亜美「ロス:タイム:ライフ」 (37)
今を戦えない者に次とか来年とかを言う資格は無い。
―――元イタリア代表 ロベルト・バッジョ
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これで竜宮は4人揃ったのかな?
期待
ロスタイムライフSSを書くのはこれが初めてです。他の方々が書かれた作品ほどの感動は期待しないでください。
―――前置き
記者「へ~え、休日はユニットのメンバーでショッピングね。君らくらいになると、目立っちゃって大変じゃない?」
あずさ「そんなことないですよ~。普通にしてたら、意外とばれないものなんです。ね?」
伊織「そうね。周りは気にしなくても案外なんとかなるものよね」
伊織「気にしなきゃなんないのはむしろあずさの方! 目を離すとすぐいなくなるんだもの」
あずさ「あ、あら~」
記者「はは、その話、詳しく聞かせて貰えるかな?」
伊織「ええ、是非! この前なんて―――」
あーあ、つまんない。この話、何回も聞いたもん。
もっと楽しいことしたいのに。仕事だし仕方ないっていっても、つまんないもんはつまんないよ。
今頃何してるかなぁ……真美。
伊織「それで亜美が……って」チラッ
亜美「……」
伊織「亜美?」
亜美「……へ?」
あずさ「どうしたの亜美ちゃん? なんだか上の空ね~」
記者「ふむ、ムードメーカーの亜美ちゃんは、裏ではこんなに静かなタイプだったのかな?」
亜美「へっ……あ!」
亜美「うあうあ~! エイギョーボーガイだよー! 今のは、そう! 頭ん中でパンダと釘抜きがスーパージャンケンしてて!」
亜美「今パンダが勝って、5万笹ポイントゲットしたとこなんだよ~! いやー、激しい戦いだった!」
伊織「何の話よ……」
記者「ははっ、そうなんだ。亜美ちゃんは面白いね」
亜美「いや~、ははは……」
危ない危ない! このままじゃ仕事に師匠が来たっすって感じっぽいよ~!
ちょっと疲れてんのかな。こーゆー時は……
外の空気ジャブジャブ吸って、パーッとリラックス! これっきゃないっしょ!
亜美「ちょ、ちょっとトイレ行ってくんね!」ガタッ
律子「あっこら! アイドルが大声で……」
タタタッ
律子「って……トイレ、あっちだったかしら?」
亜美「脱出ー! ごめんねみんな、ちょっとだけだかんね」
亜美「いやー、シャバの空気はうめぇなぁ。生き返った気分だぜ! へっへっへ……あ!」
亜美「ノラ猫はっけーん! オスかメスか、見せろーーっ!!」ダッ
猫「!?」ビクッ
懐かしいなー。昔はこーゆーこと、真美と二人でよくやってたっけ。
亜美はいおりんとあずさお姉ちゃんと、真美はひびきんとやよいっちとユニット組んでから、別々の仕事ばっかになって……
いつの間にか……あんまり二人で遊べなくなっちゃったっけ……
亜美「どりゃー! 捕まえたー!」ガシッ
アイドルとして売れて、テレビとかいっぱい出れるようになるのは良いことなんだけど、自由に遊ぶ時間が減っちゃうのはちょっと残念かも。
久しぶりに真美と、パーーッと遊びたいな……
真美も、そう思ってるかな?
亜美「んっふっふー、ひっくり返してっと。結果は……」
ヒューーーーーーー……
亜美「……ん?」
上からなんか、音、聞こえる……?
亜美「!!」
これ、植木鉢?
でかっ、どんどんおっきく……ってか、落ちてきてる!?
近っ……避け、無理、やばっ―――――
あ、死んだ
うう、この歳で死ぬとか、そりゃないっしょ……亜美まだ中学生になったばっかなのに
こっからっしょ? 楽しいことも、まだまだ……なのに
もう……終わっちゃうの?
嫌だよ……もっともっと、遊びたかったのに……ううっ
ごめんね…………真美………………
……………………
亜美「……ん?」パチッ
亜美「え? あれ?」キョロキョロ
亜美「植木鉢、止まって……ってか、周り全部……」
ピィーーーッ!
実況『さぁ、ホイッスルが鳴り響きました!今回ロスタイムに挑むのは竜宮小町でお馴染みのアイドル双海亜美選手13歳かわいい!』
解説『若いですね~まだまだ成長真っ只中だっただけに非常に残念です』
亜美「え……なにこれ?」
主審「」サッ
審判団「」サッ
亜美「!? 誰!? 真っ黄色の服……さては兄ちゃんたち、亜美のファンだね」
実況『残念! ファンは私です!』
解説『どうやら状況が飲み込めていないようですね~』
亜美「ねぇファンの兄ちゃん! 亜美どうなっちゃったの!? 死ぬ間際になんかすごい力とか覚醒しちゃったの?」
主審「」フルフル
実況『この首振りはファンの兄ちゃん、覚醒の両方に対する否定でしょうか』
解説『うまくまとめたようですがこれでは前者の否定が選手に伝わっていない可能性がありますね』
主審「」ピッ
亜美「え、何? アレ?」チラッ
【3:23】
亜美「あ! サッカーでよく見るやつ! ロスタイムの!」
実況『ロスタイムにすぐ気付くあたり流石です双海選手』
解説『勉強と無関係の知識には定評がありますからね』
実況『さぁそんな双海選手に与えられたロスタイムは3時間23分!』
解説『若いだけあってやはり短いですね。残された僅かな時間をどう使うかが重要になってきます』
亜美「3時間23分……あ、22分になった! ……これって、どゆこと?」
主審「」ピッピッ
亜美「植木鉢……」
主審「」ピッ
亜美「亜美……」
主審「」ピッ
亜美「激突……!」
亜美「セクシー美少女名探偵双海亜美の名推理によると……これって亜美、やっぱり」
亜美「死んじゃった……の……?」
主審「」コクリ
実況『早くも察しましたね~。ゲーム等で慣れているのでしょうか、素晴らしい状況適応能力です』
解説『彼女は直前に植木鉢に気付き死を意識しましたからね。恐らくその影響も大きいでしょう』
亜美「そん……な……」
実況『かなりのショックを受けています。ここから立ち直るまでにかかる時間はどれほどでしょうか』
解説『若いですからね~未練も多いことでしょう。時間がかかると思われます。何せ若い!』
亜美「……ロスタイムってことは、まだ終わりじゃないんだね」
主審「」コクッ
実況『おっと』
亜美「要はアレっしょ? もう打ち切りだから残り2ページでまとめてみたいな」
主審「」コクッ
亜美「だったら……」スクッ
亜美「っ!!」ダッ
実況『走り出しました! これは早い決断ですね!』
解説『悩んでもちかたない、といったところでしょうか』
実況『なるほど!』
なんかよく分かんないけど、あと3時間で死んじゃうってことっしょ!?
死んじゃうってことは、何も出来なくなっちゃうってこと。
ユニットのみんなと、兄ちゃんと、真美と……みんなと、二度と遊べなくなっちゃうってことじゃん!
だったら今遊ばなきゃ! 早く、早く……!
亜美「も~~っ!」スッ
主審「!」サッ
実況『携帯を取り出しましたね』
解説『誰かに電話するのでしょう。審判も警戒態勢です』
亜美「もしもし、真美!?」
実況『やはり相手は双海真美! こういった状況で迷わず選ぶところに双子の絆を再確認できます!』
解説『13年の付き合いですからね。彼女の人生の全てが真美とともにあるわけですよ』
真美『あ、亜美…………どったの?』
亜美「あのね、実は亜美、死ん」
ピィーーーーーッ!!!
亜美「っ!?」ビクッ
主審「」フルフル
実況『これには笛がなります! 危うくイエローカードです』
解説『死んだことを他人に伝えるのは反則ですからね。言い切っていなかったためカードは免れたようです』
実況『審判の素早いジャッジに逆に助けられたということでしょうか』
解説『そうですね』
亜美「言っちゃ、ダメなの……?」
主審「」コクッ
亜美「うう~……」
真美『ねぇなんか言った? しん、とか聞こえたけど』
亜美「! えっと……そう! 信じてる、って言いたかったんだよ真美のこと!!」
真美『? どゆこと?』
亜美「だから、その……遊ぼ! 今どこ!?」
真美『ええっ!? 亜美、なんで……ま、真美は今スタジオらへんだよ。休憩中で、そんで……』
亜美「すぐ事務所来て! 時間無いから!」
真美『え……う、うんっ! 了解!』
真美『すごいね、亜美。真美も今メッチャ亜美と遊びたいとこだったんだ』
亜美「真美も?」
真美『うん。なんか、今のうちに遊んどかなきゃっていうか……とにかく、全力全開で行くかんね!』
亜美「うん! 亜美も裏道とかメッチャ使ってダッシュで行くから!」
ピッ
亜美「はぁ、はぁ……」タタタッ
実況『双海選手、足が止まりません。このスタミナもアイドルとして培われたものでしょうか』
解説『活動外でも常に動き回っている印象ですからねぇ。当然といえば当然と言えます』
急がなきゃ……あぁもう! 走ってる時間ももったいないよ~!
終わっちゃう前に……せめて、楽しく……!
~♪
亜美「!」
実況『ここで着信! 思わず足を止めます』
解説『雑誌の取材を抜け出して今に至るわけですからね。それ関係とみて間違いないでしょう』
亜美「あずさお姉ちゃんからだ……!」スッ
亜美「も、もしもし?」
あずさ『亜美ちゃん? なかなか戻ってこないけれど、今どこにいるの?』
亜美「えっ、あのっ、ト、トイレだよっ! ほら、アレがアレで、ね?」
あずさ『でも……え? あ、ちょっとごめんね、伊織ちゃんに変わるわね~』
亜美「げ」
伊織『亜美!! アンタが走ってった方、トイレと逆方向らしいじゃない! さてはサボってるんじゃないでしょうね!』
亜美「そ、それは……」
伊織『早く戻ってきなさい! まだ取材の途中なんだから!』
亜美「うっ……!」
亜美「ご、ごめんいおりん! その……取材の方は、亜美抜きで」
伊織『何言ってんのよ! いい? これは竜宮小町の取材なの。私とあずさと、亜美……そして律子。これが竜宮小町よ』
伊織『アンタ抜きじゃ成り立たないの! 分かってるでしょ? とっとと、帰ってきなさーい!』
亜美「!!」
律子『……と、言うわけだから、亜美? 急いで』
亜美「っ……ごめん! キューヨーなんだ!」
律子『え?』
ピッ
亜美「…………」
亜美「いおりん……あずさお姉ちゃん……りっちゃん…………」グスッ
亜美「……う」
亜美「っうぁあ!!」ダッ
実況『三人の言葉のディフェンスを突破し、双子の姉の元へ急ぎます』
解説『この選択はどうなんでしょうかねぇ』
ごめんみんな……亜美、行かなきゃ……ごめん!!
~事務所~
ガチャッ
亜美「真美!!」バンッ
実況『ゴォォォォル!! 軽やかなフットワークで早くも目的地に到着しました』
解説『おや、審判団の姿が見えませんね。ついてこられなかったのでしょう』
小鳥「あら、亜美ちゃん。取材はもう終わったの?」
亜美「はぁ、はぁ……」キョロキョロ
【2:50】
亜美「っ……真美は!?」
小鳥「真美ちゃん? 真美ちゃんならプロデューサーさんとスタジオに……それより、取材は」
ガチャッ
真美「亜美!!」
亜美「! 真美!」
小鳥「ええっ真美ちゃん!?」
実況『ここで双海真美が到着です! と同時に審判団も来ましたね』
解説『息を切らしていますね。休憩を要求しています』
真美「はぁ、はぁ……メッチャ疲れたよ~! そんで、何を」
亜美「行こっ!!」ダッ
真美「うええっ!? どこに!?」
亜美「どっか!」タタタッ
真美「どっかってどこ!? んも~~っ……」
真美「まいっか! 今日はめいっぱい、楽しむよ~!!」ダッ
ガチャッ
タタタ……
小鳥「……」
小鳥「行っちゃった……なんだったのかしら?」
実況『集合するやいなや即出発! 一体どこへ向かうつもりなのか』
解説『審判団が涙目で追いかけていきますね』
亜美「はぁ、はぁっ……」
真美「ぜぇ、ぜぇ……もー、ゴーインすぎだよ亜美」
亜美「ごめんね真美。なんか……」
走らずには、いられなかった。
亜美「……」チラッ
【2:38】
真美「……?」
亜美「えと……ここどこ?」
真美「ん、っと……あ、公園! 昔よく遊んだ!」
亜美「あ……」
頭ん中がワーーーッてなって、勢いで走ってたらここに来た。それってつまり、そーゆーことなのかな?
亜美「……亜美ね、昔みたいに真美と遊びたくって、そんで……ここに来たんだと思う」
真美「……」
亜美「でもさ、何して遊んだらいいか、分かんないんだ。時間もないし……どうしよ?」
真美「え……」
真美「ええええええっ!? 何それ! 何も考えてなかったの?」
真美「真美、いちおー仕事中だったのに……遊びたいからって呼んで、そんで何するかは今決めるって……」
亜美「……ごめ」
真美「メッチャ面白いじゃん! じゃあさアレしない? ミラクル鬼ごっこ!」
亜美「!」
真美「真美もね、遊びたかった。でも仕事だしダメかなって思ってたんだけど……」
真美「そーだよね! 短い人生、やりたいことやんなきゃ損っしょ!!」
亜美「真美……うん!」
実況『我々の理解の範疇を超える会話が繰り広げられていますね』
解説『通常なら怒る場面でしょう。しかし双海真美、彼女はなんとなく気付いているのかもしれません』
実況『今の亜美選手がただ事ではない状況にあると?』
解説『ええ、本能で。双子の絆というものは、我々が、いや、本人達が思っている以上にすごいものなのかもしれませんよ』
――――――――――――
――――――
―――
真美「はぁーーーー……楽しかったね!」
亜美「うんうん! メッチャ楽しかった……!」チラッ
【1:52】
真美「ねぇ亜美、次何す……」チラッ
亜美「……」
真美「……」
真美「ちょっと、休憩しよっか」
亜美「……うん」
真美「ふぅー、この歳になるとちょっとの運動でもカラダに堪えますなぁ」
亜美「そだね……」
実況『ここにきて放心状態の亜美選手』
解説『残り2時間を切りましたからね。終了のホイッスルが近付いているのを実感しつつあるのでしょう』
実況『残り3時間の時点との違いに関してどう考えますか』
解説『そうですね。休日などに家でゆっくり過ごしていて、「もうこんな時間!?」と感じる時間は人それぞれかと思われます』
解説『そういうことでしょう』
実況『なるほど』
……いっぱい遊んだ。久しぶりに真美と二人で。ほんとに楽しかった。
でも……まだ足りない。何か足りない。何が? 分かんない。
亜美、もうすぐ死んじゃうのに。こんな気持ちのまま終わるなんて嫌だよ。
でも、分かんないんだよ……うう、亜美史上最高に分かんない問題がここにあるっぽいよ。
亜美がホントにしたいことって……何なのさ?
亜美「……ねぇ真美」
真美「ん?」
亜美「もしさ、もしもの話だけどね」
亜美「自分があとちょっとで死んじゃうって分かってたら、何したい?」
真美「!!」
実況『おおっとこれはギリギリのプレイ! しかしならない笛!』
解説『主審は一切動きませんね。先ほどとは顔付きも違い、人が変わったようです』
主審「」ゼェ ゼェ
実況『……疲れているようですね』
解説『どこか遠くを見つめています。亜美選手の発言に気付いていない可能性もありますね』
真美「な、何言ってんの? 亜美」
亜美「もしもだって! ほら、そーゆー設定のドラマとか、ありそうっしょ?」
真美「あ、ありそう……ってか、たしかにそーだけどさ、うーん……」
真美「げ、現実味が無さすぎっぽいけど、もしも、万が一そうなったらさ」
亜美「うんうん」
真美「……やっぱり、遊びたいかな。亜美と二人で」
亜美「! ……うん、亜美も」
真美「そんで―――」
真美「みんなに会いたい。お別れしたい。最後に、みんなありがとーって、言いたいよ」
亜美「!!」
真美「うん……やっぱそうじゃなきゃ、終われないってゆーか……ん?」
亜美「ふ……ふふっ、そっか。んふっ、ふふふ、あっはははは!」
真美「亜美?」
亜美「そーだよね、うん……簡単なことじゃん」
真美「?」
なんでモヤモヤしてるか、分かった気がする。
みんなにお別れ……そうだよね。当たり前じゃん!
亜美、逃げてたんだ。みんなと会ったら辛くなるかもって思って、一番やんなきゃいけないことから逃げて……遊んで、全部忘れよーとしてたんだ。
でも、やっぱりそれじゃダメっぽいよね。そりゃ会ったら別れるの辛くなるだろーけど……
会わないままお別れしちゃう方が、もっと辛いに決まってるっしょ!
亜美「っふへへ、なんか亜美、みんなと会いたくなってきちゃった」
真美「うん……真美も、同じだよ」
真美「自分でも言ってて、そんな気分になってきたってゆーか……でも、みんなんとこ回る時間も……」
亜美「んっふっふ~、亜美にいい考えがあるんだ!」
真美「いい、考え……?」
―――――――――
――――――
―――
亜美「って感じで!」
真美「なるほど……んっふっふ~、いいねぇ! 楽しそー!」
亜美「そんじゃ……走ろ、真美!」ダッ
真美「リョーカイ!!」ダッ
実況『さぁ走り出しました! しかしよく走りますね亜美選手は』
解説『そうですね。しかし今回のダッシュはこれまでとは明らかに違います』
実況『むむっ』
解説『闇雲ではなく、明確な目標を持ちそこへ向かう……そういった走りのように見えますね』
実況『くぅ~! なるほど!』
伝えよう。みんなに、伝えたいこと。
どうなるか分かんないけど、何もしないよりは……
後悔するよりは、ずっと――――――
~某スタジオ~
P「おっっっっ――――――」
P「っそい!!!! 軽い休憩だってのにどこまで行ったんだ真美は!!」
やよい「電話しても繋がらないし、うう、心配です~」
響「結局自分たちだけで不完全なまま仕事終わらせちゃったし……ねぇプロデューサー、やっぱり探しに行った方が」
P「うーむ……」
~♪
P「!」
響「電話!」
やよい「真美からですか!?」
P「……いや、音無さんだ」ピッ
P「もしもし」
P「はい、はい……は? ええ、はぁ……ええっ!?」
P「分かりましたすぐ行きます!!」
P「仕事してください!」ピッ
やよい「ど、どうしたんですか?」
P「あ、ああ……」
P「真美が見つかった」
やよい響「「!!」」
~喫茶店~
律子「なんですって!? 分かりました仕事してください!!」ピッ
伊織「小鳥から?」
律子「ええ。亜美の居場所が分かったわ」
あずさ「まぁ! それは良かったですね~」
律子「小鳥さんがツイッターを見てて気付いたらしいんですけどね。ちょっとした話題になってるんですよ。写真付きで」
伊織「なんて?」
律子「……今、人気アイドルの双海亜美、真美が」
律子「街中でゲリラライブしてる……って」
伊織「はぁ!?」
あずさ「あ、あら~」
伊織「こっちの仕事サボって、急用があるって言ってたのに……どんっだけ自由なのよ!!」
あずさ「急用じゃなくて休養だったのかしらね~、なーんて」
律子「……とにかく、行くわよ。ふふ、亜美ったら、こんな勝手なことしておいて―――」
律子「覚悟はいいのかしらねぇ?」
伊織「にひひっ、オシオキ決定ね♪」
あずさ「ふ、二人とも穏便に……ね?」
亜美「んっふっふ~、兄ちゃん姉ちゃん!! 盛り上がってる~!?」
\ワーーーーーーーーーッ/
真美「今日はみんな超ラッキーだよー!! 撮影とかし放題っぽいから、全力で拡散しちゃってねー!!」
\うおおおおおおおおおおっ!!!!/
亜美「そんじゃ、次の曲いっくよーーー!!!」
真美「スピーカーとか何も無いけど、ここにいるみんなに声、届けるかんね!!!」
亜美真美「「『スタ→トスタ→』!!!」」
\ウォオオオオオオオオオオオオ!!!!/
P「! いたぞ!」
律子「見つけた!」
亜美「タリラン♪ Turn it up♪ 無敵ん♪」タタタッ
亜美(……来たね、真美)
真美「チカラ♪ 無から♪ 無限イェイ!イェイ!」タタタッ
真美(……うん)
伊織「ほんとにいた……何やってんのよ! 待ちなさーい!!」
やよい「亜美~! 真美~!!」
いおりん……
やよいっち……
亜美「元気♪ Get it on♪ 激論♪」タタタッ
真美「地球♪ 無休 夢中♪」タタタッ
実況『双海選手、走りながら歌い続けていますね』
解説『彼女らにとってここら一帯全てがステージのつもりなのでしょう。歌声をみんなに届けるというのも、こうすることで直接届けるというわけですね』
あずさ「二人とも、楽しそうね~」
響「ずるいぞ! ライブするんなら、自分も一緒にやりたかったさ~!!」
あずさお姉ちゃん……
ひびきん……
亜美「あーゆーれでぃ? 魅力のレディのプッシュスタート♪」タタタッ
真美「ままま真面目にラブ♪ みーつけて未来のプリプリプリンセス♪」タタタッ
律子「コォラ、亜美~~!!」タタタッ
P「真美! 勝手な真似するんじゃない! 急にいなくなって、心配したろ!!!」タタタッ
りっちゃん……
兄ちゃん……
実況『人混みをかいくぐりながら走る二人を、誰も捉えることが出来ません』
解説『ファンたちによる見事なスクリーンプレーですね』
亜美「……」チラッ
【0:59】
亜美「……」
神様……
ねぇ神様……
お願い、夢を
ももももぉーっとちょうだーい――――――
亜美「今日はみんな、ありがとねーーーっ!!」
真美「めっっっちゃ楽しかったよーーー!!! みんなは、どーだったーー!?」
\わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!/
P「はぁ、はぁ……二人とも、なんでこんな急に」
伊織「何よ、ライブがやりたかったんなら、そう言いなさいよね……はぁ、言ってくれれば、私たちなら、いくらでも……はぁ」
亜美「そんじゃ最後に!」
亜美「……」チラッ
真美「……」コクッ
亜美「いおりーーーーん!!! あずさお姉ちゃーん! りっちゃーーん!!」
伊織「!」
あずさ「あら~」
律子「なっ……」
真美「やよいっち!! ひびきん! 兄ちゃーーん!!!」
やよい「真美?」
響「なんだ?」
P「……」
亜美「それから、はるるん! 千早お姉ちゃん! ミキミキ!」
真美「お姫ちん! まこちん! ゆきぴょん!」
亜美「社長! ピヨちゃん! ガッコのみんな!!」
真美「パパにママ、それにファンのみんなも!!」
亜美「……」スゥゥゥ
真美「……」スゥゥゥ
亜美真美「「大っっっっ好きだよーーーーー!!!!!」」
\うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!/
ああ、ダメだ。お別れしよーって思ってたのに……あはは
じゃあねなんて、言えないや。
亜美「っ……今まで、ありがとー!! これからも、真美を!!」
真美「……亜美を!!!」
亜美真美「「よろしくねーーーーーーーーっ!!!!」」
\うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!/
ダッ
P「亜美、真美……」
P「って! こら、待て二人とも!」
律子「戻ってきなさい! ったく……恥ずかしいこと、大声で言ってくれちゃって」
やよい「うう、ファンの熱気がすごすぎて、二人のところまで行けません~」
響「なんか、嵐みたいなライブだったね」
あずさ「そうね~、突然始まって、去って行って……残されたのは、風と……」
伊織「雨の跡……ね……」
伊織(まったく……馬鹿にするのもいい加減にしなさいよね。遠くにいたからって、気付かないとでも思ってるの?)
伊織(言いなさいよ。相談しなさいよ。どういう理由があったのかは知らないけど……)
伊織(泣くほどのことなら、私に……私たちに……!)
――――――――――――
――――――
―――
亜美「……ふぅ~」
真美「いやー……すっごいライブだったね、亜美」
亜美「そだね。なんかもう、全部出し切っちゃった気分だよ」
亜美「……」チラッ
【0:34】
言いたいことは、言えた。これ以上出来ること、分かんないし……戻らなきゃ。
亜美の……死んじゃう場所に。
亜美「……そいじゃ、亜美、ちょっと行くとこあるから」
真美「ん……真美も。そろそろ行かなきゃ」
亜美「……兄ちゃんの、とこ?」
真美「そ、かな。亜美は、りっちゃんたちのとこ?」
亜美「う、ん……そ、だね……」
真美「……」
亜美「……」
真美「ねぇ……どーしたのさ、亜美」
亜美「? 何が?」
真美「なんで……」
真美「なんで……泣いてん、の……?」
亜美「え?」ポロッ
亜美「あ、れ? おかしいな、ってか……」ポロポロ
亜美「真美も……」ポロポロ
真美「あ……」ポロポロ
真美「なんでだろ……あはは、おかしーよね。もー、亜美が泣くからっしょ!」フキフキ
亜美「そ、かな……ごめん……」ポロポロ
真美「うあうあ~、ダメだよ! しんみりしないでよ~! とっ……」ポロッ
真美「止まんない、っしょ……!」ポロポロ
亜美「う……」ポロポロ
亜美「うわあああああああああああああああああああっ!!! ああああああああ!!!」ポロポロ
真美「んぅっ、えぐ……うわあああああああああん!! うう、うああああああ!!!」ポロポロ
亜美「ひぐっ、ごめん真美っ、んぐ、うあああああああああああ
っ」ポロポロ
亜美「理由、言えないけど! でもっ……やっぱ……うあああああああああ!!!」ポロポロ
真美「真美もっ、ううっ、ごめ…………うわあああああああああああん!!」ポロポロ
亜美「うわあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」ポロポロ
真美「うわあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」ポロポロ
実況『遂に限界が来てしまいました』
解説『まだ13歳の少女ですからね。むしろよくここまで悲しみを堪えられたものですよ』
実況『双海真美も同様に悲しんでいますが、やはりこれが亜美選手との永遠の別れになると気付いているのでしょうか?』
解説『どーうなんでしょうねぇ。先程も思いましたが双子の力は我々の想像を超えるものがありますからね』
実況『そうですね……おや?』
解説『どうしました?』
実況『いえ、情報が入ってきたのですが……これは』
解説『むむ?』
解説『……』
解説『だとすると、彼らは……』
亜美「うっ……えぐっ……」グスッ
真美「じゃあ……そろそろ、ホントに……」グスッ
亜美「うん……」グスッ
これでお別れ。本当に……もう、会えないんだ。
ずっと一緒に遊んで、一緒に勉強して、一緒にご飯食べて、一緒に寝て……
すっごく楽しかった。亜美は亜美で、真美は真美。だけど……亜美は真美と二人で一つで、真美と一緒だったから亜美は亜美だったんだと思う。
もっと遊びたかったなぁ。もう会えなくなるなんて、考えたことなかったけど……
やっぱ……寂しすぎっしょ……
一緒がいいな……ずっと、ずっと一緒が―――――
……なんて
亜美「ダメだよね……うん」
真美「亜美……?」
亜美「……あー」
亜美「真美隊員、御苦労であった! 今日のライブ、サイコーだったぞ!」
真美「! ……ふふっ」
真美「当然であります亜美隊員! そちらこそ、見事でありましたぞよ!」
亜美「今日ほどのライブが出来たんだから、トップアイドルになるのも夢じゃあない!」
真美「うん……その通り! だから……」
亜美「だから絶対、トップアイドルになってね! 真美!!」
真美「!!」
真美「……亜美は?」
亜美「えと……亜美も!」
真美「う、うん、だよね。亜美、そっちこそ絶対トップアイドルになるんだかんね!」
亜美「も、もちろん! ……多分」
真美「多分じゃダメっしょ~! 絶対だって!」
亜美「もー、分かったよー! うあうあー、真美からのプレッシャーがヤバすぎっぽいよ~!!」
真美「……ぷっ」
亜美「ふふっ」
亜美真美「「あははははははははははっ!!!」」
そう……最後は、こうじゃなきゃ。笑顔じゃなきゃ、ダメっしょ。
亜美「じゃーね、真美!」
真美「バイバイ亜美!!」
笑顔で別れないと。
亜美「……」スタスタ
ずっと会えないんなら……もう顔も、見れないんなら……
最後に見た顔が泣き顔なんて、絶対嫌に決まってるっしょ…………
亜美「……」
亜美「…………」
亜美「……」クルッ
……ん?
亜美「ついて来ないの……?」
真美「……?」クルッ
真美「なんか言った? 亜美」
亜美「……! ううん、なんでも」
真美「?」
そっか……ああ、そうなんだ。
やっと分かったよ。そんな……でも……
…………
亜美「……真美、ちょっと言い直していい?」
真美「えっ」
亜美「……」ニカッ
亜美「またね!!! 真美!!!!」ダッ
真美「あ……」
真美「また……ね…………またね!!! 亜美!!!」
――――――――――――
――――――
―――
亜美「着いた。ここで亜美……死んじゃったんだよね」
亜美「……おっ」
タタタッ
主審「」ゼェ ゼェ
審判団「」ゼェ ゼェ
亜美「遅いよ~! 時間は……」
【0:01】
亜美「……そろそろ、だね」
主審「」コクッ
もっと遊びたい。もっといっぱい、楽しいことしたい。
やっぱそーゆー思い、最後まで無くなんなかったね。でもま、いっか。
これまでもお別れとか辛いこと色々あったけど、二人で乗り越えてきたんだもん。二人一緒なら、どこへ行っても大丈夫なハズだもん。
だから……きっと、なんとかなるっしょ!
まだまだ、終わんないよ。
これからもずっと、ずっとずっとずーーーっと、遊びまくってやっかんね!!!
【0:00】
ピーッ ピーッ ピーーーーッ
―――数日後
あずさ「この事務所も……静かになっちゃったわね」
伊織「……当たり前じゃない。賑やかすぎるのが、いないんだから」
あずさ「……そうね」
小鳥「なんだか、まだ信じられないわ。今にも事務所のドアを開けて、走り回って、イタズラして、律子さんに叱られて……そんな姿が目に浮かぶもの」
律子「……こればかりは、現実になってほしいものですね。小鳥さんの妄想も」
やよい「うう~……なんで……」グスッ
響「や、やよい、泣かないでよ……散々泣いたのに、自分も、また……」グスッ
P「……本当に、最後まで驚かされっぱなしだったな。あいつらには」
律子「……ですね」
P「仕事サボって、勝手に街中でライブ始めて、そのままどっか行って、それで……まさかその後」
P「ほぼ同じ時間に……全然違う場所で、二人とも事故に遭うなんてな……」
律子「今思えば、まるでこうなることが分かってたみたいだったわね……あの二人」
P「……かもな」
伊織「まったく……ふざけんじゃないわよ。亜美も真美も、あんだけ好き勝手やっといて」
伊織「勝手にいなくなっちゃうんじゃないわよ……バカ……!」グスッ
やよい「伊織ちゃん……うう~」グス
小鳥「……」
小鳥「今頃、何してるんでしょうかね……二人とも」
P「そうですね、天国で……いや、イタズラばかりしてきたから、地獄か? ……どっちにしても」
P「あの二人なら、関係ないでしょうね。どんな所でも、一緒に走り回って、遊び場にしてますよ」
小鳥「……ふふっ、そうですよね。あの子たちならきっと、楽しくやってるに決まってますよね」
P「当然ですよ。というか、楽しめてない二人なんて想像できません」
P「だって……俺の記憶の最後の二人は」
P「あんなにも楽しそうに、笑ってたんですから―――」
辛いこともいっぱいある。けど、支え合うことで楽しく乗り越えられる。
だって亜美は、生まれた時からずっと
真美は、これからもずっと
一人じゃないもん……ね!
―――
――――――
――――――――――――
実況『そうですね……おや?』
解説『どうしました?』
実況『いや、情報が入ってきたのですが……これは』
解説『むむ?』
【審判団、迷子なう】
解説『……』
解説『だとすると、彼らは……』
実況『そこにいるのは、我々の担当しているロスタイムの審判団ではないようですね』
解説『……と、いうことですよね。たしかによく見ると別人です。気付きませんでした』
実況『亜美選手、走り回っていた上に裏道等も多く使用していましたからね。見失うのも無理はありませんがしかしこれは……』
解説『ええ、審判団として非常に大きな失態です』
実況『彼らの今後の審判人生についてどう思われますか』
解説『……そうですね』
解説『ロスタイムに、期待しましょう』
実況『なるほど』
――――――――――――
――――――
―――
終
圧倒的乙
以上です
読んでくれた方、ありがとうございました
他の方のロスタイムライフSSはどれも泣けるものばかりですので、読んでない方は是非ご一読を
こんなSS読んでる場合じゃないです
それでは!
乙乙!!
乙
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