ssとしては初作品です
・表題に『千早』とあるが、内容はPの一人称語り
・とある歌が元ネタ。独自解釈、内容いじりあり
・地の文・キャラ崩壊注意
Zero/ ◆VnQqj7hYj1Uuの代行
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428127595
作者です。
代行ありがとうございました。
お騒がせしてすいません。
では、投稿していきます。
「……雨、か」
天気予報の通り、降り出した夕立。持っていた傘を開く。
事務所へと続く道を歩きながら、俺はぼんやりと雨が降る街を眺めていた。
降り出した雨は止む気配がなく、ジメッとした空気が街を覆っている。
「たしかあの日も、こんな感じに雨が降っていたっけ」
「……」
当時、俺はとある少女をプロデュースしていた。
名前は如月 千早……俺が初めて担当したアイドルであり、とても高い歌唱力を持つ少女だった。
最初、彼女は不愛想でそっけない態度しか取ってくれなかったが、時間とともにその冷たさは消え、俺に甘えてくれるようになっていた。
深く信頼し合っていた俺たちは、お互いに支え合って過ごしてきた。
二人でならトップアイドルも夢じゃない。……そう、思っていたほどだった。
--だけど。
いつからだろう。
これまで快進撃を続けていたはずの千早が、伸び悩むようになったのは。
いつからだろう。
千早にはもう、俺の力なんて必要ないんじゃないか、と思い始めたのは。
いつからだろう。
俺が、千早の足枷になっているような気がしてならなかったのは。
そして、あの日……
あの日も今日のように、雨が降っていた。
「プロデューサー、話って何ですか?」
降りしきる雨の中に浮かぶ、まるで蛍の光のように輝く千早の瞳。
そんなぼんやりとした光ですら、俺には眩しくて。
自分の才能の無さが情けなくて、才能が溢れる千早に嫉妬してしまう。
--悪いのはすべて、不甲斐ない俺なのに。
「……千早」
「俺はもう、千早にはついていけないよ」
「えっ……?」
だから俺は、夜で、しかも雨にも関わらず千早を呼び出して、別れを切り出した。
千早には、俺なんかよりもっとふさわしい人がいる。
千早にはもう俺は必要ないんだ……
俺は、足枷にしかなれないから。
「な、何を言うんですか・・これじゃまるで……」
「多分、千早が考えている通りで間違いないと思う。これは別れ話だ」
「っ……」
しばらくの間お互いに言葉もなく、向かい合って見つめ合うばかり。
降っている雨の中、俺たちはただ立ち尽くすだけだった。
切り出してしまった話は、もう取り消せない。
ましてや、こんな話なら。
「なぜです・・私に悪いところがあるなら直します!だからそんなこと」
「いや、逆だよ」
「逆……?」
「俺はもう、足手纏いにしかなれない。俺よりも頼りになるような人に頼んだ方が、千早のためだ」
「違う……違います!私がここまで来ることができたのは、冷たくて生意気だった私を支えてくれたプロデューサーがいたから……」
「じゃあ、最近千早が伸び悩んでいるのはなんなんだ?」
「それはっ……!」
千早の目に涙が浮かんだ。
見ていて辛くなったが、これも千早のためだと思い直し、俺は落ち着き直して話し続けた。
「俺じゃもう、千早には釣り合わないんだよ」
「だからもう……」
「嫌っ……!嫌です!」
千早は目に涙を浮かべながら、俺にしがみ付いて来た。
千早の行動からは、『俺から離れたくない』……そんな意思が感じられた。
彼女の寂しさを感じたからか、俺はその腕を振りほどくこともできず、ただ彼女の瞳を見つめ続けることしかできなかった。
「そんなこと言わないで下さい!私には、あなたが必要なんです!」
「これからずっと、二人で頑張っていこうって言ってくれたじゃないですか!」
「私をちゃんと見てくれる人がいる、そう思って、私本当に嬉しかったんですよ・・」
「約束したのに……!」
涙で顔がぐちゃぐちゃになった千早は、俺の胸に顔をうずめる。
止まらない嗚咽。
蛍のように輝く目から溢れ続ける涙。
でも……今の俺には、どうすることもできない。
「お願い、します……私を、見捨てないで下さい……」
「私を……ひとりにしないでっ……」
それだけ言うと、千早はその場で泣き崩れた。
--俺たちは、あまりにもお互いを傷つけすぎた。
全ての原因は、俺にある。
どうすれば俺はあの時、千早の辛さや苦しみを癒すことができたのだろう?
今更言ったことを取り消すことはできない。
でも今の俺の力じゃ、千早をトップイドルにはできない。
俺はもう、彼女を支えてあげることはできない……。
辛くて、苦しくて。俺の目からも、涙が溢れた。
降り続く雨の中、俺たちはひたすら涙を流し続けた。
千早の目に映る雨粒もまた、光り輝く蛍のようで。
涙という姿で、瞳の中の蛍が飛び立っていくように見えた。
--まるで、俺たちの絆や信頼、愛情なんかが流れていってしまうような……そんな気がした。
ただ俺は千早をトップにしてやりたかっただけなのに。千早を心から大切に思っていたのに。
……なんでこうならなければならなかったんだろう。
俺にもっと力があれば。
俺がもっと強ければ。
「くそっ……」
自分自身が憎くてたまらなかった。
でも、千早には俺と違って才能がある。
千早はこんな所で消えるような奴じゃない。
だからこそ、俺は。
--彼女から、手を、離そう。
千早は、俺から自由になるべきだ。
そうすることが、彼女のためなんだ。
そうすることが……
大好きなお前のためだったんだよ、千早。
俺は涙を流しながらも、泣き崩れたままの千早をなんとか車に乗せて、家まで送った。
俺は最低だ。いくら恨んでくれても構わない。そう、彼女に言い聞かせて。
車内では話すこともなく、お互いに終始無言を貫いていた。
「……ありがとう、ございました」
「ああ……じゃあ、おやすみ」
「はい……おやすみなさい、プロデューサー」
喋ったのは、千早が住むマンションに辿り着いた時に言った、その短い会話だけだった。
俺は、あの雨の夜の出来事を忘れることはないだろう。
いや、忘れてはいけないんだ……あの涙も、千早のことも。
今でもまだ、あの時の光景は心に焼き付いている。
涙を流し続ける千早のことも。ただぼんやりとその光景を見つめ続けるだけだった俺のことも。
信頼し合って、お互いに支え合ってきた日々も。
全ての思い出が、俺の頭から離れない。
雨、蛍、そして千早……
この三つが、今も、まだ……
キリがいいので、少し離れますね。
少し休んだら、また投稿を再開します。
おつおつ待ってる
寝てました…
お待たせしました(?)、投稿再開です。
楽しかった日々が、以前にはあった。
当時を思い出して、今でも自分以外に誰もいないはずの部屋の隅々に、千早の面影を見ることがある。
「まだ、引きずっているんだよな……」
正直、異常だ。もしかしたら俺の精神は病んでしまっているのかもしれない。
千早に別れを告げた次の日、俺は社長に千早の担当を外れたいと申し出た。
「……如月君の担当を外れたい、ということかね?」
「はい。……もう、俺じゃあいつをトップにしてやれないので」
「確かに最近如月君は伸び悩みつつあるようだが……私はキミの責任ではないと思うよ」
「……いや、俺が不甲斐ないせいで、千早はまだくすぶったままなんです。全ては俺の責任です」
「誰だってスランプというものはあるものだよ。少し考え直してはどうかな」
「……」
「決意は変わらない、ということか。仕方ない、一旦キミには如月君の担当を外れてもらうことにしよう。律子君に掛け合ってみるよ」
「ただ、如月君はまだ高校生、大人とも子供とも言えない微妙で繊細な時期だ。彼女を壊してしまうことは許されない。いいね?」
「いつでも、如月君の担当に戻れるようにはしておくよ。戻りたくなったら、また声をかけてくれたまえ」
こうして、俺は千早の担当を外れた。社長には本当に、頭が上がらない。
「……『二人でトップアイドルを取る』って約束、破ることになっちゃったな」
『トップに立つ』という幸せは、俺たちでは掴むことができなかった。
事務所のみんなに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
特に千早には……謝っても謝りきれない。
そして、今。
降り止まない雨の中。気づけば、また俺は涙を流していた。
「涙……?まだ、残っていたんだな」
流しきったと思っていた涙は、俺の頬を伝い続ける。
今、千早はアイドルとしての活動を続けられてはいるが、ランクも伸びず、気を抜けば降格もありえそうな状況だ。
それに……俺との距離は遠ざかってしまっていて、ぎこちない会話しか交わすことができなくなってしまった。
もう一度俺がプロデュースしてやりたい。時々、異常なほどそう思うこともある。
まだ、心残りがあるのだろう。
もう、彼女とのことは諦めたはずなのに。
……どんなに足掻いても、思い出をぬぐい去ることはできない。
ほとんど無意識に歩き続けていたらしい。雨が降り始めてから、もうかなりの時間が経っていた。
気がつくと、俺はとある場所にいた。
「……ここは」
そこは、とある建物の前の交差点だった。
忘れもしない、この場所。……そう、千早に別れを告げた場所だったのだ。
一歩踏み出そうとしたが、なぜか足が前に出ない。
まるで、ここにあるたくさんの思い出が、俺を引き止めているかのように。
目の前で、信号が変わっていく。
もう先に進むべきなのに、前に進めない。
信号は、そんな俺の心の中を表しているように見えた。
千早とのことはきっぱり諦めて、次に進みたい。
でも、千早への未練が先に進ませてくれない。
涙という形で、未だ溢れてくる心残り。
俺は、千早のことを忘れない。
ーーいや、『忘れられない』。
元ネタ…というか、原曲部分はここで終わりです。
このssはまだ続きますが…。
何度も抜けて申し訳ないですが、少しお風呂に入ってきます。
しえん
いいお湯だった
再開します。
「ただいま戻りました」
「あ……お帰りなさい、プロデューサーさん」
事務所に到着した。音無さんが俺を出迎えてくれる。
俺は自分の椅子を事務机から出し、音無さんの隣に座る。
「どうしたんですか?なんだかいつも以上に疲れ切ったような顔してますよ?」
「いや、大したことじゃ」
「千早ちゃんのことですね?」
「!」
……図星だ。これが女の勘、って奴なのかもしれない。
「鋭いですね……当たりです」
「今のプロデューサーさんを見てたら、誰でも分かりますよ。千早ちゃんから担当を外れたあの日から、ずっとこうですもん」
「・・……はは、まだ引きずってるんだなぁ、俺」
情けないな、ずっとそんな顔してたのか、俺。
「千早ちゃんも、日に日に落ち込んでいくばかりですし……もう一度担当してあげたほうがいいと思うんですけど……」
「……それはできません。俺じゃ、あいつをトップに導くことはできませんから。それに、律子なら上手くやってくれるでしょうし」
バチン!
「……え?」
いきなり立ち上がった音無さんに、思い切り顔を叩かれた。
「何勝手に決め付けているんですか!あなたのその勝手な思い込みで、どれだけ千早ちゃんが傷ついたか……!」
「でも実際、千早は先に進めていなかったじゃ」
「社長がおっしゃっていた言葉を忘れたんですか・・」
『誰だってスランプというものはあるものだよ?』
「スランプ……?」
「そうです!もしかしたらスランプなだけかもしれない、とは思わなかったんですか?」
「たかが数回の失敗で凹んでるなんてカッコ悪いです!どうしてもっと千早ちゃんを信じてあげられなかったんですか・・」
「それに……スランプを乗り越えてこそ、本当のアイドルマスターじゃないですか!」
・がまだ痛む。音無さん、本気でやったな……
でも、俺がやったことを考えれば当然か。
「……ありがとうございます。おかげで、目が覚めました」
「いえいえ……って私ったら、何てことをっ……!ごめんなさい!」
「悪かったのは俺ですから。今の一発、かなり効きましたよ」
「本当にごめんなさい……!な、何か冷やすもの持ってきますね!」
そう言うと、音無さんはパタパタと音を立てて給湯室の方へ走って行った。
少しミスしていまいました…
>>43
・→・
で脳内変換宜しくお願いします。
どうやら『ほお』の文字が反映されないようですね。
『ほお』で脳内変換お願いします。
音無さんにきつい一発を頂いて、ようやく目が覚めたような気がした。
トップアイドルを目指すのは、容易なことではない。伸び悩むのも当たり前だ。
いくら千早のように才能があっても、スランプくらいはあるだろう。
それを解消してやるのが、プロデューサーの役目じゃないか。
自分自身の才能の無さは、努力で埋めればいい。
……彼女に見合うだけの実力を、必ず手に入れてみせる。
「……千早の家に行かなきゃ」
俺の頭には、それ以外のことはなかった。
音無さんには悪いが、すぐに行かなければならない。
そして、傘をさしている余裕もない。
「……行ってきます」
土砂降りの中、俺は事務所を出て走り出した。
ずぶ濡れになりながらも、千早の家にたどり着く。
震える手で、俺はインターホンを押した。
《はい》
「千早……俺だ」
《!》
ガチャッ、とインターホンを置く音がする。その後すぐに廊下を走る音と、鍵が開けられる音がした。
「プロデューサー……!ずぶ濡れじゃないですか!」
「大丈夫だよ、そんなことはどうでもいい」
「どうでもよくないです!お風呂沸かしますから、上がって下さい!」
断る時間は与えられず、無理やり家に入れられてしまった。
促されるままに風呂場に入る。
とりあえず風呂場で濡れた服を脱ぎ、わずかに扉を開けて脱衣所の所に服を投げる。
その後シャワーを浴びた後温かいお湯に浸かり、とりあえず俺は一息ついた。
冷たい感じもあったけれど、千早はやっぱり気が利くいい子だな。
そんな彼女を突き放すような真似をしてしまうなんて……俺はプロデューサー失格だ。
「きちんと、謝らないと」
決意を固め直して、俺は風呂場を出た。
洗面所には、ハンガーに吊るされたシャツとスーツがあった。ご丁寧に下着もかけられている。
風呂場を出たタイミングで、リビングから少しうわずった千早の声が聞こえて来る。
「ふ、服、乾かしておきました。ドライヤーだから、まだ湿ってますけど」
着ていた物が全てかけられていた、ということは下着なんかも乾かしてくれたらしい。
素早くまだ乾ききっていない服に身を包み、千早がいるリビングに向かう。
「ありがとう。わざわざごめんな」
「いえ、プロデューサーにはお世話になって……あ」
千早はそう言うと、悲しそうな表情を浮かべて顔を背けてしまった。あの日のことが頭によぎったらしい。
「……それで、何しに来たんですか?」
少しして、千早は暗い表情のままぼそりと呟いた。
「実は、言いたいことがあってな」
「土砂降りの中、傘もささずに走ってきてまで言いたいこと、ですか」
「……ああ」
「すまなかった、千早」
俺は床に手をついて頭を下げた。いわゆる、土下座というやつだ。
「なっ……頭を上げて下さい!」
「それはできない。それだけのことを、俺はした」
固まっている千早に構わず、俺は話し続ける。
「許してくれるとは思ってない。でも、謝らなくちゃいけない。そう思って来たんだ」
「前も言った通り、いくらでも俺を恨んでくれ。悪かったのはすべて俺だ」
「俺に力がなかったから、俺は千早の担当を外れた」
「……でも、俺は千早のことを忘れられない。他の誰とでもない、千早とトップを目指したいんだ!」
「半年……半年待ってくれ!きっと、千早に釣り合うだけのプロデューサーになってみせる!」
「今更何を言ってるんだ、って感じだけど……もう一度だけお前をプロデュースさせてくれ……!」
「……バカ」
震えるかすかな声で、千早はそう言った。
「断れる訳……無いじゃないですか……!」
「私には、あなたが必要なんですからっ……!」
「本当に辛くて、悲しかったんですからね……!」
そう言いながら、千早はボロボロと涙をこぼしていた。
フローリングの床に、こぼれ落ちた涙が小さな水たまりを作り出す。
「……本当にすまなかった」
俺は立ち上がり、そう呟く。
その瞬間、千早は俺に駆け寄って来て俺に抱きついた。
そのまま彼女は、俺の胸に顔をうずめる。
そしてそのまま、こう言った。
「私はまだ、プロデューサーを許せません」
「だから……」
「……私が許すまで、ずっと私の側にいて下さいね?」
完結です。半年後とかは書かなくていいですよね……?
元ネタは分からなくても大丈夫かと思います。
色々とご迷惑をおかけして、すいませんでした。
次スレはこんなことにならなければいいのですが……。
書くとすれば、次スレは貴音メインの長編になるかと思います。
こんな駄文にお付き合いしていただいた皆様に、最大級の感謝を。
ウィッピニンザレイン!フゥ!
乙
乙でした!
乙
弱いPと千早はいい組み合わせだもんげ
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