【オリジナル】屑の街 (8)
固有名詞あり
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見てるよ
【殴り屋の副業】
―ファミレス―
アキラ「あんたが依頼者の人?」
女性「……あ、はい」
アキラ「で?誰をボコりたいわけ?」
女性「…………」
アキラ「聞いてる?」
女性「……!あ、すみません。その……女の人だとは思ってなくって……」
背も高く中性的ではあるが確かにアキラは女だ。
アキラ「ああ、この業界はほとんど男だからね。でも仕事はキッチリこなすから心配ないよ」
女性「は、はい……」
そう言って女性は震える手で一枚の写真をアキラに渡した。
アキラ「ふ~ん……チャラい奴だな」
女性「あ、あの……」
アキラ「ん?」
意を決したように女性は顔を上げてアキラに打ち明けた。
女性「こ、殺してください……その人」
アキラ「ハァ?」
女性「駄目……ですか?お金なら」
アキラ「あのね、アタシ《殴り屋》相手の骨を折ったりするけど殺しはやらないの。どんなに金を積まれてもね」
女性「……」
アキラ「殺したいなら《殺し屋》に……じゃあ」
女性「ま、待ってください!」
席を立つアキラの腕を掴もうと女性は震える手を咄嗟に伸ばすが、アキラは難なくかわして逆に女性の腕を掴まえた。
アキラ「……殺したい理由ってこれ?」
女性「……!…………はい」
――彼女の震えは緊張によるものだけではない。
アキラが女性の袖を強引に捲ると、その細すぎる腕には無数の注射痕があった。
女性「わ、私はあの人に……あの男に!」
アキラ「あー……振っといて何だけどアタシ込み入った事情とか聞かない事にしてるから」
女性「あ……」
アキラ「《殴り屋》として割り増しでぶん殴る。それでいいなら受けるけど……どうする?」
―某所路地裏―
バキィッ
男「オゴォ!てめ……ガッ!?」
アキラ「《殴り屋》だよ。心当たりあるだろ?」
男「殴り屋!?ざっけんな!」
二日後、アキラはターゲットの男をパチンコ店で発見した。
ナンパしたらノコノコと付いてきた男を人目の付かない路地裏まで誘導した次第だ。
男「ぐっ!この……!」
アキラ「なんだそりゃ?頑張れよチャラ男!」
ドスッ
男「ゲェッ!?」
暴力のプロであるアキラには男の拳はかすりもせず、反対にアキラの攻撃は面白い程に男を痛めつけていく。
ものの数分で男の鼻を潰し前歯をへし折り顎を割った。
アキラ「……これくらいにしといてやるよ……アタシも次の仕事があるからね。あ、そうだ証拠写真を……はいチーズ」パシャッ
男「が……おぼえ……」ヒュー ヒュー
腫れ上がった瞼でよく見えない目で睨み付ける男に近付いたアキラは横たわる男のそばで屈み囁くように声をかける。
アキラ「今回は特別だから教えてやるよ。お前に復讐してくれってアタシに依頼したのは――」
男「!!」
男(あのアマ!ぜってぇぶっ殺してやる!……テメーもだ殴り屋!仲間集めて穴だらけにしてからなぶり殺しにしてやんぞ……俺のバックには!)
アキラ「さてと……」
自分をこんな目に合わせた依頼者と殴り屋への復讐を誓う男には目もくれず、アキラは脱ぎ捨てたジャケットから何かを取り出した。
チャッ
男「へ!?」
アキラ「次の仕事だ……お前、組織のブツを横流しとか」
男の眉間に銃口を突き付けてアキラは言った。
アキラ「集金額の帳尻合わせてもバレるだろ。欲掻きすぎじゃね?」
男「ま……!」
パンッ
―ファミレス―
アキラ「……遅えな」
??「彼女なら来ませんよ」
アキラ「……キド」
《仕事》の結果を報告する期日、依頼者の女性は一向に姿を見せず代わりに現れたのはもう一方の《仕事》の関係者だった。
キド「彼女は死にました。急性の薬物中毒だそうで」
アキラ「…………」
キド「ああ、言っておきますが我々の仕業じゃないですよ。残念でしたね、成功報酬は貰えないようです」
アキラ「前金で貰ってるよ」
キド「そうでしたか。それは良かったですね……もしかしてこうなるって分かっていたんですかね?」
アキラ「知らねーよ」
キド「俺はアキラさんの《仕事》の確認と後始末の報告を……まさかそっちの方とバッティングしてるとは思いもよりませんでした。やり過ぎです酷い顔でした。一瞬別人かと思っちゃいましたよ」
アキラ「あっそ」
おどけた調子でペラペラ喋るキドにアキラは不機嫌そうに返して席を立つ。
キド「アキラさん、もういい加減副業(殴り屋)辞めた方が良いですよ?目立つから《上》にもあまり評判良くないし」
アキラ「うるせえな。あと、これ(殴り屋)がアタシの本業だよ」
【殴り屋の副業】……完
ナイスジョブだな
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