アイスエッジ「今日はお足元の悪い中お越しいただきありがとうございます」
マリシャス「父のエッジマンと母のヴォルカニックエッジも喜んでいると思います」
両親の葬式の司会はこれが初めてだ、恐らくもう経験する事はないだろうが。
喪主の業務、集まってくれた親戚や各関係者への対応など、たどたどしくも何とか終わらせる事ができた俺の視界に二脚の空席の椅子が入った。
「座ろうか」とアイスエッジを促し共にその空席に向かった。
生気が抜けるように椅子に腰をかけ俯くマリシャス。
「疲れた……」そう呟きたい気持ちはある、しかし。
横には妹のアイスエッジ。
その存在が彼の弱音を喉の奥へと仕舞う。
強気に振る舞う彼ではあったが、俯くその肩はわずかに震えていた。
それは両親の突然の死、またはこの葬儀の準備を熟した事による疲労なのか真意は彼さえも分からなかった。
そこに近づく二つの影。
マリシャスの俯いた視線の先にそれが入ってきた。
サイバー・ドラゴン「マリシャス、久しぶりだな」
融合呪印生物光「フーン」
サイバー・ドラゴン。
こいつは俺と歳が近いのだが父と肩を並べて戦場を駆けている、いや。
今は、駆けていた、が正しいか。
俺は垂らしていた顔を上げ、そのままの姿勢でサイバー・ドラゴンに挨拶をした。
マリシャス「……サイバー・ドラゴン」
マリシャス「融合呪印生物光も、久しぶりだな」
足元にじゃれつく融合呪印生物の頭を軽く撫でる。
会う度に思うが俺が撫でているのは頭でいいのだろうか。
アイスエッジ「サイバー・ドラゴンさんたちも来てくれたんですね」
アイスエッジ「ありがとうございます」
二人の来訪に喜びを顔に出すアイスエッジ。
それもどこかぎこちない。
サイバー・ドラゴン「久しぶりだなアイスエッジ」
サイバー・ドラゴン「この度の事……なんだ……その……」
サイバー・ドラゴンは言葉に詰まった事を誤魔化すように、俺にお辞儀をした。
口を濁すのも理解できる。
同じ立場なら俺だってそうしたはずだ。
サイバー・ドラゴン「俺はここらで失礼するよ」
アイスエッジ「どこかへ行かれるんですか?」
サイバー・ドラゴン「ちょっと探しているヤツがいてな」
サイバー・ドラゴン「それじゃあ、行くぞ融合呪印生物光」
そう言うとサイバー・ドラゴンは踵を返し、棺のある方に体を向け深々とお辞儀をし、足元の融合呪印生物光を促して多くの来賓の中へと消えていった。
この多くの来賓。
会った事がある人もいれば所見の人もいる。
中にはテレビでしか見た事がない人もいた。
こんな事で両親が持っていた繋がりを確認する事になるとは思わなかった。
この葬儀場もその繋がりがあってこそ借りられたものだ。
俺が持っていた両親像には似つかわしくない建物、摩天楼という言葉が当てはまるらしい。
マリシャス「……あのさアイスエッジ」
アイスエッジ「どうしたのお兄ちゃん?」
マリシャス「……いや、なんでもない」
俺は何を言いかけたのだろう。
今、俺は何を思っているのだろう。
頭が真っ白なわけではない、はずなのだが。
葬儀は淡々と進み、火葬まで呆気なく終わってしまった。
内心、もう少し長くてもよかった。
親なんだぞ。
つくづく、人の命は平等に扱われているのだと実感した。
お前ら兄弟だったのかよ名前にてるけど
事の発端、今日から少し時を遡る。
“山”にて。
ヴォルカニック・エッジが放つ光が煌々と道を照らす、その先。
その光を黒々と反射する存在が一つ。
エッジマン「待てサイバーダーク・エッジ!」
ヴォルカニック・エッジ「待ちなさい!」
エッジマンとヴォルカニック・エッジの声が夜の“山”に響く。
それを聞き立ち止まるサイバーダーク・エッジ。
鋭利な黒い外殻が、荒くなった息に連動するように揺れる。
サイバーダーク・エッジ「おいおいおい」
サイバーダーク・エッジ「せっかく3人でハイキングなのに怖い顔するなよ」
サイバーダーク・エッジ「な、兄さん?」
絶え絶えとした息を落ち着かせながらも、達者な口を動かし、薄ら笑いを浮かべるサイバーダーク・エッジ。
漆黒の眼がその不気味さを増幅させる。
斬新だな
ちょっと期待
エッジマン「ふざけるな!」
エッジマン「なぜ優しかったお前が人を殺めたりしたんだ! 答えろサイバーダーク・エッジ!」
そう言いながら金色に輝く腕の刃をサイバーダーク・エッジへと向けるエッジマン。
「怖っ」と呟きながらも余裕の表情、サイバーダーク・エッジ。
エッジマン「答えないとお前の命……今ここで断つ!」
サイバーダーク・エッジ「えぇー! それききたいのー?」
おどけるサイバーダーク・エッジ。
その顔は狂気に満ちた笑み。
サイバーダーク・エッジ「そ・れ・は・なぁ!」
サイバーダーク・エッジ「ずぅっと! この羽の切れ味をまた見たくなったんだよ!!」
サイバーダーク・エッジ「斬りたくて切りたくて斬りたくて切りたくて斬りたくて切りたくて仕方なかったんだよぉ!」
サイバーダーク・エッジ「お前はいいよなー」
サイバーダーク・エッジ「戦場に出てブッ殺せるだけブッ殺せるんだから」
サイバーダーク・エッジ「片や俺はファランクスの篭りばかりで、この羽が鈍っちまったかと思ってたが無駄な心配みたいで安心したよ」
エッジマン「ッッ!!!?」
ヴォルカニック・エッジ「きさまッッ!」
ヴォルカニック・エッジ「それだけでなくマリシャスやまだ幼いアイスエッジまでも手にかけようとして!」
サイバーダーク・エッジ「だって見られちゃったんだもん」
サイバーダーク・エッジ「せっかくばれないようにしてたのにさ、こんな時間に起きてる悪い子ちゃんなんて死んで当然だろ?」
ケタケタと笑う声とともに外殻が擦れて金属音が闇夜にに鳴り響く。
静寂に飽和する狂気を切り開くようにエッジマンが口を開く。
エッジマン「……もういい、それ以上喋るな」
サイバーダーク・エッジ「ブッチブチに引き裂く感覚がたまんねぇんだ」
サイバーダーク・エッジ「刻んだ時の快感は今でもはっきり思い出すなー、皮膚や繊維を一つ一つ断つあの感覚は」
エッジマン「だぁぁぁまぁぁぁれぇぇぇ!!!!!」
エッジマンの怒号が山に響き、そこに住む獣や鳥たちがざわつき、飛び立つ。
その中に、こちらに向かってくる一つの影。
刹那、ヴォルカニック・エッジを貫く衝撃。
彼女の口からは一筋の鮮血が零れ落ちる。
ヴォルカニック・エッジ「な……なに?」
サイバーダーク・エッジ「よくやったハウンド・ドラゴン」
サイバーダーク・エッジ「わざわざ“山”に逃げた甲斐があったってもんだ」
彼女の腹部に刺さった角を引き抜くハウンド・ドラゴン。
夥しい量の血を流し、彼女はその場に倒れた。
エッジマン「ヴォルカニック・エッジ!」
ヴォルカニック・エッジ「あ、あな……た」
ヴォルカニック・エッジの体に灯っていた炎が、その命の終わりを告げるかのように消えた。
時間が止まったかのような空気が場を包む。
しかし、それを破るは一瞬の一閃。
サイバーダーク・エッジの足元に、両断されたハウンド・ドラゴンが転がり、エッジマンの金色の身体は赤く染まった。
心が怒りに満ちた時、気の利いた言葉など出るはずがない。
エッジマン「殺すッッ!!」
サイバーダーク・エッジ「やってみろやオラぁ!」
足元の肉塊を拾い上げ、それを自らの内に納めるサイバーダーク・エッジ。
鋭利な外殻がその肉塊へと食い込んでいく。
死してなお従順にならざるをえないハウンド・ドラゴンに、エッジマンは同情の気持ちなど微塵も感じなかった。
飛び掛かるエッジマン。
この二人、長年一緒にいたためお互いの攻撃パターンは熟知していた。
だからエッジマンは、サイバーダーク・エッジがハウンド・ドラゴンを取り込んだくらいでは自分には勝てないと思った。
それによる速攻、しかし。
異様な威圧を察知したエッジマン。
後ろに飛び退く。
直後、彼が居た場所に熱線が一筋。
脅威は空から降ってきた。
サイバーダーク・エッジ「さぁて」
サイバーダーク・エッジ「見えないものとどう戦うんだおい!!」
その威力は山の形を変えてしまうほど。
だが、その所業の主は見えず。
エッジマン「くっ……“重力砲”か!」
サイバーダーク・エッジ「ほらほらほらほらほらぁ!」
サイバーダーク・エッジ「今死ね! すぐ死ね! さっさと死ねぇぇぇ!!」
無数に降り注ぐ熱線。
それを避けるので精一杯のエッジマン。
サイバーダーク・エッジ「くそっ、ちょこまかと……!」
サイバーダーク・エッジ「これならどぉだぁ!!」
サイバーダーク・エッジの怒声一つ。
今までとは比べものにならない大きさの熱線が頭上で日のように輝く。
寸でのところで避けられる事を確信、行動に移すエッジマン。
しかし、目の前の狂気に慈悲は無い。
サイバーダーク・エッジ「自分だけ逃げてもいいのかなぁ?」
サイバーダーク・エッジ「奥さんが消し炭になるぞぉ!」
エッジマン「!?」
にやけた顔の口角がさらに上がる。
考えるよりも早く動いた体は、もう力が入る事がなくも、未だ仄かに温かいヴォルカニック・エッジを右腕に抱えていた。
降った巨大熱線を寸前で避けるエッジマン。
しかし、本来彼の左腕がある場所にはそれがなくなっていた。
傷口からは血が染み出す。
幸いなのか、熱線で焼き切られた傷口はそれほど出血せずに済んだ。
瞬く間に、彼は自身の痛覚が機能している事を実感する。
エッジマンの悲鳴が“山”を震わせる。
激痛は刹那で彼の全身を何度も駆け巡った。
右腕には力が入らずに抱えていたヴォルカニック・エッジを落としてしまった。
追い撃ちをかけるように、サイバーダーク・エッジの笑い声と金属音がその傷を刺激する。
サイバーダーク・エッジ「死体のために左腕なくなっちゃったよ」
サイバーダーク・エッジ「何やってんのあんた?」
エッジマンはヴォルカニック・エッジを再び抱え物陰に置き、直ぐ様サイバーダーク・エッジの元に再び現れた。
しかし、疲労と痛みが彼の膝を地面に着かせた。
サイバーダーク・エッジ「兄さんさぁー」
サイバーダーク・エッジ「さっさとあんたを殺して、次はマリシャス君とアイスエッジちゃんを殺しに行きたいんだからさぁー」
サイバーダーク・エッジ「もう粘んじゃねぇよッ!」
エッジマン「……」
すっくと立ち上がるエッジマン。
再び頭上で輝く巨大熱線。
だが、エッジマンはそれを避ける事をしなかった。
腰に付けていた金色の鎚を空に掲げ、頭上で熱線を薙ぎ払う。
それは持ち主の命を代償にして使用できる代物、“エッジ・ハンマー”
サイバーダーク・エッジをまっすぐ見るエッジマン。
サイバーダーク・エッジ「……まさか!?」
エッジマン「あの子たちを……あの子たちの未来を守るためだ」
豪雨のような熱線を避け、サイバーダーク・エッジの眼前に立つエッジマン。
サイバーダーク・エッジ「や……や……」
エッジマン「あっちで会った時は、優しいお前に戻っていてくれよな」
サイバーダーク・エッジ「やめろぉぉぉ!!!!!」
エッジマン「俺の命を吸って輝け“エッジ・ハンマー”!!」
最期の言葉を交わすと同時に振り下ろされた“エッジ・ハンマー”。
その衝撃を中心に爆煙が広がり、和らいだ煙りの隙間から見える横たわる二人。
E・HEROエッジマンとサイバーダーク・エッジ。
乙
答えろ!答えてみろサイバー・ダーク・エッジ!
時は今日まで戻る。
時間が過ぎ、会場に残っている人はいない。
マリシャスを除いて。
彼はまだ椅子に腰を沈め、両親の柩を静かに見つめていた。
エッジマンの柩には、その形見である“エッジ・ハンマー”が立て掛けられている。
数多の事で頭が飽和するマリシャス。
閉じた目を強く結ぶ。
そこへ聞き慣れた足音。
立ち上がるマリシャス。
スキヤナー「喪主、お疲れさん」
マリシャス「スキヤナーさん」
この人はスキヤナーさん。
切り込みを主とする父の部隊とは違い、彼は撹乱部隊に所属していたが、気が合うらしく父との交流は深かった。
もちろん、それを知っている俺との交流もある。
スキヤナー「泣いてるのか?」
マリシャス「泣いてなんかいません」
マリシャス「父さんや母さんと約束したんです、強くなるって」
マリシャス「だから俺は泣きません」
ふいとスキヤナーに背を向けるマリシャス。
がらんとし、二人しかいない式場に響く深々と吐かれるスキヤナーのため息。
スキヤナー「……あのなぁマリシャス」
スキヤナー「そりゃあびーびー泣いてる姿を見られるのは誰だって嫌だし、それを見て弱さだって言うのも分かる」
スキヤナー「だけどな」
スキヤナー「誰かのために流す涙は弱さなんかじゃなくて優しさなんだよ」
マリシャス「……」
スキヤナー「だから人一倍優しいお前は、エッジマンとヴォルカニック・エッジのためにも泣いてやってくれねぇか?」
静かに振り返るマリシャス。
その肩にはまだ力が入っている。
マリシャス「……」
スキヤナー「大丈夫、アイスエッジはここにはいない」
スキヤナー「安心して泣け」
そう言うとスキヤナーはマリシャスの顔を自分の胸にうずめた。
ほんの一瞬、戸惑いを顔に浮かべたマリシャスだったが、すぐに嗚咽を交えて泣き出した。
塞きを切ったかのように流れ出す滂沱の涙は、今日まで彼が抱えてきたものの表れでもあった。
少年の感情を受け止めたスキヤナー。
彼の瞳からも一筋の涙。
スキヤナー「……なんだかんだで、おじさんも優しいんだよなぁ」
泣き止む束の間、喧ましく響く爆音。
足元が揺れ、その音は階下へと突き抜けていく。
自身の涙を拭う二人。
立て掛けられていた“エッジ・ハンマー”がガランという重厚な音を立てて倒れた。
マリシャス「な、なんだ!?」
爆音が鳴り止むと共に怒号が響き、その主が姿を現す。
その姿、双頭のサイバー・ドラゴン。
サイバー・ツイン・ドラゴン。
あいつは昔から血の気が多かった。
サイバー・ツイン『まてぇ! はぐらかさずにちゃんと答えろぉ!』
サイバー・ダーク・ホーン「あんたこそ待てよ! 落ち着けって!」
サイバー・ダーク・キール「俺たちはなんも知らねぇんだってば!」
サイバー・ツイン『まだ言うかッッ!』
このサイバーツインドラゴンはさっきのサイバードラゴンとユーゴ呪印生物か
TFでよくカイザーに殺されたのを思い出す
俺もよくカイザーに殺されたわ
何回俺のダークロウリリースしてサイバードラゴンnsすんだよ死ね
サイバー・ツイン『常につるんでいたお前たちが知らないわけないだろ!』
双頭から重なる怒号に体は震え、その震えは地面から足に伝わる。
サイバー・ダーク・キール「今回の事が起こる少し前から、あいつ急に俺たちと付き合い悪くなったんだよ!」
サイバー・ダーク・キール「だからそこら辺のことは本当に知らねぇんだって!」
サイバー・ダーク・ホーン「偶然会った時だってなんかブツブツ言ってるだけだったんだよ!」
サイバー・ダーク・ホーン「頼むから信じてくれよ!」
サイバー・ツイン『そんな嘘が通じるとでも……!』
ギリリと歯軋りを立て怒りを露にするサイバー・ツイン。
その二組を制止しながら間に入るスキヤナー。
サイバー・ツイン「スキヤナーさん!?」
スキヤナーはにじりとサイバー・ダーク・キールとサイバー・ダーク・ホーンの二人に近づき、今回の件で自身が抱いていた疑問を質問として二人に投げかけた。
スキヤナー「サイバー・ダーク・エッジの目はどうなってた?」
そんな突飛な質問。
二人にはこの空気を打破する質問には思えなかった。
しかし同時に、質問に答えないとどうなるかわからないとも思い、必死に記憶を呼び起こす二人。
サイバー・ダーク・キール「ど、どうだったっけ?」
サイバー・ダーク・ホーン「最後に会った時にはあいつ、俺たちと目を合わせようとしなかったけど」
サイバー・ダーク・ホーン「チラッとだけ見た時、たしか少し黒みがかってたかも」
スキヤナー「……やっぱりか」
マリシャス「なにか心当たりがあるんですか?」
スキヤナー「おそらく洗脳系の魔法だな」
サイバーダーク・キール「あいつが誰かに操られてたってこと?」
その場にいた全員に理解をさせるように明快に「そうだ」と返答するスキヤナー。
サイバーツインは攻撃体制を解いた。
サイバー・ツイン『洗脳といえばトラゴエディアか』
サイバー・ツイン『しかし、やつはとうの昔に封印されたはずだが』
マリシャス「“精神操作”は操る相手の行動に制約がつく」
マリシャス「ましてや攻撃なんてできるはずがない」
サイバー・ダーク・ホーン「“洗脳-ブレインコントロール”は禁忌魔法だから今は誰も使うことができないし」
サイバーダーク・キール「“薔薇の刻印”は使われた相手の体に薔薇の模様が浮かぶから一発でわかるよな普通」
サイバーダーク・キール「あいつの身体には無かったし」
スキヤナー「“堕落”はデーモン一族しか使えない」
スキヤナー「それに奴らが近づいて来れば私がすぐに気付く」
スキヤナー「“遺言の仮面”はデスガーディウスしか使えないし、あんなの使われればすぐに分かる」
マリシャス「とすると……」
この場の全員の答えが合致した。
それは術者と同格の相手を操作する“精神汚染”。
スキヤナー「まずいな」
スキヤナー「サイバー・ダーク・エッジが操られたのを見るに、キールとホーン」
スキヤナー「お前たちも危なかったぞ」
その言葉を把握するのに一拍。
ガクガクと外殻を震わせ、互いの安全に浸るキールとホーン。
そこに近付く大小二つの黒い影。
マリシャス「誰だ!?」
終末の騎士「うおっ! びっくりした!」
ブラックボンバー「お久しぶりです」
キール「ブラックボンバー!」
ホーン「終末の騎士!」
ブラックボンバー「皆さん、集まってどうかなされたのですか?」
ホーン「ブラックボンバー? なんで目、瞑ってるの?」
ブラックボンバー「あー……先ほどの地響きで舞った埃が目に入ってしまってね」
ブラックボンバーと終末の騎士の二人は、俯きかげんではあるもののその顔に笑みを浮かべ、それがこの場の緊張の糸を解した。
普段から仲の良い二人に近付くキールとホーン。
キール「危うく俺達、サイバーダーク・エッジのところに逝くところだったよぉ……」
サイバーツイン『不謹慎だなお前』
キールとホーンが二人の元に着いたその時、微笑んでいた終末の騎士とブラックボンバーの口角はさらに上がり、その顔には常軌を逸した笑みが浮かべられた。
面白い
乙
ブラックボンバー「サイバーダークエッジって、“これ”の事ですか?」
そう言ったブラックボンバーの足元に深々とした黒い影が広がる。
その影の中心からは、かつてサイバーダーク・エッジだったであろう残骸が姿を覗かせた
キール&ホーン『!?』
スキヤナー「二人とも逃げろ!!」
終末の騎士「遅いっての」
終末の騎士「“融合”!!」
終末の騎士が魔法“融合”を発動した。
サイバーダーク・キール、サイバーダーク・ホーン、それとサイバーダーク・エッジだったものの間に空間の歪みでき、その3体がその歪むに吸い込まれ歪みは閉じた。
その刹那、再び歪みが現れ、そこからは鋭利な刃をギラつかせながら漆黒の巨体が姿を現した。
マリシャス「が、鎧黒竜!?」
スキヤナー「大丈夫なのかキール! ホーン!」
鎧黒竜『な、何が起きたか分からないが今のところは』
鎧黒竜『だ、大、大丈、だいじょ、だ、だい、だ、だ、だ、だ、だ、だぁぁぁぁぁ!!』
鎧黒竜の瞳はみるみるうちに黒く染まり、キールともホーンとも分からない声で吠えた。
耳を覆っても聞こえる悲鳴のようなその絶叫が式場の窓硝子を揺らす。
スキヤナー「くっ……他にも操られてるやつがいたのか!」
スキヤナー「みんな逃げろ!!」
鎧黒竜に圧倒され呆けるマリシャスとサイバー・ツインの目を覚まさせるように声を上げるスキヤナー。
スキヤナー「ちくしょう迂闊だった!」
スキヤナー「少し考えればわかった事なのに!」
暴れ狂う鎧黒竜の隙間を抜け、葬式会場を出るマリシャス、スキヤナー、サイバー・ツイン。
スキヤナー「ここは2階だ! いっきに出口まで走るぞ!」
マリシャス「で、でも!」
マリシャス「突然の事で驚いていたとはいえ、素の鎧黒竜はあまり強くないはずです!」
マリシャス「逃げなくてもよかったのでは!」
サイバーツイン『いや、あの場には終末の騎士がいた!』
サイバーツイン『おそらくもうすでに自身が有利な状況を作り出していただろう!』
重なる足音、1階に降りた3人。
だが、着くやいなや爆音とともに視界は薄い土煙に阻まれた。
終末の騎士「ごめ~と~♪」
薄ら見える入口にその気の抜けた言動の主がいた。
その背後にはSinトゥルース・ドラゴンを取り込んだ鎧黒竜。
サイバー・ツインが察した通り、Sinトゥルース・ドラゴンは終末の騎士が予め仮死状態にしていたものであった。
黒光りする羽を震わし、頭を引き裂くような金属音を立て、こちらを威嚇するように吠える鎧黒竜。
1階のロビーの天井にはその体躯と同じくらいの大穴が一つ。
サイバー・ツイン『2階からここまでぶち抜いたのか!?』
サイバー・ツイン『ショートカットにもほどがあるだろ!』
マリシャス「いったいどうすれば……」
その時、マリシャスたちが降りてきた階段の踊り場から3人の間をすり抜けて氷の飛礫が飛んできた。
飛礫は鎧黒竜とトゥルースの接続部に的確に命中しそれを破壊した。
トゥルースが地面に落ちた衝撃で地面が揺れる。
終末の騎士「なッッ!!!?」
アイスエッジ「お兄ちゃん!」
マリシャス「アイスエッジ!?」
安心を顔に浮かべ、マリシャスに近づき抱きつくアイスエッジ。
アイスエッジ「こ、怖かったぁ……」
恐怖に耐えていたのか、彼女はマリシャスの足元に空気が抜けた風船のようにへたりとしゃがみこんだ。
サイバー・ツイン『ありがとうアイスエッジ!』
サイバー・ツイン『これでぇぇ!!」
好機を逃さず、サイバー・ツインは鎧黒竜との間を詰め、その体躯に触れる。
サイバー・ツイン『“融合解除”!!』
サイバー・ツインが触れた部分から光が広がり、鎧黒竜はキール、ホーン、それとサイバー・ダーク・エッジだったものの3体に分かれて発光を終えた。
サイバー・ツインは両の首でキールとホーンを抱え、素早くマリシャスたちの元へと戻った。
サイバーツイン『大丈夫かキール! 目を覚ませホーン!』
スキヤナー「大丈夫だ」
スキヤナー「どうやら気を失っているだけみたいだ」
策略が打ち砕かれた終末の騎士。
この空間に広がるのは、「くそくそくそ」と小さくも何度も呟く終末の騎士の声。
終末の騎士「くそっ! くそぉッッ!! くっそぉッッ!!!」
終末の騎士「くそったれぇぇぇ!!!」
遠吠えがロビーの端々へと響き渡る。
サイバーツイン((鎧黒竜が操られたことを見るにこの姿も危ないな))
サイバーツイン『戻るぞ融合呪印生物光!』
サイバーツインの体が光り、その光はサイバードラゴンと融合呪印生物光の形に分かれて発光を終えた。
それを見ていた終末の騎士。
苦渋を舐めたような顔が勝算に満ち溢れた顔になる。
今度は終末の騎士の下卑た笑い声が皆の耳を撫でる。
終末の騎士がどう出てくるか分からず、暫くその不気味な笑い声を聞きながら様子を伺う5人。
時間にして5秒。
その時、1人の仲間に異変が起きた。
それをいち早く感じ取ったのはマリシャス。
なんで洗脳でビッグアイが出てこないんだ・・・?
>>38
エクシーズが出はじめた頃になんとなく思いついたやつで、今になって続きを書いています
ということで出てくるカードがちょっと古いですm(__)m
今後の思いつき次第で新しいカードが出るかもしれません
肝心な事を書き忘れてた
つまるところ編集してる時に思いつかなかったorz
カーネルやコッペリアルなりを絡めらたらもっと面白くなりそうな予感がするけどこのままいきますm(__)m
>>1は現役?
マリシャス「融合呪印生物……お前まさか」
全く動かない融合呪印生物光に違和感を覚えたマリシャス。
その融合呪印生物光の目は深淵のように黒く染まっていた。
終末の騎士「サイバー・ドラゴン、てめぇが馬鹿で助かったよ」
焦点が合っていないその瞳のまま、マリシャスとサイバー・ドラゴンの間を掻き分け終末の騎士の所に行ってしまった融合呪印生物光。
サイバー・ドラゴン「そ、そんな……!」
スキヤナー「ブラックボンバーも操られていた……」
スキヤナー「同格の融合呪印生物光にも気をつけるべきだった……!」
終末の騎士「いつまでも見てねぇでお前も来い!!」
その呼び声に応えるように、頭上の大穴からブラックボンバーが姿を現した。
見開かれたその目もまた黒色。
ブラックボンバー「打ち捨てられた残骸が!」
終末の騎士「一匹の悪魔の形を成す!」
ブラックボンバー&終末の騎士『シンクロ召喚!!』
ブラックボンバーが3つの光の輪となり、終末の騎士を覆い強い光を放つ。
光が消え終わる前に、それが巨体だということが分かった。
体中から蒸気を噴出させながら現れたのはスクラップ・デスデーモン。
自ら放つ蒸気では隠しきれないその巨体にたじろぐ面々。
スクラップ・デスデーモン『これでも足りない! さっさとケリをつけるぞ!』
スクラップ・デスデーモンは、自分の影と融合呪印生物光の影が重なる部分に手を翳した。
スクラップデスデーモン『“ダーク・フュージョン”!!』
二人の影が重なる部分からより濃い影が浮き出、二人をその中に引きずり込んだ。
刹那、その影から悪魔が姿を覗かせた。
灼熱の溶岩のように脈打つ翼、岩の鎧から漏れ出す邪悪なオーラで空気が淀む。
ダークガイア『とっと終わりにすんぞオラァ!』
ダークガイア『ここを通りたければ誰でもいいからかかって来いや!!』
挑発するようにあげられた怒声が鼓膜を震わす。
すかさず今の状況の打開策を練るスキヤナーだが、幼いアイスエッジや気を失っているキールとホーンを庇いながらダークガイアを相手にするのは無理だと瞬時に悟る。
それでも考える事を止めないスキヤナーの思考はサイバー・ドラゴンの落ち着いた声で中断された。
サイバー・ドラゴン「皆すまない、ここは俺に任せてくれ」
ダークガイアが蔓延らせ支配する空気が満ち満ちるロビーに決意をのせた声が一つ。
マリシャス「そんな無茶です!?」
スキヤナー「……」
サイバー・ドラゴン「無茶だろうがなんだろうがやるんだ、俺が」
サイバー・ドラゴン「俺は小難しい事は分からずに考える事を放棄してばかりだが……」
サイバー・ドラゴン「ダチに手ぇ出されて黙ってられるほど馬鹿じゃない!」
スキヤナー「……ここはサイバー・ドラゴンに任せよう」
マリシャス「でも!」
ダークガイア『いつまでくっちゃべってんだオラァ!』
痺れを切らしこちらに襲い掛かるダークガイア。
サイバー・ドラゴン「我慢が足りない奴だ」
サイバー・ドラゴン「“アタック・リフレクター・ユニット”!!」
サイバー・ドラゴンの周りに無数のガラス状の反射板が出現。
それらがサイバー・ドラゴンを包むように覆う。
ダークガイア『遅ぇよ!!』
サイバー・バリア・ドラゴン「遅いのはお前の方だ!」
反射板の中から姿を表したのはサイバー・バリア・ドラゴン。
その前面には透明で半円型の障壁が張られ、それがダークガイアの拳を弾く。
サイバー・バリア・ドラゴン「ここにだけこんな奴が来たとは考えづらい」
サイバー・バリア・ドラゴン「皆は上階にいる奴らを助けてやってくれ! 連れてきたプロトやツヴァイの安否も気になる!」
アイスエッジ「プロトくんとツヴァイくんなら、サイバー・レイダーさんとサイバー・フェニックスさんと一緒に3階で戦っていました!」
マリシャス「本当なのかアイスエッジ!?」
アイスエッジ「う、うん」
アイスエッジ「私はそこから逃がしてもらってここに来たの」
サイドラ二体でオーバーレ(ry
ダークガイア『なにをごちゃごちゃとぉ!!』
怒声をあげながら、サイバー・バリアが展開する障壁に何度も拳を打ち付けるダークガイア。
障壁はその衝撃にも耐えているものの、拳が打ち付けられる度に障壁の内側の空気が震え、肌に伝わり鼓膜を震わす。
ダークガイア『無視してんじゃねぇぞオラァ!!』
サイバー・バリア「行ってくれ!」
サイバー・バリア「サイバーフェニックスがいるから洗脳はされてないはずだ!」
スキヤナー「行くぞマリシャス! アイスエッジ!」
アイスエッジ「は、はい!」
マリシャス「絶対後で合流しろよ!」
マリシャスはキールを、スキヤナーはホーンを抱え、2階から降りてきた階段に引き返す3人。
3人が去った1階ロビー。
一発、また一発と打ち込まれる拳の音が次第に強くなる。
ダークガイア『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!』
ダークガイア『守ってばっかでつまんねぇなぁ! つまんねぇなぁぁ!!』
サイバー・バリア「……力なんて持ちすぎてもダメなんだよ」
サイバー・バリア「己が未熟なうちに必要以上に持ちすぎた力は、制御しきれずに大切なものをも傷つける」
サイバー・バリア「だから未熟な俺は守る力だけあれば今は十分だ」
ダークガイア『んなわけねぇだろ!』
ダークガイア『力さえあればなんだってできるんだからなぁ!!』
渾身の一撃を放つダークガイア。
瞬間、その一撃に合わせるように展開されていた障壁がその拳を中心に圧縮される。
搗ち合う障壁と拳。
その勢いはダークガイアの拳を弾き飛ばした。
ダークガイア『ッッッ!!!?』
ダークガイア『おお、俺の拳がぁぁぁッッ!?』
サイバー・バリア「最強の矛と最強の盾がぶつかれば弱い方が砕けるのは当然」
サイバー・バリア「こうなった俺の防御は少々荒くてな、過剰防衛ってやつだ」
ダークガイアの拳には亀裂が入り、それは体へと広がりダークガイアは塵になる。
寸前、再び“融合解除”を発動したサイバー・バリア。
ダークガイアは塵と融合呪印生物光に分かれた。
「すまない」と呟くサイバー・バリア。
それは守るべき力で終末の騎士やブラックボンバーを守る事ができなかった自責の念が飽和して出たものなのかもしれない。
>>41
現役
階下の轟音が止んだ事を気にしつつも、振り返ることなく進む3人。
踏み出す足にその心配が絡む。
マリシャス「そういえばアイスエッジ」
アイスエッジ「なに?」
マリシャス「サイバー・レイダーさんたちは誰と戦ってたんだ?」
アイスエッジ「えっと……黒い羽が生えた赤い女の人と……髪が長くて右手が銃になってる人だったよ」
スキヤナー「インフェルノウィングとヘルスナイパーだな」
マリシャス「……E-HERO」
スキヤナー「今回の事件、黒幕が見えてきたかもな」
スキヤナー「やつらの目的がわからない以上は、他の奴らをばらばらにしておくのは危険だ!」
スキヤナー「急ごう二人とも! 早く上階のやつらと合流するんだ!」
マリシャス&アイスエッジ『はい!』
鉄の階段を叩く音が早まる。
アイスエッジが逃げてきたという目的の階。
その階に着く前にその異常さが伝わってくる。
出入り口からは煙と何かが焦げる臭い。
3人は警戒しながらも素早く部屋に入る。
スキヤナー「サイバー・レイダー!」
サイバー・レイダー「スキヤナー! 来てくれたのか!」
インフェルノウィング「あら? よそ見してていいのかしら!」
サイバー・レイダーに放たれる火炎の弾丸。
見事なフットワークでそれを避けるサイバー・レイダー。
空に放たれた炎は背後の壁を燃やす。
さらにサイバー・レイダー、間を詰め拳の一撃。
しかし、インフェルノウィングはそれを鼻先一寸で回避。
インフェルノウィング「ちょこまかとぉ!!」
サイバーレイダー「お互い様だろうがッッ!!」
マリシャスたちが入る隙もなく、攻防一体の戦いをする二人。
サイバー・レイダー「こっちはいいからあいつらを助けてやってくれ!」
インフェルノウィング「なに余裕見せてるのよ!!」
火炎放射もかわすサイバー・レイダー。
遠方から銃声、その元に目をやる3人。
ヘルスナイパー「ちっ、さっさとその鳥に風穴開けさせろよ、ったく」
ヘルスナイパー「そいつのせいで洗脳効かねぇんだよなぁ」
サイバーレーザー『そんなこと許すもんか!』
ヘルスナイパーが放つ弾をレーザーで的確に撃ち落とすサイバー・レーザー。
サイバー・レーザーが放つレーザーを弾丸で的確に撃ち消すヘルスナイパー。
スキヤナー「プロト! ツヴァイ!」
スキヤナー「お前たちなのか!」
サイバー・レーザー『スキヤナーさん! それにマリシャスくんにアイスエッジちゃんも!』
サイバー・レーザー『そうです俺たちです!』
サイバー・レーザーを中心にした、床、壁、天井には砕けた弾丸が散弾の銃痕のように無数についている。
サイバー・レーザーの背後にはサイバー・フェニックスの姿。
サイバー・フェニックスは、不可解な言葉を唱えながら集中している。
サイバー・レーザー『あいつ、サイバー・フェニックスさんが僕たちを洗脳させないようにしているのに気づいて執拗に攻撃してくるんです!』
こちらに現状を説明しながらも、遠方から放たれる弾丸を撃ち落とすサイバー・レーザー。
思案するマリシャス。
ヘルスナイパーの後ろには誰もいない、インフェルノウィングはサイバー・レイダーさんが戦ってるから横槍はなさそうだ。
あとは……。
スキヤナーに現在の装備を聞くマリシャス。
それを聞き、スキヤナーとサイバー・レーザーの2人に策を伝える。
「なんか増えてるし」と舌打ちするヘルスナイパー。
突如、遠方のヘルスナイパーに向かい全速力で走るマリシャス。
間髪を容れずに行われたその行動にも、舌打ち一つ鳴らすのみで眉一つ動かさずにいるヘルスナイパー。
その銃口はサイバー・レーザー及びサイバー・フェニックスからマリシャスへ向けられた。
ヘルスナイパー「……何をするかと思えば」
ヘルスナイパー「射撃手は近づけばOK、とか思ってんなら考えを改めなよ」
マリシャスが接近、尚且つサイバー・レーザーの銃口が自身を狙っているのを確認してもなお余裕の表情のヘルスナイパー。
マリシャスの背後にはスキヤナーが見え隠れする。
ヘルスナイパー「何をするのか知らないけど興味もないね」
ヘルスナイパー「“ヒーロー見参”」
どこからともなく現れた2つのスポットライトがヘルスナイパーの右頭上を照らす。
スポットライトの光が重なると、その光からからE-HEROヘルゲイナーが現れた。
マリシャス&サイバーレーザー「ッ!!!?」
スキヤナー「止まるなマリシャス!!」
ヘルスナイパー「それじゃあお願い」
ヘルゲイナー「御意」
ヘルゲイナーは霞みのように揺らぎ消えた。
直後、ヘルスナイパーの左手にも銃が握られていた。
ヘルスナイパーは深く腰を据え、その二丁を前に突き出して構える。
ヘルスナイパー「二丁持ち、ってやつでいくんで」
ヘルスナイパー「死にたくなきゃ必死で避けなよ」
二丁から放たれる数多の凶弾。
サイバーレーザーはそれをも的確に撃ち落とす。
しかしながら、襲い掛かる弾数は単純に計算しても倍。
マリシャスへ向かう弾も少なからず増える。
ヘルスナイパー「これでも当たってくれないかぁ」
マリシャス「こ、これじゃ近づけない!」
スキヤナー「任せろ!」
それまでマリシャスと同調するように動いていたスキヤナーはマリシャスの背後から飛び出す。
スキヤナー「こっちも増えるまでだ!」
スキヤナー「“機械複製術”!!」
スキヤナーの体の線が曖昧になり、スキヤナーと合わせ鏡のような分身が2体現れた。
分身を含め、3体でヘルスナイパーに急襲するスキヤナー。
ヘルスナイパー「時代遅れの技か、なめてんの?」
ヘルスナイパー「アンタが増えても意味ないよ」
焦らないヘルスナイパー。
1体のスキヤナーに照準を合わせるヘルスナイパー。
引き金は引かれるのと同時に撃ち抜かれる1体のスキヤナー。
ヘルスナイパー「下手な鉄砲が数撃って当たるんだから」
ヘルスナイパー「上手な鉄砲はもっと当たるんだよ」
撃ち抜かれたスキヤナーは煙りのように消えた。
残り2体のスキヤナーは、ヘルスナイパーへの急襲を止めない。
舌打ちするヘルスナイパー。
ヘルスナイパー「たまたま外れただけで調子に乗るなよ」
スキヤナー「“磁力の召喚円 LV2”!!」
1体のスキヤナーの姿が消える。
瞬間、それはヘルスナイパーの足元から顔を覗かした。
スキヤナーの手がヘルスナイパーの足に伸びる
ヘルスナイパー「ッ!?」
その場から飛び退き、スキヤナーの手を間際で避けるヘルスナイパー。
足元のスキヤナーを踏みつける。
だが、正面のスキヤナーがヘルスナイパーを攻撃する。
スキヤナー「“死角からの一撃”!!」
“死角からの一撃”により自身の戦闘力を大幅に上昇させ、渾身の力を拳に乗せるスキヤナー。
だが、突然ヘルスナイパーの姿が消滅したかに見えたかと思うと、その姿は元の位置よりも2、3歩後ろに存在していた。
スキヤナー「“亜空間物質転送装置”か!」
既存の魔法罠も出てくるのか
リミ解に期待
ヘルスナイパー「あんたが本物か! 正面なのに“死角からの一撃”とはいい度胸だなぁぁ!!」
すかさず銃口はスキヤナーへと向けられた、が。
同時にその視界に三本の鋭利なクローが入る。
スキヤナーは“シフトチェンジ”を発動したのだ。
ヘルスナイパー「っぶねぇぇぇ!!」
半歩踏み出すマリシャスに合わせるように身を引くヘルスナイパー。
喉を引き裂くはずのクローは虚空をかいた。
呼吸も整えず、速攻でマリシャスとスキヤナーにそれぞれの銃口を向ける。
ヘルスナイパー「い、今のはビビったぞ……あっ」
支援
違和感に気づくヘルスナイパーだったが、それももう遅い。
一筋の閃光がマリシャスとスキヤナーの間を抜ける。
「あーあ」と間の抜けた声を出し、後ろ向きにドサッ、と渇いた音をたてながら倒れる。
その眉間からは鮮血が流れ出る。
サイバーレーザーは、二人が隙を生じさせるまで、その照準でずっとヘルスナイパーを捉えていた。
サイバーレーザー『あとはインフェルノウィングを……!』
スキヤナー「いや、インフェルノウィングはサイバーレイダーに任せよう」
スキヤナー「こんな時だが、サイバーレイダーもそう望んでいるはずだ」
マリシャス「あの二人にはどんな因果が?」
スキヤナー「彼らは同じ部隊の同期だ」
スキヤナー「身内の始末は身内でつけたいだろう」
こんな時である。
理解をしているのだが、納得の返事が出ないマリシャス。
その中でも、サイバーレイダーとインフェルノウィングの戦いは激しさを増す。
轟音、拳を弾く音、なにかが焦げる臭い、あらゆる事がこの階に充満する。
サイバーレイダー「なぜこんなことをする! 答えろインフェルノウィング!」
インフェルノウィング「っるっさい!!」
インフェルノウィング「邪魔を……するなぁぁぁぁぁ!!」
再び火炎放射を放つインフェルノウィング。
やはり、それも躱す。
サイバーレイダー「それはもう避けられ……ッッ!?」
火炎放射避けたサイバーレイダー。
しかし、突如として弾き飛ばされる。
火炎放射に被さるように放たれていたのは火球。
それを避けきれず、サイバーレイダーの左肩に直撃していた
サイバーレーザー『サイバーレイダーさん! よくもッッ!!』
サイバーレイダー「やめろぉ!!」
制止する彼の声も虚しく、インフェルノウィングへと放たれたレーザー。
銃口をみて回避を試みたインフェルノウィングだが、レーザーがその顔を掠め、その拍子で外れるサングラス。
その下の瞳、露になったその瞳を見て驚愕する一同。
彼女の瞳は、黒く染まっていた。
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