魔王「魔王に就任したから人間界で暮らす」(22)

女勇者「あ゛ーあづいー」ザックザック

魔王「一時に比べればまだいいだろう」ザックザック

魔王「あと少しだ。後五枚畑を作れば十分だ」ザックザック

女勇者「おお、本当?!」

魔王「手を休めるなー。後は予定作物以外に収穫したい作物の要望次第だ」ザックザック

女勇者「へー例えばどんな要望が?」ザックザック

魔王「毎日じゃがバター食べたい、とか」ザックザック

女勇者「……なるほど。え、バターどうするの?」ザックザック

魔王「人間に扮して人間の市場で物々交換」ザックザック

女勇者「せ、せこい」ザックザック



魔王「ふー良い湯だった」ホカホカ

女勇者「あーさっぱり!」ホカホカ

側近「本日も勇者の方がお見えです」

魔王「全く、どうやってここを突き止めているんだ」

女勇者「そりゃー地図に無い城があるんだから、近くを通れば気付くよ」

男勇者c「久しぶりだな妹よ」

女勇者「ふおぉぉぁぁぁ! お兄ぃぃちゃぁぁん」

魔王「兄上か?」

男勇者c「数ヶ月音沙汰無しで何してやがる!!」ガキィィン

女勇者「おおおおぉぉぉ! 糞兄貴ぃぃぃぃ!!」ギィィィン

魔側「えええぇぇぇぇ!?」

男勇者c「何をしているかと思えばこんな所で何をしているんだお前は!!」キィンギィィン

女勇者「うるせーー!! あたしは自立したんだよーーー!!」ギィィィン

男勇者c「何が自立だ! ただの家出だろ! 一族の使命を忘れたか!?」ギィンドカン

女勇者「知るかあんなもん! 古臭いんだよぉ!!」バコンカキィンドカン

側近「……へ、部屋が」

魔王「睡眠魔法」スィ

勇者's「」ドザ

魔王「覚醒魔法超微弱」パン

勇者's「ハッ」ボー

魔王「これ以上暴れられても困るから、穏便に話し合ってはもらえんか」

男勇者c「この馬鹿妹は我が一族の役目を放棄して家出したんだ」

魔王「一族一族とお前は一体何処の一族なのだ」

女勇者「くっだらない湖を守る巫女」

側近「ぶふっ!」

魔王「ぶほっ!」

女勇者「あぁん?!」

側近「ですがだってぶっぷぷ」プルプル

魔王「巫女……おま、ぅ、くく」プルプル

男勇者c「男は巫女の補佐を行う者であり、巫女は湖を守る者。しかも私達の母親は族長だ」

魔王「家出しちゃまずいじゃないか」

男勇者c「だからこうして連れ戻しに来たんだ」

男勇者c「だいたいお前がここで何ができるんだ!」

女勇者「はあ?! あたしだって十分に役立っているんだよ!」

男勇者c「嘘をつけ! おい! この(馬鹿な)子が何処で役立つ場面があったんだ!」

魔王「役立つに決まっているだろ! 畑(力)仕事!!」

男勇者c「……お前も立派になったんだ」

女勇者「なにそのテンション差」

魔王「無理やり家に連れて行かれなくて良かったじゃないか」

女勇者「全くだ!」

側近「それにしてもそんなに嫌なのですか? その巫女や族長というのが」

女勇者「しきたりばっかで息苦しいし、存分に身体を動かせないし!」

魔王「なるほど、勇者の性格と真逆の世界か」

女勇者「なにその納得の仕方」

側近「というか貴女のお兄様、雇い主が魔王である事に一切反応しませんでしたよ」

魔王「というか彼も勇者なのだよな? 雇い主以前に私である事に反応すべきだが」

女勇者「あんの糞兄貴じゃあなぁ……」


族長「魔王?! それであの子は?! お前は何をしてきたんだ!」

男勇者c「そんな事よりあの馬鹿が全うに仕事をしているんだぞ!」

族長「なんと! し、しかしそれでも魔王の下と言うのは」

男勇者c「いや……妹と同じ波長を感じた」

族長「なら大丈夫か……」

魔王「実りの秋!」

女勇者「芸術の秋!」

魔勇「温泉の秋!」

側近「……」つ鍬二本


魔王「……」ザックザック

女勇者「……」ザックザック

女勇者「おかしくない!? まだ耕すとかおかしくない!?」

魔王「急に温野菜の株が上がってな。鰻上りなのだよ」

女勇者「倹約は?! 始めの質素っぷりは何処行ったの?!」

魔王「一度贅沢してしまうと中々戻れんよ!」カレートカ

女勇者「カレーが贅沢なの?!」

魔王「初代から四代くらいまで、じゃがいもスープ(お湯)の時もあったのだぞ!」

女勇者「可哀想! 役職なのにただの煮込んだじゃがいもと出汁可哀想!!」

魔王「まあなんだ。ここで我々が頑張れば農業組が頑張って作物を作りまくるからな」

女勇者「そう聞くと良いかもしれない!」

魔王「そして辿り着く屈強勇者達」

女勇者「一ヵ月後、そこは更地に」


側近「……凶報です、例の男勇者bさんとその仲間が魔物の王を討ったそうです」

女勇者「おいこら何でフラグ立てた!! ふざけんなちくしょおぉぉ!!」

魔王「うああぁぁぁ! 冗談でも言わなきゃ良かったああぁぁぁ!!」

側近「緊急会議です……」

魔王「側近の顔が超真顔だ……」

側近「真顔通り越して顔面神経痛です」

女勇者「引き攣って?」

側近「それはもう……ああ、どうする。どうしたらいいんだ……」

魔王「今すぐ魔界に引き返すか? は、はは……半年の努力は何だと言うのだ」

女勇者「というか、男勇者bはここでの記憶ないんでしょ? だったら魔物の王を魔王として討伐報告されてるでしょ」

魔王「そう……なるな」

女勇者「だったら全員、人間として建国しましたって偽ればいいじゃん」

側近「魔王様、この勇者さんは偽者のようです」

魔王「そうなるな!」

女勇者「おいこら!」

魔王「とにかく人間の国として扮しよう」

側近「城しかありませんがね」

女勇者「漁業組は村になっていないのか?」

魔王「あーあそこだけか」

側近「あそこだけですね」

女勇者「普通の人間の国に見えない件」

魔王「とりあえずドラゴンとゴーレム達は帰らせよう」

側近「大事ですね」

数日後
人間の軍隊 ザワザワ

魔王「どうしてこうなった」

女勇者「なんか向こうはこっちが魔王だと認識しているみたい」

側近「何故……一体何処で情報が漏れて……」

女勇者「糞兄貴」

魔側「あっ」

魔王「どどどうする」

側近「魔法で眠らせて強制転送してその間に逃げるというのは」

女勇者「んん~……魔王達はまだここに居たいの?」

魔王「当たり前だろう!」

側近「時の行商の種と苗があるので今戻っても咎められる事はありませんが、やはり悔しいものがありますね」

女勇者「んじゃーちょっくら行ってくる」ガチャ

魔王「は? お、おい!」

側近「ゆ、勇者さん? どちらに?」

魔王「……え? あの子なにするつもり?」

側近「さ、さあ……まさか一人で軍隊を相手取るのでは」

魔王「まさか~そんな馬鹿げた事~」ハハハコヤツメ

側近「ですよねー」ハハハ

魔側 ――やりかねないし勝ってしまいそうで怖い!!――クワッ

軍隊「」ゾロゾロ

魔王「おお……帰ってゆく」

側近「一体何が?」

女勇者「ただいーまー!」

魔王「一体何をしたんだ?!」

女勇者「まー一族の紋章もあるし、あたしがそこの出だってのも勇者名簿にあるから知られているし」

女勇者「彼らは別の湖を守る一族で、こうして定期的にこっちの湖の近くに来て様子を見てくれている」

女勇者「本家みたいなものなのです。その為、一族の長女である私がこちらにいるのです、て誤魔化した!」

魔王「良くやった!!」

側近「立場上でしょうが、勇者さんが私とか違和感しかないですね」

魔王「これでしばらくは安泰だな」

側近「ですねー」

女勇者「え?」

魔王「え?」

側近「はい?」

女勇者「こんなんすぐにバレるに決まってるじゃん。どうせ母さんのところに確認しに行くんだろうし」

魔側「えっ」

女勇者「この時間で他所に移るなりなんなりすればイイジャナーイ」

湖を守りし巫女の一族、その娘がいるとされた城は
とある国の兵士達が見たのを最後に数ヵ月後には何一つ残っていなかった。

広大な田畑も何一つ残っておらず、まるで白昼夢のようであったと後世にまで語り継がれる事となった。

魔界
魔王「懲罰こそ無かったがこっぴどく怒られた」

側近「直接の功績と言えば種を増やしただけですからね」

女勇者「城の石材とかと比べるとどうなのさ」

魔側「大赤字」

魔王「というかお前はここに来て良かったのか?」

側近「というか一族の方が困るのでは?」

女勇者「妹はあたしと違って普通に女の子だからあっちのが適材だし」

女勇者「一族の名を使って嘘語ったからなー。戻ったら母さんにぶっ殺されるし」

女勇者「まー気の合う親友と一緒に居られるからこっちのがいいな!」

魔王「お前がそう言うなら構わんがな。仕事はどうする」

側近「ああそれでしたらお二人にはこちらが」鍬二本


その後、魔王と女勇者もまた後世にまで語り継がれる事となった。
他に類を見ないありとあらゆる地を耕した雷を呼ぶ開拓者として。


魔王「魔王に就任したから人間界で暮らす」   完


あーインスピレーション湧いてきたわ
続き書いていい?
結構有名な書き手なんだが


たまにはこういうのもいいよね

>>20

またおまいさんか

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom