狐娘「無念じゃのう…」 勇者「…」(42)

<前レス>
魔王「無念じゃあ・・・」フヨフヨ 勇者「・・・」 - SSまとめ速報
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――――――――――――――――――――――――――――――――――

勇者「んしょ…家まであともう少し」

魔王「家に着くまでに潰されろおおぉぉ…」

勇者「イヤだよ、スイカに潰されて死んじゃうなんて」

魔王「スイカ運びいいぃぃ…砂煙のオプション付きいいぃぃ…」モワッ

勇者「うわわ!邪魔しないでってば!」

勇者「ケホッ、目に入ったけど手が塞がってる…」

魔王「おいぃぃ…あれを見ろおおぉぉ…」

勇者「もう少ししてからじゃないと無理…」

魔王「お前の家のドアが開いているぞおおぉぉ…」

勇者「えっ?!」パチクリ


魔王「空き巣かあぁぁ…不用心な奴めえぇぇ…」

勇者「ちゃんと鍵はかけたよ、鍵持ってるし」

勇者「もしかしてまだ中にいたりするのかな…」

魔王「鍵を使わずに進入うぅぅ…魔力を持ってる可能性ありいぃぃ…」

魔王「こっそり入って奇襲をかけるかあぁぁ…」

勇者「そうだね、ここが1件目だったらラッキーかも」

勇者「周りの家に入っちゃうかもしれないし、ボクの家だけで済めばそれが一番いいよね」

魔王「勇者の自己犠牲発動うぅぅ…それともただ単に受けなのかあぁぁ…」

勇者「スイカはとりあえず木陰に置いといて…」ゴト

勇者「魔力持ってるとたぶん見えるから、魔王も慎重にね」

魔王「重々承知いぃぃ…」

勇者「じゃあ行ってみようか」

おお…続編か

ズズズッ…ピチャッ…

勇者「部屋から何かすする音が聞こえる…」

魔王「仕方ないぃぃ…私がホコリで牽制するからあぁぁ…」

魔王「その隙を突けえぇぇ…わかったかあぁぁ…」

勇者「えーと…うん、そうする」

魔王「ではゆくぞおぉぉ…」モコモコッ

魔王「くらえぇぇ…」バッ

モフッ

???「む?誰かおるのか?」

魔王「しまったあぁぁ…弾かれたあぁぁ…」

勇者「あれ?なんだか聞いたことある声がする」ヒョコッ

???「む、家主殿と…魔王様じゃな、これは失礼じゃった」

???「これオトモ、茶をもてい!」

オトモ「はっ!只今お持ちいたすであります!」パタタタ

オトモ「お待たせしたであります!」コトッコトッ

???「うむ、御苦労じゃった」

勇者「キミって…たしか狐娘だったよね…」

狐娘「いかにも、わしは北の森を治めておる狐娘じゃ」

狐娘「ここに魔王様がいらっしゃると聞いてのぅ、家主殿への再度の礼も兼ねて参ったのじゃ」

勇者「そんな、お礼なんていいのに…」

勇者「でも…どうしてここに魔王がいるってわかったの?」

狐娘「虫の知らせじゃ、虫の知らせ。うわさを聞きつけて来てはみたんじゃが、ん…」ゴクッ

狐娘「ふぅ…、疲れるわ、暑さでのどが渇くわ、挙句の果てに家主もおらわでのう」

狐娘「少々失敬して茶をしばいておったのじゃ」

勇者「勝手に入るのはよくないんじゃないかな…」

狐娘「わしは偉いからのう…」ズズズ…

コトッ

狐娘「・・・・・・」スススッ ペコリ

狐娘「・・・しかるに、魔王殿、お顔を拝見いたすのも実に数年ぶり」

狐娘「実に痛ましいお姿じゃが、再び対面できてよかったですじゃ」

魔王「そうかあぁぁ・・・」

狐娘「よもやわしらの恩人に討たれてしまうとは思いもしないことじゃったが・・・」

狐娘「家主殿とはいかがお過ごしじゃろうか?」

魔王「私の方が立場が上だあぁぁ・・・案ずるなあぁぁ・・・」

魔王「そして私はもう既に王座には居ないいぃぃ・・・畏まる必要もないいぃぃ・・・」

狐娘「・・・すみませんですじゃ、わしは玉座についておられる魔王殿しか存ぜぬゆえ」

狐娘「このような態度をとってしまうのですじゃ、許してくだされ」

魔王「そうかあぁぁ・・・ならば仕方がないかあぁぁ・・・」

狐娘「うむ、仕方のないことなのですじゃ」

勇者「魔王と知り合いだったんだ、知らなかった・・・」

魔王「大変そうだったから援助したあぁぁ・・・」

勇者「そうなんだ」

狐娘「うむ、先に手を差し延べてくれなさったのは魔王殿じゃった」

狐娘「わしら、人魔混合の町は土地が肥沃でないゆえ、農業に弱みがあってのう」
狐娘「そこに不作なんぞぶち当たった時には途方に暮れたものじゃが」

狐娘「昔は魔王殿、今は家主殿の橋渡しでこの国に援助してもろうておる」

勇者「前にごろつきを倒したときにはそんな話聞いてなかったけど・・・」

狐娘「下手に魔王殿から援助を受けていると言えば、属領と思われてしまうからのう」

勇者「そっか」

狐娘「まぁそれはもう済んだ話じゃ。終わりよければ・・・」

タタタタッ バタム!

賢者「勇者さん!悪霊を掃いに来ました・・・!」ゼハーゼハー

賢者「それと、外に置いてあったスイカです!」

勇者「あ・・・ありがと、すっかり忘れてた」

魔王「来たなあぁぁ・・・バカ賢者あぁぁ・・・今日がお前の命日だあぁぁ・・・」モコッ

賢者「フ、残念でしたね。今日の私は特別です!」

賢者「なぜなら、私が開発した、この超強力な悪霊掃いの魔符がありますからね!」ジャーン

魔王「なんだとおぉぉ・・・」

賢者「これを貼り付けてやれば、悪霊もイチコロ!私の大勝利です!」

魔王「どうやって張り付けるんだあぁぁ・・・」

賢者「・・・へ?何言ってるんですか、こうやってペタッと」

賢者「ペタッと・・・」

魔王「・・・・・・」

賢者「・・・・・・」

賢者「あーー!!」

魔王「バカ賢者ぶれないいぃぃ・・・出直してこいいぃぃ・・・」

賢者「ううぅ・・・自分のバカさ加減にものも言えません・・・」シクシク

狐娘「これ、賢者殿」クイクイ

賢者「はい・・・どちら様でしょうか・・・」

狐娘「そんなに萎れてしもうて・・・どうしたんじゃ?」

賢者「んあ!このしっぽ!狐娘さんじゃないですか!」

狐娘「い、いきなり頓狂な声を上げるでない・・・」

賢者「お久しぶりです!うわぁ、オトモさんまで!」

オトモ「ご無沙汰していましてござるであります!」ビシッ

賢者「わざわざこんなとこまで何用ですか?」

賢者「はっ!まさかまた与太者が湧いたとか・・・」

狐娘「それは新しく雇った門番がどうにかしておるが・・・」

狐娘「相変わらずの復活の早さじゃな、お主は・・・」

賢者「えっ、あ!萎れてた理由ですか?」

狐娘「いや、元気そうならそれでよい」

賢者「そうでもないんですよ、実は・・・」

狐娘「はぁ・・・」

魔王「バカ賢者あぁぁ・・・まだ風呂覗かれたの引きずってたのかあぁぁ・・・」

賢者「まだとはなんですか!一生の心の傷なんですよ!」

賢者「墓まで持って行かないといけないんですよ!?」

魔王「そんなに苦しんでるのなら早く死ねえぇぇ・・・」

賢者「いーだ!悪霊の言うことなんて聞きませんもんね!」

魔王「いーだあぁぁ・・・気持ち悪いいぃぃ・・・」

賢者「きっ、気持ち悪いって言うな!」

狐娘「魔王殿、やはり覗きはダメじゃ」

魔王「それじゃああぁぁ・・・サプライズにならないいぃぃ・・・」

狐娘「驚かす方法なら他にもいくらでもありますじゃ、やりかたを選んでくだされ」

魔王「そうかあぁぁ・・・」

狐娘「ところでお主ら、暇しとるかの?」

賢者「こうなったら正攻法です!どりゃー!」ピカーン

魔王「ホコリの前には全てが無意味いぃぃ・・・」モフモフ

ドタバタバタ ギャー! ドカッ クソォ・・・ モフリ

勇者「えぇと、普段は暇してるよ」

狐娘「そうか、ならばちと町に来てほしいのじゃが・・・」

勇者「・・・ん、どうしたの?」

狐娘「さっき賢者殿に聞かれて、門番がどうにかしておると言った与太者の件なんじゃが」

狐娘「最近襲撃が増えておってのう、心配しておるのじゃ」

狐娘「幸いにして、まだ門番一人で片が付いておるが・・・」

勇者「凄いね、その門番の人、一人でやってるの?」

狐娘「うむ、まぁ、ワケアリなんじゃがの・・・」

狐娘「・・・で、来てくれるのかの?」

勇者「もちろん!」

<北の町周辺>

賢者「・・・・・・」チラッチラッ

魔王「・・・・・・」チラッチラッ

勇者「オトモさん、戦士達に連絡して、どれくらいで戻って来るのかな」

狐娘「半日もいらんじゃろうな、非力な方じゃが町一の俊足じゃ」

勇者「へー、見た目は普通なのに」

狐娘「能ある鷹はなんとやら、というわけではなくての」

狐娘「足が早い魔物と人のハーフなんじゃ」

狐娘「じゃから、わしも含め、ちと人離れした力を持つ者がちらほらおるのが、そこに見えてきた町じゃな」

勇者「ほら、賢者、魔王、もう着くからあんまり騒いだりしないでね?」

賢者「・・・・・・」チラッ

魔王「・・・・・・」チラッ

勇者「ちゃんと聞こえてるのかな・・・」

ヒンッ ドスドスッ

魔王「おいいぃぃ・・・ついに手を出しやがったなあぁぁ・・・」

賢者「は?何もやってないじゃないですか!」

魔王「じゃあ私スレスレに飛んできた矢はなんだあぁぁ・・・」

賢者「私どっこにも弓なんて持ってませんから!」

勇者「ひょっとして敵・・・?」

狐娘「いや、あの方向から飛んできたからの、門番じゃな」

勇者「見えないとこから撃ってくるなんて・・・」

狐娘「これ、門番!客人じゃ!」

門番「あら、ご主人のお客さんだったんですか、残念ですねえ」テクテク

狐娘「こちらは以前町を救っていただいた家主・・・もとい、勇者殿じゃぞ、非礼を詫びておかんか」

門番「あららすみませんねえ、町で何かしたらブチ当てますから、よろしくお願いしますよお」

勇者「あはは・・・こちらこそよろしく・・・」

<北の町>

狐娘「町に来て早々物騒な目に合わせてしもうて、すまんじゃったのう」

狐娘「あやつは数ヶ月ほど前から住みはじめたばっかりじゃから、与太者退治の件は知らんのじゃろう」

勇者「魔王も知らなかったみたいだけど・・・」

狐娘「それに関してはようわからんのう・・・」

魔王「初対面で弓を射かけられたあぁぁ・・・精神的ショックが凄いいぃぃ・・・」

賢者「ふん、そのまま成仏しちゃえばよかったんですよ」

魔王「よく言ったあぁぁ・・・成敗してやるうぅぅ・・・」

賢者「コッチの台詞です!」

狐娘「これこれ・・・」

<北の町・食堂>

スケルトン「 」カッチカッチ カタカタ

勇者「うわわ、見てると肩に力が入っちゃうよ・・・」

狐娘「案ずるでない、一応料理はできるからの」

夜雀「チッチッチッっと鳴く鳥を~っと」ザッザッ

狐娘「これ、集中しておかんと手を切るぞ」

夜雀「言われなくてもわーってんよ、狐のばーちゃん」ザクッザクッ

夜雀「っつーかまた来てんのね」ザッザッ

勇者「ばーちゃんって言われてるけど・・・」

狐娘「放っておけ、どーせのらくらのノータリンじゃからな」

夜雀「へいよ、極辛ラーメンにしといたぜ、おまちっと」ゴト

勇者「普通のラーメンじゃなかった?」

狐娘「なんじゃ注文ミスか。代は出さんからの」ズズッ

夜雀「じょーだんキツイぜおねーさんよ・・・」

狐娘「・・・ぶっ!こほっ!み、水じゃ水!」ヒイィ!

賢者「ふっ」

魔王「ズルイぞおぉぉ・・・」

賢者「あーっはっは!悪霊にはラーメンなんて食べれませんよね!」

賢者「しかも私はニンニクをしこたま入れます!ヴァンパイアも真っ青ですよ!」

魔王「いいなあぁぁ・・・バカ賢者の激辛ラーメンんん・・・」

賢者「はっ!?」

賢者「やってくれましたね?!ラーメン真っ赤じゃないですかぁ!!」

魔王「暑い夕方はもっと熱くなるべしいぃぃ・・・」

賢者「我慢大会やってるんじゃないんですよ!」

夜雀「はいはい、変えてやっから、泣くな、な?意地悪してごめんな?」

狐娘「たっ・・・たわけがぁ・・・・・・死ぬかと思ったんじゃぞっ・・・!!」グズッ

勇者「久しぶりに賑やかな夕食だなー・・・」

勇者「そういえば、ボクこの町でキミ見たの初めてなんだけど」

夜雀「ん、俺みたいなのそこらじゅうにいるっしょ」

夜雀「あ、もしかしてあんた他所の子?」

狐娘「ふうぅ・・・勇者殿じゃたわけが・・・」ヒリヒリ

夜雀「っへえー!なにそれお偉いさんじゃん!」

勇者「偉いわけじゃないけど・・・」

夜雀「まぁまぁ、あ、サインいただけます?店に飾ろっかなーと」ゴソゴソ

勇者「ボクでよければ・・・」

夜雀「いやー、まさかここに来て一月で有名人がご来店なんて照れちゃうよなぁ~骨っ子~」

スケルトン「 」カチカッチ

夜雀「何言ってんのか全然わかんね、後で筆談よろしく」

勇者「結構最近なんだね、ここ来たの」

夜雀「ん、平和になってからはちょくちょく来てるよいろいろ」

夜雀「俺みたいな魔王に従ってなかった魔物とかもいるよなぁ」

夜雀「つっても、フツーの魔物並に風当たりは強いな、うん、ここじゃそんなことないけど」

勇者「そっか・・・」

夜雀「ああいや、そんな落ち込まないでくださいって!」

夜雀「このばー・・・じゃなかった、ねーちゃんからあんたの事は耳タコなくらい聞いてるからさ」

夜雀「ねーちゃんに色々協力してやって欲しいなーとか・・・」

勇者「協力・・・?」

夜雀「あー、後は多分このねーちゃんがいいますから」

狐娘「・・・・・・」

夜雀「俺は世界中が認めるラーメン作りに忙しいんで、ええ」

夜雀「ラーメンに境は無いってね、そういうこっで、ええ、ええ」

<狐娘宅>

狐娘「なにが『前フリしてやったからウチの宣伝よろしく!』じゃ、たわけが・・・」

勇者「いいと思うよ、やってあげても」

狐娘「ふん!」

賢者「あづ・・・」

魔王「脱水症状で死ねえぇぇ・・・」

賢者「ニンニクブレスかましますよ・・・?」

魔王「死んでも嫌だあぁぁ・・・」

勇者「話、みんなで聞いた方がいい?」

狐娘「・・・できればそれがよい」

勇者「じゃあ戦士達来てからにするね」

狐娘「うむ、わかった」

戦士「おいッス」

神官「・・・おいッス」

オトモ「おいッスでありますッス!」

狐娘「うむ、よくぞ参った」

神官「・・・初めてお目にかかります、神官と申します」

戦士「戦士だ、よろしく」

戦士「与太者退治だって言うから来てみたんだが、どうなってるんだ?」

勇者「今から話し合いするとこ」

戦士「んじゃあちょうど良かったな」

神官「私が急かせていなければ遅刻でしたね・・・」

戦士「はいはい、ありがとさん」

神官「心を込めて・・・」

戦士「ありがとうございました」

魔王あいかわらずホコリで戦ってるのかwwww

狐娘「皆が集まったところで、まずは件の与太者共についてじゃ」

狐娘「目的も規模もわかっておらんが、長期にわたって戦いをしかけて来ておる」

勇者「マスク被ってるんだっけ」

狐娘「うむ、判断材料はそれしかないがのう」

戦士「そいつら一人一人はどれだけ強いの?」

狐娘「そうじゃなぁ・・・5人がかりでも今の門番を落とせぬようじゃし」

狐娘「昔からも余り町へ侵入を許したことは少ないからのう」

戦士「んじゃあ俺達でも相手が務まるかもな」

狐娘「そうじゃな」

狐娘「ところで、最近は奴らの襲撃が増えておる」

狐娘「先の一週間では、襲撃が5回、一回の平均人数が二人じゃな」

賢者「あれ、それっておかしくないですか?」

狐娘「む?」

賢者「5人がかりでも門番さんやっつけられないのに、二人って・・・」

狐娘「前からじゃな、ちょっかい程度に突いて来るだけじゃろうと思っておるのじゃが・・・」

賢者「そっちに注意を向けてるんじゃないかって思ったんですけど」

賢者「考え過ぎでしょうか・・・」

神官「その場合、町内に何か潜んでいる可能性が出てきますね」

狐娘「そこまでは考えておらんかったのう・・・」

戦士「でもさ、あまり侵入はされてないんだろ?心配なんてしなくてもいいと思うんだけど」

賢者「あっ、そういえばそうでした」

魔王「話ちゃんと聞いてろおぉぉ・・・バカ賢者あぁぁ・・・」

賢者「うっさいですね悪霊、悪霊も何か考えたらいいじゃないですか」

魔王「本拠地見つけだして潰せば終了うぅぅ・・・」

狐娘「・・・まぁそうじゃな、それが一番手っ取り早いのう」

狐娘「しかしこの辺りの森は深くてのう、本拠地の在りかなんぞ皆目見当もつかんのじゃ」

魔王「仕方がないいぃぃ・・・それは私が探し出すうぅぅ・・・」

賢者「おお、悪霊もたまにはいい事言いますねー」

魔王「見習ええぇぇ・・・」

賢者「どーせまぐれですよ、まぐれ」

魔王「言ったなあぁぁ・・・隙ありいぃぃ・・・」モフッ

賢者「うわっぷ!」

勇者「夜目に紛れればあまり気づかれないし、見える人は限られてるし」

勇者「気づかれてもゴーストだって思われるだろうから、適任だと思うな」

狐娘「非常に助かりますじゃ」

戦士「場所がわかれば神官でひとっ飛びだしなー」

神官「・・・あまりアテにしすぎないでください」

戦士「んで、本拠地捜索が魔王か。離れられる距離に制限とかあるのか?」

魔王「無いいぃぃ・・・」

戦士「へぇ・・・そうかそうか」

勇者「ボク達はどうすればいいのかな?」

狐娘「さしずめ門番の手助けでもしてもらおうと思っておったのじゃが」

狐娘「四人は多すぎじゃのう・・・」

神官「・・・もしよければ、私と戦士で町の調査をしてみます」

狐娘「む?」

戦士「えっ?」

神官「注意を反らし、時間稼ぎをしている、という線を私は捨てきれません」

神官「念には念を入れましょう」

戦士「俺も行かなきゃダメ?」

神官「・・・・・・」ジーッ

戦士「わかりましたご同行させていただきます・・・」

勇者「じゃあボクと賢者はお手伝いだね」

賢者「頑張りましょう!」

魔王「勇者の足引っ張る気まんまんだあぁぁ・・・」

賢者「んなわけないじゃないですか、ホコリじゃなくて魔法が飛ばせますからねー私は」

魔王「そうかそうかあぁぁ・・・私が飛ばせるのはホコリだけかあぁぁ・・・」フワリ

賢者「なっ・・・それは・・・!」

勇者「ラーメン屋の七味だよ」

魔王「目に入れてやるうぅぅ・・・」フワフワ

賢者「しゃ、洒落になってないですよっ!」ダッ

魔王「待てえぇぇ・・・」フワフワ

勇者「賢者と居るとき、魔王なんかいつもより生き生きしてる気がする」

戦士「眺めてないで止めてやれって・・・」

狐娘「大方の話は済んだでのう、まぁ、次の話なんじゃが・・・」

戦士「ん、まだ何かあるのか?」

神官「オトモさんには何も聞いておりませんが・・・」

オトモ「私も聞いてないであります!」

狐娘「話すつもりはなかったんじゃが、あの夜雀のたわけがほざきおったからのう・・・」

狐娘「・・・今回の件にも関わってくるがの、願望じゃ、願望」

勇者「願望・・・?」

狐娘「この町には、魔物も、人も、そしてわしのような混血も隔てなく暮らしておる」

狐娘「じゃが、魔王殿が亡くなってからというもの、押さえ付けられておる者等が沢山おるという話じゃ」

狐娘「だからの、わしは・・・それをどうにかしたいと思っておる、この町を中心にじゃ」

狐娘「この町は・・・現にこの町は、共生に成功しておる」

狐娘「ここから、少しずつでもこの町の事を世に知らしめてやることができれば・・・」

ガチャ

門番「こんばんわあ、失礼しますよお」

戦士「ん?」

門番「あらあらあら、見たことの無い顔がありますねえ」

門番「そこの方とそこの方はどうやって侵入したんですかあ?」

狐娘「これ・・・この方達は勇者殿の友人方じゃ」

戦士「ゴメンな?移動がめんどくさくて魔法使って来ちまったんだ」

神官「・・・申し訳ございません」

門番「困りますねえ、次からは守ってくださいよ?」

戦士「おう、わかった」

神官「・・・承知しました」

門番「はいはいはい、あっ、そういえば」

門番「聞いてしまいましたよお、ご主人の願望」

狐娘「願望・・・というより野望と言う方がしっくりきそうじゃがの・・・」

門番「そうですかあ、野望ですかあ」

門番「私は反対ですよお、そのご主人の意見」

魔王が新たな能力を手に入れた

狐娘「反対か・・・どうしてじゃ?」

門番「そんなことしたら、『ここには魔物がいますよー』って宣伝しちゃうようなものじゃないですかあ」

門番「変な輩が押しかけて来たら、私の仕事が増えちゃいますよお」

門番「追っ払うのは楽しいから構わないんですけどねえ」

狐娘「じゃが、そうしないと世界に知れ渡らんじゃろう」

門番「ご主人、知ってますか?」

狐娘「む?」

門番「半月位前に来た半獣の方が、ここは天国だっておっしゃってたんですよお」

門番「『ここでは自分の技術も、自分の人格も認めてもらえるんだ』って」

門番「それは私も同感なんですよねえ」

狐娘「それならば尚更広めた方がよいじゃろう?」

門番「危険ですよお、そんな事」

門番「今ここは、かなり純度が高いんですよお、いい方々の」

門番「でも、広げちゃったらどうしても不純物が混ざっちゃいますよお」

門番「不純物は集まったらゴミ屑になっちゃいます。掃除が大変ですねえ」

狐娘「・・・・・・」

門番「不純物は綺麗にはなりません、それは私がよく分かってます」

門番「この世から不純物が無くならない限り、不可能だと思いますよお?うふふふ・・・」

狐娘「お主・・・」

門番「それでは、私は明日早起きしなきゃいけないので、隣室で寝てますよお」

門番「ごきげんよう~」

ガチャ・・・パタン

狐娘「・・・・・・」

勇者「門番さん・・・」

狐娘「・・・あやつがここに来るまでどのような境遇の中に身を置いておったのかはわからん」

狐娘「じゃが、少なくとも恵まれたものでは無かったじゃろうとは思う」

狐娘「今でこそ居候しておるが、あやつが初めてこの家に入ったのは盗みをするためじゃった」

賢者「へぇ、あの方盗賊さんだったんですか?」

狐娘「うむ、かなりの手練じゃったが、わしの法力でも取り押さえることができた」

狐娘「なんやかやでここに居着いて町を守る職についておる」

狐娘「じゃが・・・そうか、ちと自信を無くしてしもうたのう・・・」

戦士「適当に振る舞ってはいたが、目は本気だったなぁ・・・」

神官「・・・・・・」

狐娘「天国か・・・そう思ってくれておる者もおるんじゃな・・・」

狐娘「どうしたもんかのう・・・」

狐娘「これにはまだ決着がつきそうにないでの、まずは目先の事じゃ」

狐娘「物騒じゃという評判が消えるだけでかなり変わってくるじゃろう」

戦士「そうだよな、危ないとよっつけないもんな」

狐娘「うむ、そうと決まれば早う寝ることじゃ」

狐娘「不躾な頼みじゃが・・・よろしくお願いしますじゃ」

勇者「思ってたより深い事みたいだけど、頑張ってみよっか」

魔王「私の仕事が一番しんどいいぃぃ・・・」

賢者「自分で言ったくせに何言ってるんですか悪霊、しっしっ」

魔王「何の話だあぁぁ・・・」

賢者「さっさと探しに行ってくださいよ、早い方がいいですし」

魔王「明日からしようと思ってたあぁぁ・・・」

賢者「眠りもしないくせに何言ってるんですか」

~夜中~

オトモ「・・・失礼するでありまーす」ソローリ

門番「待ってましたよお」

オトモ「門番殿!唐突でありますが言いたいことがあるであります!」

門番「私からいいですかあ?」

オトモ「構わんであります!」

門番「いつからそんな口調に変えたんですかあ?」

オトモ「これであります!この戦時モノの小説であります!」パッ

オトモ「隊長の男っぷりに感激したのであります!私も男、いえ、漢になりたいが為に口調改造したのであります!」

門番「そうですかあ、納得です」

オトモ「門番殿、言いたいことがあるであります!」

門番「なんでしょう?」

オトモ「先程のご主人への抗議の中に私の独り言が混じっていたであります!迷惑千万であります!」

門番「第三者の言葉って説得力があるんですよお」

オトモ「私カオマッカだったであります!ヒドイであります!」

門番「私は薄々気づいていたんですけど、やはりああいう考えだとわかると、少しショックですねえ」

オトモ「流さないでくださいであります!」

門番「あれだけ言っても、ご主人はきっとわかってはくれないでしょうねえ」

門番「ご主人はこの町の長ですから進めていこうとするんでしょうねえ」

オトモ「門番殿・・・」

門番「オトモさんはこれからも頑張ってくださいよう」

門番「私も・・・頑張りますから」

オトモ「こっちは任せてほしいであります!」ビシッ

門番「・・・・・・」

オトモ可愛い
支援

~翌日~

門番「お二人とも、こちらですよお」

賢者「ご案内感謝です!」

勇者「賢者に同じく・・・」

門番「いえいえ、いいんですよう、迷われるよりはマシなんです」

門番「それより、お手伝いのお仕事なんですけど」

門番「ここに座っていただいて」

勇者「ここだね?」ストン

賢者「よいしょっ」トサッ

門番「はいはい、そのまま一日中お願いしますよお」

勇者「えっ・・・?」

門番「用心棒していただければいいんです、大人しくしていてくださいねえ」

勇者「う、うん、わかった・・・」

勇者「・・・ねえ、賢者」

賢者「なんですか?悪霊の事ですか?」

勇者「あれ、ばれちゃった」

賢者「当て推量だったんですけど・・・今丁度悪霊の事を考えていたので」

勇者「そう・・・」

勇者「・・・賢者はたぶん、もうわかってると思うんだけど」

勇者「魔王、結構力付けてきてるんだ」

賢者「ええ・・・前に訪問したときより重いものを持ち上げていましたし・・・」

賢者「先日なんて七味ですよ!七味唐辛子!」

勇者「それくらいのものは持ち上げることができるみたい」

勇者「いつもいろんなもの動かしてるからかな・・・」

賢者「それは・・・非常に危険だと思いますよ」

賢者「そのうち刃物なんかを動かすことができるようになるかもしれません・・・」

賢者「そうなれば、人を殺す事だってできます」

勇者「・・・・・・」

賢者「だから取り返しのつかない事態に陥る前に消してしまうべきなんです」

賢者「勇者さんには・・・その、悪い・・・と思いますし、まだ消す術も無いんですけど」

賢者「後々の憂いは・・・絶っておくべきです」

勇者「・・・・・・」

勇者「・・・そっか、それが一番安全、だよね・・・」

賢者「・・・はい」

勇者「・・・そっか・・・」

<町中>

戦士「いいな、神官探偵団」

狐娘「どうじゃ?悪うなかろう」

神官「・・・・・・」

オトモ「ご主人、僭越ながら私めが意見申し上げますであります!」

狐娘「何じゃ?言うてみぃ」

オトモ「探偵団ではなく、探偵隊がよいであります!」

狐娘「探偵隊・・・じゃと?」

オトモ「そうであります!そしてこの変更が成ったあかつきには・・・」

オトモ「・・・この方は神官団長殿ではなく、神官隊長に・・・であります・・・!」

戦士「なるほど、実にリーダーっぽいな」

狐娘「うむ、至極真っ当な意見じゃ、採用!」

オトモ「ありがとうございます!ありがとうございます!」

神官「・・・・・・」

戦士「ということで神官隊長、今から何するんだ?」

神官「・・・町中にいるやもしれない与太者を、呪文である程度洗い出す準備をします」

戦士「あれ、推理とか無いの?」

神官「・・・考えておりません」

狐娘「よいではないか、隊長殿は呪文を用いた方がつつがなく事が運ぶとふんでおるのじゃろう」

オトモ「必ずしも細かい作戦が勝利に繋がるとは限らないのであります!」

オトモ「真に必要な物は絆!仲間内の絆であります!それを欠いて・・・」ベラベラ

神官「・・・・・・」

狐娘「・・・こやつの事は抜きにしておいて、わしには少し寄るところがあるんじゃが」

狐娘「少し時間を貰えんかの?」

神官「はい、どうぞ」

狐娘「かたじけないのぅ」

狐娘「・・・ふむ、潰れろ潰れろと思うとったが、遂に潰れてしもうたか」

夜雀「店閉めてるのはまだ仕込みの時間だからだよ、ばーちゃん」

狐娘「たわけが・・・」

夜雀「コッチの台詞だっつーの~」

オトモ「おはようございます!おはようございます!」

夜雀「うへぇ、オトモさん元気溌剌としてんなぁ、分けてほしいわ」

オトモ「どうぞどうぞ!」

夜雀「いやどうぞって言われてもなぁ・・・」

夜雀「ん、そういえば見ない顔がいっぱいいるじゃん」

夜雀「朝一で町に入ってきたん?」

神官「・・・いえ、わt オトモ「神官探偵隊のご一行様であります!」

夜雀「っへえー、探偵なん?」

戦士「全然違うんだけど」

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