わったと言えばそうだし、まだだと言えばそうだし……」

まこ「なんじゃ、煮え切らんのう」

久「丁度いいから、みんなの感想も聞こうかしら。はい」カチ

和「動画ファイルですか?」

久「ええ。それも、高校生雀士で知らない者はいないってくらい有名な試合ね」

咲「これは……奈良の決勝ですか」

和「地区大会の決勝なのに、再生回数が桁違いの試合ですね」

まこ「確かに万人受けするタイプの派手な試合じゃし、実際見てて面白いとは思うが……。あんなおっかない戦い方はとても真似できゃせん。心臓が鋼か何かでできとるんか」

和「あれをやったのが友達だと思うと……呆れるべきか誇るべきか。非常に迷います」

咲「あはは、見るのは面白くても、とても真似する気にはなれないよね」

まこ「で、これがどうしたんじゃ?」

久「率直に聞くけど、このチームに付け入る隙ってあると思う?」

まこ「どこもかしこも付け入る隙だらけじゃろ」

和「むしろ一般的な定義で堅実な部分がありません」

久「そうなのよねー……。面倒な事に、弱点を探す必要がないチームなのよねー……」

咲「あの、それじゃダメなんですか?」

久「だって、それで勝ってるじゃない。しかも辛勝とか弱点付かれて揺らいだり、とかじゃないのよ? 全試合、他家を飛ばしての快勝。こんなのもう弱点じゃないわ」

まこ「面倒な事に弱点が弱点じゃないのか、長所が弱点を隠しているのかも分からん」

咲「……和ちゃん、一ついい?」

和「はい、なんでしょう?」

咲「阿知賀の人たちの、というか三尋木プロの打ち方、広義で言えばデジタルだよね?」

和「ええ、そうなります。納得しがたいですが」

まこ「なぬ? ほんまか?」

和「はい。あくまで三尋木プロのインタビュー内容を全面的に信じれば、という話になりますが」

久「なんか見たことあるかも。普通のデジタルとは設定が違うってやつよね」

和「普通はデジタルを打つ際、設定するのは目標です。団体戦か個人戦か、攻めと守りの重要度の比率は、推定残局数でも微動させたりします。とはいえ、あまり極端な事にはなりませんが」

和「三尋木プロは、他家の当たり牌を『不明』ではなく『確定』の前提で動いています。つまり、危険牌をいくら打っているように見えても、三尋木プロ流定義で言えば『完オリ』をしています」

和「直撃の可能性が皆無と判断すると、手を作る危険性がなくなります。むしろツモられるか誰かが放銃する前に役を作り、和了がらなければならないという判断になります」

和「あくまで理論の上では。そうすると、大きな手役を作った方が、総合的な収支が上という判断にもなるんです」

和「――という前提があると、三尋木プロの麻雀は機械的に効率を追求したデジタル打ち、と言える、らしいです。……自分で言ってて、酷く頭の悪いことを言っているのは分かってます」ゲンナリ

咲「と、とにかく! むちゃくちゃな前提さえ理解すれば、やろうとしていることは理解できるんですよ! ね?」

和「まあ、そうですね……」

まこ「なるほどのう。濃霧の中どこに障害物があるから分からないから進まない、と。場所は分かってるからそこだけ避けて突っ走る、の違いか」

和「当たり前ですが、麻雀は河からある程度手役を予測できても手牌までは分かりません。また、絶対に当たらない牌というのはかなり少ないですし」

和「だからこそ聴牌すれば即リーチ、他家のリーチにはオリの原則になるわけですが……。「手牌が確定している」という前提で考えると、文字通り別のゲームをしていますね」

久「阿知賀に変な打ち手は多いけど、基本は三尋木流デジタルなのよね。攻めるならここなんだろうけど……」

和「『デジタル』である以上、それは弱点になりえません。ただの確率論と効率でしかないのですから」

咲「でもそうすると、あの火力が野放しになるんだよね?」

まこ「お手上げかのう? せめてもうちっと情報があれば、手の打ちようも見えてきそうなんじゃが……」

ドタドタドタ……

優希「お掃除終わってきたじぇー!」

「まったく、あなたが無駄に暴れるから長引いたじゃありませんの!」

優希「なにおー? そもそも私が先に焼却炉についたんだから、先にゴミ捨てる権利があるのが筋だじぇ!」

「何言ってますの!? 私が捨てようとしていた所を、あなたが割り込んで来たんじゃありませんの!」

まこ「また下らんケンカしとる。こいつりゃあ本当に……」

「それに! 私はいつも一番! 先制していたなら素直に負けを認めましょう。ですが! そうでないならば!」

龍門渕透華「この龍門渕透華が許しませんわ!」

久「はいはい、争いは部活後にでもとっといて。透華、この阿知賀の大将って、前に言ってたあなたの従姉妹よね? 腕とか癖とか、なんでもいいから教えて頂戴」

透華「ええ、構いませんわ」ジー

透華「………………」グスッ

優希「!?」

咲「あわ、あわわ……」

和「ええとえっと、あ、その、透華さん、よく分かりませんがハンカチどうぞ」

透華「ありがとう和。ちょっと感極まってしまっただけですから、気になさらなくて結構ですわ」

和「感極まって?」

透華「ええ。あの衣が……追放同然に他校へ進学させられた衣が、今はあんなに楽しそうに……」

咲「何か、深い事情があるんですね……」

透華「……、聞きたいんですの?」

咲「い、いえ! そんなつもりで言ったんじゃ……」

透華「仕方ありませんわね! この私が! 特別に! 事情を説明して差し上げますわ!」

久(あ、喋りたかったのね)

優希(いつものおしゃべりだじぇ)

透華「とはいえ、まあ楽しい話ではありませんわ。なにしろ龍門渕の醜聞ですから。理由は簡単、衣の才能に怯えた愚か者が、私が知らないうちに、県外の別の学校へ送ってしまったんですの」

透華「私の力が及ぶ限りで捜索しても、ついぞ見つけられなかったのですが……。こうしてようやく、あの子の元気な姿と……なにより、本当の笑顔を見れたんですの」

まこ「あんたが気にしとる様子がないから聞くが、あの何でもできる執事には捜索を頼まんかったのか?」

透華「ハギヨシであれば探し出せたでしょう。ですが、その時責を負うのは私ではなくハギヨシです。ですから、ぜったに探してはいけないと厳命しましたの」

透華「それで、実家に反発し龍門渕への入学を蹴り、清澄へ入学し今へ至る。これが私の今までですわ!」

久「別にそこまで正直に言うことなかったのに」

透華「そうですわね。ですが衣が見つかった以上、龍門渕家の身勝手な確執と私の幼稚な癇癪……これを隠すようにしてインターハイへは行きたく無かったんですの」

優希「へっ、ほんとうるさいほど馬鹿正直な奴だじぇ」

透華「ふん、あなたにだけは言われたくありませんわ」

和(相変わらず、仲が良いのか悪いのか)

久「それで、話を戻すけど。この天江衣っていう子、麻雀はどんな感じなの?」

透華「一言で言えば、天才にして鬼才。ひいき目を抜きにしても、宮永照に匹敵する才能を持っていますわ」

咲(そんなに……天江さんが……お姉ちゃんほどの……)

透華「断言しましょう。阿知賀で最強なのは、天江衣です」

久「そんな選手が、超人的なプロに指導されてる、か」

まこ「まったく、本当に困難ばかりじゃのう」

久「そうね。でもそれでいいのよ。困難のない道なんて、進んだって面白くもなんともないし……」

久「なにより私は、この世で一番困難の中で待ち続けた女だもの」

和「部長、格好つけすぎです」

久「あ、やっぱり?」ヘヘ

まこ「むしろ寒かったわ」

咲「あの、こっちで二人が」

透華「ぐぬぬ、私を差し置いて格好つけるなどと……!」

優希「どうすれば一番格好良くなるんだじぇ……!」

久「そいつらはほっときなさい。いつものように」

久(ま、時間はまだまだあるわ。合同合宿も控えてるし。本戦までには、絶対に丸裸にしてあるんだから。見てらっしゃい)

今日はここまで。次回も引き続き「あの人は今」です

以下余談です。初期案では由暉子ではなく淡を入れようと思っていました。しかし調べてみると、淡は156センチ
モモちゃんより愛宕ネキより塞さんよりすこやんよりのよりんより大きい事実を知りました。マジか

清澄は誰が補欠になるんだ

おつ
さっき拾ってきたこれを

予想以上に咲キャラが小人で困惑してる

乙~
宮守が松実姉妹か~シロクロコンビが実現だね


とーかまで龍門渕を出奔してるとは思わなかった

>>214
姉妹は2人分枠が空いたから揃って龍門渕と見た

あの三人は麻雀部に入るきっかけすら失ってしまったのか

龍門渕に行って全国にいけない子は姉か妹どっちだろうか・・・

宮守ェ…

乙です
県予選終わってるから、松実姉妹は龍門渕ではなく宮守じゃないかね

乙。
長野の県予選のラスボスはかじゅだったんだろうか。

姫松高校


「ぬおおおおおあああああぁぁぁぁァァァァァッッッッッ!!!」

漫「ひうぅっ! な、何や!?」

由子「気にしなくていいのよー。また恭子の、いつもの発作なのよー」

洋榎「恭子もここしばらく同じことばっかやっとるやん。ほんま飽きんなあ」

「お前のせいかあああぁぁぁ! 言うてみろやああああぁぁぁぁ!」

「さ、逆恨みですよぅ! うわあああぁぁん、おねーちゃーん!」

絹恵「よろしくお願いしまーす。また悲鳴あがっとるやん。飽きんなあ」

由子「姉妹で同じ事言ってるのよー」

郁乃「あ~、また末原ちゃん絶叫してる~。誰か止めてあげへんの~?」

洋榎「いややで、ああなった恭子はえらい面倒くさいんや。溜飲下がるまでほっとくに限るわ」

漫「私が行くととばっちり受けますし。残念やけど、犠牲者は一人でええと思います」

郁乃「どっちでもええけど~。部活にさしかかっちゃうんは困るわ~」

絹恵「それなら大丈夫でしょ。いつも通りなら」

バタン!

絹恵「ほら、終わりましたよ」

恭子「くっそほんま許さへん。阿知賀許さへん……」ブツブツ

玄「ううぅ……阿知賀出身ってだけで怒られても困りますよぅ……」

由子「おつとめごくろうさまなのよー」

玄「ゆうこせんぱーい、助けてくださいよーう……」

由子「玄が頑張ってくれてとってもたすかってるのよー」

玄「絹ちゃーん! 漫ちゃーん!」

漫「玄ちゃんが声を掛けてきました。どうしますか? 見守る、手を振る、麻雀する、末原先輩に任せる」

絹恵「どれも捨てがたいなあ」

玄「わあああーーーん!」ピー

洋榎「よーしよし、お姉ちゃんが慰めたるでー」

玄「洋榎おねーちゃーん!」ナデナデ

洋榎「まあ慰めるだけで助けたりはせんけどな」

玄「このお姉ちゃん意地悪だー!」ピー

漫「しっかし、こんなに弄られてる人初めて見たわ」

由子「そうやねー。漫ちゃん以外には初めてなのよー」

漫「え!?」

絹恵「先輩、私一つ分からない事があるんですけど」

恭子「何やー」

絹恵「末原先輩が三尋木プロに憧れとって、その直接指導を受けとる阿知賀に許すまじ、ってなってる所までは分かるんですけど……」

絹恵「そもそもなんで三尋木プロの指導が欲しいんです? こう言っちゃあれですけど、先輩の打ち筋はあの不気味な打牌とは似ても似つかないようみ見えるし」

恭子「まあ憧れと、それと取り入れて意味あるかってのは別問題やしな。実際私もあの打ち筋自体はどうでもいい」

漫(どうでもいい言ったわ)

恭子「私が欲しいんは、三尋木プロの『対オカルト能力』や。この中で誰か、三尋木プロが海外で何て呼ばれているか知ってる人おる?」

洋榎「あー、そう言えば知らんなあ。でもニュースでも大体火力押しやし、そういうのとちゃうん?」

由子「私はぐねぐね系だと思うのよー」

玄(ぐねぐね系って何だろう……?)

郁乃「私は知っとる~。ギフトブレイカーやオカルトハンターやろ~?」

洋榎「なんや、そんなけったいな名前ついとるん?」

恭子「ネーミングセンスはどうでもええんです。問題は、能力持ちと戦わせたら右に出る者がいないって事なんですよ」

由子「それってどんな能力でも必ず弱点を見つけるとか?」

恭子「そんなレベルちゃうな。能力自体の性能をがんがん落としていって、下手するとほぼ発動できなくなる。これを技術で再現しとるんや」

絹恵「凄さがいまいち分からんですわ」

漫「そんなにとんでもない事なん?」

恭子「漫ちゃん絹ちゃん、玄ちゃんと対局してドラ引けるようになってや」

玄「ぴぃ!」

漫「あ、それは無理です。絶対無理です」

絹恵「なるほど、これは凄いですね」

洋榎「でも似たような事やったら恭子もやっとるやん」

恭子「そりゃあ私やって研究してますし……なにより姫松待望の、強能力者である玄が来てくれましたから。試せる事多くて精度は上がってます。でも、打破には至らへん」

由子「だから直接指導してもらいたかったんやね。でもあんまり意味ないと思うのよー」

漫「え、なんでです?」

由子「漫ちゃん、洋榎に麻雀指導して貰って」

漫「そんな! あんな擬音ばっかりで訳分からんの無理ですやん!」

洋榎「おう……おもろい事言うなぁ……」

漫「あわわ……」

玄「でも三尋木プロの指導って、そこまで悪くないんじゃないですか?」

絹恵「まがりなりにも、阿知賀を地区予選優勝まで導いとるしね」

玄「ネットでもすごいもんね! 三尋木プロのスレ覗くと突っ込みで一杯だよ。「分かってるんだろ、言えよ」って」

絹恵「あれはめっちゃおもろかったな」

郁乃「末原ちゃんには前から言うてるやん~。三尋木流デジタル覚えたら~、何か変わるんちゃう~? って」

恭子「嫌です。あんなんデジタルちゃう。ミヒロギシステムや」

絹恵「気持ちはすごく分かりますけど……」

恭子「せやろ!? 前提からしておかしいのに、さらに能力崩しの為の打牌、重要な所は腕力で必要牌を引いて下さいとかどこがデジタルやねん!」

絹恵「ファンの割にはぼろくそ言うんですね」

恭子「それとこれとは話が別や! あんなんデジタルって認めたら頭が崩壊するわ!」

郁乃「あ~。末原ちゃんまた興奮しだしてもうた~」

漫「末原先輩はもうほっときましょ。所で、玄ちゃん」

玄「え? なーに?」

漫「いつまで主将にひっついてるん?」

玄「もうちょっと、もうちょっとだけ」

洋榎「こいつたまに甘えてくるよな」

絹恵「そう言えば玄ちゃん、お姉ちゃんいるんやったっけ」

玄「うん。お姉ちゃん冷え性で、湯治ついでに岩手に進学したんだ。だから今は全然会えないの」

洋榎「湯治で3年も岩手とは、またスケールがでっかいなあ」

玄「そしたらお父さんが「いい機会だからお前も家を出て3年やってみろ。外で好きなことをやりたいだけやってこい」って」

絹恵「ええおとんや……」

洋榎「それに比べてうちのおかんと来たら……」

由子「なんでー? 雅枝さんいい人なのよー」

洋榎「なに言うてんねん!? この前なんて唐揚げ最後の一個、勝手に食ったんやで!」

絹恵「ああいう思いやりとかない、人のことを考える事ができんヤツはダメや!」

郁乃(器ちっちゃいなぁ~)

恭子「まあ、無い物ねだりしてもしゃーない。私らにできる事をやろか」

由子「あ、やっと復活したのよー」

恭子「とりあえず、私らに足りんのは能力者との対戦経験! これが一番や」

郁乃「能力者の部員だけは水物やから、これはどうにもならんもんね~」

洋榎「永水と白糸台は基本化け物集団、新道寺と千里山も今年は少なめやけど、基本2・3人はおるからなあ」

漫「そう言えば、名門と言われる所には能力者が集まらない傾向がありますね」

絹恵「逆に無名が台頭してくる場合は、ほぼ確実に強能力者の存在があります。玄ちゃんもどっか無名におったら、全国まで引っ張ってきたんとちゃう?」

玄「そ、そうかな? えへへ……」

由子「まあ、それも全国出場までなのよー」

恭子「対策しやすい能力やからな。というか、ちょっと引きがええだけで対策する必要すらなくなる」

郁乃「そう言えば洋榎ちゃん、玄ちゃんと初対戦でぼこぼこにしとったな~」

玄「う……うえぇん!」ピー

洋榎「嘆くな嘆くな。そこらの三流ならともかく、うちは超一流やで? 玄が悪かったんやない、うちが強すぎたんや」ドヤァ

恭子「玄との戦いに慣れるって事は、そのまま全国の魔物に備えるって事にもなる。せやからまずそれが一つ」

漫「もう一つは?」

恭子「……お前と玄、しょっちゅう運任せに牌切るよなあ?」

玄「ひぃ!」

漫「ひゃい!」

恭子「それは読めるやろ! 避けられるやろ! なんて部分、ぱかぱか振るよなあ!」

玄「ああああああのあの……」

漫「しゃ、しゃーないんです! 馬鹿なんでしゃーないんです!」

恭子「お勉強のしなおしや」

玄・漫「うわーん……」ズルズル

洋榎「あっちは恭子に任せて、こっちはこっちでできる事やろか」

郁乃「玄ちゃんがおるから~、火力に期待が持てるようになったしな~」

由子「でも、後輩に任せっきりというのもかっこうわるいのよー」

絹恵「私もこのまんまやと、来年二番手三番手、新入生によってはもっと下がる。とりあえず、玄ちゃんより上と自信持って言えるくらい、強くならんとな」

くろちゃーかわいい

岩手・温泉


宥「あったかーい♪」

豊音「あったかいよー♪」

トシ「あったかいねえ……」

エイスリン「キモチイイ!」

白望「ああ、ダルさがが取れる……」

塞「温泉に入ってばっかりでいいのかしら? ああでも……気持ちいいわ……」

本日はこれまで。大阪勢は書きやすくて困る。「あの人は今」はこれで終わりです
あと、申し訳ないのですが、私用で二日間、水曜日まで投稿できなくなりました。申し訳ありません
以下、キャラクターまとめ

・高鴨穏乃
本作の主人公。だいたい原作基準……のはず
ボケに空気破壊に八面六臂の大活躍。でもたまに地雷を踏む。弄っていい人を嗅覚でかぎ分ける
サクセスストーリーの主役として、マスコミに大変有り難がれている。咏と熱い絆がある設定で

・三尋木咏
ただの監督……のはずがキャラが便利すぎてどんどん前に出てきた人
この作品では無能力者。気さくで後先考えない性格なためか友人多し。恒子とはすこやん弄り友
最近「分かってるんだろ、言えよ」と言われてる。本人はおいしいと思っており、友人むけのネタにしてる

・真屋由暉子
本作では親の転勤で奈良に来たという設定
大変真面目で誰にでもですます調。だいたい穏乃と一緒にいる
一番真っ直ぐ歌の麻雀を会得しようとしている。スタイルは完全に「防御型咏」

・天江衣
本作では龍門渕から「遠く麻雀部のない学校」に追い出された
そんな経緯なため、一年目はかなり荒れていた。さらに難解な言葉もあって友人できずマジヘコみ
実は穏乃に声を掛けられて一番喜んだ。そのため性格もちょっと丸くなり、あまり暴言吐かない

・鹿倉胡桃
本作では親の転勤で奈良に来た。麻雀部を発足しようとしたが上手くいかず
突っ込み気質のお姉さんで、阿知賀のまとめ役。実は部長
最近咏の事を「この人本当に大人なのか」と疑ってる。でも麻雀だけは疑わない

・薄墨初美
本作で唯一転校した人。奈良に修行という設定
面倒はだいたい胡桃に押しつける。怒られた上での追いかけっこが楽しみ
実は去年のインターハイにも出てて、それなりに目立ってた。でも誰にも気付かれない

はっちゃん...

・新子憧
本作では神道の勉強という事で永水に進学
マジギレの影響で、ガキ大将的立場に収まり、小蒔になつかれる。ただし超人麻雀な永水にメゲたりも
晩成を受験するつもりだったため頭がいい。小蒔と春に勉強教えてる

・赤土晴絵
本作では会社の業績悪化が早くクビになったかわいそうな人
ヘコみながら帰郷してると灼にマジ説教され、なあなあの内に弟子入りされた
トシさんのお世話になりつつ有珠山の監督。最近麻雀監督業もいいなと思ってる

・鷺森灼
本作では(晴絵にひっついていく形で)有珠山に進学した
グダグダしてるハルちゃんのケツをひっぱたく形で動かした。晴絵がプロなのはだいたいこの人のおかげ
有珠山の仲間に注意しながらも最後は一緒に馬鹿やって晴絵に怒られる

・龍門渕透華
本作では龍門渕にマジギレして清澄に進学した
衣の現状を手遅れになってから知って、身内への失望と自分の無力に嘆いて荒れていた
久とまこのケアで元に戻る。そのため二人を本気で尊敬し、かつ信頼している。優希とはケンカ友達

・松実玄
本作では姫松に進学した。実は姫松への進学は麻雀に未練のある娘への、お父さんの配慮
姫松に足りなかった火力と強能力と言うことで、一年から重宝される。漫と一緒にしごかれる
持ち前の人の良さで、何かあると大抵誰かが助けてくれる

・松実宥
湯治のため宮守に進学。二年間三麻と長湯でまったりしてた
顧問と新入部員二人が来てインターハイへ動き出す。湯治のおかげで体質もちょっとよくなった
みんながあったか~くて毎日幸せ。玄とインターハイで会おうねと約束してる

乙~
宮守にツッコミがいないww

同輩のおもちなら気軽に揉めるねやったねクロチャー

乙です

……もしかして原作阿知賀メンバーって全員副将?

塞さんにはツッコミ難しい?

憧ちゃんの神降ろしに対するマジギレの啖呵切りとかかっこいいね
神代分家の六女仙のみんなじゃ立場上できないことだし

姫松は誰が抜けるか不明(絹恵の可能性が高いが)だが、そのまま収まったとしたら、宥だけ次鋒だわな

>>247
姫松に基本大爆発の玄が入ったなら稀に起こす大爆発を期待された漫が外されそう。
後宮守で胡桃は中堅でしたよ。

姫様年下に勉強教わってんのか。それとも永水ってそれほど頭良くない学校なのか。

あとここの阿知賀、咏さんのために病室と医師団が控室の隣に用意されているんじゃないかって心配だな

咏「胡桃、全員そろってる?」

胡桃「ちゃんと揃ってますよ!」

穏乃「うおおおおお! 合宿だあああーーー! 打つぞーーー!」

咏「叫ぶのは構わんけどご近所迷惑にならん程度にしなきゃダメだねぃ」

衣「わーい、衣は合宿なるものは初めてだ♪」

由暉子「私もです。なんか、ちょっと恰好いいです」

初美(なんで?)

胡桃「でも、なんでいきなり合宿しようって事になったんですか?」

咏「んーとねえ、理由は三つかな。一つは、君らが活躍したおかげで、松実館の親父さんが場所を貸してくれるって言ったから。後でお礼言っておくよーに」

穏乃「玄さんのおじさんが?」

由暉子「玄さん?」

穏乃「あ、玄さんって言うのは、一こ上の幼なじみなんだ。最近知ったんだけど、大阪の方に進学したみたい」

咏「あったかい近所づきあいだねぃ。大切にしなきゃいかんよ」

穏乃「はーい」

胡桃「それで、二つ目は何なんです?」

咏「そうそう。マスコミ攻撃も落ち着いたから、そろそろ最後の追い上げをしたいと思ってねぃ。場所が変わると見えなかったものが見えてくるからねー。わかんねーけど」

初美「どっちにしたって、部室じゃ部活できませんからー」

衣「雀卓が壊れてしまったのだ……」ショボン

咏「それ三つ目だねぃ。壊れた雀卓は一台だけど、この際全部点検しようって数日仕事になっちゃったし、こればっかはどうにもならんねー」

咏「合宿ついでに二人ほど来て貰えたし。これであぶれる人がいなくなったねぃ」

胡桃「二人?」

咏「おおう、何か不満げ?」

胡桃「ああいや、文句があるって訳じゃないです。ただ、咏さんならもっと人数呼べるんじゃないかと思って」

咏「やれやれ、君は私を買いかぶりすぎだねぃ。しかも直前ラッシュを舐めてる」

穏乃「直前ラッシュ? って何ですか?」

初美「インターハイ直前は、どの高校もコネを総動員してプロを招くですよー。インターハイに限らず、この手のプロがかき集められる現象全てを直前ラッシュと呼ばれてますー」

衣「でも、参加校はたった52校だろう? どんなに集めても、プロがいなくなる程ではないと思う」

咏「その通り。ただし……インターハイの後にあるものなーんだ?」

由暉子「あ……日本リーグ本戦があります。そちらでも直前ラッシュが発生してるんですね?」

咏「加えて、いくら私がタイトル取ったって言っても、所詮は若造なんだよねぃ。コネなんて思ってるほどないのさ。正確に言うと、パイが少ない上に被っちゃっうん、だこれが」ポリポリ

由暉子「この時期にあいてる有名な人は、有名な所に行っちゃうんですね」

初美「新道寺とか凄いですよー。毎年この時期になると、二桁のプロが来ますからねー」

咏「ま、それでもプロを全く呼べないって事はないんよ。ただし、この時期いきなり呼んで来てくれる人って言うと……看板プロしかいないしねぇ……」

穏乃「評論やら講演会やらを収入源にしてるプロ、でしたよね。正直、あまり評判いい人いませんよね」

咏「まね。ああいう人は麻雀打ってプロ名乗ってる訳じゃないし。そんな人は、いい加減な事教えて「ワシが育てた」をやるために来るんだよね。もし負けたら「才能のないあいつが悪い」なんて言うよ」

衣「ゴミプロならいらぬぞ!」

胡桃「口が悪いなあぁ……でも気持ちはよく分かる」

咏「そうなると、私に呼べるプロは「インハイに向けて偵察がてら」の人か「よっぽどの暇人」しかいないわけで。とりあえずそいつら一名ずづ呼んだんだよねぃ」

「あの……」

咏「お、もう来てたんだ」

「一緒に来たじゃない!? 紹介するから後ろで待っててって言ってたじゃない! 私が暇人みたいに言うのやめてよ!」

咏「でも暇人だよねぃ。私の呼びかけに答えてくれるくらいなんだから」

「うううぅぅ…………」

すこやんか...圧倒的な暇人だろうな

小鍛治健夜「そりゃ時間に余裕はあったよ。でも暇人な訳じゃないんだもん……」

由暉子「え…………?」

胡桃「うそ……」

穏乃「小鍛治…………プロ……?」

咏「だよねー。向こう一週間ふくすこ以外何も用事がないけど暇人じゃないよねー」

健夜「う、うううぅ……」

咏「ちなみにすこやんのお母さんに相談したとき「もっどんどん連れてってちょうだい! あの子ったら昼まで寝てるのよ!」って言われちゃったねぃ」

健夜「うわぁん!」ピー

由暉子「えー…………」

胡桃「え、嘘? 実は同姓同名の別人プロとか?」

穏乃「…………、小鍛治プロ?」

健夜(あぁ…………ありありと見える……。私への信頼が最底辺まで落ちてるのが……)

「三尋木プロ、小鍛治プロをからかうのはそれくらいにしといてくれ。なんだ、その……大人としてのプライドが砕けそうになってる」

咏「お、来たねー暇人二号」

「誰が暇人だ。私はちゃんと仕事もかねて来てるんだよ」

藤田靖子「コクマに向けて可能な限りいろんな選手を見なきゃならんからな」

咏「おおう、熱心だねぃ。それなのにこんな所で一週間もいいのかい?」

靖子「構わないさ。長野はもう見てきたからな。奈良で注目するにしても、小走やえ以外は阿知賀に手も足も出ない奴ばかりだからな。なら、ここをしっかり見られればいい」

咏「そりゃ心強いねー。このままだと、ちょーっと優勝見えてこなかったし」フリフリ

靖子「ところで」

咏「んー?」

靖子「あれほっといていいのか?」

由暉子「あまりお母様に心配かけてはダメですよ」

胡桃「大人なんだから朝くらいちゃんと起きなきゃ!」

穏乃「大丈夫ですよ! ちょっとした恩返しとか、そういうのでお母さんは喜んでくれるものですから! これから孝行していけばいいんです!」

健夜「やめてよぅ、やめてよぅ……分かってるの、全部わかってるから優しくしないでよぅ……」

咏「面白いからもうちょっとほっとこうぜぃ」ニヤニヤ

靖子(本当にこの人は……)

衣「なーなー」

靖子「ん? 何だ?」

衣「お前は本当にプロなのか? ウタやスコヤは見たことあるけど、お前の顔は見たことない……」ジトー

初美「咏さんが呼んだんだから変な人ではない、とは思いたいですけどー……」ジトー

靖子「……はー…………」アタマカカエ

靖子「三尋木プロが指導なんてどんなものかと思ったが。ほんっとーに、教え子といい……いかにもだよ、全く」

咏「さすがっしょ?」

靖子「誉めてない」

松実館・雀卓のある部屋


健夜(ああ、年上としての威厳が……。お母さんの言うとおり、もっとちゃんとした恰好してくればよかったよ)ショボン

衣「なあ、スコヤ」

健夜「え、あ、うん? なあに?」

衣「なんでスコヤはそんなにしょぼくれているんだ?」

健夜「しょぼ!? 違うの、いつもはこんなんじゃないの……」ショボボ

衣「? よく分からぬが、麻雀を打てば嫌なことは忘れると思うぞ!」ボスン

健夜「わっ!」キャッチ

健夜(しょぼくれてるってそういう意味か。よかった、こんな子供にまでなんか駄目な人だと思われてるのかと……)

健夜(っていうかちっちゃいし可愛いなあ。思っていたよりも全然小さいよ)

衣「むぎゅ。スコヤ、あんまり抱きつくと苦しいぞ」キャッキャッ

健夜(思ってみれば、阿知賀の中じゃ一番大きい咏ちゃんでも私より頭一つ小さいんだよね。咏ちゃんが基準だと、漠然と小さいなあ、くらいにしか思わなかったけど……)

健夜(この子かわいーなあ。いいなあ)

衣「むふー」

靖子「そこのお二人さん、いちゃつくんなら後にしてくれ。というか私に可愛がらせろ」

健夜「あわわ、ごめんなさい!」

衣「お前は何かやだ。邪念がする」

靖子「んなもんはない。純粋に子供を猫っかわいがりしたいだけだ」

衣「衣は子供じゃない! あとそれは邪念だ!」

靖子「一番ちっちゃいのは小鍛治プロに取られてしまったか……。じゃあ誰を猫っかわいがりしてやろうか、なあ?」

穏乃・初美・胡桃「」ビクッ

靖子「お前か? それともお前にしようか?」

穏乃・初美・胡桃「きしゃー!」

由暉子「みなさん楽しそうです」

咏「なによりだが、そろそろ本当に初めていいかい? うちらって実は、わりと切羽詰まってるんだよねぃ」

A卓


衣「わーい! スコヤと同じ卓だー!」

初美「最初から全開でいくですよー」

胡桃「あの小鍛治プロと打てるなんて光栄です! よろしくお願いします!」キラキラ

健夜「う、うんよろしく。で、でも私なんて本当に大した事ないからね? その……あんまり尊敬されても困るからね?」

胡桃「そんなことないです! あのリオデジャネイロでの勇姿は今でも……」

健夜(あああぁぁぁ……純粋さが痛い……。慕ってくれるのはありがたいけど、こういうのって苦手なんだよなあ)

胡桃「朝の事は忘れます!」

健夜「それは本気で忘れて……」


衣(なんだ、これは……?)パチ

初美(凄くないけど凄い? 妙な感覚ですー)パチ

胡桃(咏さんみたいに、良く分かんないけどとにかく強い、じゃない。やってる事は、一応全部理解できる。その上で、どうしようもない)パチ

健夜(悩んでるなあ。咏ちゃんに言われた通り打ってるけど、これでいいのかな?)パチ

衣(このままでは埒が明かぬ、か。致し方なし)

衣「ふっ――!」

初美(! 支配が弱まったですか。いえ……)

胡桃(私たちにも向けてた支配を、全部小鍛治プロに向けた!)

健夜(うわ、すごい威圧感だよ。怖いなあ)パチ

衣(まだ日は落ちきらずとも、これであれば)

健夜「ツモ」

衣「!?」

胡桃(うそ!? 破った?)

初美(逆支配の一点集中なんてされたら、門を開いた私でも破る自信ないですよー?)

健夜「ええと、私が一位で終わったんだけど……。その、次局もやるんだよね?」

衣「当然だ!」

健夜(あんまりうまくやり過ぎると、折れちゃうかもって心配してたけど……。さすがは咏ちゃんの教え子って事なのかな)ホッ

衣(次こそ勝つ! にしても、今の局から力を解析せねば呉呉か)

胡桃(小鍛治プロの打ち方は、咏さんみたいに意味不明な独自理論を突っ走ってるものじゃない。多分麻雀の指南書を買えば、どこかに必ず載ってるような打ち方)

初美(能力の強度は大した事ないですねー。衣ちゃん、穏乃ちゃん、それに私の方が圧倒的に強いですよー。でも、破れない)

衣(スコヤの気質は『空』。何者にも触れられず、ただ雄大豪壮。そしておそらく、一度触れれば空を覆い地を割る益荒神と化す。が、今の衣には、触れることもままならぬか)

胡桃(咏さんみたいにオカルトの根幹をゆらして打ちのめすんじゃなく、気付かれないうちにするりと抜けてるんだ。やり方が上手すぎて、同卓しなかったら気付かなかっただろうね)

初美(なるほど、こんな対処法があるですねー。凄く勉強になりました。でも……)チラリ

初美(これを勉強するつもりなら、胡桃ちゃんより能力が強い穏乃ちゃんを混ぜるべきだったと思うんですけどねー? つまり、それだけの何かが、あっちのプロにあるって事でしょうかー)

B卓


靖子(さて、これだけ分かりやすく演出してやったんだ。分かってるんだろうな)

穏乃(咏さん、由暉子、靖子さん、私の順番。オーラスでトップラス差は約一万点……三位との差は700点か)

穏乃(局数も咏さんが小手で連荘したから、20局以上は進んでる。能力もがっつり入った! うん、じゅーぶん逆転範囲! 気合い百パーセント!)

靖子(ほう、びりっと来るな。いい打ち手だ。流石は三尋木プロが「逆転の切り札」と称するだけはある。何も分かってなさそうな所が玉に瑕だが。しかし……)

由暉子「」パチ

靖子(こっちの積極性のなさは何なんだ? 私と三尋木プロの意図を知るや否や、いきなりお利口な打牌しかしなくなった。普通はもっと、思い通りになるかと奮起する場面だろう)

靖子(高鴨が得意場面でどれほどの働きをするか見るためにやったが……案外根が深いのは真屋の方かもな)

靖子(序盤でこっちの意図に気がつく洞察力があるだけに惜しい。闘争心を出せるようになれば、大化けしそうなんだがな)

穏乃「っ! きた! リーチ!」

靖子(早いな。逆転には最低でも自摸り満貫が必要だ。それを必要な時に四巡で作れる、いい選手だ。が)

靖子「悪いな。このシチュエーションで負けたら、私も商売あがったりなんだよ。ロン」

穏乃「へあ!?」

靖子「タンピン一盃口三色ドラドラ。跳ねて逆転だ」

穏乃「浮き牌を狙い撃ちされた……?」

靖子「終盤の気合いはいい。お前に、牌もよく答えてくれてる。が、なにしろ上しか見えてない」

靖子「あそこで放銃を回避できるかどうかは運だったが……ダマだったとはいえ、聴牌気配に気付いてすらなかったのは減点だな。普段のお前なら気付いてた」

穏乃「っ~~~~~~~!!」

靖子(言い過ぎたか? でもこれを言わなかったら、私がここにくる意味もないしなあ)

穏乃「すっごーい! めちゃくちゃ強い!」

靖子「お、おう……」ビクッ

穏乃「あんな風にもなるんですね! うおおお! もっと打ちたい! 藤田さんの麻雀を見たい! お願いします!」

靖子「分かった、分かったから落ち着け、な?」

穏乃「っしゃー! 燃えてきたー!」

靖子(こいつが私と同じタイプ、と言われるのはなんか納得いかんが……。ま、確かに、面白いプレイヤーではあるか)


咏(う~ん、こりゃ本当にどーしたもんかねぃ)

穏乃「由暉子! 今の私の打牌どうだった!?」

由暉子「そうですね、萬子の三面待ちまで読んだ所はいいと思いますが、普段であれば読みを寄せきれず、六枚まで広げていたと思います」

穏乃「ああ、やっぱりそこで意識が前に出すぎてたのかー」

由暉子「はい。手役はもちろん、恐らく読みを広げない事まで読んでいたでしょう。引いてなければ、確実に三巡以内に振るだろうと……ですよね?」

靖子「ああうん、そうなんだが……。なんでお前そこまで分かるんだ? ちょっと怖いぞ」

由暉子「こ……! わい、ですか……」ズゥン

靖子「悪かった悪かった訂正する。別に悪い意味じゃ言ってない。だからへこむな」

由暉子「はい……」

咏(今の半荘は普通に打ってた。由暉子が遠慮する理由なんてなかったんだけど……それでもこう、一歩引いちゃってるねぃ)

咏(私以外のプロの麻雀に触れれば何か変わるかと思ったんだけど、さすがにそこまで甘くないか。こういう時、穏乃や衣みたいな単純な奴ばっかりだと、操縦が簡単でいいんだけどねー)

穏乃「よーし、もう一局!」

靖子「まあ待て。私が仕事で来てるんだと言っただろ? お前とばかり打ってはられないんだ。あっちはあれだぞ、グランドマスターだ。多分、現役最強の女子プロ。やってみたくはないか?」

穏乃「そーだったぁ! 忘れてた! 由暉子、あっち行こう!」

由暉子「はい、行きま……あ、あまり引っ張らないで欲しいです」

ドタドタ……

靖子「ふぃー……」イップク

ゆきちゃん...

靖子「まったく、元気の有り余った奴らだ」

咏「私らが置いて来ちゃった若さ故の勢いに満ちあふれてるねぃ」ケタケタ

靖子(似たようななりして何言ってんだか……)

咏「今お前が言うなって思ったっしょ」

靖子「!?」ギョッ

靖子「あんた心まで読めるのか……いよいよ妖怪じみてきたな」

咏「あっはっはっ、んなわけないっしょー。私がこう言うと、みーんな同じ事考えるってだけなんよー」フリフリ

咏「そーやって思い切り動揺してくれると、カマをかけてみた甲斐があるってもんだよねぃ」ニヤニヤ

靖子「ほんとに三尋木プロはこう……つまらない事にばかり本気だな……」

咏「お、知らんかったんかい? それが私の、強さの秘訣なんだよ」

靖子「あなたにそう言われちゃ誰も否定できないでしょうよ」

衣「ウター! 衣は今度こっちで打つぞー♪」

胡桃「初美も半荘2回したらこっちに来るって!」

咏「そうかいそうかい。じゃ、やろか」

靖子(またひときわちっちゃいのばかり来たな……。かわいいなあ……)

松実館・客室大人部屋・夜


靖子「それじゃ、本日もお疲れ様ー」

咏・健夜「お疲れ様ー」ゴロゴロ

靖子(この人たち、本当に大人だよな?)

咏「いやー、ほんと悪かったねぃ。いきなり来て貰っちゃって」

靖子「私は朝も言ったとおり、半分仕事で来てるからな。こちらにとっても都合が良かったよ」

健夜「えっと、私も別に……。ただね、あのね、子供達に私が暇人だとか、お母さんの言葉をばらすとか、そういうのは……」

咏「ちなみにそれはすこやんのお母さん発案なんだよねー。「あの子も少しは危機感を持てるようにして!」との事であります」

健夜「う、うわぁん……」

靖子(ほんとこの人ら、麻雀以外は駄目な大人だよなあ)

咏「私もからかいすぎたけど、あんまり気にしなくていんじゃね? 知らんけど。すこやんは感覚がちょっと若すぎるだけだと思うんだよねぃ。多分十代くらいな感じ?」

健夜「え? そ、そうかなぁ? えへへ……」

咏(悪い意味でだけどねぃ)

靖子(これ絶対誉めてないな)

咏「で、本題に入るんだけど、うちの子見ててどうだった?」

健夜「うーん、才能で言えば衣ちゃんが突出してるね。正直、よく今まで埋もれてたと思ったよ」

靖子「不作の年であれば、才能だけでチャンプになれる器でしたね。そういう意味では、生まれてきた時期が悪い。現段階では、どう足掻いても宮永照に勝てない」

咏「これでも地力を付けさせて、能力に頼らない麻雀をできるようにしたし、能力自体もそこそこ堅固にしたんよ?」

靖子「それは同卓していれば分かる。が、如何せん時間が足りないな」

健夜「一番不味いのは、今まで圧倒的強者の立場以外に立ったことがない点だと思う……。傷を浅く済ませる、上手い負け方とかそういうのを全く分かってないよ」

健夜「経験不足って意味だと、むしろこっちが深刻かな。私たちで徹底的に叩いて覚えさせるにしても、やっぱり時間が……」

咏「だよねぃ。同じタイプにはめっぽう強いし、打ちのめされても回復が早いんだけど。問題は……」

靖子「姫松の末原、千里山の船久保……。前者には一歩劣るが、清澄の染谷や宮守の臼沢もだが。こういったタイプにはめっぽう弱いだろうな。団体戦で当たる可能性があるのは末原だけなのが救いか」

健夜「副将の穏乃ちゃんだけど、この子は高校生らしいと言うか、らしからぬと言うか、とにかく粘り強いよね。まるで靖子ちゃんみたい」

靖子「小鍛治プロまで言いますか……。私は断固として認めませんが」

健夜「ミスは多いし裏目って混乱する事もちょくちょくあるんだけど、なんでだろう、あんまり心配にならないよね」

咏「正直言うと、穏乃、初美、胡桃については、私はあんまり心配してないんだよねぃ」

健夜「え、そうなの?」

靖子「分かるな。あいつらはメンタルが強い。しかも、強くて安定してる。精神の強さは多少の失敗を補って有り余る」

咏「ついでに言うと、胡桃は打ち筋も安定してるからねー。部長としての責任もあってか、中々貫禄出てきてるよ」

健夜「あ、それは分かるかも。胡桃ちゃんは卓に付くと、とたんにどっしり構えるよね。能力が強すぎないのも、多分プラスに働いてるよ」

靖子「強能力者の面子が、能力に振り回されてるだけにな。まあ、それはどこも同じだが。むしろ、高校生の癖に能力も自分も完全に統制してる宮永照がおかしい」

咏「団体戦になると、案外クレバーな麻雀打つんだこれが。胡桃と由暉子はほんと団体戦向けの打ち方してくれるねぃ」

靖子「真屋か……。あいつが一番分からんな。小鍛治プロは、何か気がつきました」

健夜「打ち方については、なんで咏ちゃんに教えて貰っといてこんな堅実な打ち方が身につくの? っていう感じかな。メンタルの方は……うーん……」

靖子「小鍛治プロでも分かりませんか」

健夜「全くって訳じゃないけど。ただ、本当に漠然とした印象で」

咏「わかんなくても教えて欲しいなー。何かヒントになるかも知れないし」

健夜「それじゃあ……。感情って言うか意思って言うか、それの殆どが外向きの方向に向いちゃってる? それで、内側が割とすかすかしてると言うか」

咏(やっべーこの人怖えー……。たった数局打っただけで、内面まで見抜いてくるか。ぴったり言い当ててるよ。麻雀してなきゃただの気の弱い姉ちゃんなのに)

靖子「心当たりが?」

咏「ある。めっちゃある。でも、これこそ一朝一夕にはいかないんだよねー……。何かきっかけがあればいいんだけど。こういう時、自分に先生は向いてないって思い知らされるよ……」ガリガリ

靖子「自分を追い込むな。所詮私たちは雀士だ。教師じゃない。そういうのは親か教師か……じゃなければ、あの子のチームメイトにでも期待するんだな」

健夜「協力できることがあればするんだけど……私って、あれ……機微とか一番苦手だし……」

咏「典型的な、エースだけど部長ではないタイプだもんねぃ」

健夜「うう、あまり言わないで……。これでも気にしてるんだから……」

靖子「そう考えると、実力上位二者を先鋒大将に置く一般的なオーダーと思わせて、実は案パイを中盤に固めてるのか」

咏「崩れた時が心配っちゃー心配だけど、真ん中で稼いどけば逃げ切る事くらいはできるかなー、ってねぃ」

健夜「はー……あの咏ちゃんが……。色々考えてるんだねー」

咏「今度すこやんのお母さんとこーこちゃんにある事無いこと吹き込んどくわ!」

健夜「本当にやめて!?」

靖子「メンタル面はおいそれと手を付けられないとして、技術面ではどう思います?」ムシ

健夜「そうだなあ。とりあえず衣ちゃんは、垂れ流しの能力を制御する方法教えた方がいいかも。こればっかりは、能力なしの咏ちゃんには教えられないし」

咏「悪いねー。ついでに能力が強すぎる穏乃も見てもらえると助かるんだけど」

健夜「あれ? 初美ちゃんは?」

咏「あの子のは、厳密に言うと能力じゃないんだよねぃ。神降ろしだかなんだかで……まあつまり、制御も発展も、それどころか調整すらもできないもん、らしいんよ」

靖子「なんでそんなやつが麻雀やってるんだ?」

咏「さあ? 巫女さんか、神様にでも聞かなきゃねぃ」

健夜「うううぅぅ……今は怖い力を持った子ばかりいるよ……」

靖子・咏「あんたはその代表だ」

健夜「酷い!?」

咏「弄られすこやんは置いといて、地力の伸びしろが大きそうなのは穏乃なんだよねぃ。どこを伸ばすか悩みでねー」

靖子「幸い五日あるんだ、様子を見ながらやるしかあるまい」

咏(………………)

咏(由暉子……君はまだ人のためにインターハイに行く気かい?)

咏(それで勝てない訳じゃない。でも、それじゃダメなんだよねぃ)

咏(もっと欲をだしていいのに。私が一番だ、私はチャンプより強い、そう自惚れられる程度には力があるのに)

咏(そして、自分のために、みんなと勝ちたい――そう思えなきゃダメなんだ。できれば……致命的な失敗をする前に、気付いて欲しいもんだねぃ)

本日はこれまで
今回から1レスの文章量を増やしたのですが見やすさは大丈夫でしょうか?できればご意見いただきたいです

>>249
ひ、姫様は夏休みの宿題を永水で唯一やってなかったから……

...ごめん、言われるまで増えたの気づかなかったwwww
おつですー

おつー
カツ丼さん年下のうたたんに敬語なのね
ランキングは非情ということか

同い年じゃね?

乙乙
読みやすいっスよ

松実館・生徒用大客室・朝


穏乃「………………、……」シパシパ

穏乃「……ここ……どこ……?」ウトウト

穏乃「…………わしつ……。あ……がっしゅくだ……」

穏乃「ゆーきー……おきてー……」ゴロン

由暉子「ぅ…………ぅ~~~…………」ウナサレ

穏乃「ゆーきこー……おはよー……」

由暉子「やめて……わたしたべても……おいしくないです…………はっ!」パチリ

由暉子「穏乃ちゃん、私の上から下りて下さい……重いです」

穏乃「おもく、ないよー……おもちのぶん…………ゆきこのほーがー……」ゴロン

由暉子「金縛りにあったまま、頭から食べられる夢を見ました……」

初美「それは難儀でしたねー」

由暉子「はい。とても怖かったです。……ところで、初美先輩は何をされているのですか?」

初美「見て分からない?」

由暉子「ええと……分かりません」

初美「隅っこで小さく挟まってるですよー」

由暉子「その行動の意味を聞いたつもりだったのですが」

初美「意味なんてないよ。ただこうしてると、すごく、あぁー……おちつく……」マッタリ

由暉子「そんなに落ち着くのですか?」

初美「朝はこうしないと始まらない……」マッタリ

由暉子「えっと……」ウズウズ

由暉子「ここなんかが丁度よさげです」ハサマリ

由暉子「これは……!」

穏乃(もう起きてたんだけど。置いてかれた)


穏乃「衣さん、胡桃さん、おはようございます!」

胡桃「おはよう」

衣「うむ、お早う。ところでお前達は何をやっているのだ?」

穏乃「狭いところに挟まってます!」

初美「とても落ち着きますよー……」

由暉子「閉所の魅力を侮っていました。これは凄いです」

衣「まったく、狭いところが落ち着くだなどと子供だな! 衣はお姉さんだから広いところが好きだ!」

胡桃「うーん」トトト

衣「クルミ? どしたのだ……ですか。まさかクルミまで……」

胡桃「お」スポン

胡桃「これは……いいね……」マッタリ

衣「く、クルミまで……」

衣「ほら、もう起きなきゃダメなんだぞ! あ、朝餉はまだだが……とにかくダメなんだ!」チラチラ

衣「うううぅぅうぅぅぅーーーっ!」ジタバタ

衣「……しょーがない奴らだな! 衣は本当に、広いところが好きなんだけど! 仕方がないから付き合ってやるぞ!」ポス

衣「あ……これは…………」


靖子「まったく、三尋木プロはなにやってるんだ」

健夜「教え子を呼びに行っただけにしては遅いよね。まだ朝ご飯まで結構余裕があるからいいけど。朝風呂ゆっくり入りたいとか言ってたのに」

靖子「入るぞ。一体何をやって…………、本当に何をしているんだ?」

咏「やっほー……」

靖子「なんであんたまで一緒にやってんだ」

咏「いや、私も最初はノリのつもりでやってみたんだよ。そしたらあれ、なかなかのなかなかだったねぃ」

健夜「か」

誠子「? 小鍛治プロどうしました?」

健夜「かわいい!」

健夜(わぁー、なにこれ! 六人の子供がかくれんぼしてる! すごい、これ本当にかわいすぎる!!)

健夜「そ、そうだ! 写真写真……」パシャパシャ

咏「すこやーん、すっごい失礼な事考えてるのは分かるんだけどさー、なんで私も撮ってるのかねい?」

健夜「大丈夫だよ、咏ちゃん子供にしか見えないから!」パシャパシャ

咏「おーっし、小鍛治覚悟しとけよー? あとでぶっとばすからなー? ……ダメだ、ぜんっぜん聞いてない」

健夜「衣ちゃん、こっち向いてよー」パシャパシャ

衣「やめろぉー! 衣は子供じゃないんだぞ!」ナミダメ

靖子「とりあえず気が済むまで放っておくか」パシャパシャ

咏「お前もかよ」

初美「落ち着けなくなったから止めましょうか……」スポン

健夜「ああっ、もうちょっと撮りたかったのに……」

初美(私はこんな人に手も足もでなかったんだ……)

咏「とりあえずみんな揃ったし、ここで朝のミーティングしようか」スポン

健夜「ああ、終わっちゃった……」

穏乃「はい! ところで、ミーティングって何するんですか?」

咏「雑談」

健夜「いきなりぶっちゃけた!?」

胡桃「咏さんはいつもこうだよ」

いきなりまたのんが現れた

健夜「そうなんだ。……あれ、今何かおかしかったような」

咏「胡桃は「あ、こいつダメなやつだ」と判断したら敬語なくなるんだよねぃ」

健夜「へー。この場合ってダメなの私だよね……」

咏「というわけで誰が話題ないー?」

由暉子「昨日の対局検討は?」

靖子「それは朝食後の予定だ」

衣「うむ、朝餉を頂かなくば頭が働かぬからな」

健夜「あ、そう言えば松実のおじさんと話したんだけど、ここの娘さんもインターハイ出るんだってね。姫松から」

穏乃「え? 玄さんが?」

由暉子「知ってる方ですか?」

穏乃「知ってると言うか、元々同じ麻雀教室に通ってたんだよ。他にも憧と和がいて……あ、ちなみに和って言うのはインターミドルチャンプの原村和です」

健夜「うわ、それはまたすごい偶然だね」

>>288
本当だ申し訳ない。脳内変換お願いします



初美「偶然じゃありませんよー」

衣「穏乃が和とインターハイで逢う為に創設したのが、阿知賀女子麻雀部の始まりなのだ!」

靖子「憧……憧か……。あいつも確か、奈良出身だと行ってたような……」パラパラ

由暉子「何を見ているのですか?」

靖子「インターハイ関係の手帳だ。高鴨、その憧っていうのは新子憧って名前じゃないか? 神社の娘の」

穏乃「知ってるんですか!?」

靖子「ああ、よく知ってる。九州、鹿児島代表の永水女子、五人目のメンバーだ」

穏乃「おおおおおぉぉぉ!?」

初美「そんな話を霞ちゃんから聞いた気がしますねー。奈良から私と入れ替わりで一人来たとかなんとか。一軍に入れるほど強い人でしたかー」

靖子「高鴨、他に麻雀教室のメンバーってどんなのがいた?」

穏乃「え? えっと、高校生は今ので全部です」

靖子(教え子全員がインターハイ出場、一人は中学ナンバーワンで、残りも名門、強豪、優勝候補校の一軍か……。そいつ何者だ?)

穏乃「あ、写真ありますよ! 小学生の頃のだけど見ますか?」

由暉子「見たいです!」

衣「小さい頃はどんなだったのだ?」

穏乃「いやー、期待されてる所悪いんですけどね。はい」

咏「うっは、今と全く同じだねぃ」

初美「多分身長も当時と同じですねー。……うっ、心が……」

胡桃「というかなんでジャージまで同じなの」

穏乃「えへへ」

胡桃「誉めてない!」

健夜「…………うそ」

靖子「小鍛治プロ、どうしました?」

健夜「赤土さんだ……」

咏「知り合いなんかい?」

穏乃「ああぁーーーーーー!!!」

衣「い…………、いきなりどうしたのだ?」ビクビク

穏乃「そーだったぁ! 健夜さんって赤土さんをインターハイでぼっこぼこにした当時のチャンプだ!」ダッ

健夜「そ、その通りだけど人聞きが悪いよ」

穏乃「まあそうですよね。麻雀なんだから仕方ない」スワリ

靖子(ほんとこいつは勢いで生きてるな)

靖子「そうだ、こっちも思い出した。赤土晴絵だな。昨年から北海道・有珠山高校の監督として就任。僅か数ヶ月で、二人の全国区プレイヤーを育てた」

由暉子「有名な方なんですね」

靖子「一部では、だがな。ちなみに団体戦にオーダーしたにも関わらず、地区大会一回戦不戦敗という不明な事をやらかしたのでも有名だ。本人はその理由を黙して語らない」

靖子「珍しい現役プロ監督でもあるんだが……はっきり言ってプロ活動の方は、ぱっとしないと言わざるをえないな。勝ったり負けたりを繰り返す、言い方はきついがギリギリプロだ」

咏「それはあれだ、すこやんにぬっころされたからじゃないかねー」

健夜「え!?」

靖子「何か知ってるのか?」

咏「あれ? 靖子ちゃん小鍛治世代なのに知らんの?」

靖子「私はインターハイを経由してプロになった訳じゃないからな」

咏「そなんだ。むかーし、こんな話があったんよ。準決勝で、途中から阿知賀女子の正面アングルがなくなったのはすこやんにボコられすぎて死にそうな顔してたからだ、ってね」

初美「うわぁ……どんな勝ち方したらそんな噂が立つんですかー」

胡桃「ねえ、昨日どんな感じだった?」ヒソヒソ

由暉子「どちからかと言うと、大人しい打ち方でしたが……」ヒソヒソ

穏乃「でも言われてみると片鱗はあったかも……」ヒソヒソ

衣(衣は多分何も言わない方がいいな)

健夜「そう言えば、死にそうな顔してたような……」

靖子「小鍛治プロが言うくらいだから、今すぐ自殺しそうな顔くらいはしてたんだろうな」

咏「ちょっと確認してみるかな」ピポパ

由暉子「お電話ですか? どちらに?」

咏「同卓した人知り合いなんだよねぃ」

胡桃「誰が同卓してたの?」

咏「赤土って人でしょー、すこやんでしょー。あとノヨリさんに牌のおねえさんだねぃ」

穏乃「そんなの赤土さんじゃなくても死ねますよ……」

初美「きっと地獄のような卓たったんでしょうねー」

衣「いいなぁ。衣もそこに入りたかった」

咏「あ、のよりんやっほー。え、違う違う、今日は遊びのお誘いじゃないんだよねぃ。わはは! これでも真面目にコーチしてるんよ。意外っしょ! あははっ!」

咏「でさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど。うん、ほらのよりんさ、昔インターハイ出たじゃん? その時、赤土って人がいたと思うんだけど、あ、覚えてる? そりゃよかった」

咏「赤土って人、うん、うん、最後の方どんな顔してた? ああ……ああー……。そっかそっか。うん、あんがと。いきなり電話して悪かったねぃ。また今度遊びに行こーか。うん、じゃーねぃ」ピッ

咏「この世の終わりみたいな顔してたって。こりゃ確実にまだ立ち直ってないねー」

健夜「そうなんだ……赤土さんなら絶対プロでまた戦うと思ってたんだけどな……」ドヨーン

穏乃「落ち込んでちゃダメですよ!」

健夜「」ビクッ

穏乃「赤土さん、しばらくは牌に触ることも出来ないって言ってました! でも麻雀教室をやって……今では高校の監督にまでなってます! 確実に立ち直ってきてるんです!」

穏乃「ここで健夜さんが落ちたら、赤土さんはどうなるんです!? 私なら! 強い相手にはいつまでも強いまま待っていて欲しい! じゃなきゃ燃えられない! だから! 気合いいれなきゃダメです!」

健夜「……そうだよね。うん、頑張るよ!」

穏乃「よし、じゃあ叫びましょう! うおおおおぉぉぉ!」

健夜「え、ちょっとそれは……」

胡桃「近所迷惑でしょ馬鹿!」

穏乃「へぶぅ!」ペシン

靖子(ナチュラルにここぞという場面で空気を壊してくれるな。さすがに、部の実質的な中心人物ではある)

咏(うーん、赤土晴絵、それに麻雀教室ねえ。これは、かなり面白い事になりそうだねぃ)

咏(すこやんにゃ今回ので借りができたし、お仕事がてら恩返しでもしとこうかな。と決まれば、あとで電話しとこーかねー)

合宿後・帰路


由暉子「ふぅ……」

由暉子(合宿、大変でした。頭を使いすぎて、まだくらくらします)フラフラ

由暉子(結局、咏さんと健夜さんには一度も勝てませんでした……。靖子さんも、「ノっている」時には必ずまくられましたし)

由暉子(強くはなっているのでしょうが……。これで大丈夫なのでしょうか? やはり、家でもう一度、手牌予測の訓練を重点的に……)

やえ「あ」

由暉子「あ」

やえ「阿知賀の真屋……か……」

由暉子「晩成高校の、小走先輩……」ペコリ

やえ「偶然、だな」

由暉子「はい。決勝卓以来ですね」

やえ「歩きながら、すこしいいか?」

由暉子「大丈夫です」

やえ「改まると、こう……言葉がでないもんだな、はは……。まあなんだ、うちを負かせたんだから、全国でも頑張ってくれ」

由暉子「はい。必ず全国制覇します」

やえ「ああ、その調子その……ちょう……し……」ピタリ

由暉子「小走先輩?」

やえ「……すまん、嘘をついた」

由暉子「嘘、ですか?」

やえ「本当は、ずっとお前を探してた。本当なら主将の鹿倉に言うべきなんだろうが、どうしても……お前に言いたかったんだ」

由暉子(私に……?)

やえ「お前達と打ってみて、よく分かったよ……。ああ、こういう奴らが、全国で勝つチームなんだろうな……こういう奴らだから…………、三尋木プロも指導したんだろうな、って」

やえ「はは……女々しいよな。こんな……泣き言なんて……。分かっては……いるんだ……すまない……すまない……」ポロ

由暉子「…………」

やえ「悔しかった……すごく……ぐやじがっだ……」ポロポロポロ

やえ「才能なんて無くても勝てるんだと思ってた……勝って証明してやると思ってた……変な力がなくってもやっていけると言いたかった……! 心では……想いだけは、絶対に負けるかって!」ポロポロ

やえ「でも! 違ったんだ! 本当は、肝心な想いで負けてたんだ!! 私は……上を目指し切れていなかった……絶対に負けちゃいけない所で負けたんだと……思い知った……」ポロポロ

やえ「こんな事を言うのは……分かってる……お門違いなんだ……分かってる……。でも……頼む……頼むよ……勝って……勝ってくれ……」ポロポロ

やえ「すまない……私のつまらない感傷に付き合わせて……。でも、応援してるのは本当だ……全国優勝……してこいよ」グジグジ

やえ「じゃあ……な……」トボトボ

由暉子「…………」

由暉子(小走先輩、行ってしまいました……)

由暉子(……想い……)

由暉子(私はただ……皆の役に立てればいいなと……ただそれだけで……。小走先輩の言うような、強い想いなどないのに……)

由暉子(私は……ただ……私が……)

由暉子(今の私は、小走先輩に誇れるような人間ではありません。私は、どんな想いを掲げれば……いいのでしょうか……?)

本日はこれまで。文章量は増やした方でやっていこうと思います

おつ

乙です

おつ
しばらくはユキちゃんお悩みタイムなのかなー

おつおつ
狭いとこが落ち着くのはいつまでだろう

>>305
せまいとこが窮屈に感じるようになったらもう大人。

何気に6人は何処に挟まっていたんだろう…

おつおつー
これでユキが一皮むけるか...?

乙です

東京都・ラジオ局


恒子「福与恒子と」

健夜「小鍛治健夜の」

恒子・健夜「ふくよかすこやかインハイレディオー!」

恒子「今日はインターハイ前夜特別編として始まりました! 見れば分かるとおり、いつもよりかなりスタジオが広いです! まあ見て分かるのは動画を見てる人に限りますが!」

健夜「明後日、いよいよインターハイの抽選が始まりますね。どの高校も、緊張感でいっぱいだと思います」

恒子「さて今回、なんと特別ゲストをお呼びしています! それじゃあ自己紹介、どうぞー!」

穏乃「はいっ! 阿知賀女子副将、高鴨穏乃です!」

憧「えっと、もう言っていいのかな? 永水女子副将、新子憧です」

和「清澄高校副将、原村和です」

玄「はい! 姫松高校先鋒の松実玄なのです!」フンス

健夜「今日はよろしくお願いしますね」

穏乃「全力でがんばります!」

憧「あんたはもうちょっと控えるくらいで丁度いいの」

和「こちらこそよろしくお願いします」ペコリ

玄「私も精一杯盛り上げて行きます!」

恒子「さー、視聴者の皆さんはこう思ってるでしょう。この面子のどこに共通点が? と。彼女たちを繋げる存在は確かにいた! 日本では数少ない現役プロ監督!」

晴絵「えーっと、有珠山高校の監督をしています、赤土晴絵です。よろしくお願いします。私なんかがこんなところに出てきちゃっていいのかな?」

恒子「だいじょーぶだいじょーぶ! うちの局の人も「これを独占できるなんて数字取れるじゃん!」って言ってましたし!」

晴絵「あはは、ありがとうございます。でもその本音はやめて」

恒子「こりゃ失敬! さて、赤土晴絵と言えば監督就任僅か数ヶ月で全国クラスの打ち手を二人育てたと言うことで有名らしいですが」

健夜(らしいって言っちゃったよ!?)

恒子「さあ、このメンバーにはどんな繋がりがおありですか!?」

晴絵「そう言われるとくすぐったいですが……この子達は全員、約4年前まで開いていた麻雀教室の生徒なんです」

恒子「なーんと! 智将にして名監督赤土晴絵! 全国クラスの打ち手をこんなにも量産していたぁー!」

晴絵「ちょっ、やめて! そんなに大したもんじゃないから持ち上げるのはやめて!」

健夜「あはは、こーこちゃんいつもこうなんです。赤土さんも気をつけて下さいね」

晴絵「あ、ええと、その……はい」

恒子「この二人、微妙な雰囲気を出していますが。なんと実は、両者にも因縁があるのです! 高鴨穏乃カモーン!」

穏乃「赤土さんと健夜さんは、なんと20年前のインターハイ準決勝で直接対決をしているのです! 燃える!」

恒子「燃えるね!」

健夜「そうだけど違うよ!? 10年前だよ!」

穏乃「いやぁ、こーこちゃんがここはそう言うのがお約束だって」エヘヘ

健夜「そんなお約束ないよ!」

晴絵「というかこーこちゃん呼びなんだ」

穏乃「あ、さっきこーこちゃんでいいよって言われまして」

恒子「連絡先も交換したもんねー」

穏乃・恒子「いえーい」パチン

憧(めちゃくちゃ仲良くなってる……)

和(さすがは穏乃、と言うべきでしょうか。そう言えば私も、こんなノリで引きずられましたね)

玄(いいなあ。私も仲良くなりたいなあ)

晴絵「いや、釈明すると小鍛治プロが悪い訳じゃないんですよ。インターハイで負けたのも、私が弱かったのが悪いんですし。ただ、今更どんな顔して会えばいいのかと思って……」ハハ

健夜「そんなに深く考える事ないですよぉ! ただ私は、赤土さんは今どうしてるのかなと思ってただけで……」ワタワタ

恒子「二人だけだと延々頭下げ続けるだけになるのでカットで」

晴絵・健夜「酷い!」

恒子「ここで一つ目のお題です。『麻雀教室はどんな感じでしたか?』これは生徒の四人に対する質問だね。で、どんな感じだったの?」

憧「えっと、そうですね。出来た当初は、まず玄が居たんです。ね?」

玄「うん、そうだね。そのうちしずちゃんが来て、その翌日くらいに憧ちゃんを連れてきたんだったかな」

穏乃「懐かしいなあ。そのうちどんどん下の子が増えていって、雀卓が全部使われるくらい大所帯になって。そのうち和が転校してて来たんだ」

恒子「あ、和ちゃんは転校してきたんだ」

和「はい。両親の仕事上、転校することが多かったので。小学六年生の時、阿知賀に転校したんです。そして転校数日後、麻雀教室に誘われたんです」

憧「あの時のしずってば、もう引きずるように和を引っ張ってたわよねー」

和「何を言ってるんですか。憧も似たようなものだったでしょう」

憧「あれ、そうだっけ?」

和「今は落ち着いてますが、昔は穏乃にも負けないくらい元気だったんですよ」

恒子「へー。今の姿を見ると、すっごい垢抜けてる感じがあるから全然印象と違うんだけどね」

憧「そ、その話はまた今度という事で……」

恒子「ちなみに小さい頃の写真をしずのんから頂き、フリップにしてます。はいどん」

憧「知ってるじゃないですか!?」

恒子「へー、憧ちゃんは昔半袖半ズボンだったんだねー。こりゃもう見るからにしずのんと互角の元気っ娘だわ」

憧「あああぁぁぁ、うわああぁぁぁ……」マッカ

恒子「和ちゃんはあれだね、昔から出るとこしっかり出てるんだね。しかも今はさらに二回り大きくなってるし」

和「そういう弄り方は止めて下さい……本当に止めて下さい」マッカ

恒子「玄ちゃんはほんと順当に成長してるねえ。かわいらしい子供が順当に美少女となった、って感じで。しずのん? 何も変わらない」

玄「えへへ、ありがとうございます!」

穏乃「オチ担当にされた!」

恒子「さっ、早くも二人が死にかけてますが」

和「誰のせいですか……」

恒子「麻雀の成績はどうだったの? やっぱりその頃から和ちゃんが一番だった?」

和「いえ、一番は……」

玄「えへへ、実は私なのです!」

恒子「そうなんだ。なんか意外かも」

穏乃「元々は私と憧が二番三番だったんだけど、すぐに抜かれちゃって」

憧「単純に和と玄の相性があんまり良くなかったっていうのもあるんですけど、それ以上に火力差があったんですよ」

和「勝ち星自体は私の方が多かったのですが。玄さんはなにしろ、いつもどこかを飛ばして終わっていたので」

玄「なんとか上級生としての威厳は守り切れました!」

恒子「さすがは姫松の一軍だけあるねー」

玄「えへへー、そんなに誉められると照れちゃいますよー」

恒子「しかもみんな礼儀正しいし」

穏乃「あ、それはですね。実は憧だけはちょっと事情が違うんですよね」ニヤニヤ

憧「ちょ、ちょっとしず……」

和「憧はすごく人見知りしますもんね」ニッコリ

憧「和まで!」

玄「実は憧ちゃん、仲が良くなると口調が砕けるタイプなのです。相手がしっかりしたタイプだと、冗談を言い合う時でも丁寧な場合はありますが」

恒子「へー、かなりの内弁慶、と」ニヤニヤ

憧「ああうううぅぅ……いっそ殺して……」マッカ

恒子「はい憧ちゃん二度目の死亡確認!」

穏乃「ただ、仲良くなると憧はすごいですよ!」

和「多分私が知っている中で、一番の友達想いですね」

玄「友達の為なら、本当になんでもやるタイプですから! 昔も実は……」

憧「あーあーあー! 本当に止めてくださいお願いします!」マッカッカ

恒子「今度は仲間が殺しにかかってきたかー」

恒子「このまま憧ちゃん弄っても面白そうですが、ほっとくと死んじゃいそうなので次に行きましょう。二つ目のお題は、『赤土晴絵から見た昔と今!』です!」

晴絵「あ、今度は私なのか。これはどう答えればいいんでしょう?」

恒子「難しい事は聞いてなですね。自分の生徒達が、昔と今と、打ち筋がどう変わってるかって感じの」

晴絵「なるほど。じゃあまず和」

和「私からですか?」

晴絵「一番分かりやすいしね。昔から方向性が定まってたから、打ち筋自体は変わってないね。でもインターミドルチャンプだけあって、かなり洗練されてる」

晴絵「しかも高校生になって、どんな訓練をしたんだか、さらに一皮むけてるしね。この子の場合は正直、私が教えたって言うのはあまり正しくないかな」

和「そんな事ないですよ。あのときの経験と思い出は、私の根元の一つになってますから」

晴絵「そう言ってもらえると救われるよ。次に憧」

憧「わ、私?」ビクッ

晴絵「弄る気なんてないから構えないの。憧も和と同じで、ずっと打ち筋を定めてたね。ずっと麻雀を続けて高めてたっていうのも、よく分かる腕だよ」

晴絵「思ったのは、永水に行って意識が変わったのかな? 和が昔の印象のまま強くなったとすれば、憧はより鋭い方向に高まった感じがする。とにかく、永水の副将に恥じない強さだよ」

憧「やっぱりそういう事言うんだ! うわぁん!」マッカ

晴絵「嘘偽りなく言ったつもりなんだけどなあ……」

和(だからああなったのでは)

晴絵「次、玄だな」

玄「はいなのです!」

晴絵「玄はまあ、相変わらずのドラ爆で、相変わらずに所々甘い。姫松は厳しい所だし、結構叱られてるんじゃないか?」

玄「しょっちゅう先輩に怒られてます。やっぱり分かっちゃいますか?」

晴絵「良くなってはいるよ。それに、火力で言えば昔よりよっぽど高いし、使い所も分かってる。今の調子で、焦らず強くなればいいさ」

玄「はい! がんばります!」

晴絵「で、最後は穏乃なんだが……。正直、言うことがないんだよなあ」

穏乃「ですよね。自分でも打ち方が昔と全く違うって分かりますし」

晴絵「嬉しくもあり、悲しくもあり。穏乃の気持ちはまだあの頃にある。でも、麻雀の原点はもう、あそこにはないんだよな……」

穏乃「赤土さんには悪いと思ってます。でも、私にとって師匠は咏さんですから! これからも咏さん流麻雀で行きますよ!」

晴絵「そこまではっきり言われるとちょっとへこむけど……でもまあ、指導者としては分かっちゃうんだよなあ。はっきりそう言ってもらえると、めちゃくちゃ嬉しいって」

穏乃「ちなみにうちは優勝が目的ですから! いくら赤土さんの育てたチームでも必ず倒しますよ!」

玄「あ、それはうちも同じなのです! 姫松の一員として、必ず優勝カップを持ち帰りますから!」

和「優勝が目的なんて、どこも同じでしょう。当然清澄だって、優勝以外は見てませんから」

憧「そりゃそーよねー。幼なじみが相手だって容赦しないから!」

晴絵「まったく、どいつもこいつもでかい事言ってくれるようになっちゃって。言っておくが、有珠山は最強のチームだ。優勝を狙えると思ったら大間違いだって事を、これから思い知るぞ」

恒子「五人の間で火花が散っていますが、ここで三つ目のお題! これはしずのんに対してだけなんだけど、三尋木プロとのなれそめを一つ」

穏乃「咏さんとの? 咏さんは確か、うちにお客様として来てたんですよね?」

恒子「お客?」

健夜「穏乃ちゃんのお家は和菓子屋をやってるんだよね。私も一度食べに行きました。すごくおいしかったです」

穏乃「それで、まさかあの三尋木プロがって感じで。部活に来て下さいって頼んだら二つ返事で来てくれました!」

恒子「軽っ!」

穏乃「あ、それいつも部活で言われてます。ちなみに、私は中学生だと思われてたらしいです」

恒子「それは仕方ないね。……ちなみに何センチ?」

穏乃「140センチです! ……四捨五入すれば」

健夜「それ140センチに足りないって認めてるよ!」

穏乃「気分的にはあるから問題ありません! それで、暇だからって最後まで部活に付き合ってくれたんです。で、このままじゃインターハイに行くこともできないって言われまして」

穏乃「指導をお願いしますって言ったら、速攻で「いいよ」という返事が」

健夜「咏ちゃ……三尋木プロは大事な事を結構その場で決めますからね」

穏乃「ちなみに、その二日後正式なコーチとして学校の先生に紹介されました」

健夜「……フットワークの良さなら、多分麻雀界一番だと思うよ、本当に……」

恒子「そんないきさつがあったんだ。しかし、それでもよく三尋木プロが受けてくれたなーとは思うよ」

穏乃「あ、それはインターハイ出場の目的が馬鹿馬鹿しくて面白かったからだとも言ってました」

恒子「インターミドルで優勝した和を見て、こりゃ私もインターハイに出場して和と遊ぶしかない! それまでは絶対和と会ってやんない! という感じで!」

和「ん……? あの、穏乃。今会ってしまっていますが」

穏乃「それは……仕方ない! のでセーフ!」

和「…………」

憧「ブフッ……ックククッ……! っはぁー……ほんとしずは昔のまんまね」

玄「この謎の勢い、本当に懐かしいよねー」

健夜(本当に咏ちゃんが好きそうなキャラしてるなあ)

穏乃「それで、いざインターハイ出場してみたら同窓会みたいになっちゃったので。これはこれで会っちゃってもいいか、と」

和「大ざっぱな所も、本当に穏乃を感じさせてくれますよ……」

恒子「ん? ねえしずのん、ちょっと思ったんだけどさ。和ちゃんはたまたま団体戦も個人戦も出てるけど、これ団体戦に出られてなかったらどうする気だったの? 確かしずのんは個人戦出てないよね?」

穏乃「あっ……」

恒子「え……?」

穏乃「その時は…………その時!」

和「…………」アタマカカエ

憧「っひー……、っひー……」プルプル

恒子「この子はすっごい大物……なのかなあ?」

晴絵「なんかすみません……」

穏乃「とまあこんな感じで、劇的な事があるかと言われれば全くなかったんですけど。その代わり、指導は凄いですよ! すごく的確に弱点を教えてくれて、それをなくすか補う手を考えてくれます!」

穏乃「しかも自分で気付いてない癖とかまで、全部見抜かれてたんです! 本当に、咏さんは凄いんです!」

恒子「さすがはトッププロって事なのなかな。すこやんにもできる?」

健夜「ううん、全く自信がないよ。咏ちゃんの指導を見る機会があったけど、自分の言いたいこと、させたい事を伝えるのが本当に上手かった。私じゃ絶対無理」

健夜(実は裏でメンタル面まで面倒見てた、っていうのは言わない方がいいよね。さすがに他校が阿知賀攻略する手助けになっちゃうし)

恒子「はえー……すこやんが降参するなんて、ほんとに凄いんだねー。ちなみにしずのん、最近ネットで三尋木プロに対して「分かってるんだろ、言えよ」なんて言われてるけどどう思う?」

穏乃「はい、同意します! 分かってるんだから言わなきゃダメですよ! いつもアナウンサーさん困ってます」

恒子「ぷふっ、教え子にまで言われてる。そうですよね、解説なんだからちゃんとしないと。ちなみに私は困らせる側なので関係ありません」

健夜「やめて、こーこちゃんは真面目にやってよ! いっつも一人で走るから困ってるんだからね!?」

恒子「えー? でも真面目な私とすこやんなんて誰も望んでないよ。ねえ?」

和「やるべき時はちゃんとやらないとダメですよ。当然じゃないですか」

恒子「あら、怒られちゃった」

健夜「当たり前だよ。誰だってこう言うって」

穏乃「でも健夜さんとこーこちゃんは『こう』じゃないと、聞いてる方も物足りないです!」

玄「確かに健夜さんと恒子さんがセットできたら、ふくすこのノリを期待しちゃうよね」

憧「わかるわかる! むしろ福与アナが針生アナみたいにやったら『どうしちゃったの!?』ってネットでお祭り確定よね~」

恒子「うんうん、つまり私のノリが認められてるって事だね」

健夜「諦められてるだけだよ……」

恒子「綺麗に纏まったところで四つ目のお題! 小鍛治プロから見た四人! いつもの辛口でどうぞ!」

健夜「だから辛口とかじゃないって! しかも目の前に本人がいるのにそんなこと言わないよ!?」

穏乃「いえ、是非お願いします!」

健夜「ええっ!?」

和「あ、これは私もお願いしたいです」

憧「あの小鍛治プロにちゃんとした指摘もらえるなんて、誰もが羨みますよ」

玄「私先輩に、可能なら小鍛治プロにボロクソに欠点もらってこいや、と言われてます!」

健夜「えぇー……いいのかなぁ? うーん。先に行っておくけど、これを聞いてインターハイ参加校があなたたちの弱点を攻めてくるかもしれないよ。それでもいいの?」

穏乃「ここで聞ければ! 私は今より強くなれる! 同じなんかじゃいられない! 同じじゃいけないんです!」

健夜「分かった、分かったから顔をあんまり寄せないで……」

健夜「じゃあ、和ちゃんからでいいかな?」

和「はい、お願いします」

健夜「赤土さんも言ってたけど、完成されたデジタルで、正直言えることは殆ど無いかな。ただ、特殊な打ち手に弱い」

和「特殊な打ち手……ですか。あの、それはオカルトな話ですか?」

健夜「それもあるけど、そうじゃなくても。例えばあなたの先輩の竹井選手なんかは、わざわざ良型や点を崩して役を作ったりするでしょ? そういうのに対処できてない。というか、してない」

和「う……そう、ですが。やはりデジタルとしては」

健夜「言いたいことは分かるよ。運を理論で潰すのがデジタルな訳だし。でもね、確率っていうのは偏るものだから。それに、セオリーがあるからこそいざという時布石として生きるの」

健夜「今のままだと確実に、勝たなきゃいけない場面で勝てない。優秀な先輩がいるんだから、もうちょっと話を聞いた方がいいんじゃないかな?」

和「……そうですね。小鍛治プロほどの方に言われたら否定もできません。先輩方とよく話し合ってみます」

健夜「次は憧ちゃん。基本が和ちゃんと同じデジタルなんだけど、要所でよく確率の偏りを理解してる感じはする」

憧「っし! ありがとうございます!」グッ

健夜「うん、でもね。その、単純に和ちゃんよりレベルが低いかな」

憧「」ザクッ

健夜「偏った場面で、悩みすぎ迷いすぎな部分が多く見えるね。それだけならいいんだけど、迷ったあげくにデジタルと勘、どっちも信じ切れずに半端な打牌をしたり」

健夜「決断力不足、って言い換えてもいいかも。はっきり言って一番悪い振り方だから、絶対に直さなきゃダメだよ?」

憧「……はい……ありがとう……ございました……」サラサラ

穏乃(憧が灰になった。はっきり「対処もしてない和より劣る」なんて言われちゃったからなあ)

和(私への指摘がそうでもなかったので油断してましたが……ざっくり行きましたね)

玄(がくがくぶるぶる……)カタカタ

恒子(すこやんが良い感じにエンジンかかってきたのはいいんだけど……)

晴絵(今度は玄が死にそうになってるな。指摘すべきか……)

健夜「えっと……穏乃ちゃん」

穏乃「ハッ」バッ

健夜(なんで構えてるんだろ……)

健夜「咏ちゃ……三尋木プロからもさんざん言われてるから今更だろうけど。追い上げる立場の時に、自分が刺される可能性を度外視するのは本当にやめようね……」

穏乃「あ、はい」ストン

健夜「あとは……」チラリ

玄「ぴっ!」ビクビク

健夜「えっと、玄ちゃんはね?」

玄「ひゃい!」プルプル

晴絵(怯えたウサギみたいな事になってるな)

健夜「えっと、玄ちゃんは河が見えてないと思うんだ。正確に言うと、河全体を見ることができてない、と言えばいいのかな。要点しか掴んでないの」

健夜「でも実際は要点を掴み切れてない。だから突っ張らざるをえない時の振り込み率が、他より高い。比較的片スジが見えてない事が多い気がするね。そこをちゃんとすれば、放銃率下がると思う」

玄「あ……分かりました!」

玄(よかった! とっても優しかったよお姉ちゃん!)パァァ

健夜(こ、こんなものでよかったかな?)

恒子(すこやんめ、ひよったな)

晴絵「はは、やっぱり小鍛治プロはさすがですね。的確な指摘でしたよ」

健夜「そ、そうですか? えへへ……」

恒子「小鍛治プロは麻雀の事になると凄いんですけどね。反面、私生活では「ちょっとそれは……」という所が目立ちます」

健夜(え……いきなりなに?)

恒子「そう思いませんか赤土監督!」

晴絵「ソウデスネ」メソラシ

健夜「思い当たるわけないよ今日10年ぶりに会ったんだよ! 脚本!? 私の知らない脚本!?」

恒子「これはとある方からの情報提供で得た写真です。どん! 見事に緩んだ寝顔ですね」

健夜「あーっ! これこの前の……咏ちゃんでしょ! 絶対咏ちゃんでしょこれ! あっ! もしかして今回って咏ちゃんの仕込み!?」

玄「小鍛治プロも泊まった松実館でぜひ一泊どうぞ!」

健夜「さっくり実家の宣伝してるし!」

穏乃「わー、健夜さんこんな顔で寝てるんですね」

和「その、大変幸せそうに寝ていると思います」

憧「この顔見から日本最強の一人とは連想できないわよねー」

健夜「やめてよ! 本当にやめてよ! 最近ただでさえこーこちゃんと咏ちゃんに続いて、靖子ちゃんまで私を弄るようになったんだよ!? そういうキャラが定着しちゃうよ!」

恒子「え、まさか弄られキャラじゃないと思ってたんですか?」

健夜「真顔で言うのやめてよ! まさか四つ目ってこれの前振り!?」

恒子「私と組んで結構長いのに、未だにどこで仕掛けられるか分かってないすこやん愛してるよ」

健夜「ううぅ……こーこちゃん酷いよ……酷いけど学習しない私も酷いよ……」

晴絵(小鍛治さんも苦労してるんだな……)

恒子「さ、それではラストのお題になります……と、その前に、お便りを貰っているのでそれを読みましょう」

健夜(え、そんなのあったっけ……?)

晴絵(どうしよう、これは私も知らないな。まさか素人にアドリブ期待してないよな……?)

恒子「えー「ハルセン最強!」「グランドマスターなんてぶっ飛ばせ!」「赤土先生の啖呵、期待してます」「がっつり言っちゃってよ」「ハルちゃんが一番だって、みんな信じてる」です」

晴絵「え……これって……」

恒子「お便りは、『有珠山高校麻雀部一同』です。過去に因縁がある二人だし、ここでがっつり本音を晒しちゃうのも、企画的にはなかなかだし、ね?」

晴絵「ほんっと……なんて言うか……テレビ屋って上手いですよね」

恒子「まあね、それが仕事だし。やるときはやっとかないと、クビになっちゃうのよ」

晴絵「はー……、っ、小鍛治プロ!」クルッ

健夜「ひゃいっ!」ビクッ

晴絵「私は以前、準決勝であなたに敗れました。敗れて……心の弱い私は、麻雀と触れあう事もできなくなりました。それでも、麻雀だけが取り柄の私は、麻雀にしがみつき続けました」

晴絵「やがて高校麻雀の監督をするようになって、こう考え始めたんです。「プロなんてやめてしまって、こうやって後進の指導をしていくものいいんじゃないか」って。逃げではなく、本気で。それは今でも変わりません」

健夜「それは……」

晴絵「でも、その教え子達は。私がプロで活躍する事を願ってます。またあなたと戦えば、今度は私が勝つと信じてくれています」

晴絵「他の事がどんなにいい加減で、問題ばかり起こす子たちですが。麻雀だけはいつも真面目で、私の言うことをちゃんと聞く子たちがです。今の情けない私を見て、プロに専念させようとしています」

晴絵「はっきり言います」

健夜「……はい」

晴絵「私の覚悟はあの子達の為ではない! ですが、あの子達の『想い』は抱えています! それを持てば、また私は、麻雀に胸を張って打つことができます!」

晴絵「有珠山は必ず優勝すると言いました。そして、私はプロに専念します。もし、私がステージを上げていって、小鍛治さんと戦うのに相応しい段階まで上がったとき……」

晴絵「また私と、戦ってもらえますか……?」

健夜「はい……はい! もちろんです!」

穏乃「ダメですよ!」

健夜「ええっ!?」

晴絵「ちょ……穏乃そこは……」

穏乃「赤土さんがプロに専念するのも、また健夜さんと戦うのも大いに賛成です。でも有珠山が優勝するという所だけは聞き捨てなりません! 優勝するのは阿知賀です!」

憧「ハッ! そうだ! いい話にして隠してるけど、優勝するのは永水だからね!」

和「うちだって優勝以外見てません。今の発言だけは許せませんよ」

玄「ひ、姫松だって、絶対勝つのです!」

晴絵「は、はは……」

健夜「いい子たちですね」

晴絵「それはどうでしょう? でも……私の教え子っていうのは……つまりこういう子たちなんですよね」

恒子「郷愁に始まり新たな因縁に終わりました、今日のふくよかすこやかインハイレディオ! この熱もインターハイ前哨戦でしかありません!」

恒子「全ての運命は明後日、抽選会により決定します!」

本日はこれまで

おつですー
アコチャーかわゆすなあ

おつりんこ

乙です

おつ(´ω`)おつ

抽選会会場


穏乃「おー……ここが会場かー」

由暉子「思っていたよりも、大きいです」

初美「52校かける選手5人と引率の先生が二人、合計364人が最低でも入れる場所だからねー。実際には二軍選手を入れたりでもっと必要だし、多分500人くらいは入れるかな」

衣「おお、絶景なり! 衣は上の方の席がいい!」

胡桃「それだと前が見にくくなっちゃうかもよ? ああ、でももしかしたら上の方が見やすいか」

穏乃「どこの席にしましょうか! 私はあっちの方がいいと思います!」

初美「あっちの方とかどうですかー? 千里山とは、ちょっと話してみたいかもー」

胡桃「もう、あんまりはしゃがないの!」

「わっ、子供がいるよ! なんでー?」

「なに言ってるのもー。あれが阿知賀だよ」

「えっ! 全然高校生に見えないですね。かわいーなー」

「もう、あんまりそういう事を言ってはダメですよ。確かにかわいいですが」

「確かに可愛いです。なんと言うか、思い切り頭をなで回したいような」

胡桃「…………。ね、ちょっと大人しくしようよ」

穏乃「……そうですね」

初美「なんか、ごめんなさいですー……」

…………

穏乃「結局後ろの方になっちゃいましたね」

由暉子「仕方ないです。前列は全て押さえられてましたから」

衣「なあ穏乃、友の近くへ行かなくてよかったのか?」

穏乃「一昨日ラジオでさんざん話しましたから大丈夫ですよ! それに、和と憧は同じ副将ですから、勝ち上がれば戦えますからね!」

初美「私は永水の皆と戦うのは微妙な気分かなー。勝ち上がりたくあり、でも勝って欲しくもあり」

穏乃「それはそれ、これはこれ、ですよ。相手を応援しつつ、全力で戦うのが礼儀です!」

由暉子「四人だとちょっと寂しいですね」

衣「そう言えば、ウタはなんで来てないのだ」

穏乃「なんでも「学校関係者じゃないのに抽選会の会場に入るのはちょーっと宜しくないからねぃ。ま、胡桃に全部任せてるからだいじょーぶ」だとか」

初美「あの人、全方位に型破りなのに、なんでそういう所だけはちゃんとしてるんでしょうねー?」

穏乃「胡桃先輩に怒られるからとか?」

初美「それで控える人ならとっくに控えてるよ」

衣「…………」ジー

由暉子「衣先輩、どうしましかた」

衣「いや……うむ。知り合いが居たのだ」

由暉子「……。事情は分かりませんが、話しかけた方が宜しいのでは?」

衣「良いのだ。インターハイが終わって、全部済んだら、ゆっくり話すことにする。今までの……阿知賀での、楽しかった事を」

由暉子「そうですか」ニコリ

衣「だから今は楽しい的な所をジェスチャーで伝える事にする。いえーい」

由暉子「衣先輩、何事かと注目を浴びているので今すぐやめて下さい」

穏乃「あっ! 胡桃さんが壇上に上がった!」

由暉子「緊張がこちらまで伝わってきます」

初美「うわー……。どこも緊張した感じはあったけど、胡桃ちゃんはさらに一回りですねー」

衣「それもそうだが……しかし……」

穏乃・由暉子・初美・衣(小さい……)

穏乃(分かってたけど、うちってやっぱりちっちゃいなあ)

由暉子(そう言えば、先ほどどこかの高校にもかわいいと言われてしまいました……同年代なのに)

初美(ああ……なんで私は霞ちゃんみたいに育たなかったのでしょう……)

衣(まあ、中身は衣が一番お姉さんだけどな!)ムフー

初美(また変な事考えてるねー)

穏乃「引いた……32番!」

初美「決まったねー。当面の敵は、千里山女子……かー」

衣「なんだ、名前はよく聞くがそんなに有名な所なのか?」

由暉子「晩成高校が県内での不動の名門だとすれば、千里山は全国での不動の名門と言えます。プロ輩出数も一位だったかと」

衣「ほう……それはいいな! 早く遊びたいぞ」

穏乃「それに、この順番は……準決勝で清澄と永水、和に憧と戦える! 決勝まで行けば玄さんに赤土さんとも!」

衣「清澄……そうか、とーかと相見えるか。うむ、楽しみだ!」


揺杏「っはー! いきなり白糸台とかマジかー」

爽「ヘビーなとこ来ちゃったもんだ」

成香「でも、考えようによっては、運が良かったかも……」

灼「うん。早い内に白糸台の情報を解析できるのは、大きなメリットだと思……」

豊音「わわっ、二回戦でいきなり臨海とだよー。それも、宥ちゃんの妹ちゃんともだよー」

宥「うん、そうだねー。玄ちゃん、千里山で頑張ってるって言ってたし、きっとすごく強くなってると思うんだあ」

エイスリン「タノシミ!」

白望「うん……ま、がんばろっか」


玄「あわわ……いきなりお姉ちゃんとなのです! どうしよう、どうしたらいいと思います!?」

恭子「ええから落ち着き」

絹恵「玄ちゃんのお姉ちゃんはともかくとして、いきなり臨海ですか」

由子「白糸台、千里山、永水、臨海、どこと当たっても、どうせキツいのよー」

漫「どうせ倒さなあかんのですから、やったらどこ行っても同じですもんね」

憧「うっわー……いきなり和のところかー」

春「やりにくい……?」

巴「憧はラジオ出演後から、必死に麻雀の弱点見直しをしてたもんね。まだちょっと間に合わないか」

小蒔「大丈夫です! 憧ちゃんが完成させるまで、残りの私たちで勝てばいいんですから!」グッ


まこ「巫女さん集団が相手かい。確かシード四校の中でも、二番目におっかない麻雀しっとたとこじゃのう」

透華「と言うか、なんで壇上に行くのが私ではないんですの?」

和「あなたは何を言っているんですか……」

優希「お前に任せるくらいなら私に行かせてるに決まってるじぇ」

ギン!

咲「あの、染谷先輩、また二人がにらみ合い初めて……うう、無視して押しつけないでくださいよぅ」シクシク

本日はこれまで。短いですが昨日が長かったということで


そういえばこれ憧も巫女服なのか……?

>>346
となるとここのアコチャーが
生八つ橋なのか原作の急成長増し増しアコチャーなのかでだいぶ印象が変わるぞ……

おつ
結局姫松は誰が補欠になったんだろねー

原作とは対戦表が違うのかな?

クロチャーの学校が千里山になっとる・・・

穏乃が先輩呼びなのかさん付けなのかぶれてるけどかわいいよ

おつおつ
クロチャー姫松ちゃうん?

>>352
>>350が言ってるのは>>343の宥姉のセリフのことだと思われ

クロチャーは姫松です。台詞間違えてましたごめんなさい


二回戦第一ブロック・白糸台控え室


淡「すー……すー……」スヤスヤ

菫「起きろ」ペシン

淡「痛っ! もう、何すんのよー」サスサス

菫「お前なあ、もう試合が始まるんだからちゃんと見とけよ」

淡「えー、見る必要あるのー? だってどうせテルが勝つよ」

尭深「それでも寝てちゃダメだよ、淡ちゃん」

誠子「新道寺と有珠山は油断ならないだろ?」

淡「だって有珠山の先鋒は二番手だし。しかも去年の個人戦、スミレ以下なんでしょ? 新道寺に至っては五番手だよ? どう考えたってテルが勝つよ」

菫「……有珠山の鷺森は、あまり甘く見ない方がいいぞ」

尭深「そうなんですか?」

誠子「先輩の言葉に異を唱えるつもりはないんですが、こう、これと言って目立つ何かがある打ち手には見えないんですが……」

菫「まあな。奴は強い訳じゃない。が、飛び抜けて上手い」

淡「麻雀がってこと? それだって、臨海のツンメガネとか姫松の姉ポニテより全然弱いと思うなー」

尭深「……ツンメガネ? 姉ポニテ……は、多分愛宕洋榎さんなんだろうけど」

淡「ほら、先鋒のあいつだよ」

誠子「辻垣内さんの事か? なんでツンメガネなんだ……」

淡「だってなんか、ツンツンしてる雰囲気ない?」

誠子「いやまあ、なんとなく分かるけど……。確かにそっちの方が強いしさ」

菫「麻雀が、というのとも違うんだがな。こう、ゲームをするのが上手いと言うか、ゲームのプレイヤーである事が上手いと言うか……」

淡「よく分かんなーい」

尭深「先輩が一目置いてるのは確かだから……見てれば分かるかな」

菫「まあ、今回それを発揮してくれるかは分からんがな」

尭深「え?」

菫「奴らは一回戦、本気じゃなかった。県予選ですら、確実に切り札は出していない。恐らく出すとすれば決勝か……インハイ下位チームがふるい落とされる準決勝からだろう」

淡「ふーん、凄いけど本気は見れないか。じゃ、おやすみー」

菫「だから寝るな!」

淡「いたーい!」バシーン


灼「ツモ。4000・8000」

灼(対チャンプセオリー通りに、東一局で速攻上がり。倍満まで伸ばせたのは運がい……)

ズ…………

灼(うっ……)

煌(これが噂に聞く鏡ですか、すばら! ですが、弱い私には元々隠すものなどありませんよ!)

照(…………。有珠山の人、確か鷺森灼だっけ? 面倒くさいな……)

照「ツモ。400・800」

灼・煌(始まった……!)

淡「ねー菫せんぱーい。これって鷺森って人本気なの? なんか全然テル止められてないんだけど」

菫「全く本気じゃないな」

尭深「ですよね……」

誠子「好きに一位抜けしてくれっていう雰囲気が、バリバリ出てますもんね」

尭深「新道寺の花田さんは、さすがにそこまでの余裕はないみたいだけど……」

菫「そこは世代上位選手と県レベルでそこそこ上の方というだけなのとの、実力の違いだな」

照『ツモ。2000は2100オール』

淡「ほら、あっという間に4連荘」

誠子「あ、でもほら。有珠山が動いたよ」


灼(新道寺は使える……でももう一校はぜんぜんダメ……。ん)

灼「ポン」

灼「チー」

灼「チー」

灼(ここら辺欲しいんだけど……分かる?)トン

煌(分かりますとも! すばらに……ほい!)トン

灼「ロン。タンヤオのみ。1000は1200」

照「…………」パタン

照(聴牌まで行けなかった……。他家と連携するのが上手い人が二人居ると、想定通りに行きづらいな。もう少しペース上げよう)


爽「おっ。チャンプがギア上げたね」

成香「あれ以上早くなって、灼ちゃん大丈夫でしょうか?」

揺杏「だいじょーぶ。ぜんっぜん問題なしだね」

誓子「新道寺の人が思ったよりも使えるもんね」

爽「あれは変な色気を出さないで、チャンプを止めることに集中してるね」

誓子「確か絶対に飛ばない子、だっけ?」

成香「なんとなくメンタルが強そうな能力ですね」

揺杏「しっかし、あれだなー。ぜんっぜん面白くないなー」ギシ

成香「ゆ、揺杏ちゃん、灼ちゃんがまだ戦ってるんだよ」

揺杏「でもさー」

誓子「あんまり失礼な事言わないの! でもまあ、面白みはないけど」

成香「チカちゃんまで……」

爽「しゃーないだろー? ここまで晴絵せんせーの言うとおりじゃさー」

晴絵「おまえらー。飲み物持ってきたぞー」ガチャ

揺杏「お、ハルセンナイスタイミング!」

晴絵「なんだ? 予想外の事が起きたか?」

爽「んにゃ全く。完全に計画通りだよ。ありゃ完璧に灼の卓だ」

煌(いい感じですねえ。いえ、すばらくはないんだけど)

煌(後半開始時点で白糸台が145200点。有珠山がほぼ原点で、うちが83400。平気で10万点以上稼ぐのがチャンプと思えば明らかなスローペース!)

煌(できればここで、もう少し押さえたい所ですが……有珠山さんはどうでしょうかね?)

灼(ん……新道寺は押さえる事に全力になってるね。良い感じ……。うん。これなら、うまくいきそ……)

照(できれば有珠山も沈めたいけど、ちょっと無理っぽい。普通に上がろう)


姫子「部長! 花田が予想外に奮闘してますね!」

哩「そうやな。終了時点で50000も残っとったら重畳やとおもっとったけど」

美子「このペースやっと60000切らんね」

仁美「よか感じやのー」ヂユー

哩「しかし、鷺森の、去年よか明らかに強くなっとる。花田と協力して上手くチャンプを押さえてくれっとー」

姫子「流石は全国区プレイヤーですね」

哩「やな。ばってん、誉めてばっかりもおれん。来年は姫子が勝たんといけんのやからな」

姫子「当然です! 任せて下さい!」


灼(終盤戦……そろそろ、仕掛けられる配牌があってもおかしくな……)ズズ

照(何か……有珠山から嫌な感じが……)

灼(悪いけど、あなたの全て、晒して貰うから……)


淡「」ガタッ

誠子「おい淡、何やってるんだ。テレビに張り付くなよ」

尭深「それじゃ見えないよ……」

淡「何言ってるの? もしかして先輩たち、気付いてない?」

菫「ないわけないだろうが。わざわざ相手がその気になってくれたんだ。邪魔だから座ってろ」

淡「はーい」

煌(これは……! チャンプのラス親で先制聴牌! しかも三色役牌ドラドラ……リーチもかければ最低でもハネ満!)

煌(チャンプの動向が気になるし、下家も大物手の気配……待ちも狭いし、ここはオリも考慮してダマで構えるべきでしょうか)トン

灼「……きた」

煌「え?」

照(これは……マズい)

灼「カン」

照「っ…………」

煌「これはっ!」

煌(新ドラ2も乗った!? ハネ満確定ー! リーチをかければ倍満まで届く! 牽制の意味もこめて、ここは行くべきでしょう!)

煌「すばらにリーチ!」

照(恐らく字牌のシャボ待ち……上がり手が塞がれた。しかも次で……)

灼(さ……)

灼(チャンプはどうする……?)


淡「すっっごーーーい! なにあいつ! ちょーイケてんじゃん!」

尭深「すごい……」

誠子「このタイミングで新道寺に、大物手を作らせる事ができるのか」

尭深「上がり牌も掴まされちゃってる。先輩はもうオリるしかない……。誠子ちゃんならあれ、できる?」

誠子「麻雀で普通に勝てって言うならまだしも、絶対無理だよあんなの」

淡「尭深先輩なに言ってるの?」

尭深「え?」

淡「新道寺のあいつ、次でツモるよ」

菫「じゃあ8000の出費か……」

淡「だから何言ってるの。裏ドラが4乗るから数え役満。最低でも16000払うことになるよ」

菫「なんでそんな事が分かるんだ?」

誠子「そんな事が分かるのはお前か宮永先輩だけだって……」

尭深「そして、有珠山の鷺森さんはハネ満聴牌ですか。役満を上がられたくなければ、振り込まなければならない」

淡「っくううぅぅぅ! しかもテルに直前まで悟らせずだよ! マジなにあいつ! あれで二番手!? ヤバい! ちょー燃えてきた!」


灼(さ、どうするの? 私はあなたをナメた……見下しながら、選択を迫った……)

灼(振り込む相手が私なら勝利はほぼ確定。でも、溜飲は下がらない。役満を待てば、新道寺が息を吹き返す……今後の展開が分からなくなる……残りのメンバーも、本気を出さざるを得な……)

灼(何を考えてどれを選ぶ……? ここであなたの思考を晒させ……!?)

照「…………」トン

灼(ノータイム! っ……く……!)

灼「ロン……12000……です」

照「はい」


灼「ただいま」

誓子「おかえり灼」

成香「どんな感じでしたか?」

灼「上手く躱された……というのとは違……。多分見ているのは勝利だけ。歯牙にも掛けられてな……」

揺杏「おっかない奴だなー。私だったら、あんな風に突っかかってくる年下、絶対許さないし」

爽「ああいう冷静かつ冷徹に勝利を追求できる奴だから、チャンプになれるんだろうな。私にも絶対無理だわ」

灼「……ごめん」シュン

爽「謝る理由なんてないぞー。これだってチャンプの思考をしっかり晒させたんだからな」

誓子「そうそう。あとは晴絵先生が勝てる戦術を考えてくれるわよ」

晴絵「お前、無茶ぶりするなあ。でも、その通り。灼は完璧に仕事をしたよ。あとは準決勝、もしくは決勝までに、白糸台を落とす方法を考えればいい」

揺杏「よし出撃しろ成香号! 憎っくき白糸台を倒してくるのだー!」

成香「た、倒しちゃだめですよぅ」

本日はここまで。ちょっと中途半端ですが

>>351
すみませんブレてるのは作者のせいです
あれ、誰が先輩呼びで誰がさんづけだったっけ? と時々こんがらがってしまう……


成香が飛ばしてしまっても構わんのよ?

乙乙

淡「テルーおかえりー」

照「ん。ただいま」

誠子「鷺森どうでした?」

照「去年よりずっと強くなってる。もっと荒くて攻撃的な打ち手だと思ったけど……多分こっちが本来の姿」

尭深「あんな打ち方もあるんですね……初めて見ました」

照「完全に団体戦で相手選手を偵察する打ち方。そういう意味だと、彼女は今大会一番だと思う」

誠子「しかし、なんであの子先鋒なんでしょうね?」

淡「どういう事? それは、エースは先鋒だろ常識的に考えて、的な?」

誠子「全然違うよ」

照「鷺森さんの資質が、とても大将向けっていう事だよ」

淡「?」

尭深「先鋒はとにかく強いことが条件でしょ? 大将の資質は、順位によって打ち方を変えられる事なんだよ」

誠子「ほら、大将で一位以外、どっか飛びそうとかだと普通に打てないだろ」

淡「そりゃそうだけど。普通はそれくらい考えてやるし、それ以上って言うなら、そもそもそんな事できる人見たことないよ」

誠子「まあね。運の比重が大きく、局数も限られてる時点で、狙い通りにやるのはほぼ不可能だからね」

照「でも、それを鷺森さんはできる」

淡「へー。じゃあなんでそうしないんだろ?」

尭深「考えられる理由としては……大将の獅子原さんが、そこに置かざるをえない能力か……」

誠子「もしくは、対白糸台シフト――というよりも、対宮永照シフトかな」

照「多分誠子で正解。対局が始まってから、ずっと観察されてたし。だから――今回は絶対に本気を出さないで。有珠山の思惑に乗っていいから」

尭深「はい」

誠子「了解です」

淡「よく分かんないけど分かった!」

尭深「淡ちゃんには後で説明してあげるから……」

誠子「あ、でも弘世先輩にはまだ伝えてませんよ?」

照「大丈夫。菫ならそれくらい分かってる」


成香(分かって……ますよね?)トン

菫(個人的に思うところがないわけではないが……白糸台は過程がどうであれ勝たなければならない。準決勝進出確定を逃すつもりはない)トン

美子「あれ……?」

美子(どこか……おかしか……?)


哩「まずい……!」ガタ

姫子「部長、どげんしたっとですか?」

哩「有珠山が方針をかえよった! いや、チャンプば放銃しよったあれが原因か! 最初から、この展開を考えとった……?」

煌「申し訳ありません、全然話が見えないのですが」

仁美「そげんまずか?」

哩「有珠山が白糸台に結託しよった! 一位を献上するかわりに、自分らの二位抜けを確実なもんに! うちが上位二校に狙われとる!」

煌「それは……!」

哩「あそこで花田ばツモっとれば、うちは息を吹き返しとった。上位三校の混戦……白糸台に、落ちる万が一があっと! ばってん、今は有珠山さえつつかんかったら確実!」

姫子「そんな!」

仁美「なっ! ど、どうにかなっと?」

哩「するしかない!」


成香(弘世さんに狙われないと分かっていれば、そんなに気を遣う必要はない感じです)

菫(いい具合にアシストしてくれるな。もう少し新道寺を落としておくか)

美子「う……」


誓子(オーラス親が新道寺の場合、親番ちょこっと連荘しておけばいいって言ってたな)

尭深(使うつもりはなかったけど……連荘してくれるなら、一度くらいは役満上がってもいいかな?)

仁美(これは、本格的にまずか……)

揺杏(さって、副将まで来たけど、まさか私ん所が水分量だとはなあ。副将にエースとかおかしくね? 明らかに私より二回りは強いっしょ)

誠子(最上級生ベストプレイヤーの一人か。ま、やるだけやるさ)

哩(ナメた真似しよって……! 私と姫子で、必ず取り返す!)

…………

哩(来た! これは3……いや、リザベーション4!)

揺杏(お、こりゃ来たな? あー惜しい! ハネ満まで見える手だったんだけどなー。しゃーないか)

誠子「」トン

揺杏「それチーね」

誠子「え? あ、はい」

哩(なんと?)

誠子(早いな。県予選じゃ鳴き麻雀タイプじゃなかったと思うんだけど。そんなに悪い手だったのか?)

揺杏「あ、それもチー」

哩(っ! まさか!)

揺杏「ロン! タンヤオドラで2000ね」

誠子(染め手を放棄してまで早和了り? まさか、今のは白水が縛ってたのか?)

哩(まさか、リザベーションを察知されっと? こげんっ……!)

揺杏(おーおー、おっかない目力しちゃってさー。でも、私も引いたりはできないんだよね)

揺杏(白水哩のキモは、ずばり『縛った』かどうか。縛った場合、ツッパるしかなくなる。オリれば大将まで上がれなくなるもんね。ツッパるって分かってれば、弘世の真似事くらいできるんだよ)

誠子(凄いな。岩館が、というよりも、現実的に白水を攻略させてる有珠山の監督がか。これは勉強になる)

揺杏(白糸台ちゃんも分かったろ? 私があんたをぽんぽん鳴かせてやる時は、白水が縛ってる時だかんね。がんがん和了ってくれよー?)

哩(どうする!? 縛らんと追いつける点差じゃなかんに!)

誠子(これで新道寺が勝ち抜ける万が一の可能性も消えた。白水哩、ここで消えるか)


淡(テルは本気だすなって言ってたけどー。そっちが「やる」なら仕方ないんだよねー。ね、分かる?)ザワ

爽(なんだよ、灼ばりの挑発しやがって。意趣返しのつもりか?)

淡(あんたの個人戦の試合見たんだよね。こんなことされて大人しく引っ込むほど大人しくないでしょ? ね、本気でさあ……楽しい麻雀しようよ?)

爽(ナメてくれやがってこのやろー……)ダン

淡(きたきたざわっと! やっぱり麻雀するなら強い相手と本気でだよね!)ニヤッ

爽(……と、言いたいところだが、その手には乗らんぞ)

淡(あ、なんか萎んだ。収めちゃうんだー。ちぇーっ)トン

爽(あーあ、まったく……。ハルちゃんの指示に従うなんて言ったばっかりに、生意気な一年を叩きのめす事もできやしない。本気だって絶賛封印中だしさー)

爽(ぜーんぶあんたを上に行かせる為なんだからな。我慢強い私に感謝してくれよ?)

爽「ツモ! 700・1300。決着にしちゃしまんねー上がりだけど、ま、勘弁してくれ」


淡「たーだーいーまー」ペシャ

照「お帰り」

菫「なんで潰れるんだ。しゃんとしろ」

淡「だってー。あんな互いに「どうぞどうぞ」みたいな麻雀すっごいつまんなかったんだもん」

尭深「気持ちは……ちょっと分かるかも」

誠子「私はかなり勉強になったよ。団体戦限定だけど、あの白水封じは見事だったな」

菫「危なげなく勝てたんだから良しとしておけ。が、問題がない訳じゃない」

照「県予選の印象にある、大ざっぱに強いチームじゃなかった」ポリポリ

菫「ああ。用意周到に敵の弱点をリサーチしている。次回、もしくはその次、我々の弱点をこれでもかと突いてくるだろう」

誠子「私と尭深は、弱点を攻めやすい能力してますからね」

尭深「気をつけます……」

菫「お前達は心配してない。問題は……」

淡「スミレったら話長ーい。早く帰りたーい」ゴロゴロ

菫「そーかそーか。お前はそういう態度を取るのかー」グニイィ

淡「ふふぃぇー。ひゅみれひぇんぱいはひょてもひゃひゃひいひぇんぱいれひゅ」ビヨーン

菫「宜しい。あと照! もう控え室開けなきゃいけないんだからお菓子を食べ始めるな!」

照「えー」サクサク

短いですが本日はこれまで
準決勝からが本番なので、それまでは結構さくさくいくと思います

乙です

おつおつ
相当改造されてるぽいね

おつ
これが赤土式か

おつー
はるちゃんは名将

二回戦第二ブロック・臨海女子控え室


みさき『いよいよ二回戦第二ブロックの決戦が始まります。なんといっても注目はシード校である臨海女子に、大阪の名門姫松高校でしょう』

みさき『昨年個人戦三位だった辻垣内智葉選手は、世界大会でもめざましい成績を上げています。対する姫松高校も、昨年に待望の高火力選手である松実玄選手をオーダーしています』

みさき『三校の先鋒が彼女にどう対抗していくか、そこが一つの注目点でしょう。野依プロは先鋒戦、どこが注目点だと思いますか?』

理沙『宮守!』

みさき『宮守と言うと、長らくプロチームの監督を経験しており、最近までは実業団の監督もしていた熊倉トシ元プロが監督ですね』

みさき『熊倉元プロの采配に注目、という事でしょうか?』

理沙『』ブンブン

理沙『姉妹!』

みさき『あ、そう言えば、宮守先鋒の松実宥選手は、松実玄選手の姉妹でしたね。彼女にも松実玄選手のような高い火力があると?』

理沙『つよい!』

みさき『はい、ありがとうございました』

智葉「相変わらず野依プロは殆ど喋らんな」

ネリー「もっとおしゃべりできたら、たくさんお仕事あるのにね」

ハオ「でも、解説とか苦手なの分かります。解説は難しいです」

明華「私もです。どうしても自分の感覚で考えてしまいます」

メガン「そんなのノリでいいんでスヨ。勢いで喋ればなんとかなりマス!」

ネリー「だめだよー。それじゃお金もらえないよー」

メガン「へーきデス! 面白ければオールOKデス!」

智葉「アメリカ的だな……」

明華「それはそれで、聞いてて面白そうですけどね」クス

ハオ「私はちゃんとした解説聞きたい派です」

アレクサンドラ「はいそこまで。サトハ、そろそろ行かなきゃ」

智葉「む、もうそんな時間か。では行ってくる」

ネリー「がんばってねー。勝たなきゃダメだよー」

智葉「当たり前だ。まあ、先鋒らしい戦い方をしてくるさ」


宥「あ、あわわわわわ…………」

エイスリン「ダイジョウブ?」ツンツン

豊音「優ちゃん、ほらぎゅーっだよー! あったかーいよー」ギュー

エイスリン「ギュー!」ギュー

宥「あわわ……あったかい……あったかい?」

塞「先生、全然だめです。がっちがちに緊張しちゃってます」

トシ「困ったねえ。まさかこんなに緊張に弱いとは」

宥「だ、だ、だ、だ、だいじょぶ、です。がんばります……」

塞「ぜんぜんダメじゃない」

豊音「うぅ……困ったよー。ねーエイスリンさん、どうしようか?」

エイスリン「バクハ、スル!」

塞(今度は何と間違えたんだろう?)

白望「ねえ、宥……」

宥「は……ひゃい、はい!」ガチガチ

白望「宥は臨海が怖くて緊張してるの……? それとも……妹さんの方?」

豊音「あ……」

宥「う……玄ちゃん、名門で一年間頑張ってきたの……それでレギュラーになったの……もし私が弱くて……失望されちゃったらって思ったら怖くて……」ホロホロ

豊音「そんなこと絶対ないよー! ラジオからも、お姉ちゃん大好きっていうの、とっても伝わってきたよー!」

エイスリン「クロ、ヤサシイ!」

白望「つまんない心配なんだよなぁ。ダルい……」

塞「シロ!」

白望「麻雀とか、そういうのじゃないでしょ。姉妹なんだから。それにさ……ねぇ?」

豊音「うん、宥ちゃんがダメでも、私たちが絶対に挽回するよー!」ナデナデ

エイスリン「シンパイ、ナイ!」ナデナデ

宥「うぅ……そうか、なあ?」

塞「そうそう。大丈夫大丈夫、シロみたいな奴が姉だったらひっぱたかれるけど、玄ちゃんみたいな良い子が妹で、宥みたいないい人が姉なんだもん。問題ないわよ」

白望「さりげなくけなされた……」

塞「さりげなくないわ。直接的にけなしたのよ」

白望「酷い……ダルい……」

宥「クスッ……うん、私、頑張ってくるね」

豊音「その調子だよー! ふぁいとー」

エイスリン「オー!」

トシ(どうなるかと思ったけど、上手い具合に収まったねえ。若いって言うのはいい……やっぱりおばあちゃんの出る幕じゃないね)


玄(うーん、そんなに悪くない配牌かなー)

宥(結構いい感じかも……)

智葉(全然ダメだな。普段なら早々に店じまい、案牌をかき集める所なんだが)チラ

玄・宥「~~~♪」

智葉(なんともまあ、ずいぶん調子がよさそうじゃないか。……まあいいさ、ここはインターハイだ。こういう事もある。それなりの戦い方をすればいい)スゥ


智葉『ツモ。700・1300だ』

漫「はっや!」

絹恵「なんやねんあれ。まるっきりチートやん」

由子「玄ちゃん2向聴やったのに、6向聴の智葉さんにあっというまに追い抜かれちゃったのよー」

恭子「速攻3副露から槓して無理矢理有効牌を引き入れ、即座に純チャンツモか。普通、あんな無理に攻めても和了れんもんやけどな。ほんと、強い奴ってのはずるいわ」

洋榎「まるでうちみたいやな!」

「…………」

洋榎「誰か何か言えや!」

由子「漫ちゃん、よく見とくのよー」

恭子「来年は玄がエースやからな。絹ちゃんが大将で漫ちゃんが先鋒の確率大や。その為にわざわざ控え室に入れてるんやで」

漫「いやいやいやいや無理ですってあんなん! 玄ちゃん既に泣きそうになってるやないですか!」

絹恵「うわー……お姉ちゃんにボコられた時と同じ顔してますよ」

恭子「あの子もほんとメンタル弱いなあ」

洋榎「うぅ……だいこー、みんながうちを無視するんや……」

郁乃「洋榎ちゃんかいわそ~にな~。でも私もあれはどうかと思ったわ」マガオ

洋榎「慰めるか落とすかどっちかにしてや!?」

恭子「代行、あんまり主将を甘やかさんで下さいよ」

郁乃「は~い」

洋榎「今の甘やかされたか!?」


玄(ううぅ……配牌は悪くないのに、全然上がれないよ……おねーちゃーん……)ジワッ

宥(どうしよう……弱点を突かれてる訳でもないのに和了がれない……。辻垣内さんが単純に強すぎるんだ。こんなに強い人と戦うの、初めてだよ……)

智葉(こいつらの麻雀は典型的な能力麻雀だな。能力は強いが、反面地力に乏しい。それが弱い訳ではない、が、それでは私に絶対勝てない)

智葉(悪いな。宮永照と戦うまでは、負けるわけにはいかないんだ……!)

智葉「ツモ! 4000は4200オール!」


メガン「当たり前、と言っては悪いでスガ。先鋒戦はサトハ一強でスネ」

ネリー「いけー! サトハいけー!」キャイキャイ

明華「仕方ありません。サトハは強すぎます」

ハオ「ちょっとやそっと運がいいくらいじゃ、勝負になりませんから」

アレクサンドラ「あー、ついに姫松の子、打牌ミスをし始めちゃったな。かわいそうに」


洋榎「あーあー一向聴崩して何やっとるんや」

由子「そこで「しまった」って顔はしなくていいのよー」

恭子「まあ、ええわ。玄ちゃんはそこにいるだけで相手の得点を下げてくれる。他の奴が辻垣内に走られるよりは、最終的に数万点変わってくるはずや」

漫「あ、張り直した」

絹恵「壁の地獄単騎かー。しかも辻垣内に抱えられてる……あれ? これ振るんちゃう?」

玄「あ……あーっ!」

智葉「!?」ビク

玄「ロン! それロンです!」

智葉「そ、そうか……。で、点数申告してくれるか?」

玄「あ、ごめんなさい! 9500です!」ペコペコ

玄(や、やったよみんなー! あの辻垣内さんから直撃取ったよー! しかも連荘を止めて!)パアァ

玄(……あれ? 私、今日、配牌もかなりいいよね? 実は今日、かなりイケてる? ううん、あんな待ちで和了がれたんだし、絶対にいけてるよ! よーし、行っちゃうぞー!)ムフー

智葉(なんだ、こいつ……? 気配が爆発的に……まるで、こう……何をやっても何をされてもアガるような、バカヅキの気配……。今の直撃は、絶対にしてはいけない放銃だったか……?)


漫「あれ!? ちょ、これ、来てるんちゃいます!?」

絹恵「あわ、あわわわわわ!」

洋榎「待てい、落ち着けい! まだ分からん、まだ分からんやろ!?」

恭子「配牌や、配牌見るまで押さええ!」

由子「早く全部揃えるのよー!」

漫「これ、来た! 来てる!」

恭子「確定やー!」

漫・絹恵・洋榎・恭子・由子「ドラゴンブレスキターーーーー!!!」

郁乃「な、なんやって~!」

絹恵「説明しよう! ドラゴンファイヤーとは!」ビシィ

漫「姫松のドラ引きの玄、略してドラクロがテンション大爆発させて豪運を味方に付けた時の、龍の吐息である!」バシィ

郁乃「なんでポーズまで取ってるん~?」

漫・絹恵「勢いで!」

恭子「あれ初めて見たときほんまびっくりしたわ」

由子「洋榎が手も足も出なかったのよー」

洋榎「5巡7巡でハネ満倍満とかどないせーっちゅーねーん。あんな飛ばされ方初めてしたわ」

絹恵「お姉ちゃん目が点になってたもんね」

郁乃「これで勝負になるなあ」

恭子「主将ですらどうにもなりませんからね。いくら辻垣内と言えど、主将とはそれほど実力に差はありません」

漫「つまり、辻垣内でもドラクロファイヤーをどうにかするのはかなり無理があるっちゅーことですね!」


玄「ツモ! タンヤオドラ8なのです!」ペカー

智葉(まずい……満貫未満の手がない癖に、今の手……どれだけ上手く立ち回っても追いつけなかった。こんな事ばかりになっている……)

智葉(親での連荘だけは阻止しているが……如何せん私に運が回ってきてない。断片的に切るのが精一杯だ。しかも……)

宥(玄ちゃんあんなに頑張ってる。私もがんばらないと……)ズズ

智葉(くっ! 松実姉からまで嫌な気配が漂っている! 妹の方ばかりを気にしている訳にもいかんか……)


みさき『先鋒前半戦が終了しました。しかし、これは何と言うか……野依プロ、どう思います?』

理沙『ひどい!』

みさき『ですよね。あれだけの豪運は、私も見たことがありません。野依プロでしたら、今の彼女をどうにかできますか?』

理沙『無理!』ブンブン

みさき『プロでもあれを押さえる事はできないようです。後半は、松実玄選手の豪運がまだ続くのか。続いた場合、どれだけ被害を少なくやり過ごすのか。そこが勝負になりそうです』

智葉「すまん……」

アレクサンドラ「いや、あれは仕方ない」

ネリー「ネリーでもあれは無理だよ……」

明華「メグちゃんだったらどうにかできそうですか?」

メガン「厳しいデス。そもそも聴牌が追いつかないんじゃ、どうにもできまセン。追いついたとして、あのラックに対抗できるかどウカ……」

ハオ「サトハはほぼムダヅモなしでやっていますが、それでも殆ど追いつきませんから」

アレクサンドラ「後半の作戦を……と言っても、今以上に上手い手なんてないんだよね」

智葉「あの豪運がずっと続くとは考えにくい。どこかで途切れる筈だ。防御に徹しつつ、そこを狙うしかない、か」

アレクサンドラ「最悪の場合を考えようか。あんたたちは、今日本気でやることも考慮しといて」

ネリー・メガン・明華・ハオ「はい」

洋榎「玄ー! よくやったー!」ワシャワシャ

漫「あの辻垣内相手にリードしてるでー!」ワシャワシャ

由子「玄ちゃんはやればできる子って信じてたのよー!」ワシャワシャ

絹恵「ええとこがっつり持っていって! でも許す! 勝って来てや!」ワシャワシャ

玄「あわわわわ!」グチャグチャ

郁乃「玄ちゃんおつかれ~。ようやったね~」

玄「むふー。凄く調子がいいのです! 今なら洋榎先輩にだって負ける気がしません!」

洋榎「おーおー生意気ゆーて」

恭子「玄! 後半もがっつり行けるな!」

玄「はい!」

恭子「よし。今のおまえはチャンプより強い! 辻垣内を吹き飛ばして来い!」

玄「分かりました! 行ってきます!」

本日はこれまで

おつですー
クロチャーかわいいよ

クロチャーぼっこにされそうで心配

宥姉もクルー?
おつ

乙です
クロチャーどう見てもドヤ顔です後半涙目になる可能性

名も知らぬモブ校に役満振り込んでからガタガタのイメージが


今回で姫松ファンになったわ
ノリが良すぎるwwww

おつおつ
予想通りだがみんなフルボッコフラグと見てるなあ
このまま突っ走ってもいいのよ?

みさき『先鋒戦後半が開始しました。注目選手である姫松の松実玄選手、前半に引き続いて豪運が続いています』

理沙『とまらない!』

トシ「姫松の、宥の妹さんね。あの子は基本的に運が悪いんだよ。そして、運を覆すだけの経験もない」

塞「へ? どういう事です?」

白望「ああ……運をドラの支配に全部振ってるって事?」

トシ「そうだね。例えば危険な確率が同程度の二牌を抱えているとして、悩んだ末にそいつを切ると八割方振る」

塞「それは……キツいですね」

トシ「ああ。普通強いと言われる雀士は、勘やら何やらで、八割それを回避するのさ。相手が弱いならともかく、上位選手と戦うとなると、それは致命的な欠点だよ」

豊音「でも、今は辻垣内さんを圧倒してるよー?」

エイスリン「スゴイ! ツヨイ! コワイ!」

トシ「でも、彼女にはもう一つ、特徴があった。逆鱗のようなもの――この場合真逆だろうけど、とにかくそれを刺激すると、運が大幅に上昇する。考えずに勢いで打牌し、結果回避もする」

塞「それって考えてる事が悪いんじゃ……」

白望「あんまり関係ないんじゃないかなぁ。多分、考えずに打っても振るよ」ダラー

エイスリン「Luck? プロ、デキル?」

トシ「そうだねぇ……プロでも、あの運をどうにかできる人は、あまりいないんじゃないかねぇ……」

塞「単純に運が良いっていうのは、どんな力にも勝りますからね」

豊音「じゃあどうしようもないよー……。宥ちゃん、大丈夫かなー」

トシ「そこは大丈夫。あれは龍の運だ。息継ぎが必要なのさ」

エイスリン「?」カキカキ

トシ「そうだね、龍の吐息だ。だから、隙間は必ず生まれる」

塞「あの、それって宥が行く前に教えた方がよかったんじゃないですか?」

トシ「いいや、余計な事は言わない方がいいよ。なにせ彼女たちは、姉妹なんだからね。私が横からとやかく言うよりも、よっぽど妹の事を分かってる」

豊音・エイスリン「…………?」

白望(ああ……まあ、近しい者じゃなきゃ分からない「隙間」っていうのも、あるものかぁ……)

智葉(相変わらずの豪運……! どこか、付け入る隙はいつ生まれる!?)

宥(…………? あれ? もしかして)タン

玄「チーです!」

智葉(宮守、ずいぶんと攻めているな。姫松が張っている中で真ん中を切るなど。それほど肝が太いようには見えなかったが……)

智葉(ん……? いや……違う! 松実玄が全然完成していないんだ! 松実宥はそれに気がついて……っ! まずい、出遅れた! 追いつ……かない!?)

宥「リーチ! ……ツモ! 4000・8000です……!」

智葉(いつ気がついた? 二手、遅れた。どこで、なぜ私より早く気がついた……)

智葉(っぐ! 配牌がさらに酷く……運に完全に見放された。それに比べ、松実玄に加えて松実宥からまで、太い運気の気配がしてきた……)


郁乃「あっちのお姉ちゃん、どうやって気がついたんやろ~」

漫「ずっとツモ切りでしたし、めっちゃ自信満々の顔でしたもんね」

由子「通し、なわけないし。全く意味不明なのよー」

洋榎「なんやよう分からん能力でもまだ隠しとったんか?」

絹恵「いや、そういうんとちゃうやろ。あれやったら私でも分かるわ」

漫「え、ほんま?」

洋榎「いつの間に超能力者になったんやー?」

絹恵「なにお姉ちゃんアホな事言っとるん」

洋榎「今日みんなうちに厳しない!?」

恭子「まあ私も、なんとなく予想はついてますけど」

洋榎「本当にどういう事や?」

絹恵「お姉ちゃん、たとえば私がバカヅキしとって、でもそんな中、ビミョーな配牌にツモが続いたとして。「ちょっと休憩中なだけや、まだイケるイケる!」なんて顔しとったら気付くやろ」

洋榎「はあ? 当たり前やろ。何年一緒にいると思っとるん。他の奴ならいざ知らず、絹のセコいごまかしなんて通じんわ」

恭子「それがあそこで起こったんです」

漫「あ、ああっ!」

郁乃「なるほどな~。河とか相手の様子とかで気付いたんやなくて、お姉ちゃんが妹の様子を見て気付いたんやね~」

洋榎「まあ、納得はできたわ。しかしこれ、辻垣内はキッツいやろなあ」

恭子「すでに南場、早ければあと四局で終わりますが……彼女には受難の四局になるでしょうね」

玄(うわわ……親番の時に大きいの上がられちゃったよ。でもお姉ちゃんが相手だったら仕方ないよね。うん、仕方ない仕方ない)

宥(なんとか上がれた……。運も上向きだし……うん、やや速度を意識すれば、なんとか和了がれるかな?)

智葉(配牌もツモもどうしようもない。これは…………。負けた、か……)


みさき『二回戦第二ブロック先鋒戦が終了しました。大方の予想を裏切り、姫松が一位で152300。宮守女子が122100と続いています』

みさき『対して臨海女子は大きく落ち込んでしまいました。このまま姫松、宮守女子が逃げ切るのか。それとも臨海女子がまくるのか。荒れた展開になっています。……野依プロ、何か喋って下さい』

理沙『!? ……がんばれ!』

みさき『ありがとうございます。二回戦第二ブロック次鋒戦は20分後に開始となります』


由子「よろしくお願いしますなのよー」

白望「ん……よろしく……」

ズズ……

由子「っ!」

白望「これは……ヤバい感じだなぁ……」

ハオ「よろしくお願いします」

由子(完全に本気なのよー……)

白望(宥が作ったリードを私が食いつぶす訳にはいかないし……ダルいとか言ってらんないなぁ……)

ハオ「それでは、始めましょうか」

由子(配牌はまずまずやけど……分かる、確実に先に上がられるのよー)

白望(ビリビリするなぁ。伸びそうな手だけど……バツ)

ハオ「和――ロン、2300」

由子「はい」チャラ

白望(ムダヅモなし……なのかなぁ? まずいなぁ、こんなに早く臨海と当たると思ってなかったから、中国麻将のルール、まだ把握しきってないよ……)

ハオ(まだまだ、もっと出し惜しみなしで……)

ハオ「次、行きます」

由子(……うん。想定より三手遅い。中国麻雀の勉強ちゃんとしといてよかったのよー。全力の割には、手がついて行ってない)


宥「…………?」

豊音「宥ちゃん、どうしたの?」

宥「えっと……。臨海のハオさん、ちょっと苦しそうと言うか……」

エイスリン「コウ?」カキカキ

宥「うん、そう。悩んでるとか迷ってるとか、そんな感じ」

塞「手の進め方が難しいとかそういうんじゃないの?」

宥「それよりも、もっと根本的な感じがするの。どう、とは上手く言えないんだけど……」

トシ「彼女は今、二つの常識の間で揺れてるんだよ」

エイスリン「?」

塞「常識ですか?」

トシ「ああ。彼女が強いのは中国麻雀。だけど、今やっているのはルールから違う麻雀。感覚だけを前者で打つっていうのは、思うより遙かに難しい。将棋とチェスみたいな違いだね」

トシ「そういうのは苦しい立場であればあるほど、重くのしかかってくる。ただでさえ逆転するための打ち方っていうのは難しいんだ」

豊音「でも、ハオさんがんがん和了がってるよー?」

トシ「地力が違うからねえ。白望は対応に戸惑ってるみたいだし」

白望(本格的にマズいなぁ……。もう一万点も詰められてる。かと言って、悩んでる暇もないし……)

由子(一人でがんがん突っ走ってくれるのよー。これで先鋒戦初期の状況よりはマシだって言うんだから、玄ちゃん本当に頑張ったんやね)

由子(……仕方ない事ではあるんやけど……。あっちはアジア屈指の、世界レベルプレイヤー。こっちは名門の一軍やーゆっても、日本だけやってごまんとおる……)

由子(ゆーたって、私にもプライドがあるのよー。日本の麻雀で負けたら、めちゃくちゃがんばった玄ちゃんに顔向けできんもん。やから――あんまナメんなや)

由子「――ロン。5200なのよー」

ハオ「……はい」チャラ

由子(まず、一つ。――姫松レギュラーは、そのまま代表クラス。部訓、証明せんと)

ハオ(姫松が復活しましたか。もう少し日本麻雀を意識すべき……いえ……)

白望(なるほど……そういう割り込み方もできるんだ。タンヤオは作らないように考えて、狙ってった方がいいのかも……)

由子(鳴き中心にして速度作ろう思ったけど、本気のこの人に小細工は通じそうにないのよー。でも、顔色は変わってないけど、このタイミングでの直撃は効いてない訳ないし)

由子「そろそろエンジンかかってきたのよー」

ハオ「っ…………」

白望(これは……焦ってる? なら、少しつついた方がいいね……)

由子(強すぎると、こういう時キツいんやない? 慣れないルールやったら、尚更)

郁乃「うまいなぁ~」

恭子「さすが由子やな」

絹恵「あのトーク、なんかお姉ちゃんみたいでしたね」

恭子「主将のトラッシュぎみトークとはちょっとちゃうけどな」

洋榎「別に無駄話やないでー。そういうのでテンション上げてるだけや」

恭子「それはええとして。上手い具合に煽ったわ。あれは意識せざるをえん」

漫「おっかけなきゃあかん時に直撃取られて、しかも「こっから行く」宣言ですからね。あれは焦りますわ」

玄「え、そうなの? 私あんまりそういう事考えた事ないや」

郁乃「玄ちゃんはな~。和了がれさえすれば点差なんて大した問題やないしなぁ」

洋榎「焼き鳥にしたるとすぐ泣くけどな」

玄「わ、私じゃなくたって泣きますよぅ」

恭子「普通は泣かずにがんばって手を打つんやけどな……なあ?」

玄「ひぃ!」

絹恵「しかし、なんかおかしいですね」

洋榎「おかしいって何がや?」

絹恵「お姉ちゃんは感じん? あの留学生、本気になった割にはこう……強くないと言うか」

洋榎「おおっ! 絹もついに姫松一軍の貫禄が出てきたなあ。ちょっと前までどこか頼りなかったのに……お姉ちゃんほんまに嬉しいで!」

絹恵「そんな風に思われてたんや……あ、あかん。マジでヘコむわ……」

洋榎「ちょ、ちょまっ! そういう意味ちゃうって!」

恭子「主将が言っとるんは意識の方や。自分と主将比べて卑下しすぎなんがいかんの。そこはホンマに直し」

絹恵「あ、はい。普通に怒られてまった」

漫「そっちは置いといて。強いことは強いけど、なんかあれやね。想像していた程やないと言うか」

郁乃「そこは玄ちゃんのお手柄やね~」

玄「はえ? 私ですか? なんで?」

恭子「玄ちゃんおでこ出し」

玄「油性はやめてくださいよぅ! この後写真撮られるとき、私だけ芸人になっちゃうじゃないですか!」

洋榎「なんだかんだ言って勝ち抜ける自信だけはあるんやな。ええことや」

郁乃「留学生やなんやゆ~ても、やっぱり辻垣内智葉は絶対的なエースやった、ゆ~事やな~」

恭子「丁度ええわ。絹ちゃんと漫ちゃんは、玄ちゃんに説明してやって」キュポン

絹恵・漫(失敗したら私らが書かれる!)

絹恵「玄ちゃん、ええ? チームぶっちぎりの最強、不動のエースって言う奴でも、勝てへんのは仕方ない。玄人が素人にぽんと上いかれる事があるんが麻雀なんやから」

漫「でも、絶対的なエースは、決して『負けたらあかん』。エースの完敗は、そのままチームの敗北に繋がる――ですよね?」

恭子「その通り――デコ拾いしたな」キュポ

絹恵・漫(セーフ!)フー

玄「うーん……?」

郁乃「わからん~? ま~、玄ちゃんうちでダントツに公式試合の経験少ないし、仕方ないかもなぁ~」

洋榎「うちにまかせとき! たとえばや、漫!」

漫「はい、なんです?」

洋榎「絶対に、ぜぇーったいにありえんが、うちが誰かにボロックソに完敗したとする。そしたどう思う?」

漫「そりゃ「やった! 主将がボロックソにやられて今にも泣きそうやん! 普段の行いが悪いからな、天罰が下ったんや!」っすわ!」

洋榎「誰がボケろゆーた!」

漫「ありがとうございますッ!」スパーン

玄「プフッ……!」

洋榎「お、ウケた。しゃーない許したる」

恭子「余計なもん挟まったけど、つまりはそういう事や」

絹恵「絶対的なエースはつまり、そのチームの『強さの象徴』や。負けたときのダメージは洒落にならん」

恭子「まあ、それだけやないんやけど」

玄「まだ何かあるんですか?」

恭子「エースの、と言うよりも慧宇の問題になるんかな。あいつ、公式戦の記録を見る限り、エースが完敗した後にオーダーされた経験がない」

恭子「本人がエースで負けた、とかいうのはあっても、エースがほぼ完封された直後に出た事はない。今のプレッシャーは初めて感じるものの筈や」

恭子「感覚に合致しないルール、絶対的なエースの敗北による空気の淀み、初めてのプレッシャー。加えて由子は試合巧者や。こんだけ揃えば、メダリストやって好きにはできん」


ハオ(思ったより稼げてない……。最後の親、できればここで大きく稼ぎたい……)

由子(今のところは、私の思い通りなのよー。あとはここだけ切り抜ければ、もう驚異にはならへん)

白望(……私の後ろは、エイスリンに塞にトヨネ……。普段なら、後は任せていいんだろうけど……。塞は完全防御型、火力型には強くとも得点は期待できない)

白望(中堅、臨海も姫松も防御型だけど……姫松はヤバいよねぇ……。あれはちょっと勝てる気しないし、打点の低いエイスリンじゃキツい……)

白望(かと言って、大将戦はもっとヤバいしなぁ……。強い能力持ち二人に対能力技能者……どう転ぶかも分からないなぁ。やっぱここで、無理してでも稼いで……臨海との差を広げる)

白望「……ちょっとタンマ」

ハオ「え?」

由子(配牌でちょっとタンマ入るん? 親に何連荘かされる覚悟しっとったけど……これは大人しくしといた方がいいかもしれないのよー)

ハオ(姫松は早くもオリの気配……都合がいい、とは言えませんね。それだけ宮守が危険という事です。……ここが正念場ですね)

白望(来た、聴牌。リーチ……はいらないな。どうせ変わって300点だし……)

ハオ(こちらの方が、僅かに早く聴牌していた。ですが、影響が出るほどの優位でもありませんか)

白望(どっちが先に自摸るか……)トン

ハオ(勝負ですね……)トン

…………

白望(重いなぁ……)トン

ハオ(ずいぶん深くまで来ていますが)トン

由子(流局だけは嫌なのよー。できれば宮守に上がってもらいたいけど……差し込みまではできへんし)トン

白望「……ふぅー……」

ハオ(……負けましたか)

白望「ギリギリ、かな。2000・3900」

ハオ(結局、一万点と少しくらいしか詰められませんでしたか……大口を叩いておいて、これでは不甲斐ない。ですが、最低限の目的は達成しました)パタン

本日はこれまで。クロチャーは勝ちました

連投申し訳ありません
もしかしたら明日明後日は更新できないかもしれません

はいはいー
おつですー

おつおつ
能力考えるのって大変そうだ
それはそれとして姫松の控え室めっちゃ良いww

おつ
>>1が連投を気にする必要はないのよー

由子もいいなあ
次回も楽しみにしてる

みさき『先鋒戦の派手さに反して、小さな手での早い展開となりました次鋒戦。順位に変動はなく、臨海の試練は続きます』

みさき『二位、三位間の点差は大きな開きのまま。ただし、一位と二位間はハオ選手に削られたのと、小瀬川選手の活躍により迫ってきています』

みさき『野依プロ、中堅戦の見所はどこでしょうか』

理沙『姫松……キケン!』

みさき『はい。姫松はついにエースの出陣となります。ここで愛宕洋榎選手がどれほど活躍するかにより、準決勝進出への難易度が変わるでしょう』


アレクサンドラ「ミョンファ、全力で勝ってきて……と言いたいけど、分かってるね?」

明華「はい。勝負はしません。可能な限り現状を維持して、メグちゃんに繋ぎます」ペコ

メガン「ちょっと消極的すぎじゃないでスカ? 彼女がその気になれば、ヒロエにも負けないと思いまスガ」

智葉「いや、あいつは舐めない方がいい。今のあいつは危険だ」

ハオ「よく分かりません。テレビを見る限り、会場に一番乗りして喜んでる、子供っぽい人にしか見えないのですが」

智葉「そうだな、その通りだ。あいつの勢い任せな部分は、麻雀の打ち筋にも共通している」

メガン「気分屋のアナログタイプという事でしょウカ」

智葉「ただのアナログ打ちじゃない。100パーセント気分で強さの変わるアナログ打ちだ」

アレクサンドラ「彼女については面白いデータがある。小中高と一貫して、彼女より手前の選手が「いい麻雀」をすると、中身の面白さに比例して実力を上げてる」

メガン「でスガ、どちらかと言えば防御型で有名な選手でスヨ?」

アレクサンドラ「小中では先鋒にオーダーされる事が多かった。それに……こう言っては何だが、彼女はチームメイトに恵まれていない。高校に入ってからも、例年の姫松と比べればずっと小粒だった」

アレクサンドラ「テンションを上げられるような選手が前に居ないと、彼女は防御優先にせざるを得ない。防御型の評判もそのせいだね」

ハオ「松実玄は? 智葉までやり込めた程の選手が、それほど能力がないとは思えません。もっと攻撃で有名になりそうなものですが」

智葉「松実は去年、副将でのオーダーだ。洋榎より前に入ったのは、今年度に入ってからだな」

アレクサンドラ「あの子がチャンプと組んだらと思うと、ぞっとするね。ちょっと手が付けられなくなると思うよ」

ハオ「なるほど。つまり先鋒、次鋒といい仕事をした後のヒロエは……」

メガン「ミョンファほどの打ち手ですら防御に徹さなければならないんでスネ」


洋榎(もう打ちたくって打ちたくって打ちたくってしゃーないわ! こんな気分で打てる事ってあんまないなあ)

洋榎(ほれ見ぃ! 気分良ければ牌も答えてくれるもんや。いくでー洋榎さん言っちゃうでー)

洋榎「ほいツモ! 裏も乗ってー……6000オールや!」

明華(東一局でいきなりオヤッパネですか)

洋榎「おうあんたら。今日のうちは気分がええから、逃げ回っとるだけじゃどうにもならんで。大事な点棒囲ったところで、トントントンビのあぶらあげーにならんように気をつけえ」

明華「トン……?」

エイスリン「…………?」

洋榎「一本場、がんがんいくでー」

洋榎(またごっついの来たなぁ。っかー、配牌でいきなりドラと飜牌の暗刻かいな。しかも対子も二つ……流れ的にも倍はイケるし、こういう感覚ん時はやろうとすると四暗まで行けるもんや)

洋榎(ふっ……強すぎる言うんも難儀やでホンマ。絹ー、恭子ー、すまんなぁー。お前らの出番ないかも知れんわー)

明華(よからぬ事を考えているのが表情で丸わかりですね。ですが、対抗できる程の手配でもなし……)

エイスリン「ツモ! 500・1000」

洋榎(おっ……うちの流れをかいくぐって上がる、か。なかなかのもんや……やけど)

洋榎「安手で流すんは結構やけど、そんなもんやとうちには届かんで」

エイスリン「?」

エイスリン「ワカンナイ。ワタシ、ハヤイ、トクイ! タクサンアガル、トクイ!」

洋榎「……こりゃすまんかった。そいつがまるっきりあんたの流儀かい。はっ……安さと早さで直接殴り合い勝負か……ええで、面白くなってきたわ! やっぱ麻雀はこうでないとな!」

エイスリン「マケナイ!」

明華(まずいです……。今のヒロエは、ただでさえ一人勝ちしかねない運気があったのに、さらに増しました。それに加え、宮守の彼女はそれを回避しながら上がれますし……)

明華(最下位の点も危険域ですか。……座して待てば死を待つのみ。やけどを覚悟して火中に飛び込まねば、活路もまたなし)

明華「失礼、少々お時間頂きます」

洋榎「お?」

エイスリン「ハイ」

明華「すぅ……、LA――――――――――――――――――――」

エイスリン(コエ……ウウン、ウタ?)

洋榎(なんやこれ、めっちゃぶわと来るわ。しかも、いきなり強い奴の気配になったわ。逃げ腰やった奴が、やっとその気になったってとこか)

明華「ありがとうございます」

洋榎「あんた、さっきまでより全然ええ顔しとるで」

明華「あなた相手に逃げ続ける愚を悟りました。それでは、再開しましょう」

エイスリン(ガンバル……カツ!)


エイスリン「タダイマデス!」

宥「エイスリンちゃん、お帰り~」

豊音「おかえりだよー」

エイスリン「タダイマノアッタカイ! ギュー」

豊音「私もぎゅーだよー」

宥「わわっ……ふふ、あったかーい」

塞「中堅戦、これまたキツい戦いでしたね」

トシ「準決勝までは、もう少し楽にいけると思ったんだけどねえ。エイスリンですら点数維持がやっとかい」

白望「仕方ないよ……。ただでさえインハイ最上位選手な上に、あの勢いだからなぁ……。攻撃型のエイスリンじゃなかったら、微減じゃすまかった」

塞「あの面子で一人浮きってのが恐ろしいわ。臨海がまた沈んだし、下位に至っては飛びまで見えてきた」

エイスリン「ヒロエ、ツヨカッタ!」

白望「私は、ああいうダルい人と打つのは嫌だなぁ」

エイスリン「ダルクナイ! イイヒト!」

白望「いてて、ごめん」ペシペシ

塞「さて……次は私か」

宥「がんばってねー……」

塞「ま、後ろにはトヨネがいるからね。気軽に打ってくるわ」

豊音「うん、大丈夫。私が必ず勝つよー」

トシ「臨海の彼女、確実に姫松を集中して狙っていくよ。できそうなら最下位を飛ばしにいっていいけど、そうなければ無理せず豊音に任せるようにね」

塞「はい!」

塞(臨海には致命的な欠点がある。それは、お金をかけて留学生をかき集めたチームだって事。スポンサーに納得される勝ち方をしなきゃならない)

塞(二回戦で二位抜けなんて、絶対に納得できないでしょうね。なら、うちも姫松もまくるしかない……メガン・ダヴァンはそういうのに適した力を持ってる)

塞(大将戦は恐らく三つどもえになるわ。私はそのまえに決着を付けるか、さもなくば少しでもトヨネが優位になるような立ち回りをすればいい)

絹恵(トップの私がやることは簡単や。とにかくがんがん安手で上がって連荘はせず、可能な限り点数を下げずに末原先輩に回す)

絹恵(そん時壁になるんが……当たり前やけどメガン・ダヴァンやな。確実にうちを狙ってくる上に……能力が反則級や。厄介さで言えば、玄ちゃんのドラ独占よりヤバい)

絹恵(相手のテンパイにツッパったら高確率でロンできる、言うんも酷いけど、そっちはまだいい。問題は、恐らく聴牌時に相手の聴牌状況を把握できる、いう点や)

絹恵(これでせいで、ヤミテンの優位が完全に消える。逆にあっちは無造作に牌を捨てられるし、余裕を持って待つこともできる。まあ、救いがない訳でもないけどな)

絹恵(能力の強度は大して高くない。なんもせんでも普通に上回られる事も、たまにあるし。めくり合い勝利確定なんてクソあってたまるかって話やけど。あとは、私は逃げればいい、いう点かな)

塞(点数状況は四捨五入して姫松が16万、うちが12万、臨海が9万……宥とエイちゃんはほんとよく踏ん張ってくれたわ。おかげで大分楽になったし)

塞(最下位は三万点近く。能力が「他家の有効牌もしくは和了を防ぐ」なんて完全防御方の私じゃ、相当運が良くないと削りきれない。分かっていた事ではあるんだけど)

塞(聴牌相手から直撃を取る力が相手じゃ、能力の使い所を見極めるのも難しいし……私の力、あくまでツモにだけしか効かないしなぁ。当面の目的は、とにかく展開を早くすること)

メガン(……最高で三回、それだけの使用が認められまシタ。当然、姫松の親で親かぶり狙いでスネ。その場合、下位の点数にだけは気をつける、デス)

メガン(しかし、運がよかッタ。この状況、私以外の誰であっても、目的を達成できまセン。デュエルがこんな風に役立つとは、おもいませんでしタヨ)

メガン(などと思っている間に……起家は姫松でスカ。丁度良い、最初に相手を叩いてビビらせましょウカ。上手くいけば、これ一本で十分ですかラネ。配牌も最高デス)ズズ

絹恵(なんや? 手配を伏せた? しかも顔を伏せて河も見とらへん)トン

塞(あっ、これマズい……? でもどんな能力かも分からなきゃどうしようもないし)トン

メガン(フフッ……4巡テンパイ、最高デスね。当然、どこも聴牌していまセン。待ちは狭いデスが、これなら放銃も十分期待できマス)

塞(危険な感じが消えたわね。と言うことは、有効牌を引く能力と見てほぼ確実。止め続ける訳にもいかないし……幸い現物がある。安全を期して、一巡だけは――『塞ぐ』!)

メガン(……。これは、何かされましタカ? 宮守のようでスガ。まあ、分かりませんし無視していいでスネ)

絹恵(あかんな……どれも危険そうやわ。とりあえず萬子出とるしスジ頼って……)

メガン「ロン。来ましタネ。16000デス」

絹恵「はぁ!? ……っ、はい」チャラ

塞(うわ、これ怖っ。というかヤバいわね、今ので殆ど点差がなくなったわ)

絹恵(なんやねんこれ、思ってたより遙かに厄介な相手やん……。自分が染まる能力? それとも別の何か? あかん、全然分からんわ……)

メガン(ヨシ……! 必要以上に警戒し、悩んでくれていマス。これなら一回の使用だけで済むかもしれまセン。見せすぎればメッキが剥がれるでしょうシネ)


恭子「なんやねんあれ……」

郁乃「末原ちゃ~ん、あれ何か分かった~?」

恭子「予測くらいはできますけど、合ってる自信ないです。代行は?」

郁乃「私もちょっとなぁ~。いっぺん見たくらいじゃ、ほんまに見たまんましか分からんよ~。せめてもう一回見られれば、具体的な対策たてられそうやけど~」

恭子「期待薄ですね。ダヴァンも会心出来や、いう面してますし。せめて絹ちゃんが立ち直れば……あかんな、考えすぎる言う悪い癖が出てますわ」

洋榎「何しょぼくれた顔しとんねん。全然問題ないわ」

恭子「主将……しかしですね……」

洋榎「16000の直撃くらい、玄で事故しなれとるわ。それに、絹やって姫松のレギュラーや。ちょっとケツひっぱたかれたくらいで転ぶほどヤワやない」


絹恵(切り替えよ。32000詰まった、言ってもまだ差は40000ある。分かりやすい事やっとるんやから、そん時だけ気をつける。前半終われば広末先輩がなんか言葉くれる)

絹恵(私がやる事は変わらん! とにかく速攻、それだけや!)

絹恵「ツモ! 700・1300!」

メガン(立ち直りがはヤイ。流石は名門の一軍でスネ。こうまで早いとデュエル機会も少なそうでスシ)

メガン(と、ここで聴牌デス。相手は……宮守が張ってまスネ。いいでしょう、それデハ……)

メガン「リーチデス」

塞「……リーチ!」

メガン(ほう、追っかけて来ましタカ。私がどんな事を出来るか知らない、という様子でもありまセン。正面からの勝負でスカ!)

塞(多分、私を狙ってきたね。ここで私が通用するかどうかが決まるわ。さあ……『塞ぐ』! ただし、塞ぐのは私の自摸!)

メガン(避けらレタ? しかも狙ッテ?)

塞(メガン・ダヴァンとどこかが聴牌していた場合のロン率は、ほぼ百パーセント。つまり、私が回避できれば、次にあっちが捨てるのは……!)

塞「ロン! リーチ混一色、8000!」

塞(っよし! こっちなら十分勝負できる!)

メガン(甘く見ていたつもりはありませンガ……宮守にはもう、デュエルを仕掛けない方が賢明でスネ)


みさき『副将戦終了しました。臨海女子は大分取り返して116400。宮守は僅かに増やし、124700となります。姫松は東一局の倍満が響き、137500と大分落としています』

理沙『混戦!』

みさき『はい。これで完全に、上位三校が準決勝進出圏内へと突入、運命を大将へと託します』

本日はこれまで

おっつおっつ
>理沙『混戦!』
かわいい


あとは末原ちゃんが先輩としての威厳を示せるかやね

乙です

乙乙ー

おつよー

追いついたー!

>>429 先輩の名前間違えるとはデコ確定だな

メガン「すみまセン、ネリー。結局どちらも捲れませんでシタ」

ネリー「ううん、じゅーぶんだよ。絶対がっつり勝ってくるから、だいじょーぶ」

メガン「姫松は思っていたより安定感がありまスシ、宮守は我々の同類デス。気をつケテ」

ネリー「わかってる。絶対、全部ぶっ飛ばすの」


ネリー「…………」テクテク

恭子「おわっ!」

豊音(ビリッと来るよー。ネリーさん、ちょーこわいよー)

ネリー(勝つ……勝つ……絶対勝つ……!)

ネリー(さあ――『来たれ』!)

豊音(これっ……全体効果系だよー!)

恭子(しょっぱなかい! どうにかして崩さんと!)

ネリー「ツモ! 1600・3200!」

豊音(まずっ……いきなり300点差かー。出し惜しみしてる場合じゃないよー)

豊音「それチーだよー」

恭子(いきなり3副露?)

豊音「それポン!」

ネリー(4つ目、単騎! これ能力!?)

豊音「ぼっちじゃないよー……ツモ、300・500!」

ネリー(もうっ! いくつ持ってるの!?)

恭子(玄ちゃん級が二人、しかもこいつら、能力で和了ってくる。全くほんまに、凡人の身にもなれや!)

…………

ネリー(思ったよりも宮守が強かった。姫松も要所要所で邪魔してくるし、おかげでおっきいの上がれないよ。1位から3位まで6400しか差がない。でもネリーが一番だし、ラス親すぐに上がって妥協する)

豊音(うーん、ネリーさんすっごく強いよー。今回はリードがあったからよかったけど、次は本気でまずいよー……)

恭子(3位に転落してまったか……でも臨海の大将にオーラスで6400差は儲けもんやな。安くて早い宮守にずいぶん助けられたわ)

恭子(さ、気合い入れや、末原恭子。あんたここで勝てんかったら今までどんな面して後輩に偉そうな事言ってたんやっちゅー話やろ。ここが私の桶狭間や)

恭子(種は撒いた……後は、信じる!)

恭子「リーチ!」

豊音(うえっ……! これまずいよー! 末原さんとの差は4600……6400以下をツモられたらうちが負けちゃうよ!)

ネリー(なにさ、今まで逃げ回ってただけのくせに今更勝負してきて! そんなの通じないよ!)

ネリー「リーチ!」

豊音(うぅ……ネリーさんもリーチしてきたよー。私はまだできあがってないのに……)

ネリー(ネリーたちは勝つために日本に来てるの! こんなところで終わっちゃいけないの! さあ……これで終わっちゃえ!)

ネリー「――っ! な、なんで……!?」

恭子「ほんま、自分の才能のなさが嫌になるわ。半荘2回使って、やっと歯車一個狂わす程度なんやからな」

恭子「みっともなくて情けない麻雀しとるっちゅー自覚はあるけど、まあ、勝ては官軍言うしな。そんでもって……」

恭子「ツモ。2000・3900。悪いな、これで終わりや」

ネリー「そ……そん、な……」ジワ

ネリー「うううぅぅっ、ううううーーーー!!」ポロポロ

恭子(奇跡ってあるもんやな。しかしこれで……なんとか準決勝か。……こっちのでっかいのへの対抗手段、どないしよ?)

豊音(や……やばかったよーっ! あぶっっっなかったー! なんとか勝ち残れたけど、これどうしよう……末原さんへの対抗策が思いつかないよー)



インターハイ会場・千里山観戦室


セーラ「おぅわ広っ! ほんまにここ使って観戦してええん?」

浩子「みたいですね。今年はずいぶん太っ腹ですわ」

竜華「怜ーなあなあ怜ー。このソファむっちゃ柔らかいでー」

怜「私は竜華の太ももの方がええなあ」

竜華「もう怜ったらー。そーやって私をおだてるんやからー」エヘヘ

怜「んむぃむぃ」ムニムニ

泉「うっわ本当に豪華ですね。インターミドルの控え室とかは全然こんなんやありませんでしたよ。高校が花形とはいえ、ここまで変わるもんなんですね」

セーラ「いや控え室は中学よりちょい設備がええかな、くらいや」

竜華「ここがおかしいだけやー。なんでこんなとこ使わしてくれるんやろな?」

浩子「ホテルに缶詰で試合観戦、言うんも気が滅入りますし、ありがたく使わせて頂きましょ」

泉「はは、タブレットずっと見てると目がえらい疲れますもんね」

竜華「あ、その前にちょっと外してええ?」

怜「試合開始までまだ20分くらいあるから大丈夫やけど、なんかあったん?」

竜華「ちょっとお花摘みに……」

怜「もー、なんでそんなこと先に済ましとかんのー? 私だれの膝枕で寝ればええん」

泉「いや、そこは起きてて下さいよ」

浩子「不肖、フナQこと船久保浩子、竜華先輩の太ももに一番近いクッションを持ってきてます」

怜「おお、フナQよくやったわ。あぁーー、きもちええーー……」

セーラ「ははは、よかったな」

泉「園城寺先輩も大丈夫みたいなんで、行ってきて下さい。あ、でもできれば早めに帰ってきてあげて下さいよ」

竜華「なんか一年が気を利かせていい話風に終わらしとるけど、触れさせた事もない私の足の感触を知っとる浩子にすっごいぞわっと来とるんですが……」

セーラ「いいからはよ行け」

竜華「……ぐすん」トボトボ


竜華「あかんなぁ……。最近私の部内評価が下がってる気がするわ」テクテク

竜華「もうちょっとこう、威厳とか出した方がええんやろか。あ、でも威厳ってどうやって出すんやろ? もっとキレのあるボケをするとか?」テクテク

竜華「ゆーても、そもそも私、ボケた事なんかないんやけどなあ。なんでツッコまれんのやろ? どっちかと言うと私が部で一番ツッコみキャラちゃう?」テクテク

竜華「どーにかして「智将! 竜華!」的なとこ見せたらな。あれかなぁ、スエハラー的なとこ見せるべきかなぁ? ……ん?」

竜華(なんやろ、子供が涙目でふらふらしとる)

衣「うぅ……グスッ……みんなどこに行ったのだ……」

竜華「なあなあ、何しとるん?」

衣「グズグズ……ん? あ、お前は千里山の大将!」

竜華「あ、うち知っとるん? せやったら話は早いわ。どないしたの?」

衣「みんながはぐれたのだ……」

竜華「あー迷子かー。……! せやったらとりあえず私らの観戦室にこん? 館内放送でうちらの観戦室にいますー、ゆうて流して貰えばええし!」

衣「んー……うむ、そうだな!」ペカー

衣(そこなら阿知賀の観戦室も近いだろう!)

竜華(なんやこの子めっちゃかわええ!)

竜華「よーし、いこかー!」

衣「わ、わー! 抱きかかえるなー」

竜華「もう、かわええなー」スリスリ

衣「わーわー! やめろー!」


泉「先輩遅いですね」

怜「もうすぐ始まるのになー」

セーラ「しゃーない、俺がちょっと見てく……」

ガチャ

竜華「竜華さんのご帰還やでー」

浩子「遅かったですね……、……」

衣「やめろー! 子供じゃないんだぞー!」バタバタ

浩子「あ…………ああぁ……」

セーラ(竜華が……)

怜(ちっちゃい子の手をばんざいさせながら帰ってきた……)

泉「せ、先輩が子供を拉致ってきたー!」ガクガク

竜華「人聞きわるい事言わんといて!?」

衣「だから子供じゃないと言ってるだろーが!」ナミダメ

浩子「ちょ、泉それ私の台詞やん」

泉「すみません、たまにはボケでも存在感だしとかなあかんかなー、思いまして」

浩子「今のはあかんやろ。私が先に震える声で伏線はってたやん。横取りはあかんやろー、ほんまに」

泉「はい、すみません」

セーラ「お前ら、それ続けるなら部屋の隅っこでやれや」

衣「むー! むー!!」ダンダン

怜(つり下げられながら地団駄踏んどる。なんやこのかわいい生き物)

浩子「で、結局どないしたんです?」

竜華「いやー、トイレ行った帰りにちっちゃい子が泣いてるやろ?」

衣「小さくないし泣いてもない!」

竜華「この子の知り合い来るまで、ここにおればええかなーって」

泉「それで阿知賀の大将拉致って来たんですか」

竜華「阿知賀? ……え!?」

怜「あー、やっぱ竜華気付いてなかったんやなー」

竜華「だって制服着てないし! なんかちょっと雰囲気やってちゃうやん!」

怜「私らも私服やん」

セーラ「ウサギっぽいカチューシャついてないだけでこんなに分からんくなる奴っておるんやなー」

浩子「そもそもインハイ会場に部外者が入れる訳ないじゃないですか」

竜華「やめてぇ! 哀れんだ目で見ないでぇ!」

衣「いい加減衣をはなせー!」バタバタ

浩子「泉、分かってるやろ?」

泉「はい、隣行ってきます。先輩は?」

浩子「こんなもんで問題にはならんやろうけど、一応おばちゃんに報告しとくわ。「また竜華か」ですって」

竜華「また!? またって何!?」

衣「はなせー! ばかりゅーか!」

本日はこれまで

おつよー

乙です

セーラ「で、まさか次の対戦相手と一緒に見ることになるとはなあ」

穏乃「いいじゃないですか! 一緒に見ると楽しいですよ!」

竜華「あわわ……衣ちゃん、許してほしいんやけど……」

衣「キシャー!」

浩子(めっちゃ威嚇しとる)

胡桃(すっごい威嚇してる)

怜「元気やなー」

初美「園城寺さんは元気ないですねー」

怜「同い年やし、園城寺さんとかかゆくなるから、名前で呼んで」

初美「じゃあ私も初美でいいですよー」

泉「初めまして、私は千里山の二条泉言います。真屋さんの大胆な中に堅実さのある打牌、ほんま参考にさせてもらってます」

由暉子「あ、いえ。こちらこそインターミドルで活躍した二条さんの、安定して負けずに勝つ打ち方、勉強させて頂きました」ペコ

泉「あの阿知賀の先鋒にそう言ってもらえると、なんだか嬉しいですよ。あ、でも勝つのは千里山ですからね」

由暉子「私たちも負けぬよう、全力を尽くします」

怜「なーなーフナQ」

浩子「なんです?」

怜(今更やけど、こんな集まってええの? 余計な情報与えん?)

浩子(与えてまうでしょうけど、なにかと露出の多いうちと比べれば、確実に得る方が多いですから。おばちゃ……監督も了承済みです)

怜(そこらは抜かりないフナQの事やから心配してないわ。ま……今日の友が明日の敵やったらあかん理由もないか)

浩子(そんなとこです。本格的なミーティングは、夜にという事で。私がなるべく全体を聞くようにはしてますが、先輩も、何かヒントになりそうな所は集めといて下さい)

怜(ん。りょーかいや)

胡桃「あのさ」

浩子「ん? なんです?」

胡桃「そういうのは私たちに聞こえないようにやってほしいんだけど」

怜「えー。やって、なあ?」

浩子「実際話しただけで麻雀の何が分かるわけでもないですしね。というか何局分も牌譜見てますし」

怜「むしろツッコみ待ちやん? もっとキレッキレの言葉くれんとなー」

浩子「せっかく腹黒アピールしてたんだから、そこ使ったりとか色々あるでしょ」

胡桃「えぇー……。なんで私がダメ出しされてるのよ」

初美(胡桃ちゃんが押されてますねー。珍しい)

竜華「なー、私が悪かったから仲直りしよーよー」

衣「うーっ! そう言ってまた衣を子供扱いしようとするんだな!」

竜華「えー? そんな事言うたかて、衣は年下やろ? 私三年やししゃーないやん」

浩子(あの人ほんまなにやっとんねん)

穏乃「衣さん、別に可愛がられるくらいいいじゃないですか」

衣「いやだ! 穏乃はそういう事されないから言えるんだ!」

穏乃「そんな事ないですよ。そうだな、例えば……お姉ちゃん!」

セーラ「ん? あ、俺か。おーし、どうした妹よ!」

穏乃「おねーちゃーん!」バッ

セーラ「いもーとよー!」バッ

穏乃「りゃー!」ダキツキ

セーラ「おーしおし、穏乃はかわええなー」

穏乃「えへへー」ワシャワシャ

穏乃「と、こんな感じであんまり気にする事ないですって! たまにはこういうのも悪くないんじゃないと思いますよ」

衣「む……むぅー……」

竜華「な、私が全部悪かったから。仲直り、してほしーなー」

衣「……、衣がしていいって言うこと以外、してはだめだ」グイグイ

竜華(座らされて……)

衣「ん」ポフ

竜華(私の上に座ったー! あー! なんやこれほんまかわいい! めっちゃ妹とかに欲しい!)

怜(竜華が荒ぶっとるなー)

初美「怜はもしかして、体の調子がよくないですかー?」

怜「あれ、分かるん? さっきまで転がっとったし、調子ええからそういう風に見えないと思ったんやけどなぁ」

初美「これでも巫女ですからねー。そういうのは分かるですよ」

怜「なにそれ巫女さんすごい。進路の選択肢に巫女さん加えよか本気で迷うわ」

初美「十年の修行が必要ですよー?」

怜「普通に進学しよ」

初美「はれ? プロにはならないんですか?」

怜「あー。実際問題、体調がネックでなぁ。クラブさんが割と二の足踏むんよ。フリーでプロって手もあるやろうけど、そっちの方が辛いしなぁ。そういうはっちゃんは?」

初美「私もプロにはなりたいですけど、麻雀も一応実家を継ぐための修行の一貫なのですよー」

怜「おうちのもんだいかー。そら厳しいなあ」

初美「私たちの場合、考えられる時間ももうありませんしねー」

怜(そう言えばこの子同級生やった。ぜんぜん見えんわ)

初美「今失礼な事考えましたねー?」

怜「なんで分かるん。巫女さん怖い」

浩子「ぐえっへっへ。山ほど自分語りするがええで。そいつを元に、お前らの情報をしゃぶり尽くしたるわ。くっくっくっ……」

胡桃「無理のある腹黒アピールやめっ!」

浩子「ゆうたって、もう向こうで濃いコンビばっかり出来てるしな。泉やないけど、ここらで一発存在感出してかんと」

胡桃「別にいいじゃんそんなのどうでも……」

浩子「なに消極的な事言ってますん。参謀キャラはこういう所で何か掴まんと生き残れませんわ」

胡桃「そもそも参謀キャラじゃないからね」

浩子「まあ鹿倉さんは背伸び系ロリ委員長キャラですもんね」

胡桃「余計なものばっかり付けない!」

浩子「でもだまーっとったって忘れられるだけやで? 世の中目立ったもん勝ちや。ほら向こうの……」

胡桃「ん?」

由暉子「こういう場合は……河のこの線を見て下さい。ここで字牌が出てると言う事は逆に……」

泉「ああ、なるほど! そういう読みもあるんですね。じゃあここのわざとらしい……」

由暉子「確かに。大変勉強になります」

浩子「あの基本クソ真面目な二人。もう存在感消して二人の世界に入ってるやん。あれでええんですか?」

胡桃「ああ、うーん。目立った方がいい……のかなぁ?」

セーラ「しゃべっとるのもええけど、そろそろ始まるでー。穏乃も静かにな」

穏乃「うっすお姉ちゃん!」

浩子「まだやってたんか」

胡桃「いつの間にというか必然と言うか、体育会系になったけどね」

健太『まもなくインターハイ二回戦第二試合が始まろうとしています。実況は私三科健太と、解説に藤田靖子プロを迎えています』

靖子『よろしく』

健太『本日はシード校である臨海女子はもちろん、安定した強さを持つ名門姫松、圧倒的な点差で勝ち上がってきた岩手の雄、宮守女子に注目が集まります』

健太『藤田プロ、二回戦第二試合の見所はどちらになるでしょうか?』

靖子『その前にちょっといいか?』

健太『え? あ、はい』

靖子『ここで特別ゲストを紹介する』

健太『はい。……はい?』

靖子『皆知っていると思うが、トッププロの一人、三尋木咏プロだ』

咏『いえーい、みんなの咏さんだぜぃ』

健太『………………、はぁ!?』

胡桃「」ブパッ

初美「あの人なにやってるですかねー?」

竜華「あははははは! アナウンサーめっちゃ動揺しとるやん!」

怜「脚本になかったんやろなぁ。ええリアクションするわほんまに」

健太『ちょっ、三尋木プロは現在、阿知賀のコーチですよね!? 呼んで大丈夫なんですか?』

咏『さあ? 私は呼ばれたから来ただけだからわかんねー』ケタケタ

靖子『さあ? 私は誰か呼べないかと聞かれたから呼んだだけだし知らんな』

咏『求められたから来ただけの私は悪くない。靖子ちゃんに責任があるという事で』

靖子『局に言われるまま動いた私に責任はない。悪いのはテレビ局という事で』

健太『こいつら……!』

泉「実際、これって大丈夫なんですかね?」

浩子「大丈夫や、現役監督が解説したらあかんっていうルールはないしな。麻雀やって別にテレビと違うところが見られる訳でもないし」

衣「分かっててからかっているのだな。……いつものウタだ」

セーラ「いつもこんな感じなんか。うちの監督やなくて良かったわ」

穏乃「咏さんかっこいー!」

由暉子「頑張って下さい」

靖子『ところで三尋木プロは、先鋒戦はどこに注目すべきだと思う?』

咏『そーだねー。ま、ここで辻垣内選手だって言うのは当たり前なんだけど……』

靖子『順当すぎて面白くないな』

咏『だよねぃ。だから、私は姫松のドラちゃんを推そうかねぃ。あの子、姫松不動のエースに叩かれてるだけあって、いい時の振れ幅でっかいし』

靖子『ほう。そうなったらキーは松実玄の姉である、宮守の松実宥も面白そうだな。妹の方より小粒なイメージはあるが、妹の事はよく知っているだろうし』

泉「……最初の弾けっぷりからは想像できないくらい、普通に解説してますね」

怜「あれかなあ、三尋木プロは一人やと駄目な方に走るタイプなんかな」

穏乃「咏さんはふざけるときはふざけるけど、やるときはやるよ」

竜華「へー、そーなんやー」

胡桃「うんまあ、不本意ながら」

…………

セーラ「うわ、プロ二人の言うとおりになったわ」

初美「まさか辻垣内さんが沈むとは思いませんでしたよー」

竜華「きゃー! 玄ちゃんかっこえー! さすがは同じ竜を持つ者やな!」

由暉子「……?」

泉「すみません、清水谷先輩はいつもあんな感じなんよ。フィーリングでよく分からん思ったらほっといてええから」

由暉子「はい」

竜華「ちょ、酷ない!?」

浩子「あっちは明確にドラ引いてますけど、清水谷先輩名前以外に関係ないやないですか」

…………

健太『次鋒戦が終わりました。順位に変動はありませんが、臨海女子が追い上げています。集中的に狙われた姫松高校は点を下げていますが、中堅戦ではいよいよエースの出陣となります』

健太『臨海女子からは風神と名高い雀明華選手が出ますが、彼女を愛宕洋榎選手と比べて、どう予想しますか?』

靖子『そう言えば、福与アナに阿知賀麻雀教室の事を言ったのは三尋木プロなのか?』

咏『そーだよー。まーすこやんにはお世話になったし、ついでに面白いかなと思ってねぃ』フリフリ

靖子『確かにあれは面白かったな。あの人、なんであんなに弄るといいリアクションとるんだろうなあ』

咏『もう「弄って下さい」という看板をかけんばかりの弄られキャラだよねぃ』ケタケタ

健太『仕事しろ』

衣「あの二人の相手をしなければいけないのか……アナウンサーとは過酷な仕事なのだな」

泉「あんなの滅多にありませんよ。私だって見るの初めてです」

穏乃「おねーちゃーん、そのお菓子ちょーだーい!」ベター

セーラ「ははは、このいやしんぼめ。だがやらん!」

穏乃「ひどい!」

怜「それ気に入ったん?」

竜華「なーなー衣ちゃーん。私らもあれ、やらん?」

衣「絶対にやらない」

由暉子「でも、おなかが空きましたね。そろそろお昼ですし、何か食べませんか?」

初美「食べにいってもいいけど、せっかくだしここで一緒に出前取りましょうかー」

竜華「あ、ええなそれ。賛成! 私中華!」

セーラ「俺はがっつり食えるもんならなんでも」

穏乃「お肉食べたい!」

浩子「まあ待ち。どうせ見ながらゆっくり食べるんやから。冷えたらまずい中華はやめときましょ」

胡桃「じゃあピザとか? サイドメニューまで考えればがっつりもお肉もいけるし」

怜「ピザの出前かー。やったら私はパスタとかがええかなぁ」

衣「衣もそれがいい!」

由暉子「私が注文するので、皆さんは食べたいもののメモをお願いします」

…………

泉・浩子・怜・竜華・セーラ「………………」ポカン

泉「いやちょっとこれは……ほんまに現実ですか?」

浩子「まさか臨海おさえられて姫松と宮守が出てきよったわ」

怜「こんなこと……あるもんなんやなぁ」

セーラ「恭子よく堪えたなー。あれ俺やったら途中でつっぱしるわ」

竜華「なあ、浩子。これ姫松と宮守はチェックしなおした方がええんとちゃう?」

浩子「当然します。先鋒の松実姉妹はちょっと過小評価しすぎてたみたいでしたし。多分監督はもう始めてると思いますわ」

衣「なーなートキ」

怜「ん? なに?」

竜華「なんやん衣ちゃん! 聞きたい事あったら私に聞いて!」

衣「りゅーかはあっちいけ」

竜華「あっち行け言われた!」

怜「あれはほっといてええから。で、何やの?」

衣「みんな驚いてるが、それほど大事なのか」

怜「そうやなぁ……フナQ、なんかええ例えない?」

浩子「アメリカ・フランス・中国・グルジアの宮永照、ないしはそれに近いレベルの選手を集めたチームが臨海女子なんや」

穏乃「うえっ! それが負けたんですか?」

セーラ「今頃マスコミは上へ下への大騒ぎやろうなあ。なにせガチの優勝候補が、まさかの二回戦敗退やし」

胡桃「冗談じみた展開になってきたね……」

由暉子「先輩、どうしましょう? 宮守の情報、殆どないです」

初美「咏さんにも連絡して、なんとかかき集めるしかないねー」

胡桃「いつもは逃げるのに、今日は働いてくれるのね」

初美「さすがにこれは洒落にならないですよー。あそこの大将、まだまだ何か隠してる様子でしたし」

胡桃「それには同意。二回戦で全部を見せたチームは殆どないだろうけど、あそこは不気味すぎるね」

泉「とにかく、今日は解散ですね。宮守情報集めなきゃいけない上に、目先の戦いも無視できませんし」

竜華「そうやった、次の相手阿知賀やん! 衣ちゃん、私と離れても絶対に泣かんでなー」

衣「大将戦で絶対に泣かしてやる」

浩子「泉、うちの部長引きずってきて。それじゃ、今日はありがとうございました。中々有意義な時間でしたわ」

胡桃「いえ、こちらこそ。迷子の面倒を見て貰ったりして」

衣「衣は迷ってないぞ!」

胡桃「そうだね。穏乃、由暉子、両側から衣押さえて、絶対に離さないようにね」

穏乃「了解です!」

由暉子「分かりました」

衣「聞き分けのない子供みたいに扱うのはやめろー!」

本日はこれまで


ところで玄ちゃんって胡桃やはっちゃんと面識あったりするのかな

乙。


セーラお兄ちゃん呼びじゃないのねさすがにww

乙です
セラ穏…  アリだな

おつおつ

二回戦第三ブロック・阿知賀控え室


咏「おーし、全員揃ってるねぃ」

穏乃・由暉子・衣・初美・胡桃「はい!」

咏「元気がいいのは良いことだよ。……胡桃、前に私がなんて言ったか、覚えてる?」

胡桃「インターハイは二回戦からが本番! 二回戦からは必ず強敵と遭遇し、準決勝からは強敵しかいない!」

咏「その通り。由暉子、千里山はどんな所かな?」

由暉子「宮永照選手がいなければ、去年と一昨年のインターハイ優勝校は千里山だった、と言われる程の強豪です」

咏「そ。ちなみに、明確に尖った才能を持ってるのは先鋒の子のみ。それ以降の子は持ってない。つまり――ただ単純に、強い」

衣「欣喜雀躍! 衣はそういう相手を求めていたのだ!」

咏「少年漫画の戦闘狂みたいな事を言ってる子はおいといて。気後れしてる子はいないねぃ」

穏乃「だいじょーぶですっ! もっ! すっごい全開ですから!」

咏「うはは、元気があって大変宜しいねぃ。でも、二回戦じゃ相手が思いきり手を抜いてくる可能性も高いけどね」

衣「え……? なぜだ?」

初美「二校が浮いて二校が沈んだから、手の内を晒してまで全力出す理由がありませんからねー。第一ブロックなんか、そのものの展開でしたよー」

衣「…………」ショボン

胡桃「そこ、気を抜かない!」

咏「本気出すも出さないも、状況によってでしかないからねぃ。ま、どっちに転んだところで、準決勝は地獄だから安心するんだねー」ケラケラ

初美「それで安心できるというのも、おかしな話ですけどねー」

咏「細かい事は気にしなーい。それじゃあ由暉子、勝っといで」

由暉子「はいっ!」

穏乃「由暉子ー! 大丈夫、今の由暉子はチャンプより誰より強い!」

由暉子「はい……ありがとうございます。それでは……出陣します!」


怜(うーん、先鋒の卓ってどうも慣れんなあ。未来が見えるようになったとか最近やから仕方ないんやけど)

怜(監督にも言われたもんなあ。「お前の一番駄目な所は腰が引けとる所や!」って。でもこればっかりはなぁ。死にかけて一巡先が見えるようになって……いかさましてる気分や)

怜(でも、それで止められる訳やなし。何はともあれ勝つ。まずはそっから)

由暉子「よろしくお願いします」ペコリ

怜「おー、よろしくー」ヒラヒラ

怜(来たなぁ、二回戦最大のライバル。他は富山の射水に兵庫の劔谷、ここらは言ったら失礼やけど、うちらの敵やない。相手に相当運が良くっても、勝つ自信があるわ)

怜(まあ、誰が相手でも関係ないか。監督も言っとったし)

由暉子(先鋒で全体の流れを掴み損ねて臨海女子は負けたと、咏さんも言っていました。故に先鋒だけは……)

雅枝『ええか、先鋒戦言うんは、ただの「団体戦の一番最初」やない。団体戦の流れ全体を占うもんや』

咏『先鋒は理屈じゃないんだよねぃ。そこで勝ちの意識と負けの意識を植え付ける事もできる。言わば最初の格付けだよ』

雅枝『白糸台がうちなんかを差し置いて「王者」なんて言われとるんもそこが理由や。あそこは団体戦二連覇したから王者、なんやない』

咏『先鋒戦で必ず勝てる。三対一で叩きのめせる。最初で必ず格付けを確定させられる。絶対に相手を見下ろせる。だから王者なんだねぃ』

雅枝『やから……』

咏『だから……』

雅枝・咏『先鋒戦は全力でなくとも必ず本気でやること』

怜(りょーかいや)

由暉子(はい。本気で向かいます)

怜(手が軽いなぁ。阿知賀さんは……手牌は悪くない感じ? やけど自摸が悪いな。次は……ん、ここはお先に貰っとこ)

怜「リーチ」トス


衣「な、なんなのだあれは!?」

胡桃「怜さんのリーチ一発だね。分かっていても厄介だよ」

初美「由暉子ちゃんは……押さえる気がありませんねー」

穏乃「由暉子はいつもそうだよ。1局か2局は無理に上がりを目指さずに、対局相手の情報収集に集中する!」

衣「そうではない!」プルプル

初美「他の何かですかー? ええと、劔谷? でも何かしてる感じもないけどー」

衣「違う……あの立てたリー棒……かっこいい」キラキラ

胡桃(あ、これはダメだ……)

穏乃「はっ! た、確かに!」

胡桃(こっちもダメだ)

衣「衣は大将戦で絶対あのリーチするぞ! 今から練習だ!」

穏乃「私も! 私もやります! 立てリーチ一発……うへへ……」

衣「むふー……」

胡桃「……別にいいけどっ!」

初美「胡桃ちゃんもやりたかったですかー?」ニヤニヤ

胡桃「違うし!」


怜『ツモ。3000・6000』

セーラ「おー、いきなりハネたわ。調子ええなあ」

浩子「……観察されましたね」

泉「劔谷のチャンタ気配、分からん由暉子やないですからね。なのに出したんは毒にも薬にもならん半端な牌、と」

竜華「鳴かせとったら満貫やったのにな。どんなつもりやろ」

セーラ「なんや、舐めとるんか?」

浩子「ちゃいます。卓上から園城寺先輩の「性能」を直接感じる為なんちゃいます? 意図は分かります。それでも私なら鳴かせますけど」

泉「多分あれですね、4000点の差なんて大した事ない、思ってますね」

セーラ「なんや、やっぱり舐めとるやん」

竜華「舐める、言うか自信やない? 三尋木咏の弟子、高火力麻雀の打ち手、いう自信」

セーラ「その自信が千里山のエースに通じる、思っとるんが傲慢や。怜、そんな奴に負けたらあかんで!」


由暉子(読みの深さは、私が上です。ただし、「予知」を上回ることはできそうにありません。それに、思ったよりも打点が高いです。つまり……普通に打ってやや速度重視でいく、これが最適です)

怜(くるんかな……?)

由暉子(一向聴……普段なら使うところではありますが、恐らく園城寺先輩には見せない方が良いです。それに……)

怜(あれ、来ないなぁ……。あ、でも)

由暉子「リーチ」

怜(普通に自摸ってきたわ。まあ、こういう事もあるな)タン

由暉子「」タン

怜(次で和了かぁ。じゃあこれで)タン

美幸「それチー!」

怜(ずらしたらどうなるん?)

由暉子「ツモです! 2000・4000」

怜(普通に上がられたなぁ。しかも満貫やし。つかの間の一人浮きやったなー)パタン


胡桃「なんかあっさり和了がれたね」

初美「場に影響を与えるタイプの力じゃありませんからねー。運が良いとあんなもんですよー」

咏「そこら辺の感覚、私はよくわかんねーんだよねー」

初美「仕方ないですよー。能力の有無はそのまま感覚の違いですし。むしろ能力ないのに何となく感じ取れる時点でおかしいですよー」

胡桃「あれなら勝てないまでも、由暉子なら負ける事もないね」

咏「他に厄介そうな相手もいないしねぃ。……ところで、あの二人何やってんの?」

穏乃「ああっ! 勢い良すぎてリー棒弾けた! 山が崩れたぁ!」パチーン

衣「……ぜんぜん立たないぞ……」ショボン

胡桃「無視して下さい。本気で」


怜(リードは作れとる……けどあんまりええ展開ともちゃうなぁ。後ろにぴったり張り付かれてるし)

由暉子(園城寺先輩の能力、おおよそ全容が見えてきました。この順で検証、確認をしましょう)

由暉子(園城寺先輩は現在二向聴。ここで私が……)トン

美幸「チー!」

由暉子(上家が鳴いて再び自摸。これで三つ……そして今度は私が下家の捨て牌を……)

由暉子「チーです」

由暉子(これで六つと七つ……)

怜「」トン

遊月「ポン!」

怜(しまった……鳴かせてもうた。これ見られたなあ)

由暉子(射水の寺崎先輩を鳴かせてしまいました。これで確定です。園城寺先輩の未来予知は一巡……正確に言えば自摸、というか牌を引き入れる行為6回分までしか見えません)

由暉子(そして、自分の自摸と捨て牌は前巡時に見ています。鳴きが重なると、自分の自摸まで追いつきません。そしてもう一つ)

怜(ここで和了るんか。親かぶりはしたないなあ。やったら……)

怜「チー」

由暉子(一つずらされました。私の有効牌は上家に抱えられ、次に一向聴に崩し……)

由暉子「ポンです」

由暉子(下家の牌を鳴いて張り直し。そして園城寺先輩の捨て牌で……)

由暉子「ロンです。4500」

怜(これ完全に狙ってやられたよなぁ。私の能力、完全に透かされたと思った方がええかな)

由暉子(予知で見た未来を改竄した場合、平均して二巡半ほどは予知ができなくなっています。その前提で手を整えれば、行える機会は少ないですが、園城寺先輩から直撃を取ることも可能です)

怜(今の、この子なら振ってなかったんやろなぁ。あかんな、今のは明確に地力の差が出たわ。運やら何やらとは違う、観察眼と情報の運用能力……フナQの強化版かな)

怜(ま、やからって手も足も出んのとちゃうし。逃げに一巡先を見んでええ速度で作り、阿知賀の気配は慎重に探る、これやな。先に和了がれば何されようと関係ないわ)

由暉子(確認は終わりました。相手の能力の詳細を把握し、現在阿知賀と千里山だけが浮いている状況です。少々負けていますが……ここで左手を使って、詳細を知られるのは懸命ではありません)

怜(ここでトップを取りに来てくれたら、準決勝やりやすくなったんやけどなあ。普通に引かれたわ。なんやん、一年ってもっとがっついてるもんなんちゃうん?)

怜(あれもこれもそれもどれも、しゃーないもんはしゃーない。リーチはちょっと控えるようにして、今の調子で稼げるだけ稼ご)

由暉子(左手を使いたい場面はいくつもありますが……順当に行けば次は永水の神代小蒔先輩と当たります。初美先輩は可能な限り見せない方がいいと言っていましたし、ここは隠蔽で)チャ

怜「ツモ。800・1600」

由暉子「ありがとうございました」

怜「ありがとうございました」

由暉子(一時はリードを奪ったものの、最後にめくりあいで捲られてしまいました。こればかりは仕方ありません)

怜(危なかったなあ。エースもらっとんのにいきなり二位とかはしゃれにならんわ。まあ、144200と143600なんて800しかないリードでも、リードには違いないしな)


泉(鹿倉胡桃……ちっこい姿に似合わず麻雀は烈火の如し、か。読みは安定して深く、真屋ほどやないけど振らん。県大会での和了率は宮永照を超えて全国二位や)

泉(とはいえそれで宮永照より優れとる、言うわけやない。総合的な打点が低いっちゅうことや。それより驚異的なのは……ダマ率100パーセント、ロン率9割超え)

泉(正真正銘、バケモノの一人やな。明確に今の私よか格上や。しかし……)

泉「ツモ! 一人じゃ走らせませんよ!」

胡桃「上等!」

泉(足りない分は千里山の一年レギュラーっちゅうプライドで補うわ!)

セーラ「なあ、はっちゃん」タン

初美「なんですかー?」タン

セーラ「去年のインターハイ、覚えとる?」タン

初美「覚えてますよー。団体戦ではポジション違いましたが、個人戦で戦いましたねー」タン

セーラ「俺な、まだ許せてへんねん。去年、お前に稼ぎ負けた事を……や」タン

初美「へぇ……じゃあ、どうするんですかー?」 タン

セーラ「監督はほどほどになんて言うとったけど、俺はそんな器用なタイプちゃうんや。去年の借りは、今返す!」ゴア

初美「ふふふ……じょーとーですよー!」ゴア


穏乃「おっし、ついに来たー!」

浩子(なんかしてくれるんかな? 手札晒してくれるんなら悪くないけど、元々気分で打牌を変える奴には有効に働きづらいんよなあ。ま、ええわ。データ頂きます)

穏乃「リーチ!」ビシッ!

穏乃「あ……」パタン

穏乃「……すみません……リーチ……します」

浩子(めっちゃテンション下がった。っちゅーか園城寺先輩のリーチまねたかっただけかい!)

衣「ふーんふふーん♪」

竜華「なんや、衣ちゃんずいぶんごきげんやな」

衣「りゅーかはとっても強いからな! 戦うのを楽しみにしてたぞ!」

竜華「そーかそーか、ほんまかわええなぁもう!」

竜華(あ、でもこの手牌……あ、いやうっそここで? ほんま? あーっ! いやもうこんなん見逃せへんし!)

竜華「その、ごめんな衣ちゃん……」

衣「へ?」

竜華「ロン、です。その……四暗刻単騎で。射水の飛びで終了……です」

衣「…………え?」

竜華「こ、ころもちゃん?」

衣「まだ東一局なのに……?」

竜華「いやのそ、私もちょーっと悪いかなぁとは思ったんやけどな?」

衣「りゅーかなんて嫌いだー! うわーん!」ダーッ

竜華「ほんま悪かったって! でもできちゃったんやから仕方ないやん!? ころもちゃーん!」

本日はこれまで

さりげなく衣の支配を抜け出たな
衣が本気だったかは知らんが

乙です
失敗してションボリする穏乃可愛い
全く打てず走り出す衣可愛い
次からが本番かな

おつおつー
できちゃったもんは仕方ないだろうよころたん...

乙。

おつおつ
まんま子供かわいいww

咏「えー、第何回目か、阿知賀麻雀部会議ー」

初美「わー」パチパチ

咏「合いの手ありがとねぃ。で、今回の議題は……」

胡桃「ついにいじけちゃった衣の事だね。まったくもう、子供なんだから!」

穏乃「でも仕方なくもありますよ。今まで一度もまともに打ってなかった上に、やっと出番だと思ったら四暗刻で即終了とか」

初美「衣ちゃんじゃなくてもへこみますよー」

由暉子「私は、よく分かりません……分かりたいとは、思うのですが……」

咏(うお、こっちも悩んでんなぁ。つっつくのは……今はやめとこ)

穏乃「あ、そう言えば衣先輩、まだ第一ブロックの試合見てませんよ! あれ見れば元気になるんじゃないですか?」

胡桃「ダメ。あれは見せない」

初美「見てないんじゃなくて見せてないんですよー」

由暉子「え? それで大丈夫なんですか?」

咏「逆効果だからねぃ。あの子は少年漫画的に、真正面から全力で殴り合う的な麻雀がしたいんだよ。いくら白糸台と有珠山の子が学生らしからぬ試合運びをしたって言っても、衣には理解できない」

穏乃「???」

胡桃「穏乃は分からなくていいよ。がむしゃらに頑張ってくれれば」

穏乃「? よく分からないけど頑張ります!」

咏「衣は時間が解決してくれるか……じゃなきゃ明日の第四試合で火が付くのを待つべきだろうねぃ」

初美「永水女子に清澄に……あと目立った所は越谷女子ですかねー。いい試合しそうですかー?」

咏「んにゃ、荒れそうだね。そんで長くも続かないと思うよ」

由暉子「……飛び終了だと予想しているのですか?」

咏「私の予想通りなら、多分ね。遅くても中堅あたり……早けりゃ先鋒戦で飛ぶよ、あれは」



第四ブロック二回戦・清澄控え室


透華「それでは、行って参りますわ」

咲「透華先輩、頑張って下さい!」

和「透華さんなら大丈夫ですよ。きっと勝てます」

透華「ええ、当然ですわ。デジタルの力、見せて差し上げますわよ!」

優希「私の代わりに先鋒になったんだからな。ぶっちぎりの活躍してもらわなきゃこまるじぇ」

透華「当然でしょう? あなたの十倍活躍して差し上げますわ」

優希「んん?」ニラミ

透華「なんですの?」ニラミ

和「いい加減にしなさい……と、言わなければいけませんか……?」

優希「ごめんなさい」

透華「謝りますから無表情のまま睨まないで下さいまし」

まこ「しかし、今回ばかりは透華で大丈夫かのう……?」

透華「あら、私の実力が信用できませんの?」

まこ「そこは疑っとらん。が、如何せんデジタルじゃしのう……」

透華「ああ、あの「デジタル打ちは先鋒になれない」という都市伝説を信じてますの?」

久「都市伝説ってあんた……」

和「効率を重視した打ち方は、当然リターンも少なくなります。自然と浮き沈みも小さくなりますし。先鋒にデジタルが少なく、中盤に多いのはちゃんと理由がありますよ」

咲「あれ? でも透華先輩は先鋒ですよね?」

透華「当然、私が完璧で華麗に勝つデジタルだからですわよ!」

久「まあ全然違うけどね。本人が希望してたって言うのと、デジタルに徹しきらないからよ。これで和くらい完璧にデジタルしてたら、いくら言っても先鋒にしなかったわ」

透華「ん? あまり誉められてる気がしませんわ……?」

まこ「その自信はどっから湧いてくるんじゃ……」

優希「うむ、つまり真の先鋒は私ってことだな!」

透華「……ハッ!」

優希「お? 今鼻で笑ったか?」

和「優希……透華先輩……」

透華・優希「申し訳ありませんでした」

久「あの子達は置いといて。確かに今回ばかりはまずいカンジなのよねぇ」

咲「……永水の先鋒さんですよね」

久「咲は分かった? 私はこう、かなり漠然とした感じだったんだけど」

咲「見た瞬間、すっごいびりっと来ました。「あ、この人強い」って一発で分かりましたよ」

まこ「でも透華には「あれ」があるじゃろ? 咲とプロ相手に大暴れした」

久「あれね……確かにあの落ち着いた透華は強いけど、それにはあまり期待したくないのよ」

まこ「なんでじゃ?」

久「使い所を自分で選べず不安定だ、っていのもあるんだけどね。一番の理由は、本人が嫌がっているものに期待したくはないのよ」



二回戦卓へ続く廊下


小蒔「」テクテク

憧「こま!」

小蒔「わっ! 憧ちゃん、どうしたんですか?」

憧「ごめん、これから卓について集中しようって所で」

小蒔「それは大丈夫ですよ」

憧「うん、それで……あー、ちょっと言いにくい事なんだけど。やぱり言っとかないと後悔しそうだから言うわ。私には神降ろしが良いことか悪いことかは分からないわ」

小蒔「…………」

憧「そんでもって、こまがそれを嫌がってるかどうかも。でも、もし嫌だったら……勝つためにとか思って、やる必要はないわ。大丈夫、それでこまが負けても、その分私が勝つ!」

小蒔「憧ちゃん……」

憧「そりゃ私たちだって優勝したいけどね、だれか一人を犠牲にした優勝なんてまっぴらよ。私は、全員で勝ち取ったって、誇って言える優勝をしたいの」

小蒔「……ふふ。憧ちゃん、大丈夫です。私、憧ちゃんに言って貰って、変わったんですよ? 今は神様に打たされてるんじゃありませんから」

憧「……本当に?」

小蒔「はい、本当です」ムン

憧「分かった。こまを信じるわ。じゃあ……ぎゅーっ」

小蒔「あ、憧ちゃん、恥ずかしいですよぅ」ギューッ

憧「エネルギー注入! これで今のこまは私くらい強いから! じゃ……行ってらっしゃい!」

小蒔「はい、行ってきます!」

小蒔(始まった……とにかく頑張りましょう)ムン

透華(神代小蒔……昨年の団体戦MVPでしたわね。打ち筋は――はっきり言って、弱い。豪運もそれを生かす手腕も認めますが、如何せん素の能力が低い。ちょっと引っかけると、簡単に振ってくれます)

透華(……と、言うのも去年までの話。今年度からはみるみる地力を付けて、不調時でも安定した打牌をできるようになっています)

透華(ああ、そう言えば和が言ってましたわね。彼女の打ち筋は永水の、元同門副将そのままだと。なるほど、和と同じ指導を受けた者が教師役なら、弱いはずがありませんわ)

小蒔(あ、そろそろ来ます)

小蒔「みなさん、少々失礼します」

透華(ん、なんですの?)

越谷女子・ソフィア(もう来た!? 今年からやり始めた……神代の柏手!)

透華(そう言えば久が言っていましたわね。神代小蒔が豪運を発揮するときは、必ず手拍子をするとか。いいですわ……! これから本気ですのね。それを倒してこそ、私が一番目立つのですわ!)

パン……




――――かみさま


   ――――かみさま


      ――――かみさま




            ――――私といっしょに、麻雀を楽しみましょう――――



ヴォ――――――――!!



ソフィア(な、なんだよこれ……ここどこだ……? 本当に雀卓か? ほ、本当に……冗談やめてよ……)

透華(こ……え……なんでしょう、この感じ……。懐かしいのに……どこか……踏み言ってはいけないような……)

透華「………………あ…………」



リ――――――――――――………………



小蒔(え? かみさま、ここに一人、何かが居ます)

透華「…………」

小蒔(清澄の方、のようですね……。でも、あれではダメです。少し前の私です。あれでは……清澄の方がいらっしゃいません)

小蒔(倒しましょう、かみさま。倒して、彼女の正気を取り戻すんです! 憧ちゃんが私にそうしてくれたように!)

透華「…………」タン

恒子『ええと……小鍛治プロ、解説お願いします……』

健夜『その……これを解説と言われても……何も言えることがないと言うか……』

健夜『と、とにかく、二回戦第四ブロックを勝ち抜いたのは、清澄と永水女子です。そして、その……先鋒で、両校が猛威を振るいました』

恒子『私も正直、言葉が出ません。麻雀ってこんなことがあるんですね……』

健夜『私も初めて見ました。一試合で10万点を稼ぐ選手というのは、数少ないながらもいます。ですが、強い人二人が激突して、結果二校が10満点近く稼いだ、というのは初めて見るケースです』

恒子『大物手と和了の連続で派手な試合ではあったのですが、正直寒気すら感じましたよ』

健夜『麻雀を見ている気がしませんでしたからね。次にこの二校と当たるのは、千里山女子と阿知賀女子ですね。彼女たちは対処に苦労することでしょう』

恒子『つまり小鍛治プロとしては、両校の先鋒よりも、神代選手と龍門渕選手の方が勝っている、と?』

健夜『さすがにこの試合を見た後だと、互角とは言えませんね。彼女たちは強すぎる。特に、神代選手が』

恒子『点数的には、それほど差がなかったと思うんだけど。明確な差とかありました?』

健夜『うん。打ち筋がどうのって言うんじゃなくてね。神代選手が上手く制御していたのに対して、龍門渕選手は明らかに振り回されていました』

健夜『多分このままだと、今日の結果と同じく、龍門渕選手は神代選手の後塵を拝する事になるでしょう』

恒子『なるほど。ちなみに次鋒戦で飛び終了しましたが、そちらはどうでしょう』

健夜『染谷選手が上手かったですね。手牌、点数、河、状況、全てを見ながら直撃を取っていました。あれを躱せる人はあまりいないと思います』

健夜『惜しむらくは、局数が少なすぎて、あれが偶然上手くいったのか、それとも全て計算の上か。どちらか判断が付かない事でしょう』

恒子『以上、小鍛治プロの解説でした。さて、いよいよ明日からは準決勝が開始します! 出場校は宮守女子、姫松、白糸台、有珠山となっております』

恒子『有珠山は白糸台との対戦経験で、一回り大きくなっているでしょう。しかし、宮守女子と姫松も優勝候補である臨海女子を破ってきた経験と自信があります』

恒子『白糸台有利となっていますが、どこが決勝進出してもおかしくない! 灼熱の準決勝はすぐそこまで迫っています!』

透華「相変わらずアナウンサーなんだか実況なんだか分からない方ですね、福与アナは」

透華(しかし、なんで私はこんなに頭がくらくらしていますの? 気付いたら試合も終わっていましたし……。全く意味が分かりませんわ)

小蒔「あ、あの! 龍門渕透華さんで宜しいでしょうか?」

透華「ん? ああ、誰かと思えば永水の神代さんじゃありませんの。私に何か用ですの?」

小蒔「はい。その、一言だけ言いたい事があったので……」

透華「そんなに改まらずとも、言って頂いて構いませんわよ」

小蒔「それでは……。龍門渕さん、あなたは、それではダメです。麻雀を打たされているのではダメなんです。麻雀は打つものです。楽しむものです。偉そうなことを言ってごめんなさいっ、失礼します!」ダッ

透華「あ、ちょっと! まったく、何なんでしたの?」

透華(いえ、心当たりが全くないわけでもありませんわね。合宿の時も、確かいつの間にか夜でした。その時は牌譜を見せられても冗談だと信じませんでしたが……)

透華(とりあえず、戻ってビデオを見ましょう。判断はそれからで遅くありませんわ)

透華(でも、もし本当に、私が神代さんの言うとおり「打たされている」ような状況であった場合……対処しないとまずいですわね。この私がいいように使われるなど我慢なりませんわ)

透華「まずは久に相談してみましょう。……一年生には気付かれないように」

本日はこれまで
小蒔ちゃんは実は一番強化されています



こまぐるみ

乙です。

一緒に楽しみましょうというのは、いかにも小蒔ちゃんらしい成長で良いですね。


次で松実姉妹とあらたその中から少なくとも1人脱落するのか

乙ー
姫様は箱入り娘らしく性格も良いからね

おつですー
これでとーかが任意に冷えるとやべぇな

 目立ち透華と冷やし透華はどう折り合いを着けるのだろう。冷やし透華の性格次第で目立ち透華の受け入れ方も変わりそう。冷やし透華の出現タイミングを考えると、戦神か守り神のどちらかに見えるが…。どうなるか想像できなくて楽しみです。

待ってます

更新止まってる?

せっかちすぎだろうよさすがに...

まぁ気長に待とうや。
1レスでも報告があると嬉しいかな〜?

ヤバイなもう3週間くらい来てない。

ので催促カキコだ

おちつけ?
まだ三週間だろ?
それに>>1にも色々あんだろ?知らんけど

はやく

続き期待!

エタっちまったか面白かったのに残念

まだ諦めない

とりあえず今日で1か月かな

麻雀描写めんどくさくなっちまったんかな
とりあえずあとひと月待つか

エタったかどうかは俺らが決めるこったねーべや

そろそろ生存報告がないと

>>521
日本語でおk

まだ?

一か月検診

もうだめか残念

ま、まだ今日がある……

・・・・・・・・・。

落ちなければタイムアップじゃないじぇ!

まだ落ちるな

ロスタイム待ち。
作者まだスレが落ちてないから復帰する意思があるなら早く来てくれ

保守

むりかい?

これはもう限界か…。
誰かサイトへ保存を。

誰かじゃねえよ
あげんなハゲ

話広げ過ぎて死んだssか
お手本のような逃亡の仕方だな

エタったかな?とりあえず待ってはいるよ

>>373 水分量って何だよ 分水嶺だろ文脈的に

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