【艦これ】初雪「……いいよ、もう」 (17)
砲撃すれば敵が沈む
雷撃すればさらに多くの敵が沈む
作業でしかない
そう、作業
それは敵にとっても同じこと
敵が沈めば味方も沈む
何度も何度も繰り返す
無限に続くこの繰り返し
いつからだっただろうか
何もかもが面倒になったのは
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私が艦娘なんかになったのは、特に深い想いや憎しみがあったわけじゃない
ただ戦争が早く終わればいい
一人でも多く自分の手で助かる者がいれば、そう思っていた
幸せな生活へ誰だって戻りたいだろう
平和で豊かな人生を過ごすものはそのままに
今も絶望に打ちひしがれ、命すらも落としてしまったものに救済を
きっと幸せになってくれることを願って
私は艦娘になったことを誇りに思っていた
率先的に作戦へ参加し、疲れ切った仲間たちを助けようと頑張った
仲間たちもそんな私を受け入れ、たくさん笑いあった
大きな鎮守府ではなかったけれど、その分関係は深まっていった
戦うことが辛くても、それが皆のためになっているなら
そう考え、戦って、戦って、戦った
でもそれは長くは続かなかった
大規模作戦
これが私を変えた
最初はMI作戦でのことだったか
大規模作戦は他鎮守府との協力のもとに行われる
大量の艦娘が駆り出されるということだ
意気揚々と出撃した
今回もきっとうまくいく
そんな甘い考えを抱きながら
だが、私はその時に私は気付いてしまった
沈む
沈む
右を見れば、戦艦が体に穴を空けながら崩れ落ち
左を見れば雷撃で吹き飛ぶ数多の駆逐艦たち
守るべきものが、多すぎた
私はあらゆる手段を尽くして味方を助け、襲い来る敵を止めようとした
だけど
私は悟ってしまった
私がどうあがいても、救えない命が存在することが
目の前の味方を助ければ、遠方の味方が死ぬ
遠方の味方を助けに行けば、離れた隙にさっきまで傍にいた味方が死ぬ
私が助けに行く距離よりも、圧倒的に味方が死ぬ距離の方が短い
それでも、諦めずに奔走した
今度こそは
他の大規模作戦の度、そう思いながら傷ついたものを運んだ
手も、足も、止めない
全力で命に手を伸ばす
でも、目の前で壊れていく
泣き叫び、或いは静かに最後の言葉を私に遺す
私は泣いている暇などなかった
まだ、大勢の助けを求めるものが待っているのだから
そして新たな目標へ手を差し伸べに行く
結局、誰も助けることなんてできなかった
自身の無力さに絶望した
気が付けば私の鎮守府も生き残った者が片手で数えられるほどまで減っていた
とうに枯れた涙
漸く悟った
どうやっても自分は皆を助けることなんてできないと
ちっぽけな自分では、助けられる命などないと
だったら、もう、何もしない方がいい
痛いのはもう嫌だ
新たな鎮守府に配属された
私は出来る限り出撃要請を蹴り、一日中布団に包まって過ごした
布団で本やゲームをしながら食べ物を摘み、飲み物で流す
それがあればどうでもよかった
たまにする出撃も適当に済ました
味方が傷ついてもなんだっていい
だって私じゃ救えないんだから
耳に残る死に際の言葉の数々
『嫌…! いやだよぉ…』
『戦いの中で沈むのだ…あの光ではなく…本望だな…』
『野分、どこ? 助けてよ! 嫌…! 沈むのだけは嫌!』
『司令官…… どこ……?もう声が聞こえないわ……』
『沈むのは…呉鎮守府でって…決めてたんだけどな…』
夢に出る
私を呪う
どうして私自身は沈まないのだろう
余程運がいいのか
まぁどうでもいいことか
―――違う
私には関係ない
―――こんなことのために艦娘になったんじゃない
そら見ろ、また誰かが死んだ
―――私はただ……
もう助からない
せめてもの仇にその敵を撃ち仕留める
―――皆を、幸せに……
敵も味方も等しく沈む
適当に仕事をこなしたらひきこもる
提督がよく私にもっと働けと言うが、知ったことか
だから私は言う
この戦争が終わるか、自分が死ぬまで
……いやだ、触らないで…
……もうやだ、帰りたい
いたい、治したい…
ひきこもる
終わり
『ほんとは得意だし…こういうの』
『私だって本気を出せばやれるし…』
初雪は今の性格になるまで色々苦労したんじゃないかなって……ほんとは得意や本気を出せばっていうのはそう言う意味なんじゃないかって……史実?なにそれ、これ二次創作
でも実際にはちゃんと使えばがんばる…と言ってくれるかわいい子
こんな捻くれないように今日も初雪を愛でる
初雪ちゃんぐうかわ
乙
初雪は実は隠れSだと思っている
触らないでとかいう人は、なるべくそっと放置しておく方針だが
なんか命がけでチョコを買ってくるのに感銘を受けてLv30くらいまで育ててみた
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