立つかな
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426252281
竜華「よっしゃ、ソイツや! これで捲れたはずやしウチの勝ちやな」
漫「うわぁしくじった~ やっぱ最高状態になると手がつけられませんわぁ」
由子「ついこの間までは打つ度に飛ばされてベソかいてたのが嘘の様なのよー」
フナQ「ホンマ、ここまで変わると同一人物なのか疑わしくなりますわ」
竜華「アハハ まぁアンタらにイジメられてこっちも猛特訓したからなぁ」
漫「イジメなんて人聞き悪い。ま、最初はちょっと余所者には厳しかったかもしれませんけど」
由子「でも、もう竜華は完全に島の一員なのよー」
フナQ「そやな。 ……と、言う訳で急激に強くなった秘密を教えてもらいましょか?」
竜華「おおきにな。でも秘密なんて何もないし、ほんま強くなれたとしたらそれは……」
セーラ「おーい、竜華そろそろバスが出るでー!」
竜華「あ、もうそんな時間!? ほな、ウチ帰らなアカンからまた今度な」
「おー、気ぃつけて帰りや~」「ほな、またなのよー」「次は秘密を教えてもらうでー」
セーラ「何や秘密って?」
竜華「ああ、麻雀の話や。最近調子ええ理由教えろってなぁ」
セーラ「お、それじゃあ今日も勝ったんか?」
竜華「勿論! ええ師匠に毎日シゴかれてるんや、負ける訳ないで」ニコッ
セーラ「師匠なんて呼び方むず痒くなるから止めや。自分のことはセーラでええ、これからもずっとな」ニッ
竜華「……ッ!?」///
セーラ「ん、どないした? 顔赤いけど車酔いでもしたか」ピトッ
竜華「うっさい! こっち見へんでぇアホッ!!」
セーラ「何や今度は急に膨れっ面になってからに… ま、これだけ強うなってくれると自分も悪い気せぇへんわ」
竜華「うん、それもこれもセーラのおかげやで」
セーラ「違ぅ。強うなったのは元から竜華の資質が優れてたからや」
竜華「ウチに麻雀の資質が……?」
セーラ「そや。竜華はあのおばちゃ…、いや監督の娘なんやで?弱い訳ないやろ」
竜華「ええよ、ウチの前ではおばちゃんで」クスッ
セーラ「アカン! 間違えて監督をまたおばちゃん言うたら今度こそシバかれるだけじゃ済まないわ」
竜華「……そやね、義母さんはそういうの厳しいからな」
セーラ「あんま気にすんなや……」
竜華「えっ?」
セーラ「血が繋がっていようがなかろうが、今の竜華は監督の娘であることに何も変わりはない」
竜華「でも義母さんはウチにちゃんと麻雀を教えてくれへんかったし……」
セーラ「監督にも何か考えがあるんやろ、きっと……」
竜華「そうかなぁ? 何を研究してるのかもウチの出来が悪いから何も教えてくれへんし」
セーラ「そんなんと違ぅ…… 自分の口からは詳しいことは教えてやれん。けど信じたりや」
竜華「信じるって何を……?」
セーラ「監督はな、世界が平和になる立派な研究をしてるんや…… だから竜華は信じなアカン」
竜華「ふぅん…… ほんでセーラは信じてるん?」
セーラ「当たり前や!助手である自分が信じられん訳ないやろ? それに成功したら自分と竜華だって……」チラッ
竜華「……ん、セーラとウチが何なん?」ヒョイッ
セーラ「~~ッ!?な、何でもないわ!! それより次の停留所やで、早よボタン押しや!」///
竜セラとは珍しい、支援
雅枝「……遅かったな竜華、また村の連中と遊んでいたんか?」
セーラ「違います、遅くなったんは自分が買い物に手間取ってただけですわ!」
雅枝「フン、まぁええわ…… 竜華、前にも言ったがあまり奴等とは関わらんときや」ギロッ
竜華「は、はい。わかりました……」
セーラ「あ、あの監督、その花もしかして……?」
雅枝「ああ、これか? ついさっき、やっと咲いてくれたわ」
セーラ「ホンマですか!? おめでとうございます!!」
竜華「……えっ それ、何か特別な花なん?」
雅枝「そうか、まだ竜華には何も教えておらんかったな。これはな雌しべ同士の交配で咲いた花なんや」
竜華「雌しべ同士……? そんなん出来る訳ないやろ」
雅枝「なに、咲かすこと自体は普通の技術でも十分可能や。問題は開花させた花をどれだけ保たせることだったんや」
セーラ「ホンマ凄いですわ、監督の研究は!」
雅枝「これを人間にどう応用するかが肝心やけどな。ま、とりあえずは目出度いわ」
セーラ「……その、監督」
雅枝「うん……?」
セーラ「竜華も研究を手伝わせてやりませんか? 麻力だってもう自分とそう変わらんですし!」
竜華「セーラ?」
雅枝「……やはりお前の仕業だったんか、近頃の急な竜華の成長は」
セーラ「す、すんません! でも竜華、寂しそうやったし…… それに研究だっていずれ竜華に継が……」
雅枝「アカン! まだ竜華には早過ぎる。アンタには研究を手伝わせるだけの物が備わってるとウチが判断した」
竜華「……ッ」
雅枝「けど竜華にはそれだけの物がまだ培われてない。それに竜華にはもっと他に……」
セーラ「……もっと他に?」
雅枝「……何でもない。とにかく、アンタらは余計な真似せんで今まで通りやってればええ」
~~~
セーラ「……済まんな、自分が余計なこと言ってもうたせいで」
竜華「ううん…… 義母さんはああ言う人だって知ってたし、何も気にしてへんよ」
セーラ「監督はああ言ってたけど研究はちゃんと竜華に継がす気なんやで」
竜華「ウチが……? 違うやろ。だって義母さんの一番弟子はセーラなんやし、研究だって……」
セーラ「自分が? そんなんある訳ないやろ。自分はただの助手、小間使いや」
竜華「何言うてんねん。誰がどう見たってウチよりセーラの方が優れてるやん」
セーラ「いや、自分はここいらが限界や。でも竜華は違う……」
セーラ「竜華はこれからもっともっと成長する。そして、いずれ自分なんて足元にも及ばなくなるわ」
竜華「……セーラ?」
セーラ「なに暗い顔してんねん! 竜華が気にすること違うし、そんなん最初っから分かってたことやからな」
竜華「ウチがセーラを超えるなんて考えられへんわ……」
セーラ「……実はな竜華、自分ここに来るのむっちゃ反対されてんのや」
竜華「えっ、何で?」
セーラ「ほら、監督はあんな性格やから村の連中とは全然関わろうとしてへんやろ?」
竜華「……うん」コクッ
セーラ「アイツらから見たらいきなりやってきた他所者が訳のわからんことしとるんや。そら恐がるわ……」
竜華「そっか…… だから来た頃はやけに冷たかったんやね」
セーラ「教会の赤阪シスターなんてな、監督たちは外法の麻雀研究に取りつかれた悪魔なんて言いおるんやで!」
竜華「……あの人、ウチ好きになれんわ。何を考えてるんかよぅわからん人やし」
セーラ「そら自分も同感や。 ……なぁ竜華?」クスッ
竜華「うん?」
セーラ「自分はな、監督の研究を世の中に知ってもらいたいんや。 ホンマ立派なのをわかってもらえば皆の誤解だって……」
竜華「義母さんはそういうの、もう諦めちゃってるから……」
セーラ「……でもな竜華、オマエならきっとできると思うで」
竜華「……ウチが?」
セーラ「そや…… 自分は弟子でも跡継ぎでもない。だからシスターに悪く言われても何も言い返せへん」
セーラ「でも竜華は違う。今はただちょっと早いってだけや……」
竜華「……」
セーラ「竜華はさ、どないな大人になりたいん?」
竜華「えっ……?」
セーラ「監督の研究を引き継いだらどないな風にそれを使ってみたい?」
セーラ「世界を変える力やで、いつか竜華が手に入れるのは。 ……そう、世界を変える。竜華なら出来るで」
竜華「それは…… そんなのナイショに決まってるやろ」
セーラ「……ふぅん。じゃ、大人になった竜華が何をするのか自分に見届けさせてや。それまでずっと隣にいたるからな」
竜華「な”ッ!?」///
ガチャ
雅枝「入るで。 ……竜華、昨日ウチの研究室に入ったりしとらんやろな?」
竜華「えっ? 入っとらんよ」
雅枝「……そうか。 竜華、今日は村に行くな。とにかく家から出たらアカンで」バタン
竜華「何やろ突然に……」
~~~
竜華「どうしたんやろ…… 義母さんは今朝から忙しそうやし、もう夕方なのにセーラも来いへん……」
竜華「あ、もしかしてあのシスターにとっ捕まって来れんとちゃうか!?」
竜華「義母さんは…… うん、相変わらずドタバタしとる様やしチョットの間だけやったら……」スッ
~~~
竜華「なぁセーラ? いるんなら返事せぇ」コンコン
竜華「……ふぅ、しゃあないなぁ。 お邪魔するでぇ?」ガチャ
竜華「……おらん。 どないしたんやろ?セーラのこと聞こう思ってたのに皆も見かけんし……」
竜華「そろそろ帰らんと村に行ったの義母さんにバレてまうし、どないしよ……」
竜華「そや、もしかしてホンマにあのシスターに!? ……有り得ん思うけど最後に教会だけ寄ってこか」ハァ
~~~
竜華「もうこない暗くなってるのに何で教会は灯り点けてないんやろ? ……ンッ!?」ドタン
竜華「あ痛ッ~!? 何や道の真ん中に石なんて置いて危ないやろ!!」ベチョ
竜華「何やこのヌメっとした生暖かいの… でもこの臭い……、コレってもしかして………」
竜華「血…、血や………?!」ゴツッ
竜華「……えっ?」カタカタ
フナQ「 」
竜華「フナ……、Q…………?」
フナQ「 」ボトッ
竜華「く、くbィ……」
由子「 」 漫「 」
竜華「ゅ、ゆうこ……?! すずちゃ……ん……??」
竜華(死んでる…、皆死んでる…… 早ょ大人に知らさんとアカンのに声が出ぇへん……!?)
竜華(足も震えてうまく歩けへん…… そ、そや、教会に行けば赤阪シスターおる!シスターに言えば……)
竜華「ァ、シ…… シs…、助け………」
竜華(誰かおる……!? 良かった、早ょ知らさんと……)
郁乃「もぅ恐がらんでええよぉ。異端はもうぜぇ~んぶ浄化しといたからぁ」ニコッ
セーラ「す、すいませンすんませンすんませんッ!! 何で、何でアイツらあんなことに……」ガクブル
竜華(シスターの声……、それにもう一人の声はセーラ!? どうして教会なんかに……)
郁乃「気にせんでええよぉ、これも代行者のお仕事だしぃ~ でも不思議やねぇ?」
セーラ「な、何がですか……?」カタカタ
郁乃「あの3人、今日までは普通に暮らしてたやん? どうして急にあーなったんやろんなぁ~ってな」
竜華(あの3人ってもしかしてフナQたちのこと……!?)ゾクッ
セーラ「違うんです! オレはただ監督の研究を皆に知ってもらおうと……」ガクガク
郁乃「ふぅん…… やっぱり愛宕は禁忌の研究に手ぇ出してたんやなぁ」ニタァ
セーラ「き、禁忌の研究……? いや、違ぃますって監督の研究はiPS細胞言うて……」カタカタ
郁乃「iPSねぇ…… それよりセーラちゃんに聞きたいのは、あの3人に何をしたのかなぁってことなんだけどぉ?」
セーラ「だからオレは監督の研究室から薬を持ってきて皆の前で成果を証明しようと……」
竜華(義母さんが今朝言っていた研究室に出入りした者ってセーラやったんか……)
セーラ「まず自分が飲んで証明したるって言うたのに、アイツらが面白がって先に飲んでもぅたんです!」
郁乃「なるほどねぇ…… やっぱりそんなことやったんか。なら仕方ないなぁ」ニコッ
セーラ「し、仕方ない言うてもオレ、一体どないすれば……」ガクブル
郁乃「そやねぇ…… セーラちゃんには可哀想やけどこれは異端審問せなアカンなぁ~」ニヤァ
セーラ「異端審問……?」
郁乃「そ、異端審問。 だから前から忠告しとったやろ?愛宕の屋敷には近づいたらアカンってぇ」スッ
セーラ「な、何してんねん!? 人こんな時に服を脱がすなんて…… ンッ!?」
郁乃「ほら神に使える者としてはなぁ、悪魔憑きちゃうか確認せなアカンやろぉ?」
セーラ「なッ、悪魔憑きなんてアホなことあるわ…… ンンッ ないや… ~~ッッ!?」ビクン
竜華(セーラ!? 赤阪シスターは一体何をしてるんや……!?)
郁乃「でもなぁ、いつも男の子の恰好してるんは悪魔に憑り付かれてる証拠とちゃうんか? 例えばこの辺にとかぁ」
セーラ「アカン! そこはホンマにアカンって…… ンッ~~~!!!」ビビクン
郁乃「うんうん、これでホンマに女の子だってわかったわぁ。でも固くなってるこの辺りはまぁだ怪しいなぁ」コリ コリッ
セーラ「ッ…止め…、シスターもうホンマに…… ンゥッ……!!」ピク ピクッ
郁乃「エエで、エエでぇ。 ……でも不思議やなぁ~、アカン言うてるのにもっと調べて欲しそうなのは何でやろなぁ」ニヤニヤ
セーラ「あ、アホッ…… そないなこと言葉にすん…… ハァハァ しないで……」グチュグチュ
竜華(なんや……、なんやこれ……? こんなん嘘や、絶対嘘や……)カクカク
郁乃「あらあらすっかり女の子っぽくなってもうたなぁ…… それじゃあ今度はウチの番やねぇ」ガッ
セーラ「く、苦しッ…… シスター、何すんねん!?」ググ
郁乃「そうそう、その快楽と苦痛が入り混じった顔が最高やわぁ」ググッ
セーラ「や、止めっ……」
郁乃「ええでぇ~ その調子でもっとウチを昂ぶらせてえなぁ」ゾクゾクッ
セーラ「り、りゅ……かッ………」ゴキッ
郁乃「……ハァ、あともうチョットやったのに死んでまうなんて駄目な子やなぁ」フゥー
竜華(セーラ……?)ガタッ
郁乃「……あらあら、ウチとしたことが夢中になり過ぎて覗き屋さんおったのに気付かんかったわぁ」シャキン
竜華(何やねんコレ!? セーラが、皆が殺されて今度はウチって夢とかちゃうんか……)ガクガク
?「ノゥ…… 貴女のミスはそこじゃない」
郁乃「……あんたッ!?」
良子「……注意を怠り私の接近に気付かなかったこと。それが貴女をルーザーにしました」bang!
郁乃「ガッ……」ドサッ
良子「damn shirt!! 全く悪趣味な代行者ですね。まぁ、そのおかげで楽に始末できましたが……」カチャ
竜華「あ……、あぁ………」カタカタ
良子「……こっちは“まだ”人間のようですね」スッ
竜華「ア、アンタは一体……? そ、そうやセーラ……、セーラは」ダッ
良子「ストップ…… お嬢ちゃん、あの子のお友達?」ガシッ
竜華「離しぃや! セーラはウチの、ウチの大切な……」
良子「damm it! ……お友達なら尚のこと亡骸でも“あんな”姿は見ない方がいいです」
竜華「な、亡骸……?」
良子「お嬢ちゃんはまだ生きています。なら死人よりも自分のことを心配した方がいい。ああなりたくないなら……」クイッ
竜華「……えっ? な、なんで村が燃えてるんや…… 誰がどうして……」
良子「あのキャンプファイアーの中では二つのグループがバカ騒ぎの真っ最中でしょうね」
良子「一つは麻雀教会…… 神の教えに背く雀士は皆殺し。禁じられた研究に手を出した輩なんて真っ先に粛清対象ですね」
竜華「禁じられた研究……」ボソッ
良子「そしてもう一つが麻術協会ですが、こっちはちょっと説明がハードですね」
良子「……まぁイージに言うと発端になった研究をしていたのは誰なのか?人探しに精をだしている、と言った所でしょう」
竜華「じゃあ村に燃やしているのは……?」
良子「……両方ですね。互いに探し物をしながら仲良くジェノサイトしてるのがあの有様って訳です」
竜華「どうして…… あそこには何も関係ない人だって大勢……」
良子「秘匿すべき事象を知っている“可能性”があるだけで連中にとっては皆殺しにする十分過ぎる理由です」
竜華「……それで、アンタはどっちの味方なん?」
良子「私はフリーの雀士。連中とは別のお仕事を依頼主からリクエストされています。 ……さて、そろそろいいですか?」
竜華「えっ……」
良子「お嬢ちゃんのクエッションに色々と答えてあげました。今度はこちらの質問にも応えてもらいたいのですが……」
竜華「……質問?」
良子「イエス…… この惨劇の元凶、禁忌の研究に手を出した悪い雀士が島に隠れている。何か心当たりはありませんか?」
竜華「悪い…、雀士……」
よし言わせてもらおう。
士郎、テメエ何してんだ。
~~~
雅枝「……うん? おぅ竜華、無事だったか。村には行くなと言っといたやろ?」
竜華「……義母さん、どうしてセーラにiPSの研究だなんてそない嘘を吐いたん?」
雅枝「竜華……、アンタどうしてそれを?」
竜華「セーラが自分に義母さんの薬を……」
雅枝「そうか。ウチはな、ジーンサイレンシング言うゲノム組織をトランスポゾンやウィルスから……」
雅枝「……あぁ、今のアンタに言うても無駄やな。 ま、セーラは残念やったけど起きたことは仕方あらへんな」
竜華「仕方ない……?」ボソッ
雅枝「究極の雀士を造るには遺伝子操作が必要不可欠や。だが、あの程度のウィルスで制御できなくなると失敗やったな……」
竜華「義母さんはいずれセーラみたいにウチを…… そのために特別な因子を持ったウチを養子にしたんか?」
雅枝「……アンタ、そないな話を誰から聞いて来たんや」ギロッ
竜華「答えてや義母さんッ!! ウチは、ウチはアンタの実験のためだけに貰われてきた子なんかッ!?」
雅枝「チッ…… ここまで手間暇かけたのに、まぁた出来損ない掴まされんたかい……」ハァ
竜華「か、義母さん……!?」
雅枝「そら全くの無から造るよりも、既にある程度出来てる物から積み上げる方が早いに決まってやろ?」
雅枝「時間には限りがあるんや。『根源』に到達するには要領良くいかなアカンしなぁ」
竜華「それじゃあウチだけじゃなく、セーラも最初から義母さんの……」ギリッ
雅枝「そや。 ま、あっちはアンタと違ってウィルス耐性の応用試験用のつもりやったんやけどな」
竜華「そう…… それだけ聞けばもう十分や」カチャ
雅枝「ン…… そない危ない物、どこで拾ってきたん? アンタにはそないな物は使えんからこっちに寄越し」スッ
竜華「……」チャキッ
~~~
竜華「……」
雅枝「 」
良子「……ここのトラップ、わりと簡単に突破できましたよ?」
竜華「怒ってんのか、アンタ? アンタが間に合うかどうかは運任せやった」
竜華「……それに、あの人はどこへ逃げても災厄を呼ぶ研究を始める」
良子「そんなの子供がマザーを殺す理由としては下の下です……」
竜華「アンタ、善い人なんやね……」
良子「島の外まではエスケープさせてあげます。後のことは自分で考えてください…… 何か持っていく物は……?」
竜華「なんも…、ない………」
―――― あの島を出て暫くの歳月をウチはあの島からウチを連れ出した戒能良子の元で過ごした。
―――― それは、つまり良子と同じ道。すなわち、狩人として生きていくと言うことを意味する。
「何が有ろうと手段を選ばず生き残る。この稼業に就いて私が決めたルールです」
「何が起きようと自分の命を最優先する。他人を助けようとして自分が死んでしまったら元も子もないです」
「みんな救えるなんて思ってへん。それでもウチは一人でも多く救いたいんや……」
「……好きにすればいいです」
―――― そして、あれからウチはあの島で起きた様な惨劇が何度も目にした。
―――― 似た様な惨劇が世界中のあらゆる場所で日常茶飯事の様に繰り返されていることを知った。
「意味はなかったんか? ウチはこれ以上こんな犠牲を増やさないために義母さんを殺したはずやったのに……」
「今回の様な連中を世界中から全て殺し尽くす。そんなことがもし出来たら、……叶うかもしませんが」
「……」
「ジョークです。本気にしないでください……」
良子「ふぅ…… これはまた面倒なターゲットですね」
竜華「知っているんか、良子?」
良子「藤田靖子…… リバーサル・クイーンと呼ばれる雀士で、麻術協会からも高額の懸賞金を懸けられています」
竜華「詳しいな、ソイツと何かあったんか?」
良子「以前打ったことがありますが取り逃がしてしまい、その時は結局街が一つ丸ごとブレイクしました……」
竜華「街が丸ごと一つ……?」
良子「この女もご多分に漏れずiPSの御伽噺に踊らされている連中の一人ですからね……」
竜華「……それでコイツの目的は?」
良子「この日に開かれる賭場でしょうね。……ココには私が行きます。落とし前は自分で付けるのがルールですから」
竜華「わかった。ウチは何を……」
良子「恐らく開催側もコイツの一味です。お嬢ちゃんはソイツらのクリーニングをお願いします」
~~~
竜華『聞こえるか、良子?』ザッ
良子『ええ、グッドコンディションです』ザザッ
竜華『……ターゲットは?』
良子『始末しました。……でも厄介なトラブルになってしまいました』
竜華『……トラブル? 何があったんや、良子』
良子『藤田の持ち込んでいたカツ丼。そいつに紛れ込ませていた様ですね、例のiPS細胞の活性ウィルスを』
竜華『……まさか』
良子『ハードラックでした。今じゃこのビルはウィルス感染者でひしめきあっています』
竜華『……どないするつもりや、良子』
良子『退路も完全に断たれたましたからね。こうなったら“降ろす”しかありません』
竜華『降ろす……?』
良子『忘れましたか、お嬢ちゃん。これでも私は仙女のブラッドを引いているんですよ?』
竜華『……それで感染者共を一掃できるんか?』
良子『残念ですがそこまで便利なパワーではありません。精々脱出路を確保するのが限界でしょう』
竜華『……降ろすにはどれくらいかかるんや?』
良子『今から卓を確保し、儀式のプレパレーションをしますから恐らく明け方までには』
竜華『……わかった。ウチもそれまでに準備を整えておくわ』
~~~
良子『聞こえますか、お嬢ちゃん?』ザッ
竜華『ああ、聞こえてるで……』ザザッ
良子『悪いニュースと良いニュース、どっちから聞きたいですか?』
竜華『……こないな時は良い話から聞くんがお約束やろ?』
良子『OK…… とりあえず私は無事で卓も確保しました。感染者も陽が登るまでは活動が鈍いですからね』
竜華『そっか、それなら感染者も朝までビルの外に出ることはないな。 ……それで悪い方ちゅうのは?』
良子『……結局、このビル内で感染してないのは私だけの様ですね。上の階も下の階も感染者で溢れています』
竜華『……そんな有様でアンタは生きて帰ってこれるんか?』
良子『ここまで大がかりなのを“降ろす”のは初めてですからね、不安で一杯ですよ』
竜華『大丈夫や。アンタなら必ず成功するさ、きっと……』
良子『まさかお嬢ちゃんに励まされる羽目になるとは…… 私もロートルになったのかもしれませんね』ククッ
良子『……さて、無事エスケープできたとしてビル内に溢れる感染者共はどうしましょうかね』
竜華『……それは心配せんでええ。ウチがもう手を打ってるさかいにな』
良子『……そうですか、頼もしいことです。 夜明けまでお嬢ちゃんには暇潰しにトークの相手でもしてもらいましょうか』
竜華『ええで……』
良子『全く、お嬢ちゃんがこの稼業を手伝いたいなんて言い出した時にはね、本当にヘッドを痛めたものです』
竜華『ウチはそんな見込みない弟子やったか?』
良子『No…… 逆です、見込みが有り過ぎました。 ……度を超えて』
竜華『……どういう意味や?』
良子『指先とハートを切り離して打つのは真剣師が数年がかりに身に着ける覚悟なのです』
良子『……それをお嬢ちゃんは最初から身に着けていた。とんでもない天分です。 ……それがハッピーとは限りませんが』
竜華『……ウチはアンタのこと、もっと冷たい人やと思ってた』
良子『イグザクトリー 私がお嬢ちゃんのことを甘やかしたことなんてありましたか?』
竜華『……そやな。いつだって厳しく手加減なしで、アンタはウチを本気で鍛えてくれたわ』
良子『まぁ、普通ガールを鍛えるのは母親の役目ですけど…… ……その、あれですね』フゥ
竜華『……?』
良子『……お嬢ちゃんの場合、そのチャンスを奪ったのは私が原因の様なものですから』
竜華『アンタは母親のつもりでウチを……?』
良子『失礼ですね、私はまだそんな年齢ではないです。せめてシスターと言い直してください』
竜華『そやな、ごめん…… ウチも……、ウチもアンタのことを本当の家族みたいに思ってたわ』
良子『……竜華、次に会った時に気恥ずかしくなるようなことを言うのはストップです』
竜華『フッ…… わかった、ごめんな』カチャ
良子『今回こんなミスを犯したのも家族ごっこで気が緩んでいたせいかもしれません。だとしたら潮時ですね』
竜華『……仕事を止めたらアンタ、これからどないするんや?』グッ
良子『失業したら…… 今度こそマザーごっこしかやることないですね』クスッ
竜華『アンタはウチの…… ―――― 本当の家族や』ドンッ
怜「……竜華? なぁ竜華、どないしたん」ユサユサ
竜華「……えっ?」パチッ
怜「膝枕してくれてたアンタも寝てたみたいやな。何か悲しい夢でも見てたん?」
竜華「……悲しい夢?」
怜「竜華の涙で目が覚めてもうた」
竜華「涙……!? そっか、そら済まんかったなぁ」
怜「ええよ、そんなん。 ……目が覚めたのに何でまだ泣きそうな顔してんねん、竜華?」
竜華「……怜、ウチはアンタを死なせるはめになる」
怜「分かってるで…… それが千里山の悲願。その為の自分や」
竜華「……」
怜「竜華の理想を知り、同じ祈りを胸に抱いた。だから今の自分がいるんや。だから……」
竜華「ウチはこんな理想を口にする資格なんて……」
怜「竜華、忘れたらアカンよ。誰もそう泣かなくていい世界。それがアンタの夢見た世界やろ?」
竜華「怜……」
怜「もうすぐや。ウチと竜華は理想を遂げるんや。だからもう泣くのは止め……」
カツ丼とか面白すぎるやろ
愉悦を知らない人は誰になるんだろな
予想覆してくれるの期待
―――― 時間は遡り、まだ聖牌降臨の予兆が現れ始めた頃。今回の聖牌戦争の監査役に指定された新道寺で
美子「……令呪?」
哩「美子の右手に現れたそぎゃん模様、そいこそが聖牌に選ばれた証。サーヴァントを統べるして与えられた聖痕ぞ」
姫子「あらゆる時代、あらゆる世界から雀士が蘇り覇を競う。そいが聖牌戦争ばい」
美子「聖牌…、サーヴァント…… まさか奇跡の願望器を求め争う、そいの戦いに私が……」
哩「……ウチも令呪ば欲しかった。 けど監査役に選ばれた以上、宿る訳もないけん仕方なか」
姫子「そいけん安河内先輩にはぶちょーの分も頑張ってもらんわんと!」
美子「……は、はぁ」
哩「ではそろそろ本題に入るが美子には聖牌戦争に参加し、姫子の支援をしてもらいたか」
美子「……なんとっ?」
哩「聖牌と呼ばれよっあの万能の願望機は強大すぎっと……」
姫子「そぎゃん物ば好ましくなか者の手に渡っとどぎゃん災厄ば招くかわからなかよ」
哩「そいで聖牌の用途ば明確にしよっ姫子に託すのが次善の策とは思わなかか?」
姫子「レズの根源への到達…… こいはウチとぶちょー、いや新道寺の願いはその一点に他ならなか」
哩「そいけん美子ばマスターとして聖牌戦争に参加し、姫子と水面下で共闘ばする。良かか?」
美子「……わかりました。だばってん一つ質問を良かか?」
哩「構わなか」
美子「どうして聖牌ば私を選んだと? 監査役であっけん新道寺周辺から2人も選ばれるなんて異常ん事態じゃなかやろか?」
姫子「聖牌はより真摯に求める者の前に令呪を顕現させると聞いよっ」
美子「そいけんこそわからなか…… ウチには何も願いも祈りも無かのに……」
哩「何事にも例外はあっと。人間を超える超常の意思などウチらにはわからなかとよ……」
――― それから暫く経ち聖牌の降臨が確実となった頃、かっての名家でも動きがあった
リチャ「姉貴、どういうことだ?」
ナナ「耕介……? あんた、もうこっちには顔を出すなって言ったはずだけどね」
リチャ「そんなことはどうでもいい! 慕を養子に出すとはどういうことだッ!!」
ナナ「ふん、随分と耳が早いじゃない。そうよ、良い買手がやっと見つかったのさ」
リチャ「買手? アンタ、まだ白築の因習を…、いや聖牌を……」
ナナ「ああ、とっくに異能の能力を失った白築のこんな呪われた血でも欲しがる奴はいるってことさ」
リチャ「馬鹿なことを…… テメェみたいなのでもな、慕にとってはたった一人の母親なんだぞ!!」
ナナ「……誰のせいだと思ってるのさ? アンタが白築の名を棄てたからこんな苦労をしてんるんでしょうが!」
リチャ「茶番は止せよ姉貴…… 何が白築の名だ。アンタは聖牌欲しさに慕さえ利用しようとしているだけさ」
ナナ「ハッ、勝手に言うがいいさ! でもね、あれは…、聖牌だけは何があっても諦める訳にはいかないのよ……」
リチャ「……そういうことなら、聖牌さえ手に入れば慕を捨てる必要はないのだな?」
ナナ「……耕介、アンタ何を考えているの?」
リチャ「取引だ姉貴…… 俺は白築に聖牌を持ち帰る。それと引き換えに慕をアンタの妄執から解放しろ」
―――― 同じ頃、この聖牌戦争開催の地である長野きっての名門風越でも
華菜「麻雀における能力とは『神秘』であり、『神秘』とは『根源』へ至る手段である」
華菜「すなわち『根源』に至るだめの儀式を簡略した物が麻雀であることは揺るがし様のない事実だし!」
華菜「よって幾ら簡略した斯様な儀式であろうと、部長を務めるのは大任であることも知ってるはずだし」
華菜「麻力は勿論、統べる者として部長とは伝統が重んじられるのはこの風越では誰でも理解している、つもりだった……」
華菜「何故こんな初歩的な話を今更するかと言うと先日、部長選出について或る部員からこんな意見を提出されたからだし」
いちご「……!?」
華菜「其の者は麻雀へのより深い理解と効率の良い運営ができれば麻雀歴の浅い者でも部長が務まると主張してる……」
ざわ・・ ざわ・・
華菜「静かにするし…… はっきり言うけどそんな考えは妄想だし!部長の優劣とは麻力と過ごした時間が全てだし!!」
いちご「なっ……!?」
華菜「佐々野……、オマエはこの風越では新参者だろ? ま、意見するならせめてレギュラーに入ってからきくし!!」
いちご「クッ……」
いちご「馬鹿にしよって、馬鹿にしよって、馬鹿にしよってッ!! あれが伝統校の部長のやることか!!」
いちご「何がせめてレギュラーに入れじゃ! ちゃちゃのんはの今ちぃと調子悪いだけじゃ……」
いちご「あの猫耳、前任の部長に気に入られてたから後任になっただけじゃろ? なのにあんな威張りおって……」ブツブツ
美穂子「キャッ!?」ドン
いちご「あ、すまんのぉ! ちゃちゃのん、ちゃんと注意しとらんかったわぁ」
美穂子「気にしないで、注意していなかったのは私も同じだから。 ええっと貴女は……、転入生の佐々野さん?」
いちご「へ……? 何でアンタちゃちゃのんのことを知っとるんじゃ?」
美穂子「もう引退しちゃったけど部のことはまだ気にしているから。 ……あら、でも確かこの時間は全体ミーティングじゃ?」
いちご「えっ……!? そ、そうじゃ、ウチはちぃと池田部長から頼まれ事を言付かっとって……」アタフタ
美穂子「あらそうなの? ならちょうど良かった。華菜にコレを渡しておいてくれないかしら?」スッ
いちご「これかいの……?」
美穂子「ええ、私も急にコーチに呼び出されちゃったの。お願いね、大事な物だから」ニコッ
いちご「あ、はぁ…… 大事な物? 送り元はドイツ……」
いちご「さては池田の奴、本場のバームクーヘンでも買ったんじゃな。ちょうどええ、ちぃと喰ってやるかのぅ」ガサゴソ
―――― そして戦いの機運が高まり始めたその頃、千里山陣営は情報収集に努めていた
怜「竜華ぁ、何か来てるで?」
竜華「ああ、協会内部からの報告やな。連中には他のマスターの情報を集めさせてたんや」
怜「ふぅん…… で、マスターは何人出揃ったんや?」
竜華「4人や。監査役の白水哩の母校である新道寺の大将鶴田姫子。新部長に選ばれた風越の池田華菜……」
怜「さすがに錚々たる面子やなぁ。風越には何かトラブルがあったようやけど」
竜華「そして白築耕介。落ちぶれた物やねぇ、かっての名家も窮するあまり男を参戦してきよったで」
怜「麻力から言うたら男は女より圧倒的に不利なのになぁ…… ほんでこの人は誰や?」
竜華「うん……? 何やコイツ……、怜も見てみぃや」スッ
怜「……安河内美子? あの名門新道寺で2年時まで主席!? 3年進級時には部長推薦を辞退してるんかぁ」
竜華「以後は白水哩のサポートに回って自分は仕掛け・受け・鳴き等、様々なスタイルに変更を繰り返し現在は退部済……」
怜「もうちょいで極められる所に行けてるのに勿体ない…… 飽きっぽい人なんかなぁ?」
竜華「違うで…… コイツはな、麻雀に全く情熱を持っていない。だからこそ突き詰めた物を寸前で屑同然に捨て去れるんや」
怜「……」
竜華「コイツの行動には麻雀への憎しみすら感じる。ウチはこの女の有り方が怖いわ……」
―――― 同時期、情報収集に努めていた新道寺にも参戦候補の情報が集まりつつあった
哩「ふむ……、どうやら池田の参戦もほぼ確定したようぞ」
姫子「まぁ代替品の聖遺物で急遽召喚するサーヴァントなんぞ怖くなかです!」
美子「入るけん。 ……部長、どげんしたと?」ガチャ
哩「ん、風越が新たな聖遺物を手に入れたちゅう報告ぞ。それより美子」
美子「はい?」
哩「この部室に入る時、誰にも見られていなかやろうな?」
美子「御心配には及ばないばい。そうじゃろ……?」
アサシン「はいっス……」ボワン
姫子「アサシン……? おったのに全然気付かんかったと」
アサシン「マスターの周辺にはいかなる監視の目はないっス。それは間諜の雀霊たるこのアサシンが保障するっス」ニヤッ
美子「うん。アサシンこん場はもうよか、引き続き周辺警戒に戻れ」
アサシン「御意っス……」ボワン
美子「それより部長、こちらの報告は何と?」
哩「……ん? ああ、千里山のマスターが判明しよっと。面倒なのが出てきおったぞ」パサッ
姫子「清水谷竜華……? まさかあの雀士殺しの清水谷やろか?」
美子「雀士殺し……!?」
哩「千里山は荒事には向いておらんと。そいで誇りばかなぐり捨てて代打ちば雇ったんやろ?」
美子「射殺、毒殺、標的を他の面子もおるのにビルごと爆殺……!?」
姫子「この女、雀士であるという誇りを微塵も持ち合わせてなかと……」
美子「ではこの女は、清水谷竜華はなして麻雀を?」
姫子「動機なんて小遣い稼ぎじゃなかと? ばってん、こういった下衆の類は大抵その程度の物ぞ」
哩「……うん、恐らく金銭やろ。悪名を轟かせていた当時、様々な賭場で清水谷の姿が観測されちゅう」
美子「……部長、こん女ん資料ばお預かりしても良かと?」
哩「ああ、構わんばい。 そいで姫子、召喚の準備はどぎゃんね?」
美子「そっいえば姫子ん聖遺物もやっと届きたばいね」
姫子「届いたちゅうよりはやっと出来た言う方が正しかね」ジャラッ
美子「鎖…… もしや部長と姫子ば遂にアレを完成させたと?」
哩「そうばい。我等新道寺の悲願を叶えるため代々研究した成果がこのリザベーションぞ」
姫子「リザベーションを会得した、強か絆を持った者のみ手に出来るこの天の鎖……」
哩「まぁ、こん鎖ば戦うために使う物と違か…… これは最強の雀霊を召喚するために使う物ぞ」
姫子「ああ、後はウチが狙い通りの雀霊ば召喚できればこの戦い勝ったも同然ばい!」ニヤッ
美子「……ほぅ、そこまで自信ば持とぅっちは一体どげん雀霊やか?」
姫子「ウチらが召喚しようとすっ者は雀霊と呼ぶには些か支障があっかもしれん……」
哩「……うむ、アレは雀霊と言うよりは反雀霊や悪霊っちゅう方ば良かかもしれんけんな」
美子「……随分と物騒な雀霊ん様やね」
姫子「ばってん、最強であることは間違いなか。何せ世界の頂きばおった者やけん」
哩「そいだけに気位も高か者やけん召喚した後の制御ば一苦労しそうばい」
美子「どうも問題のいりそうな雀霊ん様やけど召喚してよかよかやろうか?」
哩「良か。この戦いば勝ち抜き、ウチら新道寺の悲願ば達成するには手段は選べなかということぞ……」
―――― そして、もう間もなく戦いの火蓋が切って落とされようとしていたその夜、白築陣営では
慕「おじさん……?」
リチャ「久しぶりだな慕……、元気だったか?」ヨロヨロ
慕「どうしたの? 顔色悪いし、すごく元気なさそう……」
リチャ「大丈夫さ…… 少し疲れちゃっていただけだ」
慕「何だかおじさん、違う人みたいになっていくね……」
リチャ「そうかもしれないな…… それよりお母さんとは上手くいってるか?」
慕「うん… 他所のお家に行かされちゃうってお話、ちょっと先になるかもって」
リチャ「そうか…… 慕はやっぱりお母さんとココで暮らしたいか?」
慕「……」コクッ
リチャ「そうだよな…… 大丈夫だ。慕はこの白築の家でずっとお母さんと暮らせるさ」
慕「本当……!?]
リチャ「ああ、きっと暮らせる。それはおじさんが約束してあげる……」
ナナ「耕介、慕とのお別れは済んだかい?」
リチャ「黙れクソ姉貴…… 約束通り召喚の呪文も覚えてきたぞ」
ナナ「そう…… じゃあその呪文の途中にもう二節、別の詠唱を差し挟んでもらうよ」
リチャ「……どういうことだ?」
ナナ「フン、簡単なことよ。男であるアンタの麻力は他マスター共に比べて些か以上に劣る」
リチャ「だからどうした? そんなこと最初からわかっている!」
ナナ「ハン、その程度の麻力じゃサーヴァントの能力にも影響するでしょ? ……ならばどうするか」
リチャ「……」
ナナ「単純なことよ、サーヴァントの能力を底上げしてやればいい……」
ナナ「……耕介、呼び出すサーヴァントに狂化の属性を付加してもらう。じゃあ始めるよ」ニタァ
姫子「―――― 告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」
姫子「―――― 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
哩「この麻力の高まり、アサシンの比じゃなか……」ゴクッ
美子「来ると……」
~~~
華菜「―――― 誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
美穂子「……華菜、頑張って」
~~~
リチャ「―――― されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし」
リチャ「汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者 ――――」
ナナ「……」ニヤァ
~~~
竜華「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ ―――!!」
怜「……成功、したんか?」
竜華「コイツは……!?」
セイバー「―――― 問おう。貴女が私のマスターか」
シリアスなのにカツ丼で吹いた
アチャは菫さんじゃないみたいだし確定してるのモモだけか
やっぱり分裂したら真っ先に脱落してまう(´・ω・`)ん?
―――― 各地でサーヴァントが召喚されていた頃、数奇な偶然によりマスターとなった彼女も召喚に成功していた
いちご「雀霊とまで呼ばれとるんだし、もっと強そうなんが召喚される思うとったんだがのぅ……」
ライダー「どうしたんだマスター? 不思議そうな顔をしてるけど何かあったのかー」
いちご「聖遺物もこんな古ぼけた車のエンブレムだし、ちゃちゃのん失敗したんじゃろか?」ブツブツ
ライダー「このライダーのマスターともあろう者がそんな辛気くさい顔をしてどうするんだ? ワハハー」
いちご「能天気な奴じゃ…… 見た目も弱そうだし真名も聞いた事ない。もしかしてちゃちゃのん大外れを引いたんかのぅ?」
ライダー「ん~~? この世界じゃ鶴賀学園も蒲原智美の名前も無名なのかー」
いちご「そんな雀士も学校名もちゃちゃのんは聞いたことないよ……」
ライダー「そうかー、いやぁ面白い! それでこそまた鶴賀の名を世に轟かすいい機会だぞー ワハハー」
いちご「何が面白いんじゃ、このド阿呆! こっちはお先真っ暗ちゅうのに……」
ライダー「全く、こんなマスターじゃ先が思いやれるなぁ…… そうだ、では気分転換でもするかー?」
いちご「気分転換……?」
ライダー「そう、これは偵察も兼ねた立派な作戦行動だからなー それじゃあ行ってみるとするか!」ドンッ
いちご「く、車!? お前、運転できるんか?」
ライダー「おー、こう見えても車の運転には自信があるんだぞー」
いちご「なるほど、それでライダーのクラスで召喚されたんじゃろうな。んじゃちぃと腕前見せてもらおうかのぅ」
―――― そして暫く経ち、監督役より正式な開催が宣言され、千里山陣営も戦いの舞台である長野に赴こうとしていた
セイバー「……怜、マスターと話をしている彼女は誰?」
怜「ああ、あそこにいるのは二条泉。竜華の作戦行動をサポートをしてくれる後輩やから警戒せんでええよ」
セイバー「そう…… 私のマスターは冷酷な印象があったからあんな柔和な顔をするのは意外だった」
怜「そっか。 ま、アンタの前ではいつも無極点モードだから無理もないなぁ」
セイバー「あれがマスターの素顔だと言うなら私は余程マスターの不興を買ったんだ……」
怜「フフッ 雀霊さんも気落ちとかするんやなぁ」
セイバー「怜、何も笑うことはない」ブスッ
怜「ごめんな、セイバー でも、まだ召喚のこと気にしてるんやなって思ってなぁ」
セイバー「ちょっとだけ。私はただ召喚に応じただけなのに何も二人揃ってあんなに驚くなんて……」
怜「そうは言うても仕方ないんよ。アンタの、宮永照の噂は余りにも有名やから……」
セイバー「噂……?」
怜「うん…… 真偽は知らんけど自分は多分アンタを妬んだ誹謗中傷の一つと思ってるんやけどな……」
セイバー「どういうこと? 怜、構わないから教えてほしい」
怜「……あのな、この世界の宮永照もアンタみたいにむっちゃ強いんよ」
セイバー「うん、それは召喚時に聞いた。 だけど私とこの世界の宮永照は全く別の存在」
怜「でも、因果の関係で性格や思考等はある程度は似ているんやろ?」
セイバー「そう。己を構成する因果が強い程、どの世界でも共通する確率は高い」
怜「だからや…… この世界の宮永照はな、女癖が悪いちゅう噂があってなぁ」
セイバー「女癖!? そんな、私はそんな事を言われるような真似は一度も……」
怜「そやろな…… 酷いで、この世界のアンタの噂は。 片っ端から女の子に手を出して、NTRもおかまいなしとか……」
セイバー「NTRってそんな……」
怜「竜華は何よりもNTRを憎んどる。例え噂であろうとそんな存在と自分とは相容れない。そう諦めてるんやろな……」
セイバー「……聖牌の力によってiPS研究を完成させたい。それが貴女たち二人の願いだったよね?」
怜「ウチのは竜華の受け売りやけどな。 愛し合う者同士がその証を残せる平和な世界や」
セイバー「私も聖牌に託す願いは同じ。過ちを糺し、皆が幸せになれる世界に戻したい……」
怜「過ちを糺す……?」
セイバー「私は麻雀をすべき者ではなかった。あの時の選択を、いや選択肢すら起きなかった平和な世界に……」
―――― そう、教会が最後まで待っていた7体目のサーヴァントがつい先日やっと召喚されたのだ
マホ「満たせ・満たせ・満たせ・満たせ…… あれっ、私いま何回言ったか忘れちゃいましたー」
マホ「たぶんちゃんと5回言いましたよね…… ええっと、その次は何でしたっけ??」
マホ「あーん、またどこまで読んだかわからなくなっちゃいましたー!! ……うぅ、さっきから手も痛いしメゲそうですぅ」
マホ「でも、このなんでも願い事が叶う聖牌がないとマホが麻雀強くなる方法なんて……」グスッ
マホ「よし! また最初からやり直して次こそはって、さっき描いた魔法陣が光って…… キャッ!?」
キャスター「……問うで? ウチを呼び、ウチを求めキャスターのクラスを憑代に現界させたアンタは誰や」
マホ「え??ええっ!? あの、その私は夢乃マホと言いまして高遠原中学に通う麻雀部員で……」アタフタ
キャスター「……あ~、もぅええ契約は成立な。アンタが欲しがっとる聖牌はウチも欲しいから頑張ろうな」
マホ「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!!」ペッコリン
キャスター「ほぅ、ええ子やなぁ。 ところでアンタ、ウチの体が重いちゅうか何か調子悪いんやけど心当たりある?」
マホ「ふぇ?」
―――― こうして戦いの地に集結した各陣営はそれぞれの思惑を胸に動き始めた
怜「どやセイバー、こっちの世界は?」
セイバー「私の居た世界ともさほど変わった感じには思えない。それよりも怜……」
怜「……うん?」
セイバー「このように外を出歩くのは危険。早く拠点を構え、先に到着している竜華と合流するべき」
怜「それはそーなんだけどな…… まぁ今は戦いも始まっておらんし、それに……」
セイバー「それに?」
怜「うん。ウチにはこの景色がむっちゃ新鮮で何もかんも楽しそうに見えてなぁ」
セイバー「どうして? 怜にとっては何の変哲もない風景のはずだけど」
怜「……ウチ、昔から体が弱くってな。だから千里山の外に出るのはこれが初めてなんよ」
セイバー「……怜、私もこの世界はまだ不慣れ。だけどエスコートぐらいなら……」スッ
怜「……セイバー?」
セイバー「行こう、怜。 私じゃ竜華の代わりが務まるとは思わないけど」ニコッ
竜華「……」ギリッ
泉「……落ち着いてください部長。自分で立てた計画とちゃうんですか?」
竜華「……ああ、分かってはいるんやけどな」
泉「あえて衆目に晒して他マスターたちに園城寺先輩をセイバーのマスターと思い込ませるんでしょ? 今は堪えてください」
竜華「……そやな。 泉、他の動きはどないや?」
泉「つい先日、新しい大きな麻力の発動が計測されました。恐らく雀霊の物かと」スッ
竜華「ああ、これで全部の雀霊が出揃ったちゅうことか。 ……泉、新道寺の動きはどないや?」
泉「新道寺? 先日の大きな麻力が計測されて以後は特に目立った動きはないですけど」
竜華「人の出入りもなしか…… 安河内美子の動向は何か掴めたか?」
泉「いえ、何も。 もしかして安河内美子はマスターちゃうんじゃないでしょうか?」
竜華「いや、それは無いやろ…… 引き続き安河内美子と新道寺周辺の監視を最優先に続けておきや」
~~~
怜「星が綺麗やなぁ。同じ空なのに大阪で見る物とはこうも違うんやねぇ」
セイバー「そうだね。長野は空気が澄んでいるから星がよく見える」
怜「そっか。 セイバーは雀霊になる前はこうして誰かと夜空を見たりしてたん?」
セイバー「……いや、別にそういったのは。 でも、怜は竜華と二人でこうして過ごしてきたんでしょ?」
怜「ううん…… アカンのや、竜華は幸福でいることに苦痛を感じてまうから……」
セイバー「……そう。 ……怜?」スッ
怜「……わかっとる。敵のサーヴァントか?」
セイバー「うん、私たちの約100メートル後方に。 気配を漂わせてるし、どうやら誘っているみたい」
怜「ふぅん、打つ場所を選ばせようとしてんのか…… ほな、お招きに預かるとしよか?」ニヤッ
セイバー「……望む所」ニッ
――――
?「……良かった。貴女たちが来てくれなきゃ寂しく独りで夜を過ごす羽目になってたわ」
怜「……女の声?」
?「やっぱり衰えたのかしら? 今日一日、色んな所でお誘いしたのだけど皆素っ気なくってね」スタスタ
ランサー「応じてくれたのは貴女だけ。 ……その清澄な雀気、セイバーと見たけど?」チャキッ
セイバー「ええ、そういう貴女こそランサーで間違いない?」
ランサー「そうよ。 ……これから打とうってのに名前を明かせないってのもつまらない縛りよね」ニヤ
怜「……セイバー、気ぃ付けてな。ウチも少しはサポートできるけど、竜華に比べたら大したことは」ボソッ
セイバー「大丈夫。 ……それより怜、ランサーのマスターが見当たらない。妙な策に出るかもしれないから気をつけて」
怜「分かった。 ……セイバー、ウチのために勝利を頼むで」
セイバー「うん、任せて」ゴッ
ランサー「……」ジリ
セイバー「………」ジリッ
怜「……んっ!?」
セイバー「……これは魅惑の麻法!?」
ランサー「……あら? ごめんなさい、これは生まれ持った能力って言うか呪いみたいな物なのよ」
ランサー「だから自分でもどうしようもなくって…… ま、そう言う訳だから悪いけど女に生まれた自分を恨んでね」ニコッ
セイバー「そのご自慢の女ったらしの顔でまさか私の腕が鈍るのを期待してた?」
ランサー「まさか…… なるほど、さすがセイバークラスの抗麻力は伊達じゃないわね。正々堂々と打てそうで良かったわ」ニッ
セイバー「へぇ、真っ当に打ちたかったんだ。 こっちも誇り高い雀霊と囲めるのは私にとっても幸い」ニヤッ
ランサー「……それじゃ、そろそろ始めましょうか?」スッ
――――
竜華「ちっ、やっぱり人払いの結界が張られとるか」
泉『清水谷部長、セイバーと敵サーヴァントの戦いが始まった様ですわ』ザッ
竜華『ああ、こっちでも確認しとる。 ……熱源? 泉、セイバーたちの北東見ぃや』ザザッ
泉『……こっちでも確認しました。 肉眼では確認できへんってことはサーヴァントですかね?』
竜華『いや、あれは幻影の麻術や。サーマル越しではっきりと視認できとる。 ……つまりアレは敵雀霊のマスターやな』
泉『……ほな、やりますか?』
竜華『ああ、挟んで一気に仕留め、……これは!? ……泉、待ちや。新しい熱源が南西約300m後方で観測された』
泉『……いや、ウチの位置から死角のようで何も。 じゃあそっちがサーヴァントでっか?』
竜華『そやな。 あれはアサシン、か……?』
アサシン「……」ジッ
泉『……どないしますか、部長?』
竜華『今のウチらは対サーヴァント装備をしてへん…… 今夜は見送りや、泉はそのままアサシンの監視を続けや』
泉『了解……』ザザッ
竜華「……ふぅ、今日は徒労かいな。 ま、一度くらいは自分のサーヴァントの力量を確かめるのも悪ぅないか」
竜華「ほな、お手並み拝見と行きましょうか可愛いチャンピオンはん……」フッ
――――
美子『ようよう最初の戦闘が始まった様子ばい。 戦っとるのはセイバーとランサーと思われます』
哩『……始まったか。 アサシン経由でもサーヴァントのステータスば読み取れっか?』
美子『問題なか。 とりわけセイバーの能力値に恵まれて、大方の能力はアーチャーやアサシンより上回っておるかと……』
姫子『さすがは最強クラスん一角と言ったとこね。 他に何か変わったこつはありますね?』
美子『サーヴァント以外に堂々と姿ば晒しとるのは一人だけ。 セイバーの背後に控える、黒髪の女ばい』
哩『ふむ、ランサーのマスターは聖牌戦争ん鉄則ば理解してっようだな。 ……待て美子、黒髪の女と言ったな?』
美子『麻力ば並程度で、翠色に輝く瞳の女ですが?』
姫子『翠色に輝く瞳……? まさか園城寺怜、一巡先を視る者か!?』
哩『……千里山の用意した駒ば清水谷竜華だとばかり思っよったが、ばってん見込みが違ったようばい』
美子『……ではセイバーのマスターばあん女と?』
哩『……ともかくそん女は聖牌戦争の中枢におる者ぞ。 美子、決して目ば離すな』
――――
ランサー「……厄介ね、その視えない右手。風の麻力結界かしら?」フゥ
セイバー「……」スゥ
怜(これが雀霊同士の戦い…… 一巡先が見えていても動きを追うのがやっとの速さとは話で聞いていた以上や……)
ランサー「……ま、お互いに名乗りもない対局に誇りも何も無いのでしょうけど。 大したものね貴女、素直に賞賛するわ」ニッ
セイバー「……それは無用な謙遜。 私だって貴女の名前は知らないけどその打ち筋でその言葉、普通に嬉しい」ニヤッ
?『じゃれあいはそこまでにしとくし、ランサー!』
怜「……ランサーのマスター!?」
?『これ以上戦いを長引かせるな。そこのセイバーは厄介だ、速やかに始末するし! ……宝具の使用を許してやる』
ランサー「了解したわ、マスター…… セイバー、ここから先は獲らせてもらうわよ」ニィッ
怜「なんやあの構え? 何をしてくるつもりや……」
ランサー「ハァァッ……」ゴゴゴ
セイバー(ランサーの気がどんどん高まっていく。 大きいのが、来る……)グッ
ランサー「タァァァァァツ!!」ダッ
セイバー(牌を投げ捨てた……!? 出鱈目なフォームで狙いが読み難いが直撃は避けれ……ッ!?)ザシュ
ランサー「今ので獲るつもりだったけど、躱されちゃうなんて…… つくづく楽には勝たせて貰えないようね」ニイッ
セイバー(……躱しきったつもりだった。それなのに風王結界も貫いて右手の腱を斬られるなんて)ズキッ
怜「セイバーッ!!」
セイバー「……大丈夫。それより怜、点数の回復をお願い」
怜「やっとる! やっとるんやけど回復せんのや!!」
ランサー「過信したわね、セイバー 直撃だけ避ければ支障はないとでも思ってたんでしょ?」
セイバー「麻力の結界を意も介さず貫き、その傷は決して癒えぬ呪いの悪手。それに乙女を惑わすその貌……」
セイバー「気付くのが遅すぎた…… 長野随一の雀士、悪待ちの竹井久。まさか対局出来るとは思ってもいなかった」
ランサー「それが聖牌戦争の妙でしょうね。 でも光栄なのは私の方よ、セイバー」
ランサー「世界を越え雀霊の座にまで招かれた者ならその風の守護を受ける右手……、見違える者なんていないわよ」ニィ
――――
ライダー「うーん、これは不味いなぁ」
いちご「な、何がじゃ?」
ライダー「ランサーは勝負に出てきた。あのままじゃセイバーが脱落しちゃうぞー」
いちご「何を言うてんのじゃ、勝手に脱落してくれた方がウチらには好都合じゃろ!?」
ライダー「やれやれ、このマスターときたら……」ハァ
いちご「人の顔を見て何ため息ついてんのじゃ! 最初は奴等が潰しあっている所を襲う計画じゃったろ!」
ライダー「ん~? そりゃあランサーの挑発に他の連中が乗るのを期待してたからなぁ。 纏めて倒す方が楽だしなー」
いちご「纏めて……? 何を言うてるんじゃこのド阿呆、ならとりあえずあの二人を…… ぷげっ?!」ペチン
ライダー「全く、あれだけの雀士を見て胸が躍らないとは器が小さいなー さて、私たちも行くぞー」
いちご「痛ぅ……、って行くってどこにじゃ?」
ライダー「ワハハー 決まってるだろ、あの二人を止めに行く。さ、早く車に乗れー」ガッ
いちご「は、離しんさい! もうお前が運転する車になんか乗りとぉないッ!!」ジタバタ
――――
ランサー「さて、お互いの名前もわかったし、ようやく雀士として尋常な勝負を挑める訳だけど……」
ランサー「それとも片腕を奪われた後じゃ不満かしら、セイバー?」
セイバー「つまらない冗談。 この程度の手傷で心配されるようじゃむしろ屈辱」グッ
ランサー「嫌いじゃないわよ、そういうの…… でも次こそは獲らせてもらうわ」スッ
アサシン「……!? これは、何っすか!?」
美子『……どげんした、アサシン?』
ドオオオン!!
怜「な、何が起きたん?」
ライダー「ワハハ~ 双方武器を収めよッ! 真なる部長の前であるぞ!!」
ライダー「私は此度の聖牌戦争にてライダーのクラスを得て現界した蒲原智美だぞー」
ランサー「なっ……!?」
セイバー「えっ……!?」
怜「ど、どういうことや……?」
いちご「な、なに自分で真名を明かしてんのじゃ、このヴァ…… ふべらッ?!」ベチン
ライダー「お前たちとは聖牌を求め相争わなければいけないんだけど、まずは聞いておきたいことがあってなー」
セイバー「……?」
ライダー「どうだお前たち、ここは私に降伏して聖牌も譲っておかないかー?」
ランサー「……」ハァ
ライダー「そうしたら私はお前たちを朋友として遇し、雀士として再び世界を征する喜びを共に分ちあうぞ~」ワハハー
ランサー「……まぁ、自ら名乗るその心意気は嫌いじゃないけど」
ライダー「お、じゃあランサーは……」
ランサー「ごめんなさい、聖牌は先約があるの。 ……それに勝負に水を差されるのって好きじゃないのよね」キッ
セイバー「……そんなふざけたことを言うために私とランサーの対局を邪魔したとは、度が過ぎるライダー」ゴッ
ライダー「……待遇は応相談だけどなぁ」
セイバー・ランサー「「くどいッ!!」」
いちご「おい、お前本気でセイバーとランサーを手下にできると思ってたんか?」
ライダー「ほら、何でも試しって言うだろー ワハハー」
いちご「何も勝算なしで誘ったんかッ!? どうすんのじゃ、アイツらむっちゃ睨んどるぞ……」カタカタ
?『……へぇ、何を血迷って聖遺物を盗んだのかと思ったらお前も聖牌戦争に参加する気だったのか、佐々野いちご……』
いちご「こ、この声は……!?」ビクッ
華菜『残念だし、実に残念だし…… でも、盗みを働いた者には部長として特別指導を課さないといけないなぁ』ニヤリ
いちご「……ッ!?」ガクブル
ライダー「……落ち着け、嬢ちゃん。 おー、察するにその声の主が私のマスターになるはずだったようだなー」
ライダー「だとしたらとんだお笑い種だなぁ~ 己の姿を晒すこともできない臆病者が私を使役させる気だったとはなー」ニヤッ
華菜『何ぃ……』ギリッ
ライダー「そんな者に比べたらこの嬢ちゃんの方が遥かに我が主として相応しいぞー ワハハー」
いちご「ライダー……」
ライダー「さぁて他にもいるんだろー、ソイツ以外にも覗き見をしてる奴は?」ギロッ
アサシン「……まさかアイツ、こっちに気付いているっスか?」
セイバー「ライダー、どういうこと?」
ライダー「お前たちの対局は実に見事だったぞー なら、あれほどの場に魅かれて出て来たのはまさか私だけじゃないだろー?」
ランサー「……ふぅん、そういうことね」フッ
ライダー「我こそは世を馳せた雀霊と自負するなら今ここに集え! それでもまだ顔を見せを怖じる者なら……」
ライダー「この蒲原智美、臆病者と見なすぞー!!」
アサシン「……フッ、面白い人っスね」
竜華「……なんやあのアホ。あれで良ぅ雀霊になれたもんやな」
美子「……不味かね」
姫子「……これは不味かと」
哩「……ああ、まっこと不味いばい」
アーチャー「……何を喚いているかと思ったらくっだらないわねぇ」スゥーッ
怜「新手のサーヴァント?」
アーチャー「この世界一の私を差し置いて世を馳せる? 見え透いた挑発でも見過ごしてはいられないわね」
ライダー「……そうは言っても実際に私は優勝した鶴賀の部長だった訳だしなぁー ワハハー」
アーチャー「……鶴賀?聞いたことないわよ。 まぁどこの誰だろうと世界を口にしていいのは頂きに立った私だけよ」
ライダー「そこまで言うならまずは名乗ったらどうだー まさか自分を世界一とまで言う者なら憚ることもないだろ?」
アーチャー「この私の顔を見ておいてまだわかってないの? ……ならアンタたち、生かしておく価値もないわね」ゴゴゴ
いちご「……あのサーヴァントの後ろに拡がっていく黒い水たまりみたいなぁ物は何じゃ?」
セイバー「気をつけて、怜」ザッ
怜「セイバー? あれは一体何なん……」
セイバー「……分からない。でもアレから感じる力は凄まじく悍ましい」グッ
竜華「あれがアイツの宝具……?」
姫子『チッ、こぎゃんなとこで自分から宝具ば晒すなんぞ軽率にも程があるばい……』
――――
リチャ「……や、止めろバーサーカー」
ドドォォォオン!!
バーサーカー「■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■ッ!!」
アーチャー「ん……?」
セイバー「バーサーカー!?」
ランサー「ねぇライダー、アレはお誘いしないの?」
ライダー「う~ん、そう言われてもアレじゃあ言葉も通じなさそうだしなぁ~ 嬢ちゃん、あれは雀霊としてどの程度の者だ?」
いちご「……わからん」
ライダー「おいおい、嬢ちゃんだって一応はマスターなんだろー。 どれだけ強いとか見えるんじゃなかったのかー?」
いちご「……だから全くわからんのじゃ。サーヴァントなのは間違いないんじゃがステータスが何も見えん!」
怜「……恐らく自分の素性を眩惑させる能力なり呪いを持ってる、ちゅうことか」
セイバー「こうなったらもう迂闊には動けない。まさか5人も雀霊が集まるなんて……」
竜華『何故こんな混戦に自分のサーヴァントを放ったんや? 面倒なことになったで……』
バーサーカー「■■■■■■■□■■■■■■■■■■■……」
アーチャー「……何かアンタ気に食わないのよね。脇から沸いてきてこの私に挨拶無しってのもムカツクし」
バーサーカー「■■■■□■■■■■□□■■■■■■■」
アーチャー「まともな判断もできない狂戦士だから許してもらえる、なんて甘い考えじゃないでしょうねッ!!」ビシュ
怜「……あの黒いのが伸びた?」
アーチャー「……チッ」ギリッ
バーサーカー「……■■□□□■■■■■■■■■□■■」
ランサー「……あらあら、バーサーカーだってのに偉く芸達者ねぇ」
いちご「な、何が起きたんじゃっ?」
ライダー「ん、見えてなかったのかー バーサーカーがな、あの伸びてきた黒い一本目を掴み取って二本目を弾いたんだぞ」
バーサーカー「■■■■■■■■■■■■■■■■」
アーチャー「コイツ、私の宝具に触れてなんともない? なんか本気でムカツイてきたんだけど……」ガッ
いちご「あの背後に広がる黒いの、アレまだ拡がるんか……」
ライダー「なるほど、あの訳わからん黒いのは伸ばしたり投げたりできるってことかー」
ランサー「そうみたいね。……ってことはあの子がアーチャーかしら?」
アーチャー「いいわ、そっちがその気なら世界一の力どんな物かその体に教えてあげるわッ!!」ビシュ ビシュ
バーサーカー「■■■■ =)■ty■■■■[-■■■■*■■■aa!?」
怜「無傷? あのサーヴァント、アレを全部かわしたんか!?」
セイバー「……いや、流石にあの凄まじい攻めは避けきれてはいなかった」
いちご「じゃあ、あのアーチャーの攻撃力があんま大したことないのかのぅ」
ライダー「……そんなことないぞー。 むしろアーチャーのアレは一本一本が通常の宝具と同程度あると見たんだがなぁ」
アーチャー「ほぉらほらッ!! まだまだ攻撃の手は続くわよ!!」ガガッ
バーサーカー「■■'[:■8$&'=(■ =oj■□■■('&&■■■■■■■」
アサシン『とんでもないっすね、あの二人……』
ランサー「攻める方も規格外だけど凌ぎきったアレも異常ね。 全く、あの二人一体どこの雀霊よ……」
バーサーカー「……■■□□■■■■■□■■■■■■■■」
アーチャー「ふぅん…… アンタさ、本気でキレさせてくれたんだけど覚悟できてんでしょうね……?」ゴゴゴ
怜「嘘やろ? まだ拡がるんか、あの黒いの……」
セイバー「あんな強力で巨大な単一宝具が有り得るなんて……!?」
美子『……アーチャーば本気ばい。部長、御決断を』
哩『アレが単独行動スキルば持つアーチャーで召喚されるとは誤算だったばい…… 姫子、仕方なか』
姫子『あん売女がッ…… 令呪を持って奉るばい、王よ怒りを鎮めお戻りを』ブオッ
アーチャー「……姫子、アンタこの私に指図をする気なの?」
姫子『何卒、何卒お聞き届けください王よ……』
アーチャー「ふん、命拾いしたわね狂犬…… アンタたち、次会う時まで雑魚は間引いておきなさい」スゥッ
怜「ふぅ……、これで少しは落ち着けるやろか。 セイバー?」
セイバー「……まさかッ!? 下がって、怜ッッ!!」
バーサーカー「■■■■t:ェ■■■□■■r*■■■■■■ゥゥ!!!」ゴッ
ライダー「……おいおい、アイツは本当に見境ないなぁー」
セイバー「チィィ……!? コイツ、他にも目をくれずどうして私を?」カキン
バーサーカー「■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!」ガキン
怜「アカン!? セイバー、避けやッ!!」
セイバー「……しまっ!?」
バーサーカー「……■■■■■■■■■■■■■■■?!」チャキィィ
ランサー「悪ふざけもいい加減にしなさいよ、バーサーカー…… このセイバーとは私との先約があるの」
セイバー「ランサー……!?」
ランサー「これ以上つまらない真似をすると言うのなら、私も黙っていないわよ……」ギロッ
華菜『……何をしているし、ランサー! セイバーを倒すには今がチャンスだろ!』
ランサー「セイバーはこのランサーが誇りに掛けて必ず倒すわ! だからマスター、お願いだから……」
華菜『……令呪を持って命じるし。 ランサーよ、そこのバーサーカーを援護してセイバーを殺すし!!』
ランサー「~~ッッ!! ご、ごめんなさいセイバー……」シュッ
セイバー「ランサー!?」
バーサーカー「■■■■■■■■■■■■■■■……」カチャン カチャン
セイバー「二対一、か…… この場は何とか私が食い止める、その隙に怜は逃げて!」
怜「……大丈夫や、セイバー。 自分のマスターを信じや」
セイバー(マスター? 竜華がこの場に来ている? でも、信じろと言われてもこの状況は……)ギリッ
竜華『泉、バーサーカーのマスターはどないや!?』
泉『アカンです。周辺一帯を探しましたけど見つかりませんわッ!!』
竜華『分かった、そのまま狙撃位置に向ってウチの合図を待ちや!ランサーのマスターをやるで!!』
泉『了解……』
竜華(ランサーのマスターを殺る。もうこの状況を打破するにはこの方法しかあらへん……)
怜(竜華……)
セイバー(クッ、このままでは……)
ライダー「ワーーーハハハハハハァッッ!!」ブロロロン
ランサー「……えっ!?」スッ
バーサーカー「■■■■■■■■■■■■■■■!?」ドカッ
ライダー「ワハハー、頑丈な奴だなぁー ボンネットの方がちょっと凹んじゃったぞ~」
いちご「……あ、あ、コイツとうとう人を轢きおった」カタカタ
バーサーカー「……■□□^e■■■■■r"■■□□□■uッ!?!」ピクピク
ライダー「おー、嬢ちゃん安心しろー まだ死んではいないみたいだぞ」ワハハ-
セイバー「ライダー……?」
バーサーカー「…………■□■■」シュン
ライダー「と、言う訳でバーサーカーにはご退場してもらったんだが……」
ライダー「で、どうするランサーのマスター? まだランサーに恥をかかせるってなら私はセイバーに着くぞー」
華菜『……チッ、撤退しろランサー。 今夜はここまでだし!』
ランサー「……ありがとう、鶴賀の部長さん。それにセイバーも……」チラッ
セイバー「……」コクッ
ランサー「……それじゃあ、また」スウッ
――――
マホ「すごい、すごいですぅ!マホ感動しましたっ!! あれが聖牌戦争なんですねッ!!」
キャスター「あ、あ、あ……」フルフル
マホ「……どうかしましたかキャスターさん?」
キャスター「叶った…… 叶ったで!!」
マホ「叶ったって願い事ですか? おめでとうございますっ!、…って何もしていないのにどうして??」
キャスター「見てみ、マホちゃん! このセイバー、ずっと探していたウチの運命の好敵手に他ならんで!!」
マホ「……お知り合いですかぁ?」
キャスター「そうや! ウチのいた世界では忌み嫌われ、失意のまま麻雀界から追われたあの子が復活しとるで!!」
マホ「はぁ」
キャスター「また会いたい…、もう一度打ちたい…… そんなウチの願いは叶った!これは奇跡やで!!」
マホ「願いが叶ったってことは、もしかしてマホたちはもう聖牌戦争に勝っちゃったってことですか!?」
キャスター「まぁ、誰が見てもこれは実質ウチらの勝ちやな! マホちゃん良かったなぁ」
マホ「わーい! ……でもマホ、まだ麻雀に強くなった気がしないですぅ」
キャスター「う~ん、何となく雰囲気みたいのは変わった様な気もするで? まぁええ、とりあえず宮永を迎えに行こか」
えーと。ひとつ言わせてほしい。鯖の面子すげぇ見覚えあるんだけど。
>>73
ならアチャバサカキャスター教えれ
口調や関係性いろいろ考えてるがいまいちピンと来ない
ごめん。セイバーランサーライダーアサシンが、あのSSと同じだったから、アーチャーまで見ずして書き込んでしまった。ただキャスターはあのトラッシュトークからして恐らく・・・
>>73
前に半端で終わらせてた物の手直しだから同じ部分はあるよ
――――
怜「はぁ、落ち着いたらどっと疲れが出たわぁ……」
セイバー「お疲れ様、怜。 今夜はもう戦う様なこともないだろうから安心して」
怜「ほんまそう願いたいわ…… こんなん続くならセイバーよりウチの方が先に参るで」
セイバー「それは困った。怜には最後まで私をサポートして…… 待って」グッ
怜「……ん? どないしたんや、セイバー」
セイバー「……道の先を見て。 この気配はサーヴァント、怜は私の後ろに回って」
キャスター「……久しぶりやなぁ、宮永」ニコッ
怜「アンタ、どうしてセイバーの真名を!? セイバー、お知り合いなん?」
セイバー「……ううん、見覚えない」フルフル
キャスター「なっ!? 笑えん冗談は止めやぁ。ウチの顔を忘れたとは言わさへんで!」
セイバー「……ごめん。 たぶん人違いというか召喚された元の世界が違うんじゃない?」
キャスター「何を言うてるんや! ウチや、ウチやで!IHで好勝負を繰り広げた末原恭子やッ!!」
怜「必死やなぁ…… とうとう自分で真名を言いおったで」
セイバー「……じゃあ礼儀として私も真名を言う。 私は宮永照、今回の聖杯戦争ではセイバーのクラスを得て現界した」
キャスター「宮永照……? なにボケかましてんのや。アンタの名前は咲やろ、み・や・な・が・さ・き」
セイバー「……」ピクッ
怜「……宮永咲? セイバー、同じ苗字やしもしかして身内の人ちゃうの?」
セイバー「私にい…… そんな身内はいない」
キャスター「そんな人違いちゃうわ! そんなホーン持っとるの、この世に二人もいる訳ない…… ~ッ!?」
セイバー「いい加減にして! これ以上しつこくするのなら次は飛ばす……」ゴッ
キャスター「……ああ、そう言うことか。 麻雀界を追放された時、何も助けてやれんかったウチに怒ってるんやな」
セイバー「……訳のわからないことを。言いたいことはそれだけ?」ギュルルル
キャスター「そら当然や、ウチが悪かったからなぁ。 しゃあない、今日は反省してる証拠としてもう引き上げるわ」
セイバー「待って。貴女とはここで打つ」ギロッ
キャスター「そやね。 雀士同士なら卓を囲めば誤解も解けるやろし、次はあの時みたいに打つのもええなぁ」スウッ
怜「……何なん今のサーヴァントは? ほんま会話が成立せん相手って疲れるなぁ」
セイバー「……今度会う時は言葉を交わす前にゴッ倒す」
――――
『昨日、清澄市内で起こった爆発事故ですが以前原因は不明で……』
華菜「……昨晩は何故セイバーを仕留められなかったし? この私の令呪を一つ削いだ上でもなお、だし!」
ランサー「……」
華菜「……セイバーとの対局はそんなにも楽しかったか?」
ランサー「……雀士の誇りにかけ、次こそはセイバーを討ち果たすことをお約束します」
華菜「そんなの当たり前だし! そんなこと、聖牌を勝ち取ると言っておいて今更誓われる話じゃないだろ!!」
美穂子「いい加減になさい、華菜! ……ランサーさんはよく戦ってくれました。間違いは貴女の状況判断よ」
華菜「キャプテン!?」
美穂子「あんな混戦であれ以上一つの敵に対して深追いしても、その他の敵に利を得させるだけだったわ」
華菜「でもセイバーは強敵だし、あの場で確実に倒せる好機を見逃したくなくって……」
美穂子「ふぅん。じゃあそこまで危険視するなら、どうして華菜自身がセイバーのマスターを放置していたの?」
華菜「……クッ」
美穂子「そう、華菜は隠れて見ていただけ。 なのにランサーさんだけに結果を急がせるなんて情けないとは……」
ランサー「……そこまでにして頂けますか?」
華菜「……!?」
ランサー「それより先は我が主への侮辱です。忠を誓った雀霊として見過ごせません……」
美穂子「いえそういうつもりじゃないのです。ごめんなさいかな、いいすぎたわ」アタフタ
華菜「……キャプテン?」
『ここで臨時ニュースをお伝えします。先程、長野県警が記者会見を行い中継が……』
華菜「……ん?」
『新たに誘拐された夢乃マホさんの安否は依然不明ですが、キャスターと名乗る犯人は……』
ランサー「キャスター……?」
――――
マホ「わぁ~、マホの顔がTVに出ていますぅ!!」
キャスター「おぅ、本物よりべっぴんさんに映ってるやん」
マホ「あ~、キャスターさん酷いですぅ!」ポカスカ
キャスター「あはは、冗談やがな。 それにしても済まんなぁマホちゃん、面倒なことに巻き込んで」
マホ「私は構いませんけど…… でもいいんですか? 聖牌戦争って確か人に知られたらダメなんですよね」
キャスター「そやな。 だからこそ、聖牌戦争を隠匿しときたい連中にせっつかれて宮永咲たちも否応なく動くやろ」
マホ「そうかもしれませんけど、他の人たちもキャスターさんやっつけに来ちゃうんじゃ……?」
キャスター「それが狙いやで。 ウチらの勝ちを認めん、向って来るアホ共を一網打尽にするんや」
マホ「さすがキャスターさん、頭いいです! ……でも他の人たちもすごく強いんですよね?」
キャスター「ああ、雀霊なんて呼ばれてる連中なんざ幾ら来ようとウチの大麻術があれば余裕やで」
マホ「キャスターさん、何か良い作戦でもあるんですか?」
キャスター「あるで~。 雀霊ちゅうのはな、生前エラい活躍した雀士が世界と契約してなるもんなんや」
マホ「へぇ~ じゃあマホも強くなったら雀霊になれたりするんですか?」
キャスター「ああ、ない話じゃないで。 マホちゃんは自分では気付いておらへんけど、とんでもない才能持っとるからなぁ」
マホ「わぁい、ほめられましたぁ!」
キャスター「程度の差はあれど雀霊は皆天才と呼ばれた類の連中や。でもウチは違った……」
マホ「えっ、キャスターさんも凄く強いんですよね?」
キャスター「まぁ、打てばそうヒケは取らんと思うで。 けど、ウチはアイツらと違うただの凡才や……」
マホ「同じくらい強いなら何も問題ないんじゃないですか?」キョトン
キャスター「う~ん、どう言えばええんやろうなぁ。 天才と呼ばれる連中の麻雀は華があるねん」
マホ「はな……?」
キャスター「そや、アイツらの麻雀は人を魅了させるとんでもない能力を持っとる……」
キャスター「……けどな、そんな雀霊一人を輝かすにはその影に何倍もの蹂躙されるだけの者がおるんや」
マホ「……仕方ないですけど麻雀ってそういうゲームですからね」
キャスター「……仕方ない? ならどないせいちゅうんや!あの化け物共の理不尽な能力にヤラれたウチらの無念は!!」
マホ「ひっ!?」ビクッ
キャスター「……ああ、怒鳴ったりしてスマンなぁ。 こんなんマホちゃんに言うても仕方ない話やったね」
マホ「い、いえマホは平気ですけど……」オドオド
キャスター「まぁ雀霊なんて連中にはウチら凡才の怨念がどれだけ深いか、身をもって教えたるわ……」ククク
――――
哩「姫子、どげんかしたばい?」
姫子「聞いてくいしゃいよぶちょー! アーチャーの奴、ウチの言うことば全然聞かなかんばい」
哩「……まぁ、アレは気位ん高い雀霊だから敬意ば持っち下手に出なかっちでけんやろ」
姫子「そぎゃんことはわかってますばい。 そいけんちゃんとお願いしたんですよぉ……」
哩「……そいでアーチャーは何と?」
姫子「そいが魔術師程度に自分が手を煩わす必要などない、と全く興味ば持たなかんばい」
美子「そいは困ったんやけんね。 教会本部からキャスター討伐を発令させたと言うんに」
姫子「それにキャスターの仕業ば思われる昨晩から続く児童誘拐もそろそろ見過ごせる数じゃなかばい……」
哩「既に一角消費してしもうた姫子には、何っちしても討伐ん褒賞であっけん令呪ば獲得してほしかんやけど……」
姫子「あぎゃんプライドが高いだけで大したことのなか雀霊ば召喚するんやなかったばい……」
哩「大したことのなか……? 姫子、アーチャーのステータスばどげんなってると」
姫子「麻力ばアサシンやライダーを当然上回ってはいるけど、ばってん世界一ん雀霊としては物足りなかです」
哩「ふぅむ…… 美子、アンタから見たアーチャーはどぎゃんもんぞ?」
美子「そうですね、悪い麻力ば思わなかと三騎士クラスとしては……」
哩「なるほど。 なら二人とも、そん認識は改めておき」
姫子「どーいうことばい、ぶちょー?」
哩「……ウチはマスターそいぎなかからステータスとかはわからなか。そいけんこそあん雀霊ん異常さば感じるばい」
美子「……異常?」
哩「……ああ、そもそも雀霊の強さば麻力だけではなか」
姫子「確かそん雀霊ん知名度で能力ば変わるんですよね? 確かにアーチャーば有名ですけど……」
哩「悪名も知名度の内ばい。 そしてアーチャーの、いや新子憧のそれは桁違いぞ……」
美子「世界一の女、新子憧か……」
ガチャ
美子「……アーチャー? また勝手に出歩いていたと?」
アーチャー「どうもここの空気は私に合わないのよね。 ま、この部屋はそう悪くはないわね」
美子「本来この新道寺ば神聖な場所ばい。 お前みたかな罰当たりには居心地がさぞ悪かろう」
アーチャー「フン、口の利き方に気をつけなさいよ。全くレズの連中ったら」
美子「それよりアーチャー、姫子の指示ば何で聞かんと?」
アーチャー「ああ、キャスターを討伐するとかって話? そんなくだらない事、私がする必要ないでしょ」
美子「……お前だって聖牌ば欲しかろ? それに姫子も世界一ん雀霊として敬意ば払って接しているやろ」
アーチャー「まぁ確かに姫子から麻力供給を受け、忠義も誓われている身としてはそう無碍にはできないけどさ……」
美子「……他に何ぞ問題ばあると?」
アーチャー「つまらないのよね~ 聖牌の力で叶える願いがレズの根源への到達って馬鹿じゃないの?」
美子「……レズの根源への到達ば我々新道寺の宿願ぞ。 サーヴァント風情のお前には理解できんと」
アーチャー「へぇ、じゃあアンタの願いもレズの根源への到達なんだ」
美子「……いや、ウチには何も願いなんてなか。 ばってん、部長の指示に従い姫子の援護ばしてるだけばい」
アーチャー「……ふぅん」フッ
美子「……何がおかしか? そもそも聖牌がウチば選らんだこと自体間違えているばい」
アーチャー「いやいや、聖牌の選択も案外間違っていないんじゃないかなぁって思っただけよ」ニヤッ
――――
竜華「……以上がこの清澄一帯の地勢や。何か質問はある?」
怜「いや、ウチは特には。 セイバー、何か不明な点はあるか?」
セイバー「いえ、これといって何も。十分な説明だった」
怜「……竜華、他のマスター全員もキャスター討伐に向かうと見てええやろか?」
竜華「……まぁ間違いないやろな。 だがウチらにはアドバンテージがある」
泉「何を血迷ったかキャスターはセイバーのことを別人と勘違いしてつけ狙ってますからね」
竜華「……そや。怜はセイバーと攪乱に回り、ウチらは待ち構えてキャスターを追う他マスターを狙えばええ」
セイバー「……竜華、それでは足りない。 キャスターの被害は拡大する可能性もある、こちらから迎撃すべき」
怜「そやで竜華、現に誘拐されている人もおるんや、見過ごす訳にはいかんやろ?」
竜華「……キャスターは誰かが倒してくれる。こんな格好の機会を逃す手はあらへん」
セイバー「人質を見捨てる気なの? マスター、何で戦いを私に委ねてくれない!何故信用してくれないの!?」
怜「……なぁ竜華、キャスター以外とは休戦中やろ? その作戦はアカンと違うか」
竜華「……構わへんよ。 自分たちの身内からマスターを二人も参戦させとるあの監督役は信用できへん」
セイバー「……クッ」ギリッ
――――
怜「……なぁ竜華、アンタちょっとセイバーに冷たすぎんか?」
竜華「……構わへん。雀霊とかぬかしとる連中はあんな扱いで十分や」
怜「……」
竜華「もし……、もしウチが今ここで何もかも放り投げて逃げ出すと決めたら怜は一緒に来てくれるか? 」
怜「逃げられるんか、ウチら?」
竜華「逃げられる。今ならば まだ…… 邪魔する奴は殺す、それから先はウチの全てを怜のためだけに費やす!」
怜「嘘、それは嘘や……」ヒシッ
竜華「……!?」
怜「竜華は決して逃げれへん。聖牌を捨てた自分を、世界を救えなかった自分をアンタは決して許さへん……」
怜「ほんできっと、アンタ自身が最初で最後の断罪者として清水谷竜華を殺してまうわ……」
コンコン
泉「……失礼しますわ」ガチャ
竜華「……どないした、泉?」
泉「……清水谷部長、使い魔からキャスターを発見したと報告が。どうやら奴は龍門渕市付近に現れた様子です」
竜華「……龍門渕? それで現場はどないな様子や」
泉「それが人避けの結界も張らず何やら魔術の準備をしていて、一般人にも目撃され始めているとか……」
竜華「……なるほど、龍門渕は雀格ある土地や。確かに大麻術を行うにはもってこいや」
泉「それに周辺には児童が数人。 これは恐らく昨晩からの誘拐された者たちかと……」
怜「全く何を考えてるんや…… これ以上騒がれたら聖牌戦争の存続自体が危うくなるで」
泉「……どうします、清水谷部長? 事態は急を要するかと思いますで」
竜華「……しゃあない、予定は変更や。 怜はセイバーを連れて龍門渕に。ウチと泉も行くで」
――――
哩「……何てこつだ」
美子「アサシンの報告によると龍門渕一帯は濃ゆい霧に覆われとるも既に多くの野次馬が集まりちゅう状況たい」
哩「最早ウチらだけじゃ対処できんばい…… 麻術協会にも協力を要請せんと」
美子「……それではウチらも隠蔽工作ん手ば打ちましょか?」
哩「……うむ。そんで美子、姫子はどげんしたと?」
美子「報告したっところ直ちにアーチャーっち共に現場に向かおった」
哩「……そんで良か。 隠蔽工作ばウチに任せておき。美子は至急、姫子ん助勢ば行きんしゃい」
美子「わかったたい、部長」スッ
哩「全く、聖牌戦争の長か歴史にあってこげな失態ば前代未聞ばい……」ハァ
――――
怜「……セイバー、この禍々しい雀気は?」
セイバー「うん、キャスターが何らかの大麻術を遂行中なのは尋常じゃない雀気の放出から疑いの余地はない」
キャスター「……ん、よぅ来たな宮永咲」ニコッ
セイバー「誘拐した子供たちをどこへやったの、外道!?」
キャスター「ずいぶんな言われ様やなぁ…… ほれ、その子らはここにおるで」スッ
怜「クッ、盾に使うちゅう訳かいな……」
キャスター「例え宮永咲と言えど今夜は邪魔されたくないんでな、大人しゅう見ててな」
セイバー「貴様、何を企んでいる!?」
キャスター「今夜、この末原恭子が一握りの異能共に虐げられてきた魂を救済するんや!!」カッ
怜「麻力…… いや、それだけ違ぅ!もっと禍々しい物も混ざった力を形状化させるなんて可能なんか……」
セイバー「力の塊にキャスターが包まれていく……、奴は一体何を!?」
キャスター「ウチが率いる!ウチが統べる!! ウチら貶められた者の怨嗟の声を世界に響かせたるでッ!!」ゴゴゴ
セイバー「何と言う大きさ…… キャスターを取り込んだアレは麻力、いや怨念の塊か……」
ま、まさか本当に咲「聖牌戦争?」の作者?だとしたらマジで嬉しいんだが。
つかキャスターお前かよ!!そしてアーチャーそっちの方のツーサイドアップかい!
ライダー「ワハハー 何か凄いことになってるなぁ」
セイバー「ライダー!?」ゴッ
ライダー「よせよせー 今夜は休戦だセイバー、あんなの放っていたら大変なことになるだろー」
怜「そやな、確かに今はキャスターの方が遥かに脅威やで」
ライダー「それでここまで来る途中、他の連中にも共闘を呼び掛けたんだけどランサーしか応えてくれなくってなー」
セイバー「……怜?」
怜「……」コクッ
セイバー「わかった。今夜は共に戦おう、ライダー」
いちご「なぁ千里山、あのデカブツをやるええ方法はないんかのぅ?」
怜「……とにかく速攻や。アレは今はキャスターの麻力供給で現界しとるけど自給自足を始めたら手に負えんで」
ライダー「なるほどなー、アレは呪いの塊みたいな物だし一般人を取り込み始めたら笑えないなぁ」
いちご「でも肝心のキャスターはあの化け物の中じゃろ? どうすりゃぁええ」
ランサー「引きずり出す。それしかないでしょうね」
セイバー「ランサー?」
――――
アーチャー「……酷いわね、何なのあのキモいの?」
姫子「な、何なんかあい化物は…… 龍門渕の雀脈に集まった麻力を全て吸収してっと!?」
アーチャー「それにアイツらも…… 少しばかりは打てる連中だと思ったのに手緩いわねぇ」
姫子「恐らくあの者らは人質ば気にしよっと思わるっばい。何ば考えよっんだか……」
アーチャー「ハァ!? 馬鹿じゃないの?」
姫子「おっしゃる通りばい、王よ。 頭足りなか者共に今こそ世界一たる者ん威厳ば見せつける好機ですばい!」
アーチャー「……はぁ、何言ってんの姫子? 私はアンタの義理立てでここまで出向いてあげただけよ?」
姫子「へっ……? で、でも、王の庭ば荒らす害虫を放置すっ訳には……」ボソボソ
アーチャー「……まさかこんな見世物に呼んだあげく、その上この私に手を汚せなんて言うつもり?」ギロッ
姫子「王ん至宝たる天の鎖ならばキャスターば動きを戒め討ち果たすっのも容易いかと……」
アーチャー「……ふぅん、あんなキモいのにシズを使えと? 笑えない冗談ね、姫子」ゴゴゴ
姫子(クッ…… 令呪ば使って従わせっ方法もあっが、そん後アーチャーとの決裂ば避けられん。どうすっぎよか……)
――――
ランサー「つまり、あの怨念をコントロールしているのはキャスターの宝具でしょ?」
怜「そやね。いかにキャスターと言えどあれほどの物を麻力だけで制御できとるとは思えへん」
ランサー「ならキャスターをあの化け物から晒してさえくれればこの槍で……」ニヤッ
ライダー「しかしなぁ、あの分厚い装甲の中にいるキャスターを引きずり出す肝心の手がなぁ……」
セイバー(この右腕が使えさえすればあんな怪物…… この気配は!?)
姫子「……あいはバーサーカー? どげんしてこんな所に!?」
バーサーカー「■■&'■■ta■■■■=}*}■■■■*r■■■uu■!!?」
アーチャー「……へぇ、あの狂犬また性懲りもなく。 姫子、ちょっと遊んでくるわ」スッ
姫子「わ、わかりました。ご武運を……」
ランサー「……ったくあの狂戦士、こんな忙しい時に何しに来たのよ! ……って危なッ!?」サッ
ドォォンン
セイバー「この攻撃…… アーチャー、お前まで!?」
バーサーカー「■□□^~■■■|~*"■■■■□□□■?!」
アーチャー「……ん、そんなとこにいたの? 私はコイツと遊んでるんだから邪魔しないで」
ライダー「ワハハー どう考えても邪魔なのはお前たちの方なんだけどなぁー」
アーチャー「……そこの口開けっ放し女、アンタから先に始末してもいいのよ?」ギロッ
ライダー「これ以上話をややこしくしないでくれ~ ほら、お相手が待ってるぞー」
アーチャー「まぁいいわ、アンタたちはとっととあのキモいのを処理しときなさい!」
ランサー「好き勝手なことを言うわねぇ…… 貴女に言われなくてもそうするわよ」
アーチャー「ほらそこの狂犬、次会った時は容赦しないって言ったわよね……」ザシュ
バーサーカー「■□■■■■■■■□□■□■」ガキン
いちご「ふぅ…… もうあがぁな遠くへ行ったか、これでちぃとは落ち着ける」
怜「そうもいかへん…… 今は何とか制御しとる様やけどキャスターの麻力の無限ちゃうやろうしな」
ライダー「うん? どういうことだ、セイバーのマスター」
怜「……つまり麻力が尽きて制御できん様になったら次は街の人間を捕食して自給自足するで、あの化け物は」
ランサー「……なるほど。市街地に向かって進んでいるのはその為だったのね」
怜「そうなったらもう手に負えへん…… 絶対にここで仕留めなアカン!」
セイバー「……しかし装甲も問題だが人質もいる。あの子たちがいる限りうかつには手を出せない」
いちご「人質のぅ、可哀想じゃけど見捨てるしかないじゃろ……」
ランサー「……そうね、このまま手を拱いていたら被害は甚大になるばかりでしょうしね」
セイバー「なッ……!?」
ライダー「……どうしたセイバー? 嬢ちゃんの言うことは珍しく理に適ってるぞー」
いちご「珍しいとは何じゃ! ウチだってあの子らを見捨てとうて言うとるんじゃない。多数を救うため仕方ないじゃろ……」
ランサー「……それに人質を囲んでいるあの触手。下手に動いたらキャスターのことなら躊躇なく危害を加えるでしょうね」
セイバー「そんなことは分かっている! それでも目の前にある命を見捨てるなんてもう……」
いいカンジに予想裏切ってくれてて面白い
>>49
間違い修正
―――― そう、教会が最後まで待っていた7体目のサーヴァントがつい先日やっと召喚されたのだ
マホ「満たせ・満たせ・満たせ・満たせ…… あれっ、私いま何回言ったか忘れちゃいましたー」
マホ「たぶんちゃんと5回言いましたよね…… ええっと、その次は何でしたっけ??」
マホ「あーん、またどこまで読んだかわからなくなっちゃいましたー!! ……うぅ、さっきから手も痛いしメゲそうですぅ」
マホ「でも、このなんでも願い事が叶う聖牌がないとマホが麻雀強くなる方法なんて……」グスッ
マホ「よし! また最初からやり直して次こそはって、さっき描いた魔法陣が光って…… キャッ!?」
キャスター「……問うで? ウチを呼び、ウチを求めキャスターのクラスを憑代に現界させたアンタは誰や」
マホ「え??ええっ!? あの、その私は夢乃マホと言いまして高遠原小学校に通う麻雀部員で……」アタフタ
キャスター「……あ~、もぅええ契約は成立な。アンタが欲しがっとる聖牌はウチも欲しいから頑張ろうな」
マホ「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!!」ペッコリン
キャスター「ほぅ、ええ子やなぁ。 ところでアンタ、ウチの体が重いちゅうか何か調子悪いんやけど心当たりある?」
マホ「ふぇ?」
怜「セイバー…… ほ、ほな、長距離からの攻撃で触手を討ち払って救出するってのどうや?」
ランサー「あの厳重な包囲を取り除くほどの火力となると人質だけ無傷ってのは難しいわね……」
ライダー「……まぁ策がない訳でもないぞー」
いちご「どがぁな作戦じゃ? 今は一刻も争うんじゃ言ぅだけ言うてみぃ」
ライダー「私の宝具を使いキャスターだけ結界に引き入れる。その間に人質を助け、次の策を練る時間稼ぎはできるだろー?」
セイバー「……問題はない。けどあんな巨体を引き込む程の結界なんて魔術師でもない貴女にできるの?」
ライダー「任せろー ……まぁ、あれだけ大きいの引きずり込むとなると保って数分って所だろうなぁー」
いちご「単騎でそれだけ足止めできりゃぁ十分過ぎるわ。 ……本当に信じていいんか?」
ライダー「ああ…… でも、嬢ちゃんは危険だからここに置いていく。後は頼んだぞー」
いちご「……ライダー?」
ライダー「一度結界を張ったら外の様子はわからないからなー 何かあったら強く念じるんだ。その時は伝令を送るぞー」ワハハー
――――
リチャ「止めろ、止めてくれバーサーカー……」ガハッ
バーサーカー「■□■■■■□□■■■□■□■」
アーチャー「この前の勢いはどうしたの? 狗なら狗らしくもっと素早く逃げ回ったらァ?」
バーサーカー「■■■□■■■■■■■■■□■!!」
リチャ「こ、これ以上暴れたら……、俺の…体が……」ドサッ
アーチャー「ん、光……? あのキモいのも消えた……」
姫子「……今のはライダーのサーヴァント? 一体何ばしたっと」
――――
いちご「げに一瞬であの化け物が消えた…… ライダーが言うとった結界ってまさか……」
セイバー「怜、人質は全員無事救えた。子供たちは向こう岸に置いてきた」
怜「……良かった、これで残る障壁はあと一つ。あの装甲の奥に潜むキャスターをどうするかや」
~~~
泉「やはり対岸に見える人影は人質に取られていた子供たちのようですわ……」
竜華「……この状況で人質の命を優先かいな。全くあのサーヴァント様は何が大事なのかわかってんのか」
泉「……部長」
竜華「まぁええ…… これでウチらの準備がやっと役に立つで」ガサッ
――――
いちご「……やっぱりランサーの抗麻力の槍で本体をブッ刺すしか方法はないんかのぅ」
prrrrrrrrrrr
怜「電話!?」
いちご「なッ!? こないな時ぐらい電源切っておかんかい千里山ッ!!」バッ
竜華『怜か……?』
いちご『あン? ウチはちゃちゃのんじゃ!いまクソ忙しいから後にせぇ!!』
竜華『……ん? アンタはライダーのマスターか。ちょうどええ、アンタにも話がある』
いちご『ふぇ……?? アンタは誰じゃ!?』
竜華『そんなことはどうでもええ…… それよりキャスターを消し去ったのはアンタのサーヴァントの仕業やな?』
いちご『そ、そうじゃけど。一応……』
竜華『質問や。キャスターを消したのは結界やろ? なら結界を解除した時に中身を狙った場所に出せるか?』
いちご『……わからん。ちぃと待ちや』グッ
竜華『……?』
佳織「鶴賀学園麻雀部員、妹尾佳織。 召喚に従い智美ちゃ……、じゃなくって部長の代わりとしてやって来ました」スッ
いちご「よ、よろしぅ…… アンタに聞くけどライダーの結界は狙った位置で解除できるんかのぅ?」
佳織「多分できます。 ……けど結界内の状況は非常に危険で、事は一刻を争います。決断はお早く願います」
いちご『そげなことわかってるわ! 出来る!出来る言うとる!! ……多分じゃが』
竜華『わかった……。 後でウチがタイミングを見計らって信号弾を打ち上げる。その真下でキャスターを解放せえ』
竜華『それともう一つ、その場にいるランサーに言うてやり。 セイバーの右手には全体系宝具がある、とな……』ガチャ
いちご『はぁ……!?』ツーツー
ランサー「どうかしたの?」
いちご「……いや、アンタに言伝があった。セイバーの右手には全体系宝具だとか何とか」
セイバー「……クッ」
――――
ランサー「……それは本当なの、セイバー? もしかしてその宝具を使えばキャスターを一撃で倒せたりするの?」
セイバー「可能、だと思う…… でもランサー、貴女と打って負ったこの傷は誇りであって枷ではない。気にしないで」
ランサー「フッ…… ねぇセイバー、私はねキャスターが許せないの。彼女は雀士の誇りをかけた聖牌戦争を汚し―――」
ランサー「そして関係ない人まで巻き込むあの姿勢。あれは許しちゃいけない悪よ」ガチャ
セイバー「ランサー、それは駄目!」
ランサー「今一番大切なのは私たちの信じた雀士の道。……そうでしょ、宮永さん?」バキッ
怜「……風が、セイバーの右腕に戻っていく」
セイバー「……わかった。 貴女の誇りを背負い、今こそこの右腕に勝利を誓う!」ゴッ
ランサー「この眩い輝き…… これがあの聖剣とまで謳われた伝説の……」
竜華『……』スッ
いちご「照明弾が上がった!? あそこじゃ、あそこに再出現させるんじゃ!!」
佳織「わ、分かりました」シュン
ズズンッ
ライダー「ったくいつまで手間取ってるんだー ……おっ、あの光はセイバー!?」
怜「―――― 輝けるかの右腕こそは、過去現在未来を通じ 」
いちご「せ、千里山のどうしたんじゃ急に!?」
怜「―――― 雀卓に散っていく全ての雀士達が今際の際に抱く、悲しくも尊き夢 」
バーサーカー「■■&t■■`@a■■■■=/■■■■*]■■■r&u■!?」
ランサー「貴女、どうやら随分セイバーと訳ありの様ね…… けど今は邪魔しないで貰えるかしら?」ガキン
怜「―――― その意思を誇りと掲げその信義を貫けと正し 」
アーチャー「へぇ…… セイバー、貴女の雀霊としての輝きを見せて貰いましょうか」ニヤッ
怜「―――― 今、常勝の雀士は高らかに手に取る奇跡の真名を謳う 」
怜「―――― 其は…… 」
セイバー「………約束された勝利の右腕ッ!!」ギュルルルッッッ!!
―――― 怨嗟の叫びが途絶え、周囲を幾重にも覆う怨霊の向こうから光が漏れていた。
我身に何が起きているのか理解できていなかったが、どこか懐かしく感じるその光に不思議と安らぎを感じていた。
キャスター「……この光は?」
咲『……』ニコッ
キャスター「間違いあらへん…… この輝き、あのIH決勝で宮永と共に浴びた祝福の光……」
咲『末原さん、またいっしょに麻雀を楽しもう』スッ
―――― 彼女がたった一つ抱いた願い。再会を切望していた女性が眩い光の向こうから手を差し伸べていた。
頬を伝う一条の涙。その感覚がかって雀霊として世界と契約する以前の、まだ末原恭子であった頃の記憶を蘇らせた。
そうだった。まだ巡り会えたなら今度こそ嘆きや恨みではなく、抱いた憧れと賞賛を伝えよう。そう胸に刻んだはずだった。
キャスター「ウチは…………、一体………………」
ドオオオオオオオンッ!!
マホ「あの光、キャスターさん……?」
マホ「帰ってきたらまた麻雀を教えてくれるって約束したじゃないですかぁ……」ウワァァァン
遠い山の向こうから空に向かい一条の光が昇り、彼女がその場にいるかのように抱いていた麻導書が崩れていく。
令呪からは何も熱が伝わらない。そして、ただの灰塵となった麻導書は腕の隙間から零れ、やがて風の中に消えていった。
――――
リチャ「し、し……、の…………」ピクピク
美子(この男の衰弱具合と崩壊した肉体。 これは明らかに急激な麻力の向上による負担に耐え切れなくなった物だ)
美子(キャスター消滅後、バーサーカーの不可解な退場も麻力が途絶えたからだとすれば合点がいく)
美子(この男がバーサーカーのマスターなのは明白。なのに私は……)
美子(放置しているだけで死ぬ筈だった敵を助けるどころか、こうして白築の本拠地まで届けるなど何故……)
ナナ「もしかして惚れちゃった? コイツ、私に似て顔だけは整ってるしねぇ」ニヤッ
美子「何者ぞ……」チャキン
ナナ「恐い怖い。ガキとは言え新道寺のレズをからかうのも命がけねぇ」クックック
美子「白築ナナ、か……?」
ナナ「ええ…… でも良いのぉ、こんなのとは言え一応はアンタたちの敵でしょ?」
ナナ「それをご丁寧に命を助けて頂けるばかりかお届けに上がってくださるなんて。 ……で、興味が沸いたって訳」
――――
美子「……その口ぶり、白築はこん男の勝利に懸けとるのやないんか?」
ナナ「そうねぇ……、耕介が悶え苦しむのを見ているのは楽しいし。 白築の勝利か耕介の無様な末路か、悩みどこねぇ」クククッ
美子「フン…… アンタは肉親ん苦悩ばそこまで見ていて楽しかか?」
ナナ「ええ。 ……むしろアンタみたいな子なら分かってくれるものだと思ってたんだけどなぁ」
美子「……何?」ギリッ
ナナ「アンタからは私と同じ臭いがするんだけどぉ。 ……人間の苦しみを是とし悦びとする腐った蟲の臭いが」ニタァ
美子「……ッ!!」シュッ
ナナ「……」スカッ
美子「なッ……!?」
ナナ『まだまだ青いわねぇ…… また何処かで会いましょ、新道寺のお嬢ちゃん』
ナナ『―――― 次に会う時には私と五分で立ち会える様、それまで自分の本性と向き合ってなさい』アハハッ
美子「……ウチん本性、だと」
そうかな
――――
哩「お待たせして申し訳なか。流石に今夜は少々取り込んどって……」
華菜「フフッ、事が事だけに仕方ないし…… それより監査役さん、申告したキャスター討伐褒賞の件はどうなったし?」
哩「令呪の件ばいね…… 確かに監視係からもランサーが重要な活躍ばした報告ば上がっとーとよ」
華菜「なら華菜ちゃんにも令呪を譲り受ける権利はあるんだろ! 早く寄越すし!!」
哩「……そいばってんキャスターのマスターについて未だ生死不明で討伐ば完了したとも判断ができなかんばい」イラッ
華菜「どうせ死傷者の誰かがマスターなんだろ? 実際もうキャスターはいなんだし、討伐なんてもう終わってるって!」
哩「……わかったばい。では令呪一角ば授けるばってん池田殿、手を出してくんしゃい」イラッ
華菜「え~、たった一角? 華菜ちゃんがいなかったらもっと大変なことになってたのにケチだなぁ」
哩「―――― 皆この杯から飲め。これはその罪が赦されるようにと多くの人の為に流す私の血。契約の血である」スゥーッ
華菜「ククッ、アハハハッ! 戻った!令呪が元に戻ったし!!」
哩「……それでは池田殿、引き続きマスターとして誇りある戦いば」
華菜「ああ、勿論だし! ……それで監査役さん、オマエにはもう一つ仕事があるんだし」パンッ
哩「……んッ!?」ドタッ
華菜「……他の連中に新たな令呪を獲得させるとでも? そんなの華菜ちゃんが見逃す訳ないだろ」ニヤッ
――――
竜華『欲の皮を突っ張らせ過ぎやで、池田華菜…… 泉、風越の動きは予想通りや。次の行動に移りや』ザザッ
――――
怜「このままランサーと戦ってこいってホンマか!?」
泉「はい、これは清水谷部長の指示です」
怜「そやかて今夜のセイバーはキャスターと戦ってむっちゃ麻力を消耗しとるんやで? そんなん無理や!」
泉「それは承知してます。けど清水谷部長の説明ですと逆に好機って話ですわ」
セイバー「……好機?」
泉「はい。 今夜はもう戦いはない、どこの陣営をそう思ってる。ならば対局に邪魔も入らんと正面の敵に集中できると……」
怜「そらそうかもしれへんけど…… セイバー、アンタはどない思う?」
セイバー「確かに消耗しているのは事実、けどそれは相手も同じこと。それに……」
怜「それに……?」
セイバー「竜華の読みは恐らく正しい。ランサーと雀士として正々堂々と打てるのは私としても望むべき機会」
怜「……まぁセイバーがそう言うなら構わんけど」
泉「ではお二人はこのランサー陣営のココに向かってください。ほな自分も部長の指示があるんで後ほど」スッ
――――
美穂子「うえのさん、こんやのたたかいおみごとでした」
ランサー「……はい、お褒めの言葉痛み入ります。 ところで福路様、マスターの姿が見えませんがどこへ?」
美穂子「ますたー? ああ、かなでしたらきゃすたーとうばつのほうしょうをうけとりにきょうかいにいきました」
美穂子(華菜の謀略に同意したのもこうして上埜さんと二人きりになる時間が欲しかったから、なんて言えないわね)
ランサー「なぜ御一人で行動なんて危険な真似を!? どうして福路様は御止めになさらなかった!!」
美穂子「えっ!? そ、そうよね。ききいしきがたりなかったわよね、ごめんなさいごめんなさい」オロオロ
ランサー「……い、いえ福路様を御咎めするつもりでは」
美穂子「でもうえのさんにそんなふうにいわれたらわたしは」グスッ
ランサー「失礼しました…… マスターの身を案じるが余り無礼が過ぎました、御許しください」ペッコリン
美穂子「いいえわるいのはぜんぶわたしです!うえのさんがあやまるひつようなんてありませんからかおをあげてください」
ランサー「恐れ入ります。それでは私はこれよりマスターの警護に向かいますので福路様はここから……!?」
美穂子「まってください!うえのさんはわたしをおいていくというのですか!?」
ランサー(この眼、やはり同じ眼だ…… あの時の洋榎と同じ……)
『久、ウチを連れて逃げてぇな!! もうウチにはアンタしかおらんのや!!』
『無茶を言わないで洋榎、私だって貴女を愛しているわ。でも……』
『……ええわ。久に捨てられたら生きてる意味なんてあらへん、いっそ道頓堀にでも飛び込んで……』
『待って洋榎! わかった、わかったから落ち着いて!! 大丈夫、私が貴女を置いて行く訳ないでしょ』
『ホンマか!? やっぱ腹割って話せば人間分かり合えるもんや…… 久……?』
『…………えっ?』ザクッ
『ざ、ざまあ見さらせや、おねーちゃんを惑わすこの泥棒猫がァッ!!』
『絹ッ、アンタ何してんねん!? 久、しっかりせぇや!!救急車、救急車や!!!』
『……これで、これで終いや!ウチとおねーちゃんを邪魔する奴はみぃんな消したったで!! あはははははは』
『久、しっかりせぇや!! なぁ、目開けてぇな!!』
『痛い…、寒い…… 何よ、何なのよコレ? 嘘でしょ、こんなの嘘でしょ? こん……なのって……』
美穂子「うえのさん……?」
ランサー「えっ!? ……失礼しました。確かに福路様は御不安かもしれませんがここに居る限り安全は…… これは?」ピクッ
美穂子「どうかしましたか?」
ランサー「こちらに真っ直ぐ向かってくるサーヴァントが……、この気配はセイバー!? どうしてここが?」
美穂子「どういうことでしょう……」
ランサー「わかりません…… ですがセイバーの闘気には澱みなく、謀を仕掛けに来たとは思えません」
美穂子「なるほど。このかぜこしにしょうめんからいどんでくるのならこばむわけにはいきませんね」スッ
ランサー「福路様、一体何を……?」
美穂子「きまっているじゃないですか。かながいないいま、ますたーだいりとしてこのわたしがうえのさんのおそばで……」
ランサー「なりません! 迎撃の命は了承しましたがマスター不在の今だからこそ御身にはより一層御自重を頂かなくては」
美穂子「ですからこそわたしはあなたのおそばで……」
ランサー「いいえ、いざ対局となればそこは死地となり戦いに巻き込まれる恐れもあります。福路様はここより御検分を」
美穂子「わかりました…… おもにとなっててをにぶらせるわけにはいきませんからね。どうかごぶうんを」
ランサー「……御理解、感謝致します。それでは」スッ
――――
セイバー「……確かに竜華の情報通り。ここには麻力結界の痕跡がある」
怜「でも妙やなぁ、麻力が供給されとらんから結界が起動してへん。マスターがいないっちゅうことはランサーも……」
ランサー「……」
怜「……おった。どういうことやろ?」
ランサー「貴女、どうしてここが?」
セイバー「私のマス…… 味方がここが貴女の拠点だと調べ上げてくれた」
ランサー「……そう。それでまさか世間話でもしに来たって訳じゃないでしょ、セイバー」
セイバー「……」コクッ
ランサー「でも、いいの? 貴女、キャスターにあれだけの大技を出したのよ?相当疲れていると思うんだけど」
セイバー「それはどのサーヴァントも同じ。今夜はこれ以上の荒事を避けて守りに徹しているはず……」
セイバー「……だからこそ余計な横槍が入る心配もない。私たちが堂々と対局するには今夜を逃す手はないと思う」ニッ
ランサー「フフッ…… そんな素敵なお誘い、断る訳ないでしょ? 喜んで打たせて貰うわ」ニヤッ
セイバー「良かった。……じゃあ始めようか」
ランサー「てぇええぇいッ!!」カキン
セイバー「……くうっ!!」カキン
美穂子(うえのさん、あんなにうれしそうなかおをして…… あのおんなとのたいきょくがそんなにもたのしいの?)ギリッ
怜(セイバーが押されとる…… やっぱりランサーはむっちゃ強い、けどここまで差があったんか……)
ランサー(この手の軽さは明らかに異常…… 原因はやっぱりそこね……)
ランサー「……セイバー、どういうことかしら?」
セイバー「……?」
ランサー「右手を使わずこの私に勝てるとでも? だとしたら随分と舐められたものね」ギロッ
セイバー「勘違いされたら困る。 今ここで右手を使ったらきっと貴女に気後れしちゃう……」
セイバー「それはこれほど腕の立つ雀士との対局では致命的な不覚になる。だからこそ……」
ランサー「宮永…さん……?」
セイバー「全力で貴女をゴッ倒すにもこれが私にとって最善の策だから」ゴッ
ランサー「アハハッ、全く貴女ったら…… お見事ねチャンピオン、私は宮永さんと打てて良かった」ニコッ
――――
泉『……清水谷部長、いま予定ポイントに入りましたわ。セイバーたちも予想通り一騎打ちに集中してます』ザザッ
竜華『……そっか、こっちも順調に目標を捕捉しとる。 ほな予定通り頼むで』ザッ
泉『了解。では早速行動に移ります……』スッ
美穂子「……? 誰!?そこにいるのは華菜なの?」
――――
華菜(……この令呪の熱、間違いなくランサーは戦闘中だ。麻力の高まりからすると戦場はたぶん本拠地だし!)
華菜「クソっ、よりにもよって華菜ちゃんが居ない時に襲撃されるなんて最悪のタイミングだし!」ダダッ
華菜(こんなことになるならキャプテンも無理にでもいっしょに教会に連れて行くべきだったし! あ~もうッ!!)
華菜「いや、後悔したって今更仕方ないし! そんなことよりもう到着するんだし自分の目で……」ピタッ
華菜(……待てよ、こんな状況に陥ったのは偶然なのか? もしこれが敵の計算通りだとしたら……)ゾクッ
竜華「……さすがに名門風越の部長や。察しがええな」パスッ
華菜「銃撃……!? 一体どこのどいつだし、姿を見せろ卑怯者ッ!!」
竜華「……」スッ
華菜「あれは千里山の……? そうかアイツか、あの雀士殺しが黒幕だっ…… ―――― キャプ……テン……?」
美穂子「……」
華菜(さ、最悪だ…… よりにもよってあの外道にキャプテンが……)
竜華「……」シー
華菜(声を立てるな、ってことか…… アイツ、一体何を企んで……)
竜華「……」クイッ
華菜(付いてこいってことか…… こんな傍で華菜ちゃんたちが大ピンチだってのにランサーの馬鹿は全然気づいてないし!)
竜華「……」スッ
華菜(これは……、自己強制証明!? 雀士の世界において決して違約できない取り決めを結ぶ際に用いられる麻術契約……)
―――― 束縛術式 対象:清水谷竜華
清水谷の刻印が命ず、下記条件の成就を前提とし、誓約は戒律となりて例外なく対象を縛るものなり
誓約、清水谷五代継承者竜華に対し、池田華菜並びに福路美穂子の両人を対象とした殺害、傷害の意図及び行為を永久に禁則とする
―――― 条件…………
華菜(確かにコレを満たせば華菜ちゃんとキャプテンは助かる…… でもこの条件だと私たちの聖牌戦争が終わっちゃうし……)
美穂子「……ううっ」
華菜(キャプテン……)クッ
竜華「……」カチャ
華菜「わかったし…… ―――― …………ランサーよ、令呪をもって命ず。自決するし!!」
グサッ
怜「なッ……!!」
セイバー「……えっ!?」
ランサー「…………え?」ガハッ
竜華「残る全ての令呪を費やしてサーバントを自決させる。確かに条件は満たされた……」
ランサー「アンタたちはそんなにも、そんなにも勝ちたいの……? そうまでして聖杯がほしいのッッ!!」ギロッ
セイバー「わ、私は……」
ランサー「私が…… この私がたった1つ抱いた願い、雀士の誇りをかけた対局……」
ランサー「それさえ踏み躙って、アンタたちは何も恥じることもないのッ!?」クワッ
華菜「…………」シンダネコノメ
ランサー「許さない……、絶対にアンタたちを許さない…… 雀士の誇りを貶めた亡者共は呪われるがいい……」
ランサー「聖牌に呪いを!その願望に災いをォォッ!! いつか地獄で私の怒りを、憎しみを思い出しなさいッッ!!」スゥーッ
セイバー「ランサー……」
華菜「……これで契約は成立したんだな」
竜華「ああ、成立や。もうウチにはアンタらを殺せない…… ―――― ウチにはな」
パスッパスッ
泉「……」カチャ
セイバー「……!?」
怜「竜華……、アンタ……!?」
美穂子「 」ドサッ
華菜「カ…、クァッ…… こ、殺せ…… ひとおもいに殺して…くれし……」ピクピク
竜華「……スマンな、それはウチにはできない契約や」クルッ
泉「……」パスン
華菜「 」ドタッ
セイバー「……清水谷竜華、今ようやくお前を外道と理解できた。今まで怜の言葉を信じて疑わなかった私が馬鹿だった」
セイバー「……けどもう、お前が聖牌を持って世界を救うなど信じられない! 答えて、お前が聖牌を求める真の理由を!!」
怜「……答えや、竜華。いくらなんでも今回はアンタにも説明の義務があるで」
竜華「そう言えばウチの殺し方を怜に見せるのはこれが始めてやったな」
竜華「マスターを殺すだけじゃ意味あらへん。他のマスターがサーヴァントと契約する可能性があるからや……」
怜「なぁ竜華、ウチじゃなくてセイバーに話しぃや…… セイバーにはアンタの言葉が必要や!」
竜華「いいや、雀士の誇りだ名誉だのそんな物を嬉々として持て囃す連中に何を語り聞かせても無駄や」
セイバー「へぇ、私の目の前で麻雀道を穢すんだ。外道のくせに!」ギロッ
竜華「雀士なんぞに世界は救えへん……」
竜華「こいつらはな、麻雀に正邪があると説き、さも雀卓に尊いものがあるかの様に演出して見せてるだけや!」
セイバー「例え命のやり取りになろうともそこにはルールがあり理念がある。麻雀は無秩序な殺し合いではない!」
竜華「ほら、これや…… 聞いての通りや怜、この雀霊様はよりにもよって麻雀が平和な競技か何かだと思ってるで」
竜華「冗談やない! あんなんは敗者の痛みの上にしかなり立たん、争いを招くだけの装置や!!」
竜華「雀霊様なんて崇められてるアホ共の正体はな、勝利と言う名の罪科を重ねた只の厄介者に過ぎんわッ!!」
怜「……ほな竜華、アンタがセイバーに屈辱を与えるんは雀霊に対する憎しみのせいか?」
竜華「フッ、まさかそんな私情は交えへんわ。ウチは聖牌を勝ち取り世界を救う……」
竜華「そのための戦いに最善手で臨んでいるだけや。 正義で世界は救えへん、そんなものにウチは全く興味はない……」
セイバー「……わかっているの、竜華?」
セイバー「悪いことを憎むから悪いことも厭わない。そんなことじゃ何も終わらない、何も解決しない……」
竜華「終わらぬ連鎖を終わらせる、それを果たしうるのが聖牌や……」ギロッ
竜華「そのために、例えこの世の全ての悪を担うことになっても…… ―――― ウチは構わんわ」スッ
――――
美子「……気分はどげんと?」
姫子「ちかっとは落ち着いたばい…… ばってん、ぶちょーば殺されたなんてまだ信じられんばい」
美子「ウチも同じばい、なしてこぎゃんことばなったのか…… 今となっては痛恨の極みばい」
アーチャー「……」ニヤッ
姫子「……そいでぶちょーば手ぇかけた奴について何かわかったばい?」
美子「はい。銃痕と麻術痕跡ん調査結果から風越のマスター、池田華菜の仕業で間違いないかと……」
美子「そいばってん放ったアサシンによっと、昨晩遅くにセイバーとランサーの激突があったと報告が」
アーチャー「……へぇ」クスッ
美子「……そいによりランサーば脱落、マスターの池田華菜と他関係者一名ん死亡が確認できたばい」
姫子「……そっか。ぶちょーの仇も取れんと情けなかね」ワナワナ
美子「お気持ちは分かっと。やけど今は貴女がこん新道寺の頭首なのですから大局ば見失ったら駄目ばい」
姫子「わかっとーとよ。 こうなったからには何っちしてもぶちょーの悲願でもあったこん聖牌戦争に勝たんと……」
姫子「……そのためにも安河内先輩にはこいまで通りウチば支えてほしかばい」
美子「お任せくんしゃい。そしたら失礼するけんね……」スッ
バタン
美子「……ん?」
アーチャー「……」ニヤッ
美子「…………」スッ
アーチャー「何で姫子に報告しなかったの?」
美子「……何のことばい?」ピタッ
アーチャー「……ああ、その腕にある莫大な遺産は独り占めって訳ね。別に私には関係ない話だからいいけどさ」ニヤリ
美子「……」ギロッ
――――
美子「……只今戻ったばい。部長?」
美子(こん臭いは血……。いや、僅かだが硝煙の残り香もあっと…… 待ち伏せの気配ばなかがまさか……!?)
哩「 」
美子「……部長!? ……余沢令呪が一角足りん」
美子「つまり、令呪が譲渡されん後、他んマスターに分配ば断つべく犯人は凶行に及んだか……」
美子(……と、なると大凡の目星ば付くばい。ばってん、あん白水哩が何も残さんと死ぬ訳なか)キョロッ
美子(やはりあったばい…… ER124?ローマ書1章24節か……)
美子「…………故に神は彼らが心の欲情にかられ、自分の体を互に辱めて、汚すままに任せられた」スゥーッ
美子(令呪が腕に……!? 部長はウチがこの令呪ば預かるに値するレズと信じて逝ったと……)
あれ反映してない
――――
アーチャー「哀れな部長ね、アンタもレズと信じて疑わずに逝ったのだから。 いや、むしろそれが救いかしら?」クスクス
美子「……」キッ
アーチャー「級友の、友の死に何の感情も抱かないの? 殺されたのよ、少しは悲しそうな顔ぐらい浮かべたらどう?」
美子「……ああ、悔しくてならんばい」スッ
アーチャー「悔しいんだ。 ……でもそれって自分の手で殺められなかったからじゃないの?」ニタァ
美子「……」スタスタッ
――――
いちご(……ここは、どこじゃ?)
いちご(これは潮騒かのぅ? そしてこの潮の香り……、えらく靄がかかっとるが海岸かのぅ、ここは)
いちご(……ずいぶん静かな海じゃのぅ。 足跡一つない砂浜…… 誰もおらんのか、この海には?)
いちご(……ん、やっぱ先客がおったか。 あれは……、どっかで見た覚えあるが誰じゃったかのぅ)
いちご(靄がえらく濃くてよう見えんが…… ん……、全員ライダーと同じ制服を着とるな)
いちご(あの眼鏡は…… そうじゃ、確かこの前見たライダーの伝令で来た妹尾なんとかと違うんか?)
いちご(それじゃあこりゃぁライダーの生前の記憶なんか? でもあの4人の中にライダーがおらんのは何故じゃろ……)
――――
いちご「……ん、何じゃ夢じゃったか。 やけに現実感があったが、あれは何だったんじゃろうかのぅ……」
いちご「おいライダー? ……ライダー、おらんのか? アイツ、また勝手にどこうろつきまわっとるんじゃ!」
\ ジャラジャラ / \ ワハハ~ それロンだぞ~ / \ ジャラジャラ /
いちご「はいいいぃっ?!」
男A「いやぁ~、お嬢ちゃんなかなか気持ちいい打ち方するねぇ」
ライダー「ワハハ~ やっぱり麻雀は牌効率なんかよりもロマン優先!それが楽しむ秘訣だぞ~」
男B「君はいちごちゃんのお友達かい? ホームシックなのか最近は元気ないって聞いてたから心配してたんだよ」
ライダー「いやいや、新しい環境に溶け込んでいないだけで馴染めばすぐに元気に戻りますから安心するんだぞー」
男C「そっかそうか、まぁ君みたいな子がお友達なら余計な心配だったかな」
ライダー「ワハハ、あいつのことは任せてくれ~ 根は真っ直ぐでいい子だからすぐに学校のアイドルにもなれるぞ~」
いちご「……あの馬鹿、普通におっさん達と馴染んどる」
――――
いちご「だから勝手に実体化するな言うとるじゃろうがッ!!」
ライダー「ワハハ~、まぁそう堅いことを言うな。 せっかく現世に召喚されたんだから楽しまないとなぁ~」
いちご「……ったく、聖牌戦争の真っ最中だっ言うのに緊張感が無さすぎじゃお前は!」
ライダー「ワハハ 戦いがない間に英気を養うのも大事な仕事なんだぞ~」
いちご「お前は英気を養いすぎじゃろ……」
ライダー「……あ~、それより嬢ちゃんに報告しておかないとなぁ。昨晩ランサーが脱落したぞ」
いちご「なんじゃと!? それじゃあマスターの池田部長も……?」
ライダー「……ああ、死んだ。 どうした嬢ちゃん、今更ながら聖牌戦争の実感が沸いて怖くなったかー?」
いちご「……ああ、虫の好かん奴じゃったが死んでしもぉたらそら悲しいし恐いわ」
ライダー「……ふむ、嬢ちゃんは普段からそう素直だったら今頃もっといい雀士になってただろうなぁ。ワハハー」
いちご「……何がええ雀士じゃ。所詮ウチなんて広島の田舎学校で部長でもしとるんのが関の山じゃったんじゃろ」
ライダー「自分の弱さを、麻雀の怖さをわかってるのはそれだけ物が見えているってことだろ~」
いちご「そがぁなんたぁ違う。ウチはただの臆病者じゃ……」
ライダー「大丈夫だって! 嬢ちゃんは部長として部員を導き、全国制覇するのも夢じゃない資質があるぞー」
いちご「な、何を知ったような口を叩くじゃ、このアホがッ!! お前は全国制覇を成し遂げて、雀霊にもなったんじゃろ?」
いちご「そんな強ぉ雀士で頼れる部長だったお前なんかに、弱くて見下されとるワシの気持ちがわかってたまるかッ!!」
ライダー「ん……? 別に私は強くなんかなかったぞ~」
いちご「はぁ?」
ライダー「そうだなぁ~ むしろ私はあの面子の中で一番弱かったかもしれないぞ~」
いちご「……何を言うとるんじゃお前は? ワシへの同情のつもりか」
ライダー「ワハハ、その僻み根性は何とかしないとなぁ~ 同情でも謙遜でもない。私が大したことなかったのは本当だぞ~」
いちご「……じゃあ、どうやって全国制覇なんてできたんじゃ?」
ライダー「そりゃあ皆の力があったからに決まってるだろ~ ワハハー」
いちご「んじゃ何か? お前は仲間がむっちゃ強ぅかったから勝てた、ただツイてただけの部長じゃったんかぁ?」
ライダー「まぁ確かに運もあっただろうけど、それだけじゃ勝ち続けるのは無理だなぁ~ ワハハ」
いちご「訳がわからん! お前が雀霊にまでなれた理由なんて全然わからんぞ!?」
ライダー「うーん、今の嬢ちゃんじゃ仕方ないかぁ。 まぁいい、今日は塞ぎ込んでいる連中の面倒をまとめて見てやるかー」
いちご「塞ぎ込んでいる連中……?」
――――
怜「セイバー、落ち着いたか?」
セイバー「……うん。あれからずっと竜華の言葉を思い返していた」
怜「……」
セイバー「彼女の言葉には正義を求めた者だけが抱く怒りや嘆き、そして絶望があった……」
セイバー「でも、それでも…… 竜華の考えは私には受け入れ難い……」
怜「ごめんな。でも今のウチらにはセイバーの力が必要なんや!例え竜華を信じられへんでもウチを信じてもらえんか?」
セイバー「……怜。 ……ッ!?」ピクッ
怜「どないした、セイバー?」
セイバー「この排気音、それに何も憚らず真っ直ぐここに向かってくる気配…… 恐らくライダーが」
怜「ライダー!? 拠点がバレてたんか!?」
セイバー「どうやらそうみたい。怜、どうする?」
怜「とりあえず出方待ちやな。竜華たちが不在のこんな時に攻められるのは予想外やったで……」
ドォーン
ライダー「ワーハハハハー おー、さすがは千里山。ずいぶんと小洒落た拠点だなぁー」ブロロー
いちご「オマエ、玄関前に停めろって言っただろ! なのにどうして玄関ぶち抜くんじゃ!!」
セイバー「ライダー……? なに、その格好は?」
ライダー「ん、どうしたセイバー? オマエこそこんな時間に制服なんて。対局でもするつもりだったのかー?」
怜「へっ……?」
ライダー「昨日あれから色々あったんだろー? どうせオマエのことだ、それで凹んでると思ってなー」
ライダー「まぁ積もる話もあるし、今日はこうして気分転換に誘いに来たんだぞ~」
セイバー「気分……」キョトン
怜「転換……?」キョトン
ライダー「おー、こんないい夜は最高だぞー」ワハハー
――――
ライダー「いやぁ~ 私がいた世界と全くいっしょだなぁ」
セイバー「怜、怜ッ! 喋っちゃ駄目、意識をしっかり持って!!」
怜「……か、川の向こうで子供の時に飼っとったポチがおる。 アハハ、そっちはずいぶん楽しそうやなぁ」プルプル
セイバー「そっちに行ったらダメッ!! ライダー、この誘いは私たちを葬ろうとした罠だったのッ!!」ギリッ
ライダー「い、いやぁ、ただのドライブのつもりだったんだけどなぁ~ ワハハー」
いちご「……な、何がただのドライブじゃ! まだ命があるだけ十分に奇跡じゃ、このどア…… うげッ」ゲロゲロ
ライダー「ん~~、まぁ久しぶりの峠だったからちょっとだけ運転が荒くなったかもしれないなぁー」ワハハー
怜「セ、セイバー、ウチならもう大丈夫や…… ほんま酷い目にあったで」ハァハァ
セイバー「良かった…… でも怜、だいぶ疲れている様子だし何か飲み物でもいる?」
ライダー「飲み物? あー、それならジュースでも飲むかー?詫びの代わりに奢ってやるぞー」
いちご「あー、それならウチにも一つくれんかのぅ。体中の水分が抜けてもぅたようじゃ……」
ライダー「おぅー、冷たくて美味しいぞー ……あ、貼ってある応募シールだけ返してくれな~」
~~~
怜「ふぅ、やっと落ち着いたわ」
セイバー「うん。こういう所はサービスエリアって言うんだっけ?」
ライダー「う~ん、確か道の駅って言うんじゃないかー? いい所だろー」
いちご「そうじゃの。オマエの運転は最悪じゃったが景色は最高じゃのう」
セイバー「うん、山の上で街が一望できるし人も全然いない。落ち着くには最適」
ライダー「そうだろー あの頃は部活で煮詰まった時、ここで街を眺めたりして気分転換してたんだぞー」
いちご「お~、そう言えばオマエはこの長野出身の雀霊だって言うとったのぅ」
怜(なるほど。道理で竜華がライダーを追跡してもいつも撒かれてたんは地理感があったからやな)
ライダー「……さてセイバー、気分もだいぶ落ち着いたようだしそろそろ本題の話をしてもいいかー?」ワハハ
セイバー「本題……?」
ライダー「ああ…… 聖牌は相応しい者の手に渡るって話だろ?それで、それを見定めるための儀式が聖牌戦争だと」
セイバー「……うん、この世界に召喚された時にそう聞いている」
ライダー「なら何も見定めるだけなら血を流す必要もないだろー? 私たち同士、互いに納得いけばいいだけさ」
セイバー「……納得? 言っていることはわかる。けど、一体何を以って納得をさせるの?」
ライダー「そりゃあ『格』だろうなー どっちが聖牌に相応しいか、格で競うのも悪くないだろ?」ワハハー
アーチャー『……何がどっちよ? 私を差し置いてふざけたことを口にするのもいい加減にしときなさい』スゥーッ
セイバー「アーチャー、何故ここに!?」
ライダー「ワハハー いやぁ、街でアーチャーの姿を見かけたんで誘うだけ誘っておいたんだ」
アーチャー「まさかこんな鄙びた場所に呼び出すなんてどういうつもり?」ギロッ
ライダー「そうかぁ、落ち着くにはいい場所だと思うんだけどなー まぁせっかく来たんだジュースでも飲めー」
アーチャー「……ン、なにこれ? こんな物を飲みながら雀霊の格を競うなんて本気!?」
ライダー「なんか文句ばっかり言う奴だなぁ~ けっこうこのジュースは美味いと思うぞ?」
アーチャー「フン、そう思うのはアンタが本当に美味しい物を知らないだけよ。 これでも飲んで勉強なさい」スッ
――――
ライダー「おぉーー、これは美味いなぁ! いやぁ、確かに言うだけの価値があるぞー」
セイバー「……美味しい」ポワッ
アーチャー「でしょ? この私こそ世界一なのだから飲む物だって当然世界一。これで雀霊の格は決まりね」ニヤッ
ライダー「確かにこれは美味い、それは認める。けどそれだけで聖牌を寄越せってのはなぁ~」
アーチャー「アンタだって十分文句が多いわよ! 第一、聖牌を奪い合うって前途から間違ってるのよ?」
セイバー「……どういうこと、アーチャー?」
アーチャー「だってそもそもアレ、私の物だし」
ライダー「ワハハー それじゃあ昔アレを持っていたのか、アーチャー? どんな物か正体も知ってるのか!?」
アーチャー「知る訳ないじゃない。私が世界一の女である以上、世界一の宝も私の物であるのが道理でしょ?」
セイバー「何を馬鹿なことを。錯乱したサーヴァントはキャスターだけじゃなかったんだ」ギロッ
ライダー「いやいや、どうだか。 何とな~くだけど私はコイツの真名に心当たりがあるぞー」ニヤッ
ライダー「でもなアーチャー、オマエは別に聖牌が惜しいってわけでもないんだろー?」
アーチャー「当然。でも私の物を狙うような馬鹿には罰を下さないと駄目でしょ? 要は筋道の問題よ」
ライダー「うん、つまりなんなんだアーチャー、そこにはどんな義があり、どんな道理があるんだー?」
アーチャー「ルールよ。私が世界一の女として決めた私のルールが」ニヤッ
ライダー「……正しいな。自分のルールを貫いてこそ人を統べる資格を持つ者だぞ」
セイバー「馬鹿げている。そんな物、そんな考えは人の上に立つ者のあり方じゃない」
ライダー「お~、ではセイバー、オマエがもし聖牌を掲げた暁には何をするのか聞かせてもらおうか?」
セイバー「私はやり直しをしたい。 万能の願望機を持ってして、私が麻雀を打たなければならなかった運命を変える」
アーチャー「はァ……?」
ライダー「……セイバー、当然の話だがお前は麻雀を自分の意思で打っていたんだろ?」
セイバー「……う、うん。むりやり強制されて打っていた訳ではない」ゴニョ
ライダー「……おいおい、なら自分で歴史に刻んだ結果まで否定する意味なんてないだろ~??」
セイバー「私が麻雀をすることで不幸になる人が多過ぎた。それならば私が打たなければ全て済む……」
アーチャー「アハハハッ ねぇねぇ、聞いたライダー? この子、麻雀を打たされてたって馬鹿じゃない?」
セイバー「何で笑う!? 自分が打つことで災いになるのなら、麻雀を捨てることは何もおかしくなんてないッ!!」
ライダー「……自分の意思で打つことも止めることもできない。もうそんなのは人間じゃないぞ」ボソッ
セイバー「……!?」ビクッ
――――
姫子「ぶちょーが亡くなったばかりだと言うのにあん売女ば何をフラフラ出歩いてるんばい!」
美子「……鶴田部長、どげんか落ち着いてくんしゃい」
姫子「大丈夫、ウチは冷静ばい。 ……それより安河内先輩、ライダーとアーチャーん戦力差ばどげん思う」
美子「先のキャスター討伐戦で見せた、一瞬であん巨体ば消した能力。 あん恐らく宝具と思われる力次第かと……」
姫子「うん。ライダーがマスター共々、気ば抜いよっ今が襲撃ん好機じゃなかろか?」
美子「……アサシンば動かすつもりですか? ばってんアサシンん能力では例え油断してっとライダー相手では……」
姫子「こん際は勝算ん有無ば問題じゃなか。例えアサシンが敗れよっとも彼我の戦力差ば計れれば目的は達成されるばい」
美子「確かに諜報ば粗方済んでいる今、ウチらに失う物は少なかですが……」
姫子「そいにセイバーもキャスター・ランサーと連戦し疲労しとっはず。仕掛けるには悪くなか思っが?」
美子「……了解したばい、御頭首ん命令に異存はなか。残り令呪全て費やしアサシンに決死で挑めと指示ば出すばい」
――――
セイバー「そんなことはない! 私にだって意思ぐらい有った!!」
アーチャー「じゃあさっさと自分の好きな様にやれば良かっただけの話でしょ? 本当に馬鹿ね」ケラケラ
セイバー「そんなことが許される立場じゃなかった…… 上に立ってしまったからこそ、その責務を投げ出せなかった!」
ライダー「……自分の意思を通せない王者なんて何の意味もないぞ」
セイバー「そんな!? ライダー、貴女だって頂点に立ったのならわかるはず!上に立つ者だからこそ自我は抑えるべきだと!!」
ライダー「違うぞ。上に立ち、人を率いるからこそ自己が必要なんだ。人でないモノには誰も突き動かされないなぁ」
セイバー「それは力有る者の傲慢だ! 上に立つ者が勝手に振る舞ったらルールやバランスはどうなる?」
ライダー「……ふむ。 セイバー、確かにお前は誰の目から理想的な王者として映っていたのだろうな。それで結果どうなった?」
セイバー「……!?」
ライダー「自分のためでもなく、他者のための王者として己で縛り、打たされ続けた麻雀の結果に何が残った……?」
ライダー「……自身一人だけで正しくあろうとしたお前は自ら孤独に貶めざるを得なかっただけじゃないのか?」
セイバー「私は…、私は……」
アサシン「……フフフ」「……クックク」「……ヒッヒッヒ」スゥーッ
怜「アサシン……?」
ライダー「……これはお前の差し金かー、アーチャー?」
アーチャー「……姫子め、余計な真似をして」チッ
アサシン「「「私たちは影。存在がないからこそ群であり個っス……」」」クックック
いちご「な、何じゃアサシンばかり次から次に!?」アワワワ
ライダー「嬢ちゃん、そううろたえるな。 来てくれた客をどう持て成すかでも人の器が試されるんだぞー」ワハハー
アーチャー「……ライダー、あんなのまで迎い入れる気?」
ライダー「当然だ。折角来てくれたんだ、敵も味方もないだろー? さぁお前たちもこのジュースを……」パリン
アサシン「「何を言ってるんっスかね、あのアホ面」」「「お前を殺しに来たって言うのに緊張感ないっスねぇ」」フッフフ
ライダー「……なるほど、知った顔によく似てるから多少の非礼なら多めに見よう。 そう思ってたんだけどなぁ……」
アサシン「「お、何かプルプル震えてるっスよ」」「「案外わたしたちの数を見てビビってるんじゃないっスか?」」ヒッヒヒ
ライダー「……私の知っているモモなら佳織のジュースにこんなことする訳ないし、そんな下卑た笑い方もしないよな」
アサシン「何を勘違いしてるの知らないっスけど、私たちもお前なんて知らないッスよ」アハハハ
ライダー「ああ、そこまで言うなら仕方ないぞー ……モモが汚れるから今すぐ消え失せろ、紛い物ッ!!」ゴッ
いちご「ライダー……!?」
ライダー「セイバーそしてアーチャーよ、これが今夜最後の問いだぞ。 王者とは部長とは孤高であるべきかー?」
アーチャー「……」ギロッ
セイバー「王者だからこそ、孤高であるしかない……」
ライダー「ダメだなー、全然ダメだな。 そんなお前たちには私がここで真の部長たる者の姿を見せつけてやらないとなぁ」ニヤッ
ドォォォォン
いちご「……な、なんじゃこれはッ!?」
怜「こ、ここはインターハイの会場!? 観客までおるし、一体何が起こったんや……」
セイバー「これは固有結界……!? 心象風景の具現化なんて大麻術をどうしてライダーのクラスが……」
ライダー「……ここは我が鶴賀がIH初出場し、初優勝の偉業をなしたその舞台ッ!!」
ライダー「私と共に奇跡を成し遂げた友が等しく心に焼き付けた心象だぞ~!!」
アサシン「なっ……!?」
『お聞きください、この大歓声!! 最後に入場するのは今大会、台風の目となっている鶴賀女子だぁ~!!』
『準決勝で優勝候補の永水女子と有珠山高校を退けたあの見事な勝負をこの決勝でも是非見せてもらいたいですね』
\ ワーワー / \ ヤッパリツルガガナンバーワン! ヤッパリツルガガナンバーワン!! / \ ワーワー /
ライダー「見よ、私たち無双の鶴賀学園を!! 世界を隔てようと消えることのない絆で結ばれた伝説の面子を!!」
睦月「……」 佳織「……」 モモ「……」 ゆみ「……」ザッザッ
いちご「……こ、こいつら、一人一人がサーヴァントなんかッ!?」
ライダー「この絆こそ私の至宝、私の生きていた証。 ―――――――― 蒲原智美が誇る最強宝具だぞッ!!」
ライダー「……部長とはッ、誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉だぞ~!」
睦月・佳織・モモ・ゆみ「「「然り!然り!然りッ!!」」」
ライダー「すべての部員の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、部長!!」
ライダー「だからこそ、部長は孤高にあらずッ! その意思は全ての部員の志の総算たるが故に!!」
睦月・佳織・モモ・ゆみ「「「然り!然り!然りッ!!」」」
まこ「こ、これが真の部長たる者の姿……」
ライダー「……さぁて、そこのモモの偽物共、覚悟はできているかー? ……蹂躙しろッッ~~!!」
ライダー・睦月・佳織・モモ・ゆみ「「「「ワ~ハハハハハハハハハ~!!」」」」
アサシン「ハァ…… 参ったっスね、これは……」フッ
――――
いちご「お、おおっ? ウチら、いつのまに現実世界に戻って来てたんじゃ?」
ライダー「幕切れは興冷めだったなぁ。 お互い言いたいことも言い尽くしたし、今夜はこの辺でお開きにするかー」
セイバー「待って、ライダー。私はまだ……」
ライダー「……もういい、もう何も言うなセイバー。いい加減その痛ましい夢から覚めても良い頃合いだろ?」
ライダー「……さもないとお前はいつかは雀士の最低限の誇りすら失いかねないぞー」
ライダー「己を縛り付けるその夢はな、言わば呪いみたいな物だ…… さぁ行くぞ、嬢ちゃん」ブロロー
セイバー「……呪い、だと」
アーチャー「気にしなくていいわよ、あんなの」ニヤッ
アーチャー「今まで通り信じた道を行けばいい。そんなアンタが墜ちる時の顔、愉しみにしてるからさ」アハハハッ
怜「セイバー……」
セイバー「……思い出した。私は人の気持ちがわからない、と退部した後輩がいたことを」
セイバー「あれは皆の、家族の…… いや、誰もが抱いた言葉だったのかも知れないって」
怜「そんなことないよセイバー、アンタ……は……」ガクッ
セイバー「……怜? 怜ッ!?」
ドライブが罠にワラタwwいや最初から結果見えてたけどwwww
――――
美子「……ん、アーチャーか?」
アーチャー「随分と上機嫌みたいじゃない、美子?」
美子「そいは煩わしさからん解放感からやろうな。諜報ば終わり、アサシンも失ったウチのこん聖牌戦争ん役目も終わった」
アーチャー「へぇ、それで姫子はアンタの退場を了承したの?」
美子「……いや、強ぉ慰留されたが最後には認めてもろうた」
アーチャー「ふぅん。じゃ、アンタ本当に聖牌戦争をやめる気なんだ?」
美子「ああ、最初からウチは聖牌戦争になど参加するべき者やなかったんだからな」
アーチャー「本当にいいの? アンタ、まだこの戦いに未練があるんじゃないの?」
美子「未練? 聖牌など欲しくなかウチにそげな物、ある訳なか」
アーチャー「まだそんなことを言ってるんだ? まぁいいわ、でも聖牌その物はともかく戦いにはまだ興味があるんじゃない?」
美子「戦いに……?」
アーチャー「アンタがアサシンにさせていた諜報には明らかに自身の興味が現れていた。セイバーとそのマスターに……」
美子「……そいは有力な敵だからこしょ念入りにしとっただけたい」
アーチャー「違うわね。なら同じ三騎士クラスのランサーとどうしてああも情報量の差があったの?」
美子「……」
アーチャー「いい加減に気づきなさい、自分の本性に。 ……アンタは聖牌に願うべき物がないんじゃない」
美子「そげなこと、なしてお前に分かる?」
アーチャー「……アンタは新道寺の悲願とやらが聖牌に託す様な物じゃないと思っているだけでしょ?」ニヤッ
美子「馬鹿なッ! こん新道寺に属すっ者、誰もがレズの根源への到達ば願ってちいるに決まっちいるやろ!!」
アーチャー「ああ、だからアンタはセイバーのマスターに興味を持っていたのね」
美子「……どげんいうことだ?」
アーチャー「雀士でいながらも麻雀その物を否定するセイバーのマスター。そして同じく麻雀に何の執着のない安河内美子……」
アーチャー「アンタは新道寺の部員としてレズの探究を自身の責務と考えていた。 だけど根底ではレズを否定している……」
美子「何ば言うッ! ウチは…、ウチは……」
アーチャー「アンタは自分と同じ矛盾する物を抱えた女が何を得て、何を望みこの戦いに参加したのか興味を持ち続けている」
アーチャー「……そして、自分と似たその女から迷いの答えも得れるんじゃないかと期待している、と」ニヤッ
美子「……ッ!?
アーチャー「でも、この戦いから降りたらその答えを得る機会も永久に失うかもしれない……」
アーチャー「今更悩むことなんてないじゃない? 答えは目の前にあるのよ」ニヤァ
――――
怜「……ん、ここは?」
セイバー「気が付いた、怜? 急に倒れたから心配した」
怜「そっか、久しぶりに倒れてもうたんか…… ごめんなセイバー、ウチが病弱で」
泉「その口癖も久しぶりですね。 到着したら清水谷部長に意識を戻されたことを報告しておきますわ」クスッ
怜「ああ、泉もおったんかぁ 到着って今どこに向かってんのや」
泉「はい、今までの拠点は先のライダーの件からも危険と思われるので予め用意していたセーフハウスに移動中です」
怜「そやなぁ、あそこを知ってたのはライダーだけとは限らんからなぁ」
セイバー「でも泉、この方向だと次の拠点は随分と市街地にあるようだけど?」
怜「セイバーはいざ戦いとなったことを心配してるんやな? それは大丈夫やで、基本聖牌戦争は暗闘やし」
泉「ええ、市街地に拠を構えたら却って襲撃の恐れは減るって部長も言うてました」
セイバー「そうなんだ。 それで新しい拠点はどういうとこなの?」
泉「自分も下見の時に一度来たきりですけど、何やら法曹関係者用の借家だそうです」
怜「ああ、そうゆー人たちって任期とかあって数年おきに赴任地が変わるから専用の宿舎とかあるって聞いたわ」
泉「ええ、だからこそ潜伏するには持って来いだそうです。 あ、到着しましたわ」
セイバー「……ここが、新しい拠点」
――――
怜「借家、言うからもっとボロっちぃの想像してたけど随分と新しそうやん」
泉「まだリフォームしてから間もないそうですが建てたのは随分と昔だと聞いています」
怜「あ、ほんまや裏庭のとこに土蔵なんてある」
泉「麻術を行うにはあそこがいいんじゃないかと清水谷部長が言ってましたわ」
怜「そやな。 ……そんで泉、竜華はいまどこにいるん?」
泉「部長は今ライダーの拠点を調査中です。 正確な場所までは不明らしいですが大凡の位置は特定したと」
怜「そっか。ほんじゃ竜華はこっちにも当分来ないんやね」コホン
泉「いえ、陽が沈んだ頃には一度こっちに顔を出すと。その際に編成をし直すと」
セイバー「編成……?」
泉「ライダーの拠点付近の監視はセイバーに引き継がせ、部長は新道寺の監視に入る予定です」
泉「……ほんで園城寺先輩は体調のこともあるんで暫く休んでもらい、自分が園城寺先輩の護衛につかせて貰います」
――――
いちご「さてと、ここいらで良いじゃろう」
ライダー(おい、どうしたんだ嬢ちゃん朝っぱらからこんな所に来て)
いちご「どうした、じゃなかろ? お前、実体化もできないくらい疲れとるじゃろ?」
ライダー(ワハハー 分かっていたなら一声かけてくれ。見透かされてるみたいで恥ずかしいぞ)
いちご「あがぁな固有結界なんて大麻術を立て続けに使やぁ疲れるなんて誰でもわかるわ!」
ライダー(なに、ちょっと休めば元通りになるから安心しろー)
いちご「そのちぃとの間にウチが襲われたらどうするんじゃ、この馬鹿!」
ライダー(あーーー、まぁその時はその時で何とかしてたと思うぞ。ワハハー)
いちご「ったく、コイツは…… まぁええわ、今日は何もせんでここで休む。ここが一番ええんじゃろ?」
ライダー(……良いって何がだ?)
いちご「……ここがお前と謂れのある鶴賀じゃろ?」
ライダー(ワハハ、そんなのは見れば分かるに決まってるだろー)
いちご「だからお前と一番相性の良え地脈のはずのここで回復を捗らせよぉ思ぉてわざわざ来ちゃったんじゃろぉが!」
ライダー(あー、それでか。 うん、確かに普段より麻力回復が早いぞー)
いちご「……お前、本当に分かっとらんかったんか」
ライダー(でもおかげでこの調子なら今夜にでもひと暴れできるレベルまで回復するぞー)
いちご「ひと暴れって今度は何をするつもりなんじゃ?」
ライダー(次はセイバーの相手をしてやらないとなぁ。 アレは私が倒す。それが雀霊としての私の務めだからなー)
いちご「なんじゃそりゃ?」
ライダー(あの大馬鹿は私が正しく倒してやらないと永遠に迷ったままになる。それじゃあ余りに不憫だろ?)
いちご「……幾ら何でもセイバーもお前にだけは大馬鹿とは言われたくないじゃろうなぁ」
ライダー(ワハハー、そうかもなぁ。 そして次はアーチャーだな。アレもアレで歪んでるからなー)
いちご「そうなったら聖牌はもう手にしたも同じじゃのぅ」
ライダー(さぁてどうだろうなぁ…… まぁ、その頃には聖牌が何なのか正体も見えてくるだろ)
いちご「……正体?」
ライダー(あー、私はまだ聖牌なんて物が本当にあるのが信じられないんだ)
いちご「……こがぁな大がかりな話で実は賞品が無いなんて詐欺じゃろ。そがぁなこと有り得んわ」
ライダー(まぁいいさ、それを知るのも勝った時のお楽しみにとっておくぞー ワハハー)
――――
姫子「 」
アーチャー「ふん、最期までつまらない女だったわね。 見なさいよ、この間抜けた死に顔を」
美子「すぐそばに霊体化したサーヴァントばはべらせていたと、油断したのも無理ばなかばい」
アーチャー「後見を託された後輩を手にかけたばかりでそんな冗談を言えるとは前途有望ね」フッ
美子「……部長も姫子も、最期までウチという人間ば理解できんかっただけばい」
アーチャー「フッ、これで少しは哩を手にかけれなかった悔しさも晴れた?」
美子「……新子憧、本当に異存ばなかと?」
アーチャー「アンタが私を飽きさせなければね。 ……それより美子、覚悟を問われるべきなのはむしろアンタよ?」
美子「……汝の身は我が元に、我が運命は汝の剣に。聖牌のよるべに従い、この意、この理に従うのなら」
アーチャー「誓うわ…… アンタの供物を私の血肉にする。安河内美子、新たなるマスター」ニヤッ
――――
竜華「……」
泉「部長、園城寺先輩に会うんですか? 麻法陣を敷きましたが先輩の状態はもう……」
竜華「わかっとる。承知の上や……」
泉「……わかりました。では」ギィィッ
竜華「怜……」
怜「……竜華やぁ。 夢と違うんやな、本当にまた会いに来てくれたんや」
竜華「ああ、そやで……」
怜「……ウチはな、幸せやで。 恋をして、愛されて、竜華は全てを与えてくれた」
怜「ウチには望むべくもなかったこの世の幸せの全てを……」
竜華「……ゴメンな。 色々な約束、果たせへんかった」
怜「ううん、もうええんや…… 残りの幸せは竜華に残しとくわ」
竜華「ッ…… わかった……」
怜「おおきにな…… そや、最後にコレを返しておかないとな……」スッ
怜「怜ちゃんや…… コレはこの先、竜華にこそ必要や。アンタが最後の戦いに挑む時、きっと役に立つで」
竜華「分かった…… じゃあ行ってくるで」
怜「うん、気ぃつけてな竜華……」
――――
リチャ(何だ……? 何も見えない、何も聞こえない…… ここはどこだ、俺は死んだのか……?)
?(……私は疎まれ、嘲られ、蔑まれる者)
リチャ(お前は誰だ!?)
バーサーカー(私は雀霊の輝きが産んだ影、眩い伝説の影に生じた闇。 ……だからこそ憎み、恨む)スウッ
リチャ(バ、バーサーカー!?)
バーサーカー(あの雀霊こそ私の恥辱。その誉れが不朽だから私もまた永久に貶めらる……)
リチャ(あれはセイバー!? どういうことだ……)
バーサーカー(アンタは贄…… 私の憎しみを駆り立てるためもっと血を、命を寄越して……)
リチャ(や、止めろ! 止めてくれッ!!)
リチャ「……ハッ!?」ビクゥッ
ナナ「……うん、まだ生きていたんだ耕介?」
リチャ「クソ姉貴!? ここは白築の屋敷なのか……?}
ナナ「クックク 介抱してやったってのに随分な口をきいてくれるじゃない?」
リチャ「そんな真似してくれと頼んだ覚えはねぇ! ……それに治療しても無駄だ、もうじき俺は死ぬ」
ナナ「そうねぇ、全くこんな様に成り果てちゃって…… ま、正直ここまでアンタが食い下がるのは予想外だったわ」
ナナ「で、もしかしたらこんなゴミ手でも上がれる可能性もそう棄てた物じゃないかもしれないと……」
ナナ「……そこで賭け金を上乗せするのも悪くはないってね。 耕介、アンタにはイイ物をあげるわ」ニヤッ
リチャ「……何?」
ナナ「これは私がここ一番の局面に備えてとっておいた切り札なのよ。 ほら、有り難く口を開けなッ!」ドボッ
リチャ「ガハッ!? な、何を飲ませやがった……」
ナナ「おー、効果抜群ねぇ。 ……アンタが今飲んだ物はね、慕の初潮の経血から作った純粋な麻力の塊よ」アハハハッ
リチャ「な、何ッ!?」ウゲェ
ナナ「クックク、今さら吐き出せる訳ないでしょ? どう、美味しい?可愛い姪から奪った命の味はァ」
リチャ「あ、姉貴、テメェ!!」
ナナ「そう、そうやって怒りも憎しみも……、そして命も燃やし尽くして聖牌を掴みなさい。アンタ如きにできるのならね」ニタァ
――――
竜華(セイバーをライダーの潜伏先に向かわせた。そこで奴等が事を起こせばアーチャーもその場に現れる公算は大きい)
竜華(手薄となったそこを突き、ウチが鶴田姫子を仕留める、つもりやった……)
竜華(……けどこれはどういうことや? この新道寺の本拠地一帯に麻術結界は張られとらんし、もぬけの殻や)
竜華(今までの行動パターンから結界を解いて誘い込ませる、鶴田がそんなリスクを負った策をを弄するタイプとは思えへん……)
竜華(現にこうして侵入をしているちゅうのにここまで何の障害もなく、麻術痕跡も昨晩の物しかあらへん)
竜華(さっき応接間で見つけた大量の血痕……、あれは鶴田姫子の物やった)
竜華(……ちゅう事は新道寺で何らかの異変が起き、鶴田が死亡した可能性は高い。一体何があったんや)
竜華(そしてセイバーからも何も報告も来てへん。つまり向こうも空振りちゅうことか……)
竜華(佐々野いちご…… 戦場での行動を見る限り、ウチを出し抜けるような思慮のある者には見えへんかったけどな)
竜華(ここに来て両陣営共に予想を覆うこの動き、偶然なんやろか……)ブゥーブー
竜華「……どうした、泉」
怜『逃げや、泉ッ!!』パンッ バンッ
竜華「怜ッ!? ……チイッ、令呪を以て我が傀儡に命ず、セイバー、土蔵に戻れ!今すぐに!!」
セイバー(竜華……? これは令呪による空間跳躍、怜に何か!?)
セイバー「ここは土蔵……? 泉ッ!?」
泉「セイ…バー……」
セイバー「喋っては駄目。今すぐ手当をするから!」
泉「ラ、ライダーが園城寺先輩…を……」
セイバー「ライダーが、まさか!?」
泉「早く追って…ください…… 今ならまだ……」
セイバー「でもそれじゃあ……」
泉「自分は大丈夫…ですから…… すぐに清水谷部長も来てくれます……、だから……」
セイバー「クッ…… 泉、どうか竜華が来るまで持ちこたえて。怜は必ず私が」
泉「……」コクッ
――――
ライダー「……」
リチャ「……監督役のお嬢ちゃん。こんな小細工に本当に令呪を2つも費やすだけの意味があるのか?」
美子「案ずる必要はなか、白築耕介。 さあ、手を出しんしゃい」スッ
リチャ「……これは!?」キュピーン
美子「そう…… ウチに協力する限り、アンタは惜しむことなく令呪ば消費して構わんばい」ニヤッ
リチャ「成程。どうやらさっき話、本当のようだな……」
美子「ああ、セイバー陣営の姦計により本来の監督役であり、ウチの親友でもあった白水哩と鶴田姫子が殺害された……」
リチャ「で、その敵討ちに力を貸せば聖牌は俺に譲り渡すと……」
美子「その通りばい。 ……それにしても変身能力とは、つくづくバーサーカーのクラスには惜しか宝具ば持っとるね」クックッ
ライダー「■□□`*~■■■|~+}■■■□;o0/□□■」
リチャ「もともとコイツは諸星ウルミと名や容姿を偽って活躍したって逸話をいくつも持っている雀霊だからな」
バーサーカー「■■■■ =)■te■■■■[\aa■■■'(&*■■■lu:u」
美子「令呪で強制してやっとこれとは。 アンタのサーヴァントのセイバーに対する執念には恐れ入るばい」
リチャ「もういい、消えろバーサーカー。 それで後はここに辿り着いたライダーとセイバー、どちらかを倒せばいいのだな」
美子「そうばい。それで聖牌はアンタん物になり悲願も成就できったい」ニタァ
――――
竜華「……クッ、この結界の破られ様、間違いなくサーヴァントの仕業やな」
泉「うぅ……」
竜華「泉ッ!?」ガタッ
泉「し、しみずたに……ぶちょぉ……」
竜華「……」コクッ
泉「ライ……ダーが……」
竜華「……わかっとる」フルッ
泉「あかん、ですよ……ないたら…… そのなみだは……、おんじょうじせんぱ…い……のために…、とっておかな……」
竜華「ウチは……」
泉「ここでないたら、あきません…… ぶちょうはよわい……から……、いまはこわれたらだめ……ですわ……」ニッ
竜華「……安心しぃや泉、後はセイバーに任せや。 アンタの役目は、終わりや……」
泉「 」
竜華「泉ッ、泉ィィッ!!」
――――
美子「……聞こえとっか、園城寺?」
怜「安河内、美子…… そっか、やっぱアンタの仕業やったんか」キッ
美子「間もなく聖牌戦争は決着する。恐らくはこんウチが聖牌ば掲げることになるばい」
怜「笑わせてくれるわ。アンタなんかが聖牌を手にするなんて出来へんわ」
美子「最後に一つだけ聞いておこう。園城寺怜、お前たちはどげん祈りば抱き聖牌ば目指した?」
怜「言うてもわかるはずないわ。聖牌に託す祈りすらないアンタには。 安河内、アンタは戦う意味すらわからない虚ろな女や」
美子「何故、お前がウチの内面ば知ってっと?」
怜「フッ、怖いんか? ええわ、教えたる。アンタの中身は竜華に見抜かれている。だからお前を警戒し最悪の敵と見なしていた」
怜「きっと竜華は誰よりも冷酷に、誰よりも容赦なくアンタに牙をむく。覚悟するんやで!」
美子「感謝するばい園城寺、そいはウチにとって福音だ。 清水谷竜華はやはりウチが考えていた通りん女だったのだな」
怜「ハッ、どこまでも愚かな女。 アンタが?竜華を理解するやて? 片腹痛いわ、誰よりも竜華とは程遠い女のくせに」
美子「何だと!?」
怜「そうや、竜華にアンタを見抜けたとしてもその逆はあり得へん!」
怜「竜華の心にある物をアンタは何一つ持ち合わせてへんからなッ!!」キッ
美子「認めよう。確かにウチは空虚な女だ。だがウチと清水谷とはどう違う?」
美子「ただ殺戮ばかりを繰り返してきた女が、あいほど憎んでいる麻雀ば打たされている者が迷い人でなくてなんなのだ!」グググ
怜「くッ……」ゲホゲホッ
美子「答えろ、清水谷竜華は何を望んで聖牌を求める、奴が願望機に託す祈りとはなんだ!?」
怜「はぁはぁ…… ええで、よう聞きや。清水谷竜華の悲願はiPS細胞の完成や!」
美子「あいぴー……えす……」
怜「そうや、iPS細胞に依る性別を超えた愛の救済。 そして、あらゆる戦乱と流血の根絶、恒久的世界平和や……」
美子「なんだそれは……」
怜「アンタに分かるはずもない、それがアンタと竜華との差、信念の有無やッ!!」
美子「馬鹿な…… そんな願い、そもそも理想として成り立っていない、まるでレズの戯れ言だ……」
怜「だからこそ竜華はとうとう奇跡にすがるしかなくなったんや……」
怜「竜華は追い求めた理想のために、常に愛する人を切り捨てる決断を迫られてきた。理想を追うには優しすぎたんや……」
美子「……分かったよ」ギリッ
怜「……ッ!?」グググッ
美子「よく分かった、それが清水谷竜華か……」ゴキッ
怜「 」ドサッ
美子「……遂に得たばい、戦う意義を。清水谷竜華、アンタの理想を聖牌もろとも木端微塵に打ち砕いてやるばい」
ハザカまさかのあわあわかびっくりだよもー
――――
いちご「のぅライダー、回復するなりいきなり仕掛けるってのはどうなんじゃ?」
ライダー「う~ん、何となく感じるんだ。今夜あたりに決着が付きそうな予感がなー」
いちご「じゃったらそれこそ大人しゅう落ち着いて戦況判断した方がええんじゃないんか?」
ライダー「ワハハー 確かに嬢ちゃんの言う通りかもな~ でもそれじゃあ間に合わなくなるかもしれないしなぁ」
いちご「間に合わなく……?」
ライダー「……ああ、聖牌が私の考えている様な物だとしたら、あんな物のためにこれ以上迷わすのは不憫だしなぁ」
いちご「……??」
ライダー「……ん、嬢ちゃんどうやら向こうもそのつもりだったようだぞー」
いちご「ふえっ? あれは、セイバー!?」
セイバー「やっと見つけたぞ、ライダー……」ゴッ
ライダー「おー、セイバーわざわざ出迎えごくろ……「聞きたいことは一つだけだ、ライダー」……おっ?」
いちご「なんじゃアイツ、えらい怖い顔して」
ライダー「どうしたセイバー、そんなに血相変えて聞きたいことって?」
セイバー「……怜がいない!?」
――――
竜華「……これはバーサーカーの鎧の破片?」
竜華(では怜を連れ去ったのは白築耕介だと…… いや、奴にウチらの新しい拠点を突き止める諜報能力なんてあらへん)
竜華(だとしたらやはりライダーが怜を…… いいや、佐々野いちご達にもそこまでの能力は有りえへん)
竜華(と、すればこの一件は新道寺の仕業と考えるべきや。 だが当の鶴田姫子は既に脱落している可能性は高い)
竜華(新道寺の異変…… そもそもサーヴァントを控えさせていたマスターの暗殺など可能なんか?)
竜華(いや、サーヴァントが裏切っていたとしたら…… しかし、それだけでは鶴田姫子の警戒を解くことは出来へん)
竜華(マスターの資格を未だ持ち得て裏切ったサーヴァントに麻力を供給でき、不審を与えず鶴田姫子に近付ける……)
竜華(そしてウチらの用意していた拠点すら突き止める諜報能力を持つ者……)ゾクッ
竜華「安河内…、美子……」
――――
ライダー「で、セイバー聞きたいことって何だー?」
セイバー「……その車、まだ誰か乗せていない?」ギロッ
いちご「うん? 何を言うてるんじゃアイツは」
ライダー「さぁな。 ……まぁあんなに血相変えて一人で乗り込んで来た所を見ると大凡の予想は付くけどな-」
いちご「お、そう言われたらいつも一緒におった大阪弁の連れ合いが今夜はおらんようじゃのぅ」
セイバー(嘘を吐いている様子はない…… そもそもライダーは人質を取るような策を弄するか?)
セイバー(怜を連れ去ったのはライダーではない……? だとしたらこれは一体……)
いちご「ん、ありゃあ……?」
セイバー「……狼煙?」チラッ
ライダー「嬢ちゃん、妙な麻力の波動だったけどアレは何だー? 市街地から上げられているようだが」
いちご「色違いで4と7…… 確か『達成』と『勝利』じゃったはずだが、まさか聖牌戦争に決着が付いたんか……?」
ライダー「何を言ってるんだー、現に私たちはここでピンピンしてるだろ?」
いちご「それじゃあアレは、どういう意図なんじゃ……」
ライダー「なぁに大した意味などないさ、ただの単純な挑発だろう。 文句があるならここまで来い、ってなぁ~」
いちご「そこまでわかっといて誘いに乗る……、んじゃろうなお前は」ハァ
ライダー「おー、ようやく嬢ちゃんも部長とは何なのかわかってきたようだなぁ~ ……セイバー」
セイバー「……」ピクッ
ライダー「悪いけどお前の相手はまた今度だ。そんな暗い顔した奴と打つなんてごめんだからな」ワハハー
セイバー「!? 待ってライダー、まだ私の用事は済んで……」
ライダー「……お前みたいな迷いながら打つ奴に絡み手なんて必要ないぞ。お前のお目当てもきっとあそこさ」クイッ
いちご「お目当て?」キョトン
セイバー「……!?」
ライダー「じゃあなセイバー、私と打つまでにはその迷いを吹っ切っておけよー」ブロロロ
――――
竜華「……信号弾?」
竜華(あの方角にある雀脈は清澄市民会館か……)
竜華(聖牌を降臨させるのには清澄にある4つの霊脈の中いずれかで儀式を行わなければあかん……)
竜華(奴は戦いの主導権を握るためだけに、最も儀式に向かない場所を選んだ)
竜華(つまりは奴は聖杯そのものではなく、聖牌を餌に集まったマスターを、ウチを殺すことが目的やったと……)
竜華(ならば話は速い。所詮奴がその程度の敵ならば速やかに排除するのみや)
竜華「安河内美子……」スタスタッ
――――
アーチャー「今夜はずいぶんと気合の入った顔をしてるじゃない。 で、私はどうすればいいの?」
美子「お前の力ば間近で解放されたら聖牌降臨ん儀式自体危ぅなる。 存分にやりたいっちゅうなら迎撃に出てもらうばい」
アーチャー「いいわよ。でも私の留守にここを襲われた場合は?」
美子「そん時は令呪ん助けば借りるのは構わんけんかね」
アーチャー「構わないわ。けど聖牌の安全までは保証できないわよ、今夜の私は手加減抜きだから」
美子「最悪ばい。 まぁそぉなれば、そいもまた運命か」フッ
アーチャー「どうやら戦う意味については答えを得た様ね。それで今でもまだ聖牌に託す祈りはないの?」
美子「やはり願いなど思い付かん。 強いて言うならこん戦いにいらん邪魔が入らんで欲しかことぐらいばい……」
アーチャー「そっか…… やっぱアンタが心に秘めた物は聖牌側に汲み取らせるしかないわね」ハァ
アーチャー「あ、そうだ。もし私が戻るより先にセイバーが来たら暫くバーサーカーと遊ばせておいてくれる?」クルッ
美子「わかったばい」
アーチャー「……そうだ、セイバーって言えばアレが後生大事に護っていたあの女はどうしたの?」
美子「殺したばい、生かしておく必要もなかったけんな……」
アーチャー「あ、そう……」ククッ
――――
いちご「……停めろ、ライダー」
ライダー「ん、どうした嬢ちゃん? ここまで来て怖くなったかー」
いちご「……ああ、怖いさ。でもそがぁなことじゃない」
ライダー「うん……?」キキィッー
いちご「ここからぁげに強い者しか行っちゃいけんのんじゃろ? 我がサーバントよ、佐々野いちごが令呪を以て命ずる……」スウッ
ライダー「おい嬢ちゃん……」
いちご「ライダーよ、必ずや最後までワレが勝ち抜け…… 重ねて令呪を以て命ずる……」
ライダー「……」
いちご「さあ、これでウチはもうお前のマスターでもなんでもない。もう行けよ、どこへなりとも行っちまえ!」プイッ
ライダー「ああ、もちろんすぐにもで行かせてもらうが、あれだけ命じた以上は当然嬢ちゃんも見届けるつもりだろー?」ヒョイッ
いちご「何をすんじゃバカ! もう令呪もないマスターでもないウチを連れて行くんじゃ!?」
ライダー「マスターじゃなくっても私の友達であることに違いはないだろー?」ニコッ
いちご「えっ……!?」
ライダー「あれだけ私といっしょに戦いを潜り抜けて来たんだ、当然だろー そして今度こそ約束を果たすんだ」ワハハー
いちご「約束……?」
ライダー「ああ、まだ言ってなかったか。私が聖牌に託す願いのことを」
いちご「おぅ、そう言やぁお前の願いをまだ聞いとらんかったのぉ」
ライダー「間抜けな話だぞー 折角IH制覇を成し遂げて、約束のあの海にやっと行けるはずだったんだけどなぁ……」
いちご(あの海…… もしかしてあの夢で見た風景ってやっぱりコイツの……)
ライダー「私はどうも肝心な時ほどミスするようでなぁ…… ま、それだけがずっと心残りだったんだ」ワハハ・・・
いちご「ライダー……」
ライダー「だから今度こそ友達といっしょにあの海に行きたいんだ。もちろん、嬢ちゃんもだぞー」
いちご「わかった…… 約束だぞ、絶対に勝ってウチを海に連れて行くんだぞ!」
ライダー「ああ、約束だ…… さてお迎えが来たようだぞ」クイッ
いちご「アーチャー……」ビクッ
アーチャー「……ずいぶんと待たせてくれたじゃない、ライダー」
ライダー「済まん済まん、ちょっと道が混んでいてなー」ワハハー
アーチャー「いい度胸してるわね、この私を待たせるなんて。 ま、これでアンタを飛ばすには十分な理由ができたわね」
ライダー「困ったなぁ~ コッチは守らなくちゃいけない約束が増えたばかりなんだけどな……」ニヤッ
アーチャー「……ふぅん、確かに普段よりは気合が入ってるようね」
ライダー「さぁて世界一の女傑よ、最後に宴の締めの質問だぞ」
アーチャー「いいわよ、いくらでも聞きなさい」
ライダー「……以前に何があったかは知らないが、そう突っ張っているのも疲れるだろ?」
アーチャー「やれやれ、まさかアンタなんかに気遣われるなんてね」ククッ
ライダー「そう肩肘張ってないで、この世界で私の友達になり新しい生を共に分かち合わないかー?」ワハハー
アーチャー「……!? アハハハハッ、何それ? チョー笑えるんだけど?」アハハッ
ライダー「……新子」
アーチャー「折角のお誘いだけど私が親友と呼べるのは後にも先にもあの子ただ1人だけだから……」フッ
ライダー「……そっか、残念だけどお前が孤独ではなかったとわかって少し安心したかな」
アーチャー「さて、馴れ合いはおしまい…… そろそろ始めましょっか?」
ライダー「そうだな、それじゃあそろそろ始めるとするか」
アーチャー「……」クルッ ライダー「……」クルッ
いちご「……なぁ、お前ら本当は仲が良ぇんと違うか?」
ライダー「私の最後の対局相手になるかもしれないんだ、いい加減な扱いはできないなぁー」
いちご「バカ言うなよ、お前が負けるわけないじゃろ。承知せんぞ、ウチの令呪を忘れたか!」
ライダー「そうだな、その通りだ…… 集え我が鶴賀の精鋭よ、私たちは今夜最強の伝説と打つぞッ!!」
ドオォォォンッ
睦月「……」 佳織「……」 モモ「……」 ゆみ「……」ザッザッ
ライダー「敵はあの世界一の女! 相手にとって不足はない、友よ今こそ鶴賀の力を示すぞォッ!!」
睦月・佳織・モモ・ゆみ「「「ウオオォォォッッ!!」」」
ライダー「ワーハハハハハハッ!!」
いちご「ワ~ハハハハハハァッ!!」
アーチャー「来なさい、最高の部長さん…… 今こそアンタたちは世界一の力を知るのよ」ニヤッ
――――
セイバー「さっきの狼煙はたぶんここからの物のはず……」
バーサーカー「■■&'■■ta■■■■=}*}■■■■*r■■■uu■ッ!!」
セイバー「バーサーカー!?」
――――
リチャ「ぐぁぁぁぁっ!!」
慕『大丈夫、おじさん? どうしてそんなに苦しむの……』
リチャ「はぁはぁ…… バ、バーサーカーは戦わなければ……、いけないからだ……」
慕『……どうして?』
リチャ「あ、あの新道寺の監督役がそう言っていたから……」
慕『あの人が?』
リチャ「ああ、約束してくれたんだ、俺に聖牌を渡すって…… 聖牌さえあれば、慕を救える」
慕『助けてくれるの……』
リチャ「ああ、約束したろ。 また皆で昔みたいに一緒に遊ぼうって……」
慕『じゃあ、またお母さんとおじさんで麻雀ができるんだね』
リチャ「おかあ…さん……?」
ナナ『……』ニタァ
リチャ「駄目だ、姉貴がいたら聖牌を勝ち取る意味がない…… けど慕には母親が必要……、なら俺の戦う意味は……?」
――――
バーサーカー「■□■■■■□□■■■□■□■?!?」
セイバー「……動きが!? ここォッ!!」ガキンッ
バーサーカー「□■■□■■■□……」
セイバー(浅かった? いや、あの間合いで今の一撃を躱せるなんて私の打ち筋を知っている……)
バーサーカー「…………」
セイバー「私の名前は宮永照。 その鎧の下は高名な雀士と見込んだけど貴女は一体何者?」
バーサーカー「………………」クックック
セイバー「……嗤っている? 何がおかしい、名乗りすらあげれないとは雀士の誇りすら失くしたのッ!」
バーサーカー「■■■■■■■■……」バリンッ
カコーン
バーサーカー「……」クククッ
セイバー「お、お前は…… いや、貴女がどうして……」
バーサーカー「テェェェルゥゥゥゥッ……」
セイバー「淡…… なんであんなに仲の良かった淡が、虎姫随一とまで言われた貴女がどうして狂戦士に堕ちてまで……」
――――
アーチャー「さすがね、夢を束ね高みを目指すその有り様は理想的な部長の姿じゃない」
アーチャー「……でもね、夢は所詮夢。世界の頂きに立てばきっと貴女も知ることになる」
アーチャー「どんなに眩い夢でもいつかは醒める物。そして夢の代償はおぞましい呪いであることを……」
アーチャー「来なさいライダー、貴女の見果てぬ夢の結末はこの私が自ら教えてあげる!」ゴッ
ライダー「来るぞッ! 嬢ちゃん、ちゃんと掴まっているんだぞー!!」
いちご「なんじゃ、アーチャーのあの黒い宝具が今までと桁が違ぅ…… 見ているだけで気分が悪ぅなる……」
ライダー「……ああ、あれが己の意思など無縁に世界一に立たされたあの娘が背負わされた物の正体だろうな」
アーチャー「さぁ行きなさい、私を縛る呪い達…… あの輝かしき者たちもこの泥の中に沈めてなさいッ!!」ガッ
いちご「IH会場が泥に浸食されて行く…… アイツの宝具はすべてを崩壊させる対界宝具なんかッ!?」
ライダー「……」ギリッ
アーチャー「……」
いちご「ライダーの固有結界が全部消えてしもぉた……」
ライダー「……そう言えば聞いてなかったなぁ~」
いちご「……えっ?」
ライダー「次の連休、海に行くんだから水着は持っているのか聞くの忘れていたぞー」
いちご「……いや、そがぁな準備なんて考慮しとらんよ」
ライダー「そっかぁ…… じゃあまずは皆で嬢ちゃんの水着を皆で買いに行かないとなぁ~」
いちご「……ライダー」
ライダー「そうそう。今度こそもう夏が一生来なくてもいいってくらい、うんざりするまで遊ぼうなー」ニコッ
いちご「お、おぅ、約束じゃ…… だから最期までウチを……」グスッ
ライダー「駄目だ……、私の身勝手な夢にこれ以上友達を巻き込む訳いはいかないだろ?」
ライダー「私たち鶴賀の夢の果てを見届けてくれ、いちご…… これが最後の友達への頼みだ、聞いてくれー」クルッ
ライダー「ワーハハハハハハハハァァッ!!!」
いちご「ライダァァッッ!!」
ライダー「……グッ!?」ズサッ
アーチャー「あれほど泥を受けても立ち止まらないとは呆れるわね……」
ジャリンッ
ライダー「……ッ!?」
いちご「……鎖!? ライダーの動きが!!」
ザクッ
アーチャー「……まさか朋友の名を冠するこの戒めの鎖まで使わせるなんて、大した者ねライダー」
ライダー「……ったく、切り札の二枚重ねだったなんて最初から言ってくれよ」
アーチャー「……夢から覚めた、鶴賀の部長?」
ライダー「ああ、今度の大会も十分に面白かったさ……」
ライダー(あの鶴賀で見た夢は一度きりだったはず…… にも関わらずこうして二度目の夢も見れた)
ライダー(そう、二度も夢を見れたんだ。 なら、三度目があってもおかしくないよなぁ……)
ザザーン
ライダー(……潮騒? ああ、また約束を果たせなかったな…… いや、これは次の夢で果たせってことか……)
アーチャー「……世界一の私が約束するわ、次の対局もきっとまた心躍る物になるって」
ライダー「……そっか、そりゃあいいなぁー」スゥッー
アーチャー「じゃあねライダー、また何処かの卓で逢いましょ……」
アーチャー「……」カツンカツン
いちご「……ッ!?」ビクッ
アーチャー「……アンタがライダーのマスター?」
いちご「違う、ウチはあん人の友達じゃ!」
アーチャー「そう…… じゃあアンタが本当に友だと言うなら敵を討つ必要があるんじゃない?」
いちご「ワレに挑んだらウチは死ぬ……」
アーチャー「当然ね」
いちご「そりゃあできん、ウチは友から夢の果てを見届けてくれと頼まれたからの」キッ
アーチャー「……良い友を得たようね。そういうの、ずっと大切にしておきなさい」クルッ
いちご「……!? ……終わってしもぉた、ウチの聖牌戦争が」
いちご「……」
いちご「……ライダァァッ!!」ボロボロッ
――――
バーサーカー「アアアァァッ!!」ガッ
セイバー「……ゴハッ!!」ドサッ
セイバー(……そんなにも、そんなにも貴女は私が憎かったの?)
バーサーカー「テェェェルゥゥゥゥッッ!!」ゴガッ
セイバー「……止めて。お願いだから止めて、淡……」
バーサーカー(そうだ、私はこの光景が見たかったんだッ!!)
バーサーカー(思い知れッ! 王者として君臨したオマエの輝きの影で摩耗していたった者たちの嘆きを!!)
バーサーカー「ガァァァァァッッ!!!」
セイバー(どうしてこんなに恨まれているんだろ…… なんでこんなことになっちゃったんだろう……)
セイバー(ああ、そうだ、ライダーが言ってたっけ…… 私は自分だけ正しくあろうして人の気持ちを分かっていないって……)
バーサーカー(ずっと彼女に憧れていた……)
バーサーカー(彼女に拾われた私にとって、それは初めて出会ったあの日から変わらぬ想いだった)
バーサーカー(そして気付けば周囲から彼女の後継者と目され、私自身もその期待を戸惑いながらも背負おうとしていた)
バーサーカー(だが、いざ彼女と同じ高みに立ってみて初めて気が付いてしまった。私では宮永照にはなれない、と……)
バーサーカー(そして私は“妹”の代用品にも成り得なかったとも……)
バーサーカー(彼女の器にも、欠けた物を埋めることすら出来ない私を彼女は一言も責めることはなかった)
バーサーカー(そんな彼女への憧憬はいつしか憎しみへと変わり、やがて虎姫崩壊を誘う要因となってしまった……)
バーサーカー(それでも正しく王者として頂きに立つ彼女は、最期まで私を赦そうと手を差し伸べてさえくれた)
バーサーカー(そんな彼女を誰が恨めようか? けど、煩悶する私の感情は何処に持って行けば良かったの?)
バーサーカー(雀霊として招かれてもずっと負の感情が私を責め苛い続け、いっそ狂い全てを忘れてしまいたかった……)
リチャ「し……の…………」
リチャ「助け…に……、来た……よ…………」ドサッ
――――
セイバー「―――― それでも私は聖牌を獲る」
セイバー「そうでなければ、淡…… そうでもしなければ私は何1つ、貴女たちに償えない……」
バーサーカー「こんな時までまだそんな理由で打つんだ…… 全く、テルは困った人だね……」
セイバー「淡……?」
バーサーカー「こんな形でしか想いを遂げられなかったんだ…… ずっと、ずっとこうしたかったんだ……」
バーサーカー「他の誰でもない、テル自身に私の罪を問われたかったんだよ……」ニコッ
セイバー「……ッ!?」
バーサーカー「テルに償いを求められていたのなら、きっとこんな私でもいつか自分を赦せる道を探すことができたのに……」
バーサーカ「でも良かったよ…… 最期にテルの腕に抱かれて、テルに看取られて逝けるなんて……」スゥッー
セイバー「待って、待って淡ッ!? 私はまだ貴女に……」
バーサ「まるで…… あの頃みたい…、だもん……」スッ
セイバー「何を…… まるで、じゃなく淡はあの頃から何も…… だって貴女はッ!!」
「」スゥーッ
セイバー「―――――――― 淡?」
セイバー「…………まだだ」
セイバー「まだ償える、まだ間に合う…… 私には聖牌がある、運命を覆す奇跡がある……」
セイバー「この手に聖牌さえ掴めれば全て償える、清算できるッ!」ゴッ
ワハハは鶴賀のみんな乗せて事故ってしまったん(´・ω・`)?
――――
竜華(ここまで何の防壁もなしか…… これでやっとわかったで、安河内美子の正体を)
竜華(あの女はつまるとこ聖牌に、麻雀に興味がない……)
竜華(だからその行動が酷く不気味で、理解できんかったウチを悩ませてきた)
竜華(アイツの目的はウチや…… どこでその恨みを買うたのか、考えるだけ無駄やけどな)
竜華(……だが奴の目的さえわかれば恐れる必要も憎む必要もない。アレは最早排除する目標の一つや)ギイイイッ
美子(アーチャーは大橋でライダーば、バーサーカーは地下でセイバーば食い止めてとる……)
美子(万事理想通りん展開だ。今ならば誰もウチん邪魔に入らなか)
美子(聖牌を鎮座させる場所の真下。幕引きにはこれ以上の場所はなかと)ニタァ
美子(思えばあん下らない新道寺ん連中と同類ん者から答えを得ようなと滑稽な話ばい……)
美子(清水谷竜華…… お前もただんレズっちわかった今、ウチが望むのはお前の破滅だけばい)
美子「主は我が魂を蘇らせ、御名の為に我を正道へと導く。例え死の谷の陰を歩むと禍を恐るるまじ……」
竜華「……」ギイイイッ
美子「……」ニヤリッ
竜華(戦術予想…… その武器は遠距離からの黒鍵の投擲と近接戦における八極拳。そして全身を覆う防弾加工の制服)
竜華(……安河内美子には固有麻術もなく、幾らあの新道寺出身で近接戦に優れていようとも…… 何ッ!?)
美子「ハァッ!!」
竜華「……ッ!?」スゥッ
美子(外した……? 清水谷ん動きが予想よりも遥かに速い、固有時制御か…… だがそうと分かればッ!)
竜華(何ちゅう速度や、1巡先を視なかったらやられてた…… コイツの近接戦は桁外れや……)
美子「テェィッ!!」
竜華(なっ……、もう懐に!?)
美子「……金剛八式、衝捶ッ」
竜華「ガァァッ!!」
美子「仕留めた…… クッ!?」パンパンッ
竜華「……」ハァハァ
竜華(咄嗟に2巡先まで視ぃへんかったら確実に飛ばされていた……)
竜華(怪物……、そうとしか形容できへん。一体どんな執念が人間をここまでの狂気に練磨したちゅうんや……)
竜華(アイツを確実に飛ばすには3巡先…… いや、4巡先まで視て確実にハコにせなアカン……)
美子「……」ハァハァ
美子(腕ば持っていかれたか…… 確かに手応えはあったんに清水谷竜華はなして生きてっと)
美子(固有時制御の麻術…… 違う、もはやあれは未来視とでも言うべきか)
美子(ならば残り令呪全ての麻力ば肉体強化に回し、未来予測をも上回る速度で攻撃ばすれば……)
竜華「ウオォォォォッ!!」ダッ
美子「ハァァァァッッ!!」ダッ
竜華(早いッ!? だがその速度も既に視えていたでッ!!)
美子(イケるッ!! 奴ん予測ば、未来ばこの一撃は超えるッ!!)
バリーン
竜華「これ……は………!?」
美子「聖牌…… 既に活動しよったんか……!?」
ドォォォォンッ
―――― ?
竜華「ここ、は……?」
怜『お疲れさん、竜華。 この戦い、アンタの勝ちやで』
竜華「怜…… いや、あの安河内美子が怜を生かしておくわけない…… アンタは誰や?」チャキッ
怜『……そやね、確かにウチはあの園城寺怜とは違ぅ』ニコッ
怜『ウチは既存の人格ちゅう殻を被らんと他者と意思の疎通ができんへんし。 ま、そういう意味ではウチも園城寺怜やで』
竜華「意思…… アンタは聖牌の意思とでも言うんか?」
怜『まぁそんな考え方でも間違いではないかな?』クスッ
竜華「アホな…… なら聞くけどウチの願望を聖牌はどないして叶えるつもりや?」
怜『何言うてんのや? そんなんとっくに竜華は理解しているやろ?』
竜華「なんやと……?」
―――― 救われた命が犠牲となる命よりも多ければいい 守られた数こそが尊い
―――― 幸福の数が不幸の数よりほんの少しでも多ければそれだけ世界の救済に近付く
―――― そして、iPSの研究を成功させればきっと今よりも幸福が増える
怜『だから私情を挟まず常に多数を選択して、最後に選び取ったんがウチやろ?』
怜『―――― ならウチ以外の人間なんてどうでもええやん?』ニコッ
竜華「何を言うてんのや……? 怜を選んだところで残り全ての人たちが犠牲になったら意味あらへんやろ……」
怜『違ぅで、常に天秤の傾いた方にウチがいればエエんやろ? 何もおかしなことないし、ウチしかおらん究極の平和やん』
竜華「……じゃあiPSは?」
怜『そんなん自分でもわからん物を自身の願望に含めたらアカンわぁ。奇跡言うても竜華の知る方法でしか叶わんで』
怜『ま、ウチら二人っきりの永遠さえあればそうゆー便利な物もその内出来るんと違ぅか?』クスクス
竜華「違う…… こんなん奇跡とちゃう……」
怜『何を言うてんのや? 竜華の願いをアンタの出来へん規模でやってあげるのが奇跡でなくて何て言うんや?』キョトン
竜華「……ああ、わかったわ」
怜『そっか、竜華もわかってくれてウチも嬉しいわぁ~ さぁ後は祈るだけやで、ウチを蘇らせぇとな』ヒシッ
竜華「そやな…… 怜、大好きやで。どないなろうとこれだけは絶対変わらへん」ギュッ
竜華「―――――――― ほなな、怜」グッ
怜『……ッ!? な、なにを……すんねんりゅう……か……』
竜華「……簡単なことや。怜一人と人類総て、天秤にかける必要もないやろ」ググッ
怜『な、なんできせきを……、せいはいを……アンタはこばむ……?』
竜華「アンタは万能の願望機なんかと違ぅ、ただの呪いや……」ギュゥッ
怜『あい…ぴぃえすは……、ど…すんのや……? あんなん…えいえん……むりや……』
竜華「人はな、予想を超えるんや…… ウチらじゃ無理でも想いさえ残れば人の手できっと果たすで」ギリギリッ
怜『のろったる…… あんたを……しぬまで……、ゆるさへんでっ……!』
竜華「ああ、構わんわ。前にも言うたやろ…… ―――――――― ウチはこの世全ての悪も担うってな」グギッ
――――
美子「……ッッ!? あ、あいが聖牌ん中身の正体とでも言うんか……」ハァハァ
竜華「……」カチャッ
美子「……!? フン、先に気ぃ付いた方が勝者とは何っちつまらぬ結末ばい…… なしてあれば拒んだ?」
竜華「アンタにも見えてたんか?」
美子「全てば投棄て犠牲にし、そうまでして得た物ん価値ば無に出来っと?! 愚か過ぎて理解できんばいッ!!」
竜華「あれがもたらす物よりも、あれが犠牲にする物の方が重い。ただそれだけの話や……」
美子「ならばウチに譲れッ! iPSなどと言う世迷い事に踊らされているお前にとって不要でもウチには有用ばいッ!」
竜華「アンタ、全てを見届けてなおアレが受け容れて良い物に見えたんか……?」
美子「そうだ! アレが、アレさえあれば全てのレズ共ば……、罪深き者共ば地上より一掃できるッ!!」
美子「神ん摂理に反する愚か共ば裁くウチん何がおかしかッ!? お前も正義ば志すのならウチに聖牌を……」
バンッ
竜華「ああ、アンタこそ愚か過ぎて理解できへんわ……」
美子「 」ドシャッ
――――
セイバー「……怜」
セイバー(僅かながら続いていた怜との麻力供給も途絶えてだいぶ経つ。とすると怜は既にもう……)
アーチャー「遅かったじゃない、セイバー。 旧友との再会はそんなにも楽しかった?」ケラケラ
セイバー「……アーチャー」ギロッ
アーチャー「そんな怖い顔しないでよ。いつもお澄まし顔のIH王者さんがどうしたの?」ククッ
セイバー「……そこをどいて。聖牌は私の物」ゴッ
ザクッ
セイバー「……カッ!?」ドサッ
アーチャー「何を寝ぼけた言ってんの? 聖牌は最初っから私の物に決まってんでしょ」
アーチャー「そう、前から見てみたかったんだ。お高くとまったアンタをコイツらで染めたらどんな顔をするのか……」ゴゴゴ
セイバー「な、何を……?」ハァハァ
アーチャー「私に科せられた痛み、アンタがどこまで耐えれるのかゆっくり見せてもらうわね……」ニヤッ
――――
セイバー(クッ…… 嬲り殺しにされるくらいなら自滅覚悟でこの右腕の一撃を……)ギリッ
セイバー(でもアーチャーの背後には聖牌が…… 私が反撃をしてアーチャーを飛ばしても聖牌も破壊してまう……)
セイバー(それを理解しているからアーチャーはあの位置に……、どうしたらこの状況を…… あれは!?)
竜華「……」
セイバー(……竜華が令呪を? まだアーチャーは気付いていない。そう、令呪の助力があればきっと……)
竜華「清水谷竜華の名の元に、令呪を以て命ず……」スッ
竜華「――――― セイバーよ、宝具にて聖牌を破壊しろ」
セイバー「……えっ!?」ギュルッ
アーチャー「はァ……? アンタ、何を考えてんの!?」ガタッ
セイバー「ち、違う…… どうして竜華ッ、よりにもよって貴女が何で!?」ギュルルルッ
アーチャー「クッ、何時の間にそんな所でッ!?」
竜華「第三の令呪を以て重ねて命ずる。セイバーよ……」
セイバー「止めろォォッ!!」ギュルルルルルルッッ!!
――――― 聖牌を破壊しろ
セイバー(今、全ての希望がなくなった…… 私の戦いは終わった)
セイバー(清水谷竜華…… 最後まで貴女とは信頼を築くことも、わかりあうこともなかったね……)
セイバー(聖牌を求め、そしてそれを破壊した貴女の真意は何だったの……)
セイバー(でもそれも当然か…… たった3度の命令のみの関係で、一体何を理解すれば良かったの?)
セイバー(私はもっと身近にいてくれた人たちの心も理解できなかったと言うのに……)
セイバー(そうか、これはすべて人の気持ちが分からない私に課せられた……)スッ
セイバー(罰だったんだね……)スゥーッ
ドシャァァ
アーチャー「な、何これ!? キャッ!」
竜華「どういう…ことや……? 聖牌は破壊したのにどうして……」
竜華「いや、そないことよりも…… アカン、こいつは止まらへん」
竜華「これを解放してもうたのは、ウチなんか……」
――――
ナナ「地獄ってのはこんな感じなのかねェ……」
ナナ「あの泥、まだまだ街に溢れ出るんだろうけど…… さすがの麻雀教会も隠し立ては難しいだろうね」ククッ
ナナ「聖牌はただの力を制御するための装置。それを破壊したらこうもなるさね」
ナナ「ま、千里山の雇われ雀士程度じゃわかるはずもないか」ハッ
ナナ「今回の聖牌戦争、この聖牌の欠片が手に入っただけで十分。 コレさえあれば慕もきっと……」ニヤッ
リチャ「もぅ……少しだ………」
ナナ「……耕介!? 馬鹿だよ、アンタは……」
リチャ「し……のっ………」ドサッ
ナナ「……優しいおじさんは遠い所にお仕事に行った。そういうことにしておいてやるよ、耕介」
――――
美子「……ここ、は?」
アーチャー「世話を焼かすわね、美子。 アンタを瓦礫から引っ張り出すのは大変だったのよ」フッ
美子「ウチは清水谷竜華に背中から心臓ば撃たれて…… アーチャー、何ぞ治療ば施したんか?」
アーチャー「いや、何も。 見たところ死んでるみたいだけどね、アンタ」クスッ
美子「心臓の鼓動が、なか…… 一体何が起きて……」
アーチャー「私があの泥で実体化したついでに、契約で繋がっていたアンタにも何らかの不条理が起きたんじゃないの?」
美子「お前は受肉ば果たしたんか? ウチらはあいから命ば授かったとゆうんか……」
アーチャー「さぁ、どうでしょうね? ま、あんな物が万能の願望機だなんて性質が悪すぎる冗談だけどね」ククッ
美子「アーチャー、お前も聖牌ん中身ば、正体ば知ったんか?」
アーチャー「あの泥は私の宝具と同じ性質の様だし一応は、ね…… それよりまだ気付かないの、美子?」
美子「……ん?」
アーチャー「鈍いわね。全てのサーヴァントは消滅し、残ったのは私だけ。 つまり、聖牌を勝ち取ったのは私たちなのよ?」
美子「なん……とっ……?!」
アーチャー「聖牌が本当に勝者の願望を叶えると言うなら、この景色がアンタの求め欲してた物よ……」ニタァ
美子「こいが…… こん破滅が嘆きが、ウチん望んでいた物だと……? ハハ…… アハハハハハッ!!」
美子「これではウチはあんレズ共以下ん邪悪、鬼畜じゃないかか! こげな物がウチん願望だったと!?」
アーチャー「……満足した、美子?」
美子「……いいや、まだばい。 答えば得たは良かがそこに至る経緯が何もなかか……」
美子「……なら次こそこん答えに至る物ば得なければ納得など出来るわけなかやろ?」ニヤッ
アーチャー「フフッ、アンタは本当に面白いわね……」
美子(……ん、あそこにいるのは清水谷竜華……? アイツも生きていたのか)
美子「……良か、受けて立つばい」ググッ
竜華「……」フラフラッ
美子「……!?」
アーチャー「……どうしたの、美子?」
竜華「……」ヨタヨタッ
美子「…………いや、何でもなか」クルッ
――――
コーチ「佐々野ァ! 緊急時はすぐに連絡をしろっていつも言ってんだろォ!!」
いちご「うぅ…… ス、スマンのぉ」ビクッ
コーチ「……ったく心配かけやがって。もうこれ以上うちの部員に何かあったら私は……」グスッ
いちご「……ん、本当にご心配かけてすいませんでした」ペッコリン
コーチ「ああ…… まぁいい、無事だとわかれば構わねぇさ。 それで、学校の方だが暫く休校に……」
いちご「はい、その話ならさっき担任からも聞きましたわ」
コーチ「そうか。 で、お前はどうするつもりだ?越境入学してる連中は休校中は地元に帰るようだが」
いちご「そうじゃのぅ…… まぁ、とりあえずは車の免許でも取りに行こうかのぉ」
コーチ「うん? 佐々野、車とかに興味なんてあったのか」
いちご「いや、まぁ…… ほら、あっても困る物じゃないしのぉ」アハハ
――――
セイバー(私はまた此処に戻って来てしまった。全ては契約の瞬間のままに、この血に染まった雀卓に……)
セイバー(この結末を変えるために奇跡を求めたはずなのに、また私はここで卓に着いている……)
セイバー(そう、全ての過ちは牌を手にしたあの日からだ 私が麻雀なんてしなければこんなことには……)
セイバー「……なさい」グスッ
セイバー「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…… 私が、私なんかが……」グスグスッ
『ただ、これだけは言えるよテル……』
セイバー「麻雀なんてしたから……」ヒックヒック
『テルと打ったみんなが、貴女が最高の雀士だったって思っていたんだよ』
セイバー「ごめんなさいごめんなさい…… ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい……」ウァァァン
―――― その顔を覚えています。目に涙を溜めて生きている人間を見つけ出せたと、心の底から喜んでいる女性の姿
―――― それがあまりにも嬉しそうでしたので、まるで救われたのは私ではなく、女性の方ではないかと思ったほど
―――― 『生きてる、生きてる、生きてるで!!』
―――― そうして死の直前にいる自分が羨ましく思えるほど、その人は何かに感謝するように、『おおきにな』と言った。
―――― 見つけられてよかったと、1人でも助けられて救われたと。
そしてウチはあの日助けた少女と数奇な縁から、家族のように暮らしていた。
あの戦い以来、ウチの周囲におる人間は誰一人失うことはなかった。けど、失った者を取り戻すことはできなかった。
「竜華さん、寝るならちゃんとベットで寝ないと風邪をひきますよ?」
「ああ、ウチなら大丈夫や……」
「全く。年上なんですからもっとしっかりしてください」
「アハハ…… 子供の頃、ウチは正義の味方になりたくてなぁ……」
「何ですか、それ?」キョトン
「きっとみんなが幸せになれるiPS細胞ちゅうのがあってな、それを作るのに憧れていたんや……」
「憧れていた、ってことは諦めてしまったんですか?」
「ああ、残念やけどな…… iPSの研究は期間限定でな、大人になってから勉強するにはむっちゃ難しいんや」
「……そう、なんですか?」
「そや。そんなこと、もっと早くに気付けば良かったんだけどな……」
「そうでしたか、それでは仕方ありませんね……」
「そうやな、本当にしょうがない…… ああ、本当にいい月やなぁ」
「ええ、仕方がないなら私が代わりにやります」
「……ッ?」
「竜華さんは大人ですからもう無理かもしれませんが、私なら大丈夫ですよね?」
「任せてください。竜華さんの夢は、―――― 私が、ちゃんと形にしてみせます」ニコッ
―――― そっか、ああ、安心したわ
―――― 竜華はさ、どないな大人になりたいん?
―――― ウチはな、正義の味方になりたいんや
おしまい。
乙。士郎枠は和か。
そしてやはり>>1は・・・・・
乙!
受肉したアコチャーはやはり全裸だったのかそれが問題だ
スレタイで竜咲(士凛)かと思ったがそんなことなかったな乙です。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません