魔術師と薬師と複製女王(54)
カランカラン
薬師「いらっしゃいませー」
魔術師「残念、客じゃないんだな。私だよ、私」ヒョコ
薬師「……」
魔術師「?」
薬師「…魔術師さん!?」ガタッ
魔術師「うおっ」
薬師「あ、あ、あれから数ヶ月どこに行ってたんですか!」
魔術師「ちょ、近い近い」
薬師「心配したんですからね!あんな酷い怪我をしてぷいっといなくなって!」
魔術師「…怒ってる?」
薬師「怒ってます!」
魔術師「ま、まあ落ち着いてよ薬師くん」
薬師「今暴れずにいつ暴れればいいんですか…!」
魔術師「本当にごめん。謝るから。謝るからその怪しい薬物を棚に戻して」
薬師「……仕方ありません」コト
魔術師「びっくりした…冷静な判断は君の売りじゃなかったかい?」
薬師「別にいつでもどこでも冷静なわけじゃありませんよ、僕は」
魔術師「胸張って言うことなの?」
薬師「立ち話もなんですし、椅子に座って下さい」
魔術師「うん、ありがとう。店のほうはいいの?」
薬師「来るのは常連さんだけですし、街はお祭り騒ぎですからね。今日は来ませんよ」
魔術師「ああ…あれか」
薬師「知っているんですか?」
魔術師「ここに来る途中で聞いたんだよ。すごい大騒ぎだった」
薬師「それもそうでしょうね」
薬師「なんたって、不治の病に侵されていた女王さまが回復したんですから」
魔術師「……」
薬師「魔術師さん?」
魔術師「いやぁ…おかしいと思わないのかね」
薬師「おかしい、ですか…」
魔術師「不治の病だと診断されてた。なのに治った」
薬師「それは…」
魔術師「《奇跡》じゃないかって?」
薬師「はぁ、まあ」
魔術師「不治の病だよ?医者も治癒師も匙を投げたほどの」
薬師「だから《奇跡》なんじゃないですか?」
魔術師「そうだろうね。でも、『どうして』と思わなかったかい?」
薬師「確かに…どうして、最後に僕らがあった時には起き上がれない程だったのに」
魔術師「今はピンピンしている。それも、ものの半年ほどでね」
魔術師「しかも今じゃバルコニーに立って国民に手を振ってるって話だ」
薬師「らしいですね」
魔術師「見に行かなかったのかい?」
薬師「その時新しい調合を試してまして。手が離せなかったんです」
魔術師「…なんか相変わらず世間から離れて暮らしてるよね」
薬師「じゃなかったらこんなところに店を構えてません」
魔術師「それもそうか」
薬師「話の続きをお願いします」
魔術師「病み上がりの女王がピンピンしてるところだっけ?」
薬師「はい」
魔術師「普通に考えて、あそこまで体力を落としていたら歩くことはおろか立つこともできないはず」
薬師「しばらくは治ったことを隠していたとかは?」
薬師「その間に体力を戻して歩けるように…とか」
魔術師「おいおい。忘れてしまったのか?国民には秘密にしていること」
薬師「えっと…」
魔術師「あの時女王が言っていたじゃないか。『生まれたときから車椅子生活だ』って」
薬師「あ!」
魔術師「だから私は変に思ったんだ」
薬師(すっかり忘れてた)
なにこのスレwwwww痛すぎるwwwwww
ダメだまとまらん
色々修正しながらいく
( ・ω・)っ④"
魔術師「そんなわけで、女王に会いに行こう」
薬師「はい!?」
魔術師「なにその反応。薬師くんも一度会ったことあるじゃん」
薬師「ありますが…」
魔術師「私たちはあの事件を解決した張本人だよ?拒まれる理由はないさ」
薬師「や、それとこれでは事情が違う気がしますが」
魔術師「細かいことはいいの。確かめたいんだ」
薬師「何を?」
魔術師「…まだ秘密」
城
門番「駄目です」
魔術師「……」
薬師(すごいダメージ食らってる…)
門番「今は何者も通さぬよう、お達しが」
魔術師「理由は?」
門番「わかりません。ただ、我らはそれに従わないといけないので」
薬師「そうですか。では、帰りますね」
魔術師「もうちょっと粘ろうよ。諦め早いよ」
薬師「僕は三時間外にいたら死ぬんです」
魔術師「ただの出不精のくせにー!」ズルズル
門番「大変だなぁ……」
頑張れよ 期待してる
薬屋
魔術師「……」
薬師(体育座りして落ち込んでる…)
魔術師「……」
薬師(それこそ自信満々で行ったからな…)
薬師「あの…紅茶、置いときますね」コトリ
魔術師「…ビーカーに入れるところは相変わらずだね」
薬師(あ、生き返った)
魔術師「考えていたんだ。城に入れない理由」
薬師「落ち込んでいただけじゃなかったんですね」
魔術師「子供じゃあるまいし。誰が落ち込んでるって?」
薬師「部屋の隅で体育座りしているあなたです」
魔術師「……はい」
薬師「それで、何を思い付いたんですか?」
魔術師「ざっと考えたんだけどね。大きく分けて二つある」
薬師「はい」
魔術師「一つ目は違法な魔術、または薬を使っているから」
薬師「違法な魔術?生け贄とか…そういう感じのものですか」
魔術師「そ。人道的に許されないことね」
薬師「じゃあ違法な薬は、依存性のある葉とかですか」
魔術師「いや。人間の身体を薬にしたもののほう」
薬師「…魔法を使える人間の身体は万病に効くとか、そういう迷信を?」
魔術師「うん。溺れるものは藁をも掴む状態だったろうしね」
薬師「人間の身体から薬を作ることは違法…」
魔術師「だからさ。人狩りでもしたんじゃないか?それとも闇市か」
薬師「でも僕の所にはそういう人狩りの話は届いていませんね」
薬師「闇市は元々が信用できないものばかりですから…王族のためにつかうかどうか」
人間を薬?
ミイラとか生き肝か?
魔術師「闇市は……信用できないのか?」
薬師「はい。例えば一番の良薬といわれる人間の心臓」
薬師「あんなの、熊とか猪の心臓が並んでいてもおかしくないわけですよ」
魔術師「闇市だからか」
薬師「闇市ですから」
魔術師「ふむ、さすが現場の人間」
薬師「ありがとうございます。それで、もう一つは?」
>>17
そんな感じです
魔術師「もうひとつは」ワシャ
魔術師「薬師くんに一度見せたことあるよね。私のうなじ」
薬師「は、はい」
魔術師「これのおかげでろくに髪もきれないし結べないよ、まったく」
薬師「……つまり、魔術師さんがいいたいのは」
魔術師「察しがいいね。そう、あの女王は以前会った女王じゃない説」
魔術師「つまり入れ替わっている」
薬師「そっくりさんか……それとも」
魔術師「私と同じ、複製人間か」
薬師「……」
薬師(魔術師さんのうなじには――番号が彫られている)
薬師(002。二体目の複製人間という意味の)
魔術師「それが事実だったら、私は驚くけどね……」パサッ
薬師「なぜです?」
魔術師「複製は違法だ。製造者も製造物も処分される」
魔術師「それを国が認めたってことなんだからさ」
薬師「それもそうですね…」
魔術師「本当に治ったか、女王に成り代わった人間であることを望むよ」
薬師「……」
魔術師「まあ、なにがいいたいかというと」
魔術師「今、外部から入られると色々困るんだろう」
薬師「ですね」
魔術師「魔法なら私きづくし。薬なら君がいるし」
薬師「じゃあ……入れ替わり説の場合は?」
魔術師「なにかしらボロが出るのを恐れたんじゃないかなぁ」
薬師「それも僕ら、一回会ったことありますしね」
魔術師「しばらく遠くから動向を見守るか」
薬師「…僕もですか?」
魔術師「当たり前じゃないか」
薬師「わぁい」
薬師「というかどうしてそこまで女王に執着するんですか?」
魔術師「…この数ヶ月さ、だてにほっつき歩いていた訳じゃあないんだ」
薬師「……」
魔術師「私が作られた場所。あっただろ?」
薬師「……ええ。散々に壊しましたよね、あなたたち」
魔術師「跡形もなく、きえてなくなっていた」
薬師「はい?」
複製人間か…
( ・ω・)っ④"
魔術師「粉々になった瓦礫も、焼けた木も、抉れた地面も、なにもかもなくなっていた」
魔術師「―――もちろんあそこにあった資料も、だ」
薬師「で、でも、魔術師さんが全て焼き払ったんじゃ?」
魔術師「そうだよ。しかし、あれから地下室の存在を教えられたんだ」
薬師「……地下室」
魔術師「私ももはや一歩も動けなくてね…ある程度回復してからもう一度行ったんだ」
薬師「そしたら、なくなっていたんですか?」
魔術師「ああ」
魔術師「地下室は乱雑に隠されていて消されたわけではなかったのが幸いした」
薬師「一目で『何かあった』と思われないために全て片付けられたんでしょうか」
魔術師「だろうね。事実、地下室を見つけるのも骨が折れた」
魔術師「地下室はすごい散らかっていて酷いありさまだったよ」
薬師「そうですか…」
魔術師「残された断片的な資料から大変なことに気付いた」
薬師「まさか」
魔術師「そう」
魔術師「『複製人間作成』に関する資料だ」
薬師「狙って入られたのでしょうか……」
魔術師「その通りだろうね。研究資料を狙う連中は多かった」
魔術師「私がまだいい子だった時は襲ってきた連中を片付けていたぐらいだし」
薬師「……」
魔術師「嫌な予感がして仕方がなかったよ。しかも証拠隠滅できるほどの財力だ」
魔術師「金持ちか、複製人間の情報を喉から手が出るほど欲しがる連中」
魔術師「そして身体が回復して戻ってきたら――」
薬師「――女王さまが復活なさっていた…ですね」
>>26
魔術師「『複製人間作成』に関する資料だ」
↓
魔術師「『複製人間作成』に関する資料がなくなっていた」
魔術師「…ふふ、まあ、女王が複製かそっくりさんかはしばらくすれば分かるよ」
薬師「どうしてですか?」
魔術師「仮に複製ならば急ごしらえだからさ。ボロが出てくるよ」
薬師「ボロですか。それならそっくりさんも」
魔術師「いいや。クセとか態度とかじゃない。しばらくすれば腐るよ」
薬師「はい!?」
魔術師「急激に成長させたなら、急激に老いていくのは生物のルールだ。違う?」
薬師「そ、そうですが……」
魔術師「私は十年もゆっくり育てられたからその心配はないけどね――さて」
魔術師「今度は一体何が起きるのやら」
・・・
うまれた ばかりの このみに
おもい どれすは きついです
わたしは じょおうさま
わたしは とても えらいんだそうです
でも まだ わたし ひとりでは
むずかしい ことを かんがえ られ ません
だから おとうさん たち の しじに したがいます
かんがえるより も
したがった ほうが らくちん です
わたしが わらって てをふるたびに よろこぶ
あのひとたちも そうなのでしょうか
じぶんで うごく こと が きらいだから
じぶんより うえ を たてるの でしょうか
わたしには よく わかりません
……
じぶんで かんがえて うごけるのに どうしてでしょう
……
やっぱり わかりません
ふと じぶんの てのひらに いしきを むけます
てのひら から こおり が できました
おとうさん に よると
わたしは まほうを つかえるようです
それが なんの やくにたつのか は わかりません
ただ みんなには ひみつ みたい です
つまらない なぁ
おともだち と いうものが ほしい です
・・・
( ・ω・)っ④"
???
魔術師「やあ」
魔術師「元気にしていたかな。うん、元気だね」
魔術師「あはは、やめろよ。引っ掻くなって」
魔術師「そろそろおまえもいい頃かな?」
魔術師「大丈夫、優しくするようにはいっておくから」
魔術師「…ふふ」
魔術師「私もかなりの異常者だな。ん?なんでもない、独り言」
魔術師「あともうちょっと大きくなったら会いに行こう」
翌日
魔術師「おはよう」
薬師「」
魔術師「く、薬師くん!?薬師くん!死んでる……」
薬師「死んで…ません…」
魔術師「死にかけじゃん」
薬師「昨日…寝てなくて…」
魔術師「なんで?」
薬師「新しい薬を考えていたら…朝に…」
魔術師「なぜ君は朝に考えることを回そうとか思わない…」
薬師「夜の方がアイデアでるんですよ」
魔術師「へー」
薬師「魔術師さんだって夜中に何か思い付いたりとかありませんか?」
魔術師「や、布団に入ったら即刻意識が落ちる」
薬師「な、なんというか羨ましいですね」
魔術師「しかも朝まで起きれないからね。防犯しないといざというときマズい」
薬師「寝起きはいいんですか」
魔術師「すごくいいよ」
薬師「僕は全然ですね。なかなか起きれなくて」
魔術師「しかも店やってるからねぇ。大変だろう」
薬師「はい。でもたまに開き直って昼まで寝てます」
魔術師「それは駄目だろ!」
薬師「常連さんも分かってくれていますから…」
魔術師「甘やかされてるなぁ君!」
薬師「すっきり起きれる薬とかありませんかね」
魔術師「だいぶ眠たいんだね。自分が薬屋なの忘れてないか?」
薬師「とりあえずちょっと寝かせて下さい…」ガク
魔術師「ちょっ」
薬師「」スースー
魔術師「え、なにこれ、本気で寝てる」
薬師「」スースー
魔術師「おいおい…私に店番任すなよ…」
魔術師「……」
魔術師「暇だ……」チラ
薬師「」スースー
魔術師「かといって寝てるから出かけるわけにはいかないし」
薬師「」スースー
魔術師「ん、これは…在庫のチェック表?」カサッ
魔術師「暇つぶしにやってやるか」スクッ
魔術師「相変わらずすごい薬草の数だな…」
魔術師「これとこれが切れかけてる」サラサラ
魔術師「あとは…」
魔術師「あれ、これって」カタッ
魔術師「……」
魔術師「彼が交換条件で私に依頼した薬草か」
魔術師「懐かしいな…これ崖にしか生えないんだよね」
前の話とかあるの?
>>42
ないです
魔術師「うーん…前より減ってる」
魔術師「今度補充してあげるか」
カランカラン
魔術師「いらっしゃい。店主は寝てるよ」
常連客「また夜更かしかい。だから背か伸びないのに」
魔術師「ああ、あなたか」
常連客「おや。ちらりとしか会ってないのに覚えててくれたか」
魔術師「記憶力いいんだ、私」
常連客「そいつは羨ましい」
魔術師「で、何を買いに?」
常連客「店主が寝てちゃあ何ともなぁ……」
魔術師「なんでも持ってっていいよ。サービスサービス」
常連客「それは駄目だから」
魔術師「冗談」
常連客「しっかしまぁ……本当に帰ってきたんだな」
魔術師「え?どういうこと?」
常連客「あんたがいない間へこみっぱなしでさ。いつか帰ってくるいつか帰ってくるって慰めてたんだよ」
魔術師「たかだか一ヶ月程度の付き合いだったのに…」
常連客「いやいや、普段の店主にとっちゃ客以外の付き合いとしては長すぎるさ」
魔術師「それもそれで問題があるかと」
常連客「まあね…こんなとこに店構えてるぐらいだから」
魔術師「ふぅん…。なんでこんなに付き合えてるんだろ」
常連客「……」
魔術師「なにか?」
常連客「いや……店主も苦労しそうだなぁと」
魔術師「?」
常連客「おーい店主」ユサユサ
薬師「お腹いっぱいです……」
常連客「ダメだこりゃ」
魔術師「ほら、薬師くん。お客さんだよ」
薬師「今日は……入荷が……」
常連客「野菜屋のおっさんじゃないんだから……」
魔術師「私がまたどっかいっちゃうよー」ユサユサ
薬師「駄目です!!」ガバ
ガン
魔術師「~~~~!!」
常連客「顎に当たったか…ご愁傷様」
期待
これは良作の予感
魔術師「ぬごごごごご」ゴロゴロ
薬師「魔術師さん、なにやっているんですか?」
常連客「……」ハァ
薬師「あ、常連客さんおはようございます」
常連客「おはよう。まーた夜更かしかい」
薬師「えへへ……」
常連客「身体に悪いよ。倒れても一人暮らしなんだからすぐ気付けないし」
薬師「気を付けます…」
常連客「まあ、倒れたら倒れたでその子が看病してくれるかもしれないけどな」ボソ
薬師「!?」
魔術師「うあー、やっと痛みが収まった」
薬師「看病……」
魔術師「え?なに?かんぴょう?」
薬師「な、なんでもないです」
魔術師「そっか」
常連客「いつもの頼むよ店主」ニヤニヤ
薬師「…分かりました」
……
常連客「じゃあな、おふたりさん」
薬師「はい、また来てください」
魔術師「さようなら」
カランカラン
薬師「……」
魔術師「……」
薬師「魔術師さん、なんか薬品に触りました?消毒液みたいなものに」
魔術師「あ、分かる?まあね」
薬師「女王さま関係、ですか?」
魔術師「近いかな。直接というわけじゃない…と思うよ」
薬師「と思うって…」
魔術師「でも薬師くん、みたら驚くよ。楽しみだなー」ニシシ
薬師「はあ」
魔術師「さてと」
薬師「行くんですか?」
魔術師「ちょっとだけね」
薬師「そういえば、魔術師さんってどこに住んでいるんですか?」
魔術師「基本は野宿かな」
薬師「…住居は?」
魔術師「ないよ」
薬師「」ハァァァ
魔術師「平気だよ。熊と寝てるから」
薬師「いや、なにが平気なのか全く解りません。どういう意味です?」
魔術師「熊と同居してる」
薬師「頭が痛い……」
薬師「ん?じゃあその消毒液の匂いは熊から移ったんですか?」
魔術師「あ、いいや。消毒液はまた別の場所でついた匂い」
薬師「そこで寝ればいいのに……」
魔術師「そこの奴とは死んでも同居したくないからね」
薬師「はぁ…?」
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