十神「強欲」 (123)
私は、あなたに愛される。それだけでよかったのです。だから・・・・
その時、どこからともなく、悲鳴が聞こえてきた。十神白夜は、すでに終盤に差し掛かっていた小説から顔をあげた。
どうせ、あとはくだらない動機語りだけだ。
もうこの本も読むことはないだろう。なにやら小説よりも面白い事態が始まっている予感がする。
白夜は、本を机に置くと、声のする方へ足を運んだ。
悲鳴は鳴りやまない。しかし、それほど慌ただしくはないことを考えると、発見したのは精々、一人か二人だろう。ゆっくりと、声のする方へ歩く。
やがて、その声はプールの方から聞こえてくるのだと気づいた。
水練場と書かれたドアを開くと、更衣室の前、ちょっとしたホールになっている物置に出た。
そこには、死体が存在した。全身を切り刻まれ、磔にされている。
先に死体を発見したであろう人物は、ぶるぶると震えながら、ぶつぶつと呟いていた。男だというのに情けない奴だ。その中に、頻繁に出てくる語句があった。
「腐川」
震える男が漏らす小さな声の中で発されたその人名を白夜は聞き逃さなかった・・・
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苗木(ボクが葉隠クンの死体を発見したのは、朝食のために集まった午前七時、それから10分が経ったころだった)
霧切「苗木君。落ち込んでいる場合じゃないわよ。慣れろといっても、無理かもしれないけど・・・多少は、割り切ることも必要よ」
苗木「霧切さん・・・そうだね、みんなを呼んでこないと」
十神「その必要はないな」
苗木「十神クン、どこにいたの?」
十神「俺は、図書室にいた。お前らが騒ぐもんだから、何事かと駆けつけてきたら・・・」
ピンポンパーンポーン
「死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を執り行いまーす」
朝日奈「えっ・・・・いやあああ」
山田「ひいいいいっ!ま、まさか、これは、葉隠康比呂殿なのですかっ?」
苗木(10分後、みんなが更衣室前のホールに集まった。葉隠君の変わり果てた姿を目撃し,みんな、それぞれの反応を見せていた)
江ノ島「げっ・・・なにこれ」
セレス「惨いですわね・・・」
苗木(正直、葉隠君の死、そのものよりも、その殺され方にみんな反応を示しているようだった)
桑田「ヤベーじゃん、グロすぎね?」
舞園「これって・・・」
苗木(葉隠君は、全身をズタズタに引き裂かれ、ハサミを使って、壁にハリツケられていた。そして、その壁には『チミドロフィーバー』と血で記されていた)
今日はここまで
一応、チャプター1終了後の設定で、残姉ではなく、大和田クンが見せしめに殺されたり、
一章で、さくらちゃんが口火を切って、石丸を殺していたりと独自の設定や解釈もありますが
特に深い意味はありません。
とりま乙です
さくらちゃん何で石丸殺してしまったんや…
前作から考えると死んでるメンバーにも何か意味があるんだろうが
あ
~捜査開始~
モノクマ「ハイ、とゆうことで、ザ・モノクマファイルー。オマエラ、がんばってねぇ」
【モノクマファイル】
・被害者は葉隠康比呂。
・全身に、ハサミのようなもので切り刻まれた傷跡がある。だが、これは死亡後につけられたもののようだ。
・死因は、首を絞められたことによる窒息死と思われる。
・死亡推定時刻は、昨夜11時から12時の間。
苗木「窒息死?」
苗木(全身を切り刻まれた傷が印象的だけど、本当の死因は窒息死だったんだ)
十神「フン、くだらんな。せっかくのゲームをこんなつまらんやり方で殺すなんて」
苗木「十神君?なにか分かったの?」
十神「分かったも何も、こんな事件に捜査など必要ない。なんの捻りもない。ただの殺人事件だ」
苗木「え・・・それって、どういうこと?」
十神「知らないのか。ジェノサイダー翔だ」
苗木「ジェノサイダー?聞いたことはある気がするけど・・・連続殺人犯だっけ?」
十神「俺の口から、そんなことまで説明させるな。つまり、俺が言いたいのは、今回の事件は事前に計画されたものでも、隠ぺい工作があったわけでもない。ただの衝動的な殺人事件だ」
苗木「これが、ジェノサイダー翔による殺人だっていうの?」
十神「そうだ。あとは、そいつの正体が誰なのか突きとめるだけだ。単純な分、残された証拠も少ないだろうから、厄介かもしれないな。まあ、精々、がんばることだ」
苗木「えっ十神君は捜査に参加しないの?」
十神「これ以上何を知る必要がある。確認すべきことは、一つあるがな。俺は図書室にいる。それを知りたいのなら、来い」
苗木「あっ!ちょっと待ってよ」
苗木(しかし、十神君は振り返ることもなく、そのままホールを出て行ってしまった)
苗木「・・・よし、まずは葉隠君の死体を調べよう。まずは、死因となった絞殺の痕からだ」
苗木(といっても、あまり特徴は見られない。首が赤くなっていることは分かるんだけど)
霧切「苗木君、何か分かったかしら」
苗木「霧切さん・・・それが、よく分からないんだ。葉隠クンの首が全体的に赤くなってることは分かるんだけど」
霧切「これは、素手によって首を絞められているわね。首の側面に指の痕がある。正確に言うと、絞殺ではなく扼殺よ」
苗木「素手による殺人・・・」
【扼殺の痕跡】
霧切「扼殺の場合、被害者のある部分を警察は調べるんだけど、どこか分かるかしら?」
苗木「・・・首じゃなくて?」
霧切「首を調べるのは当然よ」
苗木「うーん・・・」
霧切「もし、扼殺されそうになったら、あなたならどうするかしら?」
苗木「必死に相手の手を外そうとする・・・そうか、分かったぞ!手、だね?」
霧切「そうよ。葉隠君の指の先と爪の間にも、軽く血が付着していた。クロの手を引っ掻いたのね」
苗木「そういうことかぁ」
霧切「警察なら、DNAを取って、容疑者のモノと照合すれば、速攻で犯人逮捕できるわ。でも、ここじゃそんなことはできない」
苗木「でも、クロは、手のひらに怪我を負っている。つまり、手を負傷していたり、隠している人が・・・」
霧切「何よ。私を疑っているの?」
苗木「い、いや、そういうことじゃないんだけど。もし、差支えなければ・・・なんて」
霧切「嫌よ」
【手のひらに傷】
苗木「そうだよね。霧切さんは最初に会った時から手袋をしていたしね・・・そ、それよりさあ、すごい血の量と傷跡だね」
霧切「まあ、異常と言える光景ね。でも、重要なのは何故、犯人がここまでする必要があったか、ね」
苗木「霧切さんもジェノサイダーの犯行だと思うの?」
霧切「今の段階で断定はできないけれど、可能性は2つある。本人によるものか本人に見せかける為のものか。ただ・・・」
苗木「ただ?」
霧切「本人に見せかける為のものだとすれば、どこか違う点が見つかるはずよ」
苗木「違う点か・・・」
霧切「残念なことに私は、元の犯行方法を詳しく知らないからその違いが分からないのだけど」
苗木「ボクもなんだ・・・誰か詳しく知っている人に一度話を聞かないとね」
霧切「じゃあ、聞き込みは苗木君に任せるわよ。私は、死体とその周辺を詳しく調べることにするわ」
苗木「え、ボクが?」
霧切「なに、早く行ってきて。時間は限られているのよ」
苗木「・・・」
苗木(はあ、十神君と言い、霧切さんと言い頭がいい人はなんであんなに身勝手なんだろう・・・)
舞園「苗木君、どうかしたんですか?」
苗木「あ、舞園さん。いや、なんでもないよ」
舞園「そうですか?」
苗木「それより、舞園さんはジェノサイダー翔について何か知ってることってある?」
舞園「ジェノサイダー翔ですか?聞いたことはあるんですけど、ね」
苗木「そうだよね。殺人鬼と言っても、半ば都市伝説みたいなものと思っていたし」
舞園「そういうのに興味がありそうな人と言えば、葉隠君くらいしか思い浮かびませんけど・・・」
苗木「そうだよね・・・」
江ノ島「なーに、二人して辛気臭い顔してんの?」
苗木「あ、江ノ島さん」
江ノ島「つーか、マジやばくない?殺人鬼がこん中にいんだよね。怖くて、おちおち寝てらんないっつーか」
苗木「江ノ島さん、ジェノサイダーについて詳しく知ってるの?」
江ノ島「え?いやいや、全然、知らない」
舞園「本当ですか?」
江ノ島「マジよ。ガチでマジ。そ、それよりさ、不二咲はどこ行ったわけぇ?まだ見つかんないんだけど・・・」
苗木(そうだった。今朝の朝食会には、腐川さん、十神君、葉隠君の他、不二咲さんも来ていなかったんだ)
苗木(他の三人は、基本遅刻するし、来ないことも多い・・・でも、不二咲さんは今まで、欠かさず来ていたんだ)
舞園「不二咲さんを捜しに行ったところ、葉隠君の死体を見つけたんでしたね」
苗木「十神クンは無事だったけど、腐川さんは、どうなんだろう?」
江ノ島「腐川は、部屋から出てこないだけで生きてるって、朝日奈が言ってたけど?」
苗木「そうか・・・ひとまずは安心だね」
江ノ島「じゃあ、アタシは不二咲を引き続き捜しとくから」
苗木「ありがとう、任せたよ。江ノ島さん」
江ノ島「べ、別にいいって。アタシにできるのはこれくらいしかないし」
【消えた不二咲】
苗木(不二咲さんと腐川さんも、なにか事件に関係しているのだろうか・・・動機の時、特に気にしている二人だったからなあ)
舞園「やっぱり、動機の件がネックになってきますよね」
苗木「えっ!ああ、うん。そうだね」
舞園「二人の秘密って、それほど知られたくないものなんでしょうか?私のは、他愛ないものだったんですけど」
苗木(でも、だとしたら、本物のジェノサイダーって・・・)
苗木(そのあと、舞園さんと別れ、ボクは十神クンのいる図書室へ向かった)
ガラッ
苗木「十神クン、いる?」
十神「苗木か、何しに来た」
苗木「何って、十神クン。何か確認することがあるって・・・それを教えてくれるんじゃなかったの?」
十神「冗談だ。ちゃんと、用意してある」
苗木「用意?」
十神「これを見てみろ」
苗木(そういって、十神クンが渡してきたファイルには『Genocider Syo』
と書いてあるのが読めた)
苗木(こんなものが、あったなんて・・・ボクは、息を呑み、ファイルを開いた)
十神「一応、トップシークレットになっているからな。覚悟して見ろよ」
苗木「もう見ちゃったよ・・・」
十神「まあいい、ウジウジ悩まれても困るところだったからな。じゃあ、104ページを開いてみろ」
苗木「104ページだね・・・えーと、ジェノサイダー翔の手口についてか」
【ジェノサイダー翔の手口】
・ジェノサイダーの殺人は全てハサミによって行われる。
・被害者は判明している限りでは、全員、男性である。
・被害者は、必ず、磔にされ、その傍らには『チミドロフィーバー』の文字が被害者の血で記されている。
・犯人はしばらくその場にとどまった後、急に立ち去るといった行動をとっていることから、解離性同一性障害と見られる。
・犯行時刻は平日の昼過ぎであることから、犯人は学・・・・
苗木(手口においては、大体、今回の事件と一致している・・・でも)
十神「不服か?」
苗木「い、いや、とんでもないよ。やっぱり、ジェノサイダーの手口と今回の事件の手口は、ほぼ一致しているね」
十神「そうだろう」
苗木(でも、こんなモノがあった以上、手口をマネすることは、簡単なんじゃないか?・・・)
苗木「ところで・・・今、何時だっけ?」
十神「フン、腕時計ぐらい身に着ける習慣を付けたらどうだ。今は、8時ちょうどだ」
苗木「嘘、もうそんな時間なの?ちょっと、見せてよ」
十神「おかしなやつだな・・・俺が時計を読み間違えるとでも思うか?」
苗木「あ!・・・本当だ。急がなきゃ!またね、十神クン!」
十神「・・・フン」
苗木(十神クンの手・・・傷がついていた。あれは、誰かに引っかかれたような・・・)
【十神の手の傷】
苗木(ボクが、図書室を出ると、誰かの大きな叫び声が聞こえた)
「誰か来てえええええ」
苗木「え?」
苗木(朝日奈さんの声だ!なにかあったのか?)
苗木(階段を駆け下りる、そこには、すごい形相をした朝日奈さんと桑田君がなにやら話していた)
苗木「どうしたの?」
朝日奈「腐川ちゃんの部屋で、あ、あああ」
桑田「だから、落ち着けって!何があったんだよ」
朝日奈「いいから、着いてきてよ!」
桑田「おう、分かった」
朝日奈「行くよ!」
苗木「ちょっと待っ」
苗木(ボクは、二人にかなりの遅れを取って、腐川さんの部屋の前にたどり着いた)
桑田「おせーぞ、苗木ぃ」
朝日奈「そうだよ!」
苗木「はぁはぁ・・・二人が、速すぎ、るん、だって」
桑田「それより、何があったんだ?」
朝日奈「私は、ここでずっと腐川ちゃんを待ってたんだけど・・・さっき、ドーナツ休憩でちょっと外してて、戻ってきたら、鍵が開いてたんだよ!」
桑田「なんだよ、ドーナツ休憩って・・・」
朝日奈「で、ドアを開けたら・・・」
苗木(朝日奈さんが、言葉通りドアを開ける)
苗木(そこには、倒れている腐川さんの姿があった・・・)
苗木「え!」
桑田「腐川!」
苗木(ボクと桑田クンは急いで彼女に駆け寄った・・・)
苗木(腐川さんの傍らには、血みどろになった黒い布が落ちていた・・・)
今日はここまで
苗木「っ!うわああああああ」
桑田「マジかよ・・・こんなことって」
朝日奈「落ち着いて。二人とも、私も最初は驚いたんだけど、腐川ちゃんはどこもケガしてないみたい」
苗木「え?じゃあ、腐川さんは・・・」
桑田「生きてんのか?」
朝日奈「うん」
苗木「じゃあ、この血みどろの布は」
苗木(おそるおそる、手に取ってみると、血は付着してから数時間経ったものなのか、固まっていた。でも・・・)
苗木「これって、よく見たら・・・腐川さんの制服だよね」
桑田「おいおい、それって」
朝日奈「バカの私でも、だいたい、事情が飲み込めてきたよ」
朝日奈「殺人鬼ジェノサイダー翔の正体は、腐川冬子だったんだよ!」
桑田「マジかよ・・・」
苗木(もっと近くで、血の付いた制服を見ようと引っ張ってみると、何やら手ごたえがあった。腐川さんが制服を強く握っている。その細くきれいな手で、強く・・・)
【腐川のセーラー服】
◯食堂
苗木(僕は、食堂に行き、休憩のついでに少し考えをまとめることにした)
苗木(いったいどういうことだろう・・・あの血は本物だった。十神クンのあの傷は、偶然とも考えられる。けど・・・)
苗木(それに、不二咲さんの行方もまだ不明みたいだ・・・手遅れになっていなければいいけど)
セレス「あら、苗木君。何を深くお考えになっているのですか?」
苗木「セレスさん、君は、何を捜査しているの?」
セレス「いいえ、特にこれといった捜査はしていませんわ」
苗木「セレスさんらしいけど・・・それでいいの?」
セレス「あら、ほとんど犯人は分かっているのではなくて?」
苗木「え?」
セレス「腐川さんでしょう?疑われているのは」
苗木「どうしてそれを・・・」
セレス「まあ、本当に腐川さんだったのですか」
苗木「だ、騙したの?」
セレス「冗談ですわ。実は山田君に情報を集めさせていますので」
苗木(山田クン・・・いいように使われてるな)
セレス「それに、私も、一つ証拠を持っておりますのよ」
苗木「え?本当」
セレス「そんな嘘をあなたに吐いてどうするのですか」
苗木(さっきは、変な嘘を吐いたじゃないか・・・)
苗木「で、証拠って何なの?」
セレス「腐川さんを目撃しました。夜時間直前のことです」
苗木「腐川さんを?どこで?」
セレス「部屋に戻る最中にすれちがっただけですわ。別に、様子がおかしいわけでもないので気にしてはいませんでしたが・・・やはり、なにか事件に関係していたのですね」
【セレスの証言】
苗木(間違いない。腐川さんは夜時間に、校舎棟の方へ行っていたんだ)
苗木(やっぱり、腐川さんは事件に大きく関係している・・・)
苗木(ボクが食堂から出ていこうとすると、山田クンとばったり会った)
山田「おや、苗木誠殿。捜査は順調ですかな?」
苗木「うん、まあまあかな。山田クンの方は?」
山田「まあ、今回は単純明快な事件ですからな。僕の中でも、事件の真相が見えておりますぞ。殺人鬼がこの学園に潜んでいたことは衝撃的でしたが」
苗木「そうなんだ・・・」
山田「まあ、僕というか、セレス殿の考えを聞かせてもらったからなのですがね!」
苗木(自信満々に言うことでもない気がするけど・・・)
苗木「山田クンは、なにか知らない?誰かを目撃したとか」
山田「・・・いえ、別に誰も見てはないですぞ」
苗木「本当に?」
山田「はい。しかし、本当に、クロは腐川冬子殿なのかどうか気になりましてな」
苗木「・・・」
苗木(ボクが、再び現場に戻ろうとしていると、舞園さんと江ノ島さんの二人が歩いてきた)
舞園「苗木君、不二咲さんを見ませんでしたか?」
苗木「見てないよ・・・まだ、見つからないんだね」
江ノ島「おっかしいわよねー。もう、シャッターの向こうくらいしか捜してないところはないわよ」
江ノ島「臭いもしないし・・・」
苗木(・・・臭い?)
苗木「部屋まで捜したの?」
舞園「ええ、部屋の中までは確認してないんですけど。捜査時間中は、ロックが全て解除されるようで・・・」
江ノ島「中に人がいなければね」
苗木「それで、ロックがかかってなかったから、いないと思ったの?」
舞園「だって・・・」
苗木(ボクは思わず、走り出していた。いないこと、いや、ないことを願いたい。だけど・・・)
苗木「不二咲さん!」
◯不二咲の部屋
苗木(見たところ・・・争った形跡も、血痕も見当たらない。ベッドの下もくまなく探したけど、死体どころか、なにかが起きた痕跡も見当たらなかった)
苗木「よかった・・・のか?」
舞園「苗木君!」
苗木「ごめん、ボクの早とちりだったみたいだ」
舞園「私こそ、ごめんなさい。部屋に勝手に上がるのは、気が退けて・・・」
苗木(ボクは、女の子の部屋に勝手に上がってしまったんだ・・・でも、意外と可愛らしくないというか。むしろ、男らしい?自作パソコンでも組もうとしていたのか、工具セットとハードディスクやマザーボードのようなものが転がっていた)
苗木(・・・工具セット?誰かから借りたのか?)
苗木「舞園さん、江ノ島さん、ちょっとごめん。少し調べて欲しいことがあるんだけど」
【不二咲の部屋の工具セット】
苗木(ある調査を江ノ島さんと舞園さんに頼み、ボクは死体発見現場へと向かった。そこには、霧切さんが一人、死体と向き合っていた)
苗木「霧切さん、一人なの?」
霧切「私が、証拠隠滅でもしていると疑っているの?」
苗木「いや、そんなことはないけど・・・」
霧切「安心して。するとしたら、死体が発見される前に終わらせるから」
苗木(絶対、霧切さんにはクロ側には回ってほしくないなあ)
霧切「冗談はこれくらいにして・・・ジェノサイダーの手口についてなにか分かった?」
苗木「うん。かなり詳しい手口が図書室のファイルにあったんだ。それを見た限り、ほぼ今回の事件と一致していたよ」
霧切「ほぼ、ってことは・・・違う点が見つかったのね」
苗木「・・・そうなんだ。ジェノサイダーの殺人には、ハサミしか用いられない。扼殺の痕はどの死体にも見られなかったんだ」
霧切「やっぱり、そこね。つまり、これはジェノサイダー翔のやった殺人ではない・・・」
苗木「ええっ、そこまで決めつけるのは早すぎるんじゃ・・・」
霧切「なぜ?」
苗木「えっと・・・何らかの理由があって扼殺しなきゃならなかったとかさ」
霧切「ダメね。納得できないわ・・・でも、一つ、別の推理が浮かんだわ」
苗木「それを教えてもらうわけには・・・」
霧切「いかないわ・・・でも、ヒントならあげられる。ヒントは、共犯の可能性よ」
苗木(共犯?今回の事件では、密室やアリバイのトリックはないように思えるけど・・・)
霧切「じゃあ、死体から見つかった物を説明するわね」
苗木「うん。よろしく」
霧切「まずは、この鍵ね」
苗木「鍵?それって、部屋の鍵じゃないよね」
霧切「これは、トラッシュルームの鍵ね。どうやら今週の掃除当番は、葉隠君だったようね」
苗木(クロは、簡単に証拠隠滅を図ることができたんだ・・・でも、消す必要のある証拠なんてあったかな?)
【掃除当番】
霧切「それに、葉隠君のポケットからは、こんな絵が出てきたわ」
苗木(そう言って、霧切さんが見せてきたのは、なにかのアニメに出てきそうなキャラクターのお尻が強調された際どい絵だった)
苗木「き、霧切さんッ!それは・・・」
霧切「分かってるわ。触れてやるな、と言いたいんでしょ。でも、彼はこの絵をいつどこで誰から入手したのでしょうね」
苗木「もともと持っていただけじゃないかな?」
霧切「だったら、何のために持ち歩くのか理解できないけど・・・」
霧切「それに、裸で持ち歩いていたにも関わらず、ここまできれいなままというのは彼の性格上、ちょっと考えづらいわね」
苗木「確かに、皺ひとつ付いていない」
苗木(こんな絵を描く人と言ったら、一人しか思い浮かばないけど・・・)
【二次元美少女の際どい絵】
霧切「それで・・・不二咲さんは見つかったのかしら?」
苗木「それが、どれだけ探しても見つからないみたいなんだ」
霧切「そうでしょうね。この部屋はくまなく捜したし、他の場所なら、臭いで簡単に気づかれるものね」
苗木「霧切さん・・・それだと、もう既に殺されていてクロがその死体を隠したかのような言い方だけど」
霧切「間違いないわ。不二咲千尋は既に死んでいる。クロは、何故かは知らないけど、その死体を隠した・・・」
苗木「死体を隠した?」
霧切「その前に知っておいて欲しいことがあるわ。まず、このハサミ」
苗木(霧切さんがハサミをこっちに向けてきた。こうして見ると、すごく大きなハサミだ。裁ちバサミ、というのだろうか・・・って)
苗木「うわあっ、こっちに向けないでよ」
霧切「このハサミ大きいでしょう。それに、相当な強度よ。その証拠に、葉隠君の死体は骨まで切れている個所もあった。それに、コンクリートに突き刺さっていることからもその強度が窺えるわ」
【ハサミの強度】
霧切「じゃあ次よ。モノクマ、出てきて」
苗木「モノクマ?」
モノクマ「ハイハーイ、呼んだ?何の御用ですかぁ」
霧切「仮にクロが、死体を巧妙に隠ぺいして、誰にも見つからない場合どうなるのかしら?」
モノクマ「死体の隠ぺい?そんなことする必要ある?隠したところで、死体が見つからなければ事件が起きたかどうかも分からないよね」
霧切「つまり、死体がない限り、学級裁判は行われないということでいいかしら」
モノクマ「まあ、そうなるけど。そんなことする人はいるんでしょうかねぇ」
苗木「霧切さん、ボクも犯人が意図的に死体を隠したとは思えないけど・・・」
霧切「不二咲さんが見つからないのも、事実よ」
苗木「モノクマ、このまま裁判まで不二咲さんが見つからなかったら、どうするの?」
モノクマ「そうだねぇ。ボクが無理やりにでも連れてくるよ。参加できる状態だったならね」
霧切「じゃあ、質問を変えるけど、普段、生ごみの処理はどうしているのかしら?」
モノクマ「生ごみって、臭うよね」
苗木「それがなんだよ」
モノクマ「キッチンに生ごみ専用のダストシュートがあるんだよね。そこに入れられた生ごみは、土に分解される。その土は養分を持ったいい土になるんだなあ、これが。その土で育てられた野菜を食べて、オマエラはグングン成長して・・・」
霧切「聞いた?キッチンよ。行くわよ、苗木君」
苗木「う、うん」
モノクマ「ありゃりゃ、行っちゃった・・・」
苗木(食堂に入ると、そこにはセレスさんがいた。ボク達がキッチンに向かうと、彼女も興味を示したようで、3人でキッチンに入った)
霧切「あったわ・・・生ごみ専用のダストシュートはこれね」
セレス「あら、入り口は、30センチほどしかありませんわよ。さすがに、不二咲さんの体型でも、ここに入るのは不可能じゃありませんか?」
霧切「いいえ。重要なのはそこじゃない、注意書きを見て」
苗木(ダストシュートの上には、3つのルールが記されていた)
【ダストシュートのルール】
・生ごみ以外のものは決して入れないこと
・したがって、袋などに入れている場合は、その袋から取り出して入れること
・ギリギリの大きさのものを入れたら、詰まる恐れがあります
霧切「まあ、このルールをよく覚えておくことね」
セレス「なるほど、そういうことですか」
苗木「えっ、ちょっと、どういうこと?」
セレス「一つ目のルールですわ。それが、重要なのでしょう」
苗木「いや、そもそも、この場所は事件に関係ないんじゃないの?不二咲さんをここに入れることはできないんだし」
霧切「でも、もしできたとしたら、その証拠が残っているはずよ」
苗木(証拠・・・どんな証拠なんだろう。不二咲さんをダストシュートに入れることができたとしたとしたら、出るはずの証拠?)
【ダストシュート】
苗木「でも、いくら殺された可能性が高くても、ボクは不二咲さんが生きていてくれることを信じるよ」
霧切「そう。じゃあ、私は裁判の前までに調べる場所があるから」
苗木(そう言い残すと、霧切さんはキッチンを去っていった)
セレス「行ってしまわれましたね・・・苗木君は、不二咲さんをお捜しになるのですか?」
苗木「うん。時間ギリギリまで、捜し続けるよ」
苗木(セレスさんに別れを告げると、不二咲さんの捜索に取り掛かった。でも、捜せるところはもう捜し終えている・・・)
苗木(まだ、捜してないといえば・・・トラッシュルーム。かなり薄いけど、焼却炉の裏に隠れている可能性もある)
苗木(そう思って、トラッシュルームを覗いてみる。すると、驚いたことに先客がいた)
苗木「霧切さん。何してるの?」
霧切「何って、捜査よ。ここも事件で使われた可能性があるのよ」
苗木「ああ、そうだったね。なにか見つかった?」
霧切「ええ。見つかったわよ」
苗木「ええっ!」
苗木(嫌な想像が、頭をよぎった。不二咲さんは、隠れている可能性もあれば、隠されている可能性もあるんだ・・・)
霧切「電子生徒手帳がね」
苗木「え・・・電子生徒手帳?」
霧切「焼却炉の中に落ちていたわ」
苗木「それって・・・誰の・・・」
霧切「それが、これ、壊れているみたいなのよ。見た目はきれいなままなのだけれど、熱で回路がショートしてしまったのかもしれないわね」
苗木「それって、事件に関係あることなのかな?」
霧切「よっぽどのことがない限り、電子生徒手帳を焼却炉に入れるなんてことないわよ」
苗木(ごみに紛れていた電子生徒手帳が、間違って燃やされてしまったのかな)
【壊れた電子生徒手帳】
ピーンポンパーンポーン
「じゃあ、ボクも待ち疲れちゃったんで、そろそろ始めちゃっていいすか?」
「オマエラ、校舎棟1階にある赤い扉の部屋にお集まりくださーい」
苗木(アナウンスが鳴った。不二咲さんは、無事なんだろうか)
◯赤い扉の部屋
苗木(ボクと霧切さんが、赤い扉を開けると、既に8人が揃っていた。不二咲さんはその中にいない)
苗木(この時点でいないということは、不二咲さんは殺された・・・でも、今からあるのは、不二咲さんの裁判じゃない。葉隠クンを殺したクロの裁判なんだ)
苗木(複雑な気持ちを抱きながら、ボクは、地下へと向かうエレベーターに乗り込んだ)
【モノクマファイル】被害者は葉隠康比呂。磔にされ、背後の壁には、チミドロフィーバーの文字があった。体に無数の切り傷がある。死因は首を圧迫されたことによる窒息死。死亡推定時刻は午後11時から12時の間。
【扼殺の痕跡】窒息の原因は首を素手で圧迫されたため。葉隠の指先には、犯人の手を引っ掻いたと思われる血痕がついていた。
【手のひらの傷】犯人の手には、葉隠につけられた傷があるはずだが・・・
【消えた不二咲】何故か朝食時から不二咲はいなかった。事件と平行に捜索したが不二咲は見つからなかった。
【ジェノサイダー翔の手口】ジェノサイダーの殺人は全てハサミによって行われる。被害者は全員男性であり、必ず磔にされ、その傍らには『チミドロフィーバー』の文字が被害者の血で記されている。
【腐川のセーラー服】腐川が血まみれの自分の制服を持っていた。どうやら、自分の血ではないようだが・・・本人は裁判前まで、気絶しており、詳細は不明。
【セレスの証言】夜時間の直前に校舎棟の方へ歩いていく腐川が目撃されている。
【不二咲の部屋の工具セット】男子にしか配られていない工具セットを不二咲が持っていた。誰かから借りたものだと思われるが・・・
【掃除当番】葉隠は掃除当番だったため、クロは簡単に証拠を燃やすことができる。
【二次元美少女の際どい絵】葉隠のポケットにあった絵。もともとの所持品ではなく、誰かにもらったばかりの物のようだ。
【ハサミの強度】葉隠を磔にしていたハサミは大きく、かなりの強度で、人の骨やコンクリートの強度にも勝るようだ。
【ダストシュート】ダストシュートは直径で30センチ程度しかなかった。それに、生ごみ以外を入れることはできないらしい。
【壊れた電子生徒手帳】焼却炉の中で、燃え残ったようだ。長時間の高温にさらされ、故障したようで、誰のものか判断することはできない。
今日はここまで
乙
うーん。不二咲関連はなんとなくわかったけど葉隠がわからん
あと山田もなんか隠してそうだしな
学 級 裁 判 開 廷
モノクマ「さあて、始まりました。学級裁判の時間ですよー」
モノクマ「もう、ルールは分かってるよね?」
モノクマ「超高校級の占い師こと、葉隠康比呂クンを殺害したクロは誰なのか、そいつをパパっと当てちゃってくださいなァ!」
セレス「始める前に一つお聞きしてよろしいですか?今回、私たちは、葉隠君を殺したクロを当てればよろしいのですね?」
モノクマ「そうです。これは、葉隠クン殺害についての裁判なので」
霧切「じゃあ、今までの被害者でも、クロでもない人が参加してないのはどうしてかしら?」
苗木(霧切さんの指の先には、誰もいない、バツ印の顔写真もない、空っぽの席を指していた)
苗木(不二咲さんのいた場所だ)
モノクマ「さあ?そこ、誰かいたっけ?初めから開いてたんじゃないの?」
桑田「ふざけんな!不二咲がいたじゃねーか」
モノクマ「あれ?君もまだいたの?死んだかと思ってたよ」
桑田「なんだとぉ!」
苗木「ま、まあ、落ち着いてよ、桑田君。モノクマに聞いても、まともに答えないことは分かってるじゃないか」
桑田「そーだな。こんな奴、信用せずに、俺たちだけで真相を突き止めようぜ」
十神「フン、そこまで意気込む必要はないと思うがな・・・」
朝日奈「なに言ってんの?クロを当てなきゃみんな死んじゃうんだよ!」
セレス「それが、もうほとんど分かりきっている。ということじゃないでしょうか?」
セレス「そうですよね、腐川さん」
腐川「うぐっ・・・」
セレス「どうですか?自首していただければ、こちらとしても楽なのですが」
腐川「・・・そんなの、知らないわよ」
セレス「血まみれの制服があなたの部屋から見つかっています」
腐川「・・・」
セレス「ハア・・・だんまりですか。まあ、見え見えの嘘を吐くよりかは、よっぽど賢い選択ですわね」
山田「でも、ここだけの話・・・葉隠康比呂殿を、腐川冬子殿がグサーッとやってしまったんでしょう?」
苗木「それは違うよ!」
山田「ぬあにぃー!」
苗木「モノクマファイルによると、葉隠クンの死因は、裂傷による失血死じゃなくて、首を圧迫されたことによる窒息死だったんだ」
朝日奈「えっ!そうなの?」
舞園「私も、出血多量が死因だとばかり、思ってました」
霧切「無理もないわね・・・あの傷だもの」
桑田「じゃあよお、葉隠は首を絞められてから・・・あんな風に切られたってことだよな?」
山田「ほう・・・いかにしてそのような推理に至ったかお聞かせくださいますかな?」
桑田「だって、切ってから首を絞めるなんて無駄だろ?ハサミで切った方が早えじゃねえか」
山田「なるほど・・・一理ありますな」
苗木「それは、モノクマファイルにも書いてあるし、間違いないと思うよ」
江ノ島「つうか、不二咲のことはもういいわけぇ?」
十神「今は、死因について話しているんだ。関係ない話題を持ち込むな」
江ノ島「・・・だって」
苗木「江ノ島さん、不二咲さんのことも大事だけど、今は、葉隠君の死因について話してるから、また後でね」
江ノ島「う、うん。分かった」
セレス「死因は、間違えなく窒息死のようですが・・・そうなると、また凶器が必要になってきますわね」
舞園「そうですね。ロープを使ったんでしょうか?」
桑田「いやいや、凶器なんていらないって、素手で充分だろ」
苗木「そうだね、ボクも素手で絞め殺されたんだと思うよ」
朝日奈「どうして?」
苗木「葉隠クンの首には、人の指の痕のようなものが残っていたんだ」
霧切「それに、葉隠クンの爪の間にも、何かを引っ掻いたように、血痕が残っていたわ」
朝日奈「引っ掻いたって・・・何を?」
山田「葉隠康比呂殿は扼殺されそうになっていたそうですから・・・なんとか手をどかそうと、クロの手を引っ掻いたんじゃないですかな」
江ノ島「手を外そうとするより、お腹を殴った方がいいのに・・・」
山田「ん?今、なんと?」
江ノ島「え!・・・いやいや、何でもない。そっかー、葉隠は素手で首を絞められてのねー」
舞園「あ!じゃあ、手を見て傷があれば、誰がクロか簡単に分かるんじゃないですか?」
苗木(・・・来た)
朝日奈「そうだよ!すごい、舞園ちゃん!」
十神「フン、バカバカしい。たかが、手の傷でクロを決めるというのか」
十神「じゃあ、この傷だけで、俺はクロ扱いされねばならないのか?」
苗木(十神クンは、自ら、手の甲にある引っ掻かれたような傷をボク達に見せつけた)
苗木「え!?」
十神「なんだ?もちろん、自白なんかじゃないぞ。知らぬ間についていたものだ」
苗木「でも、それは・・・」
十神「隠すまでもないから見せただけだ。それに、この程度の傷は女なら、ファンデーションを塗れば簡単に誤魔化せるだろう」
江ノ島「・・・」
十神「それとも、手を洗って、全員手を見せ合うか?誰一人として、傷がなかったら、クロになってやってもいいが」
霧切「やめておきましょう。きっと時間の無駄よ。仮に見つかったとしても、これだけで犯人扱いされても納得できないでしょうし」
セレス「そうですわね。でも、十神君、私の中であなたがクロである可能性も増えてきましたわよ」
十神「フン。勝手にしろ」
江ノ島「ねえ、話がひと段落したなら、次は、不二咲についての話にしない?」
苗木「うん、そうだね」
桑田「じゃあ、ズバリ言っていいか?不二咲は・・・まだ、生きてんのか?」
霧切「残念なことに、その可能性は薄いでしょうね」
苗木「モノクマが、不二咲さんが裁判に参加可能な状態なら、ここに連れてくるって、ボクたちに言ったんだ」
セレス「つまり、今は裁判に参加不可能な状態ってことですわね」
朝日奈「そんな・・・」
腐川「・・・」
山田「答えろ!殺人鬼ィ!我らが大天使ちーたんをどこに隠したのだァーッ!」
霧切「いいえ。問題はどこに隠したかじゃなくて、なぜ隠したかよ」
朝日奈「なぜ?・・・確かに、なんでだろう」
江ノ島「殺したことがバレないようにする為じゃないの?」
十神「それじゃ、何のために殺したのか分からないだろう」
霧切「殺人の動機は、もっと簡単なところにある可能性もあるわ。殺害の現場を目撃されてしまったとか、ね」
十神「・・・フン」
舞園「でも、わざわざ隠さなくたっていい気がしません?それも、結局は見つからなかったんだから、手が込みすぎですよ」
桑田「そーだよな、そこまでするくらいだったら、初めから見つかるなっつーの」
苗木「衝動的な殺人だったんじゃないかな?クロは不二咲さん、葉隠クンと3人でいる時に勢い余って・・・」
霧切「まあ、体の小さい不二咲さんを隠す方に選んだことは論理的だと思うけど・・・葉隠君の死体をあそこまで飾り付ける意味が分からないわ」
十神「少し考えれば分かることだろう」
朝日奈「ええっ!十神は分かってんの?」
十神「隠されたのは、不二咲千尋で、隠したのはジェノサイダー翔だ」
十神「まあ、ある情報を知らないと無理だがな・・・」
苗木(ある情報?ボクが知ってることかな・・・)
舞園「うーん、不二咲さんを隠して、葉隠君を晒す意味ですか」
江ノ島「不二咲の方が体が小さいってこと以外に?」
桑田「なにか、証拠を残しちまったんじゃねーの」
セレス「うふふ、女性の不二咲さんに気を使ったのでしょうかね」
苗木「そうだ、きっとそれだよ!」
山田「不二咲千尋殿にクロが気を使ったと?」
苗木「そうじゃないけど、女性だから隠す必要があったんだよ」
朝日奈「どういうこと?」
苗木「ジェノサイダー翔の殺人の手口だよ。ジェノサイダー翔は男性しか狙わないことで有名な殺人鬼なんだ」
舞園「そっか、女性である不二咲さんを殺してしまったから、隠さなきゃいけなかったんですね」
十神「その通りだ。少し考えれば分かることだろう」
霧切「・・・そうね」
江ノ島「それじゃ、クロは葉隠と不二咲を殺しちゃって、不二咲は男だから隠されて、葉隠は女だから、晒されたってわけね!」
朝日奈「違うよ、江ノ島ちゃん、性別が逆だよ!」
江ノ島「え?ああ、そうだった。ごめん、うっかり・・・」
桑田「んじゃ、これで事件の流れも分かったし・・・投票でいいんじゃねーの?」
苗木(本当にいいのかな・・・)
霧切「私も投票に移っても構わないと思うわよ。大した謎が今回の事件にあったとも思えないし」
舞園「霧切さんがそう言うならそうなのでしょうかね」
セレス「そんな考え方だと、霧切さんがクロの時は大変なことになりますわよ。まあ、今回の場合は大丈夫でしょうけど」
山田「・・・」
朝日奈「よし、じゃあモノクマ投票タイムに・・・」
十神「・・・待て」
苗木「十神君?どうかしたの?」
十神「腐川がクロだというのは間違いないだろうが、やはり、不二咲の死体をどう隠ぺいしたのかが分からん」
霧切「そうね・・・あなたがこれで終わらせるわけがないと思っていたわ」
十神「・・・分かったような口を利くな」
桑田「んなの、どーでもよくねぇ?」
江ノ島「腐川に、直接聞けばいいじゃん」
セレス「腐川さんはまだ口を開く気はないのですか?」
腐川「あ、あたしだって、何も知らないんだからしょうがないでしょ・・・」
十神「黙れ・・・事件のことを話す気がないのなら口を開くな。空気が濁る」
腐川「・・・」
霧切「死体消失のトリックを議論する前に、はっきりさせておきたいことがあるわ」
桑田「オイオイ、なんだよ改まって」
霧切「葉隠君のポケットから、二つの物が発見されたわ・・・一つはなにかの鍵、もう一つはコレよ」
苗木(そう言って霧切さんがみんなに見せた物は・・・例の絵だった)
朝日奈「ちょっと、霧切ちゃん!」
江ノ島「あんた、それ、どういう趣味」
霧切「安心して、私にこんな絵を描くような趣味はないわ。第一、こんな上手く描けないもの」
桑田「そんなこたぁ分かってっけどよ。葉隠のオk・・・私物だろ?わざわざ、晒すようなマネしなくても」
舞園「そんなに大事に持ち歩くなんて、よっぽど思い入れのある絵なのでしょうか。でも、ケースに入れられていたわけじゃないようですね」
セレス「芸術的価値があるようには思えませんわ」
苗木「葉隠君は、その絵を貰ったばかりだったんじゃないかな?持ち歩いていたわけではないと思うよ」
桑田「ってその絵にそんな議論する価値あんのかよ!」
十神「葉隠が殺される直前に誰かと会っていた・・・その程度のことしか分からない証拠だな」
桑田「あれ?それって、めちゃくちゃ貴重な証拠なんじゃ・・・」
朝日奈「葉隠は誰と会ってたの?」
舞園「こんな絵を描く人は、一人しかいないですよね」
セレス「山田君、なにか言うことはございませんか?」
山田「えーあのーですねー・・・なんと申し上げればよいのか・・・」
セレス「いいからさっさと答えやがれこのビチグソがぁぁあ!」
山田「はいぃぃぃ!僕は昨晩、葉隠康比呂殿に会っておりましたぁぁ」
セレス「なんでそんな重要なことを今まで、黙っていたのですか」
十神「まあ、当然、疑われるからだろうな。夜時間に密会していたという罪悪感もあっただろうが」
霧切「・・・」
苗木「話してくれるかな?昨晩の出来事を」
山田「ま、まず、信じて欲しいのは、僕は事件に何の関係もないということですぞ」
舞園「それは、話す内容にもよります」
山田「昨晩は、あるアニメの続きを葉隠康比呂殿に占って貰っていたのですが・・・法外な値段を要求されまして」
江ノ島「それで、カーとなってやっちゃったんだね」
山田「やってない!これだけは、言わせてもらう、僕は潔白だと!」
十神「いいから、さっさと話せ」
山田「それで、代わりに絵を描いてあげたのです。そんなものは、無視すればいいとお思いでしょうが・・・なんとも占いの結果が正確でしてな、まさに神展開だったのです。その時ばかりは、彼の占いを信じておりました」
霧切「彼と別れたのは何時かしら?」
山田「まあ、描き始めたのが10時頃でしたから・・・一時間弱ということで、11時くらいだったと、記憶しておりますぞ。それから葉隠康比呂殿は、絵を受け取って僕の部屋を出ていかれました」
霧切「死亡推定時刻とも矛盾はないようね」
桑田「死亡推定時刻は11時から、12時の間だったな」
舞園「それだと、葉隠君は部屋を出てすぐにプール前のホールに行ったということになりますね」
セレス「私が、腐川さんを目撃したのは夜時間の少し前でしたから、一時間程、彼を待っていたことになりますわね」
江ノ島「その間、腐川は不二咲と二人で待ってたってこと?」
苗木(・・・わざわざ、集合時間をずらしてた意味って?)
十神「山田、葉隠は腐川、不二咲と会うことについて何も言っていなかったのか?」
山田「それがその・・・『何か悪い予感がするべ』と言って、行かれました」
苗木「葉隠君は・・・二人と会う予定なしに現場に行ったってこと?」
朝日奈「悪い予感って、自分が殺される予感だって分からなかったのかな・・・」
霧切「こうして考えると・・・殺されたのは不二咲さんの方が先だったようね」
十神「なるほど。殺害した現場を見られたから、葉隠を殺さざるを得なかったわけだ」
苗木(腐川さんは不二咲さんを殺して、そこを葉隠クンに見つかったってことか?でも、派手に飾りつけたのは葉隠クンの死体・・・これってなにかおかしくないか?)
苗木「ちょっといいかな」
十神「もういいだろう。そろそろ、死体消失の謎を解明するぞ」
霧切「ええ、そうしましょう。重要になってくるのは、さっき言った鍵の正体、そして凶器のハサミ、キッチンにある生ごみ用のダストシュートよ」
朝日奈「鍵?鍵って部屋の鍵じゃなくて?」
舞園「たぶん、トラッシュルームの鍵じゃないですか?今のところ鍵が必要な場所って自室とそこくらいしかないですし」
桑田「それよりよお、ダストシュートってなんだよ。まさか、そこに不二咲の死体を投げ入れたとかじゃ・・・」
山田「ひぃぃぃぃ」
セレス「それは無理ですわ。なにせ、ダストシュートの直径は30センチほどしかありませんもの」
舞園「でも、他に隠す場所なんてありませんよ」
江ノ島「絶対にアタシたちが行ける所からは見つからなかったわよ。断言できるわ」
桑田「じゃあ、そこに不二咲が入れられたのは間違いねえのか」
山田「・・・そこに入れられたという根拠はそれだけなのですか?」
霧切「ええ、もう一つ証拠があるわ」
霧切「不二咲さんが、ダストシュートに入れられたとしたら、出るはずの証拠がね」
苗木(あの時、霧切さんが言っていたことか・・・)
江ノ島「不二咲がダストシュートに入れられたとしたら出るはずの証拠?」
セレス「血痕・・・ですかね」
舞園「もしかして、ダイイングメッセージですか?」
桑田「不二咲の持ち物じゃねーか?」
苗木「そうか、分かったぞ!」
苗木「焼却炉には、電子生徒手帳が落ちてたんだ。これはきっと、燃やされた服のポケットに入っていた電子生徒手帳が燃え残ったんだよ」
苗木「そして、これを不二咲さんのものだと仮定すると・・・」
苗木「クロが不二咲さんの服を燃やそうとして残してしまった証拠になる」
江ノ島「これで謎は全部解けたわよね?」
桑田「まだ、肝心なトコが分かってねーぞ!どうやって、クロは30センチのダストシュートに不二咲を入れたんだ?」
朝日奈「小さいし、無理やり押し込めば・・・」
十神「いや、それはルールで禁じられているようだぞ」
山田「じゃ、じゃあどうやって・・・」
霧切「苗木クン・・・もう分かっているわね。」
苗木「うん・・・仲間のことをそんな風に言いたくはないけど、事実として、言うよ」
苗木「クロは、不二咲さんを生ごみとして捨てたんだ」
苗木「凶器のハサミで、体をバラバラに切り刻んで」
桑田「おいッ、ウソだろ?」
朝日奈「そんな・・・酷いよ・・・」
江ノ島「確かに、バラバラにすれば直径30センチでも入るね」
舞園「それは理解できますけど・・・そこまでしますか?普通・・・」
十神「そうか?むしろ、死体を隠ぺいするには一番有効な手段だと思うぞ?」
霧切「確かによくあるわね。でも、外での事件とここでの事件は違う。死体を隠ぺいする必要はそもそもないのよ」
十神「自分のポリシーの問題にそこまでするのがおかしいというのか?」
霧切「・・・そういうことじゃないわ」
苗木(どういうことだろう・・・)
十神「気味の悪い女だ。おい、苗木続きを話せ」
苗木「うん・・・」
苗木「さっきも言った通り、生ごみ・・・死体以外はあの中に入れることができないんだ。服や身に着けている物はね」
苗木「だから、クロはそれらすべてを焼却炉で燃やそうと考えた。葉隠クンのポケットに入っていた鍵はトラッシュルームの鍵だったんだ」
山田「それは、クロが掃除当番だったのですか?それとも葉隠康比呂殿?もし、後者ならクロは、予め、葉隠康比呂殿が来ると知っていたのですかな?」
霧切「いいえ、おそらく後者だけど、葉隠君が来ることは知らなかったはずよ。むしろ、葉隠君が掃除当番だったからこそ、こんな計画に踏み切れたんじゃないかしら」
セレス「ですが・・・」
セレス「やっぱり、どこか矛盾した推理に聞こえますわ。もともと、やる予定の無かった死体消失をたまたま掃除当番の彼が現れたからやった。にしては、手が込みすぎていませんか?」
朝日奈「うん。私もなんとなく分かるよ、中途半端な気持ちじゃこんなこと絶対できないよ」
苗木(そこに重要な何かが隠されているように思えてならないけど・・・)
桑田「でもよ、これで事件の流れは一通り分かったわけじゃん?死体消失のトリックも分かったわけだし、一件落着ってやつじゃね」
十神「結局は、殺人鬼ジェノサイダー翔の独壇場だったわけだ」
苗木(十神クン・・・彼が事件に関係していないとは、思えない)
今日はここまで
次回、最終回
乙
まだ全然わからんな
腐川(って小説書いたんだけど)
苗木(捜査開始直後に芽生えていた十神クンへの疑いの気持ちはいつの間にか消えている。なぜだろう)
苗木(・・・腐川さんの部屋から血の付いた制服が発見されたからだ)
苗木(じゃあまず、十神クンに疑いを持ったのは何故だ・・・手のひらの傷を見たから?・・・違う、疑ってもないのに、手のひらの傷を見たりしない)
苗木(ジェノサイダーの犯行方法を詳しく知っていたから?・・・違う、知っていれば、ジェノサイダーの犯行に見せかけることができるけど、本は図書室にあったものだ。十神クンでなくても、知ることはできる)
苗木(図書室・・・十神クンは図書室にいた・・・)
苗木「十神クン、一つ聞きたいことがあるんだ」
十神「なんだ、事件に関係のないことなら後にしろ」
苗木「君は今朝、図書室から来たんだよね・・・それは、いつからいたの?」
十神「今更、アリバイ確認か?俺は、昨日からずっと図書室にいたぞ」
十神「それを証言するものはいないがな」
苗木「君自身が証言してくれればいいんだ」
苗木「ボクと霧切さんが死体を発見した・・・その騒ぎを聞きつけて、君は事件現場に現れた。そう、言ったよね?」
十神「そうだな」
苗木「不二咲さん、葉隠クン、この二人が殺された時の物音は聞こえなかったのかな?」
桑田「そ、そうだぜ!確かに、気づかないなんておかしいぞ」
十神「物音に気づいたら、そこに向かわなければならない義務でもあるのか?俺の勝手だろう、いつどこで出歩こうと」
苗木「ないよ・・・ないけど、気づいてしまったんだ。昨日の夜、あの場所に、もう一人の登場人物がいたらどうなるのか・・・」
十神「面白い・・・話してみろ」
苗木「これが事件の全貌だよ!
まず、不二咲さんと腐川さん、この二人は10時頃にプール前のホールで会っていた。
これはセレスさんの証言からも間違いないはずだよ。葉隠クンもまだその場にはいなかった。
これは、山田クンが証言してくれた。
でも、ここで事件が起きた。腐川さんが不二咲さんを殺害してしまった。
ジェノサイダー翔として、不二咲さんをハサミでハリツケにして、『チミドロフィーバー』の文字と一緒に飾ったんだ・・・動機はよくわからない。
でも、腐川さんの制服には血が付いていた。きっと、返り血を浴びたんだ。
誰かを腐川さんが殺したことは間違いないんだ。
それから、腐川さんは我に返り、部屋に戻った。
葉隠クンが事件現場に向かったのはその後だよ。
この二つを成り立たせる根拠、それは腐川さんが葉隠クンを殺していないからなんだ。
その後、死体を発見し葉隠クンが驚く、そこに十神クンは駆けつけた。
そこで、葉隠クンを殺害した。
そして、不二咲さんの拘束を解き、代わりに葉隠クンをハリツケにしたんだ。理由は簡単、腐川さんに罪を擦り付ける為だ。
最後に、不二咲さんをバラバラにしダストシュートに入れた。これは、きっと、ある事実を隠すためだと思う。
不二咲さんが男だという事実を・・・
そうだよね、十神白夜クン!」
十神「クックック・・・面白い推理だな、苗木。だが、推測に推測を重ねれば・・・どれだけ、事実と近かろうが、かけ離れていく。それを教えてやる」
十神「まずは、不二咲が男だという件・・・あまりにも、おかしすぎる。確かにそうすれば、ジェノサイダーの殺害対象に入るが、あいつはどう見ても女だろう?」
苗木「それを証明することはできる?」
十神「俺にはできないが、今のお前は、舞園に『お前は男だろう』と言っているのと同義だ。証明が必要なのはお前の方だ」
苗木「不二咲さん・・・いや、不二咲クンの性別に違和感を抱いたのは、彼の部屋を捜査した時だった。男子にしか配られない工具セットがあったんだ。だから、ボクは江ノ島さんと舞園さんにある調査を頼んだんだけど」
江ノ島「工具セットがなくなっている部屋を調べてって言われたからなんのことか分かんなかったんだけど、そういうことだったの」
舞園「それなら、無くなっている部屋はなかったですけど」
苗木「これで、確信できた。その工具セットはもともと不二咲さんの物だったってことなんだ」
十神「それがどうした。モノクマが配り間違えただけだろう」
苗木「そんなことあるはずが」
十神「ないと言い切れるか?そもそも、何を持って男女を区別する?体か?心か?」
十神「体はもう、調べることはできないな。まあ、見た目だけなら女だが」
十神「しかし、不二咲があんな恰好をしていた以上、少なくとも心は女の物だったんじゃないか?」
苗木「それは・・」
十神「バスルームのドアは調べたのか?女の部屋には鍵がかかるらしいが。まさか、調べてないと言うつもりじゃないだろうな」
苗木「あっ」
霧切「調べたわ。鍵はついてなかった。不二咲千尋は男性よ」
十神「そんなでまかせで、俺を誤魔化せるわけないだろう」
霧切「そうね。でも、明確な理由を求めているのはあなただけみたいよ」
十神「なに?」
セレス「工具セットを持っていたということだけで、男性と考えてみる理由は充分ですわ」
山田「信じたくはないですが、それもまた・・・」
朝日奈「私たちとあまり、遊んでくれなかったし・・・なんかおかしいな、とは思ってたからむしろそっちのほうがスッキリするよ」
十神「まあいいだろう・・・不二咲は男だったんだな、さすがに驚きを禁じえんぞ」
霧切「芝居はあまり上手くないのね」
十神「・・・黙れ」
苗木「霧切さん、助かったよ」
霧切「苗木君、分かってるでしょうけど、彼を論破するのはかなりの難問よ」
苗木「うん。でも、どんな難問であろうと、ボクは絶望なんかしない!」
十神「次だ。お前は、腐川が葉隠を殺していないと言い切っていたが、証拠はあるのか?」
舞園「確かに・・・そこが間違っていると、後半の推理は全部間違いになっちゃいますよ」
苗木「間違いないよ。その証拠をボクはこの目でしっかり見た。腐川さんの手に傷跡がないことを・・・葉隠クンの死体は間違いなく扼殺だから、クロの手には傷があるはずだよ」
十神「お前は、俺の手に付いた傷は葉隠につけられたものだと言っているが、この程度はファンデーションで簡単に消えるぞ」
苗木「腐川さんがそんな隠ぺい工作を図ったなら、おかしいことがある。それは、君も分かっているはずだよね?」
十神「そうだな。まず、血の付いた制服を燃やさなければならないな」
苗木「血の付いた制服を差し置いて、君のようにいくらでもいいわけができる手の傷を隠すことはどうしても考えられないんだ」
十神「フン、じゃあ・・・」
十神「死体の入れ替えについてはどう考える?自分の殺人を腐川のモノに見せかけるのはいいにしても、その違いに腐川自身が気づかないはずがない」
十神「まさか、腐川が誰を殺したのかも覚えていないとでもいうのか?」
苗木「まず、虫も殺すことができないような腐川さんが殺人鬼だというのが・・・そもそも、疑問だったんだ」
十神「なんだ。今更、腐川がジェノサイダーではないと言い出すわけじゃないだろうな」
苗木「そうであって、そうじゃない。それが答えだよ」
十神「どういうことだ」
苗木「ジェノサイダー翔は解離性同一性障害・・・つまり、多重人格。腐川さんはジェノサイダーであってそうでなかったんだ」
苗木「それは、君が見せてくれたファイルにも書いてあったことだよ」
十神「・・・多重人格ではあるが、それがなんだ?記憶を共有していないという根拠はあるのか?その事実を俺が知りえた理由も教えてもらおうか」
苗木「それは、君が、腐川さんに聞いたとしか・・・」
十神「フン。俺が腐川に聞いたということを証明できるのか?」
苗木「それは・・・腐川さんに話してもらうしか」
十神「だろうな。しかし、今の状況を考えてみろ。こいつは記憶を共有していないことを俺に話した」
十神「そう、言うだろう。俺が怪しくなり、自分はクロから遠のくんだからな」
霧切「今の状況での腐川さんの言葉は信頼できないということね。何を言ったとしても」
十神「・・・そうだ。だから、絶対に口を開くなよ・・・」
腐川「・・・」
苗木「何を言ったとしても?じゃあ、腐川さんが記憶を共有していると言ったとしても?」
苗木「腐川さんなら、十神クンを庇って、そう言うかもしれない・・・それさえも信用してはいけないって言うの?」
十神「・・・ああそうだ」
苗木(やっぱり、おかしいよ。十神クン)
苗木(彼がクロであったとしても、おかしい・・・)
苗木(死体消失は自分でやったトリックのはずなのに・・・それを知りたいという理由で腐川さんに投票するのを止めたのも、十神クンだった)
苗木(その時、ボクの中で、一つの真相が見えた)
苗木(クロは、死体を消失させることを一番念頭に置いていた・・・)
苗木(それって・・・)
苗木(あまりにもばかげている・・・とても信じられない)
苗木(それなのに、自分の中で答えをそう決めつけてしまっている・・・)
苗木「十神クン、君は・・・」
苗木「腐川さんを守るために・・・」
腐川「・・・え?」
静寂が十神白夜を包み込んだ。
・・・それは比喩であり、周囲は苗木の発言のせいで大論争が始まっている。
しかし、静かだった。
頭の中で、守れ、生き残れ、そう叫んでいた自分はすっかり消えてなくなっている。
始まりは、モノクマが提示した秘密をばらすという動機だった。
二人に、相談を持ち掛けられたのだ。
不二咲から相談を受けたのは意外だったが、相談は断り、代わりに夜時間に図書室に自分がいることを二人に言った。
だが、それは失敗だった。男であり、体格の小さい不二咲とジェノサイダーは、一番危険な組み合わせだった。
二人であの場所に待ち合わせたのだろうか
そこで話し合ったのだろうか
ジェノサイダーと化した腐川に気づかず、不二咲は話を続けたのか
全ては推測に過ぎない。が、
白夜が行ったときには、磔にされた不二咲とそれを見て震える葉隠がいたのだ。
葉隠の口から、あの名前を聞いたとき、葉隠の首に手を伸ばしていた。
思えば、葉隠の首を絞めた時から、生き残る気はなかったのかもしれない。
本当に生き残る気なら、こんな不利な状況じゃなく、一から計画を練ってやっていた。
掃除当番が葉隠だったのは偶然だ。
急に力を失った葉隠のポケットから、鍵が落ちていなければ、こんな計画は思いつかなかった。
今頃、腐川と二人仲良く死んでいたころだろう。
葉隠の死体を異常に傷つけたのは理由があった。
血が思ったより出ないのだ。
心臓が動きを止めてから切ったのでは、血は押し出されることなくゆっくりと少しずつ流れ出る。
血で文字を描くには至らない量だ。
不二咲を磔から解放し、代わりに葉隠を磔にするため、実際に血文字を書く必要はない。
が、だからと言って出血があまりにも少ないと、霧切あたりに指摘されるおそれがあった。
不二咲の死体を隠すには、かなりの根気がいった。
あのハサミでバラバラにするには時間と体力を削られた。
手や足は上手くいったものの、頭と胴体を細かくする際には、二度、投げ捨てようと感じた。
それほど酷かった。
しかし、死体が見つからなければ、もう腐川はクロではない。
あとは、自分の中の葛藤と戦い続けるだけだった。
霧切はおそらく、裁判が始まるころには、真相に気づいていただろうが、その動機に疑問を抱いていたことだろう。
思えば何故、自分はこんなことをしたのだろうか
直前に読んだ本に影響されたのか
その作者の本をもっと読みたいと思ったからだろうか
十神「強欲」 完
これにて完結です。
分かる人は分かると思いますが、容疑者Xの献身をモチーフに作りました。
この後、腐川、苗木たちがどういう結末を辿っていくかは想像にお任せします。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
乙 Xと言えば十神のシャツにXみたいな模様があったけどあれは何なん
乙
オシオキなしで余韻を残すタイプのSSは珍しい
しかしハサミで死体をバラバラにか…よほどの覚悟がないと出来んな…
>>118
sawだかなんだかの映画で胸をああやって切り裂いて[ピーーー]のが元ネタらしいよ
>>119 なるほどありがとう
十神は言い方はきついけど正論吐いててゲームで気持ちよかった
乙
大和田、石丸、さくらちゃんが生きてたら不二咲がそっちに相談するから死なせたってことかな
あー成程。そういうことか、無意味に[ピーーー]訳ないもんな
…しかしよりによって十神や腐川に相談するなんてちーたん切羽詰まり過ぎw
久々に真面目なダンロンSSを読んだけどかなり良かったです
ちーたんは萌える男子だからな…
このSSまとめへのコメント
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