幼「また同じクラスになれると良いですね!」
男「いや、無理だろう」
幼「またそんな意地悪言って!」
男「いや…だからな?」
幼「あーあー!聞こえません!」
男「現実逃避しても、何もならないぞ?」
幼「クラス表を見るまで、私は祈り続けます!」
男「ま、好きにしなよ…」
男「しかし、この辺りは昔と変わらんなぁ」
幼「そうですか?」
男「あっちの道を進むと、公園があるんだ」
幼「昔遊んだ公園ですか?」
男「そうそう」
幼「今度、行きましょうね」
男「おう」
幼「はぁ…高校への道のりは割と険しいですね…」
男「お前、へばるの早すぎだろう…」
幼「こ、これでも体育の成績は良いんですよ?」
男「知ってるけどさ」
幼「おんぶしてください!」
男「駄目です。ちゃんと自分で歩きなさい」
男「これから、毎日、少なくとも3年は通う道だぞ?」
幼「あぁ…もっと家と学校が近ければ…」
男「確かにな…徒歩20分って微妙な距離だな」
幼「しくじりましたね」
男「俺に言われても、困るが?」
幼「ちょっと愚痴りたかっただけです。気にしないで下さい」
男「お、学校見えてきたぞ」
幼「やっとですか…」
?「…」
ジーッ
・
・
男「お、あれがクラス表かな?」
幼「人だかりになってるから、きっとそうでしょう」
男「俺が見てきてやるよ」
幼「ありがとう、男」
男「お安いご用だ」
幼「…」
幼「どうかっ!一緒のクラスに!一緒のクラスにっ!」
男「俺はa組、お前はb組だったよ」
幼「あぁ、この世には神も仏も無いものか…」
男「だから言っただろう。無理だって」
幼「お、男は私と同じクラスじゃなくて、悲しくないんですか?」
男「ちょっと寂しいけど、仕方無いだろう」
幼「随分と大人な意見ですね!」
男「もう高校生だぞ?少しは大人に…」
幼「もうっ!男はちょっと冷めてますね!」
男「それじゃ、教室行くから」
幼「途中までは一緒じゃないですか」
男「あぁ、それもそうか」
男「a組はこっちの廊下の突き当たりか」
幼「隣りのクラスで良かったです」
男「ん?」
幼「休み時間毎に、遊びに行きますからね!」
男「いやいや、クラスの皆と馴染む努力をしろよ?」
幼「それはもちろん、頑張りますけど!」
男「それに、秘密なんだろ?色々と」
幼「肝心な所だけ隠せれば、後は別に秘密じゃなくて良いです!」
幼「むしろオープンにしていきたいです!」
男「オープンね…」
・
・
幼「b組、ここですね」
男「んじゃ、また後でな」
幼「あぁ…何か、何かもう一言くらい無いんですか?」
男「一言?」
幼「愛してるぜ!とか」
男「言う訳ないでしょ、こんな廊下の真ん中で」
幼「むぅー」
・
・
a組担任「よーし。全員、席に着いたな?」
a組担任「その席が一年間、お前らの席だ!」
a組担任「席替えは、覚えるの面倒だから、しない!」
a組担任「そして俺がお前らの担任だ!宜しく!」
a組担任「それじゃ、すぐに体育館に移動してくれ」
a組担任「入学式終わったら、すぐホームルームな」
a組担任「自己紹介してもらうから、考えとけよー」
・
・
男「男と言います。よろしくお願いします」
ペコッ
ガタッ
生徒a「aと言います。趣味はギター弾き語りで…」
男(しまった…。趣味とか言うべきだったかな?)
生徒b「bでーす。友達も彼女も募集中でーす!」
男(俺の挨拶、ちょっと素っ気無さすぎだったかな…)
女「女と言います。皆さん一年間よろしくお願いします」
男(あぁ、この人も丁寧な挨拶だなぁ…)
女「…」
チラッ
男(何か、見られてる様な…)
女「…」
ジーッ
男「ん…んー?」
女「…」
ジーッ
・
・
幼「幼と言います。◎◎中学出身です」
幼「皆さん、一年間よろしくお願いします」
ペコッ
クラスの男子(超美人だ…)
幼(はぁ…男はちゃんと挨拶出来てるでしょうか)
幼(休み時間になったら、すぐa組に行きましょう)
・
・
幼「男!120分ぶりですねっ!」
男「お前、クラスに打ち解ける努力は?」
幼「まずは男の顔を見てからと思って」
男「まぁ、良いけどさ」
幼「a組はどうですか?」
男「俺、自己紹介でちょっとしくじったかも」
幼「そうなんですか?」
男「ちょっと素っ気無い挨拶しちゃったな」
女「そんなに気にする事無いんじゃない?」
幼「だ、誰ですか?」
男「えと、女さん…だっけ?」
女「そうです。男君」
幼「お、男!これはどう言う…」
女「あなたは?男君のお友達?」
幼「そ、そうです!」
女「初めまして。私は女って言います」
女「男君の隣りの席です」
幼「なんですか!何か用ですか!男は私の…」
男「ストップ!」
幼「…」
男「えっと…女さん、何か用でした?」
女「ちょこっとだけ、ね」
幼「だ、駄目ですからね?男は私と…」
男「幼、ちょっと待って」
男「用を聞きもしないで、門前払いは駄目でしょ?」
男「それに女さんはキチンと挨拶したのに」
男「名乗らないのは失礼でしょ?」
幼「…私の名前は幼。男の幼馴染です!」
女「ごめんね、話しに割って入っちゃって」
男「全然問題ないよ。で、用って何かな?」
女「えっと…間違ってたらごめんね?」
男「ん?」
女「男君って、昔、○○町辺りに住んでた?」
男「あ、うん。住んでたよ」
男「…ん?何で知ってるの?」
女「やっぱりそうなんだ!」
女「私の事、覚えてない?」
男「ん、んー?」
女「その首をかしげる仕草、昔からの癖でしょ?」
女「男君のお母さんの癖だったんだよね?」
男「そうだけど…何故それを?」
女「私の顔に見覚え無い?」
男「ん…んー?」
幼「私、昔は髪短かったです」
男「あぁ!思い出した!」
男「幼稚園までお隣さんだった、女さん!」
女「やっぱり、そうだったんだね!」
幼「!」
女「久しぶりだねー」
男「あぁ、本当に久しぶり。でも、よく俺って気付いたね?」
女「面影あったから」
男「そう?」
女「あるよー。男君、全然変わってないもん」
男「変わって…無いかな?」
女「うん。その首をかしげる癖も、特徴的だし」
男「そっか」
女「私は?全然気付かなかったみたいだけど?」
男「言われて見れば、解るけど…」
男「女さんは…その…綺麗になったよね」
女「え?そ、そうかな?」
男「昔はもっと活発な感じだったでしょ?」
女「ふふ…そうだね。昔はわんぱくだったから」
幼「ちょ、ちょっと待った!」
男「ん?」
幼「男!ちょっと、こっちに!」
グイッ
男「な、何だよ、幼?」
幼「いいから!こっち!」
グイグイッ
女「…」
男「何だよ、急に」
幼「私の存在意義がピンチです!」
男「ん?」
幼「幼馴染は私一人で充分ですよ!」
幼「あと!」
幼「他の人の事、綺麗とか、気軽に言わないで下さい!」
男「あぁ。幼、嫉妬したのな?」
幼「…そうですよっ!私、嫉妬してます!」
幼「…何で今日に限って鈍感じゃないんですか!」
男「心配するなよ、幼」
幼「…でも」
男「大丈夫、俺の心はちゃんとお前に向いてるよ」
幼「…そう言ってくれるのは嬉しいですけどっ」
幼「でもっ!」
男「大丈夫だから、な?」
なでなで
幼「むぅー」
男「ほら、そろそろ休み時間終わるぞ?」
男「それに、自分のクラスに馴染む努力。な?」
幼「解りました…」
男「それじゃ、また後でな」
・
・
幼「嫌な予感しかしない!」
?「え?何か言った?」
幼「あ、すみません、何でもないです」
?「そう?あ、幼さん」
幼「はい?」
?「さっき廊下で話してたのは彼氏?」
幼「え、ええっと…彼は私の幼馴染で…」
?「へぇー。彼、中々良いね?」
幼「はい!超絶カッコ良いです!」
?「ふふっ。好きなの?」
幼「ぶっちゃけ、超好きですね」
?「お付き合いしてるの?」
幼「正式にはまだですね」
?「正式には?」
幼「ちょっと保留中なんです」
?「なんか面白そう!ね、もっと詳しく聞かせてよ!」
幼「グイグイ来ますね、えーっと…」
幼友「私、幼友。よろしくね!」
幼「幼友さん。宜しくお願いします」
幼友「幼友で良いよ。で?で?」
幼「で?」
幼友「保留って事は、告白したって事?」
幼「えぇ、まぁ。はい」
幼友「どっちから?幼さんの方から?」
幼「私の事も、幼で良いですよ」
幼「そうですね、きっかけは私からですね」
幼友「へぇー。で、どうして保留中なの?」
幼「そこは…語れない秘密があるんです」
幼友「ふふふっ。秘密ねぇ?」
幼「そう。秘密ですよ、幼友ちゃん」
幼友「私にだけ、話しちゃいなよ、幼」
幼「そう言う訳にはいきません」
幼「秘密なんですから」
幼友「私はその秘密を解き明かしてみせるよ!」
幼「そう簡単にはいきませんよ?」
幼友「取り敢えずさ。今日一緒に帰らない?」
幼「帰りは男と帰るので…」
幼友「そこは私も一緒に!」
幼「む…拒否したら、尾行されると見ました!」
幼友「う、何故バレた…」
幼「何故か、そんな気がしました」
幼友「私たち、良い友達になれそうね?」
幼「ふふっ。なんかそんな気がしますね」
幼友「と言う訳で、一緒に帰ろうね!」
幼「解りました。男も嫌とは言わないと思いますし」
・
・
?「なぁなぁ、男」
男「ん?」
?「さっき廊下で話してた人は誰だ?女さんじゃない方」
?「お前の彼女か?」
男「あー。あの子は俺の幼馴染だよ」
?「へぇ!あの子、何て名前?」
男「幼だよ」
?「可愛い名前だなぁ!彼氏居るのか?」
男「暫定的な彼氏は居るよ」
?「暫定的?」
男「そう。あ、多分告白とかしても、断られると思うよ?」
男「えーっと…友君だっけ?」
友「そう!友!俺の事は友と呼んでくれ!」
男「あぁ、解ったよ、友」
友「ところで、幼さんの暫定的な彼氏って誰だ?」
男「まぁ、俺なんだけど」
友「何だよ!お前かよ!付き合ってんのかよ!」
男「友、声デカいよ…」
a組担任「ん?お前は…友…だな?」
a組担任「何だ?クラス委員やりたいって事か?」
友「ち、違います!絶対やりたくありません!」
a組担任「それは押すなよ?絶対押すなよ?って意味か?」
友「先生、俺マジでクラス委員とかって柄じゃないっす!」
a組担任「…じゃあ、俺がクラス委員やるか!」
生徒a「いや、先生、ここは俺が!」
生徒b「いやいや!俺が俺が!」
友「じ、じゃあ、俺が!」
a組男子「どうぞどうぞ!」
友「はっ!?しまった!」
a組担任「よし、決定な」
男「災難だな、友」
友「…失敗した。俺、ああいうノリ、大好きなんだ」
男「もうお前の性格、大体解った」
友「何?まさか…超能力者?」
男「解りやすい性格だな、友」
友「竹を割るような性格だと自負してる!」
男「仲良くやっていこう」
友「おう!ところでな…」
女「…」
・
・
幼「男、その人はどちら様ですか?」
男「友だ。さっき友達になった」
友「どうも、友って言います!」
男「で、そちらの子はどちら様?」
幼「幼友ちゃんです。友達になりました」
幼友「幼友です、宜しくね、男君」
友「何でお前が居るんだよ」
幼友「そっちこそ。どっか行ってよ」
友「こっちの台詞だっつーの」
男「ん?二人は知り合いなの?」
幼「そうみたいですね」
幼「今日一緒に帰る約束をしまして…良いですよね?」
男「うん。俺も友と一緒に帰る約束しちゃったし」
友「それじゃ、仕方無いから四人で一緒に帰ろうぜ!」
幼友「仕方なく、ね!」
男「仲、悪いの?」
友「幼稚園の頃からの腐れ縁だ」
幼友「腐れ縁そのものね」
男「仲良しに見えるな?」
幼「すっごく仲良しに見えます」
友・幼友「それはない!」
友「で?二人共、家はどの辺?」
幼友「私たちはバス通学なんだけど」
男「俺は○○町だよ」
幼「私もそうです」
幼友「あぁ…○○町だと、バスも無いもんね」
友「二人とも徒歩通学か?」
男「そう。二十分位かかるよ」
友「微妙な距離だなー」
男「まぁ、3年間頑張って通うよ」
幼「もっと近くに家があれば…」
幼友「ところで男君に質問があるんだけど!」
男「何?」
幼友「こんな美人に告白されて、保留ってどう言う事?」
友「あ!俺も気になる!暫定的ってどう言う意味だ?」
男「あー」
幼「それは私が説明します!」
友・幼友「え?」
幼「私が男に交際を申込みました」
幼「男も私の事を好きだと言ってくれました」
幼「でも、お互いまだまだ子供だと言う事で」
幼「正式にお付き合いするのは」
幼「高校を卒業してからと言う事になりました」
友「お前ばっかじゃねえの?」
幼友「そうよ、馬鹿じゃないの?」
男「馬鹿だなぁ、俺は」
幼「ちょっと、二人とも!」
友・幼友「ん?」
幼「男の事を馬鹿って言わないで下さい!」
友「えー?だって馬鹿じゃん?」
幼友「そうだよ。好き同士なら、付き合っちゃえば良いじゃん!」
男「だよなぁ。俺、馬鹿だよなぁ」
幼「お、男は馬鹿じゃないです!」
幼「私たちの間には、とんでもない秘密が…」
男「別に隠さなくても良いんじゃない?」
幼「駄目です!秘密って所が、燃えるんじゃないですか!」
男「そうか?」
友「頭の悪い俺にも解るように言ってくれ」
幼友「私は頭悪くないけど、解るように言って欲しい」
幼「秘密を軽々しく口には出来ません!」
幼「私たち二人にとって、重大な事なんですから!」
男「そんなに重大かなぁ…」
友「おい、男。俺にだけ、こっそり教えてくれよ」
幼「お…男っ!駄目ですからねっ?」
男「駄目だってさ?」
友「いいじゃねぇか!俺とお前の仲じゃん?」
男「今日会ったばかりだよね?」
友「いいだろー?教えろよー?」
幼友「私もすっごく聞きたいけど…今日はここまでだね」
友「あー。バス停着いちまったか」
男「このバス停なのか。それじゃまた明日な」
友「おう!また明日なー」
幼友「また明日ね」
幼「さようなら、お二人共。また明日」
男「んじゃ、幼、行こうか」
幼「はい、男っ」
男「おい、くっつき過ぎだろ…ちょっと離れてよ」
幼「いいじゃないですかっ」
友「あれの、どこら辺が暫定的なんだ?」
幼友「どう見ても付き合ってるわよね」
男「あのな、幼」
幼「はい、何ですか?」
男「こんな…腕組んで歩いてたらさ」
男「普通にお付き合いしてると思われるんじゃない?」
幼「そこは別に隠さなくて良いんです!」
幼「肝心なのはそこじゃないですからね?男」
男「まぁ、すぐにバレると思うけどなぁ」
?「…」
ジーッ
三週間後
幼「これは非常にマズい状況です!」
幼友「何が?」
幼「a組に、女さんって居るじゃないですか?」
幼友「あぁ、男君と友のやつと3人で話してる事多いみたいね」
幼「私の彼氏が狙われている!」
幼友「そんな事無いでしょ」
幼「そんな事あるんです!」
幼「昨日なんて、お弁当作ってきてたんですよ?」
幼「それは、私がやるはずだったのに!」
幼友「あんたら、付き合ってるんでしょ?」
幼友「弁当くらい作ってくれば良いじゃない」
幼友「何でやらないの?」
幼「う…それは…」
幼友「幼ってひょっとして、料理出来ないの?」
幼「現在特訓中です…」
幼「今まで料理する機会があまり無かったもので…」
幼友「何でも出来る完璧超人の幼に、そんな欠点があったなんてねぇ」
幼「弱点は努力で克服出来ます!」
幼「でも、幼馴染と言う特別な存在感は奪えない…」
幼「努力でどうにかなる物でも無い…」
幼友「何?幼馴染って言葉にそんなに深い意味あるの?」
幼「私にとっては、結構重要な事なんです!」
幼友「重要?…例の秘密ってやつと関係あるの?」
幼「ズバリ、ありますね」
幼友「その秘密とやらも、いい加減話してくれない?」
幼「ま、まだ秘密です!」
幼友「…その秘密ってさぁ」
幼「な、何ですか?」
幼友「幼と男君の苗字が一緒な事、関係ある?」
幼「な、な、何を言ってるんですか?」
幼「わ、私の苗字は、あ、ありふれた、よくある苗字じゃないですか!」
幼友「ま、そうなんだけど…関係あるんだね?」
幼「あ、ありません!」
幼友「いやー。態度で解っちゃうよ、幼」
幼「…あ、あの…」
幼友「どんな謎なのか、大体解った!」
幼「ど、読心術?」
幼友「違うよ。そんなんじゃないよ」
幼友「友達になって、三週間も立つのに」
幼友「絶対、家に呼んでくれない」
幼友「同じ苗字の幼馴染」
幼友「相思相愛なのに、保留中の二人の関係」
幼友「それらを総合して考えられる結論としては…」
幼友「実は二人は一緒に暮らしている…」
幼友「従兄妹同士!」
幼「…」
幼友「どう?当たってるでしょ?」
幼「幼友ちゃんて…探偵志望?」
幼友「そんなんじゃないけど。で?どう?」
幼「残念ながら、違います」
幼友「ありゃ…外れたか」
幼「まだ内緒ですからね!」
幼友「いつか語られる日が来るのかな?」
幼「まぁ…いつかは…言うと思いますけども」
・
・
友「お前さぁ…どうなってんの?」
男「ん?何が?」
友「幼ちゃんと付き合ってるんだろ?」
男「一応ね」
友「くっ…一応とか、お前ふざけんなよなー」
男「ちょっとした約束があるからさー」
友「それいい加減教えてくれよ」
男「幼が良いって言ったらな」
友「幼ちゃん、絶対教えないって言うじゃん」
男「そのうち、解ると思うよ」
友「ちぇっ」
男「で?どうなってんの?ってどう言う事?」
友「…お前、女さんの事、どう思ってんの?」
男「へ?女さん?」
友「幼馴染なんだろ?」
男「幼稚園の時、仲良かったな」
友「幼さんも女さんも、幼馴染なんだろ?」
男「そうなる…かな?」
友「お弁当作ってもらうとか、羨まし過ぎるだろ」
男「幼と友の分もあったじゃん」
友「そうだけどさ」
友「何か、俺の分はおまけって感じじゃね?」
男「そんな事無いだろう」
友「お前さぁ…鈍感って言われない?」
男「ど、鈍感じゃないし」
友「ちょっと自覚しろよ、鈍感」
男「…」
女「男君、友君」
男「ん?何?」
女「今日もお弁当作って来たんだけど…」
友「お!俺の分もある?」
女「もちろんあるよー」
女「友君は食べっぷりが良いから、作り甲斐があるよ」
友「そ、そう?」
女「うん。ふふふ」
男「あ、女さん、今日も幼を呼んでも良いかな?」
女「うん、もちろん。沢山作ってきたから」
男「じゃ、ちょっと呼んでくる」
・
・
幼「く、屈辱…」
男「おい、幼。変な事言わないように」
幼「だって…」
女「お口に合わなかったかな?」
幼「…すっごく美味しいです」
女「良かったー。まだまだあるから、沢山食べてね」
幼「は、はい…」
男「本当に、女さんのお弁当、美味しいなぁ」
幼友「私も勝手にお呼ばれされちゃったけど」
幼友「女さん、料理上手だねー」
友「ホントホント。すっげえ美味い」
友「前にこいつが作った料理なんて…」
幼友「その事は言うな!」
男「お前ら本当に仲良しだな」
友・幼友「仲良くは無い!」
女「ふふふ。皆でお弁当、楽しいね、幼さん?」
幼「そ、そうですね…」
幼(…これは本格的にマズいです)
幼(少々、時期は早いですが、あの計画を実行しないと…)
・
・
コンコン
幼「男!居ますか?」
ガチャ
男「居るに決まってるでしょ。どうしたの?」
幼「夜伽に来ました!」
男「は?」
幼「もう、高校卒業なんて待てませんっ!」
男「ちょ、落ち着け、幼!」
幼「このままじゃ、女さんに…」
男「ん?女さん?」
幼「男の気持ちが、あの人に向くのも時間の問題です!」
男「あのな、幼。ちょっと部屋に入りなさい」
幼「はい!まずは大人のキスからですよね?」
男「違います。良いからそこに座って」
幼「はい」
ペタン
幼「さぁ、私の心の準備は出来てますよ!」
男「違うからな?」
幼「はっ!?まさか既に心は女さんの方に…」
男「それは全然見当違いです」
幼「で、でもっ!最近女さんと話してる事が多くて…」
男「確かに話すけど、それはクラスの他の女子とも話してるだろ?」
男「何で女さんの事だけ、そんなに敵視するんだ?」
幼「あ、あの…女さんは、私なんかと違って」
幼「男の本当の幼馴染で…」
幼「それで私…」
男「幼は自分の事、偽物の幼馴染だと思ってるの?」
幼「お、幼馴染の意味は…子供のころに親しくしていたこと。また、その人」
幼「…私が男と知り合ったのは、小1の時」
幼「女さんはそれより前に男と知り合っていて…」
幼「私は…私はっ!」
男「幼…」
幼「たまらなく不安になるんですよっ!」
幼「私が唯一、他の人より優っている点!だと思っていた…」
幼「幼馴染と言うポジションに、私よりぴったりはまる人が!」
幼「焦るのも仕方無いと思いませんか?」
幼「私は…」
男「あのなぁ…幼」
男「島から出てきて、まだ1ヶ月足らずだぞ?」
男「今からそんなんでどうするんだ」
男「俺は幼の事、信じてるけど、幼は俺の事信じてないのか?」
幼「そ、そんな事はありませんっ!私は男の事を信じて…」
幼「信じて…ます、けど…」
男「俺は一度好きだって言った人を、そんな簡単に見限ったり」
男「別の人をホイホイ好きになったりしないよ」
男「俺を信じてくれよ」
幼「解りました…」
幼「本当に卒業するまで、そう言う事、しないんですね?」
男「両親に言われただろ?」
幼「そうですけど…」
男「解ったよ、そんなに不安なら…」
ぎゅっ
幼「あうっ…」
男「これ位ならセーフでしょ」
男「な?これで少しは安心出来た?」
幼「…はい」
ぎゅうっ
男「ほら、もう夜も遅いし、自分の部屋に戻りな」
幼「はい…」
幼「お休みなさい、男」
男「お休み、幼」
バタン
幼「…」
バタン
・
・
幼友「何か、最近元気無いね、幼」
幼「そんな事ないですよ、幼友ちゃん」
幼友「男君が友のやつに付き合わされて」
幼友「クラス委員の仕事やらされてるから?」
幼「い、いいえ、違います」
幼友「そう?」
幼「ほ、本当です」
幼友「なら良いけど。私今日は部活だからさ」
幼「は、はい、いってらっしゃい、幼友ちゃん」
幼友「頑張ってくるよ!」
幼友「一年でレギュラー取るぞ!」
幼「頑張って!」
・
・
幼「はぁ…男は頑張っているでしょうか…」
幼「頑張っているんでしょうね…」
幼「先に帰っててと言われましたが…」
幼「高校生になって二ヶ月にもなるのに…」
幼「特にどきどきするイベントがある訳でも無し…」
幼「それになんだか最近、女さんが私を見る時の目つきが」
幼「キツくなって来ている様な気がします…」
幼「毎日お弁当も作ってきてくれるし…」
幼「やっぱりこのままじゃ、本当に…」
幼「あ!今日は帰って夕食を作ってみましょうか!」
幼「…でも、男が居ない間に料理はするなと言われてしまったし」
幼「…」
幼「はぁ…もう帰りましょうか…」
女「幼さんっ」
幼「は、はい!何ですか?」
幼(ビックリした!)
女「一緒に帰りましょ?」
幼「は、はい、良いですよ。でも今日、男は…」
女「男君じゃなくて、幼さんにちょっと話したい事があるんだー」
幼「は、話しですか?何ですか?」
女「まぁまぁ…とりあえずマックでも行こうよ」
幼「よ、寄り道はちょっと…」
女「すぐ済むから」
女「帰り道も途中までは一緒なんだし」
女「ね?良いでしょ?」
幼「う…はい…」
幼(何を言われるんだろう…)
・
・
幼「…で、何のお話しですか?」
女「少しおしゃべりでもしよう?」
女「この公園ね、男君とよく一緒に遊んでた公園なの」
幼「そ、そうなんですか」
女「良い公園でしょ?」
幼「そうですね。景色が良いですね」
女「町を一望出来るからね」
女「幼さんに質問があるんだけど」
女「あ、嫌だったら答えなくていいからね?」
幼「はい、何でしょう?」
女「私たちが入学して二ヶ月ちょっとだけど」
女「幼さんも男君も、何名かの人に告白されたって本当?」
幼「あ、あの…えーと」
女「答えにくい?無理しなくてもいいよ?」
幼「男も私も、告白はされましたね」
幼「お断りしましたけど」
女「何でお断りしちゃったの?」
幼「あの…男はどうか知りませんけど」
幼「良く知りもしない人から、好きって言われても」
幼「私は困ってしまうだけなので…」
女「お断りした理由はそれだけ?」
女「本当はもっと別に理由があるんじゃない?」
幼(う…グイグイ来る…ちょっと怖い)
幼「あの…私、家事をしなきゃいけないので」
幼「あまり遅い時間になると困るんです」
幼「なのでそろそろ…」
女「家事…ね」
幼「何ですか?」
女「それじゃあ、もうぶっちゃけちゃおうか!」
女「私の本音、言っちゃうよ?」
幼「は、はい」
女「実は私、今、好きな人が居てね」
幼「…」
女「その人、とっても素敵なんだよね」
女「凛々しくて、勉強も運動も出来て、誰にでも凄く優しい人」
女「一人暮らしらしいんだけどね」
女「どうも一緒に住んでる人が居るみたいで」
女「…ね、幼さん、私が言いたい事、解る?」
幼「な、何の事ですか?」
幼「わ、私も男も、一人暮らしですけど?」
女「…私、男君の名前なんて出してないけど?」
幼「!?」
女「やっぱり一緒に住んでるんだね?」
幼「だ、だとしたら、どうだって言うんですか?」
幼「私と男は…その…特別な関係で…」
女「やっぱり…そうなんだね…」
女「はぁ…絶対運命の人だと思ったのになぁ」
女「失恋確定…かぁ」
幼「そ、そうです!失恋は確定です!」
幼「私は男の事に関しては一歩も譲るつもりはありません!」
幼「たとえ女さんが男の幼馴染で」
幼「幼稚園の頃、結婚の約束とかしてたとしても!」
幼「私が男と一緒に過ごして来た9年間は!」
幼「無かった事には出来ないですから!」
幼「だから男の事は諦めて下さい!」
女「ちょ、ちょっと待った!」
幼「な、何ですか?反論でも?」
女「あの…私が好きなのは、その…」
女「幼さんの方、なんだけど…」
幼「はぃ?」
女「私、昔から男の人より、女の人の方が好きで…」
幼「なっ…なっ…えっ?」
女「知り合ってから、二ヶ月ちょっとだけど」
女「入学式の日、男君と登校してる幼さんを見て」
女「完全に一目惚れしちゃったんだー」
女「ね、男君とはもうその…深い関係なの?」
女「一緒に住んでるんだもん、当然そうだよね?」
幼「なっ、何を言ってるんですか!」
幼「私たちは清いお付き合いです!」
幼「高校卒業するまでは、そういう事禁止なんです!」
女「どうして?好き同士なら、そういう事あっても良いでしょ?」
女「一緒に住んでるなら、なおさら!」
幼「それは…両親と約束したんで…」
女「約束?」
幼「2人暮らしを認めるけど、高校卒業するまでは、そう言う事は無しで」
幼「卒業して、男の就職なり進学が決まったら、結婚でもなんでもして良いって」
女「ん?それは男君のご両親との約束?それとも幼さんの?」
幼「どっちも…ていうか、私たち兄妹なんで…」
女「!?」
幼「あ!兄妹って言っても、義理のですけど」
女「!!」
女「あの…私が言うのもアレだけど…」
女「義理とは言え、兄妹で恋愛なんてありえないんじゃない?」
幼「ホントに!女さんだけには言われたくないです!」
幼「それに私たちは義理の兄妹なんで、ちゃんと結婚も出来ます!」
幼「女の子同士の方がその…アレです!」
女「ちょ、声が大きいよ、幼さん」
幼「あ…すみません」
女「…私の失恋は確定かな?」
幼「わ、私が男以外の人に心奪われるなんて、ありえません」
幼「すみませんが、お断りさせて頂きます」
女「女同士も良いものだよ?」
幼「イヤです!」
幼「話しはこれで終わりですか?」
女「これ以上は何を言っても逆効果みたいだね」
女「今日はもう帰りましょう」
幼「それにしても、女さんがその…」
幼「そう言う人とは、思いもよりませんでしたよ」
女「私の視線に気付いてくれてると思ったのになぁ」
幼「視線には気付いてましたけど、敵視してるものだとばかり…」
女「愛情が多すぎたか…」
幼「ちょっと怖いですよ、女さん」
女「私、まだ諦めないからね?」
幼「えー…絶対無理ですから…」
女「最初は皆そう言うんだよ…」
幼「その…狩人みたいな目が怖いんですよ!」
女「フフフ」
幼「あ!言っておきますけど、私と男が兄妹って事は内緒でお願いします」
女「黙ってて欲しければ、その凛々しい唇で、私の口を塞げば良いじゃない」
幼「イヤです!」
・
・
男「へぇ…そんな事があったんだ」
幼「もう!男の幼馴染は一体どうなってるんですか!」
男「女さんて昔から男の子と一緒に遊ぶ事が多くて」
男「男の子みたいな子だったからなー」
幼「本当にキスされるかと思いましたよ!」
幼「絶対に男に気があると思ってたのに…」
男「まぁ、俺に気が無いって事は、割と最初から解ってたけどな」
幼「どうしてですか?」
男「女さんって俺と喋ってても幼の事しか見てなかったし」
男「教室で話してる時も、幼の事ばっかり聞いてきてたし」
幼「男!そう言う事は先に…」
男「まぁ、いいじゃないか」
幼「お、男は私が女さんとお付き合いしても良いって言うんですか?」
男「そんな事にはならないと思ってるからさ」
幼「え?」
男「前にさ」
幼「はい?」
男「急に自分の事を義理の妹じゃなくて」
男「幼馴染として見てくれって言い出しただろ?」
幼「はい。あれから、男は私の事をちゃんと…」
幼「一人の女性として見てくれるようになりましたもんね」
男「あれから一年も経ってないけど」
男「まぁ、その前に九年間一緒に過ごした時間は」
男「無かった事には出来ないしさ」
男「俺は幼の事、ずっと好きで居られる自信あるし」
幼「…もう!男は!まったく!」
幼「天然ジゴロですか!まったく!」
男「こんな事言うの、幼にだけだよ」
幼「…もう」
ぎゅっ
男「…よしよし」
なでなで
男「心配しなくても、大丈夫だよ」
幼「そうですね、私たち、大丈夫ですよね」
幼「こんなにお互いの体温が愛しく感じられるんだから」
男「そうだな」
男「…俺、普通高校に進路変更して良かったよ」
幼「え?」
男「工業高校に行ってたら、一緒の時間、もっと少なかっただろうし」
男「やっぱり幼と一緒に、思い出たくさん作りたいし」
幼「それじゃあ、説得してくれたお父さんに感謝ですね!」
男「そうだな。父ちゃんには頭上がらないな」
男「大好きな人と二人きりで」
男「三年も一緒に暮らせるんだから、さ」
幼「…ちょっと、キスしても良いですか?」
男「ん…んー?そう言うのは…」
幼「私の中の、男の事が好きって気持ちが一杯で…」
幼「我慢出来ません!お、お願いします…」
男「…」
ちゅっ
男「はぁ…二ヶ月でこれだ…」
男「父ちゃんとの約束、守れるかなぁ」
幼「男の事、信じてますからね?」
幼「きっと立派に約束を守り抜いて、私と結婚してくれるって!」
男「ん…んー?俺はもちろん頑張るよ」
男「でも幼の方が…なぁ?」
幼「もうっ!」
ぎゅっ
幼「…大好きですよ、お兄ちゃんっ!」
・
・
・
幼「さ、学校に行きましょうっ!男っ!」
男「おう」
男「ご機嫌だな、幼」
男「最近元気無かったのに」
幼「だって、昨日の夕方まで…」
幼「女さんに男を取られちゃうと思ってましたからね!」
幼「昨日の夜、男がキスしてくれたから!」
幼「今の私は元気一杯ですっ!」
男「そりゃあ良かったよ」
男「でも、ああ言うのは、しばらく駄目だぞ?」
男「昨日のは特別なんだからな?」
幼「解ってますよっ!」
女「キスも自由に出来ないんじゃ、大変じゃない?」
男・幼「!?」
女「幼さん、私と付き合えば、毎日イチャイチャ出来るよ?」
幼「女さんっ、どこから聞いてたんですか?」
女「二人がアパートから出て来た所から」
幼「女さん、やっぱりちょっと怖いですよ」
女「怖くない、怖くないよー」
女「だから、私とお付き合いしてください?」
男「駄目です。義理の兄としても、暫定的彼氏としても」
男「幼の事は渡せません」
幼「男…」
男「女さん、本当にそうなんだね。ちょっとビックリ」
女「もう隠す必要も無いからね。これからはガンガン行くよ!」
女「ね、幼さん、私ともキスしてみない?」
幼「絶対にイヤですっ!」
男「絶対ダメです!」
女「一回!一回だけで良いから!」
女「口がダメなら、ほっぺ!もしくはおでこでも良いから!」
幼「ど、どこもイヤですっ」
男「ちょっと…女さん、グイグイきすぎでしょ」
男・幼(三年間、無事で居られるかな…)
おわり
これで終わりです
誰か読んでくれたら嬉しいです
このスレは
義妹「私は幼馴染と言う事に?」 男「何言ってんの?」
義妹「私は幼馴染と言う事に?」 男「何言ってんの?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1353323656/)
の続きでした
次スレは
幼馴染「あんた、いい加減にしなさいよ?」 男の娘「え?」
ってタイトルで立てると思います
では。
待ってたかいがありました
いつもお疲れ様です
いつも通りのクオリティで安心した
乙
敬語幼馴染かと思ったら
敬語義妹の続きだったか
最高じゃないか
朝っぱらから読みふけった
オッツオツ
良かったよ、幼馴染の人
…次、オトコノムスメ?オトコノコ?
乙
二人が兄妹だってのは途中で予想できたのに、あの話の続編だと気付けなかった。不覚
>>117
オトコノコ、だね。女の子の格好してる可愛い男の子を指すジャンル
>>118
それは女装男子であって男の娘ではない
自分から女装してるのは男の娘じゃないと自分は思っている
>>119
うーん、でも男の娘キャラの代表格には自分から女装してるのもいるよ?
絶対条件が「可愛い」で、あとは厳密な定義はないと思うな
>>1乙
続きが読みたいんですけど
是非宜しくお願いします
読んでくれた人、本当にありがとうございます
>>121
需要あるなら、書いてみます
juyounaraarukarakakeyokasu死ね
死ね、じゃねぇとテメェのケツマンコにチンコぶちこんで犯して殺す
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