…

……



「これはすごい、ですね……」



秘書に任命されまず見たのは練度一覧表。艦娘の情報の全てが詰まっている一覧表である。

その為、これに一通り目を通せばその鎮守府の練度が分かると言っても過言ではない物である。

香取が見たのは、2頁以上に並ぶ練度100超えの艦娘たちの名前。

戦艦や空母等、戦果を上げやすい艦娘が筆頭というのはわかるが、それでもこの数。

若くして提督を務めているだけあって、やっぱりできる人なのだなぁと素直に感心した。



「しかし、これほどの艦娘とケッコンしているのでは大変ではないですか？」

「大変？」

「まぁ……」

「？」



なるほど。これは不躾な質問をしてしまったと少し後悔した。

若さ故成せることなのでしょう、うまく回っているなら問題ありませんね。

この後も、艦娘の殉職数や出撃時の編成記録、日ごとの出撃回数などを提督の見ていない所で調査を進めたが、所謂黒い部分というものが一切見当たらなかった。

一週間ほど日が経ち懸念していた疑問が晴れ、提督の人物像や鎮守府の環境が鮮明になってきたところで、ある気持ちに気がつき始めた。

提督を見るときの自分が熱っぽく、見る目も艦娘に対するそれではないと。一人しかいない男性だから、というのも違うのはもうわかっている。

提督に恋をしている自分に気がついたのだ。惹かれているなどと、曖昧な位置づけでは済まないほど焦がれている自分がいると。

もっと色んなこと、お喋りしたい。一緒に食事をしたい。手を繋ぎたい。キスをしたい。その先だって、他のことも、もっともっと──。

そんな恋心に身を焼かれる思いをしながらも、もう一つ自分の中で芽生え始めた気持ちに気づいた。

さながら熱く火照った身体にバケツで汲んだ冷えた水を頭からぶっかけるような、身体の火照りを通り越して瞬時に肝を冷やすこの気持ち。

それも香取にはわかっていた。不安である。

ここでは全体的に練度が高く、自分が活躍できる場なんてないのではないかという杞憂。

現に今一番練度が低いのは他ならない自分であることが、より現実味を帯びている。

そもそも指導を目的とした練習艦が、戦うことを目的として作られた艦たちに指導を出来るのであろうか。

考えれば考えるほど募る不安に対処する術もなく、恋心と一緒にただただ増大していくのを指を咥えて見ているしかできなかった。





提督にも誰にも相談できないまま、しばらくが過ぎた頃。

どちらの気持ちも看過できない程に膨らんできた香取の心に一筋の光が差した。

「提督。出撃していた艦隊が帰投しました」

「執務室に通して、戦果報告を。それもつらそうな子には、先に入渠してもらうよう」

「はい、了解しました」



そう伝えた提督であったが、衣服がボロボロに破け大破した艦娘たちが執務室に押し寄せた。誰もが皆すすを被り、胸やら下腹部を露出したまま。

立っているのも辛いはずなのに、それよりも提督に戦果報告をすることのほうが優先すべきだと言わんばかりである。

香取は出撃している艦隊の旗艦とは別で提督の傍に身を置いているので、一緒に報告を聞くことになっている。

その為一連の報告は現場指揮を執っていた長門からだった。



「──以上で報告はおしまいだ。今回も皆、無事に帰ってこれた」

「ご苦労様。作戦が悪かった、大破してしまった子には頭が上がらない。すまなかった」

「提督が謝る事ではない。むしろ、提督のおかげで大破で済んだと考えるべきだ」

「それでも……いや、ありがとう。ゆっくり休んで、次に備えて欲しい」



了解した、と長門は一礼して他の艦娘を連れて執務室から出て行く。

足音すらない静まり返った執務室で香取は一つ、不思議に思ったことを尋ねた。



「あの、提督？」

「どうした？」

「どうしてそっぽを向いているのですか？」



報告の間ずっと、艦娘のほうを見ないで机を見つめていたのが気になった。

椅子に座ったままで、帽子の鍔を下げて視界を遮るようにして俯いているなんて、いくら頭が上がらないと言ってても変だ。

「……答えないとダメ？」

「嫌でしたら……無理にとは仰いませんが」

「…………」



どうしても気になるというか、なんというか。

誰しもがおかしいと思うだろうしどこか挙動不審である。

問いかけの返事にもいつもの覇気はなく、なよなよしいものであるのが尚更引っかかる。

具合でも悪いのだろうか。



「……長門たちも帰ってきた、今日はもうおしまいにしよう」

「提督、どちらに……」

「少し寝る。眠いんだ」



そう言うが早いかそそくさと立ち上がる提督。

やっぱり体調が良くないのではと近づいた、その時。

やや前屈みになりながら出て行こうとする提督のあるところに気づいた香取は提督を呼び止めた。

「これ、どうしたのでしょうか？」



立ち止まった提督はばつが悪い顔をしたままだ。

どうしたもこうしたも、提督のズボンが立派なテントを張っている。

呼び止めてから気がついた、自分はどうすればいいのだろうかと香取は考えた。

性事情はケッコンしている艦娘と一緒に解消するものだというのが香取の認識である。

ケッコンカッコカリの書類にもそう書いてある。

なのでどれだけ想いを寄せていても、ケッコンなんて程遠い自分に手が出せるものではないのだ。

しかしあれだけの艦娘とケッコンをしているのだから処理には困ってないはずである。

むしろ処理の対応に追われてきついはずなのでは、と思うくらいだがきっと絶倫なのだろうで済ませたのだが。

そうでないのなら一体なんなのか。

張り詰めた空気の中、先に口を開いたのは提督だった。



「……見ての通り、溜まってるんだ」

「でも、ケッコンしてる子と──」

「してないんだ」



驚いて言葉も出なかった。

一つも言葉が出てこないまま、ぽつりぽつりと話し出した提督の言葉を聞くことだけで時間は過ぎていった。

…

……



つまるところ、提督は童貞らしい。

提督に至るまでの生活で、特にこれといった女学生やら女士官との交流がなかったらしい。

言い訳がましいと言ったら酷いが事実としてそうあるのだから仕方がない。

だが香取にとっては好都合だった。想いを寄せる人間が新品そのものである。

もしかしたら、この人の初めてになれるチャンスなのではないかと。

そちらの知識もきっと疎いであろう、自分好みに調教することもできるのでは。

とは言ってもそんな特殊な性癖が自分にあるとは思えないが練習艦として生まれた性か、調教という言葉に異様に興奮を覚えてしまう。

兎にも角にも、自分の知識を一から手取り足取り教えることができる喜び。

ここで自分に出来ることをやっと見つけたというのと、これでお払い箱になることもないという二重の意味での安堵。

この好機、やはり逃すわけにはいかないと覚悟を決めた瞬間である。



「な？　馬鹿馬鹿しいだろう。艦娘の指揮を執る人間が女一人すら抱いたことがないなんて」

「そんなこと、ありませんよ？」

「それに今からでも遅くはありません。むしろケッコンしている子たちが可哀想です」

「義務とまでは言いませんけれど、仮にも妻ですから。セックスレスは由々しき問題なのです」

セックスレスだとかいう段階以前の話なのだが、提督に迫らない艦娘もどうなのかと少し引いてしまう。

好きなのだからケッコンを了承しているのだろうし、艦娘だって人間と同じで眠くなるしお腹も空くし性行為をしたいと思うはず。

ケッコンカッコカリは艦娘として役目を果たし、人間に戻ったときの為のいわば予行練習だというのに肝心なそれをしなくてどうするのだと。



「ケッコンしている艦娘たちには何も言われないのですか？」

「散々迫られたよ。していない子にだってね」

「では一体何が……」

「したことないし、どうしたらいいかわからなくて」

「でも教わるのも恥ずかしいし、全部断ってたんだ」

「……襲われたこととかは」

「ないよ。襲ってもいいと言われたことはあるけどね」

「好きにしていいなんて言われても、それで心に傷が残ったら手遅れだ」



呆れた。きっと他の艦娘は今も性欲に苛まれているだろう。

提督がこんなだから襲うこともできず、襲われる自分を想像しながら処理をしているに違いない。

提督も提督で、はだけた艦娘を見るだけでおっ勃ててしまうくらいならやってしまえばいいものを。

しかしそうできない意地やら艦娘を大切に思う心がそうすることを踏み止まってきたのだろう。

提督もきっとつらいのかもしれない。でもそれ以上に艦娘もつらい思いをしているはず。

今まで埒が明かなかったこの現状を、自分なら打開できると信じて。



「……一つ、お聞きします」

「性行為に興味はおありでしょうか？」

「そりゃあるけど……」

「わかりました。今晩、寝室へ伺いますね」

「え？」

「心配しないで？　色々と優しく指導させて頂きますから」

「練習巡洋艦香取、提督のお悩み解消に全力を尽くします」



こうして夜の教導艦・香取による性教育が始まるのであった。

始まるのは至ってふつーで調教はないです。
おやすみなさい。

期待してるぜ！

おっち
期待

ちくしょうなんていいところで

乙です。次の更新まで全裸待機してますね

ほげええええええええええ

とりあえず脱いどきますね

これは期待

素晴らしい！期待！

こんな香取スレを待っていた

期待

香取さんの容姿を見て伊藤ライフがロックオンしたらしいが当然だよな
この提督も香取さんにがんばれがんばれされるのに期待

…

……



新しい一日を迎えるよりまだ幾ばくか早い時間に、二人は布団の上に並んで座っていた。



『夜中に備えて下さいね？』



あの後香取にそう耳打ちされ、呆然とする提督を置いて部屋を出て行った。

我に返った提督は、この後起こすことの為に自分の分かる範囲で準備を始めた。

心ここに在らず、食堂では味のわからない食事をし、浴場ではひたすら身体を洗ったりするなどして身支度を済ませる。

そんな状態でも無意識のうちに期待していたのか気づけば寝室にいて、一人布団の上で正座をしていた。

本当にくるのかなぁ、なんてそわそわしていると遅れて香取がやってきた。

髪は下げていて、いつもとは違う雰囲気を感じる。

制服姿からは想像のつかない明るいクリーム色のパジャマを着ていて、とても可愛らしい。

香取が歩み寄る度に、その動きにつれて心地良い香りが部屋中に広がっていく。

香取から香るシャンプーやら石鹸の残り香がその正体で、本来なら気分を落ち着けるような甘い匂いなのだが。

気分を落ち着けるどころか、逆に提督の鼓動を早めていく。

ゆっくりと提督の隣に腰を下ろして、お待たせしましたと一言。

緊張の汗で滲んだ提督の手をとり、指を絡めて握った。

「緊張しないで、大丈夫……」



緊張しないでと言われても、提督の身体は余計に硬くなる。

強張ったままの提督、大丈夫と言ったきり黙ったままの香取。

そのまま沈黙が続き、冒頭に至る。



「本当にするのか？」

「はい。私なら大丈夫です」

「……教えてくれるっていうのはすごく嬉しい提案なんだけど、その」



俺のことが好きなんだよね？

なんて聞くこともできなくて、けれどうまい言葉も見当たらなくて。

よりにもよって選んだ言葉はこれだった。



「こういうこと慣れてるのかなって」



言った後で、言ってはいけないことを言ってしまったと冷や汗が頬を伝う。

聞き様によってはというより、誰がどう聞いても喧嘩を売っているようにしか聞こえない物言いだった。

怒りを買う発言の応酬に罵声やら怒号で寝室が震えるかと思いきや、そうはならなかった。

きょとんとした顔でこちらを見つめる香取。やや間を置いてから、申し訳なさそうにして口を開いた。



「実は、その……私も誰かと性交渉をしたことがなくて……」

「でも、初めてでも女性の身体のことについてはちゃんとお教えできる自信があります」



意外。その一言に尽きる。

てっきり百戦錬磨で、経験から成る知識を分け与えてくれるものかと思いきや正反対だったようだ。

それでも自信有り気に言い切ってみせることから、恐らく経験を補う分だけの知識があるということなのだろう。

しかし、経験もないのにどうやって教えようという考えに至ったのか。

まったく性生活に溶け込めない自分に、自信を持てるよう協力しますと言ったくれたあの時。

どういった気持ちで協力しようと決めたのかがますます気になった。



「どうして香取は俺にここまでしてくれるんだ？」

「……きっかけは、提督と出会った時からです」

「一目惚れ、でした」



澄んだ翡翠色の瞳に見つめられ、目が釘付けになる。

真面目な表情に目を逸らすこともできず、吸い寄せられるように見つめ返すことしかできない。

一目惚れという言葉では飲み込めず、そのまま目で続きを話すように訴える。

「一目見たときから、どこか貴方に惹かれていました」

「秘書になってから少しずつ、提督の色んなことを知りました」

「会話を交える中である程度の人柄がわかり、私たち艦娘に慕われる姿や、指揮を執る姿を見ているうちに」

「次第に言葉では言い表せない、心地良くも煩わしい気持ちが大きくなっていきました」

「あるとき、その気持ちが何なのかに気がついたのです」

「その後はもう、提督を見ると胸が躍って、お話が出来ると嬉しくて……」

「提督のこと、見る見るうちに好きになる自分がいたのです」



真面目な表情がふっと緩んで、見つめる瞳には熱が篭り、温かみを感じるものに変わる。

ゆっくりとした口調だが、考える素振りもなく流れるように話していく。

自然と湧いて出てくる思いをそのまま言葉に乗せている、そんな風に見受けられた。

一目見たとき、秘書になってから、段々知っていくうちに、そして気持ちに気づいたとき、それからはと。

その時その時の香取の気持ちが生々しく感じられる真情の吐露に、思わず息を呑む。

「私、提督のことがもうどうしようもないくらい好きなのです」

「提督に抱かれたいという気持ちもありましたし、提督も興味があると仰られたので」

「あとは提督さえよろしければ、私で経験を積んで頂けたら」

「私も嬉しいですし、提督のお力にもなれるかと思いまして……」



香取が思い煩っているとき、自分はどうだったのか。香取をどう思っていたのか。

提督は頭の中で、その時の自分の気持ちを思い出して照らし合わせる。

一目見たとき、どうしてだか近くにいて欲しくて秘書に任命した。

あるとき、きっかけはあれど今まで誰にも相談できなかった悩み事を、簡単に吐いてしまった。

それから、内心小馬鹿にされるのではないかと思っていたのに親身になって聞いてくれた。

言い訳を並べてつまらない意地を張って、触れ合いを避けていた自分に手を差し伸べてくれた。

そして今、それが好意によるものだと知りこの上なく嬉しいこと。

他の子では、きっとここまではならない。どことなくそんな感じがする。

あぁ、俺もきっと、香取のこと……。

身体の強張りはいつの間にか消えていた。



「私ではやはり……」

「ううん、そんなことない」

「むしろ、他の誰でもない香取としたい。して貰いたい」

「お願い……してもいいか？」

まだしていなかった返事を、ようやくすることができた。

それを聞いて、香取の顔から笑みが零れる。

不意にその顔が近づき思わず目を瞑ると、むにっと何かが唇に触れる。

柔らかい。それと、いい匂い。

すぐに離れたそれが唇で、キスをしたのだとすぐに理解できた。



「うふっ……よろしくお願いしますね？」

「あ、あぁ……」

「それではまず……スキンシップやキスから入りましょう」

「執務室に良い教材がありましたので、お持ちしました」

「私も不慣れですので、これを使って一緒に練習しましょう？」



そう言いながら自分のポケットに手を入れ、取り出したのは二つの飴玉。

言うとおり執務室に置いてある見慣れた飴だ。主に駆逐艦娘にあげたりしているやつである。

それを使って練習とは、一体何に使うのだろうか。提督にはまだわからなかった。

うっ…ふぅ
やり慣れた香取が提督を押し倒して躾けるようなのが一番しっくりくるのに何書いてんだろ、はぁ
おやすみなさい

乙
俺も調教される感じが好きだけどこっちの方が平和だと思う

レベル1香取でも経験値向上はある。つまりそういうこと

やっべ

超たまらん、すごい（小並感

私も香取先生に筆下ろしして欲しい

ポリネシアンセックスしたい…

まってる