春香「私のままで」 (22)



善澤「……で、今年はもっとカッコよさも出して行くって事かい?」

春香「はい! それに限らず、何と言うか、こう、もっと幅を持たせたいというか! 今までにない役とかお仕事とか一杯やらせて頂きたいなって!」

善澤「はははは、これは面白いありがとう、良い情報を頂いたよ」

春香「私こそ、ありがとうございます!!」


善澤「いや、しかし、すまないね天海君、765プロメンバー全員インタビュー、長丁場のしかも最後になってしまって」

春香「いえいえ、インタビューして頂けるだけでも、嬉しいですから!」

善澤「そう言ってもらえるとこちらとしても助かるよ」

春香「はい!」

善澤「で、まぁ、これは最後の質問なんだけども……」

春香「はい」

善澤「…………う~~ん」

春香「???」

善澤「オフレコって事でも良いんだ、僕自身の興味もあってね? 少し意地悪な質問をしても良いかい?」

春香「あ、は、はい……」

善澤「天海君は、この事務所に居て、他のメンバーに劣等感を、コンプレックスを感じる事はあるかい?」

春香「……劣等感です……か」

善澤「ほらね? 僕のような商売の人間は毎日人を見比べているだろう? 何が良くて何が悪いと言う判断は下せるけど、当人の自己評価とソレは大分ズレている事がまま有るんだよ」

春香「……はい」

善澤「ソレの確認でもある、話しにくい内容だって言うのは解るがね? どうだろう僕は君のその部分にとても興味があるんだが」


春香「…………そうですね、劣等感、感じたことあります」


善澤「ほう」



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春香「もちろんありますよ、だって、ほら、765プロの皆は凄いから」

善澤「……」

春香「千早ちゃんは、会ったその日から歌が凄く上手くて、凄く綺麗で、それでいて努力も怠らないし」


春香「やよいは、まるで太陽のように明るくて、誰よりも素直で真っ直ぐで、誰にでも愛されて」


春香「伊織は、決して曲げない強いプロ意識を持っていて、それでいて誰よりも頑張り屋で、高貴で」


春香「真は、空回りしている所もあるけど、とってもカッコよくて、そして、可愛くて」


春香「雪歩は、儚いイメージがとても綺麗で、でも心の中には凄く強いモノを持っていて」


春香「亜美は、周りを巻き込んで行く元気さとパワーがあって、輝いていて」


春香「真美は、皆の目を引く魅せ方や皆を笑顔にする方法を良く知っていて、頭も良くて」


春香「律子さんは、誰よりも優しいのに、それを厳しさに出来る、そう言う優しさを持っていて」


春香「あずささんは、全てを包み込むような包容力と、女の私でもドキッとするような色気があって」


春香「響ちゃんは、誰もが応援したくなるような健気さと、誰もが頼りたくなるような力強さがあって」


春香「貴音さんは、全てを虜にするような不思議な魅力と、それを上回るような御茶目な魅力があって」


春香「美希は…………もう、私の持ってない全部を持っているんじゃないかな……ふふふ」


春香「……善澤さん」


善澤「うん?」


春香「正直……私は、その全てに、当てられて、唇を噛む日だってあります」


春香「でも、それ以上に私は、皆が愛おしくて堪らないんです」


春香「だから、私は、765プロの天海春香で、本当に良かったって、心から言えます」


善澤「……そうか」


春香「はいっ」



善澤「いやすまない、少し辛い事を聞いてしまったかな、でも勇気を出して答えてくれてありがとう」

春香「いえ、何か、私、あらためて凄い所に居るんだなって思えました、ありがとうございます」

善澤「うん…………さて、最後になるけど、君に是非伝えたい事がある」

春香「はい?」

善澤「いや、これは伏せておこうと思ったんだがね? さっきの君の回答を聞いて、伝えておかねばと思ってね」

春香「えっと、何を?」

善澤「実は同じような質問を他の皆にもしたんだ、すると興味深い回答が返ってきてね?」

春香「興味深い? な、なんだか怖いですね」

善澤「君と同じように、どの娘も皆、大なり小なり劣等感を感じたりしていたようだよ」

春香「皆が……ちょっと意外かも」

善澤「でもね? 天海君」

春香「は、はい!」

善澤「君に劣等感を感じると答えた人は一人も居なかったんだ、いや……正確には一人だけ、いたかな」

春香「え……」

善澤「これは聞き方によっては天海君に優れた面が無いと聞こえるかもしれない、でもね、是非皆の声を聴いてほしいんだ」

春香「皆の、声……」

善澤「軽く編集した程度なんだけどね、じゃあ、いくよ?」


カチッ




千早『春香は……そうですね、天海春香、彼女には劣等感を抱くと言うよりも』


千早『彼女は、彼女であり続けている、それだけで、安心する……そんな存在なんです』


千早『それは私達も、ファンの皆もそうなんだと思うんです』


千早『春香は、アイドルなんです、私達は私達のファンが居て、それに向けて伝えます、届けます』


千早『でも、春香には誰かに、みたいな事が無いと思うんです、皆に、皆が、皆で、皆を、それが春香なんです』


千早『アイドルの理想像ってそう有るんだと思います、そして少なくとも、私の中での一番のアイドルは』


千早『天海春香なんです』



やよい『春香さんですか? ん~~~~』


やよい『あの! 春香さんって、すっごく近いな~って思う事があるんです!』


やよい『その、距離が近いって言うんじゃなくて、なんて言うんだろう~う~~……』


やよい『家族って言うのでもないし、でもでも! 凄く近くて、安心するんです』


やよい『それは他の誰でも感じない間隔で、それが凄いな~~って、私は思います』


やよい『う~~解らないですよね、すみません~~~~』


やよい『でも、春香さんは、私だけじゃなくて、誰にでもそうなんです、それが凄く……春香さんって感じなんですっ!!』



伊織『春香? そうねぇ、私から見たら、全部が全部まだまだって感じね』


伊織『アイドルとしての魅せ方も地力も何もかも、この伊織ちゃんには遠く及ばないわ』


伊織『でも……あの子には欲が無いの……ねぇ、それって、凄く恐ろしい事よ?』


伊織『人としての醜さが無いの、ソレを出すことを知らない、ソレを出せないの、ソレを彼女は自分で許さないの』


伊織『変な話、一番人間らしく無いかもしれないわね、でも彼女の魅力は人間のソレなのよ?』


伊織『不思議よね、いつだってあの子に魅かれてしまうのよ、皆、もちろん私も』


伊織『……でも、こんな事、恥ずかしいから絶対春香には言わないけどね? にひひっ』



真『春香ですか~~! ん~~正直、一番、負けたくないな!! って思ってます』


真『もちろん負けてるって思った事は無いですよ!? 歌だってダンスだって! もちろん魅力だってね?』


真『でも、適わないなぁって思う事、多いんです』


真『春香の魅力って、そう言う所だと思うんですよ、何が? って言われると良く解らないんですけど』


真『春香は友達でありライバルであり同業者であり、そして仲間で……』


真『……あ~~///なんて言うか、無し!! 無しです!! 何か恥ずかしいですね///!!』


真『でもボクは……ソレが春香で、心の底から良かったって思うんです』



雪歩『春香ちゃん………………私、春香ちゃんが居なかったら、多分アイドル続けてなかったかなって思うんです』


雪歩『やっぱり、アイドルって、見方を変えれば凄く俗っぽいと言うか、そう言う側面が嫌な時があったんです』


雪歩『でも、春香ちゃんを見てると安心出来るんです、あぁ、こんなアイドルが居るんだ、って』


雪歩『もちろん、春香ちゃんと同じが良いってわけでも無いですし、皆違うのが良いって思います』


雪歩『でも、私は、春香ちゃんが私と同じアイドルだって言う事に凄く安心するんです』


雪歩『私は人を羨んだりしちゃう人間だけど、春香ちゃんは何と言うか、いつまでも見つめていたい存在と言うか……』


雪歩『うぅ……ごめんなさいぃ、良く解らないですよね、こんな私は穴掘って』カチッ



亜美『はるるん? そうだなぁ、亜美としては、もっとこう、はるるんの例えばおちりのセクチーな魅力を全面的に推して行くと良いんじゃないかなって、へ? れっとーかん?』


亜美『ん~~良く解らないけど、亜美ははるるんになりたいとは思わないかなぁ?』


亜美『だって、はるるんはなろうと思ってなれる物じゃないからね、マネは簡単だよ? でもえんぴつ? ……ほんしつ? は一番遠いかなって』


亜美『うらやむとかじゃ無いんだよなぁ、むむむ……むずかちーね、はるるんって』


亜美『でも、アリーナの時もそうだけど、おっきいステージの時とか、はるるんが「さぁ!」って手を出すとさ』


亜美『誰がソレをやるよりも「やるぞー!」って思うんだよねぇ~』


亜美『やっぱりはるるんって不思議だなぁ、今度真美とはるるんの謎を解明してみよ~~っと!』



真美『はるるんかぁ……ここだけの話だよ? 真美さ、はるるんってウチュージンじゃないかなって思うんだよね!』


真美『え? 何でって? 何でも無い所で転ぶなんて器用なマネ、中々出来ないよ!? アレって凄くない? え? そんな話は良いって?』


真美『じゃあ別にはるるんについては話す事ないかな~?』


真美『だって、はるるんがめっちゃアイドルなのは今更真美が言うまでもないっしょ?』


真美『え? じゃあアイドルって何? って?』


真美『んんんんん…………あ、アイドルはアイドルだよね? それかはるるん?』


真美『うあうあ~~!! なんだか解らなくなってきちゃったYO!! やっぱはるるんがウチュージンのせいっしょー!!』



律子『春香ですか? そうですね、やっぱり彼女の魅力は、どこにでも居るそんな子がアイドルになった、そこにあるんだと思います』


律子『逆に言えば、アイドルなのに普通って凄く難しいバランスだと思うんですよ、普通の子はアイドルにならないし』


律子『そう言うアイドルって、危ういじゃないですか? でも春香は危うく無いんです、あの子はそのバランスを決して崩さない』


律子『だから皆、あの子を頼って、そしてあの子に頼ってもらいたくなるんですよ』


律子『だからプロデューサーと言う立場から言わせて頂くと、何でも出来そうでいて、何でも出来なそうなんですよねぇ』


律子『使う側からしたらいつもドキドキしますけど、春香はいつだって、良い意味で私を裏切ってくれますから』


律子『だから、私は、春香を使える立場を、誇らしく思うし、それ以上に嬉しく思っています、はい!』




あずさ『春香ちゃん、ですか~? ん~~……そうですねぇ、あの、春香ちゃんって、いつまでも変わらないじゃないですか?』


あずさ『あ、いえ、例えば、ダンスだったり歌だったり、経験で上手になって行く部分は見違える程変わりましたよ?』


あずさ『そうでは無く、春香ちゃんの根っこの部分、それが変わらなくて、そしてソレが春香ちゃんの凄さでもあるんです』


あずさ『誰よりもその根っこはとても深く、折れにくい、吹き飛ばされそうな強い風、乾いて枯れてしまいそうな強い光』


あずさ『そのどれもに耐えるんではなく、障害と思わない強さ、春香ちゃん自身にはその強さがある、私はそう感じます』


あずさ『それを羨む? ん~~そうではないですね、春香ちゃんであるこその物ですから、私がどうした所で、ですし~~』


あずさ『ただ、私は、春香ちゃんと言う存在と一緒に居れる、それは他の皆と同じようにとても幸運な事だって思っています』




響『春香? うん、春香か~~、手乗り文鳥って感じかな~? 人懐っこくて、でもどっか飛んでちゃいそうで』


響『皆はどう思っているか解らないけど、春香って凄く無理が無いんだ、凄く自然体で』


響『どっちかって言うと、自分達人間よりも、動物に近いんじゃないかなぁ? いや、春香は春香で一杯悩みとかはあるけどね?』


響『雰囲気とかそう言うの、だから自分は、春香をたまに凄く可愛がりたくなっちゃうんだ~』


響『……でもね? ……自分は961から来た人間だから、たまに凄く怖くなる事があるんだけど』


響『もしも…………絶対そんな事無いと思うんだけど、春香がここのアイドルを辞めちゃうとするでしょ?』


響『そしたら、もう、自分達は【天海春香】に二度と会えなくなるんじゃないかって……そう言うふうにたまに思うんだ』




貴音『春香、ですか……そうですね、改めて春香について考えを巡らせてみると……わたくしが言うのもなんですが、彼女は実に不思議ですね』


貴音『考えれば考える程、思えば思う程に、天海春香は手の上をスルスルと零れていくのです』


貴音『考えるな、思うな、感じろ、とでも言いましょうか……わたくし達の目指す頂は……ふふふこれは言い過ぎでしょうか』


貴音『ただ、わたくしは春香の他に春香よりも【あいどる】である人間を知りません』


貴音『わたくしの知る世界の狭さから、やもしれませんが、予感めいた物が、彼女以上のあいどるは居ないと告げるのです』


貴音『ふふふ、そう考えると春香の魅力は相対的にも抽象的にも測れない、その存在そのものにあるのやも知れませんね』


貴音『ご質問の答えにならず、大変心苦しいですが、わたくしが春香に持つ、いめーじの一旦はこんな所でしょうか』




美希『春香? 春香は凄いよ?』


美希『だって春香だよ? 天海春香を凄いと思わないアイドルなんて、この世に居るのかなって思うな』


美希『だって春香は望めばなんだって手に入るんだよ? でもね? 春香は絶対に最適解を出さないの』


美希『春香の凄さはソコだってミキは思うな、きっと春香自身には自覚は無いって思うんだけどね』


美希『迷い、悩み、沈み、楽しみ、導き、辿り着く、春香は、アイドルにおける全部を楽しめる娘なんだよ?』


美希『そんなの、勝てっこないって思うでしょ? だって美希は、いつだってすぐに答えが欲しくなっちゃうし、辛いのはヤッだもん』


美希『劣等感を感じるか? って言われればYESかな、でも春香みたいにはなりたくないし、春香みたいにはなれないって思うの』


美希『強いて言うならば、美希の目標に一番近づいて置きながら、それを掴める位置に居るのにわざと掴まないみたいな所が、ちょっとだけムカってくるかな?』


美希『アハッでもね? ミキは負けないの』


美希『ミキはミキのまま、絶対に天海春香を超えるの、で、最後はハニーはミキの』 カチッ




善澤「と、まぁ、こんな感じなんだがね?」

春香「……」

善澤「天海君、皆の話を勝手に統括させてもらうが、良いかね?」

春香「……」


善澤「天海春香は、天海春香のままが一番良い」


春香「……」

善澤「少なくとも僕は、こう受け取ったよ」

春香「……」

善澤「きっとこれからも君は色々と迷い、人を羨むんだろう、それで良い、それが天海春香ならば、そうするべきだ」

春香「……」

善澤「ただ、皆の中には確固とした765プロアイドル天海春香が存在している、それを決して忘れないでくれ」

春香「……」

善澤「……」

春香「……」

善澤「……あ、天海君?」




春香「……っっ」ドパッッ!!!!




善澤「どぅわぁ!!!!????」



高木「いやぁ、ハッハッハッ、すまんね」

善澤「差し出したハンカチが風呂に沈めたようになってしまったよ、ははは」

高木「どうだったね? 今年度の家のアイドル達は?」

善澤「相変わらず、と言う言葉を使わせてもらうよ」

高木「ハッハッハッハ、褒め言葉として受け取らせてもらうよ」

善澤「これは冗談でもなんでもないんだがな?」

高木「ああ」

善澤「この娘達、特に、あの娘に最初に出会えたお前は、とても幸運だったって、思う」

高木「天海君、かい?」

善澤「ああ」

高木「そうかも……しれないな」


善澤「それにしても」チラッ

高木「ああ」チラッ




春香「み”~~~~ん”~~~~な”~~~~っっ!!!!」ドッッッッパァァアアア


千早「な、何が起こったの? 春香」


やよい「だ、大丈夫ですか!? 何か痛い事でもあったんですかぁ!?」


伊織「どこの構造がどうなればそんなに顔から水分飛び出るのよ……」


真「雪歩バケツ!! もうこれ、タオルでも足りないよ!!」


雪歩「はいっ! 真ちゃん!! 任せてっっ!!」スチャッ!!


亜美「うあうあ~~!! ゆきぴょん!! 溜め池つくるわけじゃ無いんだYO!!!!」


真美「やっぱりはるるん……ウチュージンなんだ……」


律子「その芸で一番組行けるわね、春香」


あずさ「あらあら~~ほら春香ちゃん? よしよ~し、よしよ~し」ナデナデナデナデ


響「春香、このままだとミイラになっちゃうぞ……」


貴音「では、皆でらぁめんを食べに」


美希「ふぅ…………まったく、春香は本当に、春香なの」



P「ただいま~~って、何事だよっ!!??」


春香「ブロデュ~~ザ~~ザ~~ン””!!!!!!」ドドドドドド


P「どこ産の生き物だよ!? 誕生日にどうした春香!?」


春香「ふぇ? ……誕生日?」ピタッ



善澤「本当に、面白い子達、だな」


高木「皆、自慢の子達、だよ」




間に合った……。

天海春香さんハッピーバースデー!!!!

アイドルマスターがどんな進化を迎えても

天海春香と言うアイドルは一生自分の根っこに居るんだと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!!


乙よかった

乙 最近で最も感動した
やっぱり春香はオンリーワン!

いい話だった
乙乙

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