多分ぼくは彼女の名前を忘れないだろう。
　一生ではないにしろ――しばらくは強烈な記憶として。
　この忘れっぽいぼくが。
　未だ――彼女の余韻が、手に在るほど。
　そのぐらいの人間だった。
　それこそ――人類最強の請負人同じぐらいに。

　圧倒的な強さを備え。
　圧倒的な弱さを抱え。
　圧倒的な迫力を持ち。

　箱庭学園を、踏みにじった。

　アブノーマルで、ノーマルで、マイナス。
　何よりも突き進んでいるように見えて、何よりも後退している彼女。

　完全。
　完璧。
　完成。
　完了。

　全てが彼女を表す言葉であり――全てが彼女自身。
　何度も繰り返すが、彼女に匹敵した強さを持つのは請負人ぐらいだろう。
　そのぐらい――強すぎた。
　ただ違うのは――
　それと同じぐらい、弱すぎることか。

　彼女だけでも異常だったが、さらに異常な彼がいた。
　いや―――
　彼は、普通なのだろう。
　非凡である彼女に比べると、あまりにも、平凡。

　しかし、ぼくは思うのだ。
　普通であるがゆえに。
　平凡であるがゆえに。

　異常。
　普通こそ異常。
　朱も赤に交わる。
　あの中で赤に染まらない人間は――異常だ。

　どいつもこいつも異常なキャストで、果たして平凡な物語は開けるのか。
　どれもこれもキャラクターが強くて、脚本家泣かせに違いない。

　そんな舞台をぼくは観客席から眺める。
　何故かたまに被害は被るけど―――
　だけど、ぼくは傍観者だ。
　自分からは動かない。
　例えばぼくにも異常というものがあるなら―――
　なにもしない。
　それが、異常なんじゃなかろうか。
　戯言だけど。



　異常者による、異常者のための、平々凡々な物語。
　はじまりはじまり。

立てたのか　期待している

第一幕――生徒会

0

　出る杭は抜かれる。

1

　目覚めると、真っ赤なコブラの助手席に座っていた。
　………。
　ええと。
「起きたかいーたん。目覚めはどうだい？」
　ハンドルを握り、ぼくに頭の先から爪先まで真っ赤な女性――哀川さんがシニカルな笑みで話しかけてきた。
　相変わらず真っ赤だ。
「すごく……デジャヴを、感じますね」
　つい最近もこんなことがあった。
　気絶させられて女装させられるという屈辱的なことが。
　――澄百合学園。
　とある少女を救うためにぼくは駆り出されたわけだ。
　色々あって、そこはもう廃校となってしまったけど――
「同じ手はつまんないからな。今回はいーいーが寝てる間に連れてきたんだよ」
　誘拐じゃねえか。

「寝てる間にってことはぼくは寝間着……あれ？」
　着替えていた。
　男子用の白を基調とした制服に。
　哀川さん、またぼくを着替えさせたな。
「何も寝間着で登校させるほどあたしは鬼じゃねーよ」
「…また学校ですか」
「鈍いお前にしちゃ冴えてるじゃんいーたん」
　まあ、これだけヒントを出されれば分かるというものだ。
「今回は共学だ。やる内容もいたって普通。――だが、異様さでいえば澄百合と並ぶか、それ以上かもな」
「…どういう、ことですか？」
「澄百合学園は普通の人間を異常に仕立ててる。だけどな――目的地、箱庭学園の生徒は元から異常なんだ」
「は――？」
「ま、ちゃんと普通のまま学校に入って普通のまま出る人間もいるけどな」

　異常といっても、どのような異常なのか。
「あたしが――いや、玖渚ちんが調べたところによると『スキル』というものがあるそうなんだよ」
「『スキル』」
「異常者のみ持っているもの。例えばだな――反射神経＜オートパイロット＞が説明しやすいな。過剰な反射神経を持ち物理攻撃からの回避行動のみならず、反撃や奪取までを自動に行える、とかな」
「…いつからこの話はsfに移行したんです？」
「移行？馬鹿だなお前、あたしが存在する時点でこの世界はsfでファンタジーでミステリーでフィクションでノンフィクションでラブコメなんだよ」
　……哀川さんがいうなら、そうなのかもしれない。
「まあとりあえず、そんな奇人変人が揃う学園に何しに行くんですか？」

　ぼくはざっと彼女の服装を見る。
　相変わらずの、真っ赤なスーツ。
「見たところ――哀川さんは教師でも、生徒でもないようですけど」
　というかこんな教師は嫌だ。
　ヒューストンの頃にも変わり種の先生はたくさんいたが――哀川さんを見ると全て霞んでくる。
「潤だ。あたしの名字を呼ぶのは敵だけだからな」
「あ――すいません、潤さん」
「いやぁ、いつまでたってもこのやりとりが来ないから待ちくたびれて寝ちゃいそうだったぜ」
「ここ高速道路ですからね！？」
　この人ならやりかねない。

またの

乙


次も期待するぜ

興奮してきた

楽しみに待ってます。

期待

期待

「じょーだんだよ」
　そう言うと潤さんはおもむろにハンドルから手を離し、後部座席を振り返った。
　そして何事かごそごそしはじめた。
　いや。
　いやいやいや。
　これじゃ前は見えないし、ハンドルも捌けない。
　冗談だといった矢先にこれは、冗談キツすぎる。
「ほれ」
　ぽんとぼくに資料を渡してきた。
　片手をハンドルに置きながら、ぼくの顔を見て潤さんは説明する。
　とりあえず前を向いてください。
「そこの黒神めだかってやつを見張ってて欲しいんだよ」

　クリップで挟まれていた個人写真をまじまじと見る。
　気の強そうな女の子だ。
　そういえば、こういうタイプはぼくの周りにはいないかもしれない。
「……この子も異常なんですか？」
「おっ、いーちゃんやるー。彼女は異常の中でも異常だよ。まあ、あっちでは異常＜アブノーマル＞っていうんだけどな」
　異常の中の異常。
　ふむ。
　なんだか一周回って平凡そうな気もするが。
「黒神……まるで赤神みたいな名字ですね」
　ぼくとしては軽口を叩いたつもりだった。
　しかし、潤さんは
「ああ、赤神の分家だよ。とは言っても負けず劣らずの資産と負け知らずの企業を展開してるから分家本家はあまり関係なくなっているらしい」
　マジかよ。

「………」
　横の広がりって、厄介だなあ。
　思わぬところで繋がっているから油断ができない。
「無理に接触はしなくていい。でもな――あたしの情報は、絶対、何も話すな」
　珍しく潤さんが念をおしてきた。
「…黒神家になにかやってしまったんですか？」
「それはまだバレていないはずだから違う。黒神めだか、その個人が非常に危険だ」
　おい。
　まだバレていないはずだからって、何かやらかしたのか。
　これこそ冗談のつもりだったのに。
　もしやトラブルを起こす回数がぼくと同じぐらい多いのではなかろうか。
「多分なー。でもいーたんと決定的に違うところは凡ミスで入院しないところだな」
「だから心を読まないで下さい…」

酉つけないのか

　トラブルがあっちから来るぼくとは違い、潤さんはトラブルを起こしているようなもんだしな…。
　それで、とぼくは会話を戻す。
「潤さんがそこまで警戒するなんて珍しいですね――この、めだかちゃんのスキルは？」
「完全＜ジ・エンド＞」
「またなんか……名前からして厄介そうなものが」
「スキルはいわゆるコピー能力だな。カービィみたいな」
「わざわざ任天堂から引っ張りださなくてもいいんじゃないですかね…」
　まさか口からコピー対象を吸い込むわけでもあるまい。
「見たものはもちろん、聞いただけでも推測し、その技を完成させることが出来る――それも使用者が100%なら120%にレベル上げして」

　とんでもないチートだった。
　化物か。
　いや、女の子を化物呼びしちゃいけないな。
「じゃあ…口止めの理由は、コピーされるかもしれないからですか？」
　ふと鴉の濡れ羽島で出会った誰でもない彼女を思い出した。
　他人に成り済まし――他人として生き、それが飽きればまた他人へと――。
　あの人は潤さんをコピーできるのだろうか。
　こんなはちゃめちゃでめちゃくちゃでひっちゃかめっちゃかな請負人を。
　そう考えると、まあ技だけならコピー可能な気もしてきた。
「別にあたしはコピーだろーがペーストだろーがされたって構わないんだよ」
　彼女にしては珍しく、顔をしかめている。

「120%？ならあたしは200%になってやるよ。あたしはほら、進化し続ける請負人だからさ」
　これ以上に進化すんのかよこの人。
　この自信たっぷりさが、さすが――人類最強だ。
「ならなんで――」
「なんかこう、技というかスキルというか――ネタ被りは嫌なんだよな、あたし」
「それかよ！」
　ネタ被りが嫌なだけか！
「だってお前、一つの作品に同じ技もってる奴がいたらウザったいだろ？全員程よくバラけたほーが悪者も効率よく倒せるだろうによ」
「まあ――ぼくはあまりマンガを読まないので、賛同しかねますが……」

雰囲気出てる
めだかキャラにも期待

戯言終わってから７年くらいか？
期待

　……ん？
　なにか大切なことを忘れているような…。
　しばらく回りの遅い脳みそを動かして、やっともやもやしていたものが分かった。
「…あの、潤さん」
「ん？」
「箱庭学園って言いますが――その、ぼくが行くところの、学年は？」
「１年生だ」
　……。
　…………。
　大学１年のことだろう。
　多分そうだ。めだかちゃんは飛び級かなんかしているんだ。
「違うぜ、箱庭学園は私立の高等学校だ。高校だよ、高校」
「なるほど。ではぼくは何歳でしょうか」
「なんだいーいー。年齢も忘れちまったのか？１９だろ？」
　あっさりと答える潤さん。
　そりゃぼくだって忘れていたわけじゃない。利き手と名前を忘れたことはあるけど。

そういや真心にもコピー能力あったよな　完成（コンプリート）とかそんなんだった気がする

狐さん倒したあたりかな？

なかなか西尾節は体力が削られるのでちょこちょこ書いていきます

>>29
すっかり忘れていた…
真心もチートでしたね

>>28
クビツリハイスクールの退院後ぐらいです

哀川さんなら反射神経ごときのスキルなら余裕そうだよね　
相手の反射神経より速く攻撃できるよね

　１５歳の中で１９歳とか、絶対に目立つだろ。
「でもいーたんは澄百合ん時は怪しまれなかっただろ？いけるいける。あたしが保証する」
　…まあ、潤さんに保証されるなら……。
　いや――そういう問題ではなく。危うく丸め込まれるところだった。
「適任が他にいたんじゃないですか？…それこそ姫ちゃんとか、萌太くんとか」
「一姫はともかく関係者は巻き込みたくねーんだよ。――というかあっさり人を売るなよ。それにあのお兄ちゃん、妹がいるんだろ？しばらく空けさせたら悪いじゃねぇか」
　あ、ぼくは関係者扱いか。
　確かに今更この人類最強とは無関係だと言い張れるほどじゃあないんだけどね…。
　あの蹴られた瞬間からどうしようもない糸が絡み付いていたってわけか。

めだかが完成しても哀川さんは永遠に未完成なんだろうなきっと
めだかっぽく言うと未完成（エンドレス）みたいな

「さあて――見えてきたぜ、箱庭学園がよ」
　乱れた前髪を掻き上げながら潤さんは言った。
　この人、なにをやらしても様になる。
「あの…結局ぼくは箱庭学園に言って――めだかちゃんを見ていればいいんですか？」
「そ。なんだか不穏だからそばで見てくれって理事長に直々に言われて――いや、泣きつかれてな――ほらあたし、目立つからさ。学生って年齢でもないから」
　確かにこの人は目立つ。
　真っ赤――だから。
　赤く、紅く、朱い。
　彼女ほどのイレギュラーで――そしてレギュラーなキャラクターはそうそういないだろう。
「期限は二週間。必要なもんは全部借りアパートにあんから。ほれ、メモ」
「――まさかの泊まりですか。もう今更なにもいいませんが……」
　文句いったらどうなることやら。
　ま、いいか――大学なんか最近ろくに行ってないし。
「なんかあったら連絡してな。――携帯ぐらいわかるだろ？」
「ええ。じゃあめだかちゃんの監視と――」
　異常に大きい建物を見上げながら呟く。
「高校生活、楽しんできますよ」
　戯言だけど。

2

　ぼくの転入シーンは割合しよう。
　いわゆる予定調和なものだったし――わざわざ感想を言うほどのものではない。
　授業は、まあチンプンカンプンだったけど、それも予定調和だ。
　……ヒューストンでなにを学んできたんだろうぼく。――別に学びたくていったわけじゃないんだけど。
　閑話休題。
　それより今のぼくが直面している問題のほうが大事だ。だいじで、おおごと。
　迷った。
　別に人生に迷ったという大層なことではなく、道に迷った。

　この学校、広すぎる。

　いったいここがどこなのかすら分からない。
　うーん…来た道を戻れとはよく言うけど、ぼくの場合その来た道を忘れてしまった。
　さてどうしよう。

　適当に歩いていれば出口につくだろうか。
　ああ、そういえば迷路から脱出するには右手を壁に当て続ければいいんだっけか。
　思いたったら吉日。
　ぼくが右手を壁に伸ばした時だった。

「む？見慣れない生徒だな」

　後ろから凛とした声が響いた。
　振り向くと、女の子が――いた。
　長い髪。アホ毛。気の強そうな目。整った顔立ち。何故か制服から溢れ出ている胸。
　まるで作り物のような少女。
「……。転入したばかりで、迷っちゃって」
「そうか。――ならば貴様に道を示してやらないとな」
　上から目線で彼女は言った。
　二の腕の腕章には『会長』とでかでかと書かれている。
　少し考えて、ようやく――遅いぐらいだけど――思い出した。

　異常の中の異常。
　一年十三組。
　完成。
　――黒神めだか、その人だった。

もがなの声帯砲を曲識に聞いて貰いたい

「私から名乗るべきだな！私は黒神めだか、生徒会長だ！」
　擬音に凛ッとつきそうな迫力で彼女は言った。
　残念なことにもう知っているのだが、それは相手が知るよしもないので黙っておく。
「ぼくは」
　さて、なんと言おう。
　ぼやかしたらしつこく聞いてきそうだからな。
「ぼくは、零崎愛識。知り合いには、いーくんとか呼ばれてるよ」
「ふむ。では零崎同級生！私が学園内を徹底的に徹頭徹尾案内してやる！」
「いや、ぼくは昇降口を捜してて―――」
　問答無用に手首を引っ張られた。
　……。
　あれ、なんか抜けないぞ。というか彼女の手は手枷か？手だけに。
　――なんだか。
　哀川さんとめだかちゃんのペースが同じ気がするのは――気のせいか……？

続く

ちなみに零崎愛識はご存知サイコロジカルから
曲識ならもがなの聞いて「悪くない」連発しそうだ。悪くない

続け

おお雰囲気でてていい感じ
期待してる

　それからぼくは様々なところを歩く羽目になった。
　生物室。
　科学室。
　美術室。
　体育館。
　グラウンド。
　渡り廊下。
　馬鹿みたいに広すぎた。

　途中、隈と寝癖の酷い教師に会ったのだが「あー、黒神に捕まったか。ご愁傷様」としか言われなかった。
　助ける気が全くないのが逆にすがすがしい人だ。
「この方は私の担任だ！」
「ああ…そうなんだ」
　この子の担任は大変なんだろうなあとちょっぴり同情する。
　それにしても――
　めだかちゃんは、なんだかあらかじめ情報をインストールしたロボットみたいだ。
　人間味が――なさすぎる。

　こう……裏がなさすぎて、裏を疑ってしまう。
　信念が深すぎて、逆に浅い――というべきか。
　普段運動しないぼくの足がガタガタ震えだしたころ、さらに広い部屋にたどり着いた。
「ここが食堂だ。箱庭学園の生徒の胃袋を管理しているところだ」
　なるほど、ならこの規模はうなずける。
　キムチ丼はあるだろうかとぼんやり考えていたら、
「あひゃひゃ！生徒会長自ら案内人ですか？」
　きゅぽ、と擬音がつきそうな感じで小柄な少女が飛び出てきた。
　上履きの色はぼくと同じ。つまり、彼女もまた同級生か。
「こんにちは転入生さん☆あたしは不知火半袖っていうんだよ、よろしく！」

きたか

しぃぃぃぃぃぃらぁんぬぅうぃたぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

貴重な戯言ssあげ

　半袖ちゃんは口のまわりについたソースを親指で拭い、そして舐めとる。
　今まで食事をしていたのだろうか。夕飯にしては早すぎる気もするが。
　ちなみに今日のぼくのお昼は哀川さんのらぶりー弁当だった。恥ずかしかった。
　あの人ほんと何やらせてもプロだな。
「まったく、貴様の胃袋には驚嘆させられるな――」
　ぼくの横でめだかちゃんはどこかつまらなそうな顔をする。
「褒めても何も出ませんって☆」
　微妙に張り詰めていく空気。
　どうやらこの二人、馬が合わないようだ。
　どうすればいいだろう。女の子のいさかい事には慣れていない。

頑張れ

④

支援

続きはよ読みたい・・・

こんな微妙な所で終わらせないでよ

　その時だった。
「めだかちゃん！」
　後ろから声がした。救いの声だと言っても間違いない。
「善吉か」
　めだかちゃんが振り返る。
　立っていたのは生徒会の制服を来た男の子。金髪で、後ろ側が黒いが新手のファッションだろうか。
　まあ、赤い髪の人とか蒼い髪のやつとか周りにいるから髪型ぐらいじゃ今更驚かないけど。
「まったく、めだかちゃんと不知火は犬猿の仲だな」
「やだなぁ善吉クン☆めだかちゃんとあたしは大の仲良しだよ？」
「ふん」
　いや、どうみてもこれ仲良しじゃないよね。

　部外者であるぼくは黙って事の成り行きを見守る。
　入学早々トラブルは抱えたくないし、ここでめだかちゃんに悪印象を与えるとかなり痛い。
「ん？こっちの人は？」
　善吉くんがぼくを指差す。
　行儀悪いぞ、と思ったが初対面でいきなり踏まれるよりはマシか。
「ああ、新入生の零崎愛識一年生だ。今日転入した」
　そしてなぜこの子はまるで自分のことのように話すのだろうか。
「へぇ、よろしく。オレは人吉善吉ってんだ」
「よろしく、善吉くん」

　流石に握手はしなかった。
　ぼくがアメリカで一番困ったのは握手やハグだった。玖渚にこそハグは許すが、ぼくはスキンシップがあまり好きじゃないのだ。すきだけに。
「――すごいね☆一日で生徒会二人と知り合えちゃうなんて」
　半袖ちゃんは魚肉ソーセージをどこからか出して食べていた。
　いつまで食べているんだろう。
「じゃあね、お嬢さまに善吉、それから零崎くん」
　厨房になにやら話に言った後、にこっと笑って半袖ちゃんは食堂から出ていった。残ったのは積み重なった食器だけ。
「……よくあれだけ食べられるね」

「あいつには毎度驚かせるよ。異常に広い胃袋を持ってるんじゃねーかな」
「私もあれぐらい余裕だ」
「張り合わなくていいから、めだかちゃん」
　どうやら彼女は相当の負けず嫌いと見た。
「で――零崎とめだかちゃんはなにをやってたんだ？」
「うむ！校内案内をしていたのだ！」
　大きい胸を反るめだかちゃん。目のやりどころに困るから露出諸々やめてほしいものだが。
　善吉くんがちょっとあわれむような目で見てきた。
「……お疲れ」
　どうやら彼もめだかちゃんに振り回されている一人らしい。

しばらくすみませんでした

乙
全然気にしてないからぼちぼち頑張ってくれ

ぶっちゃけもう続かんと思ってた

すごい好み支援
ゆっくりでいいから完結してほしいな

　その後、善吉くんも混じりめだかちゃんの校内案内は続いた。
　善吉くんはめだかちゃんの二歳からの付き合いだそうで、だからか舵取りがうまい。
　先ほどより心労が減った。
「あのさ」
「む？なんだ？」
「名前のことなんだけど――いーくんとか、そういう感じで呼んでくれないかな」
「いーくん、なぁ。別に問題はないが、どうしてだ？」
「愛とか入ってて恥ずかしくて。それに、知り合いはみんな――そう呼んでる」
　それに零崎とかな。鏡から出てきたようなあいつと同じ名字とか勘弁願いたい。
　まったく誰だよ、こんなに安直に名前を考えたやつ。ぼくしかいない。

「ふむ、零崎同級生。悩んでいるのか？」
　だから零崎はやめてほしい。
「悩み？悩みがないことに悩みを抱えてはいるけど」　
「……名前にってことだよ。ええと、いーくん」
　なんだ、それか。危うく忘れるところだった。今さっき出てきたばかりの話題なのに。
　ぼくの忘れっぽさは今日も絶好調です。

そろろかな？

「……まあ名前に悩みはこれといってないけどね。いーくんとかのほうが馴染みあるし」
「あー、小学校のころのあだ名ってそのままズルズル行くよな」
「そうだね」
　ぼくは日本の中学校には行ってないけど。ということは小卒か。あれ、確か音々さんは幼稚園卒だった。それに、あの兄妹も学校行ってないし。
　なんというか、教育委員会に真っ向から喧嘩売ってるよな、あの骨董アパート。
「善吉も二歳の時から『めだかちゃん』だったものな」
「やめてくれ…ほら、今更呼び捨てなんかできないし」
　照れ臭そうに片目を閉じ、頬を掻く善吉くん。
　……これは、照れているというより惚れている？

　幼なじみだから、そういうことも考えられなくはないけど…。詮索はやめておくか。
「零崎同級生」
　凛ッとめだかちゃんがぼくに向き直る。
　強気な顔。ぼくが今までに関わったことのない人間。
　哀川さんも強気といえば強気だけど、あの人は次元が違う。
「悩みがあるならなんでも生徒会に相談するがいい！24時間365日受け付けるぞ！」
　決め文句のように言い切ってみせた。
「分かったよ、めだかちゃん」
　その他人の悩みを相談される側の彼女には一体、何の悩みを持っているのだろうか。
　人間は生きていれば――正常に生きていれば、悩みを抱えるものだ。
　だが――異常（アブノーマル）な人間には果たして悩みがあるのだろうか。普通の人間が持ち合わせているような悩みを。
　彼女に、完全な彼女に例えば不完全なぼくの悩みが理解できるんだろうか――なんて。
　戯言だけど。

戯言遣い意外と馴染んでるな

言い訳タイムがはじまるんですが、最近戯言見てなくてめだかも深く読み込んでないので、何か口調などの違和感があったら教えてください

とくにないよ

違和感は無いかな

とても良いと思うが

　めだかちゃんと善吉くんと別れ（解放されたともいう）昇降口に歩いていく。
　そこで年下らしき男の子と会った。
　……そういえばここ高校だ。年下なのはあたりまえじゃないか。
　上履きの色からすると三年。めだかちゃん達の先輩にあたるだろう。
「『やあ』」
　と。
　素晴らしく同族嫌悪のような異族嫌悪のようなそんな凝りに似た感触が喉を通る。
「『始めましてかな？』」
「…そうみたいだね」
　零崎が鏡の向こう側とするなら。
　彼はまるで歪曲された硝子の向こう側みたいだ。
　どこかぼくと同じで――どこかぼくと違う。
　気持ちの悪い――存在。
「『いやいや』『誰だか知らない誰かさん』」
　彼は言った。
「『慣れてはいるけど』『初対面でその面は』『やっぱ凹むよ』」
「……ごめんね。ぼく、無意識に人を観察する癖があって」
「『そうかい』『君は』『僕を見るの』『初めてなのかな？』」

球磨川キターーーーーー！！

球磨川きぃぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁ

最もかっこ良くてかっこ悪いキャラ

いいよね球磨川先輩

今週の半袖ちやんかわいかったですね
ちょっと待ってください

期待せざるをえない

あの展開は燃える

最高

最高