キョン「それって、つまり……どういうことなんだ？」

長門「世界は無数に存在している。可能性による分岐点が必ず存在し、一般には知られずに、いくつもの世界が、普段は交わることなく継続している」

古泉「簡単に言えば、いくつも並行世界が存在し、並走している、ということですよ。僕たちが知らないだけで」


あの事件――世界が２つに分裂し、天蓋領域だの何だのが出てきて、ハルヒが拉致された事件からはや数か月。
最近はこれといった異常もなく、平穏な日々を過ごしていたのも束の間、
俺は着信音に睡眠を妨げられ、深夜にいきなり公園へと呼び出された。

公園には、すでに長門と朝比奈さん、それに電話の主――古泉もいた。


キョン「で、それは誰が引き起こしていて、何がこれから起こるんだ？」

長門「現状において、今回の異常の原因が涼宮ハルヒとは断定できていない。現在、情報統合思念体が総力を挙げて調査を進めているが、原因解明には至っていない」
　　「このまま世界線の交錯が続けば、９９．９９％以上の確率で３日以内に世界線同士の衝突が発生、そこに歪みが生じ、世界線が完全に交わってしまう」

キョンは大きくため息を吐く。

キョン「それで、世界線が完全に交わると、一体どうなるってんだ？」

長門「簡易的な説明を用いるならば、この世界に怪獣や魔女が現れる可能性が浮上する」

キョン「……は？」

古泉「本来、この世界には怪獣も魔女もいません。しかし世界線の中には、そういった生命体が存在するものもあります。それらが、この世界線に流入してくる可能性が出てくるのです」

キョン「なっ…………！」

俺は思わず、言葉を失った。
ふと、朝比奈さんの方に目を向けると、より一層深刻な雰囲気を醸し出しながら、俯いていた。

だが、聞くしかない。この異常の果ての未来を知っているのは、彼女ただ１人なのだから。

キョン「未来は……未来は、どうなっているんですか……？」

みくる「数時間前に、数秒の交信を行って以来、音信不通になっています」
　　　「そのとき……こちらの声は届いたのかはわかりませんが……少なくとも、彼女はこう私に伝えました」


　　　「未来を変えろ、さもないと……宇宙が崩壊する、と」


キョン「宇宙が、崩壊……？！」

だが、そんなことができるやつは――。

キョン「ハルヒは！？ハルヒはどこにいるんだ！？」

長門「現在、行方不明となっている。こちらについても、総力を尽くして捜索を行っている」

キョン「なっ……！！」

古泉「今回の世界線の異常と、涼宮さんの失踪には、少なからず、何かしらの繋がりがあると考えられます」
　　「ですから、我々機関と長門さんたち情報統合思念体は臨時協定を結び、原因の解明と涼宮さんの捜索、並びに犯人の追及を行っています」

キョン「くそったれ！ハルヒの安全は、機関とやらが保証するんじゃなかったのかよ！！？」

俺は思わず、古泉の胸ぐ掴んだ。

みくる「キョ、キョン君……！」

古泉は、一瞬、唇を噛みしめ、俺の手をそっと振り払った。

古泉「その件に関しては……本当に、申し訳なく思っています」
　　「しかし、言い訳がましいかもしれませんが、それほどまでに敵は未知数です」
　　「これはあくまで、私個人の見解ですが……何者かが、涼宮さんを拉致し、その力で他の世界線の何かを、得ようとしているのかもしれません」

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