真澄「見せつけてくれるじゃない」(27)
真澄「――別に謝らなくても良いわよ。お仕事だもの、しょうがないじゃない」←電話中
真澄「大丈夫、こんな事で拗ねるほどもう子供じゃないわ……うん、分かってる」
真澄「じゃあ夕食はまた別の機会に……お仕事頑張ってね、パパ」
真澄「…………」ピィ
真澄「……はぁ」
LDS校内……
北斗&刃「…………」
真澄「…………」ムスゥー
北斗「(ヒソヒソ)なあ、何か真澄の奴、今日はやけに機嫌悪そうじゃないか?」
刃「(ヒソヒソ)お前もそう思うか? まあ普段からそこまで愛想が良い訳じゃねえけどさ」
真澄「……そこ、何を2人でこそこそ喋ってるの?」
北斗&刃「!?」ビクッ
真澄「こっちをチラチラ見ながら内緒話とか凄く感じが悪いんだけど?」ギロリ
北斗「わ、悪い。そんなつもりは無かったんだけど」アタフタキオン
刃「その、何か機嫌悪そうだったから気になっちまってな」アタフタートル
真澄「……私の機嫌が良かろうが悪かろうがあんた達には関係無いでしょ?」
北斗「確かにそうだけど……って、何処に行くんだよ?」
真澄「帰るのよ、もう授業も終わってるしね。じゃあ」ノシ
刃「……さっさと行っちまったな」
北斗「……やっぱり何かあったのかな、真澄の奴?」
…………
真澄(本当なら今日は普段家に居ないパパと久しぶりに夕食を一緒にするはずだった。だけど当日になってパパの急な仕事でドタキャン)
真澄(正直な話、何となく予想はしていた。パパの仕事が忙しいのは知っているし、こんな事も初めてでは無かったからだ)
真澄(小さい頃は良く泣いて駄々をこねた事もあったけど、さすがにもうそんなわがままな子供は卒業している)
真澄(残念ではあるけど仕方ないと割り切れるくらいには自分も成長しているのだ。だけど……)
真澄「……はぁ」
真澄(それでも口から自然とため息が漏れる)
真澄(駄目ね、何時までも辛気臭くしてたら。北斗と刃にもいらない心配させてたみたいだし)
真澄(さて、今日の予定は完全に狂っちゃったしこれからどうしようかしら……あら?)
~♪
真澄(オルゴールの音色? 何でこんな所で?)
真澄(あっちの方から聞こえるわね。ちょっと覗いてみようかしら)トコトコ
…………
柚子「…………」
オルゴール<~♪
柚子「……えへへ♪」ニヘラー
真澄「――貴女の顔、緩んでるわ」
柚子「きゃあああ!?」ビックリボー
真澄「!?」ビックリボン
柚子「えっ、なっ、へっ? ま、真澄?」
真澄「ちょっと、そんなに大声張り上げなくても良いでしょ? 鼓膜が破れるかと思ったじゃない」
柚子「あ、あなたが急に声を掛けるからじゃない。というか何で真澄がここに居るのよ?」
真澄「オルゴールの音色が聞こえたから気になって見に来ただけよ。まさか1人でニヤついている貴女を見つけるとは思わなかったけど」
柚子「ニヤついてなんかないわよ!」
真澄「してたわよ。まるでこの世の幸せを全て満喫している様な笑みだったわ……傍目からだと少し危なく見えたけどね」プーブックス
柚子「~~~///」
真澄「それで何でこんな所で1人でオルゴールなんか聞いていた訳? もしかして誰かと待ち合わせ?」
柚子「何だって良いでしょ。真澄には関係無いわよ」プイッ
真澄「もしかしてこれから榊遊矢とデートとか?」
柚子「なっ、何でそれを……!?」
真澄「あら、冗談で言ったのに本当だったの? 成る程、それでやけに気合いの入った服を着ているのね」
柚子「え? あ、いや、その……?」オロオロットン
真澄「それにしても貴方達が付き合っていたなんてね……まあドジして嫌われない様にせいぜい頑張ると良いわ」ニヤニヤリザ
柚子(うぅ、真澄には内緒にしておきたかったのに~)グヌヌ
柚子「分かったならもうどっか行ってよ! 邪魔しないで!!」プンスカブックス
真澄「はいはい、言われなくてもすぐに行くわよ。馬に蹴られたくないしね」ノシ
柚子「まったくもう……あれ?」
真澄「どうしたの?」
柚子「……無い」
真澄「無いって何が?」
柚子「オルゴールが……無い」
真澄「はい?」
…………
真澄「――で、何で私がオルゴールを探すのを手伝わないといけない訳?」ガサゴソ
柚子「真澄が驚かすからこんな事になったんでしょ!」ガサゴソ
真澄「だからって驚き過ぎよ。弾みとはいえ茂みの中に投げるとか」
柚子「ああ、もう何処に行っちゃったんだろう? 大切なオルゴールなのに……」
真澄「そんなに大切なオルゴールなら大事に家に仕舞って起きなさい。まったく、外に持ち出すからこういう事になるのよ」
柚子「だ、だって……うぅ」ウルウル
真澄「ちょ、何も涙目になる事ないじゃない!?」オロオロットン
真澄(何でこんな事に……ああ、もう!)
真澄「ほら、涙を拭きなさい。これからデートなんでしょ? そんな酷い顔を彼氏に見せるつもりなの?」
柚子「真澄……」グスン
真澄「大丈夫、絶対にこの辺りにあるはずだから。私はもう一度こっちを探すから貴女はあっちの方を探しなさい。良いわね?」
柚子「う、うん」コクリ
数分後……
真澄「あったぁ!!」っオルゴール
柚子「えっ、本当?」
真澄「ほら、これでしょ? やっぱりベンチのすぐ近くに落ちてたわよ」
柚子「私のオルゴールだ……良かったぁ、見つかって」ウルッ
真澄「まったく、アクションカード探すより大変だったわ。てか貴女、また涙目になってるわよ?」
柚子「なんか安心したら自然となっちゃて……見つけてくれてありがとうね、真澄」
真澄「別にお礼なんて言わなくて良いわよ。それよりさっさと受け取りなさいよ」
柚子「うん、本当にありが……」
シュン!!
柚子&真澄「へ?」
真澄「オルゴールが……消えた?」
柚子「ど、どうして……あ!」
カラス<カァーカァー
柚子「カラスが私のオルゴールを……何で!?」
真澄「確かにキラキラしていてカラスの好きそうなオルゴールだったけど……って、のんびり眺めている場合じゃないわ!」ダッ
柚子「真澄!」ダッ
真澄「あのカラスは私が追うわ! 貴女はここで待っていなさい!!」
柚子「私も行くわよ! 私のオルゴールですもの!!」
真澄「貴女、待ち合わせの最中なんでしょ? ここを離れるのは不味いんじゃないの?」
柚子「平気よ、まだ約束の時間まで1時間以上あるし」
真澄「……貴女、そんなに早く待ち合わせ場所に来てたの? 随分とお熱なのね」
柚子「それは、その……そ、それよりカラス! 早く追いかけないと見失っちゃうわ!!」
真澄「分かってるわよ……たくっ、カラスめ! デュエリストの運動神経と動体視力を舐めるな!!」
雑木林……
真澄「確かこの辺りに飛んで来たと思うんだけど……」
柚子「あ、真澄! あそこの木!」
真澄「カラスの巣ね。さっきのカラスは居ないみたいだけど」
柚子「私、登って中を確かめて来るわ」
真澄「待ちなさい。それは私がやるから」
柚子「これくらいの木、私でも登れるわよ」
真澄「貴女、汚れた服でデートする気? 茂みの中を探していた時は気をつけていたみたいだけど、木登りなんてしたら確実に酷い事になるわよ?」
柚子「あ……でもそれだと真澄の服も汚れて……」
真澄「私は別にお洒落なんてしてないし平気よ。じゃあ大人しく下で待ってなさいよ、良いわね」
真澄(それにしてもまさか木登りなんてする羽目にはるとは思わなかったわ)ヨジヨジ
柚子「真澄ぃー大丈夫ー?」
真澄「この程度、アクションフィールドと思えば楽なものよ。さて、到着っと」ヨッコラセイクリッド
真澄(巣の中はビー玉に安物の指輪や手鏡、小銭まで……色々集めてるのね)
真澄「えっと、柊柚子のオルゴールはと……あった! やっぱりここに運んでいたのね」ガサゴソ
真澄「柊柚子ー! あったわよー貴女のオルゴール!」
柚子「あっ! 真澄、危ない!?」
真澄「え?」
カラス<カァーカァー
真澄「なっ、カラスが戻って来た!?」
カラス<カァーカァー
柚子「真澄、避けて!!」
真澄「こんな状態でそんな無茶が……あっ!」ズルッ
柚子「ま、真澄!!」Σ(゜Д゜ノ)ノ
真澄(くっ、手が滑った……ええい!!)
ドン!!
真澄(よし、木を蹴って態勢を整えた! 後は上手く受け身を取れば……!!)
柚子「真澄ぃー!!」ダッダッダッ
真澄「ば、馬鹿! 何で飛び出して……きゃあああ!!」
ドンガラガッシャーン!!
柚子&真澄「…………」ボロボロ
真澄「まったく、何であそこで飛び出して来るのよ!」プンスカブックス
柚子「し、仕方ないじゃない! 何か身体が勝手に動いちゃったんだから」
真澄「しかもそのせいで貴女まで汚れちゃったし……これじゃあ私が登った意味が無いじゃない」
柚子「それは……ごめんなさい」
真澄「まあお互いに怪我してなかったのは不幸中の幸いだけど」
柚子「そう、だよね……クスッ」
真澄「ちょっと、何を人の顔を見て笑ってんのよ?」
柚子「ごめん。だけど真澄ったら髪に枝が刺さったままで……ふふふっ」
真澄「ちょ、これくらいで笑い過ぎよ! ていうか貴女だって鼻の頭に土が付いて……ふふふっ」
柚子&真澄「あははははは♪」
…………
真澄「はい、オルゴール。もう落とさない様にしなさいよ」
柚子「うん。ありがとう、真澄」
真澄「さて、次はその服だけど……」
柚子「さすがに汚れ過ぎだよね。だけど代わりの服なんて無いし……」ションボリチュア
真澄「……だったらウチに来る?」
柚子「え?」
真澄「まだ待ち合わせまで時間があるんでしょ? ウチはこの近くだし、私の服で良いなら特別に貸してあげても……」
遊矢「――柚子!!」
柚子「遊矢!?」
遊矢「どうしたんだよ、その恰好? 何かあったのか?」
柚子「これは、その……ていうか何で遊矢がここに? 待ち合わせの時間ってまだよね?」
遊矢「いや、やっぱり早く来てないと落ち着かなくて……それより本当に何があったんだよ? 怪我とかしてないのか?」
柚子「それは大丈夫だけど……あ、あんまりジロジロ見ないでよ///」
遊矢「何で?」
柚子「何でってこんな汚れた格好で……恥ずかしい、から……///」
遊矢「そんなの気にしないよ。どんな格好でも……その、柚子は俺が好きな柚子なんだから」ホッペポリポリ
柚子「遊矢……///」
真澄「あら、随分見せつけてくれるじゃない」
遊矢&柚子「!?」
遊矢「お、お前は光津真澄? まさか柚子がこうなったのはお前が……」
柚子「違うの、遊矢! 真澄は私のオルゴールを……」
真澄「良かったわね、柊柚子。貴女の彼氏、その恰好でも気にしないそうよ」
柚子「ちょっと、何処に行くのよ?」
真澄「帰るに決まってるでしょ? オルゴールも無事に見つかったんだし、貴方達のデートを邪魔するほど野暮じゃないしね」
真澄「邪魔者はさっさと退散するから。後は思う存分イチャイチャすると良いわ」
柚子「イ、イチャイチャって……///」
真澄「じゃあね、柊柚子。もうカラスと追いかけっこなんてごめんだから」
柚子「あ、真澄、待って!」
真澄「何よ、まだ何かあるの?」
柚子「その、今日は本当に助かったわ」
真澄「もうお礼も謝罪も何度も聞いたんだけど?」
柚子「そうだけど……やっぱりもう一度言いたいと思うから」
柚子「本当にありがとうね、真澄♪」ニコッ
真澄「……だ、だからもう良いわよ!///」プイッ
真澄の自宅……
真澄(何か今日は疲れたわね。LDSでは実技授業はなかったっていうのに)←着替えた
真澄(そういえば本当に付き合ってたのね、あの2人。榊遊矢を見る柊柚子の目、とても輝いていたわ)
真澄「……それに引き替え今の私は1人、か」ボソッ
真澄「…………」
真澄(まあ、別に寂しくなんかないけどね)
真澄(さてと、夕飯までまだ時間あるしどうやって暇を潰そうかしら?)
<ユレテキラメイテペンデュラムーナキタイトキコソワラオ-
真澄(電話? 北斗から?)
真澄「もしもし、私だけど……何してるって家で寛いでるのよ」
真澄「えっ、カラオケ? 私も来ないかって?」
真澄「また急ね。そういう事なら前もって……いや、誰も行かないなんて言ってないじゃない。行くわよ」
真澄「は? 別に私の弾んでなんかないわよ。貴方の耳、くすんでるんじゃない?」
真澄「それじゃあすぐ準備して行くから……うん……あ、近くに刃も居るのよね?」
真澄「いや、別に大した事じゃないんだけど……貴方と刃には言っておいた方が良いと思うから……その、本当に大した事じゃないんだけど」
真澄「……ありがとね、2人共」
<おわり>
読んでくれた人、ありがとうございました。今更ですがこの話は以下の話の続きとなっております。
『遊矢&柚子(気まずい……)』
『遊矢&柚子(緊張する……)』
『遊矢&柚子(恥ずかしい……)』
他の話ももし何処かで見かけたらよろしくお願いします。では。
おつ
キマシかなと思ったらそうじゃなかった、けどほのぼのしたわ
乙
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