李衣菜「ロック・ザ・ビートを刻め」 (65)


ガチャ

???「あの、シンデレラプロってここであってますか?」

ちひろ「おはようございます。あら、あなたは......」


ちひろ「多田李衣菜ちゃんですね、ようこそシンデレラプロへ!お話はプロデューサーさんから伺ってます。
    せっかく来てくれたところ悪いのだけれど、プロデューサーさん今会議中なの。
    もうすぐ終わるからそちらで少し待っててくださいね」

李衣菜「はい、わかりました」

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ガチャ

夏樹「おはようございまーす」

ちひろ「あら夏樹ちゃん、おはようございます。早いですね」

夏樹「レッスンの前にちょっとギターいじろうと思ってね、そっち使って大丈夫?」

ちひろ「向こうはいま新しい娘に待ってもらってるんですよね。
    そうそう、夏樹ちゃんのプロデューサーさんが担当するから仲良くしてあげて下さいね」

夏樹「へぇプロデューサーさんが。じゃあちょっと挨拶してくるかな」


夏樹「よぉ、何聴いてんの」

李衣菜「ふぇ、あっ、すいません音楽に夢中で...」

夏樹「あぁ邪魔して悪い、あんた今日から所属するんだって?アタシは木村夏樹。これからよろしくな」

李衣菜「えっと、多田李衣菜です。それってギター?」

夏樹「見ての通り。興味あんの」

李衣菜「弾けるわけじゃないけど、ギターとかロックでかっこいいなって」

だりーな!だりーなきた!


夏樹「ロック好きなんだ、ジャンルは?UK、プログレ?ハードロックって柄じゃなさそうだよな」

李衣菜「ぷろぐれ...ゆーけー...あ、あーうんわかる好きかなー」

夏樹「...本当にわかってる?」

李衣菜「う...そ、そりゃあ......ごめんなさい」

夏樹「わからないなら素直にそう言えよ」

李衣菜「うぅ...」

夏樹「わからないけど、興味はある」

李衣菜「...」コクコク

夏樹「今度CD貸してやろうか」

李衣菜「ほんとう!?」

夏樹「これからよろしくってことで、適当に持ってきてやるよ」

李衣菜「ありがとう!夏樹ちゃん!」

夏樹「おう」


李衣菜「でもここに来たばっかりの私にどうしてこんなに」

夏樹「ああ、それは...」

P「お待たせして申し訳ない。急に打ち合わせが入っちゃってね。って夏樹もいたのか。」

夏樹「おはようプロデューサーさん。話はちひろさんから聞いたよ」

P「そうか、なら話が早くて助かる」


P「多田李衣菜クン、まずはシンデレラプロに来てくれてありがとう。ではあらためて自己紹介を。
  今日から俺がキミのプロデュースを担当することになる。要望や相談なんかがあったらどんどん言ってくれ」


P「そして彼女は木村夏樹、彼女の担当も俺がしてる。
 だから直属の先輩みたいなもんだと思ってくれていい」

夏樹「そういうことだ。あらためてよろしくな」

李衣菜「はい!よろしくお願いします!」

P「ということで早速なんだが、プロフィール作成のために自己紹介を。
  今の気持ちでも今後の抱負でも、何でもいいから一言頼む」

李衣菜「ええっそんな急に!?ん~、えっと、ロックなアイドル目指して頑張ります!
    こんな感じでいいですか?」


・・・・・・・・・

李衣菜「こんなのロックじゃない」

夏樹「なんだよ急に」

李衣菜「私はロックなアイドルなんだよ」

夏樹「ああ、目指すっつってたな」

李衣菜「なのにこないだ撮ったせん、せん......しゃしん」

夏樹「宣材写真」

李衣菜「そう宣材写真。なんなのこのかわいい衣装は」

夏樹「へぇ、似合ってんじゃん」

李衣菜「にあっ...そ、そういう問題じゃなくて、あ、アイドルとしての方向性が...」

夏樹「あのなぁ、お前はまだそういうの選り好みできる立場じゃないだろ」

李衣菜「それプロデューサーさんにも言われた」

夏樹「言ってる意味はわかるんだろ?」

李衣菜「うん...でも私の目指すロックなアイドルはこうじゃないっていうか」

夏樹「あのさ、だりーの言う『ロック』って何だよ?」

李衣菜「うーん、ババーンて感じの派手さとか、ギュイーンっていうカッコよさ?」

夏樹「...本当かよそれ」

李衣菜「えっと、だったら...わかった!ラブ&ピースだ!なつきちこれ正解でしょ。」

夏樹「アタシに聞いてどうすんだよ。ったくわかってねぇなー......」


夏樹「じゃあさ、だりーはそういうかわいい衣装嫌いか?
   さっきも言ったけどアタシはだりーに似合ってると思うぜ」

李衣菜「かわいいのは嫌いじゃないけど、それってやっぱりロックじゃないっていうか...」ブツブツ

夏樹「これは宿題だな。『ロックとは何か』アタシはそろそろ行くから。
   だりーも考えすぎてレッスンの時間忘れんなよ」

李衣菜「...そもそもロックって考えるものじゃなくて感じるものじゃないのかなぁ」ブツブツ

夏樹「おいだりー聞いてるか!」

李衣菜「ああうん、わかってる。またね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夏樹「今日はアタシのステージに来てくれてありがとー!また会おうぜー!」

ワァァァァ...

――――――

李衣菜「プロデューサーこれですよこれ!
    このロックな感じ、ウッヒョーってなっちゃいました!」

P「そうか。じゃあ感想をレポートに書いて、来週までに提出な」

李衣菜「えぇ!?聞いてないですよそんなの」

P「言ったろ研修だって。感じたことを文章に起こすのは表現のトレーニングにもなるんだ」

李衣菜「むぅ、わかりました。あっと驚かせてやりますよ」

P「大きくでたな。楽しみにしてるよ」


夏樹「プロデューサーさん、だりー!どうだった、アタシのステージは」

李衣菜「カッコよかった!お客さんもすごく盛り上がってたよ!」

P「そうだな。相当気合入ってただろ。夏樹自身かなり手応えあったんじゃないか」

夏樹「まあね。だりーもいる前で情けないカッコなんてできないからな」

李衣菜「ギター弾いてるなつきちカッコよかったなぁ。まさにロックって感じで」

夏樹「そんなに言うならだりーも始めてみろよ、ギター。本気ならプロデューサーが用意してくれるだろ、なあ」


李衣菜「本当!?プロデューサー!」

P「ちょっと待て。そんなその場の勢いで決めて、
  ただでさえミーハーなこいつが続けられると、夏樹、本気でそう言ってるのか?」

李衣菜「な、な、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!」

夏樹「たしかにだりーはにわかだからなあ」

李衣菜「なつきちまで!?ひどいよ!」

夏樹「まあそれは半分冗談で、少しは信じてやってもいいんじゃないかな」

李衣菜「お願いですプロデューサー、本気なんです」


P「しかしだな...」

ヴーヴー

P「すまない、ちょっとメールだ...ちひろさん?」


ちひろ『事情は伺いました!申請を受け付けましたので、李衣菜ちゃんによろしくお伝え下さい!』


P「事務所からオーケーだと...ちひろさんが」


李衣菜「ウッヒョー!やっぱりロックが私を呼んでるんですね!」

P「夏樹、悪いがオーソドックスなやつを見繕ってくれないか」

夏樹「いいぜ。アタシが焚きつけたとこもあるからね、いろいろアドバイスするよ。
   まだそんな遅い時間でもないし、この後事務所に寄ってこうか?」

P「いや、今日は帰ってゆっくり休め」

夏樹「りょーかい。じゃあメールで送るよ」

P「ありがとう、助かる。くれぐれも帰り道には気をつけてな。
  本当は車で連れて帰りたいくらいなんだ」

夏樹「わかってるって。アタシのワガママを許してくれて感謝してる」

P「李衣菜はこっちに乗ってくよな?」

李衣菜「はい。お願いします!」


――――――

李衣菜「バイクに乗るなつきちもカッコいいなあ」

P「頼むからバイクまでは勘弁してくれよ。本当に心臓に悪いんだ」

李衣菜「バイクはいいですよ。たぶん両親が許してくれないし」

P「そうか、なら一安心だ」


李衣菜「...プロデューサー、お願いがあるんだけど」


P「ん、今度は何だ。」

李衣菜「お願いというか、願望みたいなものなんですけど。
    いつか、なつきちと一緒のステージに立ちたいなって。
    私、まだまだだって分かってます。だけど、いつかそんな日が来たらいいなって...」

P「ああ、憶えておくよ。お前と夏樹のユニットなんてのもけっこう面白いかもな」

李衣菜「ありがとうございます。私、頑張りますから」

P「そのためにはギターくらい弾けるようにならないとな」

李衣菜「もちろんです。やってやりますよ!」

P「オブジェクトにしたら許さないからな」

李衣菜「もう、わかってるって言ってるじゃないですか~!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

李衣菜「おはようございます、ちひろさん!あれ今日届くんですよね!
    私もう待ちきれなくて学校からそのまま来ちゃいました」

ちひろ「李衣菜ちゃんお疲れ様です。ちゃんと届いてますよ」

李衣菜「ほんとですか!早く見せてください!」

ちひろ「はい。すぐに持ってきますね」

夏樹「おうだりー、やっと来たか」

李衣菜「あ、なつきちー!なつきちもいたんだ」

夏樹「お前一人じゃ何もわかんないだろ。面倒見るってプロデューサーさんとも約束したしな」


李衣菜「そんなことより早く早く」

ちひろ「お待たせしました。ちょっと早いけどプロデューサーさんからの誕生日プレゼントです」

夏樹「フェンダーのストラトキャスター、つってもだりーにはわかんないだろうけど」

李衣菜「わぁ...本物だぁ」

夏樹「どんな感想だよ」

―――

ちひろ「プロデューサーさんからのプレゼントはこれだけじゃ...って聞こえてないわね。
    まあそれはプロデューサーさんから直接話してもらいましょう」


――――――

李衣菜「うーん、難しいね」

夏樹「はじめのうちは手伝ってやるから、じっくり慣れていけばいいさ」

P「調子はどうだ、順調か」

李衣菜「あっプロデューサーお疲れ様です。これありがとうございます。大事にしますね」

P「大事にするのもいいが、どんどん使ってくれ」

李衣菜「もちろんです。こいつと一緒に、ロックなアイドルリーナは新たなステージへ走り出しますよ!」

P「夏樹もありがとうな。いろいろ世話かけさせた」

夏樹「そういうのは無しだぜプロデューサーさん。アタシは好きでやってるんだ」

李衣菜「ところで今日はどうしたんですか。プロデューサーさんから声かけてくるなんて」

P「なんだちひろさんから聞いていたわけじゃなかったのか。
  まあいい、実は今日は大切な話があるんだ」

李衣菜「何ですか急にあらたまって」


P「李衣菜、お前のCDデビューが決まった」

李衣菜「えっ...?」

夏樹「マジかよプロデューサーさん!やったな、だりー!!」

李衣菜「...えー!!?本当ですか!?私が...信じられない」

P「まあ落ち着けとまでは言わないが話を聞け。デビューと言ってもユニットで、だ」

夏樹「それでも十分だろ。大抜擢じゃねえか」

P「その通りだ。李衣菜、お前はウチの目玉となる新プロジェクト『プロジェクト・シンデレラガールズ』
  その第1弾企画『お願い!シンデレラ』のメンバーに抜擢されたんだ」


P「まずは『シンデレラガールズ』についてだな。これは事務所設立以来の一大プロジェクトとなる。
  アイドルだけでなくシンデレラプロそのものの知名度を上げる目的のもと結成されるユニット、それが『シンデレラガールズ』」

李衣菜「そんなプロジェクトの一員に、私が」

P「そうだ。キャッチコピーは『誰もがシンデレラ』これがこのユニットの大きな特徴なるんだが、メンバーを固定しないんだ。
  つまりこれから先『シンデレラガールズ』という名義で曲がリリースされたりライブに出演するとしても
 常にメンバーが変わり続ける、といったようになるだろう」

李衣菜「な、なるほど」

P「そして『お願い!シンデレラ』そのファーストシングルになる、というわけだ。
  お前たち『ニュージェネレーション』は分かるか」

夏樹「まあ、そりゃあな」

李衣菜「私も名前くらいは」


P「島村卯月、渋谷凛、本田未央。おそらく今回は彼女らがユニットの軸になる。
 というのも今回のプロジェクトリーダーは『ニュージェネレーション』のプロデューサーでな。
  事務所も彼女らを本格的にプッシュしていくということなんだろう」

李衣菜「そうなんですか」

P「すまん話が逸れたな。こんなのアイドルに話すようなことじゃなかった。
  とにかく千載一遇のチャンスであることに間違いない。
 期間中はプロジェクトリーダーにお前を預けることになる。しばらく環境が変わることになるが、行ってくれるか?」

李衣菜「そんなの決まってますよ。私やります。やってやります!」

P「その意気だ。遠慮することはない。お前らしく行って来い!」

李衣菜「はい!」


夏樹「ところで、こんな話だりーはともかくアタシにまでしちゃって大丈夫なのか?」

P「まあ数日中に知れ渡る話だ。それと、お前を信頼してるということにしてくれ」

夏樹「わかったよ」

P「李衣菜は早速来週から特別メニューでのレッスンが始まる。
  プロデューサーとは顔なじみなんだが彼はかなりのやり手だ。覚悟しておけ」

李衣菜「はい。頑張ります」

P「俺からは以上だ。何か質問はあるか」

李衣菜「いえ、特に大丈夫です」


P「そうか。もし何かあったら連絡してくれ」

李衣菜「わかりました」

―――

李衣菜「私の歌が出るのかぁ...」

夏樹「おめでとう、だりー。しっかりやれよ」

李衣菜「ありがとう、なつきち。すぐに追いつくからね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

李衣菜「今日はありがとう。ショッピングに付き合ってくれて」

夏樹「アタシも楽しかったよ。こんな店にまで来るとは思ってなかったけど」

李衣菜「ここね、かな子ちゃんイチオシなんだって。だから一度行ってみたかったんだ」

夏樹「なるほどね」

李衣菜「もしかしてあんまり好きじゃなかった?」

夏樹「そんなことはねぇよ。ただ自分からこういうところは来ないから物珍しくてね」

李衣菜「たしかになつきちこういうとこ似合わなそう」

夏樹「そう言うだりーはよく似合ってるぜ、かわいい雰囲気が」

李衣菜「もーなつきちはまたそーゆーことを」

夏樹「かわいいのはロックじゃないんじゃなかったっけ?」

李衣菜「甘いものは別なの!」

夏樹「はいはい」


「ベリーベリーパンケーキになります」

李衣菜「はーい。ありがとうございまーす」

夏樹「で、プロジェクトの方はどうなんだ」

李衣菜「楽しいよ!レッスンは毎日ハードで大変だけどね。
    私より年下の子も何人もいるのにみんなすごくって、負けてられないッて感じ」

夏樹「全部で何人のユニットなんだっけ?」

李衣菜「えっと、私入れて9人だね。でも全員揃ったのはまだ顔合わせの時だけかな。
    レッスンも毎日いるメンバーが違ってさ、それも面白いかも」

夏樹「みんな自分のスケジュールがあるもんな」

李衣菜「そうそう。私なんかはまだお仕事そんなにないから、ずっとトレーナーさんにしごかれてて
    ...あぁ昨日のダメ出しがよみがえってきた。やっぱやめよ?この話」

夏樹「ははっ、でも楽しいんだろ?」

李衣菜「まあね。それにレッスンも今の私に必要なことだってわかってるつもりだし」


李衣菜「なつきちは最近どうなの?」

夏樹「アタシ?アタシはそんなに変わらずかな。いろんなライブハウスに出させてもらってる。
   やっぱりアタシは生のパフォーマンスにこだわりたいからね」

李衣菜「うんうん。こないだのなつきちすごくカッコよかったもん。すごい似合ってると思うよ」

夏樹「ありがとよ。アタシも早くだりーがステージ立つ姿を見てみたいぜ」

李衣菜「楽しみにしてて。ロックってよりかはちょっとカワイイ系かもだけど」

夏樹「そりゃあなおさら楽しみだな」

李衣菜「もうさっきからからかわないでよー。
    別にロックをあきらめたわけじゃ全然ないんだからね」

夏樹「悪かったよ。楽しみなのはマジだって」


夏樹「でさ、今話してて思い出したんだけど、
   だりーが思う『ロック』についてなんかわかった?ほら、前に聞いたじゃん」

李衣菜「うーん、カッコいい...ギター、かなぁ」

夏樹「そういや買ってもらったフェンダーはどうしてるよ」

李衣菜「えっ、あぁ、それは...その......」

夏樹「あーあー結局飾り物かよプロデューサーも泣くなこりゃ」

李衣菜「だってあの後すぐにプロジェクト始まってずっとレッスン漬けなんだよ!?
    少しくらい許してくれたって...」

夏樹「冗談だよ。練習したくなったら付き合ってやるから言ってくれよな」

李衣菜「うん、ありがと。今は目の前のことに全力でいたいんだ」

夏樹「それでいいさ。がんばれよ」


李衣菜「うん。......あのさ私も聞いていい、なつきちにとって『ロック』って何?」

夏樹「アタシか。アタシはな...ダメだな教えてやんない」

李衣菜「えーなんで」

夏樹「お前にはまだ早いってことだよ」

李衣菜「っ...くっそーいつか絶対教えてもらうからね」

夏樹「その内な。だりーこの後は?」

李衣菜「実はさっきプロデューサーさんから連絡があって事務所に行かないとなんだよね。
    今日はオフだって言ってたのに......」

夏樹「そっか。買ったもん預かっとこうか?」

李衣菜「うん、なんとかなると思う。お会計お願いしまーす」

「ハイ少々お待ちください」

李衣菜「それじゃあ、今日は本当にありがとう」

夏樹「おう。これからが本番だろ、頑張れよ」

李衣菜「うん!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

NGP「ついにこの日が来た。これまでリリース記念のミニライブ、音楽番組の収録などはあった。
   しかし今日は、お前たちを名前しか知らない、名前すら知らないような観客の前でパフォーマンスをすることになる。
  卯月!凛!李衣菜!そんな大事なステージをお前たち3人に任せた。
  お前たちなら出来ると信じている。だから堂々といけ!俺からは以上だ」

「「「はい!」」」


――――――

卯月「うぅ、あんなこと言われると余計緊張してきちゃうな...」

凛「プロデューサーなりの激励なんだろうけど、正直かなりプレッシャーだよね」


李衣菜「2人でも緊張するんだね」

凛「2人でもって、たしかに李衣菜よりは経験あるけど、私たちもこんな大きなステージは初めてだよ」

卯月「私は開演前の独特な空気がまだ苦手で。李衣菜ちゃんは大丈夫?」

李衣菜「なんというか、ゲネプロとかはあったけど、2000人以上の前に立つっていうのがイマイチ実感がわかなくて。
    でも2人がいるから大丈夫かなって」


凛「......!李衣菜にそんなこと言われたら弱音なんて吐いてられないじゃん」

卯月「そうだね。私だけじゃない、凛ちゃんも李衣菜ちゃんも一緒だもんね。
   それに今日ここにいないみんなもいる。ずっとレッスンしてきたんだから大丈夫だよね」

李衣菜「そうだよ!しかもオープニングアクトなんてオイシイとこ任されたんだよ。
    私たちで釘付けにしちゃおう!」

卯月「ふふっ、なんか未央ちゃんがいるみたい」

凛「確かにけっこう似てるとこあるかも」

李衣菜「そうかな?私は私だよ。
    あらためてだけど、今日はよろしく。2人に遅れをとるつもりはないから」

卯月「よろしくお願いします!3人で頑張ろう」

凛「よろしく。私達でいま出来る最高のパフォーマンスをしよう」


――――――

夏樹「だりーのやつ、緊張ってもんを知らないのか...」

P「そういうタイプだろうと思ってはいたが、これ程とはな」

夏樹「確認するけど、初ステージなんだよな?」

P「リリース記念のミニライブがあったから正確には2回目だが、
  ちゃんとしたステージは初めてだな」

夏樹「それであれか......正直見なおしたよ、ステージ上のあいつはロックだった」

P「直接そう言ってやれよ。俺にじゃなくてさ」

夏樹「やだよ。んなこと言ったらすぐ調子に乗るだろ」

P「ハハ、そうだな」


李衣菜「プロデューサーさーん、なつきちー」

P「おっ、噂をすれば」

李衣菜「どうでした?今日のステージは」

P「立派だったよ。3人とも」

夏樹「いいステージだったぜ。お疲れ様」


P「李衣菜はどうだった?これだけの人の前に立ってみて」

李衣菜「正直あまりステージでのこと憶えてないんですよね。
    なんかイントロが流れだしたら楽しくなっちゃって、あはは...」

夏樹「ははっ、だりーらしいな。楽しくて仕方ないって感じ、すげー伝わってきたよ」

李衣菜「ほんとに?なんか恥ずかしいな。でも嬉しいよ、なつきちがそう言ってくれて」

P「恥ずかしがんな、それがよかったんだ」

李衣菜「プロデューサーもありがとうございます。私まだまだ頑張りますから」

P「ああ。今は思うままにやってみろ」


李衣菜「じゃあ私はみんなのところに戻りますね。
    この後反省会とプチ打ち上げするみたいなんで」

P「おう、お疲れ。俺たちも行くか」

夏樹「だな」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夏樹「プロデューサーさん今日はどうしたんだ」

P「最近腰を据えて話す機会なかっただろ。
  俺自身ずっとバタバタしてたのがようやく少し落ち着いたんで、丁度いいと思ってな」

夏樹「たしかにプロデューサーさんと1対1で話すのなんて久しぶりかもね」

P「何ヶ月か前まではそれが当たり前だったのにな」

夏樹「そっかだりーが来てからまだ半年も経ってないんだっけ。ああ、バタバタってのもそれか」

P「まあそれは少なからずあるな。じゃあ話にも出たしそっからにするか。
 李衣菜とのことで伝えておきたいことがあるんだ」

夏樹「だりーとのこと?」

P「ああ。李衣菜には今シンデレラガールズの一員として頑張ってもらっているが、
  その先のことについて知っておいてほしいことがある。」


P「シンデレラガールズとしての活動はあと2ヶ月程度でひとまずの区切りを迎える予定だ。
 その後は各々個人としての活動にメインを戻すことになる。
  そこで李衣菜はどうするのかというと、夏樹、お前とのユニットを結成しようと俺は考えている」


夏樹「マジかよ...」

P「大マジだ。絶対面白いユニットになる、間違いない」

夏樹「そりゃあ面白そうだけどよ。だりーはアタシのやり方についてこれんのか?」

P「そんなの、お前もよくわかってるんじゃないのか」


夏樹「......まあね」


P「企画が通ったら結成に先駆けて合同レッスンなんかも組もうと思ってるから安心してくれ。
  いずれにせよしばらく先の話だから頭のすみにでもおいといてくれ」

夏樹「わかった。楽しみだよ」

P「ひとまずこの話はこれで終いかな。一息おくか、なんか飲み物もらってくるよ」

夏樹「サンキュー、プロデューサーさん」


ガチャ

P「ただいま」

夏樹「ずいぶん早かったね」

P「出てすぐのところでちひろさんがいてな...」

夏樹「アタシ、時々あの人のことがわからなくなるよ」

P「社長も頭が上がらないなんて都市伝説すらある人だからな」

夏樹「冗談に聞こえないぜ...」


P「さて、続きといこうか。次はそうだな、言うなれば夏樹自身の話だな」

夏樹「アタシ自身。まあそうだよな」

P「ざっくりとした聞き方で悪いんだが、今の自分についてどう思ってる、そしてお前はどうしたい」


夏樹「......アタシはこれまでの活動に不満はないよ。むしろ好きなようにやらせてくれて...
   プロデューサーがアンタでよかったと思ってる。
   だからプロデューサーさんがとってきてくれた仕事なら何であろうと喜んでやるよ。
   ってこういうのが聞きたいんじゃないよな」


P「......」


夏樹「......らしくないかもしれないけどさ。プロデューサーさん、聞いてくれるかい」

P「もちろんだ」


夏樹「アタシは最初アイドルってもんにピンときてなくてさ、
   どんなことやらされるんだろうって不安とワクワクが入り混じった気分でいたんだ。
   もちろんもらった仕事はどんなものでもやってやるつもりだったけど」


夏樹「そしたらアンタはやりたいことを言ってみろ、俺が叶えてやるなんて言ってきた」

P「ははは、そんなことあったな」


夏樹「生の音にこだわりたいって言ったら、本当にライブをメインにしたスケジュール組んでくれただろ。嬉しかったよ。
   アタシは好きなことを好きなようにやっていて、しかもそんなアタシについてきてくれるファンがいて、
   それで十分だと思ってたんだ。だけどさ、最近...いや、あの日......」

コンコン

P「はい、どうしました?」

李衣菜「プロデューサーさんですか、なつきちいます?
    ちひろさんからここにいるって聞いたんですけど」

P「李衣菜!?悪いが今は取り込み中だ」

夏樹「まあまあプロデューサーいいじゃねえか。
   アタシならいるぜ。用があるなら中に入ってこいよ」

李衣菜「じゃあ、失礼しまーす」ガチャ


P「いったいどうしたんだ。今は取材うけてる時間だろ?」

李衣菜「いやあすごいスムーズに終わって。そしたら次までにちょっと時間空いちゃったんですよね。
    それで、なつきちにギターのことを教えてほしくって。」

夏樹「そりゃあまた急な話だな」

李衣菜「今はそんなに練習できる時間ないけど、隙間の時間でもやれることを何でもやりたいんだ」

夏樹「だそうだ。プロデューサーさん、さっきの話はまた今度でいいかな。
   せっかくだりーがやる気になったのをムダにしたくないしさ」

P「むぅ、お前がいいならそれでいいが。続きは必ずな。

  それと思うことがあるならできるかぎり話してくれ。いつでも、何でも構わない。
  無論プロデューサーとして常に気を配っているつもりだが、それでも言葉を交わしてこそわかるものってのは何かと多いもんだ」

夏樹「わかってるよ」


李衣菜「なつきちプロデューサーさんと何話してたの?」

夏樹「だりーはにわかだなって話とかかな」

李衣菜「えっ、嘘だよね...?」

夏樹「ああ嘘だよ」

李衣菜「ウソかいっ!」

―――

P「なんて間の悪いヤツ......」


P「李衣菜のいる前で言えるわけもない、か」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

NGP「よお、今ちょっといいか」

P「これはプロジェクトリーダーではないですか。本日はどういったご用件で」

NGP「茶化すなよ。いやあなに世間話でもと思ってね」

P「なるほど。なら少し休憩にしよう。まずはおめでとう。なかなか評判になってるようだな、シンデレラガールズ」

NGP「メンバー一人ひとりが頑張ってるし当然だ...まあ本音をいうと一安心ってとこだな」

P「だよな。あのさ、お前の目から見てウチの李衣菜はどうよ」

NGP「李衣菜ちゃんはポテンシャル高いね。場数を踏む度にどんどん良くなってる。
   しかしよくここまでプロジェクト優先のスケジュール組んだな。
  スケジュールに融通が利かせられるウチの卯月、凛、未央に匹敵する程だぞ」

P「それが経験を積ませるのに最適だと思ったからな。それにこんなデカいプロジェクトをフルに活用しない手はないさ」

NGP「そうだな。実際に彼女は「シンデレラガールズの多田李衣菜」として認知され始めてる」


P「だろう?ちゃんとプロジェクトの第二段階を見据えてのことよ」

NGP「シンデレラガールズとして知名度を押し上げるのが第一段階。そして第二段階はメンバー個々の活躍」

P「メンバーのソロデビューや新ユニット結成で常に話題を提供し続けるのが真の狙い、だろ」

NGP「ああ。実はそのことに関してなんだが」

P「ん、どうした」



NGP「李衣菜ちゃん、ウチの凛と組まないか」


P「なんだって?」

NGP「李衣菜ちゃんを俺に預けてほしいとかそういう意味ではなくてだな。

   『ニュージェネレーション』だけじゃなく新しいユニットを結成しようと考えていたのだが、
   それならばと凛からの希望があったんだ。あいつがそんなこと言うのは珍しいから驚いたよ」

P「確かにあまりそういうイメージはないな」

NGP「何度も同じステージに立ってるからな。思うところがあったんだろう。
   俺ら側の事情としても、シンデレラガールズの勢いをほぼそのままに活かせる。決して悪くない話だと思うが、どうだろうか」

P「...その話、一旦持ち帰らせてくれるか」

NGP「そんなに深刻に考えないでくれ。ただの「世間話」だ」

P「そうかい。わかったよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P「...という話なんだが、ここまで大丈夫か」

李衣菜「はい。私と凛ちゃんのユニット、ですか。しかも凛ちゃんの希望だなんて。なんか驚きです」

P「そうだな。向こうのプロデューサーもかなり驚いたようだ」

李衣菜「凛ちゃんとはけっこう一緒のステージに立ってますけど、2人っきりのユニットってあまりイメージできないな」

P「と言ってもこれはまだ企画ですらない現時点ではただの立ち話だ。だからこそお前がどう感じたかを今聞きたい。
  まだ何もないからこそ、言いようはいくらでもある」


李衣菜「あの、ユニットって掛け持ったりできますかね」

P「掛け持ちをしているアイドルもいる。しかし今回の場合は活動が本格化したら難しいだろうな。
  おそらく事務所も相当気合を入れたプロジェクトになるだろう」

李衣菜「そうですか......プロデューサーさん、前に話した私の夢、憶えてますか?」

P「ああ、わかってる。それがあったからお前の想いを聞きたかった」


李衣菜「凛ちゃんの気持ちはすごく嬉しいです。プロデューサーさんたちの狙いみたいなのもなんとなくわかります。
    だけど、やっぱり私は」


夏樹「何も迷うことないだろ、そんなの」


P「夏樹、どうして」

夏樹「別に。たまたま通りかかっただけさ。そしたら話し声が聞こえたんでね。
   そんなことより、だりーユニットデビューするんだってな。おめでとう」

李衣菜「え...えぇ?」

夏樹「噂になってるぜ、多田李衣菜と渋谷凛の2人によるユニットができるらしいって。
   ホントすげぇよな、お前の流れ来てるぜ」

李衣菜「ちょっとなつきち、何言ってるの」

夏樹「シンデレラガールズ発のユニットだもんな。しかもおそらく初めての。
   話題になるだろうな。アタシだってそれ聞いてワクワクしたもん」

李衣菜「ねぇ、ちょっと待ってよ」

夏樹「凛の歌も聴いたことあるけどよ、だりーと全然違うタイプだよな。
   そんな2人のユニゾン、どうなるのか楽しみだよ。プロデューサーさんもそうだろ」

李衣菜「なつきち!私の話を聞いてよ!」


李衣菜「その話は私もたった今プロデューサーさんから聞いたんだ。だからまだ、そんな、決定とかじゃなくて」

夏樹「だから迷うことなんてないって言ってるだろ」

李衣菜「それに、私はもしできるなら...断ろうと思ってる」

夏樹「どうしてだよ」


李衣菜「私はなつきちとユニットが組みたい。一緒のステージに立ちたいんだ」


夏樹「......」


李衣菜「これはね、プロデューサーさんも良いって言ってくれていろいろ考えてくれてるんだよ。だから」

夏樹「知ってるよ。前にプロデューサーさんから聞いた」

李衣菜「な、なんだぁ。そうだったんだ」

夏樹「でもそれってだりーの都合だろ」

李衣菜「えっ...?」


夏樹「アタシは正直どうかと思ったね。プロデューサーさんからの仕事だから断るつもりはなかったけどさ」

P「夏樹、一旦落ち着け。自分が何を言ってるのかわかっているのか」


夏樹「アタシはいたって冷静だぜ。で、そんな時にユニット結成の噂を聞いたら、そっちの方がいいって思うだろ。
   アタシはだりーと組まない、組めない。わかったか。
   これでもう迷う必要なんてないだろ」


李衣菜「待ってよ...なつきち。お願い、ギターも本気で練習するし、音楽にももっともっと詳しくなるから」

夏樹「わかってねぇな、お前はホントに何もわかってない。今回ばかりはイラつくぜ......
   じゃあな。だりーと凛ならトップだって夢じゃないと思うぜ」

―――

李衣菜「......あんな言い方ってないよ」


李衣菜「プロデューサーさん...私、どうすれば......」


P「お前は、どうしたいか、だけでいい。それで面倒事が起こったとしても、それをどうにかするのは俺の仕事だ」

ちひろ「どうしたんですかプロデューサーさん!?夏樹ちゃんが今......すいません、取り込み中でしたか」

P「いえ、大丈夫です」

李衣菜「ちひろさん、なつきちがどうしたんですか」

ちひろ「いえ、外に出て行ったのでどうしたのかと思って。でもまだそんなに遠くには行ってないはずですよ」


李衣菜「プロデューサー、私行ってくる。まだ納得ができないんだ」

P「わかった。気の済むまでぶつかってこい」

李衣菜「はい!」

―――

P「今回のこと夏樹に話したのあなたですよね、ちひろさん」

ちひろ「さあ。あんなところで「世間話」をしてたらあっという間に噂になってもおかしくないと思いますけどね。
    大丈夫ですかね2人とも。...こんなことになるなんて」

P「大丈夫だと信じています。でも夏樹の抱えているものに気づけなかった。プロデューサー失格です」

ちひろ「しっかりしてるといっても年頃の女の子ですからね。信じているんですよね。今は待ってあげましょうよ」


――――――

夏樹「やっちまったなあ。プロデューサーさんには後で詫び入れないとな。
   つーかエレベーター遅くないか」


李衣菜「なつきち!」


夏樹「っ!なんだよ。話はもう済んだだろ」

李衣菜「私は済んでない。まだ何も話せてない」

夏樹「やめてくれ時間のムダだ。何を話そうとアタシは変わんないよ」


李衣菜「やっぱりそうだ」


夏樹「え?」

李衣菜「なつきちさっきから私が話そうとするとそうやって流そうとする」

夏樹「な、んなことねぇよ」

李衣菜「そんなことある!だから私はもう言いたいことだけ全部言うからね」


李衣菜「なつきちのステージをライブハウスで観たあの日、ステージ上のカッコいいなつきちを見て
    絶対一緒のステージに立つって決めたんだ。だから私はなつきちとユニットが組みたい」


夏樹「だからそれはお前の都合だろ。アタシはな...」

李衣菜「嘘!なつきち、嘘ついてる」

夏樹「はぁ?そう思いたいだけだろ」

李衣菜「そんなことない。だってこんなやり方...今のなつきち全然ロックじゃないよ」


夏樹「......お前にアタシの、『ロック』の何がわかるっていうんだよ!お前に!答えてみろよ!!」


李衣菜「わかんないよ、そんなの!でも何か誤魔化してることくらいはわかる。
    なつきち、私はなつきちがいい。なつきちとがいい!この気持ちは本気だ、私の全部だ!
    なつきちこそ応えてよ、本気で!」


夏樹「お前なぁ、いい加減に...」


李衣菜「目を逸らすな!!私の眼を見て、応えて!!!」


夏樹「っ...!アタシのロックとだりーは違うんだよ」

李衣菜「それはレッスンでも何でもする。絶対なつきちについていく」

夏樹「だからそういうことじゃないっつってんだろ!」


李衣菜「なら2人のロックを見つける!私たちにしかできないロックを」


夏樹「本気で言ってるのか?」


李衣菜「ずっと本気だって言ってるでしょ」


夏樹「......お前は凛と組むべきなんだよ」

李衣菜「凛ちゃんは関係ないでしょ」

夏樹「関係ある。お前は凛と組めばトップを目指せる。そうするべきなんだよ」

李衣菜「それこそなつきちには何も関係ことでしょ、そんなこと」


夏樹「そんなこと、か。そのまっすぐさが羨ましいよ......わかったよ。さっきはひどいこと言って悪かった」


李衣菜「それって......」


夏樹「ああ、プロデューサーさんのとこに戻ろうぜ」


李衣菜「うん。うん!ありがとう、なつきち!」

夏樹「やめてくれ、礼なんてされる筋合いないよ」

李衣菜「それでも、嬉しいからさ、えへへ」


夏樹「...そういうとこ、ロックだよ」


李衣菜「なに、何か言った?」

夏樹「なんでもねぇよ。ただのひとりごとだ」

李衣菜「えーもう一回言ってよー」

夏樹「お前、聞こえてただろ」

李衣菜「あはは...なつきち、私『ロック』ってまだよくわかんないけど、一緒にいてね」

夏樹「だりーは大丈夫だよ。いつかわかる日が絶対くる、絶対な」

李衣菜「ありがとう。なつきち」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夏樹「この前はごめん。あんなのロックじゃなかったよな」

P「謝るのは俺の方だ。お前の気持ちに気づいてやれなかった。あの日の後すぐにでも聞き出すべきだった」

夏樹「いいや、プロデューサーは悪くないって」

P「今更かもしれないがあの時の続きを聞かせてくれないか」

夏樹「なんだっけ。ああそうだ、そう、だりーのステージを観た時のことだ。
   あの時、2000人の観客の前に立つだりーの姿を見て、すごく悔しかった。それはまだアタシには見れない景色だったから。
   そんなとこで心から楽しそうにしてるアイツが羨ましかった。そんな気持ちもあってさ、
   だりーと凛のユニットの話を聞いて、アタシなんかと組むよりそっちの方がいいんじゃないかって思ったんだ」

P「そうか...」


夏樹「今思えばバカだったよ。だりーにもひどいこと言っちまったし」

P「過ぎたことは仕方ないさ。バカといえば、お前らよく事務所の外であんなバカ騒ぎしたな」

夏樹「やめてくれよ、マジで恥ずかしいんだって」

P「おかげで企画通すまでもなく上からOKもらえたよ」

夏樹「ハハ、だろうね」

P「まあ結果オーライってやつだ」


夏樹「あのさ、これまではアタシの好きなことをたくさんやらせてもらってきたけど、これからはいろんな仕事をやらせてほしいな。
   アイドルとしてもっと上の景色を見るために」


P「ああ。わかった。任せてくれ」

夏樹「それに、「多田李衣菜の相方」なんてのはゴメンだからな。何でもやってやるさ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

NGP「今日をもって『プロジェクト・シンデレラガールズ』第1弾「お願い!シンデレラ」のユニットは解散となる。
しかしこれからも諸君らには良き友、良きライバルとして切磋琢磨していってほしい!
まあ堅苦しい挨拶はこれくらいにして、今は打ち上げを楽しんでくれたまえ!乾杯!」

『かんぱ~い!!!』

―――――ー

凛「李衣菜、お疲れ様。短い間だったけど一緒に活動できてよかったよ」

李衣菜「お疲れ。なんかあっという間だったね」

凛「それと、ユニットデビュー決まったんだってね、おめでとう」

李衣菜「ああ、うん、ありがとう。なんかごめんね」

凛「?別に謝られるようなことなんて何もないと思うけど」

李衣菜「そ、そうだよね、あはは...」


凛「私もね、新しいユニットを結成することになったんだ」

李衣菜「へぇ、そうなんだ。おめでとう!」

凛「ありがとう。ユニット名は『トライアドプリムス』意味は「最高の3人組」
  李衣菜たちには絶対に負けないから」

李衣菜「私たちだって負けるつもりはないよ!これからもよろしくね、凛ちゃん」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

李衣菜「そういえば、ユニット名どうするんですか?」

P「確かにまだ決めてなかったな。ちょうど2人ともいるし、今決めるか」

夏樹「アタシたちで決めちゃってもいいの?」

P「俺も候補は考えてあるが、アイデアがあるなら言ってくれていいぞ。」

夏樹「まあ特に考えてたわけではないんだけどさ」

李衣菜「ロックなアイドルのユニットですからね。やっぱり「ロック」ってワードは入れたいですね」

夏樹「んな単純な」

P「いいや、わかりやすさってのは大事だよ」



夏樹「ロック・ザ・ビート」


P「お、どうした」

夏樹「ふと浮かんだんだ『ロック・ザ・ビート』なんかこう降りてくる瞬間ってあるだろ」

P「なかなか良いんじゃないか」

李衣菜「プロデューサーさんこれにしましょうよ。私、響きが気に入りました!」

P「そうか、ならそうするか」

夏樹「こんなあっさりでいいのかよ」

P「いいんだよ。こういうのは直感を大事にするべきだ」

夏樹「そんなもんか」

李衣菜「『ロック・ザ・ビート』いいなぁ、なんかいよいよ始まるって感じだね」


P「ああ、そうだな。夏樹、李衣菜、お前たちの夢をこれからも俺に見せてくれ」

李衣菜「もちろんです!」

夏樹「ああ!舵取りは任せたぜプロデューサーさん」

以上で終わりとなります。
日付が変わり本日はボイス選挙の結果発表日ですね。
夏樹のランクインといつの日か李衣菜と同じステージに立つ日が来ることを祈っています。

おつ
なつきちー!はやくきてくれー!

おつ

なつきちに声付いて欲しいような欲しくないような…
がっつりロック歌える若手って居るのかね

アニソン専業ならいるけど、声優ってなるとなかなか難しいな

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