後輩「渡すチョコに薬盛るとか最低ですね」 (38)
幼馴染「ちょっと待って、よく聞いてよ」
後輩「えー、でも……」ジトー
幼馴染「いい? なにも惚れ薬盛ろうってんじゃないの、正直になれる薬だよ」
後輩「渡すのは……当たり前ですけど、あの窓の向こうのお宅にいる男さんですよね」
幼馴染「もちろん、生まれて18年隣同士で愛を育んだ人以外にいないでしょ」
後輩(18年かけても薬頼りかぁ…)ハァ…
幼馴染「だからなにも問題はないよ」フンス
後輩「いや、それだけじゃ受ける印象変わらないんですけど」
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幼馴染「しょうがないなぁ……後輩ちゃんだから教えるけど、内緒だからね?」
後輩「別に聞きたいわけじゃないです、お邪魔しましたー」
幼馴染「待って! 聞いて、ごめんって!」アタフタ
後輩「はぁ……じゃあ話してみて下さい、ぱぱっと」
幼馴染「まず、男は私の事が好きでしょ?」
後輩「好きって言われたんですか?」
幼馴染「言われないから頑張ってるんだよ」
後輩「じゃあ解らないじゃないですか」
幼馴染「そこは大丈夫、窓際に私の下着干しとくと夜中にこっそり取り込んで朝には戻してるの知ってるもん」
後輩「それ、平気なんです?」
幼馴染「うん、私もするから」
後輩「うわぁ…」
幼馴染「待って、ひかないで。……まあ、そういうわけで男は私の事が好き、と」
後輩「性的興味の対象と恋愛対象は──」
幼馴染「──で、ここだけの話だけどね」
後輩(遮りやがった……)
幼馴染「実は……私も男が好きなの」
後輩「うわー、しょーげきのじじつー」ペッ
幼馴染「だけどなかなか男が告白してきてくれないんだよ……」ハァ…
後輩「先輩から告白すればいいんじゃ?」
幼馴染「夢なんだよね、男から告白されるの。ずっと憧れてたんだ」
後輩「はぁ…それで、正直になれる薬とやらを男さんにあげるチョコに盛ろうと」
幼馴染「盛るって表現に不満を覚えるけど、そういう事だね」
後輩「そんな怪しげな薬どうやって手に入れたんですか」
幼馴染「アマゾンの奥地から取寄せました」
後輩「そのアマゾンってアルファベット小文字で表記しません?」
幼馴染「だけど、やっぱり時季だからなのかその『正直ニナール』単品は売り切れだったんだよね」
後輩「もう胡散臭いを通り越してネタ商品ですよね、そのネーミング」
幼馴染「だから仕方なく他の薬もセットになった5本入りの箱を買ったの。高くついたわ……」
後輩「この木箱がそうなんですね」
幼馴染「そうなの、開けてみて?」
後輩「はいはい……っと、白い瓶が5本入ってますね。中身は粉薬?」
幼馴染「うん、全部同じ瓶でラベルも無いでしょ?」
後輩「確かに、でも木箱の蓋の裏に配置と薬品名が記載されてますね。ええと……いちばん左が──」
幼馴染「──出しちゃったんだよね」
後輩「はい?」
幼馴染「瓶、全部いっぺん出してみたの。底に薬品名書いてないかなーって」
後輩「……それで、元の配置には?」
幼馴染「解らなくなったの」テヘッ
後輩「飲みませんよ、私は」
幼馴染「ま、まさかぁっ! 後輩ちゃんに飲んで確かめてもらおうなんて、思いついただけで言う気はないよ!」アセアセ
後輩「じゃあ、どうするんです? もう今日は土曜日、バレンタイン当日ですよ?」
幼馴染「そうなんだよ、だからもうチョコは作ったんだ」
後輩「おお、ラッピングされたハートチョコが5つ……と、小さいダイスチョコ?」
幼馴染「うん、全部の薬の分作ったの。ダイスチョコはそれぞれの薬を確かめる試食用」
後輩「だから私は食べませんってば」
幼馴染「解ってるよ……私が食べてみる。それで後輩ちゃんにはそれぞれの効果を見て、ラッピングと薬の瓶に印をつけて欲しいの」
後輩「なるほど」
幼馴染「というわけで、いいかな?」
後輩「どの位の分量入れたんです? 小さなダイスチョコで、ちゃんと効果出るんですか?」
幼馴染「説明書によると、成人の所定量の5分の1以上入れれば効果が出て、量の多少は強さじゃなく持続時間を左右するって」
後輩「所定量入れた場合の持続時間は?」
幼馴染「30分から長くて1時間って書いてたよ。ダイスチョコには5分の1量を入れてあるの」
後輩「じゃあ単純計算なら、持続時間は6分から10分前後ってとこなんですね」
幼馴染「名前ペンで、ラッピングと瓶に印として頭文字を書いてくれる?」
後輩「わかりました、私に危険がないなら協力します」
幼馴染「よかった……ありがとう、残ったハートチョコ全部あげるからね」ニコッ
後輩「要りません」ニコッ
幼馴染「じゃあ、端っこからいくよ。……えいっ」パクッ、モグモグ…ゴクンッ
後輩(あ、そういえば効果は飲んでどれくらいで発現するんだろ──)
幼馴染「──とにかくね、所定量入れたら30分位は持続するわけ、解る?」
後輩「え? ええ……」
幼馴染「で、ダイスチョコは5分の1量だから、30分を基準に考えれば6分ってことよね」
後輩「解ってますよ? さっきもそう言って……」キョトン
幼馴染「解ってないと思うなぁー、正確には」フフン
後輩「はい?」イラッ
幼馴染「そもそも粉薬の量なんて、どうやって正確に計るのよ? そりゃ1kg使うなら数%も狂わず計れるだろうけど、所定量で何gの話よ?」
後輩「はあ…」イライラ
幼馴染「同じ事はカルピスを希釈する時にも言えるわ、よほど大量に作らないとメーカーの思う通りの味にはならない」
後輩「カルピスは今、関係ないですよね」
幼馴染「そこでカルピスウォーターよ……」ドヤァ…
後輩「うっぜええええぇえぇぇぇぇ!!」
幼馴染「まあまあ、面倒がらずに最後まで聞いてみてよ──」
………
…
…数分後
幼馴染「──あれ? 私、なんでこんなつまんない話してたんだろ」ハッ
後輩「薬のせいだと思いますよ……」ゲンナリ
幼馴染「そっか、どの薬かわかった?」
後輩「ええもう、ばっちりですよ。『クドクナール』で間違いないです!」ケッ
幼馴染「よかったー、さすが後輩ちゃん! 頼りになるー!」
後輩「とりあえずもう充分過ぎるくらい付き合った気分なんですけど」
幼馴染「まだまだ! 『正直ニナール』がどれか判るまでいくよ!」
後輩「もう次で当てて下さいよ……」
乙
期待
乙
面白いよ
支援
何か百合になりそうな展開
幼馴染「よ…っと」ヒョイパク、モグモグ…ゴクン
後輩「どうです?」
幼馴染「……あは、もっかい言ってみて?」クスッ
後輩「はい? ど、どうです…って」タジ…
幼馴染「可愛い声…鳴かせたくなっちゃう」スッ
後輩「え? ちょ、先ぱ…んっ!?」
幼馴染「んん……はむっ…」チュルッ
後輩「なにしてんですかっ!? やっ、耳は…ダメっ!」ゾクッ
幼馴染「いいの…力抜いて? ほら、蕩けさせてあげる」ツーーーッ
後輩「やだ! どこに手を入れて…! やめて、女同士ですよっ! こんなっ…あぁっ…」ピクンッ
幼馴染「ふふっ…女同士だから解るんじゃない。見ぃつけた、ここを…こうでしょ?」
後輩「うぁっ! だめっ、そこ…あっ…らめえええぇえぇぇぇっ──!!」ビクンビクン
………
…
…数分後
幼馴染「ごめん、ほんとに」ツヤツヤ
後輩「うぅ…ぐすっ、お嫁いけない…」
幼馴染「だ、大丈夫! 後輩ちゃんのイキ顔、可愛かったよ!」
後輩「死んじゃえっ! もう帰りますっ!」
幼馴染「待って! お願い、まだみっつもあるんだよ!」
後輩「うぅ…やだなぁ…」
幼馴染「次で当てる! 次で当てるからっ!」
幼馴染「よし、いくよ!」パクッ、モグモグ…ゴクッ
後輩(もう何も言わないでおこう…)
幼馴染「………」
後輩「………」
幼馴染「………」チッ
後輩「?」
幼馴染「…なんか言う事ないわけ?」ギロッ
後輩「ええぇ…」ガクッ
幼馴染「腹立つわー、そもそもなんでこんな散財しなきゃいけないのよ」
後輩「…知りませんよぅ」
幼馴染「はぁ!? ここまで乗りかかっといて、そんな冷たい事言うんだ!?」バァンッ
後輩「ひっ…!?」ビクゥッ
幼馴染「散々私の指で喘いでおいて今さら他人事! 後輩ちゃん、そういうコだっけ!?」キッ
後輩「ち、違いますぅ! そんなつもりじゃ…!」グスン
幼馴染「じゃあ解るでしょ! 悪いのは誰よ!?」
後輩「それは、先ぱ…」
幼馴染「あぁ?」ビキッ
後輩「ひいぃっ…男さんですぅっ──!」
………
…
…数分後
後輩「もう帰る! 私ほんとに帰ります!」グスンッ
幼馴染「ごめん! ほんとごめん、薬のせいなのっ!」
後輩「うぅ…めっちゃ怖かった、先輩のアホぉ…」フルフル
幼馴染「と、とりあえず印書いて、ね?」アワワワ…
後輩「あとふたつ…はぁ」キュッキュッ
幼馴染「次で当てる! 2分の1だもん、当たるから!」
幼馴染「こっちだっ!」パクッ、モグモグ…ゴクン
後輩(もう、遠巻きに見とけばいいんじゃないかなー)ソーーーッ
幼馴染「…どこに行くの?」
後輩「は?」
幼馴染「私を独りにするの…?」ポロッ
後輩「な、なんで泣いて…」
幼馴染「お願い! 独りにしないで…見捨てないでっ!」ガバッ
後輩「ぎゃーーー!」
幼馴染「どうせ私なんか、18年も一緒にいる男と恋人関係にさえなれないんだよ…」エグッ…エグッ…
後輩「そんなことないですって! そうなるために今、頑張ってるんでしょ!? 主に私がだけど!」アセアセ
幼馴染「そりゃあね、昔は男だって『大きくなったら結婚する!』とか言ってくれたの」
後輩「はいはい、そうでしょうとも!」
幼馴染「でも、そんなの子供の浅はかな口約束だよね…」
後輩「あの、そんなに深刻に考えなくても…」
幼馴染「それでも私は、それを信じて……うわああああぁあぁぁんっ!」
後輩「これ『悲シクナール』か……もうやだ…」ハァ…
………
…
…数分後
幼馴染「あー、なんか泣いてスッキリしたー」ニパーッ
後輩「私が泣いていいですかねぇ…」フルフル…
幼馴染「でもおかげで判ったよ! この一つが正直になれる薬だね!」
後輩「よく外しに外したもんですよ。はぁ…じゃあ頑張って下さい、私は帰りますね──」スッ…
幼馴染「──待って」ガシッ
後輩「放して下さい」ニコッ
幼馴染「放しません」ニコッ
幼馴染「お願い、この正直になれる薬にどんな効果があるか不安なの!」
後輩「だから正直になる効果ですって! 帰ります!」グイッ
幼馴染「やだっ! だって男が正直になった結果『別に好きじゃないし』って言ったらどうするの!?」ギュッ
後輩「そんなの知りませんよ! 私が居たって変わらないじゃないですか!」
幼馴染「この薬のチョコも食べてみるから! お願い、それだけ付き合って!」
後輩「あんなに自信満々に『男さんは自分が好き』とか言っといて、情けないですよ!」
幼馴染「正直っていうのが素直で優しい感じなのか、思った事をバッサリ言うようになるのか見極めて欲しいんだよ!」
後輩「もしバッサリ言う方だったら、渡すのやめるんでしょう!? これだけ苦労したのにっ! 当たって砕けて下さい!」プイッ
幼馴染「そんな事言わないでっ! ね? 素直になる薬なら今までみたいな事にはならないって!」
後輩「放して下さい!帰るううぅうぅぅ!」ジタバタ
幼馴染「ええい、捕まえたまま食べちゃう!」ヒョイパクッ
後輩「もうっ! 嫌ですってば……」
…パッ、ドサッ!
後輩「きゃっ! 急に放すのも──」
幼馴染「──ごめん、大丈夫? 後輩ちゃん、どこも打ってない?」
後輩「くっ…しまった、食べたんですね」チッ
幼馴染「……後輩ちゃんが嫌がるのも無理ないよね。今日はいっぱい迷惑かけてごめんなさい」ペコッ
後輩「そ、そうですよ! あんなヤラしい事まで…!」
幼馴染「うん……でもありがとうね。おかげで素直になる薬も判ったし──」
後輩「はいはい、何よりでしたねーだっ」
幼馴染「──後輩ちゃんが大事な大事な友達だって事も再確認できたよ。今日だけじゃなく、いつもありがとう」ニコッ
後輩「うっ?」ドキッ
幼馴染「今日のお礼はきっとするから。気をつけて帰ってね、見送れなくてごめんなさい」
後輩「なんか調子狂うなぁ……素直になっちゃって。見送りできないって、これからどうするつもりなんです?」
幼馴染「男の部屋に行くわ、早くチョコを渡したいから」
後輩「あの、それは今の薬の効き目が切れてから……」
幼馴染「私、早く男の顔が見たい。男の事が大好きなの。だから行ってきます」クルッ
後輩「いや、そうじゃなく! ダメですよ……って、もう窓開けようとしてるしっ」アワワワ…
カラカラカラッ、コンコン…
幼馴染「男っ! 入るね!」
後輩「先輩っ! 今のまま会ったら…!!」
ガラッ…ヒョイッ
幼馴染「男っ──!」トンッ、タタタッ
男「お? どした、急に?」キョトン
幼馴染「──大好きっ!」ガバッ!ギューーッ!
後輩「あーぁ……」
男「うわっ!! えっ!? なに、どしたの!?」
幼馴染「私、ずっと男の事が好きだった! ずっとこうしたかったんだよ!」ニコッ
男「いや、あの、嬉しいけど…! こ…後輩さん、なにかあったの?」
後輩「あんだけ苦労させといて、計画総倒れとか……」プルプル
幼馴染「やっと自分に正直になれたんだよ。男ももっと正直になってくれる?」
男「えっ…急には恥ずかしいんだけど…」ゴニョゴニョ
幼馴染「後輩ちゃん、チョコとってくれる? 私、一秒でも男とくっついてたいの」
後輩「バッカみたい」ハァ…
幼馴染「頭文字『正』の奴ね!」
後輩「……はい『セイ』のチョコ、どーぞ」ポイッ
幼馴染「ありがとう! 男、これバレンタインのチョコ!」
男「う、うん…ありがとう。いただきます」ガサガサ
幼馴染「後輩ちゃん、気をつけて帰ってね!」フリフリフリ
後輩「はいはい、どーも」カラカラカラ…ピシャッ
後輩「はぁ……疲れた…帰ろ…」ガックリ
チラッ……
後輩「……ま、箱の中の瓶だけ正しい配置に直しといてあげましょうかね」
後輩「一番右が怒リクルエール、次がクドクナール、真ん中が悲シクナール……」カチャカチャ
後輩「頭文字を書けって言ったのも『セイ』のチョコを取ってくれって言ったのも先輩ですからね」ヒョイ
後輩「一番左が『ショウ』直ニナール、左から二番目が──」コトッ
後輩「──『性』的ニハジケール……っと、これでオッケー」パタンッ
後輩「……ごゆっくり」クスッ
【おわり】
乙
続き書いてもいいんだよ
乙乙
これはレイプされる
>>1乙
既成事実か…
乙。面白かった。
乙乙
乙
これはいいものだ
乙乙!
おつー
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