八幡「君と皆既月食を」 (30)
1日遅れになりましたが、皆既月食を絡めたssです。
注意
いろはすー。
この話は原作から数年後の話となっております。ただただ八幡といろはすをいちゃつかせたいがためのスレです。
なお、地の文ありでかつ、作者に文章構成能力および語彙力がないため大変貧弱なものとなっております、ご了承ください。
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これは全世界の共通意識といっても過言でなないと思うが、寒い朝の布団の中というものは至福である。とても暖かく、そこから出て冷たい床に一歩足を踏み出す、などということは、一瞬頭に浮かんだとしても、すぐに欲により掻き消され、霧散する 。だったら暖房をつければいい、と思う人もいると思うが、いやそれは違う。
まず、暖房による暖かさと布団による暖かさは違う。何かが根本的に違う。このふたつには深い隔たりがある。少なくとも俺はこの二つを峻別する。
俺はどちらがいいか、と聞かれればもちろん布団である。あの包み込むような暖かさは何人たりとも奪う権利はない。
だから、俺の布団を引き剥がしにかかる一色いろはは、悪魔に相当するといっても相違ないだろう。
「せんぱーい、起きてくださーい」
寝起きの薄ぼんやりとした視界に、亜麻色が見える。一色の髪だろうか。ふわりとシャンプーの香りがする。甘い。なんだか不思議と意識が冴えてきた。いろはすスメルはスッキリスメル!自分で考えたけど気持ち悪いなこれ。
視界も明瞭になってくると、一色の顔がやけに近い事に気づく。近い近い、近いよ…。
「…あー、一色。その、顔、近い」
一色に指摘する俺の声は、上擦らないように意識したからか、やけに低くなっていた。おまけに片言である。
「先輩、今更になって照れてるんですか?昨日なんて…」
「言うな言うな、言わなくていいからホント」
なんでこの子こんなに積極的というか、開けっぴろげな物言いというか…もう八幡わかんない!
一色は、なおも顔を近づけてくる。俺は、逃げる所もなく、只々身体を強張らせるのみだ。たすけて誰か。
ついに観念して俺が目を閉じると、髪を触られる感触がする。一色はそのまま、恐らく、手櫛で前髪を梳く。ひんやりとした手が時々おでこにあたり心地よい。
何をしようとしているのかしらんと思い、目を開けようとした瞬間に頭部に小さな痛みが生ずる。
「白髪ありましたよ、ほら、おきてください」
どうやら一色は白髪を抜くために近づいたらしい。俺はそれを勘違いして目を閉じた。………恥ずかしいんだが。まだ髪にいもけんぴ付いてたほうがましだったわ。この恥ずかしさは一晩で法隆寺たてられちゃうレベル。無理です。
「つってもなぁ、今日とかお前が予定空けとけっていってたから、なにもないぞ。だったらもうちょい寝ててよくね?」
俺が、ベットの上で、蓑虫になりながらそう言うと、一色は、はぁ…、と如何にもアメリカンな感じで肩を竦めながら溜息をつく。なんだ失礼な。
「先輩、ふつーに考えて下さいよ。予定空けとけってことは2人で出かけようっていうお誘いですよ。ほら、朝御飯も外で食べるんだから早く!全くわたしがわざわざ誘ったんですよ、感謝してくださいねー」
「最後以外はわかった、けど、今日俺あれだし、ちょっとゆっくりしよう。あれがこれしてあれだから」
俺が言い訳にもならない言い訳をペラペラと話すと、一色は、膝立ちになると、布団の中に自分の腕を突っ込み、俺の手を握る。そして、手を握る力をすこし強めたり、弱めたりしながら、俺を見て言う。
「駄目………です、か?」
一色がじっと俺を見る。演技だとは思うが、そこに一抹の不安が含まれているような気もする。
「はぁ…、わかった、用意するからちょっとまってろ」
「わっかりましたー!」
俺が折れると、一色はけろりとした顔をして、元気よく返事をした。
結局さっきのは、全部演技なのか、一部真実なのか。そんなことがわからないまま、俺が一色にとことん甘いという事実だけがそこにはのこった。甘すぎて糖尿病なるレベル。MAXコーヒー控えなきゃ!
歯を磨いたり、風呂に入ったりなんだりして、結局家をでたのは9時前後となった。先ほど一色は外で朝食をとるといったため、朝食は抜いておいた。
「で、どこいくの」
俺がそう言うと一色は「馬鹿なんですか?」と言わんばかりの目で見る。
「ま、先輩ならそう言うと思いましたけど…。ふつー先輩が決めるんですよ」
これは暗に俺が決めろといっているな、大学のゼミとかでも何も決定できない俺に、と言うよりも決定する権利をもってない俺にそんな事を聞くか。一色いろは、貴様とは場数が違うのだよ場数が!
必死になって考えを巡らせる。めぐめぐ☆めぐりんジャンケンポン!という具合で頭を高速回転させると、ある案が浮かぶ。
確か前に、一色に連れられていったスイーツ(笑)御用達の店が朝早くから営業してて、モーニングセットなる物を販売していたはずである。場所もここから歩いて15分ほどのだったような気がする。やった!居づらいからメニューを見まくっただけある。一色は一色でゆっくりパスタ食ってたからホントに暇だし、居づらいしで地獄だった。そこに再び行くとか、自ら地獄に飛び込んでいくスタイル。
「あー、あの名前忘れたけどあれでどうだ、ほらあれ。前パスタ食べたところ」
「……あそこですかー、モーニングセットあるし、まあ及第点ってとこですね」
俺の提案に満足したのか、一色がうんうんと頷くと、目的地が決まったからか、少し歩調を速める。大きめの手提げが揺れる。なんで君はそんなに偉そうなの?後輩女子って敬語つかえばいいってわけじゃないからね?いやまあいいんだけど。
一色がメニューを眺めている。もう既にメニューを決めている俺は、手持ち無沙汰になり、ケータイのニュースサイトに目を落としていた。こういうニュースサイトは案外くだらないニュースも多く、見ていて退屈しない。1番上にある、皆既月食に関する記事を流し見しながら時間を潰していると、トントン、と肩を叩かれる。
「先輩、オーダー決まりましたよ。というか彼女といるときにケータイはどうかと思います、まあ先輩らしいですけど」
どうやら肩を叩いたのは一色のようだ。
店員に「すいませーん」と一色が声をかける。なんでこういう店って基本呼び鈴無いの?回転率を上げるなら呼び鈴の方がいいだろ。こっちは、声の大きさとかタイミングとか色々、計らなくちゃいけないんですけど。訴訟。まあ声かけてんの俺じゃないけど。
一色が店員に声をかけて1分ほどだろうか、オーダーを取りに店員が俺達の席へとやってきた。
「すいません、モーニングセットで、飲み物は紅茶をお願いします」
「俺も同じものを」
俺達が注文をし終わると、店員は一礼して厨房へと戻る。
「先輩、前来た時すっごい居心地悪そうでしたけど…」
「あぁ、あれは人多かったから。しかも男は葉山っぽいのと戸部っぽいのがいっぱい」
俺が一色の質問に対しそう答える。
ここで重要なのはあくまで、っぽい、であり、葉山みたいな完璧なやつは一人も居なかった、つーかあいつみたいなのがいっぱいいたら、多分俺は胃に穴が開いていただろう。逆に戸部みたいなのは、本物と入れ替わっても気づかないような人たちばっかりで、凄いと思った(小並感)。
一色は葉山には抵抗はしめさなかったが、戸部と聞いた瞬間に目を細めた。
「葉山先輩っぽいのがいっぱいはまだいいですけど、戸部先輩はちょっと…」
いやちょっと酷くない。戸部は特に嫌われる要素ないだろ、いやあるか、少しはあるな。五月蝿いとか馬鹿だとか。あれ、俺も結構酷いこと言ってる?
「先輩、人いっぱいいる所苦手ですもんねー」
一色がそう言って、悪戯っぽく笑う。けたけた、というよりは、にひひっ、といった感じだ。さっきのセットで紅茶じゃなくてオレンジジュース頼まなくてよかったのかしらん。
「まあな、それほどでもある」
「いや褒めてないですから」
俺が返答すると、呆れた目で一色は俺を見ながら言う。あれ、人混み苦手病弱系男子流行ってないのか、ちょっと前まで首痛めた系が流行ってたから、流行ると思ったのに。まあ多分やるのが俺じゃなくて葉山だったら、流行っただろう。やっぱイケメンってクソだわ。
その後も一色と取り留めのない話をしていると、モーニングセットがやってきた。
セットの内容は、サンドイッチ2枚、サラダ、紅茶のみである。これで700円は正直高い。
「ん、美味しいです」
一色が、サンドイッチを一口頬張るとそう言った。
一色に促されてサンドイッチを一口。なるほど。舌の上でシャッキリポンと踊ったりはしないが、普通に美味い。前言撤回。これは700円払う価値あるわ、正直スイーツ(笑)の舌なめてた。
そのまま、俺たちは、時折言葉を交わしながら、食事を済ませた。
「で、どうします?この後」
現在時刻をスマホで確認すると10時。なるほど、解散といきたいところだがまだ早い。
「朝食遅めに食べたし、昼食、少し遅めでいいだろ。と、いうことは時間を長く潰せる映画だな」
「まず時間を潰すって言うのが気に入らないですし、先輩ぜったい別々に見ようとするからいやです」
俺の提案は一色によって一刀両断された。じゃあどうしろと言うんだ。
「まあ、とりあえず公園でもいって考えましょう、ここもう混んできますし」
一色の言葉に俺は頷く。店側の迷惑になるし、何より俺は昼時のこの店の空気には、耐えられない。
ということで会計をする為に一色が店員を呼ぶ、が、こない。再び呼ぶと店員がやってくる。ほらやっぱり呼び鈴の方がいいじゃん。
人も増え始めたため、俺は机の上に1400円を置き、一色に声をかけて先に店をでた。
店をでて、一色に連れられて歩いてて5分ほどだろうか。大きな公園が見えてきた。子供達が遊ぶというよりは、人々が景色などを見て楽しむような、自然公園だ。規模が大きいので多分有名な場所だろう。
俺の行動範囲からは、かけ離れた場所にあるので、当然知る訳もない。千葉だったら有名所全部知ってるのに。くそっ!ここが千葉だったら!
「あらら、結構人いますね」
一色の発言で、公園の中を注視してみると、なるほど確かに人がいる。
ちらと視界を上にやると桜、桜、桜の一面桜であった。要するにお花見にきている人たちってとこか。
公園の中に入り、はえーとか、ひえぇーとか、しれぇーとか、金剛デースとか言いながら桜を見ていると、どうやら一色は、公園で話し合う、といっておきながら、元々プランに公園を入れておいたようで、手提げから、ビニールシートを取り出して、場所取りを始めた。だからすこし大きい手提げだったのか。
「ほら先輩もぼさっとしてないで手伝ってください」
一色にそう声をかけられたことにより、意識が桜から一色へと移り、返事ともつかないような返事をしながら、ビニールシートを広げる一色の元へと向かった。
ビニールシートを敷き終わると、荷物を置き、一色と俺はそこに座り込んだ。
「桜、きれーですね」
すこし間延びした声でそういうと、一色は、くあと欠伸をする。目がすこし、細められる。
「眠いなら寝ろ、日頃の疲れも溜まってるだろうし」
俺がそう言うと、「お言葉に甘えさせてもらいます」と一色が言い、座った俺の背中を背もたれにする。おい、ちょっと。
幾許か後に、すぅ、すぅ、と規則正しい寝息が聞こえてきてくる。なんだか怒る気も失せてきて、カバンから文庫本を取り出す。俺もとことん一色に甘い、と思いながら、読みかけのページまで本を繰るのだった。
本を読み終わり、スマホで時間をみると3時になっていた。本を2冊もってきたから大分時間を潰せた。
そのまま少し、ぼーっとしていると、春の暖かい陽気によって大分睡眠欲が高まってきた。いかん、これは本格的に眠いやつだ。せめて一色を潰すことはないように、重心を前にするようにして、俺は眠りの世界へと、深く、深く落ちてゆく。
目を開けると、目の前にあるのは一色の顔であった。後頭部にはすこし地面にしては柔らかすぎる感触。幾許かして、これが膝枕だと気付く。しかし俺は座って寝たはずだし、まず俺が寝るときは一色はまだ眠っていたはずだ。
「先輩、おそようございます。勝手に膝枕しちゃいました」
そう言って一色がクスクスと笑う。
疑問が解消されたし、起きたのにずっとやって貰うのも可笑しい、と、起き上がると「んっ」とすこし艶めかしい声を一色があげる。やめて!八幡変な気分になっちゃう!
周りをきょろきょろと見渡すと、まず気付くのは、もう完全に日が沈んでいること。時間を確認してみると7時半であった。
「あー、悪いな。こんな遅くまで」
俺がそう謝ると、一色が言う。
「まあ、いつもならダメダメです、って言うとこですけど、今日はいいですよ。どうせここで見るつもりでしたし、月」
月、と言われて、一瞬思考が止まるが、そうだ、確か今日、皆既月食だったな。
「そうか、皆既月食か、今日」
と、考えたことを確かめる様に言い、月を見上げる。つられたように一色もまた。
煌々と光る月を見上げる。あとどのくらいこんなことができるだろうか。月を見て、赤いとはしゃいだり、綺麗だと言ったり。
永遠にこの瞬間が続くわけじゃない。季節がめぐるように、時も、人もまた巡る。
けど、けれど。
時が巡っても、季節が巡っても。この隣にいる人だけは、いなくならないでほしいと。
そんなおこがましい、子供じみた願いを、只々月に込めるのであった。
終わり!やっぱり書きだめって大事だなぁ
乙
良い雰囲気だった
乙
おつ
乙
おつ
いい感じだった
ただいちゃつかせたいがためのスレという割にはいちゃつきが足りなくないか
だからもっと書こう、書いてくださいお願いします
いいなぁ、こういうの
すごい好き
乙
おつおつ
このSSまとめへのコメント
いおりんネタあった?