【ミリマス】聖母はただ堕ちていく (19)
ミリマスの天空橋様SSです。かなり自己解釈が含まれるSSになると思いますが最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。
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弱々しい日差しが差し込む部屋の一片。空気は肌寒く小鳥のさえずりが聞こえまだ日がでて幼い時間に私、天空橋朋花は手を握り祈りを捧げています。
なにか特別苦しい事があったわけでも感動することがあったわけでもなく私を慕う迷えるファン達の為に祈願を行うのは私の日課なのです。私にとってアイドルを目指してるのもファンの前で聖母としてより輝くためであり、その為に努力は惜しまないつもりなのですが…ダメですね。どうしても集中することができません。
小さく握ったその手を払う。仕事前いつもと変わらい祈願のはずなのですがドロドロとした何かが溶けだした感情が頭から離れないですね。これが煩悩というものなのでしょうか。
無心になるとどうしても一つの顔が頭に浮かびます。困ったことに一度浮かぶと中々頭から離れず余計な邪念に捕らわれることになります。本当に迷惑な話です。
ふと時計に目をやると時間が随分経ってしまっている。気づかぬ間に想いにふけっていましたか。
確か今日のお仕事はお昼から。少し早いですが早目に行くことに損はないですからね。
身支度を整え家を出ます。おや、今日は良い天気ですね。子豚ちゃん達に良い日差しを注げるようになると良いのですが……。
「プロデューサーさん新しいカバン買ったんですけどどうですかー、似合ってます?」
劇場に着くと翼ちゃんが購入したばかりのVIVAYOUのカバンを披露しています。翼ちゃんもかなりプロデューサーさんになついてしまっているようですね~。
「ちょっと翼、プロデューサーが仕事中で困っているじゃない。あ、あのプロデューサー。仕事あとでよければ台本合わせに付き合って貰えませんか?」
静香ちゃんもだいぶ打ち解けているみたいでさりげなく自分から誘うようになりましたね~。最初はプロデューサーさんにあたりが強かったのが嘘のようです。
「え~、静香ちゃんずるいよ。後で静香ちゃんがプロデューサーさんを取るなら今は私が一人占めしていいよね」
「ひ、一人占めじゃなくて私は真剣にプロデューサーと台本合わせをしようと……」
「おいおい、落ち着けってお前達。まず俺は朋花が来たから今日の仕事の打ち合わせをしなきゃならないんだよ」
プロデューサーさんが二人をなだめつつこちらに向かって来ます。名残惜しそうに翼ちゃんこちらに視線を向けています。
「悪かったな朋花。今日の日程だけど……」
「いえ、今日の仕事の事は頭に入っていますし時間もあるので大丈夫です~。それより翼ちゃんに会いに行ってあげてください。翼ちゃんはプロデューサーさんに見せる為に自分に似合うバッグを1時間も悩んでたんですよ~」
「え、そうだったのか。だが打ち合わせの方は……」
「私は大丈夫だと言ってるんです~。ふふっ、それとも私に信頼がないのですか~?」
「わ、わかったよ。だが時間直前になったら打ち合わせはやるからな」
「はい~♪頼みましたよ~」
プロデューサーさんが戻って翼ちゃんに抱き付かれたのを確認すると見えないように小さなため息をつく。
「いや~太っ腹だなあ朋花ちゃんは」
いつのまにか茜さんが隣にいたようですね~。顔がにやけているのは気のせいでしょうか。
「茜さんは何を言ってるのでしょうか~」
「本当にライバルに花を持たせちゃっていいのかな~って思ってさ」
「良いのですよ。時間に余裕があるのは確かですし翼ちゃんがプロデューサーさんに見せるの楽しみにしていましたしね」
「でもプロちゃんは元々朋花ちゃんのプロちゃんでしょ」
「もちろんそうですよ~。だからどうかしましたか?」
「うわ、言葉に時間以外の余裕も感じるよ。茜ちゃんじゃあもうかなわないなぁ」
茜さんが何がしたいのかわかりませんが彼になにも疑うこともありません。プロデューサーさんは私のプロデューサーさんなのですから。
「最近朋花は調子がいいな」
打ち合わせの確認が終わったときプロデューサーさんは一言いいました。
「あら、どうしてそう思ったのですか~」
「ダンスも歌もどんどん良くなってる。営業だってきちんと出来てるよ」
「うふふ、そうですか~」
妙なところで自信満々ですね。嬉しいことは嬉しいのですけれど。
「……不満そうだな」
「あら~、どうしてそう思ったのですか」
「朋花の雰囲気がそう感じさせる。今の自分に満足していないってさ」
プロデューサーさんも最初の頃に比べるとずっと鋭くなりましたよね。あなたが凄くなったからでしょうか。それとも私が感情を隠すのが下手になったからですか。
「朋花が不満になるのは悪くないと思う。まだまだトップアイドルには実力も経験も足りない。だけど今の朋花は凄くなってるてるし現状でやれることはやれている。この勢いで地道に努力を続けていけばアイドルランクももっと上げていけるだろう。それは俺が保証するよ」
彼の拭いなき言葉は私の体を熱で染め上げるようです。いけませんね~せめて顔だけには表れないようにしないと……。
「お褒めの言葉は預かっておきますね~。でも満足してはいけませんよ~いつまでも私を引っ張ってくださいねプロデューサーさん♪」
「あ、ああ。わかったよ」
彼ヨレヨレのは腕時計を確認した。次の誕生日に彼に贈るものは腕時計にした方がいいかもしれませんね。
「こんな時間か。悪い、そろそろ桃子の方を迎えに行かなければならない。その後ディレクターとの打ち合わせもあるから今日は……」
「それは先ほどの打ち合わせで確認しましたよ。私は一人でも構わないですから桃子ちゃんを迎えに行ってあげてください~」
「本当に悪い。次はできるだけ付き添えるにするよ」
慌ただしくプロデューサーさんは出ていきました。プロデューサーさんのお節介癖も困ったものですね~。でもそれを内心では喜んでる私も末期なのかもしれません。
朋花様視点の話か……期待!
支援だよ
>>2
天空橋朋花(15) Vo
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>>4
伊吹翼(14) Vi
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>>4
最上静香(14) Vo
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>>5
野々原茜(16) Da
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今朝に引き続き清々しいような晴天ですね。今日は公園でのロケを取る仕事なので助かります。不満点を挙げるなら肌を刺すような日差しが困りものでしょうか。日焼けにならなければよいのですが。
「最近朋花は調子がいいな」
仕事をこなしつつも私は数刻にも満たない前のプロデューサーさんの言葉が頭に残っていました。確かに最近の私は歌もダンスもキレがあるようです。体調にも問題はありません。なのに何故私はこの言いようもない不安に満ちた感情に内部が侵食されていく気持ちにとらわれるのでしょう。それはまるで体灰色に少しずつ堕ちて染まっていくような感触、予感。
「天空橋様いかがなされましたか?」
優心のこもった子豚ちゃんの声で私は我にかえりました。そういえば今は休憩時間でしたね。
「どうしましたか~、休憩時間でも今は仕事中ですよ~♪」
「いえ……御言葉ながら申し上げますと体調が優れない様子でしたので……」
顔に出てしまったのでしょうか。私としたことがあるまじき失態でしたね。
「あらあら~、でも私は大丈夫ですから心配する事はありません。心遣いは感謝しますね~♪」
「そ、そんな。こんなご無礼な言葉をかけた私になんという勿体ないお言葉を。ありがとうございますありがとうございます」
泣くほど喜ぶだなんて子豚ちゃんはやっぱり可愛いですね~。
でも子豚ちゃんの笑顔を見れば見るほど私の不安が強く大きくなっていく。
私は子豚ちゃん達を導き、不安から苦しみから救うためにアイドルをやってます。本来なら喜ばしい事のはずです。それでも邪念は募る。子豚ちゃんの表情を見るのが辛くなってくるほどに。
私は次はその姿を見せまいと冷静を振る舞い続けた。もう気のせいで片付けるのがくるしいくらいまでに達していた。
天空橋様はやはり聖母
「突然このような場を作ってしまって迷惑お掛けして申し訳ありません、このみさん」
「いいのよ。あの朋花ちゃんが相談したいと言うのだもの、遠慮しないでちょうだい」
このみさんも仕事終わりで疲れているはずなのに嫌な顔をせず私の相談にのってくれました。色々あるけれどこんな悩みに一番頼れる人です。
「単刀直入に言ってしまいます。私はプロデューサーさんの事が好きです。愛しています」
このみさんは驚いた風に目を瞬かせた。
「意外だったでしょうか」
「いえ、好意を抱いている事はなんとなくだけれども気付いていたわ。直球で言ってきたのは驚いたけど」
「私も少し驚いてます。好きと言うのに全く抵抗が無いことに」
「で、プロデューサーを想いを伝えるにはどうすればいい……って相談ではなさそうね」
「はい実は最近私がおかしいんです」
「おかしいって……?」
このみさんは前屈みになり表情も真剣なものになりました。
「私の中で何かが変わっていくような気がします。子豚ちゃんへの愛が注げなくなってしまっているのです。愛や嫉妬とは違った自分が自分でなくなっていくような塗りつぶされていくようで。」
何を言ってるんだろうと思われたかもしれません。自分自身でもよくわからないのですから。
そんな眉をひそめる内容でもこのみさんは最後まで聞いてくれました。このみさんはいつも相談を受けるとき最後まで耳を貸してくれます。
「……取り敢えず恋愛相談よりは浅い問題じゃないって事はわかったわ」
「このみさんは分かるんですか」
このみさんは前屈みになり表情も真剣なものになりました。
「正直私もよくわからない。でも、もしかしたらその感情は罪悪感かもしれないわ」
「罪悪感……ですか」
「わかっていると思うけど私達はアイドルよ。今は多少緩くはなってきたけど恋愛はご法度、してはいけない事なのよ。責任感の高い朋花ちゃんなら尚更そう感じてるはず」
「……」
「私から見ても朋花ちゃんは凄くがんばって我満してるってよくわかるわ、プロデューサーの前でさえ感情に出さないように努力してる。実際あの鈍感プロデューサーは気づいてないでしょうね。そんな朋花ちゃんだからこそ他人より罪悪感を背負ってしまっているのではないかしら」
このみさんはこの気持ちを罪悪感と表しました。でも私が感じたのは罪悪感ではなく、翼が取れて明暗に堕ちていくような背徳感。
私の罪悪感と背徳感は似てるようで違う。罪悪感は罪を後悔しつつも前に進む意志。背徳感はただ自分が罪に堕ちていくのを受け入れていく堕落の意志。
ふふっ私も変にこじらせてしまったかもしれません。百合子ちゃんの事言えなくなってしましたね。
「……朋花ちゃん大丈夫?」
「私は大丈夫ですよこのみさん」
「笑顔でも隠しきれてないわよ」
「……このみさんはやっぱり凄いですね」
「かなり根を詰めているのね」
「そうかもしれません」
このみさんは不安そうに私の顔を見つめています。やはりこのみさんに相談は失敗だったかもしれません。余計に心配させる事になりましたから。
「今の私には朋花ちゃんへの慰めの言葉もかけられないと思う。でもこれだけは言わせてちょうだい、アイドルとして恋してはいけないと思うけど個人、天空橋朋花として恋は誰にも止める権利は無いと思うの」
「私として、ですか」
「そう。だからいっぱーい悩んでいっぱーい恋して、それでいいんじゃないかしら」
私として……。私らしくというのならそれがアイドルである私。私はアイドルになりたいと思うずっと前から聖母の道を選んだ。アイドルになったのはその過程の一端でしかない。もちろん今はアイドルも勉強しそれに応じた努力もしているがその概念は揺らいだ事はない。
……だからでしょうか
「ありがとうございますこのみさん。大分気持ちが楽になりました」
「……今はそうと受け取っておくわね」
不満そうに返事するこのみさんを見てやはり彼女は騙せない、そう感じた。
このみさんと別れた後時間は経ち夜も更けていたのに私は漠然としてました。明日も仕事はありますので早く帰らなければならないのに。
もしかしたらプロデューサーさんと会う機会が減ったのも神の提示だったのかもしれません。少し距離感を空けろと。いえ、少しではなくしばらく会わないくらいの気持ちで別れなくてはなりません。
彼は悪くない。でもこれ以上は私がおかしくなってしまいそうで。
「あれ朋花、まだ劇場に残っていたのか」
そんな意を読まず彼は帰って来ました。彼はこんな時間まで駆けずり回って仕事したのだろうに疲れた様子一つ見せず近寄ってきます
「あら、こんな遅くまで動き回るなんて駄目なプロデューサーさんですね~。ちゃんと休養をとって私に使えなくては駄目じゃないですか~」
「打ち合わせが延びてしまったんだ。茜の奴を構いすぎたかな」
「ただでさえ最近私に構ってくれる機会が減っているのですからね~。もっと頑張ってくださいプロデューサーさん」
「ははっ、そうだな。努力するよ」
考えとのと言ってる言葉が違います。でも彼の顔を見るたびに言葉が止まりません。また彼も良い笑顔を作るから……だめ、この辺でつきはなさないと。
「そうだ、明日にしようと思っていたけど今にしておくか」
私の気持ちも気付きもしない彼は笑顔でこちらに歩みよりくたびれた鞄から小包を取り出しました。
「お、やっぱりこの色は朋花に似合うな」
出てきたのは水色のブレスレット。センスの無い彼にしてはとっても素敵な物。そして私の好きな色を覚えてくれていた。
「あら~、なんですかこれは」
「たまたま繁華街で見かけたんだ。誕生日……にはまだ早すぎるけど朋花に合うと思ってさ」
「素敵なブレスレットですね~。私の為に嬉しいですよプロデューサーさん~。」
先ほどの決意なんてものは無くなって仕舞いました。今の私には喜びを隠すのが精一杯で。
「今は他のメンバーも大事な時期で忙しいけど一段落したらまた朋花専属のプロデューサーに戻りたいと思っている、周りがなんと言おうとな。だからこれはその約束の印なんだけど安っぽかったかな」
駄目ですよ、とは声を発することが出来なかった。出そうともしなかった。皆への、ファンや子豚ちゃん達への背徳感より光で体を包むような幸福感が気持ちを上まわってしまったのだから。愛という臼黒い塊が聖母という自制心を塗りつぶしていく。あがらえない。
ああそうでしたか……私はアイドルとしてではなく天空橋朋花でもなく聖母として彼に堕ちてしまったのですね。聖母としてあろうとして聖母として愛してしまうなんて。
いっそアイドルとして堕ちていればアイドルこそ辞める事になっても聖母のままでいられたかもしれない。天空橋朋花のままでいられたかもしれない。いや、彼に堕ちた時点で聖母から外れてしまう運命は変わらなかったのだろうか。
ああ、でも、その背徳感すらもうそれで良いと思っている私がいる。手放すことの出来ない幸福感に満ちている私がいる。
もう私は堕ちていい。その言葉にさえ今の私は気持ちの高まりを感じているのだから。
「もちろん駄目なんて言いませんよ~、貴方は私のプロデューサーで私の元にいるのは当然なのですから。ずっと永遠に逃がしませんからね」
もう後戻りは出来ない。堕ちた聖母が戻ることはなくあとは堕ち続けるだけなのだから
終わりです。最後まで読んでくれた方はありがとうございました。
おつおつ
朋花様マジ聖母
乙でした
馬場このみ(24) Da
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乙っした
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