志希「プロデューサーと、つきあうんじゃなかったかなぁ?」文香「……」 (10)


※あらすじ
P×志希 ただし出てくるのはほぼ志希と文香のみ 短い
志希「プロデューサーと、つきあうんじゃなかったかなぁ?」
文香「……(たぶん惚気でしょうね)」


一ノ瀬志希「キミに惚れ薬を試してみたい」
一ノ瀬志希「キミに惚れ薬を試してみたい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417352906/)
↑の続編ですが、読まなくても大きな支障はないです。

※一ノ瀬志希
http://i.imgur.com/gluAzIq.jpg

※鷺沢文香
http://i.imgur.com/jRcE7eJ.jpg



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417855904


「ねー文香ちゃーん、ふみふみちゃーん」
「……どうしたんですか?」

「あたし……プロデューサーと付き合ってから、自分が変わっちゃったと思うんだ……」
「……遅刻間際でも、寝癖を直してくるようになりましたね。えらいえらい」

「そーいうことじゃなくてさー。あたし、自分が幼稚になっちゃったなぁと思うんだよ。
 プロデューサーが他の子を見てると、つい困らせたくなっちゃって」
「それ、付き合って“から”ですか……?」



「…………」
「……まぁ、話聞くぐらいなら、付き合――」
「――聞いてよ文香ちゃーん! この前さー!」



この業界に入ったばかりの頃は気づかなかったけど、あたしのプロデューサーは、相当破天荒だ。
例えば、仕事中に平気でアイドル候補生をスカウトしようとするトコとか。
普通は、スカウトの人が別に声をかけて女の子を集めてくるのに。

『あ、アイドルになったら、女の子といっぱい友達になれるって……?』

今もそうだ。
営業先からあたしを車で拾ったプロデューサーは、
事務所への帰路でキョーミ深い実験材料を発見♪ したらしく、
ローティーンと見えるお団子ヘアの女の子に声をかけている。

『う……うぅ……お、お山があたしを呼んでる……けど、アイドル、あたしが、かぁ……』

熱心に声をかけてるプロデューサーの後ろから、あたしは女の子の表情をうかがう。
けっこうグラグラ来てるみたいだけど、最後の一押しが足りてないみたい。
じれったいなぁ。



というか、プロデューサー?
あたしを連れて歩いていながら、他の女の子に声かけるかぁ。

いや、一応おシゴトで移動中とはいえ、ね。
あたしとしては、貴重なふたりきりの時間だなーとか思ってたんだけど。
プロデューサーは、そう思ってなかったのかなぁ。

まぁ、プロデューサーの眼力も認めてはいるよ。
あたしをアイドルにしようとしたぐらいだからねー。
今スカウトかけてる女の子だって、カワイイ中にちょっとアブないスメルが漂ってるのがイイよね。

というか、あの子、プロデューサーよりあたしの方をチラチラ見てる。
何か気になるのかしら。あ、もしかしてあたしが現役アイドルだって気づいちゃった?



そうか、あの子がどことなく上の空なのも、プロデューサーの話より、
プロデューサーの後ろで手持ち無沙汰にしてるあたしに意識が向いてるからか。

あたしが見られるのはイイんだけどさ。
あの子があたしの方ばっか見てるってことは、プロデューサーが諦めるまで、延々この状況が続くよね。
プロデューサーとあたしがふたりきりでいられる時間が、目減りしていくわけで。

早くケリがつかないかなー。
さっさと名刺押し付けて、あとはあの子に任せりゃいいのに。
ほら、あの子の目線、プロデューサーじゃなくて、完全にあたしの方に向いてるし。
話聞いてくれてないのに、そんなペラペラ喋ってもしょうがないでしょうが。

『お山……アイドルのお山……』

早くー。はやくはやくー。
女の子を待たせるなんて許されないぞー。
しかもその理由が、他の女の子に声をかけてたからとか、馬鹿も大概にしてよ?

『ふれあいたい……』

あーあの子の顔。話聞いてないや。もうあたしの方ガン見してる。
しかも心なしか視線がやらしいし。キミ、それオンナノコがしていい目じゃないぞー。



あーもう見てらんないわ。
プロデューサーに代わって、ここはあたしがキメてやるぞ!



だから、プロデューサー。

早くあたしの方を見てよ。


「……それで、志希さんが声をかけたら、その子はあっさり頷いた、と」
「うん。スゴイでしょ! あたし、スカウトの才能あるんじゃない?」

「もしかして、その声をかけられた子とは、愛海ちゃんかしら」
「おっ、文香ちゃんご明察ー。誰のことか言ってなかったのに。さすがあの子も注目の新人だね!」

「その子、志希さんの……その、胸に目線が行ってたんでしょう。それで」
「うん。あたしもアイドルになったからね。ヒトの視線にゃビンカンになったよ!」

「プロデューサーが持たないそれで、愛海ちゃんを籠絡したんですか」
「ローラクとは人聞きの悪い。この事務所に、才能あるアイドルの卵がまたひとり……
 それは、あたしの大胆なるネゴシエーションの成果だよ!」



「志希さん。つかぬことをうかがいますが……愛海ちゃんがこの事務所で、
 ああもためらいなく胸を揉みに来る原因に、心当たりは?」
「…………なんのコトカナー?」



「……まさか、餌付けしました? プロデューサーさんが愛海ちゃんに構ってばかりだから、
 さっさと愛海ちゃんの首を縦に振らせて、話を終わらせようと」
「“アイドルとふれあえる”っていうメリットを、少し体験させたげたんだよっ」

「“ふれあい”とは、手をわきわきさせながら胸を揉みに来ること?
 もしかして、あなたが彼女に味を占めさせてしまったのが、アレの原因では……」
「…………」



「志希さん、私は読書に戻りますので。後輩の教育は、しっかりしてくださいね」
「文香ちゃーん! 後生だからあたしの話を聞いてぇ……」



「愛海ちゃんのリビドーを抑え込むのは、あたしのおクスリで何とかするから。
 文香ちゃん、今はあたしの話を聞いてよー!」
「プロデューサーと付き合い始めてから、志希さんが幼稚になってしまったとか、最初はそんな話でしたね」
「そーそー……幼稚っていうか、ワガママっていうかね……」

「志希さんは、この事務所に入ってからしばらくの間、仕事ギリギリまで失踪してたり、
 怪しい香水を配ったり、事務所で実験やって大騒ぎを起こしたりしてましたが、
 最近はそういうプロデューサーを困らせる騒動、めっきり減りましたよね」
「文香ちゃんも、ついにあたしへ忌憚のない意見をくれるようになったとは、あたし嬉しいよ……」
「はいはい」

「私は、志希さんが幼稚になるどころか、歳相応の分別がついてきたなぁと思うぐらいだったんですが」
「へぇへぇ、前は歳相応じゃなくてすみませんでしたねぇ」
「いえ、滅相もございません」



「前……か。プロデューサーと出会った頃は、ひたすら楽しかったな。
 実験の時以外は、プロデューサーに何をしてあげちゃおうかなー、なんてずっと考えてた。
 思いついたら何でもやったよ。一応、愛想を尽かされないようボーダーは測ってたけど」
「志希さんも、悪いひとですね」

「今は、そーゆーコト、できなくなっちゃってる……かも、知れない。
 付き合う、って関係がデキちゃったせいで、守りに入っちゃってるっていうか」
「……そうでしょうかね」
「前ほど思い切ったコトができなくなって……そのくせちょっとでも、
 プロデューサーの目が他の子に行ってると、ハラワタがムズムズ来てさ……おかしいね」



「プロデューサーからオモシロそうなニオイがする! アイドルも楽しそうだね! じゃあやろっ♪
 ……文香ちゃんもご承知だろうけど、あたしってさ、そんな性格だったんだよ。
 アタマの中にはオモシロそうなコトしか入れてなくて、他はスッポ抜けてる人間だったんだよ」
「すごく、楽しそうですね」
「ホントに、楽しくて仕方がなかったよ。特に、プロデューサーと出会った時は。
 楽しいコトでアタマがいっぱいになって、油断したら脳漿が溢れだす勢いだった」



「それが今じゃ、ハラワタのムズムズが、あたしの灰色の脳細胞を侵していくんだよ。
 楽しくないコトがぐるぐる回って、アタマに居座るんだ」
「アガサ・クリスティなら、私は『春にして君を離れ』が好きですね」

「プロデューサーのコト、スキなのにさ。プロデューサーのそばにいると、
 寄ってくる他の子に、あたしは一喜一憂しちゃってさ。スキだって気持ちすら追いやられそうだよ」
「……前の志希さんは、今の誰よりもプロデューサーを振り回してましたよ」

「もし、前のあたしみたいな子が、あたしたちの前に現れたら、前のあたしみたいなことしでかしたら。
 あたし、ちょっとトンでもないこと、しでかしちゃうかもしれない」
「……志希さんみたいな子が、ふたりもいたら大変です。ひとりで十分でしょう」



「ね、文香ちゃん」
「……どうしたんですか」
「ツマラない、って思ってるでしょ。あたしの話」
「ええ、愚痴ですからね。面白がるのも悪いかと思って」



「……聞いて差し上げますよ。志希さんが、聞いて欲しいのであれば」
「なんとゆー包容力……やばいね、スキになっちゃいそうだよ……♪」

「私、キープを読みたいんで帰りますね」
「んまっ、待ってふみふみちゃーん!」


「……つまり、志希さんは自分の好奇心の行方より、
 プロデューサーの関心の行方を気にするようになった、と。
 そんな自分に、戸惑っているのですか?」
「ズバッとくるね……文香ちゃん……」

「…………」
「…………」
「……え、終わりなの? 文香センセイの有難いお言葉」
「志希さんは、言われなきゃ気づけないほど、ニブイ人間ではないはずです」



「……あたし、さ。プロデューサーと会うまで、人目をうかがったことなかったんだよね」
「……それは、すごいですね」
「それが今じゃ、プロデューサーの一挙手一投足にヤキモキしてるなんて。
 ホント、あたしどうしたんだろ……?」



「……志希さん。私は、そういう話題について、偉い口が聞ける人間ではありません」

「……そう、なんだ」
「……何ですか、その間」
「いーえ、何でも」



「……なので、古人の言葉を借りることにします。

『思ふべしや、いなや。人、第一ならずはいかに』
(私は、あなたを愛してるのか、してないのか。もし、愛してても一番ではないとしたら、どうかしら)

 志希さんは、どうですか?」



「それは、ナニ? あたしが、プロデューサーのことを一番スキかってコト?」
「違います。あなたが、プロデューサーに好かれていても、それが一番でなかったとしたら、という話です」

「きっついコト、聞いてくれちゃうね……」
「……どうですか?」

「……やだよ。あたしは、一番に思われなきゃ、イヤ。自分が、一番大事だと思うヒトだから。
 なんとしても、プロデューサーの目をあたしに釘付けにしてみせる」



「……きっと、志希さんの変化もそういうところから生じてるんでしょう。

『第一の人に、また一に思はれむとこそ思はめ』
(私が一番大事だと思う人には、同じように私のことを思ってくれるよう願うものです)

 プロデューサーがどこを向いているかにヤキモキするのは、
 あなたがプロデューサーを一番に思ってる気持ちの裏返しです。
 それもあなたの気持ちなんです。きちんと認めてあげてください」



「……文香ちゃん、ありがとね。今度、文香ちゃんのために、とっておきの香水作るよ」
「……私、古書店で働いてるので、控えめな香りにしてくださいね」


(おわり)

読んでくれた人どうもです。

しきにゃんの嫉妬かわいい

乙です
このしきにゃんをわざと嫉妬させまくって最後にはヤンデレしきにゃんに薬漬けにされたい

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