男「例え運命に抗おうとも」(88)
始まりは至って簡単な理由だった
明晰夢
夢の中で自由に動けるという代物
夢の中なら自由自在
魔法を使うことだって、空を飛ぶことだってできる
…そう、好きな子とhすることだって
そんな理由だった
なんにせよ簡単なことでは無いらしいので、ダメもとで試した
それが…この全ての始まりだった
~4ヶ月前~
友「どうだ男、調子の方は」
男「そうだなぁ、一回だけ軽く意識できたかな」
友「お!その調子だ、共に頑張ろうな」
男「お前はどうなんだ?」
友「完全にモノにしたわけじゃないが、3割くらいの確立で成功するようになってきた」
男「すげーなー」
友「俺は夢日記を半年やってるからな」
男「俺も頑張るわ」
友「おう、その調子だ」
夢日記
自分のその日見た夢をただ書き記す物
これを行うことで夢の特性を掴み、夢の中で夢と認識しやすくするのだとか
友は明晰夢を俺に教えてくれた親友だ
あいつは俺より2ヶ月程前より夢日記をつけはじめ、成功率が着々と高くなっているらしい
俺もまた、友に習い夢日記をつけ始め4ヶ月が経とうとしていた
最近ようやく一度、夢を夢と認識することに成功した
夢と認識すると、自然に目が覚めてしまう
と、友は言っていた
そこの調整が難しいのだとも
友の言っている事は確かで、先に述べたように俺が成功した時も、はっきり認識した時点で目が覚めてしまった
しかし、あいつは小さな進歩は大きな一歩と、励ましてくれた
本当に良いやつだ
先生「~で、あるからここはキルヒホッフで~」
男(眠い…)
男(あ、そうだ)
男(目を閉じて…呼吸に意識を…)
男(1…2…3…4…5…)
男(浅く…浅く…)
男(11…12…13…14…15)
男(…)
男「…zz」グゥ
キーンコーンカーンコーン
男「…!」ハッ
男「…ダメだったかぁ」
友「男~帰ろうぜ」
男「え?まだ5限め…」
友「なにいってんだ?もう終わったぞ?」
男「そ、そうなのか…」
男(あっれ~?)
友「おい、早くいくぞ」
男「ああ…」
友「おい、なにしてんだおまえ?」
男「え?これお前がやれって」パチン…パチン
友「そんな事言ったっけ?」
男「…」
男(まさか)
男「ファイア!」パチン
ボッ!
男「おお!成功だ!」
友「なんだよお前、魔術科とってたかぁ?」
男「ああ、まあな」
男(お、おもしれー)パチン…ボッ
男(てことは…)
男「かぁ…めぇ…はぁ…めぇ…」
男「はあっ!」ガタタン
シーン
男「あれ?」
クスクス
友「バカ…」
先生「男?どうした?」
男「え…いや…ちょっと…」
先生「寝るのは構わんが…流石にその掛け声は大きすぎるぞ」
先生「なんだ、かめはめ波でも撃とうとしたか」
男「や、やだなぁ先生…」ギクッ
先生「まあ、いい」
先生「えーと、で、この問題は~」
キーンコーンカーンコーン
友「男~帰ろうぜ」
男「え?ああ…」
友「なんかあったのか?」
男「い、いや少しデジャヴが」
友「おお?デジャヴってのは明晰夢の最上位と言われる、正夢の前兆とも言われてるらしいぞ」
男「いや…これは多分普通のデジャヴだと…」
友「男ぉ~そうやって否定しない方が成功しやすいぜ?」
友「もっと自分を肯定して、自信を持てよ!」
男「お、おう…」
正夢
いや、いくらなんでも指パッチンで火がでてもらっちゃ困る
指パッチンも友から教わった方法の一つだ
"自身にクセを持たせる"
それも、夢の中かどうかを確認する方法だそうだ
例えば俺の場合、思いついた時に指パッチンをすることでクセをつけている
だから、夢の中でも指パッチンを行い、それを鍵として明晰夢に入る事ができたのだろう
友はそれを"キーアクション"と呼んでいた
友「で、どうなんだよ」
男「え?」
友「ほら、お前授業中に叫んでたじゃん」
男「…ああ!」
男「入れたんだ!明晰夢に!」
友「おお!おめでとう!今夜は赤飯だな」
男「指パッチンして、火だせた」
友「いいよなあ、魔法….」
男「なんか夢の中でもお前に助けられた」
友「?」
男「夢の中のお前が指パッチンについて質問してきたんだ、だから夢かと疑う事ができた」
友「ははっ、俺大活躍じゃん」
男「でも…」
友「わかる、調子乗ったら目が覚めたんだな」
男「おう…」
友「はしゃぎすぎないことが大切だな」
友「最初のうちはテンション上がっちゃうけど、あげないように気をつけて」
友「とにかく、フーンって感じで好きなことすればいい」
男「ドライになれば良いんだな」
友「そゆこと」
男「よし、今日の夜はがんばる」
友「頑張らない事を頑張れ」
男「…」
頑張らない事を頑張る
矛盾しているようで、的を得た言葉だと思う
寝るのに躍起になれば眠気が遠ざかる
明晰夢も然り
躍起になればなるほど明晰夢も遠ざかる
その夜
俺は力を抜いて、ただひたすらに頑張らない事を頑張った
男「…ん?どこだここ?」
男「…ガラスの…壁?」ペタペタ
ボヤァ…
男「お、なんか映り出した…」
「で、どうなんだよ」
「え?」
「ほら、お前授業中に叫んでたじゃん」
「…ああ!」
「入れたんだ!明晰夢に!」
「おお!おめでとう!…」
男(今日の会話か…というか、今回はナチュラルに明晰夢に入れたな)
「そゆこと」
「よし、今日の夜は頑張る」
「頑張らない事を頑張れ」
「…」
男(あ、このまま帰宅して…)
男(そうそう、飯食って…風呂…)
男(で、寝る…と)
男(…)
男(あれ?朝…?)
「おーす」
「おはようさん」
「昨夜はどうだったんだ?」
「それが…不思議な夢をみてな」
「ほほう、明晰だったか?」
「ああ、ナチュラルに入れたよ」
男(…流れからして…明日する…未来の会話?)
ブゥゥゥウン
バシャッ
「ぐおっ!」
「ぎゃっ」
「…しまった、これ夢で見たわ」
「見たなら教えてくれよ…」
「忘れてた、悪いな」
「にしても予知夢…」
ピピピピピピ
男「あ?」
ピピピピピピ
男(ああ、目覚ましか…)
男(うまくいったのになぁ…)
男「…」パチッ
男「…あれ?どんな夢見たっけ…」
男「なんか…不思議な…あれ?」
男「ガラス板があって…」ブツブツ
<オトコーチコクスルヨー
男「あ、はーい!」
男(夢日記どうしようかな)
目を覚ました途端忘れる
よくあることだと思う
それを防ぐための夢日記でもある
が、なぜ忘れてしまうのか
なぜ、覚えていられないのか
前後の記憶が飛ぶ事も無く、部分的にナイフで切ったようにスパッと消える
そう、ナイフで人為的に切られたように…
この時のこの現象の重みを、俺は、いや、友だって知らなかった
第一章「発端」
了
おもしろい
友「おーす」
男「おはようさん」
友「昨夜はどうだったんだ?」
男「それが…不思議な夢をみてな」
友「ほほう、明晰だったか?」
男「ああ、ナチュラルに入れたよ」
ブゥゥゥウン
バシャッ
男「ぐおっ!」
友「ぎゃっ」
男「…しまった、これ夢で見たわ」
友「見たなら教えてくれよ…」
男「忘れてた、悪いな」
友「にしても予知夢なんてすげーな」
男「ああ、だけど…部分的にしか覚えてなかった」
男「今の出来事で全部思い出したけどさ」
友「へー、案外お前才能あるのかもな」
友「超能力の…さ」
男「ばかじゃねーの?」
友「なんだよ褒めてやってんのに」
友「だが、どうやって見たんだ?」
男「どうやってって?」
友「俺が調べて知ってる範囲では、予知夢には3つの視点があるんだ」
男「3つの視点…」
友「ゲームみたいな感じでな」
男「あー、fpsと…tps…?」
友「あとはrpgみたいな天上視点とでもいうのか」
男「遠巻きなtpか」
友「そうそう」
おもしろいだろ?
と、友は語った
まずはtp
サードパーソンこと三人称視点のことだ
自身の少し後方から傍観しているイメージだそうで、足元の物を拾う時などは自分が邪魔で見えないこともあるとか
そして、fp
ファストパーソン、つまり一人称視点のこと
今現在の自身と同じ感覚だ
自分の姿は、胸部より下しか見えない
最後に、友曰くrpg視点
天から見下ろす感じで、自分を除く周りの姿や、周りがよく見渡せるらしい
それぞれの視点により、体感、傍観、客観
と、なっていて、発生した現象の規模が分かる
らしい…
あくまで友が教えてくれた事なので、事実かどうかは不明だが
fpの場合、自分やその他数名を巻き込む小規模な出来事を見やすいとのこと
tpの場合、テロや地震などの自分やその他大勢を巻き込む災害レベルの事を見やすいらしい
そして、rpg視点は自分を除いた大人数の災害を見やすいらしい
あくまで自称超能力者の話なのでわからないとも友は言っていたが、納得はできた
男「ふぅ…」
男(やっと一日が終わった)
男「…」
男(やることないな…)
男(…そうだ、明晰夢の練習でもするか)
男(たしか…タイマーを30分に設定して…)
男(高速で寝る!)
男(呼吸…集中…1…2…3)
男「…zz」
男「…??」
男(目の前に俺がいる)
男(夢か!)
男(…なんか斬新だなこの視点)
男(よし、ゆっくり動いてみよう)
男(右手…左手…足も…)
男(よし、いいぞいいぞ)
男(移動だ)
男(ゆっくりゆっくり…)
ゴンッ
男(お?壁?)
男(いや、ガラスか…)
ボヤァ…
「友!」
「どうした男」
「駅前行くぞ!」
「何で急に…」
「ゲリラライブアイドルちゃんがきてる!」
「そんなバカな…」
「はやく!もうすぐはじまっちまう!」
「おい…流石にこんなど田舎じゃ…」
「本当だって!明晰夢で見たんだ!」
「…いってみるか」
「おう!」
「みんなー!アイドルのー!ゲリラライブ!はじめるよーっ!!」
「ほらな」
「ま、まじかよ…」
「お前…目覚めたな」
「え?何に?」
「超能力に…」
「そん…」
ピピピピピピピピピピ
男(うおっ…アラームか…)
男(…覚えとくぞ…明日駅前で…)
ピピピピピピピピピピ
男「ゲリラライブ!」ガバッ
男「明日駅前でゲリラライブ!」
男「…」
男(覚えてる…)
男(…よし、忘れないうちに夢日記…)カキカキ
男(時間はある、何回も試すぞ!)
男(アラームセット…)
男(呼吸…集中…)
男(……)
男「…zz」グゥ
男「…!」ハッ
男「…」チラッ
携帯「アラーム34件」
男「…」
男(朝になっちまった…)ズゥーン
男(いいや…今日はアイドルちゃんのゲリラライブだ…)モソモソ
男(…学校いこ)
男(
男「おはよー…」
友「どうした、浮かないな」
男「昨日帰ってから明晰夢の練習してたら…」
友「寝ちゃって朝になったか」
男「yes…」
友「ま、ドンマイだ」
男「おう…」トボトボ
キーンコーンカーンコーン
キリーツ
レーイ
チャクセーキ
男(はぁ、無駄に眠いな)
男(…よーし、どうせ英語なら余裕だし寝るか)
男(呼吸…集中…1…2…3…4…5…)
男「…zz」グゥ
生レス乙
男「…またガラスか」ハァ
男「今思えば周り真っ暗で怖いな…」
ボヤァ
男「ん?これは…昨日のつづき?」
「みんなありがとー!」
「じゃーつぎは…」
ビュオオオオッ
ガタッ…ギギギギギギキギ
「えっ」
アイドルチャンアブナーイ
「きゃーーっ!!」
バターン
「おい!やばくないか!」
「救急車呼べ!」
男(…強風でセットの下敷きに…)
男(可哀想なアイドルちゃん…)
男(そうか…あそこの金具が緩んでたんだな)
男(…もし本当だとしたら…救えるのか…?)
男(明晰夢で…人助け…)
キーンコーンカーンコーン
明晰夢で人助け
そんな事できたらスーパーヒーローだ
一世一代のチャンスに俺の胸は踊った
なんたって救うのはあの有名なアイドルちゃんだ
男ならだれしも彼女に恋心を抱くだろう
しかし、金具を直した程度では救ったなんて意識してもらえない…
俺の思考は人助けから、いかにギリギリで救うかにシフトしていった
友「はーっ!やっと終わった」
男「友!」
友「どうした男」
男「駅前行くぞ!」
友「何で急に…」
男「ゲリラライブアイドルちゃんがきてる!」
友「そんなバカな…」
男「はやく!もうすぐはじまっちまう!」
友「おい…流石にこんなど田舎じゃ…」
男「本当だって!明晰夢で見たんだ!」
友「…いってみるか」
男「おう!」
アイドル「みんなー!アイドルのー!ゲリラライブ!はじめるよーっ!!」
男「ほらな」
友「ま、まじかよ…」
友「お前…目覚めたな」
男「え?何に?」
友「超能力に…」
男「そんな馬鹿な」
友「いや、でもこれで2回めだぞ?」
男「まあ…」
友「うぬぬ、抜かされた気がする」
男「明晰夢…なのかなぁ」
友「どういう事だ?」
男「夢の中で好きに動ける訳じゃないんだ」
友「…どういう事だ?」
男「夢の中で俺は、ガラス越しに未来の出来事を見るって感じなんだ」
友「…調べてみるよ」
男「ありがとう」
ス・キ・ス・キ・♪
あなたーがっ!
てーてれてーれてれー
友「あ、歌始まったな」
男「ああ…」
男(2曲名終わったすぐあと…)
アイドル「みんなありがとー!」
アイドル「じゃーつぎは…」
ビュオオオオッ
ガタッ…ギギギギギギキギ
アイドル「えっ」
アイドルチャンアブナーイ
男「しまった…っ!」サッ
友「おい、男!」
アイドル「きゃーーっ!!」
男「間に合わな…」
バターン
キュウキュシャ!ダレカ!
ワーワー
ワーワー
男(ダメ…だった…)ガクッ
友「男!」
男「…」
友「お前…今のもわかってたのか?」
男「…」コクン
友「…」
運命
運ぶ命と書く
幸いアイドルちゃんの命に別状は無かったが、背中に軽い打撲を負って1週間の入院となった
あの時、俺が行こうとするのを大勢のファンが邪魔をした
夢の中ではそんなに人は居なかった筈なのに
この時、既に俺は体験していたのだ
運命は変えられない
たとえ、どんな残酷な結末であっても
カチリ、カチリと一歩ずつ
運命は歯車を回す
第二章「重たい何か」
了
こわい期待
友「はよー」
男「おはよさん」
友「アイドルちゃん退院したらしいな」
男「ああ…」
友「…お前はわるくねぇって」
男「…」
友「いつまで引きずってんだよ…だいたい、怪我した事でアイドルちゃんも更に有名になったじゃないか」
友「1週間の入院は辛かっただろうけど、後遺症も、ないんだし±0じゃないか?」
男「うーん…それも…そうか」
友「そうだって」
友「それより最近は見ないのか?明晰夢」
男「あれからさっぱり入れなくなった」
友「波があるのかね」
男「さあ…」
男「友はどうなんだよ」
友「ああ、おれは順調かな」
友「飛ぶことくらいはできるようになってきた」
男「へー、すげぇな」
友「まあ、規模の凄さはお前のが上だけどな」
男「…予知夢か」
友「ああ、あれから少し調べたんだが、お前見たいに映し出されるのを意識をもって傍観するって前例は見つからないな」
男「そうか…」
友「なんで残念そうなんだよ、お前が世界で初めてのタイプってことだぞ?」
男「ん~…」
友のいう事は至極正論だ
だが、俺はまだ引っかかるものが残っていた
夢の中での俺の立場は観測者
映像をみて、感じる(考える)ことはあっても決して体験はしない
あくまで、接点のない観測者の立場なのだ
なんとも形容しがたいこのモヤモヤした感情
何か、何かが引っかかる
予知夢、と呼ばれる物
確かに俺は実際起きる事を事前に夢で確認することができる
だが、アイドルちゃんの時
なぜか夢と観客の量が違った
もしも、完全に予知できているのなら、現実と夢が食い違う事などあり得ない筈なのだ
俺がこの時感じたモヤモヤは、凄く、凄く大切なキーワードだった
男「ただいまー…」
シーン
男「だよなぁ、誰も居ないよなぁ」
男(…なんか釈然としない)
男(なんなんだろう、このモヤは)
男(…)
男(観測者の立場…いうなれば神か)
男(神目線…だとしたら、俺は夢の中では神ってことか?)
男(…宗教的に考えれば、神が見る筈であろう物を盗み見してるってことになるのかな)
男(…俺の貧弱な頭ではこれ以上考えつかん)
男(はぁ…)
男(…)
男「…zz」グゥ
男「…ガラスか、久しぶりだな」
ボヤァ
「えー、本日は悲しいお知らせが…あります」
「知ってる人も居るかも知れませんが、このクラスのdqn君が、先日バイク事故に遭いました」
エー…
ザワザワ
「えー、バイクで信号を無視した結果、トラックに跳ねられ…えー…昨夜死亡が確認されました」
「なんと言ったら良いかわかりませんが、全員で黙祷を捧げたいと思います」
「黙祷」
男(dqn死んだのか…)
男(そもそもあいつ無免だろ…)
男(…でも、何があったんだろう)
男(あいつは悪さはすれど、赤信号に突っ込むなんて無謀なことする奴じゃ…)
モヤヤヤヤ
男(あれ?ガラスの景色が変わって…)
「さびーっ」
男(dqnだ!)
「っち、赤かよ…」キキッ
男(…もし、これが本当の出来事だったら…)
男(俺は、過去を見てる…?)
「おし、変わったな」
ブゥーン
ポロッ
男(何か…落ちた?)
グオオォォオオオオオン!
「あ?」
キャキャキャキャキャ
ガシャーーーーン
男(え…先生は赤信号に"dqnが"突っ込んだって…)
男(でも今のは…)
ピピピピピピピピピ
男「…」チッ
男「はい起床ー!」
男「…」
男(あれが本当なら…)
男(…ともあれ学校だ)
友「dqnが?」
男「…ああ」
友「いくらなんでもそれは…」
男「俺もそう思いたい」
男「だけど…dqnの奴…まだ来てないんだ」
友「…」
男「昨日はそれだけじゃ…なくてさ」
友「?」
お察しの通り、夢と同じ展開でdqnの死を告げられた
"dqnが"赤信号に突っ込んだ…と
そして俺は友に全てを話した
友は全て信じた訳じゃなさそうだったが、dqnの落し物を探しに俺と共に現場に向かうことになった
友「ここらしい」
男「…ああ、ここだ」
友「…」
男「dqnはここの道を走って….」スタスタ
男「ここの信号で止まった」ピタ
友「そして…」
男「ああ、発進した時に…この辺りに何かを…」
キラッ
男「…?」
友「これは…女物の腕時計…か?」
男「ああ、でもなんでこれをdqnが?」
友「さぁ…割れて壊れてるしな」
男「あ、触らない方がイイかも」
友「なんでだ?」
男「警察呼んだ時、信ぴょう性薄くなりそう」
友「え、えっ?」
男「dqnが突っ込んだってのはおそらくトラックの運転手が証言しただけだろう」
男「ここの信号…時間で赤青切り替えるんだ」
男「だから、現在の時間からこの腕時計の時間までをその時間の間隔で引いて行けば、本当にdqnな突っ込んだか分かるんじゃないか?」
友「…マジで言ってんのか?」
男「ああ、大マジだ」
友「…付き合うよ」
男「サンクス」
国家権力を訪ねるのはなかなか緊張する
頭の硬い奴なら子供の戯言と取り合ってはくれなかっただろう
だが、幸いにも俺が声をかけたのは凄く物分りの良い優しいお巡りさんだった
要検証という訳で、腕時計を落としたのは本当にdqnか、また、腕時計の持ち主
そして時間に対しての調査が行われる事となった
友「逮捕だってさ」
男「え?」
友「トラックの運転手だよ」
男「おお…」
友「偽証罪とかなんや感や諸々プラスで懲役刑だそうだ」
友「お前のお手柄だよ」
男「…これでdqnも浮かばれるかな」
友「多分な…」
友「…にしても、予知夢だけじゃなく過去の現象まで見れるとは」
男「俺が1番驚いてるところだよ」
友「まてよ…過去が入るとなると…」ブツブツ
男「?」
友「男、わりぃちょっと調べ物してくるわ」
男「お、おう、頑張れよ」
友「ごめんな!」タタタタ
男「なんだったんだ…?」
男(…帰るか)
男「…ただいまー」
男「…」
男「ふぅ」
男(…俺の力で…dqnは浮かばれたのだろうか)
男(目撃者の居ないはずの事故)
男(俺は…未来を改変した事になる)
男(…許される事なのだろうか)
男(…)
男「…zz」グゥ
男「…またかぁ…」
男(嫌なわけじゃないが…)
ボヤァ…
「ようやく見つけた、これが男の力なんだな!」
男(…友?)
「ははっ、今すぐ教えてやろう!あいつの家は…こっちか」
男(俺の家へ向かってるのか)
「信号は…大丈夫、車来てないな!」
ブロロロロロ
男「あぶねぇ!止まれ!」
「えっ?」ピタッ
ブゥーーーン…
「あ、あぶな…」
「今のは…一体…」
男「…!」ハッ
男「なんだ今の…まるで友に聞こえたみたいだった…」
男「そんなバカな…」
男「今のは…今のはだって…」
ピーンポーン
男「!!」
男「は、はーい!」
「男ー!俺だー!」
男「あ、い、今開ける!」
ガチャ
友「おす」
男「…いらっしゃい」
友「なんだ、あんまり驚いてないのな」
男「…諸事情ありまして」
友「詳しく聞こう」
アカシックレコード
友はそう言った
宇宙、または別の高次元に存在するとされる、全ての生物の未来、過去、現在が記された膨大なデータベース
稀に、そのデータベースにアクセスできる人間が居るらしい
彼らは時に預言者と呼ばれたりもする
友はお前はアカシックレコードの適合者だと、興奮気味にそう語った
だが、俺はその時思った
もし、その未来を先に読み取り、未来を変えてしまったら…
もし、死ぬはずの人間が存在してしまったら…
とある映画であった気がする
運命が、辻褄を合わせるため、消されるはずの人間を全力で殺しにくる
そんな映画
もし、実際にそうなってしまったら…
さっきの現象は、怖くて友に話せなかった
運命に抗う
俺たち人間に、そんな事が可能なのだろうか
第三章「改変の代償」
了
男「…恒例になったな」
ボヤァ
「でさーははは」
「お前それはちょっと…」
「あ、しまった」
「どした?」
「プリント忘れてきた…」
「まあ、時間あるし今からでも取りに戻ったら?」
「そうだな、わりい男」
「おう、待ってるからさ」
「カバン持っててくれ、マッハで行く」
「タイム計っててやるよ」
「おっしゃ!」キコキコキコキコ
キキキキィー!
ドンッ
「友!!!」
男「…また友が…」
男「…助けなきゃ」
男「…!」ハッ
男「…」
男(ここ夢じゃないよな?)ツネッ
男(いてて)ヒリヒリ
男「…行くか!」
友「お、男じゃん」
男「通学中に会うのは珍しいな」
友「まあ、何かの縁だ、一緒に行こう」
男「なあ」
友「ん?」
男「お前忘れ物してないか?」
友「…忘れ物?」
男「プリントとか」
友「あっ!」
男「今なら余裕で間に合うし、とりにいってこいよ」
友「ありがとうな男」
男「いいってことよ」
男「気をつけてな」
友「ああ、さっと行ってくるわ」キコキコ
男(…タイミングをズラしたから大丈夫な筈)
男(良し…)
友は無事に帰ってきた
そのまま何事もなく、学校へ行き、帰ってくることもできた
しかし、その時は自分の犯した罪に気づかなかった
運命は、じわりじわりと俺を追い立てる
男(はぁ…最近疲れが取れない)
男(すぐ…眠くなる…)
男(…どうせ…また…ガラスの…ゆ…め…)
男「…zz」グゥ
「わっ!」
「うおっ!びっくりしたぁ」
「ははは、大丈夫か?ボーっとして」
「ああ、最近疲れが取れなくて…」
「ジジイみたいな悩みだなおい」
「うるせー」
「…?」
「どうした?」
「いや、いま誰かに呼ばれたような」キョロキョロ
「窓から?そんなバカな」
「いや、確かに今…」
「おいおい、そんな乗り出したら危ねえって」
「おかしいな…誰も居な…うわあああっ!」
「友!」
男(…友が、誰かに呼ばれ、窓から身を乗り出す)
男(そこに強風が吹き、友は煽られ落ちてゆく)
男(…メチャクチャだ)
男(…でも、助けなきゃ)
ピピピピピピピ
男(アラームも鳴ってるし)
ピピピピピピピ
男「…」パチッ
男「…」ボー
男「…」
男「…」
男「…ハッ」
男(やべ、遅刻だ)ワタワタ
友「わっ!」
男「うおっ!びっくりしたぁ」
友「ははは、大丈夫か?ボーっとして」
男「ああ、最近疲れが取れなくて…」
友「ジジイみたいな悩みだなおい」
男「うるせー」
友「…?」
男「どうした?」
友「いや、いま誰かに呼ばれたような」キョロキョロ
男「あ、廊下で誰か呼んでたぞ?」
友「いや、窓の方から…」
男「廊下の声が窓に反射したんだろ」
友「あ、なるほど」
男「いってこいよ」
友「ああ」
男「…ふぅ」ウトウト
男「ただいまー…」
男「…」
男(眠い…何だこの疲れは…)
男(ああ…また寝そうだ…ああ…)
ピリリリリリ
男(…電話?)
男「…はい」
友「おお、出たでた」
男「…なに?」
友「お前さ…最近寝不足って言ってたよな?」
男「…ああ」
友「明晰夢の見過ぎかもしれないぞ?」
友「脳に負担がかかるらしい」
男「でも…意識して見てる訳じゃ…」
友「多分、癖になってるんだ」
友「普段と違う格好で寝てみろよ」
男「…ありがとう」
友「おう、ゆっくり休めよ」
友「じゃーな」
男「ああ、またな」
プツッ
男(普段と違うかっこ…)
男(うつ伏せ…)コロン
男「…スゥ」
それが、友との最後の会話だった
今思えばもっと冷静になるべきだったと思う
あの時、運命は、神は、友を殺しにきていた
元からそんな運命だったのか、それとも…
どれだけ考えても答えは出ない
頭に浮かぶのは自責の念だけ
ともを救えなかった不甲斐なさと、その事実だけだった
男「…」
男(友が死んで4ヶ月になる)
男(この4ヶ月の間、様々な人の死を夢で見てきた)
男(最初は、救おうとした)
男(友のように、救えた命を無駄にしないようにと)
男(でも、すべてが無駄だった)
男(例え、一度救った命だろうと、必ず死んでしまう)
男(…俺はもう疲れた)
男(見ず知らずの他人の死ぬ様を4ヶ月間ずっと、ずっと見せられてきた)
男(目の前で人が死んでゆく罪悪感、無力感)
男(もう、耐えられない)
男(ここから、このビルから、飛び降りれば全てから開放されるのだろうか)
男(…俺が死ぬ姿も、誰かに見られて居るのだろうか)
男(そうなら…止めてくれるのかな)
男「ふふ…厨二病かな」
男「…」
スッ…フワッ
「なあ、明晰夢って知ってるか?」
「なんだそりゃ」
「夢の中で、自由に動けるってやつだ」
「ほー、そりゃ楽しそうだな」
「だろ?最近俺練習しててさ」
「へー、俺にも教えてくれよ」
「おう、まずは…夢日記だな」
「…あれ?それ…」
「どうした?」
「いや…デジャヴが…」
「はは、デジャヴも大事な要素らしいぞ?」
「そ、そうか!」
「じゃあ、方法だけど…」
「夢…を、日記につけるのか?」
「おお、わかってんじゃねぇか」
「なんか…知ってた」
「すげえな、素質あんじゃね?」
「おお…すぐお前抜いてやるからな!」
「はは、頑張れよ」
「じゃ、また明日な」
「おう、頑張れよ男!」
「お前もな友!」
一応終わりです
もやもやした終わり方でごめんなさい
一応後書き兼予告みたいなのありますので、投下しますね
???「はぁ…やっと修正できた」
???「お疲れ様」
???「元はと言えばあいつがしくじるから…」
???「まあまあ、あいつは元々怠惰司ってるんだから」
???「それはあんまり関係ないだろ!?」
???「すぐ怒るなよ…」
???「ふん!お前の言い方で言えば俺は憤怒だからな!」
???「ははは、その言い切りっぷりに嫉妬しそうだよ」
???「何はともあれ、事態は収集ついたし、また遊びたいな」
???「そうだな…なんか楽しいの考えとく」
???「頼むぜ嫉妬」
???「レヴィーと呼んでくれないかな?」
???「はいはい、分かったよレヴィアタン」
???「まあ、いいか」
???「じゃ、楽しいの頼んだよ!」シュッ
???「…いっちまったか」
???「…人に力与えるってのは…いい考えかもしれないなぁ…」
予告
男「サバイバルゲーム…」
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