穂乃果「原作クラッシュ!」ことり「カオスです」 (72)

私、高坂穂乃果。高校二年生!

餡子もう飽きたーとか叫んじゃう系女子。

その理由は代々続く和菓子屋穂むらの娘だから。

おやつは餡子系の和菓子が基本だったんだ。

得意料理はあげまんじゅう!

え? 餡子は飽きたんじゃないのかって?

うん、自分でも不思議なんだけどツンデレって属性があるでしょ?

あれなんじゃないかなって思うんだー。

小学生の頃は算数が、今現在は数学が大の苦手。

でも理系が得意なんだ!

え? 理系が得意なら大体算数も得意だろって?

うん、自分でも不思議なんだけど二律背反って言葉があるでしょ?

そんな感じなんじゃないかなって思うんだー。

私のことはともかく、通ってる高校を紹介するね。

歴史ある学校で音ノ木坂学院っていうんだー。

でもね、少子化の影響からか三年後には廃校がほぼ決まっちゃってる状態。

なんか、この報せを受けてからもう三年くらい経ってるような錯覚がするんだよ。

色々と不思議なことってあるもんだねぇ。

ま、色々とあるけど廃校を阻止する為に活動開始だよっ!

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○第一話 廃校問題を解決しよう!○

――四月 教室

穂乃果「ということで、なんとかしないとね」

海未「一学生の私達に出来ることなんてありませんよ」

穂乃果「直ぐに諦めたら早めにボケちゃうよ」

海未「余計なお世話です!」

穂乃果「ことりちゃんは何かいい考えないかな?」

ことり「うーん、そうだなぁ。宝くじのキャリアオーバーで数億円当てて全額寄付するとか?」

穂乃果「それだよ! それだけあれば廃校問題も延期されるよ」

海未「そんな簡単に当たる訳ないではないですか」

穂乃果「穂乃果は宝くじとか買ったことないけど、よく道でお金拾うしラッキーガールだと思うんだよ」

穂乃果「そんな穂乃果なら七億とか八億くらい簡単に当てられるよ!」

ことり「流石穂乃果ちゃん!」

海未「どこが流石なんですか! 大体穂乃果とことりのお小遣い程度で当たるほど人生は甘くありません」

穂乃果「こんな時の為の生徒会だよ。生徒からの募金を集めて買って当てよう!」

ことり「今日の穂乃果ちゃんは天才的だねっ!」

海未「はぁ~。私はもうどうなっても知りませんからね」

――生徒会室

絵里「言いたいことはそれだけ?」

穂乃果「はい、それだけです」

絵里「廃校問題は生徒会で対処します。あなたたちのような暇な生徒に関与される必要はありません」

希「待ってエリち! 何かの間違いかもしれないけど、この作戦は成功するかもしれないよ」

絵里「何を言ってるのよ。宝くじ買って当たるなんてありえないわ」

希「でも、カードがウチにこの作戦は希望に満ち溢れてるって伝えてくるんや!」

絵里「だけど」

ことり「生徒会長さん。おねがいします!」

穂乃果「どうかこの音ノ木坂の為にお願いします!」

希「ウチを信じて、エリち!」

絵里「……分かったわ。あくまで理事長に提案して、却下されたらそれまでよ」

穂乃果「ありがとうございます!」

ことり「穂乃果ちゃんやったね!」

――そして...

音ノ木坂学院の有志による募金で買ったキャリアオーバー七億円の宝くじは見事一等当選!!

これを募金してくれた分を回収し、それ以外を全部学校に寄付し、廃校は一先ず先延ばしとなったよ。

絵里「ハラショー!」

希「スピリチュアルは起こるからスピリチュアルって言うんだね」

穂乃果「皆で協力して、皆に支えられて、だから今があるんだ!」

ことり「皆で叶えた物語だね」

穂乃果「うん!」

(第一話 完)

○第二話 何かを始めよう!○

――五月 教室

穂乃果「廃校問題がスピード解決しちゃったから暇になっちゃったね」

海未「あんな出鱈目認めません!」

ことり「でも何だかんだ海未ちゃんも募金しててくれたよね。しかも一万円も」

穂乃果「名簿見たとき穂乃果感動しちゃったもん」

海未「うっ……私は確かに無記入で寄付した筈なのに、どうしてバレたのでしょうか」

女神さん『それはスピリチュアルやからね』

穂乃果「もしかしたら海未ちゃんの一万円がなければ当たってなかったかもしれないんだよ?」

ことり「そうだよね。海未ちゃんの協力があってこその決河だよね」

海未「そもそも七億円が翌月に支払われる時点でおかしいです」

穂乃果「それもまたラッキーガール穂乃果のお陰ってことだよ」

ことり「流石穂乃果ちゃん!」

海未「それでは、私はもう弓道部の方に行きますね」

穂乃果「うん、いってらっしゃーい」

ことり「頑張ってね」

穂乃果「せっかく廃校問題も先送りになったんだし、何か部活でもしようかな?」

ことり「穂乃果ちゃんがするならことりも一緒に入るね」

穂乃果「取り敢えず校内を徘徊してみようか。ゾンビみたいに」

ことり「やぁん! ことり怖いよ~」

穂乃果「大丈夫だよ。ことりちゃんのことは何があっても守るから!」

ことり「ホノカチャー!」

穂乃果「そして、ピンチになると謎の弓使いの仮面の人が助けてくれるの」

ことり「シー仮面様だね」

穂乃果「そう、シー仮面様の正体は最終回前話の終わりに明かされるんだよ」

ことり「きっとそれまでシー仮面様と海未ちゃんが同時に登場することはないんだろうね」

ことほの「あはははっ」

――音楽室

穂乃果「綺麗な音色に釣られてやってきたら音楽室だったね」

ことり「録音状態じゃないピアノの音色で音楽室以外だったら学校の怪談になっちゃうよ」

穂乃果「それもそうだね。演奏の邪魔にならないようにドアの外から中を見てみよう」

ことり「演奏部とかそういうのはなかった気がするけど……どうなんだろう?」

二人が中を覗き込むと、情熱の色を髪に宿した少女が一人でピアノを弾いてました。

穂乃果「そういえば本当に強い幽霊って夜も昼も関係なしに出るんだよね」

ことり「あの子はどう見ても生きてるよぉ」

穂乃果「一人ぼっちで放課後の音楽室でピアノを弾いてるんだよ? 絶対におかしいよ」

ことり「そんなことないよ。ピアノの練習って基本一人でするものだし」

穂乃果「そっか。でも、穂乃果にはあの子がどこか悲しそうに見えるんだ」

ことり「確かに……うん、ことりにもそう思えるよ」

穂乃果「よしっ。決めた。生徒会室に行こう!」

善は急げとことりちゃんの手を握るとそのまま走り出す!

光より速く生徒会室に移動だよ!

ことり「ぴぃ~!」

――生徒会室

絵里「それで今日はどうしたのかしら? 私達で力になれることがあるなら協力するわよ」

氷のように冷たい表情を浮かべていた生徒会長ですが、今はとても優しい顔をしてるんだ。

穂乃果「あのね、仲良し部を作ろうと思うんだ!」

希「仲良し部?」

穂乃果「うん。今の学校って虐めとか問題になってるでしょ? そういうのがないように一人の子を部に引き込むの」

穂乃果「一人じゃ塞ぎ込んじゃうかもしれないけど、皆でいれば相談も出来るし力にだってなれるんだよ!」

ことり「流石穂乃果ちゃん!」

絵里「素晴らしいわ。廃校を救うだけじゃなく、虐めはないけど仲良し部が未来に残れば虐めが生まれる心配も少ない」

希「ウチは賛成だよ」

絵里「ええ、勿論私もよ。だけど今現在の規則では部になるまでには五人が必要なのよ」

穂乃果「……五人」

希「ウチとエリちを入れても四人だね」

ことり「あと一人。海未ちゃんなら正義感が強いし、こういう部なら快く名前を貸してくれるかも」

穂乃果「駄目だよ。責任感も強いから無理してでもこっちに顔を出そうとするから負担になっちゃう」

ことり「そっか」

絵里「名前だけなら貸してくれる人は多くいるでしょうけど、それじゃあ意味ないのよね。部の内容が内容だけに」

希「せやったらにこっちはどうかな?」

絵里「でもあの子はアイドル研究部に所属してるのよ?」

希「にこっちを救って一緒に部の立ち上げに協力してもらえれば最高の未来じゃない」

希「後にコミュニケーションが苦手だけどアイドルが好きって子が入ればにこっちも喜ぶだろうし」

穂乃果「よ~し! 仲良し部成立させる為にがんばろー!」

ことり「お~!」

(第二話 完)

○第三話 ほのか奇襲!○

スクールアイドルっていうのがあるんだって。よく分からないけど、取り敢えずそれをやってた先輩がぼっちらしい。

穂乃果「アイドルなのに一人ぼっちって……」

絵里「言わないであげて。あの子は一年生入学して間もない頃に既に勧誘活動を頑張ってたの」

ことり「四人も集めたんですか?」

希「当時はまだ人数も居たから三人で部になってたんだよ」

穂乃果「それでも二人を集めたのは凄いね」

希「でも、一度ライブをやっただけで二人が辞めてしまった」

絵里「二度目のライブでは数人居た観客も、三度目のライブでは0に……」

ことり「うぅ~。可哀想」

穂乃果「なんとしても仲間になってもらって、一人から救出しないと!」

ことり「それから音楽室のあの子もね」

穂乃果「音楽室? なんだっけ?」

ことり「前話とはいえついさっきのことだよ!?」

希「音楽室……真姫ちゃんのことだね」

絵里「希、知っているの?」

希「うん。この学校の音楽室には昼休み・放課後・真夜中とピアノを弾く幽霊が出るんよ。その子の名前が真姫ちゃん」

絵里「ちょっとやめてよ! そういうのが居る訳ないじゃない」

穂乃果「幽霊で思い出した! というか、やっぱり幽霊なんだ」

希「冗談だよ」

絵里「でしょうね。私は最初から冗談だって分かってたわ」

穂乃果「残念。幽霊だったら海未ちゃんに自慢できたのに。幽霊の友達まで居るんだよって」

ことり「幽霊でも友達になろうだなんて。流石穂乃果ちゃん!」

希「真姫ちゃんは西木野総合病院の一人娘なんよ。それがネックになって人付き合いが余り上手くないみたいで」

穂乃果「穂乃果には人付き合いが超苦手だった海未ちゃんと友達になった歴史を背負ってるから友達になれるよ」

ことり「そうだね。今の海未ちゃんがあるのも穂乃果ちゃんのお陰だね。その逆の影響の方が大きい気もするけど」

穂乃果「そうかも。でも始まりがあったからこそだよ」

ことり「そうだねっ」

希「穂乃果ちゃん達みたいに幼馴染って絆も大切だけど、学生の友は生涯の友って言葉もあるからね」

希「にこっちにとっての生涯の友がウチ等になれればいいなって思うんだ」

絵里「……そうね。そう在れたら最高ね。どうやってあの子を懐柔するの?」

希「正直引いても押しても逆効果になりそうなんだよね。にこっちって人一倍不器用だから」

穂乃果「そういう時は簡単だよ!」

絵里「どうするつもり?」

穂乃果「あのね……」

穂乃果「……後は海未ちゃんの真似をすれば完璧だよ」

――アイドル研究部

にこ(どうしても放課後になるとここに来ちゃう。PCとネット環境があるからっていう理由もあるけど)

にこ(もしかしたら誰かがあの扉を開けて「入部したいんですけど!」って元気な声を掛けてくれることを望んでいる)

にこ(そんなことはもうないと分かってる。それでもそんな幻想に縋る自分が悔しい)

にこ(同い年のA-RISEはあんなにも輝いているのに……。にこは一人でこんな場所に居る)

バタン!

穂乃果「この入部届けに名前を書かなければアイドル研究部は今日を持って廃部とします!」

にこ「あんた誰よ!?」

穂乃果「高坂穂乃果です! それから、一切の反論は認めません!」

にこ「なんで急に。そんなの横暴じゃない!」

穂乃果「黙りなさい! 反論は一切認めないと言ったでしょう!」

にこ「あんた生徒会じゃないでしょ? 何の悪戯よ」

穂乃果「確かに私は生徒会ではありません。ですが、会長の許可を貰ってあります。これが証拠です」

にこ「……マジじゃない。あの女、にこに何か恨みでもあるわけ~?」

穂乃果「名前を書いて下さい。そうすれば貴女を救うことが出来るのです。私は貴女を救いたいんです」

にこ「何よそれ。まるで宗教の勧誘じゃない」

穂乃果「信じて騙し取られるのはお金だけです。決して命までは取りません!」

ことり「ホ、ホノカチャーイミワカンナイヨー」

穂乃果「こほんっ! えっと、どこまで話したんだっけ?」

にこ「コントがやりたいなら漫才部でもコント部でも03部でも作ってなさいよね」

穂乃果「そうだ! この部に入るとにこ先輩に後輩が出来ます。すっごい元気な後輩と可愛い後輩が!」

にこ「全く話が通じないけど、元気な後輩ってあんたのことでしょ?」

穂乃果「はい! 一緒に仲良し部で遊んだり面白い話したりして笑顔になりましょう」

にこ「笑顔……になる」

にこ(そういえば、私って最後に学校で誰かと笑ったのっていつだったっけ?)

にこ(パパが笑顔になりますようにって付けてくれた名前なのに、この部室で動画やアイドルを見て笑うだけ)

にこ(一人ぼっちで浮かべる笑顔なんて、アイドルの浮かべる笑顔とは対極)

穂乃果「学生の友達って生涯の友達なんだって聞きました。にこ先輩! 私と生涯の友達になってください!」

にこ(ここで意地を張ったら……アイドル以前に、パパの子失格よね)

にこ「しょうが、ないわね。仕方ないっから、友達になってやるわ」

穂乃果「ありがとうございます! では、ここに名前書いてください」

にこ「なんかすっごい騙された気もするけど……はい、書いたわ」

こうして、音ノ木坂学院に仲良し部という新しい部が成立しました。

ことりちゃん・絵里先輩・希先輩・にこ先輩。そして海未ちゃん。

生涯の友達になればいいなって思いました!

(第三話 完)

○第四話 仲良し部!○

にこ「あんた馬鹿じゃないの?」

穂乃果「にこちゃんってば酷い。カレー大福ありだと思ったのに」

ことり「危険な組み合わせでも実際に作るなんて普通じゃ出来ないよ。流石穂乃果ちゃん!」

絵里「私、普通の大福とカレーは好きなのに。ううん、だからこそ悔しいわ。どうして一つになっちゃったの」

希「もぐもぐ……これはこれでありやとウチは思うけど」

にこ「勿体無いから食べるけど、作ってくるなら普通のを持ってきなさいよ」

ことり「穂乃果ちゃんのあげまんじゅうは絶品なんだよ」

穂乃果「今度私の家に遊びに来てよ。出来立てを食べさせてあげる。その時、私のもう一人の幼馴染も紹介するよ」

絵里「噂の海未って子ね」

にこ「入部してから言うのもなんだけど、何をする部なのよ?」

穂乃果「言いませんでしたっけ?」

にこ「何か言ってたけど怪しさMAXで全スルーよ」

希「簡単な話だよ。こうして仲良く過ごす。それだけの部だから」

絵里「一番重要な活動があるじゃない。孤独系の子やコミュニケーションが苦手な子を仲間にするの」

にこ「何よそれ。それで共学でぼっち男主人公なら中高生男子が好きそうなシチュエーションの出来上がりね」

絵里「よく分からないけど、仲良しの輪を代々繋いでいけたらいいなって思ってるの」

にこ「私はてっきりあんたはこういうの大嫌いな側の人間かと思ってたけど」

希「エリちは素直じゃなかったからね。本心では誰よりも優しい子なんだよ」

絵里「別に私はそんなんじゃないわ」

ことり「くすっ。絵里先輩かぁわいい~」

穂乃果「絵里先輩の協力あってこそ廃校問題が解決したんだしね」

にこ「勿体無い話よね。一生遊べる金額を学校に寄付するなんて。それだけあればアイドルグッズがどれだけ買えたか」

穂乃果「お陰で学校が存続できるんだからそれで良いじゃない」

にこ「だって今は廃校が間逃れたけど、問題の先送りにしか過ぎないじゃない」

穂乃果「今年か来年には海未ちゃんが弓道の大会で優秀な結果を残すよ」

絵里「それにね、廃校問題が立ち上がってスピード解決。それの下地になったのが自分達がした募金」

絵里「お金は戻ったとはいえ、皆で協力したことで一体感が生まれて練習に身が入ってるみたい」

希「この調子でいけば色んな部が好成績を残して、ひょっとしたらひょっとするかも」

ことり「皆で紡ぐ物語だねっ」

にこ「そんなに上手くいくとは思えないけど。一番の近道ならスクールアイドルとかどうなの?」

穂乃果「にこちゃん。夢に近道なんてないと思うよ。だから地道に皆で結果を残して入学者を増やすのが一番だよ!」

絵里「正論ね。一時期盛り上がった場合はその反動が強そうだもの」

希「スクールアイドル自体は悪くないとは思うけどね。ウチ等はそういう柄じゃないし」

にこ「あんた達の容姿で柄じゃないとか嫌味にしかならないわよ!」

穂乃果「にこちゃん。アイドルに興味のある子を部にスカウトすればいいんだよ」

絵里「もしもう一度スクールアイドルを結成するのなら私達はにこのことをサポートするわ」

ことり「可愛い衣装なら任せて! 私、将来装飾系のお仕事に就きたいから練習してるんだぁ」

希「力になれることがあれば惜しみなく力貸すからね」

にこ「だったら希。メンバーになってよ」

希「残念やけど、それは神の力を超えるから叶えられない願いや」

にこ「あんたはシェンロンか!」

穂乃果「あっ、穂乃果知ってるよ。う~らら~って叫ぶ人だよね」

にこ「それはジェロニモよ! 全然似てないじゃない」

穂乃果「あぁっ! う~らら~で思い出した。海未ちゃんって中学二年生の時にポエムに嵌ったんだよ」

穂乃果「だからことりちゃんがお願いして、海未ちゃんが根負けすれば作詞してもらえるかも」

にこ「それは正直ありがたいわね。やっぱりオリジナル曲があるのとないのとじゃ全然違うもの」

にこ「それに作詞って私も書いてみたことあるけど、一曲目と二曲目を合わせようとすると無理やりになっちゃって」

にこ「絵と小説の理論よね。絵は才能がないと無理そうだけど、小説なら誰でも書けるんじゃないかって思うやつ」

にこ「でも実際に書いてみると全然駄目で。作詞もそれと同じ。誰にも出来そうで人を選ぶ」

ことり「アイドルのことになると本当に真面目ですね」

にこ「当然でしょ。にこは小さい頃からずっとアイドルになりたいって思ってきたんだから」

穂乃果「今でも十分小さいけど」

にこ「あ゙ぁ゙ん!?」

穂乃果「なんでもな~い!」

絵里「振り付けなら私が力を貸すわ。ブランクあるし、畑違いとはいえバレエと一緒で踊るわけだし」

にこ「その時は遠慮なく指導お願いするわ。独学より断然効果あるだろうし」

にこ「……ありがとう。にこは仲良し部に入ってよかったわ」

絵里「お礼を言うのはまだ早いわよ。まだにこの新しいスクールアイドル活動は始まってすらいないんだから」

にこ「そうね。後は作曲が出来る子が居ればいいんだけど」

穂乃果「そんな子が居ればいいんだけどねー」

この時の穂乃果は、仲良し部のほんわか空気にすっかり音楽室の幽霊こと真姫ちゃんの存在を忘れてたんだ。

でも、きちんと次の日には思い出したよ!

(第四話 完)

○第五話 音楽室の幽霊の巻!○

――お昼休み 部室

にこ「あんた馬鹿じゃないの!?」

穂乃果「馬鹿じゃないよー」

にこ「昨日の話題でどうして思い出さないのよ!」

穂乃果「えへへ!」

ことり「すっかり忘れちゃってたよねー」

にこ「はぁ~。もういいわ。でも、その子が仲良し部に入部してくれればにこのスクールアイドル活動再始動ね!」

穂乃果「にこ先輩と同じ一人ぼっちだから仲良くなれると思います」

にこ「失礼ね。にこはもう完全な仲良し部のメンバーでしょ」

にこ(仲良し部以外で友達が居るとは言ってない)

穂乃果「それもそうだね。じゃあ、仲間が居ることの大切さを説くのは最適だね」

にこ「でも新人だし、こういうスカウトは部長がするものじゃない?」

穂乃果「作曲問題がなければ私が行くところなんですけどね。にこ先輩の時みたいに強引に入部させてこじれたら嫌だし」

にこ「にこの時は強引だったって自覚はあったのね」

ことり「元々スクールアイドルのメンバーを勧誘したのはにこ先輩なんですよね?」

にこ「そうよ。晴れの日も曇りの日も雨の日もチラシを配って大変だったわ」

ことり「雨の日だとチラシが濡れちゃって嫌がらせに思われたかも」

にこ「うるさいわね! 効果あったんだから良いでしょ」

穂乃果「昔二人も勧誘出来たなら今一人くらい簡単じゃないですか」

にこ「そういう問題じゃないと思うけど……でも、そうね。私がやりたいことだもんね。自分で動かなきゃ」

にこ「腐ってた時間は今日――ううん、今この時でおしまい! 新生ラブリーにこにー起動よ!」

穂乃果「激しくダサい」

ことり「人が言えないことをあっさりと言えるなんて、流石穂乃果ちゃん!」

にこ「音楽室の幽霊入部させてその無駄口を叩けなくしてやるわ。覚悟してなさい!」

穂乃果「期待してるねー」

ことり「頑張ってください」

にこ「いってくるわ!」

――放課後 部室

にこ「断られたにこぉ。もう駄目だわ……」

穂乃果「諦めるの早いよ!」

にこ「年下に断られるのって意外とダメージが高かったわ」

穂乃果「見た目なら間違いなくに――」
にこ「――うっさい!」

ことり「でも諦めたらスクールアイドルで作曲出来る人が居なくなっちゃうんですよね?」

にこ「うっ……そう、なのよ。後ね、作曲だけが目的じゃなくなったの。歌声がすごく綺麗だった」

にこ「出来れば一緒にスクールアイドルになって欲しい。総合病院の娘じゃ無理だろうけど」

穂乃果「そんなの関係ないよ! 穂乃果は和菓子屋の娘だけどクッキング部に入ってないし」

ことり(クッキング部自体がないけどぉ)

穂乃果「肝心なのはにこちゃんの想いだよ。燃え上がる情熱だよ。諦めるのは10カウント入ってからだよ」

穂乃果「穂乃果にはまだにこちゃんの10カウントは聞こえてこないよ。青春はまだ終わってなんかないんだよ!」

にこ「言ってることは意味不明だけど、なんだかやれそうな気がしてきたわ!」

穂乃果「もう一度チャレンジ!」

にこ「行ってくるニコ!」

穂乃果「ファイトだよ!」

ことり「なんかオチが読めた気がする」

――十分後...

にこ「ふふふ。にこには聞こえたわ。響き渡る十回のゴングの音が」

ことり「やっぱり」

穂乃果「今日が駄目でも明日があるよ。明日が駄目でも明後日があるんだよ。その気になれば生涯青春だよ」

ことり「ホノカチャーモクテキガカワッテルヨ!」

穂乃果「おぉっと、そうだった。えっと……もういいや。強引に仲間にしちゃおう!」

にこ「だったら初めから穂乃果が行けば良かったじゃない」

穂乃果「にこちゃん自身が行動したことによって誠意が相手に伝わった筈だよ」

にこ「あんた、先輩に向かってちゃん付けとか」

ことり「流石穂乃果ちゃん!」

にこ「ことりはことりでその台詞を毎日一回は使ってるところを見るわね。出逢ったばかりだってのに」

穂乃果「穂乃果は流石だからしょうがないよ」

にこ(意味不明な台詞と共にドヤ顔決めてるけど、こいつ流石の意味を理解してないんじゃないの!?)

にこ(……流石ってすごいって意味であってたっけ? 後でネットで調べましょう)

穂乃果「さぁ! ゴーストハンターズ出動だよ!」

ことり「はいっ!」

にこ「……もう、なんでもいいわ」

――音楽室

真姫「あいし――」
穂乃果「――ココロが踊っちゃう歌を歌ってるところごめんね」

ことり「二人で歌わないと喉が痛くなっちゃう歌だね」

真姫「意味わかんないけど、歌ってたのは私のオリジナル曲よ!」

にこ「聞いたことない曲だと思ってたけど、オリジナルだったの!?」

真姫「そ、そうよ。悪い?」

にこ「益々欲しいわ。ううん、にこがアイドルになるには絶対に必要な存在にこ。穂乃果、お願い」

穂乃果「私、仲良し部部長高坂穂乃果! 真姫ちゃんをハント――じゃなかった、勧誘しに来たんだっ!」

真姫「何よその仲良し部って、子供じゃあるまいし」

穂乃果「仲良し部っていうのはね、皆で仲良くする部なんだよ」

真姫「本当に子供ね。そんな部に入る暇なんか私にはないわ」

穂乃果「一人でピアノ弾きながら歌を歌う方が有意義ってこと?」

真姫「そうよ。そっちの方が断然有意義よ」

穂乃果「そっか……。分かったよ。じゃあ、気をつけてね」

真姫「何に気をつけるのよ」

穂乃果「あっ、そっか。真姫ちゃんは新入生だからまだ知らないんだ。音ノ木坂の七不思議」

真姫「い、今時七不思議なんて信じてる高校生なんていないわよっ!」

穂乃果「校舎裏にある変なポーズした像があるでしょ? あれが一つ目の七不思議」

真姫「あれの何が不思議なのよ」

穂乃果「音ノ木坂学院の創設者は日本人なんだ。なのに、像がある日を境に今の外国人に変わってたんだって」

穂乃果「当然創設者の血縁の人が誰かの悪戯だって次の日にその像を強制撤去したの」

穂乃果「とある工場で完膚なきまでに破壊されたんだって。でもね、次の日になると再びあの像があったの」

穂乃果「おまけに像を壊した人はその日から一週間程高熱で死に掛けたんだって」

穂乃果「おばあちゃんから聞いた本当の話し。だから今も尚あの像はあそこにあるんだ」

穂乃果「あの像の外国人ってこの世に実在した人間なのかな? それとも……悪魔、なのかな? かな?」

真姫「ヒッ!」

にこ(ねぇ、ことり。あの像の話って本当なの? あんた理事長の娘だったわよね)

ことり(勿論嘘だよ。あの人は創設者のクラート医師。元々はここって半分は病院で半分が看護学校だったんだ)

ことり(戦争が終わってから立て直して今の音ノ木坂学院になったの)

にこ(初耳だわ。てっきり昔から女子校なのかと思ってた)

ことり(当時、幽霊の目的が余りにも多発したからその事実を後世には隠すことにしようってなったんだって)

にこ(……そ、そういえば、にこが部室で一人で居る時誰かの声とか聞こえた気がしたのって)

ことり(幽霊、かもしれないね。なんて冗談ですけど。最初から女子校です)

穂乃果「普通の七不思議って絶対に同じ場所には存在しないでしょ? あれっておかしいよね」

穂乃果「巡っていくと校内一週出来るような感じで不思議箇所があるんだよ。ま、理由はその方が面白いからかな」

穂乃果「誰かが作った不思議だから校舎内やグランドとかまで広く使ってるんだよね」

穂乃果「でも、ここは本物だから。音楽室には二つの不思議があるんだー。一つ目はね、今真姫ちゃんが引いてるピアノ」

真姫「いやぁっ!」

穂乃果「の下。猫が居るんだって。目撃例によって色は変わるんだけど、絶対に鳴かない猫なんだって」

穂乃果「自分が鳴けないから綺麗な音を響かせるピアノの音色が羨ましくて、その下に居るのかな?」

真姫「」

穂乃果「もう一つは……もう、手遅れかもしれないから言わないでおくね。仲良し部に入れば助かるけど」

穂乃果「でも、真姫ちゃんはこの一番濃い七不思議に捕らわれてるから仕方ないね。手遅れになるだろうからね」

穂乃果「それじゃあ、穂乃果達三人は仲良し部の部室に帰るから。真姫ちゃんは《二人》でゆっくりしてていいよ」

穂乃果「それじゃあ、ばいば~い! さ、ことりちゃん、にこちゃん。ゴーストハンターズ帰還だよっ」

真姫「待って! 待ちなさいよ。手遅れって何よ! 音楽室にあるもう一つの七不思議って何よ!」

真姫「二人でって言ったけど……ここには元々私一人なんだからさっきの言葉はおかしいでしょ!」

穂乃果「あれ? 真姫ちゃんはもう見えてないんだ。じゃあ、本当に手遅れなんだね」

真姫「いやぁぁぁぁぁぁ!」

穂乃果「普通なら手遅れかもしれないけど、私はおばあちゃんから唯一助かる手段を聞いてるから助けられるよ」

穂乃果「真姫ちゃんは助かりたい? それとも、その子と一緒にあっちに逝っちゃう?」

真姫「助けてっ! まだ私、もっとピアノが弾きたいの! もっと歌いたいの!」

穂乃果「だったら目を瞑って背中を向けて」

真姫「え、ええ」

穂乃果「ごにょごにょごにょ……えぇーーい!」

ビタン!

真姫「ぐっ!」

穂乃果「ふぅ~。これでもう真姫ちゃんは一人ぼっちだよ。もうここには真姫ちゃん一人しか居ない」

穂乃果「ねぇ、真姫ちゃん。死んでから誰かと一緒に居たいと望んで自縛霊となるのって寂しいよね」

穂乃果「もし真姫ちゃんが今亡くなったりしたらきちんと成仏出来る自信はある?」

真姫「私は……」

穂乃果「誰かと一緒に馬鹿をやって、周りからは頭悪いって思われるかもしれない」

穂乃果「でもね、それって幸せなことだと思うんだ。そういう何気ないやり取りが青春なんだって思うんだ」
んでるんだよ」

穂乃果「音楽室も一人じゃなければ、あの子も連れて行こうなんて思わない。寧ろ、羨ましがられちゃうかも」

穂乃果「真姫ちゃんが本当にやりたいことって、さっき咄嗟に出た言葉じゃないのかな?」

真姫「……本当に、やりたいこと」
穂乃果「私達と一緒に仲良し部で活動してみない? にこちゃんはね、スクールアイドルって言うのやってるんだ」

穂乃果「歌うだけじゃなくて踊りまでするの。作曲もね、是非真姫ちゃんにして欲しいって望

穂乃果「真姫ちゃん、是非仲良し部に入って下さい! そして、にこちゃんとスクールアイドルをしてみよう」

穂乃果「アイドル好きな子を見つけて少なくとも三人。三人居ればアイドルグループっぽくなると思うんだ」

穂乃果「スクールアイドルは女子高生の間しか出来ない青春のシンボル。今を謳歌する証だよ!」

穂乃果「一人の世界はすごい寂しいんだよ。素直な言葉が吐けなくなって、次第に心が閉塞的になるの」

穂乃果「貴女にはそんな人生を送って欲しくない。自分に素直に精一杯生きる。それが生きている人間の義務」

穂乃果「こっちを向いて、返事を聞かせて下さい」

真姫「……私、仲良し部に入ってあげる。スクールアイドルも、私はアイドルとか分かんないけどやってやるわ」

にこ「やったにこ!」

ことり「穂乃果ちゃん流石だね!」

ガクリ...

ことり「ほっ、ほのかちゃー!!」

にこ「穂乃果どうしたの!?」

真姫「今、倒れる時に頭を打ったわ。下手に動かさないで、保険の先生呼んできて!」

――私は目を覚ましたら保健室のベッドで寝てました。

おかしいなー。

音楽室に入って、真姫ちゃんに声を掛けた所から先の記憶が一切ないんだ。

ただ、不思議な夢を見たんだよね。

ずっと音楽室で一人ぼっちで誰かを待ち続けている悲しい夢。

よく分からないけど、夢は夢なんだし、真姫ちゃんが仲間になったから全部よしとしよう!

関係ないけど、さっき歯磨きしてた時に不思議なことが起こったんだ。

高速で歯ブラシを動かしてた所為か、鏡の中の穂乃果と穂乃果の動きが少しズレたんだよ。

遂に穂乃果も光を凌ぐ速さを習得し始めたのかも。

その後、何故か無表情の妹の雪穂にこう言われたんだ。

「お姉ちゃん、つかれてるね」

歯ブラシのし過ぎかな?

何だか右の肩が重い気がするんだー。雪穂の言う通りお疲れなのかも。

だから今日はもう寝るね。おやすみ!

(第五話 完) つづく?

面白いかも
待ってる乙

面白いね
続き待ってるよ

宝くじを全額寄付なんてなかなかできることじゃないよ

さすほの

○第六話 ともだち!○

なんだか最近体全体が重いんだよ。

起きたら忘れちゃうんだけど、多分同じ夢を見てる気がするんだー。

音楽室で気絶した日の夜からなんだけど、何か関係あるのかな?

取り敢えず元気一杯に過ごせばこの体調不良だって吹き飛ぶに決まってるよね!

だから今日も元気にいっくにゃ~!

――昼休み 部室

にこ「だからそんなんじゃないって言ってるでしょ!」

真姫「何で私が文句言われるのよ? そっちが間違ってるに決まってるわ!」

仲良し部始まって以来の部員同士の喧嘩が勃発してるんだ。

穂乃果「ことりちゃん。今日もパンが美味しいっ」

ことり「ホノカチャー」

でも、喧嘩は仲良しの証拠っていうからそのままで良いのかなって思ったりするんだ。

私だって海未ちゃんと何度も喧嘩したことあるし。

あ、喧嘩したことがないけど、ことりちゃんは一番のお友達だよ!

絵里「止めなくていいの? 穂乃果は部長でしょ」

穂乃果「うーん、希先輩はどう思いますか?」

希「根っこの部分は似てるし、二人の間を取り持てるくらい明るい子が入ってくれれば上手く回ると思うよ」

穂乃果「アイドル好きの子を探すより先に明るい子をゲットだね」

絵里「穂乃果が入れば一番簡単に解決出来そうだけど」

穂乃果「えー。だって穂乃果アイドルに興味にゃいもん」

ことり「穂乃果ちゃんに着せてみたい可愛い衣装いっぱいあるのに。残念だなぁ」

穂乃果「穂乃果はお店のお手伝いもあるし、何よりも放課後は自由に遊びたいし!」

希「身持ちがいいくらい明快な理由だね」

絵里「でも部長なんだからメンバーを見つけるの手伝わないと駄目よ?」

穂乃果「放課後ことりちゃんと二人でメンバー探索の旅に出るね。ことりちゃん、手伝ってくれる?」

ことり「勿論いいよっ」

穂乃果「もしかしたら笑われるかもしれない。心無い言葉を吐かれるかもしれない。それでもいい?」

ことり「ことりは穂乃果ちゃんと一緒なら何処へでも!」

穂乃果「ことりちゃん!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

絵里「ふふ。仲良し部じゃなくて演劇部でも良かったかもしれないわね」

希「ウチこの部の空気大好きや」

――放課後

穂乃果「さ、それじゃあ新メンバー獲得に向けて徘徊しよう」

ことり「うん!」

穂乃果「でも、よく考えると部活紹介も終わっちゃってるし、新入生は本命の部活に入っちゃってるよね」

ことり「確かにそうだね」

穂乃果「それに一クラスしかないし、部活に入らなかった子なんて数えるくらいしか居ない気がするんだー」

ことり「はぅん。そう考えると難易度が高いね」

穂乃果「だからここは海未ちゃんに会いに行こうと思うんだ!」

ことり「どういうこと!?」

穂乃果「私達三人の頭脳派担当の海未ちゃんなら何か良い案があるかもしれにゃいでしょ?」

ことり「自分よがりにならずに他の人を頼れるなんて流石穂乃果ちゃん!」

穂乃果「よーし! 弓道部に突撃ニャーっ!」

ことりちゃんの手を掴むとスーパーダッシュ!

流れ星より早く弓道部に移動したよ。 ミ☆

――弓道部

そこはおふざけなんて許されないくらい真剣な空気に包まれていて、その中で矢を射る海未ちゃんに見惚れちゃう。

穂乃果「剣道の時もそうだけど、海未ちゃんが真剣な時って凄くカッコ良いよね」

ことり「うん。後輩の女の子にラブレター貰うのも納得だよね」

穂乃果「あの時は可愛かったよねー」

ことり「だよねー」

囁き合いながら海未ちゃんが休憩するまで待ってるんだ。

だけど、勘のいい海未ちゃんはふとこちらを見て、引き締まった表情を緩めました。

どことなくいつもより嬉しそうに見えるよ。

海未「二人して弓道場まで足を運ぶだなんて、何かあったのですか?」

穂乃果「海未ちゃんに会いたくなったから会いにきたんだ!」

ことり「ことりも同じです」

海未「ふふっ。二人は時々子供っぽくなりますね」

目を細めて慈愛の微笑みを浮かべる海未ちゃん。

私達三人の中でお姉ちゃんポジションなので、こうして甘えられたりするのが大好きなんだよ。

でも、甘えすぎると怒られちゃうから加減が必要なんだ。えへへ!

海未「もう少しだけ待っててもらえますか? 今日は軽い練習だけなので一緒に何処かへ行きましょう」

穂乃果「じゃあラーメン食べに行こうよ」

海未「ラーメン、ですか?」

ことり「そんなにお腹減ったの?」

穂乃果「あれ? 穂乃果そんなにお腹空いてにゃいんだけど……」

海未「穂乃果。ラーメンは少し重たいのでクレープくらいにしておきましょう」

ことり「私もその方が嬉しいな。どうかな?」

穂乃果「うん。私もその方がいいな」

海未「だったら最初からラーメンなんて提案しないでください。まったく、穂乃果は昔から突拍子もないんですから」

ことり「でもそこが穂乃果ちゃんの魅力だよっ」

海未「やれやれ。ことりに掛かれば穂乃果の欠点は全て魅力に変換されてしまいますね」

ことり「穂乃果ちゃんは魅力満載だから」

穂乃果「えっへん!」

海未「無駄に胸を張らないでください。……ですが、最近の穂乃果の功績は胸を張れるものがありましたね」

ことり「今もね、部の仲間の為に悩んでるんだよ」

穂乃果「そうにゃんだよ。なんせ穂乃果は仲良し部の部長さんだからね」

海未「功績は認めるのですが、穂乃果が部長というのがとても不安を煽ります」

――公園

穂乃果「クレープ美味しい! 穂乃果のお家もクレープ屋さんだったら毎日でも飽きないのに」

海未「絶対に『生クリーム飽きたー!』とか言い出してましたよ。断言出来ます」

ことり「ふふっ。それが穂乃果ちゃん色だよね」

海未「そうですね」

穂乃果「えーそんなことないよー。餡子は飽きるけど生クリームは飽きないもん」

海未「穂乃果には持続性というものが足りてませんからね。昔から変わらないものなんて好物の苺くらいです」

穂乃果「いちご以外にだって変わらないものあるよ」

海未「なんですか?」

穂乃果「ことりちゃんと海未ちゃんのことが好きで、これからもずーっと一緒に居たいって気持ち!」

ことり「ホノカチャー!」

海未「~~っ!」

穂乃果「お婆ちゃんになっても三人でこうして並んでお茶とか飲みながら昔話に花咲かせたいにゃー」

ことり「ことりもだよ、穂乃果ちゃん」

海未「私も同じ気持ちですよ。……仕方ないですね、私も穂乃果とことりが立ち上げた部に入部しましょう」

穂乃果「え?」

ことり「海未ちゃん?」

海未「弓道部と二束の草鞋をはくことになりますが二人を放っておく方が気になりますからね」

穂乃果「大変じゃにゃいの?」

海未「それくらいで大変と感じる程、園田家での鍛錬は甘くありません」

海未「……それに、私だって二人と一緒でないと寂しいと感じてしまうことだってあるんですよ?」

穂乃果「うっみちゃーーーん!」

ことり「ウミチャー!」

私とことりちゃんは嬉しくて海未ちゃんに抱きついたんだ!

でもね、穂乃果は持ってたクレープを海未ちゃんの制服にべっとり付けちゃって怒られちゃったの。

「まったく穂乃果は!」

って、何度も何度も使って怒るんだもん。

でもね、帰りにことりちゃんが耳打ちしてくれたんだ。

「海未ちゃんがあんな風に怒ってくれる相手は間違いなく穂乃果ちゃんだけだよ」

だから落ち込んでた気持ちもふわっと軽くなったの。

それにね、別れ際に海未ちゃんが言ってくれたんだー。

「部長をしてるのならもう少し落ち着きを持ってください。穂乃果は私の自慢の友達なのですから」

余りにも嬉しくて穂乃果の家まで海未ちゃんを誘拐しちゃった。

お土産に穂むら名物のお饅頭をプレゼントしたら、本当に嬉しそうに笑ってお別れしたの。

明日から楽しみだなー。

雪穂「ねー、機嫌良さそうなところ悪いけどさ」

穂乃果「何よ?」

雪穂「最近夜中に何なの?」

穂乃果「夜中? なんなのって、どういうこと?」

雪穂「質問を質問で返すのよくないよ。夜中にニャーニャーリンリンって鳴いてるやつ」

穂乃果「なにそれ?」

雪穂「寝ぼけてるのか寝言なのかしらないけど、壁薄いんだから声が漏れてくるんだよ」

穂乃果「よくわかんにゃいけど、ごめんね」

雪穂「一応私も受験生なんだから、もう少し気にしてよ」

穂乃果「でも音ノ木坂なら受験勉強なんて関係ないよ!」

雪穂「お姉ちゃん。勉強っていうのは受験の為だけにするものじゃないんだよ」

雪穂「寧ろ、高校に入学してから困らない為にも勉強するんだよ。お姉ちゃんもしっかりしてよね」

穂乃果「……はぁーい」

まずは雪穂の足手まといにならないように寝言を気をつけよう!

――夜中


ニャー   ニャー    リン にゃー

ニャー  りん  りん  ニャー にゃー  にゃー

りん にゃー   ニャー   リン   ニャー


雪穂「まったく。言っても煩いんだから。お姉ちゃんってば……でも、なんだろう」

雪穂「お姉ちゃんの声、泣いてるみたいにも何かを期待してるようにも聞こえる」

(第六話 完) 最終話につづく

ピアノの猫ちゃんかな?ほのかわいい乙!

まだ、星空凛が猫アレルギーでなかった頃...

男子「スカートなんか持ってたのか?」

凛「……凛やっぱり着替えてくるね」

花陽「凛ちゃん」

部屋に戻ると飼っていた三毛猫のニャーがまるで慰めるように近寄ってきて、甘えてきた。

幼馴染の前なので涙を堪えていたけど、抱き締めてる。

それはニャーが病気を患い、延命と引き換えに寿命を縮め、声を失ってから初めて泣いた。

泣けなくなってしまったニャーを思って、笑顔を心がけてきたけど、今だけは我慢できなかった。

泣き続けて心配した母親が声を掛けたが、頭が痛いと嘘を吐いて凛は初めて学校を休んだ。

ニャーがずっと一緒に居てくれたお陰で深い傷にはならなかったが、凛は中学生になるまで私服でスカートは穿けなかった。

凛の心に傷を与えたのはこの僅か三ヵ月後の出来事。

残酷なことに、心を守ってくれたニャーが姿を消す。

近所を探し回り、色んな人に写真を見せて消息を探したけれど見つからなかった。

地域の掲示板に写真を上げてみても、結果は何一つ得ることが出来ないまま、小学生を卒業した。

ニャーとはもう会えないのだと自覚してから、友達の家で飼っている猫と戯れた時、くしゃみが止まらなくなった。

その日を境に、星空凛は猫アレルギーが発症した。

奇跡が起きてニャーと再会することが叶っても、あの頃のように笑顔で触れ合うことが出来ないことを知る。

それはまるで、ニャーを再び失ったように胸に大きな傷を与えた……。

○最終話 仲良し部よ、永遠に・・・!○

朝起きたら頬が濡れてて驚いちゃった!

すっごい寂しい夢を見てた気がするのに、いつもみたいに忘れちゃって。

でも、今日はずっと重かった体が急に軽くなったんだー。

まるで猫にでもなってぴょーんと壁でもジャンプで上がれちゃうようなくらい。

それに、なんだろう?

すっごい胸がドキドキしてるんだ。

新しい何かが始まるような、そんな可能性を感じる!

穂乃果「朝だよーーーーっ!」

ママ「穂乃果ーっ! 朝から近所迷惑だから叫ばないの!」

怒られちゃったけど、今日の穂乃果は誰にも止められないよー!

――お昼休み 二年生の教室

海未「そういう相談は少しでも早くしてください」

穂乃果「えへへ! ごめんね、昨日その相談に行ったつもりだったんだけど、忘れちゃってて」

ことり「でもお陰で海未ちゃんが仲良し部に入ってくれたからお釣りがきたよね」

穂乃果「ねーっ」

海未「やはり私が居なくては二人だと抜けてる場面があって心配ですね」

なんていいながらやっぱり嬉しそうな海未ちゃんが可愛い。

海未「その二人の仲を取り持てるくらい愛嬌のある子を見つけるという案は正しいと思います」

海未「というか、そこまで答えが出てるのにどうして行動を起こさないのですか?」

穂乃果「でも、一年生の人数って少ないから無理かもって」

海未「穂乃果らしくないですね。普段の穂乃果なら他の部に入ってても勧誘しそうなものですけど」

ことり「そういえばそうかも」

穂乃果「全然思いつかなかったよ。にゃんでかな?」

海未「つかれているからではないですか?」

穂乃果「言われる程疲れてはないんだけどなー。むしろ今日は絶好調な気がするんだ!」

海未「穂乃果の絶好調はある意味で人が巻き込まれるイメージがあります」

ことり「そこが穂乃果ちゃんの歴史だよ」

海未「なんですかそれは」

ことり「そんな穂乃果ちゃんだからこそ、ことり達はこうして今も穂乃果ちゃんと同じ部活をしていられるんだよ♪」

海未「……そうですね。迷惑だと思っていても、結果的に穂乃果は逆の感情を抱かせる才能がありますから」

穂乃果「それってどういうこと?」

海未「真っ直ぐな性格でなければ詐欺師となって捕まっていたということです」

穂乃果「穂乃果はそんなことにならないよー」

ことり「海未ちゃんの照れ隠しだから」

海未「別に照れていません!」

なんて言いながら、確かにことりちゃんの言うとおり照れてるみたい。

こういう時にツッコミを入れると大火傷になるから今日はやめておこう。

穂乃果「取り敢えずパンを食べ終えたらにこちゃんに勧誘するの付き合ってもらうよ」

ことり「勿論ことりも穂乃果ちゃんに付き合うよ!」

海未「ここまで聞いたのです。私も付き合いましょう」

穂乃果「ありがとう、ことりちゃん! 海未ちゃん!」

この後、ささっと食べた穂乃果は部室に行ったら真姫ちゃんも一緒に居たよ。

仲良しさんというより、二人共クラスに友達が居ないから他に食べる場所が……ごめん、ちょっと涙で前が見えないよ。

今は仲があんまりでも、もう一人が居ればきっと学年別だけど一緒に食べたいから部室で食べてるに変わる筈だよ。

仲良し部なのに仲良しじゃない今の状況を頑張って打開しなきゃ!

穂乃果「……ふぁ」

少し泣いちゃったのと、お腹一杯だから眠くなってきちゃった。

授業中だけど我慢するのは体によくないよね。

それじゃあ、おやすみ!

あのね、カオスSSはスレタイに「カオス」なんて書いちゃう様じゃダメよ
君マジメでしょ?マジメな人には向いてないよ、カオスSS書くの
方向転換しなさい

――放課後 一年生の教室

穂乃果「たのもー!」

真姫「現れたと思ったら、何変なこと言ってるのよ」

穂乃果「お昼に言ったでしょ? スカウトにきたんだよ! そこのあなたを!」

今にも帰ろうとしていた二人組の一人、ショートカットの後輩にビシッと指を向ける。

真姫「ちょっと。人を指差すのはお行儀が悪いわよ」

穂乃果「真姫ちゃんはちょっと黙っててよ! 敵なのか味方なのか分からないブラックみたいになってるよ?」

真姫「なにそれ、意味分かんない!」

花陽「あ、あの。私達に何か用……でしょうか?」

穂乃果「うん! そっちの子に用があるの!」

凛「凛に?」

穂乃果「凛ちゃんって言うんだね。そう、凛ちゃんに用があるんだ。少し付き合って欲しいニャー」

凛「ニャー?」

穂乃果「とにかく音楽室に来て欲しいんだよ!」

何故か分からないんだけど、凛ちゃんを音楽室に連れて行かないといけない衝動が強い。

だから、返事を待つより先に凛ちゃんの腕を掴んで駆け落ちしちゃうよ。

穂乃果「ススメ→音楽室!」

凛「凛は行くなんて言ってないよぉ~!」

花陽「りっ、凛ちゃん!?」

真姫「ちょっとちょっと! ブラックって何のことよ~!」

凛ちゃんと一緒に走ってる時、思い出を辿るみたいに懐かしい気持ちになったんだ。

こうして一緒に何かをするなんて初めてにゃのに不思議。

――音楽室

にこ「漸く来たわね。練習もせずにこんな所で待たせるなんて、スカウト失敗したらただじゃおかないにこよ!」

海未「スカウトすらしてないにこが穂乃果をどうこう言えないと思いますが?」

にこ「ぐぬぬ! ていうか、どうして入ったばかりのあんたにまで呼び捨てにされんのよ!」

ことり「それはにこちゃんが親しみ易いから。親しみ易さは今のアイドルに一番必要なことだよね?」

にこ「それもそうね。そういうことなら許可してあげるわ!」

海未(にこは物凄く単純ですね)

凛「スカウトって何のことなの? 凛は何で連れてこられたの?」

真姫「というか、私はあれ以来なんかここが怖いんだけど」

花陽「……はぁはぁ。漸く追いついた」

海未「穂乃果。まずは状況を落ち着かせる為にも、もう少し詳しい説明をすべきです」

ことり「確かに。場が混沌としてるし」

穂乃果「そっか。凛ちゃんはスクールアイドルって知ってる?」

花陽「スクールアイドル!? それはあれでしょうか? 女子高生だけがなれる青春の象徴!」

花陽「年に一度開かれる甲子園と言うべきラブライブの優勝を目指して群雄割拠の戦国時代を駆け巡る!」

花陽「全てが敵であり、全てが尊敬でもあるスクールアイドルグループ! 学校・学院につき1グループのみが許される」

花陽「メンバーの上限はありませんが、多ければいいというわけでもないのが難しいところです」

花陽「これは有名な話なんですが、五年ほど前に五十二人ものスクールアイドルグループを結成した学校がありました」

花陽「大人数がいればミスが目立たないと思っていたのでしょう。でも、そんな甘いことが許される世界ではありません」

花陽「人数が多いことで逆に僅かなズレが大きく映ってしまい、お客様からはありえない失笑が沸くステージ」

花陽「途中で踊れなくなったり、舞台から逃げるように去った人まで……。勿論二度目のライブはありませんでした」

花陽「それ以降六人以上のグループというのは現在ランク五十以内にはありません」

花陽「グループがない学校では誰でもなれる反面、卒業もしくはそれに近い時期まで活動して引退出来るのは僅か」

花陽「成功を収めれば卒業と同時に大手事務所からのスカウトがきたりもしますが、そんなに甘い世界ではありません」

花陽「だけど、逆に結果が残せなくてもきちんと活動しきったメンバーには色あせない青春の思い出を得られると言います」

花陽「ですが、先ほどのように人によっては心に深い傷を負うくらいの出来事に心的外傷が残る場合もあります」

花陽「スクールアイドルになるということは、全てに負けない愛情かそれに似た絶対なる覚悟を要します」

花陽「ちなみにですね、スクールアイドルの始まりは《シスタープリンセス》というグループなんです」

にこ「ちょっとあなた!」

花陽「あっ……ご、ごめんなさい!」

凛「凛は暴走するかよちんも、今みたいな小動物みたいなかよちんも好きだよー」

にこ「素晴らしい知識じゃない。もしかしてアイドル好きなのかしら?」

花陽「……は、はい。小さい頃からずっと好きで」

凛「かよちんの夢はアイドルなんだよ」

にこ「穂乃果! あんた……実はこいつただの馬鹿なんじゃないか? って思ってきてたけど全然違った」

にこ「あんたはタイだったわ! タイでエビを釣るってこういうことね!」

海未「見事に損してますね」

真姫「鯛で釣ってどうするのよ。それを言うなら海老で鯛を釣るでしょうが」

にこ「わざとよ! 場を和ませるジョークよ。三年生ジョーク!」

穂乃果「ジョークとしてもつまらなかった辺りがにこちゃんクオリティだね!」

にこ「うっさい!」

凛「それでスクールアイドルがどうかしたの?」

花陽「凛ちゃん。相手は上級生だよ」

にこ「その中でも私が唯一の最上級生!」

海未「にこは少し黙っていた方が後の為ですよ」

真姫「その通りよ。で、話は早いわね。そっちの子はなんて名前?」

花陽「え、知らないですか? 同じクラスなのに……そうだよね、私って影薄いし」

真姫「あっ、ちょっと……ごめん。私、その……未だにクラスメートの名前と顔って一致しなくて」

にこ「頭が良くても人の顔や名前を覚えられないのはアイドル的にも将来的にも致命的にこ!」

真姫「う、うるさいわねー。にこちゃんだってどうせクラスメートの名前なんて言えないんでしょ?」

にこ「い、言えるわよ! さ、佐藤さんとか?」

真姫「ありきたりな名前出してみただけじゃない。だったら私だって言えるわよ」

海未「喧嘩なら後にしてください。貴女たちの為にしているのですよ?」

穂乃果「今日はまだ練習してないから元気が有り余ってるんだねぇ」

ことり「穂乃果ちゃんは平和的だねっ♪」

花陽「あ、あの……。私の名前は小泉花陽です」

真姫「小泉さんね。顔も名前もきちんと今覚えたからこれからは忘れないわ」

花陽「はい」

真姫「一緒にスクールアイドルやってみない? にこちゃんも詳しいみたいだけど、貴女の方が詳しそうだし」

にこ「ちょっとにこより――もぐもご」

海未「ですから話を上手く通す為にもにこは黙っていてください。寧ろ、これ以上無駄口叩くなら落としますよ?」

ことり「ちなみに海未ちゃんは武道を嗜んでるから強いですし、冗談も余り言わないです」

にこ「っ!? …………」

海未「黙りましたね。手は離しますが、分かってますね?」

にこ「にこぉ」

真姫「それにこんな風に頼りないのよ。だから一緒に活動してくれるメンバーを急募していたの」

真姫「アイドル知識もあるし、声も可愛いし、見た目だって整ってるし。一緒にやってみない?」

花陽「わ、私がアイドルなんて……そんな。凛ちゃん、たすけてー」

凛「凛はいい機会だと思うよ。かよちんの夢を叶える為にも」

花陽「そんなっ!」

にこ「アイドルになりたいって気持ち、私もよく分かるわ。あなたみたいに自信がない子もいるでしょう」

にこ「逆に私みたいに自信が溢れてる子もいるわ。でも、アイドルになれるのはほんの極僅か」

にこ「親が芸能人とか、小さい頃から養成所に入ってるとか、子役として活躍してきたり、コネがあったり」

にこ「そういうのがないと実際にアイドルになるのは難しい。スカウトなんて騙されることの方が多いって聞くし」

にこ「でもさ、スクールアイドルは本物とは逆。さっきもあなたが自分で言ってたけど誰でもなれる」

にこ「だから逆に難しい。だけど活動を通じて結果より自信が付けば本物のアイドルに近づけるんじゃない?」

にこ「私がアイドルになるのは正直……うん、いつもは目を逸らしてたけどきっと難しい」

にこ「年齢的にも今年で十八歳になるわけだしね。その点、あなたはまだ十六歳になるかなってるかでしょ」

にこ「羨ましいくらいに可能性が眠ってる。だけど、私にもまだチャンスがあるわ」

花陽「……もしかして、ラブライブ」

にこ「ええ。A-RISEという最上のライバルがいるけどね。一緒にやってみない? 下克上のスクールアイドル」

真姫「ちょっと待ってよ、にこちゃん。なんか私に対しての時と全然態度が違わない?」

にこ「そりゃそうよ。あんたは生意気なんだもん」

真姫「それはにこちゃんが子供っぽいから合わせてあげてるだけでしょ!」

にこ「誰が子供よ!」

真姫「にこちゃんよ!」

にこ「真姫ちゃんが生意気だからよ!」

真姫「なんですってー!」

海未「……はぁ~、やれやれ。本当にこの二人は」

ことり「ちょっとだけ穂乃果ちゃんと海未ちゃんに似てるところがあるよね」

穂乃果「えー似てないニャー。だって、海未ちゃんってば厳しい時は鬼みたいに――」
海未「――誰が鬼、ですか?」

穂乃果「ひぃっ!」

凛「よく分かんないけど、かよちん。ここで返事しちゃわないと大変なことになりそうだよ」

花陽「でも、花陽がスクールアイドルになるなんて」

凛「大丈夫だよ。あの二人ならかよちんの魅力を引き出してくれる、そんな気がするよ」

花陽「だったら花陽と一緒に凛ちゃんも一緒にやらない?」

凛「凛がアイドルなんて無理だよ」

穂乃果「無理じゃにゃいよ! そもそも、私は凛ちゃんをスカウトしにきたんだから!」

凛「どうして凛を?」

穂乃果「凛ちゃんだから! 凛ちゃんには誰よりも笑顔が似合うって気がするんだ!」

穂乃果「理由はないんだけどね、凛ちゃんを見た瞬間にビビットきたんだよ!」

凛「そんな理由になってない理由でなんて無理だよ。凛はあまりスカートって好きじゃないし」

花陽「凛ちゃんは似合ってるのに、私服だとほとんどスカート穿かないもんね」

凛「……」

真姫「取り敢えず花陽。貴女の返事を先に聞かせてよ」

にこ「そうね。あなたの返事をまずは聞かせて!」

花陽「……うぅ、凛ちゃんと一緒なら、がんばれる……かも」

穂乃果「ということは、凛ちゃん次第で二人の運命が決まるってことだね」

海未「責任重大ですね。この返事次第では花陽の夢が叶うかもしれません。ついでににこのも」

にこ「どうしてにこの夢がついでなのよ!」

ことり「今のが海未ちゃんが稀にする冗談だから」

にこ「わ、分かり難いわね」

凛「……凛は、無理だよ」

穂乃果「そんにゃことない! 凛ちゃんならやれるニャー!!」

その時、穂乃果の中から何かが抜けるようなそんな不思議な感覚がしたんだ。

重かった体が一気に軽くなったっていうか、突き指が治ったような感覚?

とにかく、一気に元気が戻ったよ!

真姫「ひっ!」

にこ「何抱きついてくんのよ!」

真姫「あっ、ああああ……あれ」

にこ「あんたが抱きついてて首が回せないわよ。何があったのよ」

ことり「ぴぃっ! ほのかちゃっ、うみちゃっ!」

海未「何ですか?」

りんぱな「?」

穂乃果「え、猫さん? でもどこも開いてないのに……」

海未「それ以前にあの猫、透き通ってませんか? 色も青色の猫なんて見たことがありません」

真姫「青? 何言ってるのよ。白猫でしょ」

ことり「ことりには茶色に見えるけど」

花陽「猫ってどこに居るんですか?」

真姫「ピアノの下よ!」

花陽「えっと……猫なんて居ないみたいですけど」

にこ「見る人によって色が違うとか、見たいんだけど。とっとと離しなさいよ!」

穂乃果にもその猫は見えなかったんだ。

だから三人が何を言ってるのか不思議だったんだけど、それ以上に不思議なことが起こっちゃった。

誰も座ってない、そもそも蓋すら開いてない筈のピアノから演奏が聞こえ始めたから。

どこかで聞いたことのある曲だけど、曲名までは知らないけど優しい曲。

にこ「ピアノ? 真姫ちゃんここに居るのに誰が演奏してるの?」

真姫「な、なるほどね。分かったわ。透明人間になる薬を開発したのね」

海未「何を言ってるんですか。幽霊よりそっちの方が非科学的です! そもそも透明人間なら胃の中の物が見える筈です」

ことり「混乱してる割には海未ちゃんって冷静で頼りになるけど、怖いよ!」

穂乃果「なんだろうね」

不思議と怖さはありませんでした。

曲が小学生の時に習ったシューベルトの魔王とかベートーベンの運命だったら怖かったのかもしれないけど。

聞く人を優しい気持ちにさせるこの曲の引き手が、人に害を成すとは思えなかったから。

といっても、引き手は見えないんだけど。

希「とってもスピリチュアルなことになってるみたいやね」

絵里「なななななっ、なによこれ!?」

穂乃果「希先輩に絵里先輩!」

希「皆、恐れることはないよ。エリちも安心していいから」

真姫「安心なんて出来る訳ないでしょ!」

海未「そうですよ! どういう理屈でどうなってるんですか!」

凛「……」

希「ピアノを弾いてるのは残留思念。幽霊じゃなくて、人の想いが強く残ってるだけ」

希「うん、その通り。ニャーちゃんは声を失くした時に予知能力に目覚めたみたい」

希「その予知を信じてずっと待ち続けてきた。最近は穂乃果ちゃんの中に入ってたみたいだけど」

ことり「あっ、それで最近にゃが付いてたんだ」

海未「何かの真似かと思ってました」

穂乃果「どうりで体が重かったり、変な現象が起こった訳だね」

にこ「……正直今の展開にまるで置いてけぼりなんだけど」

真姫「わ、私も全然ついてけないわ。なんでみんな希先輩のトンデモ話を信じてるのよ」

花陽「私には見えないけど、凛ちゃんにニャーちゃんが見えてるのなら本当だと思う。昔飼ってた猫ちゃんだから」

凛「……先輩、どうしてニャーはこの日を待ち続けてたの? どうして凛の傍で眠らなかったの?」

希「多くの人に好きになって欲しいって。自分に笑顔と命をくれたように、幸せにして欲しいって」

希「愛されてたんやね。生前も、幽霊として孤独に過ごして尚、今も凛ちゃんを愛する気持ちは微塵も薄れてない」

凛「私もニャーに触れる?」

希「ウチは霊感が強いから触れるけど、残念ながら……」

凛「そっか……」

希「そんな寂しそうな顔しないで。ニャーちゃんが望んでるのは凛ちゃんの笑顔」

凛「うん。でも、ニャーが望む多くの人をってどうすればいいのかな?」

希「何故今日という日なのか。もう、分かってるんじゃない?」

そう言いながら希ちゃんはにこちゃんと真姫ちゃんを見ました。

つまり、ニャーちゃんという子は凛ちゃんにスクールアイドルになって欲しいと願っていたってことだね。

ただその為だけに、最期の時を離れ離れで……。

凛「……にこ先輩。私とかよちんをスクールアイドルに入れてください!」

にこ「多くの人に好きになってもらうのはスクールアイドルでも難しい。人前には決して見せない努力が必要よ」

凛「うん」

にこ「でも、ま……あなたなら大丈夫よね」

花陽「ニャーちゃんの為だもんね」

凛「ニャーの為だけじゃない。大好きなかよちんの夢を叶える為でもあるよ!」

花陽「凛ちゃん」

希「ふふっ。そうだね、そういう人の為に頑張れるところ。そういう優しさが好きみたいだよ」

凛「凛よりもニャーの方が優しかった。凛が落ち込むといつも傍にきて慰めてくれた」

凛「ニャーがいたから凛はスカートを穿けなくなることはなかったんだよ」

凛「ニャーが居なくなってね、猫アレルギーになっちゃったんだよ。今でも猫大好きなのに」

凛「……ニャーはずっとここに居られるの?」

希「今日がニャーちゃんの卒業式」

凛「そんなっ。だってようやく再会出来たのに」

花陽「凛ちゃん。卒業は新しいことを始める為の大事な門出だよ。ニャーちゃんが新しいこと始められるようにしないと」

希「いいこと言うね。ニャーちゃんを凛ちゃんと同じ卒業まで待たせるってことは、ニャーちゃんの未来を奪うことと同じ」

希「本来ならずっと早く新しい生命としてこの世界に生きている筈だったのに、今もこうして幽霊となって待ってた」

希「これ以上待たせるのは可哀想やない?」

凛「……うん、ごめんね。ニャー」

凛「待たせてごめんね。それからありがとう。スクールアイドルとして頑張るから、応援してね」

ピアノの曲が止み、ニャーちゃんは無事に成仏した。

霊感のある希ちゃんにも聞こえなかったみたいだけど、最期に鳴けない筈のニャーちゃんが鳴いたんだって。

凛ちゃんだけに聞こえたその声は、今のスクールアイドルとして頑張る凛ちゃんを支えてるって言ってたよ。

それでね、思い出したんだ。

ニャーちゃんに憑かれてた時に見てた夢。

音楽室でずっと凛ちゃんが来るのを待ってたんだ。

外の景色が変わっても、ピアノを演奏する学生が変わっても……ずっと待ち続けていた。

寂しいけど、再会する日を信じて待ち続ける夢。

だから起きた時に泣いてたんだって。

夜に鳴いてた方はきっと、鳴けない分を穂乃果の声を使って鳴いてたんだなーって。

雪穂には迷惑だったんだろうけど、そう思うとなんだかもっと穂乃果の中に居ても良かったのに。

あの日を境に、凛ちゃんは猫アレルギーが治ったんだって嬉しそうにしてた。

でも、猫を飼うことはしないんだって。

「何にも縛られず自由であって欲しいニャー!」

って、語尾ににゃがつく様になった凛ちゃんの猫への想い。

音ノ木坂の音楽室に幽霊はもう居ない――。

(最終話 完)

――エピローグ

穂乃果「いや~人生何があるか分からないものだよね」

海未「あんなことは二度とありませんけどね」

ことり「でも素敵だよね。とっても感動しちゃったぁ」

穂乃果「そうだね。ニャーちゃんが見た予知が正解だったのか、初の動画で一気に上位ランクに上がったもんね」

海未「にこにとってはまだまだ六十位なんてあってないようなもの、等と言ってましたがね」

ことり「でもあの後、直ぐにトイレに出て行ったけど、廊下でスキップしてたよ」

穂乃果「にこちゃんは素直じゃないからねぇ」

海未「花陽と凛が間に入ったお陰で真姫とぶつかることも少なくなって、少しはリーダーっぽくなると良いのですが」

ことり「ことりはなんとなく大丈夫な気がするよ」

穂乃果「穂乃果もそう思うよ。にこちゃんのアイドル愛は本物だもんね」

海未「ニャーはどのような未来を予知して再会のあの日を待ったのでしょうか」

穂乃果「もしかしたらあの四人が本物のアイドルになる、そんな予知だったのかもしれないよ?」

ことり「もしそうだったら素敵だね。穂乃果ちゃんが居たからこそ結ばれたメンバーだもん」

海未「ことりは穂乃果を持ち上げないと済まないのですか?」

ことり「だって本当のことだよ♪」

海未「ま、そうですね。今回だけは流石穂乃果と言っておきましょう」

穂乃果「ことりちゃんになら言われなれてるけど、海未ちゃんに言われるとなんか照れるね」

ことり「この調子でもっと他の人にも流石って言われるように活動しようよ!」

穂乃果「そうだね。穂乃果たち仲良し部は色んな人の絆を結ぶ、そんな活動をしよう!」

海未「一度でも成功すると調子に乗るのが穂乃果の悪い癖です」

ことり「だけどそれが出来たら何より誇れる活動になると思う」

海未「そうですね。青春時代の大事な時間を未来に誇れる素敵な思い出にする為に、頑張りましょう」

穂乃果「よ~し! じゃあ、今日からどこかで困ってる人を探して助けよう!」

海未「言葉にすると曖昧過ぎて不安になりますね」

穂乃果「不安になんてなってる暇はないよ。だって、青春は一秒だって待ってはくれないんだから」

穂乃果「仲良し部活動開始ー! 今日もファイトだよ♪」 おしまい

カオスというより勢いが良いssだった

仲良し部二期やってもいいんだよ(チラッ

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