八幡「はぁ、小町……」??「やった!!」 (67)
八幡「はぁ、だりぃな……」葉山「やった!!」
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八幡「はぁ……」戸塚「どうしたの?」葉山「やった!!」
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八幡「嘘だろ……小町が……?」
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高三、秋。
葉山「やった! 人生行き止まりだ!!」ビシッ
生徒「!?」ビクッ
葉山「でも目の前にあるその壁は、君自身にしか壊せないんだぜ?」
八幡「やった! また新しい人生の幕開けだ!!」ビシッ
生徒「!?」ビクッ
八幡「大切なのは今までの三年間ではなく、これからの三年間じゃないのかい?」
葉山「あい!」
はっぱ隊「「「やった!! やった!! やった!! やった!!」」」
ピュピュピポポポポポー…
――
――――
生徒「ありがとうございます! おかげで明日からも頑張ろうって気になれました!!!」
葉山「うん、それならよかった」ニコッ
生徒「そ、それじゃはっぱ隊のみなさん、ありがとうございました!」タッタッタッ
葉山「…………」
葉山「じゃあ解散だ!」
はっぱ隊「「「おうっ!!」」」
はっぱ隊「「「ヒュルルルルルルル……」」」タタタタタタタ
あれから二週間、俺は受験勉強の片手間にこうしてはっぱ隊をやっている。
さすがに受験シーズンが到来したからなかなかまともに活動はできないし、全員集まることも少ない。
八幡「…………」
今でも小町のことを思い出すと、たまらなく寂しくなる。だからなるだけ今は考えないようにしている。
この傷も時がいつか癒してくれると信じて。
??「パンパカパーン!!!」
八幡「!?」ビクッ
??「おめでとう!!」
八幡「なっ、なにがっ!?」
??「君が救った人の数が100人を超えた!!」
八幡「あっ、あなたは……まさか……!?」
??「そう、俺たちは――」
はっぱ隊「「「はっぱ隊っっ!!!」」」ピカーン!!!
八幡「すげぇっ! 本物だっ!!!」
南原「君の勇姿、ずっと見ていたよ」
原田「なかなかいいはっぱ隊じゃないか、君たち」
名倉「はっぱ隊千葉支部としてもやっていけるな」
八幡「わ……わわ……っ!」
八幡「すげ、本物……? 何これドッキリ……!?」
堀内「ドッキリなんかじゃないよ」
大木「僕たちは君にプレゼントがあって来たのさ!」
八幡「プ、プレゼント……?」
南原「そう! 君が、君たちが今まで放ってきたポジティブエネルギーを集めれば、不可能なことなんてないんだ! あいっ!」
はっぱ隊「「「やった!!! やった!!! やった!!! やった!!!」」」
八幡「すげぇっ! 本物の生やっただ!!」
南原「君も葉っぱ一枚なんだから一緒に!!」
八幡「えっ、ちょ、えっ?」
はっぱ隊「「「「やった!!! やった!!! やった!!! やった!!!」」」」
――
――――
八幡「……本家と一緒にできて光栄です……!」
南原「こちらこそ!」
八幡「今日は最高の日です!」
南原「そうか! あいっ! やっ――」
内村「さっさと本題に入れよ!!」
八幡「うおぉっ!? 生ウッチャンだ!!」
南原「おっと、いけないいけない」
南原「君は、ポジティブエネルギーというものを知っているかい?」
八幡「いえ、全く」
南原「そうかい。ならそこから説明しよう」
名倉「ポジティブエネルギーというのは、その名の通りポジティブなことを考えたり、行動したりすると発生する無限のエネルギーなのさ!」
大木「よく、何事も前向きに考える人は何でも上手くいくと言うだろう?」
大内「それはポジティブエネルギーのおかげなんだ!」
八幡「は、はぁ……」
南原「そして、君たちがこの校内ではっぱ隊として活動してきたことにより、今! この総武高校にはポジティブエネルギーが満タンになった!」
ハイオクマンタンデース アッウチハレギュラーナンデ
八幡「……それで?」
南原「ふっふっふ……わかっていないな君は」ニヤリ
名倉「ポジティブエネルギーの威力を……」ニヤリ
八幡「……?」
南原「今この校内に溜まっているポジティブエネルギーは、約五十三万Pだ!」
何それ、どこの宇宙の帝王ですか。
堀内「ちなみにPはポジティブのイニシャルだよ」
うわ、どうでもいい。
南原「これは、恐るべき数字なんだよ」
大内「どのくらいすごいかと言うと」
大木「このはっぱ隊全員が一瞬でブラジルに行けるくらいね!」
八幡「はい?」
名倉「つまり、物理法則も何もかもを無視した芸当が可能になるのさ」
原田「もっと簡単に言えば、君の願いが一つだけ何でも叶うようなものだ!」
八幡「!?」
その時、八幡に電流走る。あれ、本当は『その時』じゃなくて『しかし』なんだってな。
南原「君以外のはっぱ隊のメンバーには全員に聞いてきた」
南原「みんなこう言ってたよ」
南原「『なら願いを叶えるべきなのは比企谷』だってね」
八幡「……!」
南原「さぁ、問おう!」
南原「君が叶えたい願いはなんだ!?」
八幡「……本当に何でも叶えられるんですか?」
南原「ああ! もちろん!」
八幡「それなら……」
八幡「俺は……」
グッと拳を握る。
八幡「小町と過ごせる今と未来が欲しい……!」
南原「ふっ……」
南原「喜べ少年! 君の願いはようやく叶う!」
それ違う作品のキャラのセリフだろ。
ナンチャンがそう叫んだ瞬間、学校中が光った。
はっぱ隊「「「やった!!! やった!!! やった!!! やった!!!」」」
学校が光り始めると同時にはっぱ隊が踊り出す。もう何が何だかわからない。
光はどんどん強くなり、思わず目をつむる。
はっぱ隊のやった!のかけ声の隙間から、ナンチャンたちの声が聞こえてくる。
南原「いいか、忘れるんじゃないぞ!」
名倉「そのチャンスは……!」
はっぱ隊「「「一回だけだ!!!」」」
そして何も聞こえなくなった。
身体の感覚が少しずつ戻ってくる。……俺はチャリに乗っているのか?
まぶたを開くと、そこはいつもの通学路。ただいつもと違うのは、気温がさっきよりも少し高く感じられることだ。
八幡「……あれ?」
俺はどうしてここにいるのだろう。ついさっきまで学校にいたはずなのに――。
八幡「!」
ハッとしてチャリを止めて携帯を見る。そこには今の日付が表示されているはずだから。
八幡「……!!」
背中がゾワゾワする。現実ではあり得ない光景に戦慄する。
今日は、小町が死んだあの日だ。
しかも今年の。
この状況には見覚えがある。ちょうど小町と別れた直後だ。
ならば、と振り返る。
そこには、あの時のままの笑顔で俺に手を振る、比企谷小町の姿があった。
八幡「……っ!!!」
ドンガラガッシャーン!
小町「お兄ちゃん!?」
小町の生きている姿が見れた。それにひどく動揺してしまい、バランスが崩れた。
八幡「いつつ……」
小町「大丈夫!?」
小町が走り寄って来る。
小町が、生きている。それだけで涙が出るくらいに嬉しい。
小町「どうしたの!? 泣きそうになってるよ!?」
だが、今の俺はここで再会を喜んでいる場合じゃない。
八幡「小町、いいか。よく聞け」
小町「う、うん?」
八幡「今から俺が良しと言うまで絶対にここから動くな。絶対に車道なんかに出るなよ?」
小町「えっ? なんで?」キョトン
八幡「頼むから、今だけは何も言わずに、俺の言うことを聞いてくれ」
小町「わ、わかった……」
左右を確認して車道を横断する。ここで俺が車にひかれたらそれは最早ギャグだ。
警察の話によると、小町が助けた子どもは小町とは反対側の車道から飛び出してきたらしい。だからここで待機すれば――。
子ども「わーい!」テテテテテ
いた! あれだ! 間違いない!!
こっちに走ってくるその姿は、俺が小町の葬式で見かけたのと全く同じだ。
なるほど、このまま走って飛び出したわけか。こんな小さいのに一人で遊ばせるとか、ちゃんと親見てろよ。
八幡「おい」
とりあえず呼び止める。このまま走らせたら前の繰り返しだ。
子ども「おじさんだれー?」
八幡「おじ……っ!」
なんてことを言いやがる。俺はまだ働きたくねぇぞ!
八幡「えーとだな、か……か……」
なんでこんなところでコミュ障発動させてんだよ! タイミング悪すぎだろ!
八幡「…………」ギロッ
……口が使えないからとりあえず睨んでみた。
子ども「ひぃっ!」ビクッ
子ども「おがーざーん!!」
その子どもは俺の目を見ると怯えて車道とは反対側に逃げて行った。今日ほどこの腐った目が役に立ったと思う日はない。
……あの感じだと親は近くにいるのだろうか。それにしても無責任な親だ。
ブォーン
スワァーン
車が来て通り過ぎるのが聞こえる。何かがぶつかったような音はない。
振り返って確認すると、小町はちゃんとそこにいた。当の本人はわけもわからずただ首を傾げている。
走って戻りたい衝動に駆られるが、グッと我慢して左右を確認する。右、左、右、左、右、左、右、左、右、左……さすがに確認しすぎじゃね?
もう一往復確認して、素早く車道を横断する。
小町「急にどうしたの、お兄ちゃん?」
八幡「…………」
俺はそのまま小町の身体を抱きしめた。
小町「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?」
八幡「よかった……よかった…………よかった……っ!」
抱きしめる腕から小町の体温を感じる。心臓の鼓動も、呼吸の息づかいも。
八幡「生きてる…………っ、生きてる……!」
言葉では形容し得ない感情が心の底から溢れ出てくる。ただ、どうしようもなく、嬉しい。
小町「えっ、ちょっと待って。小町全然事態が飲み込めないんだけど」
八幡「本当に……っ、よがっだ……っ!」
小町「お兄ちゃん……泣いてるの……?」
八幡「…………っ、……」
おそらく俺の顔はすごい形相になっていることだろう。少なくとも人に見せられるものじゃないはずだ。
そんな涙で崩れた顔を小町に見られたくなかった。
八幡「なぁ、小町」
小町「なに?」
八幡「俺の妹に生まれてきてくれて、ありがとな……」
小町「……うん?」
八幡「こんなバカな兄ちゃんをいつも『お兄ちゃん』って呼んでくれてありがとな……」
小町「うん……」
八幡「だからさ、頼むから……」
八幡「俺より先に死なないでくれ……」
こんなの身勝手な願いだっていうのはわかっている。ただ、俺はあんな思いをもう二度としたくないんだ。
せめてその日が来るとしても、それは何十年も先の話であって欲しい。少なくともあんな終わりなんて、まっぴらごめんだ。
小町「……クスッ」
八幡「?」
小町「……本当に、バカだなぁ。お兄ちゃんは」
小町が俺の胸を軽く押す。それに応えて俺は抱きしめていた腕を解く。
小町「小町が、お兄ちゃんを置いていくわけないでしょ?」
小町「そもそもこんなダメダメなごみいちゃんを置いていくなんて、小町には無理だし」
八幡「う、うっせ……」
小町「だから安心してよ。小町はどこにも行かないから」
八幡「……ああ」
小町「あっ、でもそれも小町が結婚するまで限定ね。小町がお兄ちゃん以上に好きな人が出来たらさすがに無理だし」
八幡「おい」
小町「まぁ、それまでは一緒にいてあげるよ。あっ、今の小町的にポイント高い!」
……こんなやり取りも久しぶりだなと思うと、自然と顔がにやける。
小町「お兄ちゃん、やっと笑ったね」
八幡「えっ?」
小町「さっきからずっと泣いてたから。……正直見てられない顔だったよ?」
八幡「……だろうな」
小町「はいっ」
小町がハンカチを取り出して俺に渡す。
小町「それで顔拭いて、ついでにそこの公園で顔も洗って! まぁさすがにボロ泣きだったから、目の腫れは誤魔化せないけど!」
八幡「別に平気だろ。元々腐ってるんだから」
小町「それもそうだね!」
小町「じゃあ、行こ?」
小町が先導して俺がそれについて行く。
ずっと夢見ていた光景が目の前にあって、思わず胸がつまりまた泣きそうになるが、今度は堪える。
そうして小町は、無事総武高に入学したのだった。
高三、文化祭。
葉山「ついに本番だ!」
戸部「もうやるっしょ! ここまで来たらこれまでで最高のやつ見せてやろうぜ!」
大和「だな!」
大岡「これで俺に惚れるやつとか現れたりしないかな」
材木座「なぁ八幡よ」
八幡「…………」
材木座「八幡?」
八幡「……美しい」
戸塚「そ、そんなに見ないでよ。恥ずかしいんだから」
八幡「いや、それは恥ずかしがるべき肉体じゃない。むしろ誇るべきだ。もしもルネサンス期に戸塚が生まれていたならきっと彫刻のモデルとなっていただろう」
戸塚「そう、なのかなぁ……? ……一応今日のために筋トレ増やしたのに……」
八幡(なにその努力、健気で可愛い)
副会長(……どうしよう。これは俺のその、アレがスタンダップしちゃうよ……)
材木座「うむ、我も直視できぬ」
副会長(こいつ……まさか俺の心を……!?)
材木座(そのまさかよ)ニヤリ
副会長(しかも直接脳内に……!?)
いろは『じゃあー次は! 葉山先輩率いる、はっぱ隊です!!』
ウォォォォォオオオオオオオオ!!
葉山「今日は、このはっぱ隊フルメンバー、総勢八人が最も輝く日になるだろう」
葉山「よし、お前らっ! 行くぞっっ!!!」
はっぱ隊「「「おうっっ!!!」」」
戸塚「お、おー!」
YATTA!
はっぱ隊
http://www.youtube.com/watch?v=10EBggz1-Jg
ピュピュピポポポポポー
戸部「G!」
戸塚「R!」
材木座・副会長「「EE!」」
八幡「N!」
葉山「LEAVES!」
はっぱ隊「「「G!」」」
はっぱ隊「「「R!」」」
はっぱ隊「「「EE!」」」
はっぱ隊「「「N!」」」
はっぱ隊「「「LEAVES!」」」
葉山「It's so easy ♪」
戸塚「Happy go lucky ♪」
八幡「We are the world ♪」
はっぱ隊「「「We did it ♪」」」
はっぱ隊「「「ヒューヒューヒューヒュー!」」」
はっぱ隊「「「オスオスオスオス!」」」
葉山「あいっ!!」
小町「すご……っ、本当に戸塚さんがはっぱ隊に……」
結衣「ヒッキーと隼人くんがずっと誘ってたみたいだよ」
雪乃「それにしても八人だなんて……ステージギリギリじゃない」
小町「八人……まさに八幡だけに!?」
雪乃・結衣「「…………」」シーン
小町「……な、なんちゃって~」
小町(あちゃー、これは小町やっちゃったパターンですわ)
ヤッターアー
八幡「すれ違いざま~ ♪」
戸塚「ほほえみくれた~ ♪」
葉山「2度と会えなくたっていい~ ♪」
はっぱ隊「「「君が居たからLUCKYだ~!!」」」
材木座「平成不況~ ♪」
副会長「政治不信~ ♪」
戸部「リセットさえすりゃ最高だ~!」
はっぱ隊「「「みんな居るから楽しいー!!」」」
はっぱ隊「「「やったやったやったやった ♪」」」
大岡「大学教授~ ♪」
大和「ムービースター ♪」
葉山「葉っぱ一枚なればいい~ ♪」
はっぱ隊「「「みんな一緒だHAPPYだ~ ♪」」」
はっぱ隊「「「やったやったやったやった ♪」」」
八幡「息を~吸える~ ♪」
戸塚「息を~吐ける~ ♪」
戸部「やんなるくらい健康だ~ ♪」
はっぱ隊「「「Everybody say やったぁ~!」」」
はっぱ隊「「「G!」」」
はっぱ隊「「「R!」」」
はっぱ隊「「「EE!」」」
はっぱ隊「「「N!」」」
はっぱ隊「「「LEAVES!」」」
はっぱ隊「「「G!」」」
はっぱ隊「「「R!」」」
はっぱ隊「「「EE!」」」
はっぱ隊「「「N!」」」
はっぱ隊「「「LEAVES!」」」
はっぱ隊「「「バイQ~ ♪」」」
小町「お兄ちゃーん」
八幡「おう、戸塚をちゃんと見てたか?」
小町「まず妹に対する第一声がそれって、兄としてどうなの……」
八幡「いやいや、めちゃくちゃレアなんだぞ? ずっと断られ続けたが、『文化祭だけ』という条件付きでようやく出てくれたんだぞ!」
戸塚「だって僕、他のみんなみたいに筋肉とかないし……」
八幡「大丈夫だ。材木座は贅肉しかない」
材木座「ぐぬぅっ!? なぜ唐突に我をけなす!?」
八幡「だから無駄のないその肉体は最早芸術品なんだ」
戸塚「八幡……」
海老名「キ、マ、シ、タ、ワーーーーー!!!」ブワアアアアアア
雪乃「相変わらず存在感なかったわね。葉山くんが八人って言った時みんなざわついてたわ」
八幡「やっぱりあれ俺を認識できずに七人だと思われていたのか」
さすがステルスヒッキー。そろそろ軍事利用も考えてもいいと思います。
結衣「でもでも! すごく面白かったよ!」
八幡「そりゃ元ネタが神だからな……ってあれ?」
ふと、あの時現れた本家はっぱ隊のことを思い出す。
結局あれは何だったのだろう……。謎だ……。
キャーハヤマクーン カッコヨカッター ハヤハチサイコー
八幡「あいつは女子に囲まれてなかなか出られなさそうだな」
葉山「そうかい?」
八幡「うぉっ!? いつの間に俺の背後に!? てかじゃああれは何なんだ!?」
葉山「企業秘密」
八幡「んだそりゃ」
葉山「冗談だよ。ちょっとデビルバットハリケーンをして来ただけさ」
八幡「あっそ」
葉山(本当なんだけどなぁ)
幸福には二種類ある。
一つ目は求め、得るもの。世の中で言われる幸福はこちらに近い。
二つ目は既に持っているもの。これも世の中ではよく挙げられる話ではあるが、実際に気づいている人は少ない。ソースは俺。
人は生きているだけであまりにも多くのものを持っている。失ってしまえば重大な損失になってしまうものをだ。だが、大多数の人はそれに気づいていない。
しかし考えてみればそれは仕方がないのかもしれない。なぜなら二つ目とは言い方を変えてしまえば『あたり前』だからだ。
『あたり前』のものほど、その重要性に気づけない。
一つ例を挙げてみよう。
例えばキーボードのAという文字のキーがある。普段はその重要性に気づきもしないし、そもそも考えもしない。
しかしもしもその部分だけ壊れて押しても反応しない、なんてことになったら、ひどく不自由をする。つまり、そういうことだ。
いや、何だこの例えは。
俺にとって小町はずっとそばにいるのが『あたり前』の存在だった。だから今までその存在にどれだけ支えられていたのか気づいていなかった。
でも、実際に失ってみて俺はようやくそれに気づいた。
そして、今の自分がどれだけ恵まれているのかも。
人は、生きているだけで、それだけでもう奇跡に近い現象だ。どんな人間もふとしたことでその生命活動が止まってしまう。
今自分を取り巻いている『あたり前』、それが何一つ失われないままでいられるのは、人の身には十分すぎる幸せなのだ。
だが別に俺は一つ目の幸福を否定しているわけではない。
求めなければ得られないものはもちろんあるし、それ以前に求めなければならない状況だって人生の中では多々あるのだろう。
ただ、それに固執するあまり、今の自分が既に持っているそれ以上に大切な『あたり前』をなくしてしまうことも多い。その行為は結果的には愚かなのではないかと今の俺は思ってしまうのだ。
小町がいて、家族もいて、奉仕部の二人がいて、はっぱ隊のみんながいて、平塚先生や一色たちも……挙げればキリがない。ぼっち至上主義を掲げる俺の人生にすらこんなにたくさんの人が関わっている。
それが誰一人も欠けずに今を生きられることは、きっと俺にとってのこれ以上ない『あたり前』の幸福なのだろう。
生きているからLUCKYなのだし、みんな一緒だからHAPPYなのだ。
だから、俺は――――。
小町「いやー楽しかったねー、文化祭!」
八幡「毎年めんどいと思ってたけど最後となると、まぁ感慨深いものがあるな」
小町「そう言えばお兄ちゃんたちのはっぱ隊を受け継ごうとする人たちもいるみたいだよ! もしかしたら総武高の伝統になっちゃったりするかもね!」
何その伝統。日本の悪しき風習並に撤去しなきゃならないものだろ。
小町「……ねぇ、お兄ちゃん」
八幡「なんだ?」
小町「…………」
小町は自分から話しかけたのにもかかわらず、なかなか話を始めようとしない。
八幡「……?」
始まる気配がないから問いかけようとすると、小町の口が動いた。
小町「ありがとね」
八幡「はっ?」
突然の感謝の言葉に思考が止まる。まぁそもそも何も考えていないのだが。
小町「小町のことを助けてくれて」
八幡「!?」
思わず言葉を失う。
どうして小町があのことを知っている?
小町「やだなー、小町だってお礼くらい言うよ」
八幡「……っ、……」
言葉を発しようにも、衝撃で声が出ない。
小町「小町ね、感謝してるんだ。いつも、いつだってお兄ちゃんに支えられて毎日を過ごしてる」
小町「今日、こんな楽しい一日が過ごせたのだって、お兄ちゃんが小町が総武高に入れるように今までいろいろ助けてくれたからだし」
……なるほど。受験期のことを言っていたのか。それなら納得だわ。
八幡「別に、俺は大したことはしてねぇよ。お前が総武高に入れたのは、お前自身の実力だ」
小町「勉強だけに限った話じゃないよ。小町の見えないところでいろいろ頑張ってくれてるの知ってるからね」
何それ怖い。なんで見てないのに知ってるんだよ。サイキックかよ。
小町「だからね、一回ちゃんとお礼を言っておきたかったんだ」
八幡「そうか」
小町「うん、そう! じゃあ早く帰ろ!」
八幡「そうだな」
ふと、周りを見渡す。さっきから気づいてはいたが、ここは小町が事故に遭ったあの場所だ。
小町がわざわざこんな場所でこんな話を切り出すなんて――
――まさか、な。
八幡「……なぁ」
小町「なぁに?」
八幡「……今日は打ち上げがあったからあれだけど、明日の晩飯は、俺が作るよ」
小町「えっ、どうしたの急に」
八幡「おいおい、忘れてもらっちゃ困るな。一応俺は専業主夫志望だぜ?」
小町「あーそーだねー」
八幡「何がいい? お前の好きなのを作ってやるぞ」
小町「うーん、じゃあピザハットで!」
八幡「それただの宅配ピザじゃねぇか。俺の出る幕なしか」
小町「あははっ! 冗談だよ、冗談!」
――
――――
俺の手のすぐ隣にある小町の小さなてのひらを一瞥する。
八幡「…………」
たまになら、許されるよな。
俺はその小さな手をゆっくりと握った。
小町「お兄……ちゃん……?」
八幡「……ほら、さっさと歩け」
こっち見んな。なんか恥ずかしいから。
小町「ほほうー、いいねぇ。そういうの小町的にポイントめちゃくちゃ高いよー?」
八幡「茶化すな、離すぞ」
小町「とか言いながらこういう時は絶対に離さないくせに~」
八幡「……まぁな」
八幡「…………」
八幡「……小町」
小町「ん?」
八幡「大好きだぞ」
小町「えっ……ちょ、ちょっと、ええっ!?」
八幡「……妹としてって意味でな」
小町「えっ……あ、あー、そーゆーことね」
八幡「ああ、そういうことだ」
小町「……それはちょっとズルいかな」ボソッ
八幡「は?」
小町「このバカ兄ちゃんって言ったんだよ、バカ」
八幡「そんなにバカバカ言うな。本当にバカになっちゃうから」
小町「何それ」
クスッと小町は笑う。
小町「……小町もね」
小町「お兄ちゃんのことが大好きだよ」
おしまい
乙
泣けた
なんという神展開
おしまいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
くぅ疲。
この小町推しの数々、波…来てるな
乙
初めはぶっ壊れたギャクかと思ってたけど3話から神展開だった
ナンダコレ……ナンダコレ……
なんでウルっときてんだ俺
とりあえず小町かわいいイチャイチャしたい
グッときた
おつ
>>53-56
ここまで自演
おつおつ
やっぱり小町最高
短かったけど凄く面白かった!
1乙
やった!前スレが散々な言われようだった!!
でも君のssが好きな人間はまだまだいるんだぜ?
久々に小町に目覚めた
乙
ずいぶんとおかしな願いを持ったとも思ったがな。
びっくりするくらいつまんねえ
とりあえず小町がクソ可愛いって言うのと葉っぱ隊はネプメンバーが面白いってのを再認識
一作目でやめときゃよかったのに
ファンタジーにしちゃうくらいなら夢オチで良かったな
このSSまとめへのコメント
「君が変われば世界も変わる」
んっんー格言だなこれは
お疲れ様でした
最後は名シーンだった……!
お疲れ様です。泣きそうになりました。
よかった……!