春香「ぷぎゃー」 (9)

今日はアイスクリームを食べました。

通りを歩いていたら、アイスクリームの看板が目に止まったんです。

美味しそうだったので買ったんですが、寒い季節にこういうものはとてもじゃないけど普通は食べられません。

でも、何かこう、食べたいなーと思ったんです。そういうこと、偶にありませんか?

それはさておき、アイスを食べたせいか、私は今熱っぽいです。
風邪を引いてしまったのでしょうか。


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事務所で、千早ちゃんが私の顔を見ながら言いました。

「春香…大丈夫? 顔色が悪いわ」

「えっ…そう?」

「えぇ。とても疲れてる」

千早ちゃんは心配そうな顔をします。

やっぱり風邪を引いたんでしょうか。

千早ちゃんに心配をかけるなんて、私はダメですね。
出来るだけ元気な姿を見せるように、私は笑顔を作ります。

「あっはは、私なら大丈夫だよ」

「ふーん…。それならいいんだけど…同じアイドルとして体調管理には気をつけるように春香に注意するわ」

「ごめんね…アイスはもう食べない」

ふと口にした言葉を聞かれたのでしょうか。
千早ちゃんは眉を細めて惚けたような顔をしました。

「アイスを食べたの?」

「あ……う、うんちょっとね」

「な、何でこんな寒い時期に…」

千早ちゃんは不思議そうな顔をします。

無理もないです。
私にも、何でこんな寒い時にアイスを食べたのかよく分からないのですから。

何となく…としか言えない

「偶にね、ほんと偶に…寒い日にアイス食べたいなーなんて思う時があるの。ただ、それが今回は風邪に繋がっちゃったんだけど…」

千早ちゃんは黙って私を見ていました。

デタラメな理由に腹を立てているのでしょうか。
それとも変な風に思われてるでしょうか。

少しだけ、視線が怖いです。


でも、千早ちゃんは意外な言葉を口にしました。

「その気持ち、分かるわ」

「…えっ?」

………
………………

「冷えるわね…」

冷たい風が吹き付けるなか、身を縮こまらせて千早ちゃんは歩きます。

私は追いかけっこでもするかのようにその後を追いました。

「千早ちゃん…! 急にどうしたの?」

「どうって…アイスを食べるのよ」

「え、えぇ?」

千早ちゃんはどんどん歩いていきます。
私に注意をしておいて、千早ちゃんは何を考えているのでしょう。わけが分からないまま着いて行くと、やがて私が買ったアイス売り場と同じ所に辿り着きます。

千早ちゃんは店の中に入ると、早々にアイスを注文しました。

「ストロベリーアイスを一つお願いします」

「千早ちゃん…?」

「…座りましょう」

千早ちゃんはアイスを受け取ると、静かに気合いを入れるように呟き、空席へと歩いて行きます。

そして、息を一つ整えると、ゆっくりとアイスを食べ始めました。

すこし落ちが弱いがいい話だった

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