耕介「麻雀牌売ったわ」悟空「でぇじょうぶだドラゴンボールがある」(82)

耕介「麻雀牌だけどさ、売ったわ」

慕「えっ」

耕介「お前もう麻雀やめろよ…… 姉貴のこととか思い出してつらいだろ……」

慕「そんな… なんで… どうして……」


その夜

慕「うっ… えぐっ… ぐすっ……」

悟空「おっ?なーにショボクレてんだおめぇ?」

慕「?」

慕「あなたは…?」

悟空「オッス、オラ悟空!」

慕「?」

悟空「そんなに泣くんじゃねえ、かわいい顔がでぇなしだぞ?」

慕「あの…えっと…?」

悟空「ああ、喋んねえでいいぞ」

スッ

慕「??」

悟空「…なるほどな、かあちゃんの思い出が詰まった宝物を叔父さんに売られたってわけか」

慕「!!」

慕「どうして…わかるんですか…?」

悟空「修行したからな!」

慕「?」

悟空「しっかしそりゃ悲しかったな。オラも四星球はずっとでぇじにしてたからな、よくわかっぞ」

慕「……はい……」グスン

悟空「でもでぇじょうぶだ、ドラゴンボールがある」

慕「?」

悟空「オラがおめぇの宝物、神龍に頼んで見つけてやるよ!」

慕「しぇんろん……?」

悟空「邪魔が入らなけりゃ、二日もありゃ揃うと思うからよ!ちょっと待ってろ!」

慕「でも…明日も学校あるし…、あさっては麻雀大会も出たいし…」

悟空「おめぇは心配するこたぁねえ、オラに任しとけって!」

慕「…………」

悟空「ボールが揃ったら迎えに来っから!んじゃな!」

ビッ

慕「……消えた……」

―西宮 カプセルコーポレーション―

ブルマ「ロン! 12000よベジータ!」

ベジータ「ぐっ…」

トランクス「またパパがラスだー」

ブリーフ「ふぉっふぉっふぉ」

ベジータ「くそったれ…誇り高きサイヤ人がこんなゲームごときで…」

ブルマ「あんたは単純で読みやすいのよ」

ベジータ「フン!気分が悪い!重力室に行ってくる!!」スタスタ

ブルマ「……ウフフッ」

ビッ

悟空「おーい、ブルマー」

ブルマ「あら孫くん!死んだんじゃなかったの!?セルと一緒に爆発したんでしょ!?」

悟空「おう、死んでっぞ」

ブルマ「どういうことよ!?」

悟空「オラもよくわかんねえんだけどよ、急に特例だからこっち行けって界王様に言われてな」

ブルマ「何よそれ…。また何かおかしな事の前触れ…?」

悟空「今回はでぇじょうぶじゃねえか? 知らんけどよ」

ブルマ「…まあいいわ、それじゃベジータ呼ぶ? 今ちょうど重力室行っちゃったの」

悟空「あー、ちょっと寄っただけだからいいって。それよりな、ドラゴンレーダー貸してくんねぇか?」

ブルマ「あら、またボール探し?」

悟空「おう」

ブルマ「はい、これ」

悟空「サンキュー!それじゃな!」

ブルマ「もう行くの?ご家族のほうには?」

悟空「何も言わねえでいいや、時間できたらオラの方から行くからよ」

ブルマ「いいの?」

悟空「こっちで用事見つけたら、そっち優先しろって言われてんだ」

ブルマ「相変わらずせわしないわねぇ」

悟空「そう言うなって。誰かのために頑張るって気持ちいいぞ!」

ブルマ「どうせタダ働きでしょ?まったくサイヤ人の労働意識ってのは…」

悟空「ははっ、ベジータも相変わらずみてえだな!」

ブルマ「やれやれね…。それじゃ本当にいいのね、誰にも言わなくて」

悟空「ああ、サンキューな!」

悟空「さて、っと…」

ピッ

レーダー「ピコン ピコン ピコン」

悟空「お?なんかやけに固まってんなー。集めてるヤツがいるのか…?」

悟空「交渉とかってなると面倒だな…。オラそういうの苦手だし…」

悟空「ま、行ってみっか!」

悟空「この方向は……、んーと、ナラって辺りか」

シュッ

―奈良 松実館―

露子「うふふ、よく寝ているわ」

宥(8ヶ月)「…………」スヤスヤ

松実父「ただいま」

露子「お帰りなさい、無事でよかった」

松実父「ああ、ありがとう」

露子「…それで、どうだった?」

松実父「うん、これで三個目だ」ゴロン

松実父「宿泊客から偶然耳にした、この不思議な球の話…」

松実父「七つ集めればどんな願い事でも叶えてくれるという…」

松実父「これさえあれば…。医者にも匙を投げられた、この子の異常な寒がりが治せるはず…!」

松実父「何年かかろうとも…いつか必ず七つ集めてみせる…!」

露子「ええ…。でも、あなたも無理はしないで」

松実父「ああ」

シュタッ

悟空「よお」

松実父「!?」

松実父「…どちら様でしょうか?ご宿泊でしたら表のロビーへ…」

悟空「オラ悟空ってんだ。そのドラゴンボールを集めてんのはおめぇたちか?」

松実父「むっ」

露子「!」

松実父「…だったらどうだというのですか?」

悟空「そんなに警戒しねえでいいぞ、奪い取ろうってんじゃねえんだ」

松実父「…………」

松実父「……ではどういった用件でしょうか?」

悟空「おめぇたちのついででいいからよ、オラの願い事もひとつ聞いてもらいてえんだ!」

松実父「ついでと言われても…譲るわけにはいきません。私達にも、どうしても叶えたい願い事があります」

悟空「おめぇたちの願いってのは、いくつあるんだ?」

松実父「どういうことですか?」

悟空「今のドラゴンボールはみっつ願いを叶えられるんだ」

松実父「!」

悟空「だからよ、みっつの内いっこだけオラにやらせてくれたらいいんだ」

松実父「…確かに、私たちの願いはひとつだけですが…」

悟空「なんでも手伝うからよ! 悪いようにはしねえって!」

松実父「しかしこれは、我々の家庭の問題です。無関係な方を巻き込むわけには…」

悟空「一人でドラゴンボール集めるのはてぇへんだぞ? 大体いっこは海ん中だしよ」

松実父「むう…。だが、パッと現れたあなたの言うことをすぐに信じろというのも無理な話です」

悟空「そうだな…。じゃ、先にオラが残りのボールを集めてくっからさ!それでどうだ?」

松実父「!」

悟空「どうすっかは、その後で考えてくれりゃいいよ!それじゃ!」

ビッ

松実父「消えた……」

―とある山地―

悟空「……おっ!あったあった!こんな崖に引っかかってたかー」

……

―広い海の真ん中あたり―

悟空「ぶっひゃー!しんどかった!やっぱ海ん中はめんどくせえな!!」ザバッ

……

―とある紛争地域―

悟空「悪ぃ事に使わせるわけにはいかねえんだ、すまねえな!」

テロリスト「くそっ……」バタッ

……

―某所―

悟空「毎度悪ぃな、また今度な!」

ピラフ「…………」グスン


悟空「よし!これで全部だ!」

―松江 こども麻雀大会会場―

慕「三位…か…。これじゃおかーさんには届かないかな…」

耕介「よう」

慕「ふえっ!?」アタフタ

耕介「慌ててメダル隠さなくてもいいよ…。見てたぞ」

慕「おじさん…」

耕介「すまなかったな。オレは…」

ビッ

悟空「よお!揃ったぞドラゴンボール!」

耕介「!?」

慕「あ…おとといの…」

耕介「すみません、うちの慕に何か?」

悟空「おっ、おめぇがこの子の麻雀牌売ったっていう叔父さんか?」

耕介「は?」

慕「!」ドキッ

耕介「…その話どこで…? 慕のお知り合いですか…?」

悟空「ちょうどいいや、一緒に来い!」グイッ

耕介「おい、ちょっと!?」

慕「えっ、えっ?」

ビッ

―奈良 松実館―

ビッ

耕介「うわっ!?」

慕「?」

悟空「到着!」

耕介「ちょっと!なんなんすか!?」

松実父「…一昨日の人…」

悟空「集めてきたぞ!残りのボール!」

松実父「えっ!?もう!?」

悟空「ほれ!これで七つ揃ったぞ!」ゴロゴロッ

松実父「

>>17はミス

―奈良 松実館―

ビッ

耕介「うわっ!?」

慕「?」

悟空「到着!」

耕介「ちょっと!なんなんすか!?」

松実父「…一昨日の人…」

悟空「集めてきたぞ!残りのボール!」

松実父「えっ!?もう!?」

悟空「ほれ!これで七つ揃ったぞ!」ゴロゴロッ

松実父「!」

露子「まさか…こんなに早く…」

松実父「た、確かに… 本物のようだ…」

悟空「どうだ? 願い事いっこ譲ってくれねっか?」

松実父「も、もちろんです!ありがとうございました!!」

悟空「いいっていいって!」

松実父「それで…、後ろの彼らは…?」

悟空「おう、オラが叶えてほしいのはこの子の願いなんだ」

慕「?」

耕介「すんません、ここどこなんすかね?」

慕「あの…?」

悟空「でぇじょうぶだ、これでおめぇの麻雀牌も戻ってくっぞ!」

慕「!…そうなんですか!?」

耕介「???」

松実父「麻雀牌…?」

露子「なくしもの、ですか…?」

悟空「まあそんなとこだ!そんでよ、おめぇたちの願いは何なんだ?」

松実父「娘の体質を…。この子の生まれつきの、どうしようもない寒がりを治してやりたいんです…」

悟空「ふーん、よくわかんねぇけど病気みてえなもんか?」

露子「病気かどうかすらわかりません…。医者にも原因がわからなかったんです」

悟空「ま、でぇじょうぶだ! 神龍ならそれくれぇ楽勝さ!」

松実父「ではこれを…どうすればいいんだ…?」

悟空「神龍を呼ぶんだ」

露子「シェンロン?」

悟空「でっけぇドラゴンさ!それに願い事を伝えて、叶えてもらうんだ」

慕「ドラゴン…?」

耕介「あのー、何の話かさっぱり」

松実父「それが…、こんなに早く集まると思ってなかったので、どうやればいいのかがまだ…」

悟空「よくわかんねえなら、オラがやってやるか?」

松実父「……はい、お願いします」

悟空「神龍よーい!出てきておくれ!」

カッ

フッ

松実父「空が…暗く…?」

カッ

神龍「……グオオォォーーン……」

ゴゴゴゴゴ…

慕「わぁ…」

松実父「す、凄い…」

露子「これが…神龍…」

耕介「な、なにこれ?CG?ドッキリ?」

神龍「さあ願いを言え…。みっつの願いを叶えてやろう……」

近くの路地

ウーロン「あーあ… 最近楽しいことねえな…」

ウーロン「どいつもこいつも付き合い悪ぃし…なんか面白いことねえかな…」

フッ

ウーロン「! 空が暗くなった…!これは…!」キョロキョロ

ウーロン「あれは…神龍!」

ウーロン(これは…大チャンスの予感!)

ウーロン(最近のつまらねえオレの生活に… もう一度潤いを呼び戻すアレを…!)

ウーロン(オレが人生で一番輝いてたあの時の!)

ウーロン(あの魂の叫びを… 今こそもう一度…!)

ウーロン「うおおおおおお!!」

ダダダダッ

悟空「おっし、じゃあ願いだ!」

松実父「……では先に、いいかな?」

慕「あ、はい…」

松実父「……ウォッホン」

松実父「私の娘の…体質を…」

ウーロン「ギャルのパンティー!! オレにぜーんぶおーーくれーーー!!!!」(1)

ウーロン「この世のすべてのパンティーというパンティーを!! オレだけのものにしておくれー!!」(2)

全員「!?」

悟空( ゚д゚)

松実父( ゚д゚)

露子( ゚д゚)

慕( ゚д゚)

悟空「ウー……ロン……?」

耕介「?」

ウーロン「あっ、あとオレのケツかゆいのも治しておくれ」(3)


神龍「わかった…。そのみっつ、叶えてやろう」


カッ







――その日、世界からぱんつという概念が消え去った。






ドサッ ドサドサドサドサドサッ

ウーロン「う…うはは……。やった……やったどーー!!」

悟空( ゚д゚)

松実父( ゚д゚)

露子( ゚д゚)

慕( ゚д゚)

耕介「??」

神龍「願いは叶えてやった…。ではさらばだ」

スゥッ

悟空「あ……」

松実父「龍が…消えた…」

バシュゥーーッ

露子「球が…散らばっていっちゃった…?」

悟空「……ウ……」

慕「何が起こったの…?」

悟空「ウーローン!!おめぇなんてことしやがんだーー!!」

ウーロン「…お、悟空だったのか。久しぶり」

悟空「ウーロン… おめぇってヤツは…」

ウーロン「な、なんだよ…」

悟空「こんなもんのために… こんな… この… あれ、この布っきれって何だ…?」

ウーロン「何ってお前…ギャルのパンティーだよ。昔もやっただろ」

悟空「?」

露子「ぱんちー…?」

松実父「あの豚は何を言ってるんだ…?」

慕「??」

ウーロン「や、やらねえぞ!オレだけのもんだからな!」

悟空「いや…いらねえけどよ…」

悟空「と、とにかく!今回ばかりはオラ許さねえぞ!」

悟空「おめえのおかげで、この赤ん坊のことも!この子のなくした麻雀牌も!」

悟空「全部ダメになっちまったんだぞ!!」

慕「!!」

露子「!!」

松実父「!!」

耕介「えっ」

慕「……そう……なんだ……」

耕介「あの…、慕? 今の話ってどういう…?」

慕「うっ… えぐっ…」

耕介「慕?」

慕「やっぱり…もう会えないんだ…」

耕介「いや、ちょっと待てって」

慕「鳥さんのお友達にも…おかーさんにも…」

耕介「あのな、麻雀牌は周藤の質屋に…」

慕「私…ひとりぼっちなんだ…」

耕介「えっと、だからさ…」

慕「鳥さん……おかーさん……」

耕介「慕さーん、話聞いてくれるとうれしいなー」


慕「鳥さーーーーん!!!!」







――鳥山明「……あ、わし?」






スウッ

鳥山「とうっ」

慕「?」

鳥山「呼ばれて出てきてドドンがドーン」

悟空「な…なんだおめぇ…」

鳥山「やあ」

耕介「なんだこの…昭和のロボット…?」

鳥山「どうも鳥さんです」エッヘン

慕「???」

鳥山「……それにしても、ウーロン」

ウーロン「な、なんだよ…?」

鳥山「まったくお前は、いつまで経っても変わらないね」

鳥山「ちょっと精神と時の部屋にでも行って、頭を冷やしてなさい…。この置き場に困る大量の布と一緒に」

ウーロン「?」

鳥山「とりゃっ」スッ

フッ

悟空「ウーロンが…消えた…」

鳥山「大丈夫だ、しばらくひとりにしとけばいいよ」

悟空「瞬間移動…か…? それも他人だけを…すげぇ…」

悟空「おい、おめぇ何者なんだ?」

鳥山「ん?界王から聞いてない?『創造神』のこと」

悟空「んー…? あっ、そういえば…」

悟空「いっぺんだけ、界王様が話してくれたな…」

悟空「界王様やエンマ様…その上のどんな神様たちも超える…とんでもねえヤツがいるって…」

鳥山「ふっふっふ」

悟空「じゃあ、おめぇがその…、『創造神』…?」

鳥山「イエーッス!」フォッフォッフォッ

悟空「たまげたなぁ…オラ初めて見たぞ」

鳥山「サインほしいか?」

悟空「あ、いや、そんな場合じゃねえんだって!」

鳥山「ん?」

悟空「あいつらの赤ん坊が…」

松実父「…………」

露子「…………」

悟空「あ…、な、なあ…」

松実父「…………」

露子「…………」

悟空「すまねえ、こんなことになって…」

松実父「…………」

露子「…………」

悟空「で、でもでぇじょうぶだ!ほんの一年待ってもらったらな、ドラゴンボールはまた元に…」

鳥山「あー、それなんだけどね、悟空よ」

悟空「?」

鳥山「悪いけど…、ドラゴンボールはもう使わせてあげられないんだ」

悟空「なんでだよ!?」

鳥山「この後、神龍にはもっと大事な用事がある…。そのためにね」

悟空「なんだよそりゃ!?」

鳥山「うーん……」

悟空「?」

鳥山「本当は黙って進めるつもりだったんだけど……。この際だ、お前には話してしまおう」

鳥山「次に悟空たちに戦ってもらいたい相手がね…、魔人ブウっていうんだけど」

悟空「うん?」

鳥山「どうしてもね…、その戦いに、地球人全員を巻き込むことになっちゃいそうなんだ」

悟空「全員!?」

鳥山「うん、全員っていうか地球ごとっていうかな。何億人もが犠牲になっちゃうと思う」

悟空「そんなにいっぺぇ殺されるってか!?何なんだよそのブウってのは!?」

鳥山「詳しいことは、そのときにならないと明かせないけれど…」

鳥山「でも、今まで以上の被害が出るのは避けられない。それは確かなんだ」

悟空「…………」

鳥山「だからね、単刀直入に言うけど」

鳥山「ドラゴンボールは、その何億人を生き返らせるために使わせてもらいたい」

悟空「!」

松実父「!」

鳥山「今から一年後。さっきのドラゴンボールが復活する頃に…、また天下一武道会が開かれる」

悟空「天下一武道会!?」

鳥山「そこから、魔人ブウとの戦いが始まる…。もう時間の余裕もないんだ」

鳥山「その前に最後の一回として…。この子らのために、お前に特例を出してドラゴンボールを集めてもらったんだけど」

鳥山「まさかウーロンに取られちゃうとはね…」

悟空「そうだったんか…」

鳥山「ま、ウーロンにはあとできつく言っておくよ」

ひでぇや…

悟空「そういうことならよ、オラがそのブウってのを倒した後じゃダメなのか?」

鳥山「いや。残念だけど、もう二度と無理になっちゃうんだ」

鳥山「その頃にはもう、この子たちはドラゴンボールの無い世界に居ることになる…」

悟空「ドラゴンボールの無い世界…?」

鳥山「そう。今日ここにわしが出てきた最大の理由…」

悟空「?」

鳥山「魔人ブウから人々を守るため…、これから世界を二つに分ける」

悟空「!?」

鳥山「今のこの世界はね…。ちょっといびつな状態なんだ」

悟空「?」

鳥山「わしが描いてない…ゲフンゲフン、わしの神様としての管轄外の人たちが、色々混ざって存在してるんだ」

悟空「管轄外…?」

鳥山「こちらの松実さんやそっちの慕ちゃんたちはね…、本来別の世界にいるべき人」

鳥山「本当だったら関わり合うはずもない、別の神様のあずかる領域なんだ…」

悟空「別の神様って…?」

鳥山「うん、今呼ぶよ」

鳥山「おーい、立ちゃん」

スゥッ

小林立「……どうも」

松実父「…またいきなり…人が現れた…」

露子「……女の子……?」

悟空「おめえが別の神様…?」

立「はい」

鳥山「うん、立ちゃんだ」

松実父「こんな小さな黒髪おかっぱセーラー服少女が… 神様…?」

鳥山「いつか一回、ちゃんとする必要があったんだけど…。今がいい機会なんだ」

鳥山「今あるこの世界を…、わしが管理する世界と立ちゃんが管理する別の世界とに切り分ける」

鳥山「ドラゴンボールはわしの世界に…。悟空たちと魔人ブウが戦うことになる、わしが管理する世界に持っていく」

鳥山「立ちゃんの世界は立ちゃんにお任せして、完全に分かれて存在していくことになるんだ」

鳥山「生死をかけたバトルも、ドラゴンボールも無い世界で……」

立「……はい」

鳥山「いくらドラゴンボールで生き返ることができるといってもさ…」

鳥山「わしの責任で現れる魔人ブウのせいで…、よそさまの人たちにまで死ぬ体験なんてさせられないよ…」

悟空「そこまですんならよ、おめぇがブウってのをどうにかはできねえのか?」

鳥山「魔人ブウを退治できるのは悟空、お前さんたちしかいない…。それはわしじゃできないんだよ」

鳥山「ジャンプシステムという混沌が生み出す際限なき戦いの連鎖は…わしとお前さんたちが共に背負った宿命…」

鳥山「もはやわしだけの都合でどうこうできるものでもなくなってきてるんだ…」

悟空「そのなんたらってのはよくわかんねえけど……」

鳥山「わしにできるのは、そのためのお膳立てくらいさ」

悟空「お膳立てって?」

鳥山「今みたいに、世界を管理してなるべく被害者を減らしたり…」

鳥山「今回お前さんがこの世に戻ってこれた特例もそうだね」

鳥山「本来これも1回だけの1日だけって約束だから、これでもうダメになっちゃったはずなんだけど…」

鳥山「魔人ブウと戦うときのため、今回のはナシにしてあげる。時間も過ぎてるけど気にするな」

鳥山「わしにできるのはそれくらいなんだ」

松実父(結構すごいことを言っているような気がするが……)

鳥山「ウーロンの件はとても申し訳なかったけど…」

鳥山「そんな風にわしらでも、予測できないことも変えられないこともある」

鳥山「お前たちも、わしらも…。それぞれの立場で戦っていくしかないんだよ」

鳥山「というわけでだ、松実さん」

松実父「はい?」

鳥山「本当にすまない…理不尽なお願いだとわかってはいるが」

松実父「?」

鳥山「数億人の地球人を救うために…。娘さんの健康を諦めてもらえないじゃろか」

松実父「!」

露子「!」

鳥山「この通り」ペッコリン

松実父「……いきなりそう言われても……」

露子「…………」

立「魔人ブウの脅威は他に類を見ないほど強い…。ドラゴンボールは、そちらの世界にどうしても必要な力なんです」

立「あなたたちをブウから守るための措置でもあるんです…ご理解ください」

悟空「そっちのりっちゃんてのは、ドラゴンボールを作れねえのか?」

立「…残念ながら、私にはドラゴンボールを作ったり、この子の体を治せるような力はありません」

立「ですが、この子の体質がただちに命にかかわるものでないことは…私が保障します」

露子「!」

立「この子がそのことで、できるだけつらい思いをしないように…」

立「逆にそれを長所にできて、周りの人ともあったかく生きてゆける世界になるように…、力を尽くします」

立「私からも…、お願いします」ペッコリン

露子「…………」

松実父「…………」

立「…………」

露子「…………わかりました」

松実父「露子!?」

松実父「露子、お前…」

露子「……大丈夫よ」

露子「もともと、なんでも願いが叶うなんてこと自体が夢物語だったんだし」

露子「この子の体質がわかったときから…、一生背負っていく覚悟はできています」

露子「この子に負担をかけるのは本当に申し訳ないけれど…。その分、いえそれ以上に、私が全力で支えていくわ」

露子「命にかかわるものではない…。それが聞けただけでも、私は安心しました」

露子「代わりに数億人の命を犠牲にはできないものね」

松実父「露子…」

鳥山「……お父さんは、どうかな?」

松実父「…………」

鳥山「…………」

露子「…………」

松実父「……わかりました、妻がそう言うのなら私の気持ちも同じです」

露子「あなた……」

鳥山「ごめんね…ごめんね…」

悟空「なあ、世界を分けるってのができるんならさ、終わった後に戻すことはできねえのかよ?」

鳥山「うーん…一度分割した世界は、そう簡単には戻せないよ」

悟空「そうなのか…」

鳥山「すべてが…、本当にすべてが終わった後で、わしと立ちゃんの都合が合えば、あるいは…だけど」

鳥山「確約はできんなあ」

鳥山「もしできたとしても…15年以上は先の話かな」

悟空「そんなにか…」

鳥山「仮に、戻すことができたとしても…」

鳥山「そのとき、松実さんがドラゴンボールを手に入れられるかっていうと…それもわからないな」

鳥山「今回だって、悟空だから苦も無くできたろうけど…。一般人の松実さんたちには集めるのも一苦労だ」

鳥山「海に潜ったりテロリストと戦ったり…、普通は簡単にできないよ?」

悟空「まあそうだけどよ…」

鳥山「年月が経てば、今このときの記憶も薄れてしまうだろうし…、松実さんたちも年老いてしまうだろう」

鳥山「大きくなったこの子が集めるとしても…、尚更大変だね」

鳥山「レーダーも戦闘力もない、非力な寒がりの女の子じゃ…」

悟空「うーん…」

鳥山「…………でも」

悟空「?」

鳥山「この子には無理かもしれないけれど…、これから生まれる新しい命になら…」

松実父「?」

鳥山「もしも君たちがこの先、新しい命を授かったなら…、そのときは」

鳥山「いつの日か、その子の元へドラゴンボールが集まってこれるように…」

鳥山「ドラゴンがその子に導かれますように、わしからもお祈りしておくよ」

松実父「…ありがとうございます…」

鳥山「ねっ、立ちゃん」

立「…………承りました」

悟空「?」

鳥山「じゃ、そろそろ行こうか悟空。特例任務終了だ」

悟空「あ、待ってくれよ!もうひとつ!」

鳥山「?」

クルッ

悟空「すまねえ、ほったらかしにしちまって」

慕「あ…いえ…」

悟空「おめぇの宝物、見つけてやりたかったんだけどな…」

慕「…はい…」

耕介「いや、そのさ…慕…」

立「その子の麻雀牌なら、大丈夫ですよ」

悟空「?」

立「そこの耕介さんに聞けば解決するんですが…」チラッ

耕介「?」

立「この話に巻き込んでしまったお詫びです、ひとつお手伝いさせてください」

立「悟空さん、手を」

悟空「?」

スッ

悟空「これは…?」

立「今、彼女の麻雀牌を持っている人…。質屋の周藤の気のかけらです」

立「これであなたなら、場所をたどれるはずです」

悟空「お……、おお!わかっぞ!! おめぇすげぇな!!」

慕「?」

悟空「よし、行くぞ!」

慕「どこへ……?」

悟空「麻雀牌のあるところ、だ!」ニコッ

慕「!」

耕介「へ?」

ビッ

立「……お元気で、慕ちゃん。いつかきっと、お母さんに会えますように」

―質屋―

周藤「の~て~ん、ぴ~か~ん、期待~勇気~っと」フンフフーン

周藤「……あーあ、暇だな……」

ビッ

周藤「おわっ!?」

悟空「着いたぞ!」

慕「??」

耕介「ここは… 周藤の質屋…?」キョロキョロ

周藤「リチャードソン…? どこから出てきたんだお前ら…」

耕介「よ、よお周藤… おととい預けた麻雀牌ある?」

周藤「はあ?」

……

周藤「ほいよ、麻雀牌」

慕「わぁ…!」

耕介「……すまなかったな、慕」

慕「いいよ!もう怒ってないよ!おじさん大好き!」

悟空「うん、よかったよかった!」

周藤「??……わけわからん」

慕「えっと、オレンジ色のおじさん…、悟空さんも!」

悟空「ん?」

慕「ありがとうございました!」ペッコリン

悟空「わりかったな、全然力になれねえでよ」

慕「そんなことないです!私が泣いてたときに慰めてくれたし…」

慕「私の牌とか、赤ちゃんの病気?のために…、いろいろがんばってくれたんですよね…」

悟空「大したこっちゃねえよ」

慕「すごく嬉しかったです!ありがとうございました!」

悟空「よかったな、麻雀牌戻ってきてよ」

慕「はい!」ニコッ

悟空「そんじゃ、オラもう行くわ。あの神さんについてかねえといけねえみてえだ」

慕「あっ…えっと…」

悟空「ん?」

慕「また…会えますか…?」

悟空「どうだろうなー」

慕「…さっきの話…」

悟空「…気にしねえでいいよ、おめぇまだ小せえしな」

慕「世界が何とかっていうのは…よくわかんなかったけど…。すごく怖い話をしてた……」

悟空「…………」

慕「死なないでね…」

悟空「おう?」

慕「死なないで…。また私に会いに来てください…」

慕「だいすきなひとがいなくなっちゃうの……もうやだ……」グスン

悟空「おめぇ……」

悟空「ははっ、オラもう死んでんだ、実はな」

慕「!?」

悟空「ホレ、アタマに天使の輪っかがあるだろ?」

慕「あっ… えっ…?」

悟空「本物だぞ? 取っても取れねえんだこれ。ほれっ、フリスビー!!」シュッ

…シュルシュルシュルシュル… スタッ

悟空「…なんつってな! ほら、戻ってきた!」

慕( ゚д゚)

悟空「だからな、オラはでぇじょうぶだ。心配すんじゃねえ!」

慕( ゚д゚)

悟空「お、面白くなかったか? オラ女の子の扱いっていまいちまだわかんねえんだ…、フリスビー!!」シュッ

シュルシュルシュル…スタッ

慕( ゚д゚)

悟空「わ、笑ってくれよ、ほら……。フリスビー!フリスビー!」

シュルシュル…スタッ シュルシュル…スタッ

慕「…………」

悟空「…………どうだ?」

慕「…………」

悟空「…………」

慕「…………ウフッ」

悟空「おっ」

慕「……おもしろい人!」ウフフッ

悟空「よし、笑ったな!」

慕「じゃあ、約束しよう!」ギュッ

悟空「ん?」

慕「ゆーびきりげんまん、いつかまたぜったい会えますよーにっ!」

悟空「…お、おう」

慕「ゆーびきったっ!」

悟空「……ありがとな」

慕「それじゃあね!ばいばい!!」

悟空「おめぇこそ、達者でな!」

ビッ

鳥山「もういいかい、悟空?」

悟空「おう」

鳥山「じゃ、いくよ立ちゃん」

立「はい」


立鳥山「「 世 界 二 分 割 ! 」」


カッ


それから二ヵ月後――


私のおなかに、二人目の新しい命が宿りました。

あのとき出会った不思議な彼らとは、それっきり一度も会うことはありません。

まるで、彼らなんて最初から居なかったかのように…、過ぎていく変わらない日々。

あのときのことは、いったい何だったんだろう?

「きっと変な夢でも見てたんだよ」なんて、夫は私を気遣うように言うけれど。

でもあのとき、彼らは確かにそこにいた。

何なのかはうまく言葉にできないけれど、あの日から確かに、

私達の世界は何かが変わった気がするんです。

今でも私は、信じています。

もうすぐ生まれてくるこの子が、もし本当にドラゴンを呼んでくれるなら…。

そして娘の体がよくなって、まだ叶えられる願いが残っていたら。


『もう一度、みんなであの人たちと会えますように。』


そうお願いしようかと思っています。


松実館の桜の下で 松実露子


―現代―

カメラマン「はい、以上でーす! 水着グラビア撮影、お疲れ様でしたー!」

良子「サンクスでした」

はやり「……ふーむ……」

良子「どうしました、はやりさん?」

はやり「水着ってさ、どうして下に変な布つけるんだろうね?」

良子「はあ?」

はやり「普段は何もつけないのにね、なんで水着の時だけって」

良子「……水着とはそういうものだと思いますが」

はやり「んー、私の小さい頃はねー、いつでもこういうのつけて生活してたような気もするんだっ☆」

良子「何ですかそれは…。またメルヘンな空想話ですか?」

はやり「さあてねっ☆」


カン

玄「――思い出したよ、お姉ちゃん」

宥「?」

玄「私が生まれる前にあった記憶…… お母さんの願い……」

宥「玄ちゃん…?どうしたの急に…?」

玄「いまこそ!その思いを果たすとき!!」

ダダダッ

宥「玄ちゃん!?」

玄「お姉ちゃん!『みんな』って、『みんな』さッ!!」

玄(もう一度、みんなで会えますように……)

玄(あのときのみんな……。神様、オレンジのおじさん、麻雀牌の女の子、お父さん、お姉ちゃん、リチャードソン……)

玄(………お母さん………!)

玄(…………そう)

玄(ドラゴンボールを集めて、みんなと…お母さんともう一度…!)

玄(ただドラゴンを待っているんじゃない…私から会いに行くんだ!!)

ガラッ

玄「阿知賀女子麻雀部二年・松実玄! ドラゴンボールを探す旅に出ます!!」ズビシッ

憧たち「なにィ!?」

玄ちゃんの戦いはこれからだ!


もいっこカン

乙←神龍

なんだこれ

なんだこれ

ベジータw

咲SSは毎回妙にクオリティ高いなwwww

どうしてそんな発想に至ったのか甚だ疑問だが普通にかなりの良スレだった乙ッ!!!!


設定とかいろいろよく出来てるし面白かった

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