男(やべぇ、超能力だコレ………) (14)
超能力には色々な種類がある。
単純に物を自由自在に動かしたり、未来予知をしたり、透視をしたり、あるいは瞬間移動、etc………
その中でも、一つ目に挙げた超能力はいわゆる念力と呼ばれ、超能力というカテゴリの中でシンプルに『強い』。
とりあえずこれさえあれば未来予知をするまでもなく自分に干渉するものを停止、あるいは破壊することができるし、
透視で壁の向こうを見たければ壁ごと壊せばいい。女子の衣服を透視したいのであれば念力で拘束した上で脱がせればいい。
瞬間移動なんてできなくてもそれに近い速度で移動することだってできる。
念力は超能力の中で最も秀でた能力であるといえよう。
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ある日、俺はそんな超能力に目覚めた。
きっと完全なる偶然だ。暇な神様が適当な人間に与えようとこの世界にぽろっと落っことした物を、偶然俺がキャッチした。そんなくらいの偶然。
確か学校から帰る途中、電車に乗ってる時だったと思う。
吊り革に掴まってる俺の右方向約3メートル。そこに、バカでかい声で話をしては大笑いするようなやつらが数人いた。
不良が好みそうなジャージに、よくわからない色の髪。身なりからしても、おそらくヤンキーだとかの類だと思った。
正直言うと、うるさいからとっとと降りてほしい。俺だけでなく、まわりの乗客の大半がこう考えただろう。
でも誰も注意をしようとはしない。無論、俺もしない。人は少ないわけではないし、この数で言えばヤツらは抵抗もせずに降りていくだろうと想像もつく。
しかしそれでも、誰も注意などしない。怖いから、恥ずかしいから。そんな理由でクズどもを好き放題やらせている、自分を含む多くの日本国民を心底情けないと思った。
えたりそう
台本形式のほうが読みやすいな
>>4
死ねゆとり
台本形式とゆとり云々はなんの関係もないだろ
期待
期待
非常に腹が立っていた。
[ピーーー]とまでは言わんが、あいつらに何かしらの不運が降りかかればいいと思った。
例えば、その不良たちの中でも一際デカい声で笑う男。無駄に大口を開けて笑うから、そのままアゴでも外れてしまえと、陰湿な弱者さながら祈っていたところで───いや、祈った瞬間。
「うははははははッ…ぁガっ!!」
デカい声の男が急に笑うのをやめて、痛々しいうめき声を発しはじめた。
「あ……あぇ?あっ、あがががっ!!」
そいつは口を大きく開いたまま、涙目で必死に何かを訴えていた。アゴが外れたのだ。
とんだ偶然、いや天罰とでもいうのか。本当にあるものだなと思い、少し気分が晴れた。
その不良たちは、次の駅で降りていった。
その後は特に問題もなく、家の最寄り駅に到着した。
改札を出たあたりで名前も知らない政治家がメガホンで必死に何かを訴えていたが、興味も無いし、ただうるさかったので、メガホンが故障でもすればいいのにと思い、目の前を通り過ぎた。
その瞬間にメガホン越しの声はピタッと止んだ。
驚いて振り向くと、政治家とその周りの数人が焦ってメガホンをいろいろいじっていたのが見えた。
おそらく本当に故障したのだ。
正直、自分の幸運にビビった。論理的に説明ができないんだが、何か、気運だとかオーラみたいなもので、俺という器の中が満たされているような感覚だった。
この幸運はどこまで通用するのか試したかった。そこで、駅を出て、当たり付き自販機でジュースを買ってみた。
ピピピピピピ………ピ、ピ、ピ………と、左から順に7、7、7と並んでいく。
普通ならこの次で1だとか9だとかが出てハズレだ。が、試しに祈ってみた。
7になれ!と。
…………ビピッ。
なぜかエラー寸前みたいな音を立てて、最後の数字が表示された。
7。
ここで俺は確信した。今日は何をやっても絶対に成功する。
非常に気分が良かった。缶ジュースを開けて、中身をごぎゅごぎゅと胃に流し込む。
誰に見せるというわけでもないが、見てろ、とばかりに、空になった缶をゴミ箱へ向けて投げた。
ゴミ箱といっても、駅などに置いてあるような、ジュース一本分の太さ+アルファ程度の大きさしかない穴だ。
むろん俺は完璧なコントロールを持っているわけでもないし、普段なら100%ハズれる。
だが、今日なら100%入る。
不恰好な弧を描いて空き缶はゴミ箱の穴へ飛んで行き───そして、穴のフチにカンッ、と当たって、そのままほぼ真横に跳ね返った。
失敗だ。いくら幸運でも、なんでも成功するわけじゃないのか……と、やや自信を失くしかけた。
瞬間。
すでに穴より下の位置にあった缶が、まるで重力が反転したかのようにぐんっと上へ向かい、そのままゴミ箱の中にコロンと入っていったのだ。
奇跡と言うしかない出来事が起きた。その時は、きっと風が偶然缶の中に吹き込んで、偶然軽かったかもしれないあの缶が浮いたのだと考えた。
後から考えればそんなことがありえるわけがないのだが、当時は浮かれて頭の中が緩んでたらしい。
仮面ライダーアギトの世界だったら男が大変なことに・・・
その後、自販機の当たりで手に入れたペットボトルのお茶を飲みながらルンルン気分で歩いていた。
帰ったら何をしようか。アプリのガチャで大当たりのアイテムでも大量に手に入れようか。はたまた何かの抽選やらに応募してみようか……。
なんとなく、こんな幸運は明日まで続かないだろうと思っていた俺は、そんなことを考えていた。
そんな折、少し先の道に、横から何かがぬっと出てきたのが見えた。
一言で表すなら、黒いかたまり。もう時間も遅く、道が薄暗かったこともあり、そう表現せざるを得ない見え方だった。
ギョッとしたが、少し進むとそのかたまりのシルエットもよく見えるようになり、横長の胴体や丸っこい頭、そして不規則に動く尻尾から、黒猫だとわかった。
黒猫といえば、前を横切られると不運になるとか言われている生き物だ。
俺はなんだか不吉だと思った。そんな迷信を信じていたわけではないが、『幸運』というこれまた迷信に近いものを実感していたから、願わくばその黒猫にはどこかへ行ってほしかった。
いや、あの時考えていたのは、どこかへ行って、なんて程度のものではなかった。
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