あるところに仲の良い兄妹がいました
彼らは普通に学校へ行き
普通に暮らしていました
そんな取り留めのない日常
ある日、2人は夢を見ました
そして、そこから彼らの非日常は始まりました
薄暗く、四角の空間
そこに2人は立っていました
「どうするの?」
と、妹が尋ねます
「……」
兄は黙ったままです
彼らの前には2つの扉
そしてその扉の前には2匹の兎
白い扉の前には白い兎
黒い扉の前には黒い兎
「選べって事だと思うよ?」
妹がそう言う理由
色々試した上での発言
扉をこじ開けようとしたり
夢が覚めるまで待ってみたり
結局わかったのは
1人と1匹の組になった時
扉が消えるという事だけでした
「これってさ、当たりはずれがあるって事なのかな…」
妹は不安を露にします
「わからん」
兄も苛立ちを抑えながら、正直な気持ちを言いました
「…それじゃあ私は―――白にする。まっさらな白」
「…わかった。なら俺は黒だ」
2人がそれぞれ兎の前に立つと
扉は消え
それまでこちらを向いていた兎たちは身をひるがえし
扉の中へと吸い込まれていきました
兄妹は顔を合わせた後
その後をたどります
さて、彼らの行く先にはなにが待ち受けているのでしょう
真っ暗な世界
ただ黒いだけの通路
その中に黒い兎だけが見えます
そう
こちらは兄の歩く道
恐怖を押し殺して進みます
やがて出口が見えます
渦巻く黒い出口
兄は
誰に言われるでもなく
その中に飛び込みました
そしてどこからか聞こえるのです
『あたり』
と―――
兄「―――っつぅ…頭痛てぇ…」
兄(朝か…)
兄(なにか夢を見てた気がする)
兄「どんな夢だっけな…」
兄「…と、学校行かなきゃな」
ガチャ
兄「朝飯朝飯ー」
ガチャ
妹「…あ」
兄「おう妹」
妹「…お、はよう」
スタスタスタ
兄「なんだあいつ…機嫌わりぃな」
兄「雨、降りそうだな」
母「午後から雨って聞いてるわよ?」
兄「そうなんだ。ありがとう」
妹「……」パクパク
母「どうしたの?なんか元気無いけど」
妹「なんでもないよ」
母「?そう…」
兄「…ごちそうさま。妹、先行ってるぞ」
妹「先…?」
兄「いや、学校だけど」
妹「学校……」
母「体調悪い?一日ぐらい休んでもいいのよ」
妹「…そっ、か。学校…学校だ」
兄「おい…お前…」
妹「大丈夫だから…うん、先に行ってて」
兄「…あぁ、それじゃあな」
バタン
兄「……」
兄(いつもは元気すぎてうっとおしいぐらいなんだが…)
兄「うーん…」
バシッ
兄「…?」
兄友「よう!朝からブツブツ念仏唱えてどうしたよ?」
兄「なんだお前か」
兄友「!つれねぇなー、友達じゃんよ。言ってみな?ほれ、ほれ」
兄「うるせぇ奴だな全く…」
――――
―――
――
兄友「ほー、妹ちゃんがねぇ…」
兄「風邪かなんかならいいんだが、様子が変でな」
兄友「それはな、あれだよ」
兄「あれって?」
兄友「あれはあれだよ! そんな事より…」
兄「なんだよ」
兄友「シスコンきめぇわ」
兄「…なるほど」
兄友「とりあえずその振り上げた拳しまおうか」
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