ベルトルト「君が好きだから」マルコ「大好きなんだよ!ユミル」(66)



2013年のクリスマスに合わせて深夜VIPに投下したSSの修正版になります
旧タイトルは“ベルトルト「ユミル、処女で死ぬのは寂しいよね?」X`mas SP”です

全面的な台詞の変更、修正、追加をしました。直した後もエロは無いです

スレタイを変更したのは「ユミル、処女で死ぬのは寂しいよね?」という台詞自体を削っ
てしまったからです(釣りタイトルだったこともあり自分でも気に入っていませんでした)

1日で書き切った話だったので推敲が間に合わず辻褄が合わない箇所があり、機会が
あれば補足・修正してどこかで上げ直したいと思っていましたのでこの場をお借りします


※注意 マル→ユミ、ユミクリ、ベル→アニ、ベル→ユミ要素あり


ベルトルト(今日は休日だけど特に予定も無いんだよね)

ベルトルト(ライナーは教官に呼ばれて不在だし、部屋には本を読むアルミン一人だけ)

ベルトルト(僕もたまには寮でのんびりと本でも読んでいようかな)




ベルトルト「あ、もうこんな時間か…食堂に向かわないと…」パタン

ベルトルト「ねぇアルミン、昼食の時間だよ。一緒に行かない?」

アルミン「えっ…もう?時間が経つのは早いね。じゃ、一緒に行こうか!」

アルミン「午前はお互いゆっくりと本を読めたね」

ベルトルト「そうだね。アルミンと二人っきりで休日を過ごすなんて初めてだよね」

アルミン「あははっ、そうかもね」

アルミン「ところでベルトルトは何の本を読んでいたの?」


ベルトルト「えっ…」

ベルトルト「あの、誰にも…言わない?」

アルミン「ひょっとして、エッチな本…?」

ベルトルト「ち、違うって!それはない」

ベルトルト「その…恋愛小説かな…」

アルミン「へぇ、意外だね」

ベルトルト「そう?図書室から借りてきて読んでるんだけどハマっちゃってね…」

アルミン「それってどんな内容?」

ベルトルト「えっと、重大な罪を犯した3人が、それぞれの好きな人…恋人じゃなくて」

ベルトルト「相手にしたら、ただの友達か知り合い程度の付き合いなんだけど…」

ベルトルト「その人達を死を待つだけの牢獄から連れ去って…」

ベルトルト「ずっと遠くの街まで6人で逃げる話なんだ」


ベルトルト「まだ最後まで読んでないから結末は分からないけど…」

ベルトルト「きっと最後は全員が幸せになれる…って信じて読んでるんだよ」

アルミン「重大な罪を犯した3人が、知り合いをさらって逃避行…って犯罪臭いね」

ベルトルト「いやいや、純愛物だってば!」

ベルトルト「だって、罪人達が連れ去らなかったら、相手はいずれ死んでたんだから!」

アルミン「でも罪人なんでしょ?」

ベルトルト「うん。罪人だけど理由のある『罪』なんだ。僕は彼らに同情できる…」

アルミン「そっか、ちょっと興味深いね」

アルミン「読み終わったら教えてよ」

アルミン「僕も今読んでる本を読み終えたら読んでみようかな…」

ベルトルト「うん、分かった!…アルミンは何の本を読んでいたの?」

アルミン「科学実験の本」


アルミン「過去の錬金術師の成果とか、この本は果物を用いた実験の結果が書いてあるよ」

アルミン「でも今じゃ果物も高くなったし、気軽に食べられるものでもなくなったから」

アルミン「もし食事に出てきたとしても実験なんかに使う余裕はないけどね」

ベルトルト「そう…少し残念だね」





~訓練兵団兵舎内 食堂~



ベルトルト「ここ座ってもいいかな?」カタン…

マルコ「ふふっ。もう君、座ってるでしょ」

アルミン「じゃ、僕もこの席にしようかな」

マルコ「はいはい。どうぞ、ご自由に」


マルコ「いつも一緒にいる二人が居ないね。ライナーやエレンはどうしたの?」

ベルトルト「ライナーは教官に呼ばれて朝から教官室へ行ってるよ」

アルミン「エレンもなんだよね、何かあるのかな?」

マルコ「そう言えばジャンとコニーも呼ばれていたみたいだよ、休日なのにね」

アルミン「ひょっとして現在の成績上位陣はみんな呼ばれてる?」

ベルトルト「でもその理屈だと僕も呼ばれてなきゃおかしいよ。一応、暫定3位だし」

マルコ「僕も呼ばれてないしね、まぁ戻ってきたら理由を聞いてみようか?」

ユミル「お!ここ空いてる」

ユミル「クリスタ、ここにしようぜ」

クリスタ「もう!勝手に決めちゃだめだよ、ユミル。まだ確認もしていないのに…」

クリスタ「マルコ、ベルトルト、アルミン。私達も同席していいかな?」

マルコ「もちろん、どうぞ!君達と食事が出来るなんて光栄だ」


ユミル「おいマルコ!なんか下心ありそうな言い方すんじゃねぇよ」

マルコ「し…下心なんてないよ!」

マルコ≪ただ…ユミルと一緒だなんて、嬉しいなぁって…≫/// ボソッ

ユミル「は?聞こえねえな、もう一回言え」

マルコ「えっ…あの…」/// カァァァ…

ベルトルト(あーぁ…顔が真っ赤だ。マルコって…ユミルの事、好きだったんだっけ)

クリスタ「ユミル!もういいから食べようよ、スープが冷めちゃう」

ユミル「あ、あぁ…なんだよ、ったく」チッ

ベルトルト(暫定10位のユミルも目の前にいるし、サシャもミカサも食堂に居る)

ベルトルト(やっぱり上位陣が呼ばれてる訳じゃないみたいだ)

ベルトルト「あ!そうだ、クリスタ」

クリスタ「何?…どうかした?ベルトルト」


ベルトルト「アニ達の様子はどう?べ、別に気になる訳じゃないけど…同期としてその…」

クリスタ「ふふっ…ベルトルトは仲間思いだね」

クリスタ「アニとミーナはまだ医務室で安静にしてるみたいだよ」

クリスタ「おたふく風邪が移っちゃうからお見舞いには行けないけど…」

クリスタ「早く治るといいよね!二人とも」

ベルトルト「そっか、まだ病気治ってないんだ…」

ユミル「もっとガキの頃にやっとけば楽だったんだけどなぁ…こればっかりは運だからな」

ユミル「ベルトルさんも様子を見に行こうだなんて考えるなよ?」

ユミル「お前がまだ済んでなければあっという間に感染してアニみたく隔離させられるぞ」

ユミル「アニも興味本位で覗きに来たお前に下膨れた顔を見られたくないだろうしな」

ベルトルト「興味本位ってことも無いけど、アニもミーナも早く良くなればいいなって…」

クリスタ「ユミル!それ悪い癖だよ。どうして人の善意に対して意地悪を言っちゃうの?」


アルミン「発病から1週間も経ったし、病状も落ち着いてきたってミカサから聞いてる」

マルコ「そうそう、心配しなくても大丈夫!成績が近いと気になっちゃう?ベルトルト」

ベルトルト「ま…まぁ、うん……そうだね」

ユミル「気になってるのはマルコだろ?アニが病気の間に抜くチャンスを狙ってるとか」

マルコ「ユミル、僕を見損なわないでよ?抜くなら実力で!いつもそう思ってるんだから」



ライナー「よし!昼食に間に合った」

ライナー「1席空いてるよな?俺も混ぜてくれ」

ベルトルト「ライナー!」

ライナー「クリスタ、隣の席いいか?」ガチャン…

クリスタ「うん!いいよ」

ユミル「てめぇはダメだ、ライナー。向こうで食え!私らの視界に入らない所でだ」


ライナー「は?なんでだよ!」

ユミル「下心が見え見えで気持ち悪ぃんだよ。それ以外の理由はない」

ライナー「お、お前なっ…」

クリスタ「ユミルっ!また言い過ぎ!!」

ユミル チッ…「クリスタ、私と席を替われ…お前はマルコの向かいだ。端っこ行け」ガタッ

ユミル「私はベルトルトの向かい」ストン

ユミル「ライナーは私の隣…んで、アルミンと向かい合って食えよ?それなら許してやる」

ライナー「クソっ…あぁ、もうそれでいいよ」

アルミン(鉄壁の守備だね、ユミル。君のクリスタ防衛ラインには本当に敬服するよ)

マルコ「はぁ…ユミル…」クスン…



ベルトルト「も、もう食べようよ。スープが冷めちゃってる」


ベルトルト「今日の食事は…えっ!これひょっとして牛乳…?」

クリスタ「豪華だね…。牛乳なんて珍しいね、ユミル」

ユミル「それだけじゃねぇんだ…ほらスープがクリームシチュー…」

ユミル「さすがに肉は入ってないが、ジャガイモ以外の具も入っている」

アルミン「しかも手に入りにくい果物まで…苺なんて久々に見たよ。どうしたんだろ」

マルコ「あの…みんな見てアレ…ほら、今ゆで卵が来た…」

マルコ「僕、みんなの分も貰ってくるね」カタン…

マルコ「えっと…6人分だね」

ベルトルト「牛乳…タマゴ、それと苺にシチューって…信じられない…」

ユミル「おいおい!今日は『王』の誕生日だったか?…ありえねぇぞ、最近の食糧事情で」

クリスタ「今日は休日だから、外にお出掛けした人はこれ食べれなくて残念だね…」ハァ

ベルトルト「訓練兵団の食糧予算が底をついたのか?ってくらい粗食だったもんね、最近」


ライナー「それなんだがな、今朝から俺が呼ばれたのもその件なんだよ…」

一同「…?」

ライナー「ウォール・ローゼ南方面駐屯訓練兵団の財務管理をやっていた兵士が、」

ライナー「兵団の差配資金を横領して捕まったのは知ってるな?」

ユミル「あぁ、そのせいなんだよなぁ。最近の配給食の粗食っぷり」

ユミル「盗んだ奴が悪いってのに、なんで私らにそのしわ寄せがいくんだか」ハァ…

クリスタ「…仕方ないじゃない。今の訓練兵団にお金がないのは事実なんだから」

クリスタ「毎月のお給金を減らされなかっただけでも良しとしなきゃ」

ユミル「給金は私らの権利だろ?王のために心臓を捧げてキツい訓練に耐えてんだからさ」

ユミル「飯だけじゃなくて、金まで減らされたら200人近い規模で暴動起きるぞ…マジで」

アルミン「で、何で呼ばれたの?ライナー」

ライナー「あ、あぁ…それでな、粗食の上にキツい訓練だ…」


ライナー「栄養失調で倒れる奴が続出しただろ?男女ともに」

ユミル「ざっと20人は下らないね。女子なんか月の物が止まった奴もいる。私もだが」

クリスタ「ユ、ユミルのばかっ!!男子の前でそんなこと言っちゃだめだよ!」/// カァァ…

マルコ「ゆで卵貰ってきたよ。遅くなってごめん…ってみんなどうして黙ってるの?」

ベルトルト「あ…な、なんでもない」///

ベルトルト(なんでユミルはこういう事、男の前でもサラっと言っちゃえるんだろう…)

マルコ「塩まで付いてるんだ、高価なのに。おかげで争奪戦だよ…ボタン引きちぎられた」

アルミン「それはご苦労様だったね、マルコ。僕らのためにありがとう」

ユミル「仕方ねぇな!お前の苦労に免じてそのボタン付けてやるよ。飯の後でな」

マルコ「本当!?ユミルありがとう!」

マルコ「ユミルは優しいね。そういうところが女の子らしくて、僕は好きだ」/// ドキドキ

ライナー≪なっ…ユミルが優しいって本心から言ってるのか?マルコ…≫ボソボソ


ユミル「なんだよ!聞こえてんだよ、この変態野郎。いつもクリスタを視姦しやがって!」

ライナー「おい!し、視姦ってな…お前…濡れ衣だ!!」///

クリスタ「あーーっあーーーっ!!聞こえなーーーい!!」

アルミン「もう、みんな静かに食べようよ……お腹痛くなってきた…」キリキリ…

ベルトルト(ユミルが女の子らしいだなんて恋は盲目だね、マルコ)

ベルトルト(まるで僕が今読んでいる本の主人公みたいだ)

ベルトルト(相手の事しか見えないくらいに深くはまり込んで…恋に溺れていく)

ベルトルト(身体を重ねた後はより夢中になって。読むのは好きだけど、実際はごめんだ)

ベルトルト(僕はまだ恋が怖い。自分が自分じゃなくなりそうで…。いつか全てを見失う)

ライナー「お前らのせいで全然話が進まんな…今から全員黙って聞けよ、本当に」ハァーッ

ライナー「それでな、あまりに訓練兵が倒れるもんだから、」

ライナー「食事に関してのみ使用して良いって事で、王から特別に予算を賜ったらしい」


ライナー「で、今日から食糧事情も順次改善される予定なんだ。今のはその第一弾だな」

ライナー「壁が破壊されてから4年も経って…」

ライナー「民衆も落ち着いて来て、徐々に食糧生産も安定してきているように見える」

ライナー「金さえあれば、食いたいものは一応、食えるまでには回復している…と思う」

ベルトルト「…」

ライナー「まぁ、金さえあればな…」

クリスタ「アルミン…ちょっと、何してるの?!」

アルミン「えっと、科学の実験…かな?」

ユミル「キレイに食べろよっ!食べ物で遊ぶな!!この頭でっかちがっ」ダンッ

アルミン「大丈夫!全部食べるから!!」アセッ

アルミン「あの本に書いてあることが本当かどうか試してみたかったんだ」

ベルトルト「あの本ってさっき言ってた『果物を用いた実験』の事?」


アルミン「そう、えっと酸味を感じる果物を潰して牛乳と混ぜると液体と固体に分離する」

アルミン「…って書いてあったから試してみたんだけど、本当に分離した…凄い!」パクッ

アルミン「ん~…でも味はいまいちだ。ドロっとした食感もそうだけど、美味しくない…」

アルミン「これなら個別に飲んだり食べたりした方が美味しいな…。いい勉強になった」

ユミル「当たり前だろ…もったいねぇ」

アルミン「でもさ、どう食べたって栄養は同じなんだから僕は満足だよ」ニコッ

ベルトルト「探究心が強いよね、アルミンは」

ユミル「牛乳を液体と固体に分離させる…そういやかなり昔に私もやった事があるな」

ユミル(やり方は覚えている。生乳からバターと生クリームが作れる。あと必要なのは…)

ユミル「ライナー、話を続けてくれ」

ライナー「あ、あぁ…どこまで話したっけな、王から特別支給金が出たとこまでだな」

ライナー「それで今朝から体力がありそうな奴らが教官室に呼ばれてな」


ライナー「みんなで手分けして訓練所周辺の農家や酪農家などの生産者から、」

ライナー「食糧を分けて貰っていたんだ。あぁ、もちろん購入して…だぞ?」

ライナー「俺達は総勢200人超えの集団組織だからな。市場で買い付けるのは高く付くし、」

ライナー「周辺に住む一般市民にも影響が出るだろ?なんせ大量買い付けだ…」

ライナー「ま、次からは出入りの商会に食糧調達を頼むらしいから俺達は今日だけな!」

ベルトルト「ライナーとエレンとジャンとコニーは買い付けの手伝いで呼ばれたのか…」

マルコ「別に成績上位だから呼び出された訳じゃなかったんだね。ふぅ、これで解決だ」

ベルトルト「でも僕とマルコとアルミンを呼ばなかったってちょっと仲間外れ気分だね」

アルミン「そうかな?むしろ幸運だったんじゃないかな。だって休日だもん、今日」

マルコ「こういうのは運だからさ。僕も今朝は給仕当番で部屋には居なかったし…」

マルコ「君はこないだ貧血で倒れたばっかりだから、あえて呼ばれなかったっぽいね」

ベルトルト「あぁ…あれか…」


ユミル「ベルトルさんは身体がでっけぇだろ?やっぱ、食事が足りてないんだよ」

クリスタ「私もそう思う…ここは良くも悪くも男女平等だから訓練の内容も同じなら、」

クリスタ「食事の内容も同じ…。量もほとんど同じ」

ユミル「でも体格差がありすぎるよな。体重が半分のクリスタと同じ食事の量ってのは…」

ユミル「正直、ちょっと可哀想だと思ってた」

ユミル「ライナーみたいに給金で何か買ってこっそり食えばいいのに…」

ライナー「いいだろ、あれじゃ本当に足りないんだよ…」

ベルトルト「う~ん…そうなんだけど、特に食べたい物もなくてね」

ベルトルト「別に無理して食べなくても平気って言うか…」

マルコ「平気じゃないからこないだ貧血で倒れたんだろ?」

ベルトルト「うん、そうなんだけど…」ショボン…

ユミル「故郷の料理とか食べたいのないのか?食欲が出るような、好きな味とか」


ベルトルト「すぐには思い浮かばないんだ。でも甘い物は好きかな?」

アルミン「甘い物って…砂糖を使った料理とか?」

クリスタ「砂糖はまだ高価だよね。お金があったとしても売っているところが少ない」

一同「はぁ…」

ベルトルト「ちょっと!僕の事でため息つかないでよ!!もう貧血は良くなったし…」

ベルトルト「今後の事とか考えて少し憂鬱になって食欲が落ちているだけで」

ベルトルト「僕は病気でも何でもないんだから!」

ライナー「ま、そうだな。卵や果物や牛乳が毎日出てくるわけじゃないが…」

ライナー「今後は食事内容も良くなるだろ。食事量の差は今後キース教官と相談だな」

クリスタ「何だか話し込んでたらすっかり料理が冷めちゃったね…あ、ベルトルト!」

ベルトルト「ん?」


クリスタ「私の苺食べなよ…甘酸っぱくて食欲出るよ!果物は嫌いじゃないよね?」

ライナー「さすがクリスタ、俺の天使だ」

ユミル「こんなのにやるなよ…クリスタ。お前が要らないなら私が貰う!」ヒョイ… パクッ

クリスタ「あっ…ユミル!も~ぅ…」ムスッ

ユミル「私だって女子の中じゃデカい方なんだからな…貰ったっていいだろ?」モグモグ

クリスタ「それはベルトルトのために……むぅ、ユミルってばいっつもそう!!」

ユミル「何をやっても最後には必ず許してくれるお前が好きだよ。愛してるぜ」チュッ

クリスタ「ひゃっ!……ダ、ダメだったら…ねぇ、ホントに…」/// カァァァ

マルコ(クリスタが羨ましい…)///




~食堂から宿舎へ戻る廊下~



ユミル「待て、ライナー…と、ベルトルさん」

ライナー「何だ?」

ベルトルト「なに?」

ユミル「お前ら、金…持ってるか?」

ライナー「はっ?」

ベルトルト「持ってるよ、で…いくら借りたいの?」サッ

ライナー「おい待て!ベルトル。素直すぎるぞ…すぐに財布を出すんじゃない!!」

ライナー「ユミル、恐喝か?…それとも強盗か?」


ベルトルト「!?」

ベルトルト「えっ!…待って、そういう話なの!?」

ユミル「んなわけねぇだろ。ベルトルさんにご馳走してやろうと思ってさ!」

ユミル「ま、お前にかこつけて、自分が食いたいだけなんだけど…」

ユミル「みんなから少しずつな、参加費を頂戴する事にした」

ライナー「参加費だと…?そりゃ一体何の集まりだ?」

ユミル「ここじゃないどこか、ひょっとしたら誰かの空想世界の物語かも知れない」

ユミル「昔の聖人の生誕をお祝いする日なんだ、今日は」

ベルトルト「昔の聖人…」

ユミル「詳しい事は私も知らないんだ」

ユミル「その日はケーキを食べて、互いに贈り物を交換する日らしい」

ライナー「…ケーキ」ゴクッ


ユミル「幸い今日は休日だ。今からみんなの金を集めてクリスタと材料を買ってくる」

ユミル「たった今思い付いたから…贈り物の準備は出来ないけど」

ユミル「ケーキだけは何とかなる」

ユミル「ベルトルさんも甘い物でも食べてさ、元気出せ!ここに居る連中だって…」

ユミル「これからの事はみんな不安なんだ。お前一人じゃないからさ。気持ちを楽にな」

ベルトルト「ユミル…」

ベルトルト(彼女の意外な一面を見た。マルコの言ってた通り、ユミルって本当は……)

ユミル「そんなわけでほら、金寄越せ!!早くっ」

ユミル「てめぇらデカいだろ?身体。良く食うはずだ!他の奴らの2倍払えよ!!」

ライナー「!?」
ベルトルト「!?」


ベルトルト(やっぱりユミルはユミルだ!全然優しくなんかないし可愛くも無いっ!)




~男子寮の一室~



ベルトルト「もう夕食の時間だ…早いね」

アルミン「本当に本を読んでるとあっという間だね。でも今日は充実した1日だったよ」

ベルトルト「僕も結構読み進めちゃった、この本」パタン…

ベルトルト「でも今切ない所でね、その中の主役の二人が思い違いでまたすれ違うんだ…」

ベルトルト「彼らは愛し合ってるのに。このままだと、永遠に離ればなれになってしまう」

アルミン「へぇ~、その話の中の罪を犯した3人は、さらった友人達と幸せになれそう?」

ベルトルト「う~ん…どうだろ」

ベルトルト「その続きはアルミン自身が自分で読み進めていった方が楽しめるよ」

ベルトルト「なんて、まだ僕も知らないんだけど。でももうすぐこの話も読み終えるから」


ベルトルト「読むのが面倒臭くて結末だけ知りたいって言うのなら後で教えてあげるね」

ベルトルト「僕は小説も、食べ物も…甘い物が好きなんだ」





~訓練兵団兵舎内 食堂~



サシャ「お~い!コニー。こっちですよ」フリフリ

コニー「サシャ!お前、ユミルから聞いているか?」

サシャ「えぇ、もちろん!えっと…何でしたっけ?くりすた集会?今夜ですよね」

サシャ「名前は忘れちゃいましたけどケーキ食べれるんですよ!ケーキ」ダラーッ

コニー「クリスタ集会って…クリスタの誕生日か何かかよ…」

ミカサ「隣、いい?」


サシャ「はい、どうぞ!」サッ

サシャ「ミカサ!私達頑張りましたよね?」

ミカサ「えぇ…ユミルがどうしても今晩ケーキを作りたいって言うから…」

ミカサ「砂糖代わりの蜂蜜を午後から訓練場で探して採ってきた」

コニー「待て!蜂の巣ってそう簡単に見付かるものなのか?てか取れるのかよ…」

サシャ「前から美味しそうな蜂の巣だなぁって目を付けてたんですよ!コニー」

サシャ「蜂蜜はみんなの物ですが、蜂の子は私の物ですよ!!」フッフッフッ…

エレン「蜂の子なんてゲテ物いらねーよ…」

エレン「で、蜂の巣取りで休日潰したのかよ…ミカサ」スッ

サシャ「もうミカサのブレード捌き、凄かったんですよ!エレン」/// ハァ…ハァ…

サシャ「スパッと一撃で樹から蜂の巣を引き剥がして、速攻で厚手の麻袋に入れ…」

サシャ「追いかけてくる蜂をブレードで叩き落としながら立体機動でひたすら逃げる!」


サシャ「無事に兵舎内の中庭に逃げ込んだ後は、麻袋を乾草で蒸し上げて蜂蜜をですね…」

エレン「へ、へぇ…そ…そうかよ。そりゃホントに…お前ら、うん…頑張ったんだな…」

コニー「あのさ、休日に勝手に立体機動装置を持ち出した事が教官にバレたらだな…」

ミカサ「そう、全ては覚悟の上…エレンとアルミンに美味しいケーキを食べさせるため」

ミカサ「お咎めを受けるリスクを負い、休日を半日潰した事に…後悔は、ない!!」

ジャン「エレン、お前また無意識にミカサの隣に座ってんじゃねぇぞ!そこ替われ!」

ミカサ「ジャン…静かにして…早く座って」

ジャン「あ…あぁ、悪ぃ…」

アルミン「僕もここいいかな?ミカサとサシャで蜂蜜を採ってきてくれたんだってね」

アルミン「大変だっただろ?ありがとう」

アルミン「僕とベルトルトは結局何も頼まれなくて、部屋でゆっくりしてただけなんだ」

エレン「ま、いいんじゃねーか?」


エレン「お前も最近顔色が悪かっただろ?体力も落ちてたみたいだし、あの粗食のせいで」

エレン「ユミルが気を回してアルミンとベルトルトは手伝わせなかったんだと思うぜ」

コニー「ははっ…あのユミルが他人に気を遣うような女かよ……」

サシャ「でもみんな楽しみですよね!?ケーキッ♪ケーキッ♪」

ミカサ「取り敢えず女子だけ、19時には炊事場に集まるように言われているから…」

ミカサ「私達は蜂蜜を持って…忘れないように早目に行こう、サシャ」

サシャ「はい!!それにしても鋼貨3枚も出したんですからね!」

サシャ「そりゃあもう、すっごく美味しいんでしょうねっ!」ダラァーー

コニー「鋼貨1枚だったぞ…俺は」

サシャ「えっ!?」

アルミン「僕も…」

ジャン「俺もだ」


エレン「1枚だな…」

ミカサ「私も…エレンと同じ…」

サシャ「…」

サシャ「ユミルっ!ユミルどこですかっ!!」

サシャ「ちょっと話が違いますよ!酷いですっ!!誰かーーっ」グスッ

ジャン「サシャ、うるせぇぞ!!よく食う奴から多めに払わせたんだろ…いいから座れ!」



一方、別のテーブルでは…



ベルトルト「えっ!ライナー戻って来ないと思ったら小麦粉買いに行ってたんだ」

ライナー「そうだ、ユミルに頼まれてな」

ライナー「こっそり食糧庫から拝借すればいいって言ったんだが」


ライナー「『それだと誘ってない他の訓練兵が割を食うだろ!』…ってユミルがな」

ライナー「変なところで律儀なんだよな、あいつ。昼の苺は容赦なくパクってたんだが…」

ベルトルト「盗んでないって!手を付けられず残った苺を集めて隠しておいただけでしょ」

マルコ「このご時世、苺を手に入れるのは大変だもんね。それは仕方がない」

クリスタ「ここ…座ってもいいかな?」

ライナー「クリスタ、俺の向かいに来てくれ」

クリスタ「あっ…うん、いいよ!」

ベルトルト「ユミルは?」

クリスタ「もうすぐ来るよ、ほら来た!ユミル~こっちだよっ」チョイチョイ

ユミル「おいクリスタ…。ライナーのそばに寄るなって何度も言ってんだろ!」

ライナー「何でそんなに俺を警戒してるんだよ…」

ユミル「お前がクリスタを狙ってるからだ」キッパリ


ライナー「…」

マルコ「僕の前に座りなよ、ユミル」

ユミル「ん?じゃ、そうする」ストン…

マルコ「ありがとう。ねぇ僕らは21時に食堂に集合でいいんだっけ?」

ユミル「あぁ、お前らは21時でいい。私とクリスタは19時な!で、早めに準備を始める」

クリスタ「うん!分かってる」

ユミル「見回りの奴らに見付からねぇようにこっそり抜け出して来いよ!お前ら」

ユミル「土台は25~30分ぐらいで焼けるんだが、使い慣れてないパン焼き釜だからな…」

ユミル「正直、加減がわからん…」ハァ

ユミル「勘でやるけど、まっ黒こげになっても文句言わずに食えよ」

マルコ「もちろん!ユミルのケーキだからね、残したら罰が当たる」

ユミル「はは、ちげぇねぇな!」


ユミル「そうだ!マルコ、昼に付けてやったボタンは緩んでないか?」

マルコ「う…うん、大丈夫。ありがとう」

マルコ「女の子だね、ユミルは。裁縫も上手だし、ケーキの作り方も知っている」

ユミル「別に男に生まれても良かったけどな…」ボソッ

ユミル「そしたら本当にクリスタと結婚できたのに」

マルコ「結婚?えっと、クリスタと…?」

クリスタ「ユミル!冗談でもここで言うことじゃないよ。嬉しいけど恥ずかしい…」///

ベルトルト(クリスタも満更でもないって顔してるんだよね…。禁断の世界を垣間見た)

ライナー「しっかし、夜はまた粗食に逆戻りだな…これじゃいつもの飯と変わんねぇぞ…」

マルコ「薄く塩味が付いた豆のスープにいつもの硬いパン。あと水とバナナ…」

マルコ「えっ……バナナ?」

ベルトルト「あ、そうだった!今日はなぜかバナナが付いてきたんだよね」


ライナー「バナナって、ローゼで育つのか?」ジッ…

ユミル「私もさっきな、訳知り顔の奴に聞いてみたんだけど…これ温室栽培なんだって」

ユミル「試験的に作った物をどっかの馬鹿が試しに買い付けたんだろ?栄養価も豊富だし」

ベルトルト「なるほどね…。温室栽培なんて高い果物を無理して買っちゃったもんだから」

ベルトルト「今日の分の予算を使い切っちゃって残りはいつもの粗食なんだね…」

ユミル「マジで迷惑な話だな…」ハァ…

クリスタ「ベルトルト、私のバナナあげる」

一同「!?」

ベルトルト「ぼ、僕!?」

クリスタ「だってバナナも甘いよ?栄養も充分!もう貧血起こさないようにね」ニッコリ

クリスタ「それに私のバナナ他のより大きいみたい。私の手の大きさが16cmだから…」

クリスタ「ざっとこれは、22cmくらいかな?」


ベルトルト「ありがとう、クリスタ。でも悪いから僕のバナナと交換にしようか?」

ライナー「クリスタ、俺にもくれないか?いや、それだとお前に悪いな。俺のと交換だ」

クリスタ「交換じゃなくてもいいよ。二人で私のバナナを仲良く半分個して食べてね」ハイ

クリスタ「私は食べなくても平気だから…」

ユミル「平気じゃねぇよ!!」

クリスタ「!?」ビクッ!

ユミル「だから身長伸びねぇんだ!お前」

ユミル「何だよ!今度は餓死でも狙ってんのか?こないだの雪山訓練で失敗したからって」

クリスタ「違うよ、ユミル!私はそんなつもりじゃ…」

ユミル「くそっ!ベルトルさんも、こいつが変なこと言い出したら断れよ!」

ユミル「バナナなんて嬉しそうに貰ってんじゃねぇ!」バンッ!

ユミル「寄こせよ!クリスタ、お前がいらねぇってんなら私が代わりに食ってやる!!」


ベルトルト「あっ…」

ベルトルト(あぁっ…ユミルが、僕の22cmのバナナの皮を素早く剥いて…口の中に…)

ベルトルト「ユミル、ダメだ!!」

ユミル「!!」

ベルトルト「それは僕が食べる。せっかくクリスタが僕のためを思ってくれたのに…」

ベルトルト「君にあげる訳にはいかないよ」

ユミル「…歯形が付いてるけどこのまま返していいのかよ」

ベルトルト「構わない、そのバナナは僕が食べる」

マルコ「ねぇ、それって間接キスだよね」

ユミル「ば…ばか!違ぇよ…」/// カァァァ…

ベルトルト「そ、そうだよ!からかわないでよ、マルコ…」/// カァァァ…

マルコ「なんだよ、それ…。二人とも意識しないでよ…」ギリッ




~19時半 炊事場 女子達の時間~



サシャ「ミーナとアニも誘いたかったですねぇ…」

クリスタ「気持ちは分かるんだけど、二人ともおたふく風邪に罹っちゃったから…」

クリスタ「私達とは面会謝絶、隔離されてまだ医務室で過ごしてるんだ」

ミカサ「仕方ないでしょ、サシャ。世界は残酷なの…参加出来ないのは運がないから」

ミカサ「私達は今自分に出来る事をするだけ…」

ユミル「よし!このパン焼き釜でもかなり上手く焼けたぞ…。少し冷ましておこう」

サシャ「うわぁ~……良い匂いです、ユミル」クンクン… スーーーハーーーッ

ユミル「だろ?お前とミカサが採って来てくれた蜂蜜のおかげだな」フフッ

サシャ「えへへ…」/// テレテレ


ユミル「あとクリスタが一生懸命、生乳を混ぜてくれたおかげで新鮮なバターが作れた」

ユミル「よく頑張ったな!クリスタ。手首の調子はどうだ?痛めてないか?」

クリスタ「うん!私は平気だよ。生乳を混ぜるのも楽しかったし」

ユミル「バターを作る時に出たこの乳清に手を加えて、生クリームの代わりにする」

ユミル「そうすりゃ無駄は無いし、栄養も逃がさず取れる。味はちょっと犠牲になるがな」

ミカサ「それを食べればアルミンも元気になる?アルミンは最近少し顔色が悪かった…」

ユミル「う~ん…アルミンはベルトルトより元気そうだけどなぁ…」

ユミル「ま、よく分かんねぇけどみんな元気になるんじゃねぇか?」

サシャ「さぁさぁ、そろそろ男子が来ちゃいますよっ!飾り付け頑張りましょう!!」

ユミル「スポンジケーキ冷めたかな?」グッ… パフパフ…

ユミル「よし、いいな!結構骨が折れるな。…ホールケーキ3個も作れば当たり前か」

サシャ「あっ!ユミル、私お金払い過ぎです!!返してくださいよぉ…」グスッ


ユミル「お前、一人で1ホール食う勢いだろ…。返さねぇよ!大人しく鋼貨3枚分味わえ」

サシャ「お…美味しいぃぃ…」モグモグ…

ユミル「おい、馬鹿っ!つまみ食いは禁止だ!!」

クリスタ「ペタペタペタッ……っと生クリームを塗って、その上に苺を飾り付けて…」

ミカサ「完成…?こんなケーキ…初めて見た」

ユミル「これで完成だ!!あってるよ。昔、本で見たとおりだ。魔法の国にあるお菓子」

ユミル「『クリスマスケーキ』の完成だ!」







マルコ「ユミル来たよ~」

アルミン「僕も来たよ。手伝わなくてごめんね」

ライナー「時間、ちょっと早かったか…?」

ベルトルト「あ~…甘くていい匂いがする…」ホワン…

コニー「は、腹減った…。ユミル、ケーキはまだかよ」

ジャン「いいか?ミカサが切り分けたケーキは俺が食べるんだからな!?」

エレン「うっせぇな!好きにしろよ。俺は誰が切ってもいいから早く食いてぇんだよ!」

コニー「なぁなぁ、お前ら早くそのケーキを持って食堂へ行こうぜ!ほらっ」

女子一同「えっ…?」


コニー「見ろ!すげぇだろ?食堂、飾り付けしたんだぜ、俺達で。こっそりな」ニヤニヤ

ユミル「クリスタ誕生日おめでとう…?」

ユミル「なんだこれ…」

クリスタ「えぇっ!」

クリスタ「コニー違うよ…。だって私の誕生日、来月だもん…」

ライナー「…は?」

マルコ「コニー…君、間違えたね」ジトッ

コニー「だってサシャが、今日はクリスタ集会だって言うから、てっきり誕生日かと…」

ユミル「サシャ…お前…。『クリスタ』じゃなくて『クリスマス』だって言っただろ?!」

サシャ「だって…ク、クリスマスだなんて単語知りませんもん!」

サシャ「誰だってクリスタの事だって思うじゃないですか!!うぅぅ…」

エレン「何だよ、クリスタの誕生日じゃねぇのか…。俺達、勘違いで飾り損かよ…」


ジャン「いや、そうでもねぇぞ…」

ジャン「おい、ベルトルト…お前もうすぐ誕生日だったよな?」

ベルトルト「えっ!!」

ベルトルト「よく覚えてたね、前にちらっと言った事あったっけ…?」

ジャン「何となく覚えてたんだよなぁ」

ジャン「だからってプレゼントも何も用意してないんだが」

ジャン「ここをこうして…こうしてだな……うん、いい感じだ」チョイチョイ…

ジャン「どうだ?こんなもんでいいか?」

コニー「おぉ!ジャン、お前やるジャン!!」

クリスタ「すごぉい…上手に書き直したね、ジャン」

ジャン「へへへっ、まぁな!じゃ、仕切り直してこれでいくか!!見てたか?ミカサ」

ミカサ「見ていた、ジャンはもう少し字の練習をするべき…」


ユミル「ははっ…ま、確かにな。一理ある」

ジャン「何の集会かは知らないが、」

ジャン「今日は『ベルトルトの誕生日会』って事でいいじゃねぇか!なぁ」

サシャ「ジャン、素敵です!」/// キラキラ…

アルミン「うんうん!ジャンかっこいいね」

ユミル「クリスマス会…なんだけどな、一応。…ここまで来たらどうでもいいか」

ユミル「元はと言えば、ベルトルトのために計画したようなものだしな。成り行きで」

マルコ「ユミル…ベルトルトのためにこんな大掛かりな事を……」

エレン「もう名前なんてどうでもいいからケーキ食おうぜ!」

ミカサ「えぇ、そうしましょう。私も卵を混ぜるの頑張った…。私達の蜂蜜も入っている」

ジャン「って事は、これはミカサの手料理…いや、デザートか?」ゴクッ


クリスタ「ライナーもお腹いっぱい食べてね。多めに作ってあるから」

ライナー「クリスタのお手製か…じゃ遠慮なく…」

アルミン「わぁ…3個もあるよ、大きいのが。ちょっと端っこかじられちゃってるけど…」

アルミン「ねぇ、他の部屋にも持ってっちゃダメかな?何だか僕らだけじゃ勿体無くて…」

サシャ「ダメです!私達だけでこっそり味わいましょう!!余ったら私が食べますから」

サシャ「でもアニとミーナにだったらいいですよ!あとで医務室へ持って行きましょう」

アルミン「うん、そうしようか!」

ユミル「金をさ、集め過ぎてな…。無駄に作りすぎたんだよな…実は」

ユミル「砂糖の代用で蜂蜜の当てがあったから、それでだいぶ材料費が浮いたのもあるし」

サシャ「もぐ…むぐ、もぐ…じゃぁ…お金かへひてくらさぃよ…ゆみる…んぐっ…」ゴクン

ユミル「お、おまっ…!それまだ切ってないだろ!!」

ユミル「勝手にフォーク突っ込んで食ってんじゃねぇよ!サシャ」


エレン「見栄えはいまいちだけど味は良いな…」モグモグ…

コニー「俺こっちのケーキもーらいっ!」ヘヘッ

クリスタ「ライナーとベルトルトとマルコの分は私が切り分けてあげるね!」

ユミル「おい!お前ら、食うのは『メリークリスマス!!』って言ってからなんだよ!」

ミカサ「エレン…ほっぺたにクリームついてる」フキフキ…

ベルトルト「あはは…」

ベルトルト「みんな自由だなぁ…」ハァ…

エレン「ベルトルト、まだ早いけど誕生日おめでと!」

エレン「生まれてきて、良かっただろ…?」

ベルトルト「……エレン…?」ジワッ…

ベルトルト(あれ…どうして涙が…)ツツーーッ

コニー「エレン!お前、ベルトルトを泣かすなよ」


エレン「お、俺のせいじゃねえよ!!」

アルミン「みんなでちゃんとお祝いしないとね」

アルミン「『ベルトルトお誕生日おめでとう』って!少しだけ気が早いけど」

ライナー「はははっ!良かったな、お前」バンッ!

ベルトルト「ライナー…」

アルミン「じゃ、いくよ」

アルミン「せーーーのっ!!」

一同「「「ベルトルト!16歳の誕生日おめでとう!」」」

ベルトルト「み、みんな…ありがとう」ゴシゴシ…

ベルトルト「でも大声出すと教官達に見付かっちゃうかもだから静かにね…」シーッ

ユミル「ベルトルさん、今夜はいっぱい食べろよ?身体大きいんだからさ。…でさ、」

ユミル「ここで甘い物をしっかり食べて、栄養も取って、また元気になれよ!」


ユミル「訓練所を出た後はもうこいつらとこんな馬鹿な事をする機会は無いだろうけど…」

ユミル「未来が不安なのはみんな同じなんだ。それぞれの場所で、立場で頑張るしかない」

ベルトルト「うん…うん……そうだね。ユミル、ありがとう」

ベルトルト「今回のってさ、全部僕のためなんでしょ?ひょっとしたら誕生日の事も…」

ユミル「いや、誕生日は本当に知らなかったんだよ。…ただ『クリスマス』ってヤツをな」

ユミル「一度やってみたかっただけなんだ」

ベルトルト「そっか…。それを聞いて安心した」

ユミル「ん?」

ベルトルト「だって何から何まで仕組まれていたとしたら、君に悪いじゃない」

ベルトルト「いつか君にお返ししないとね」

ユミル「何もいらねぇよ!見返りが欲しくてやってる訳じゃないんだ。気にしないでくれ」

ベルトルト「うん…」


マルコ「ユミル、今いいかな?」

ユミル「ん?いいぞ、どうした?」

マルコ「ここだとちょっと…少し外に出ない?二人だけで話したい」

ユミル「あぁ…別にかまわないが……」

ベルトルト(マルコ…?)





~炊事場の勝手から少し離れた樹の下で~



ユミル「食堂に置いてあったランタンを勝手に持ってきたけど、この灯も頼りない感じだ」

マルコ「真っ暗だもんね、外は。…僕が怖い?暗闇の中で男と二人っきりって言うのは…」

ユミル「いや、別に…。それより私に何か話があったんじゃないのか?」


マルコ「あの、あのさ…」

マルコ「僕は憲兵団に入るよ」

ユミル「もう知ってるよ。入団式の時にそう言ってたもんな。王にこの身を捧げるって」

マルコ「ユミルはどうするの?今の所、成績は10位以内に入ってるけど…」

ユミル「さぁな、クリスタが行くところに行くかな…。だからあいつの成績次第だ」

ユミル「どう転ぶか分からない」

マルコ「…」

マルコ「ユミル!訓練兵団を卒業したら僕に付いて来てよ!!」

ユミル「はぁっ?お前と、どこに行くんだ?」

マルコ「どこって…その、僕と一緒に憲兵団に入ってくれないか?って意味でね…」

ユミル「いや、だから分からないって…」

マルコ「そうじゃなくて……僕は…」


マルコ「君が好きなんだ。大好きなんだよ!ユミル。だから君と一緒に居たい」

マルコ「もし君がこの先、10位以内から落ちて憲兵団への入団資格を失っても…」

マルコ「僕が絶対君をお嫁さんに貰って、シーナへ連れて行くから…」

マルコ「だから兵士を辞めて僕と一緒に、ウォール・シーナまで来てよ!!」

ユミル「マルコ…あのさ、気持ちは嬉しいが…」

ユミル「その期待には応えられねぇな…」

マルコ「好きな人がいるの…?」

ユミル「あぁ…」

マルコ「ベルトルト?」

ユミル「違う!なんで突然あいつの名前が出てくるんだよ!!」

マルコ「…」

マルコ「だって君はいつもベルトルトの事、気にしてるように見えたから…」


ユミル「あいつを特別意識した事なんかねぇよ。そう見えたのは気のせいだ」

ユミル「私が好きなのは、クリスタだ…」

マルコ「クリスタは女の子だよ?」

ユミル「あぁ、それも知ってる。でもそれが何だ?好きな気持ちに偽りはねぇんだ…」

ユミル「だから悪ぃな、お前の気持ちには応えてやれない」

マルコ「そっか…振られちゃったか…」

ユミル「…」

マルコ「手を出して」

ユミル「…?」スッ

マルコ「僕からのクリスマスプレゼント」ギュッ

ユミル「!?」

マルコ「今日は聖人の記念日でケーキを食べて互いに贈り物を交換する日なんだろ?」


ユミル「それよく知ってたな」

マルコ「うん、今日の昼食の後、君がライナー達と廊下で話してるのを聞いてね」

マルコ「訓練で使っている馬を借りて、急いで街まで行って買ってきたんだ」

ユミル「この髪留めを?」

マルコ「うん…」

ユミル「チューリップがモチーフか…」

マルコ「チューリップの花言葉は『永遠の愛』」

マルコ「でも、色によって花言葉が違うって知らなくってさ…」

マルコ「僕は『黄色』を買ってきちゃった」

マルコ「念のため夕食後に図書室の本で花言葉を調べ直して愕然としたよ」

マルコ「だって黄色のチューリップの花言葉って『実らぬ恋』、『望みのない恋』だって…」

ユミル「…ごめん」


マルコ「ううん、いいんだ」

マルコ「僕はまだ諦める気は無いから」

ユミル「えっ!」

マルコ「もし卒業までに、いやそれ以後でも気が変わったら教えて!!君を待ってるから」

ユミル「いやいや、ないって!諦めろ!!」

ユミル「それにこれは受け取れない…」

マルコ「どうして?」

ユミル「これを受け取る理由がない。あと、私はお前に贈り物を用意してない…」

マルコ「贈り物なら今、ここで貰う…」グイッ

ユミル「あっ…」ギュゥ…

マルコ「僕にキスして、ユミル。僕は君の唇が欲しい…」ギュゥゥゥ…

ユミル「マルコ…」




~月日は流れ、シガンシナ区・開閉門壁上~



ユミル「くっそ~やっちまった…」

ライナー「このまま故郷に行けばお前はまず助からないんだぞ…?」

ライナー「逃げるなら…今だ」

ユミル「もういいんだよ」

ユミル「…もう」

ベルトルト「ユミル…何で…僕を助けてくれたの?」

ユミル「お前の声が聞こえちまったからかな…」

ベルトルト「ありがとう、ユミル…」

ベルトルト「…すまない」


ユミル「いいや、女神さまもそんなに悪い気分じゃないね」

ライナー「ユミル、ベルトル…。水でも飲むか」

ライナー「シガンシナ区は川が流れてるし、井戸もある」

ライナー「どっかで容器を拾って汲んでくる」

ライナー「鍋型は無理だな…立体機動じゃ、こぼしちまうからな。ははは」

ライナー「ついでに酵母付きの食糧を見付けたいところだ。駐屯兵詰所が分かればなぁ」

ベルトルト「気を付けてね、ライナー」

ライナー「大丈夫、やつらは就寝中だ…」

ライナー「すぐ戻る…」タッ…  バシュゥッ…  ヒュッ



ユミル「はぁ…」

ユミル「あのさ、ベルトルさん…」


ベルトルト「なに?ユミル…」

ユミル「さっき話した、アニの事なんだが…」

ベルトルト「うん…ユトピア区の地下で拷問を受けているって話だね」

ユミル「あれは、アルミンの嘘だと思う…私は」

ベルトルト「…どうしてそう思うの?」

ユミル「憲兵になめられてる少数派の調査兵団が、ユトピア区の地下奥深くまで」

ユミル「入れてもらえる訳がないだろ?見てきたような事を言ってたけどさ…」

ユミル「そもそもユトピア区に本当にアニが幽閉されているのかも疑問だ」

ユミル「アルミンみたいな下っ端にそんな重要な情報を教える理由が無い」

ユミル「お前の動揺を誘い、エレンを奪い返すために吐いたアルミンの嘘…」

ベルトルト「…」

ユミル「気にするなよ?アニを故郷に連れ帰ったら、告白するんだろ?お前」


ユミル「私はもうダメだと思うが、お前は頑張れよ」

ユミル「あぁ…くそっ!こんな時に思い出すなんて…」

ユミル「マルコがくれた髪留め、宿舎に置いてきちまった!」

ユミル「黄色いチューリップがモチーフの綺麗なヤツなんだ。ずっと大切にしてきたのに」

ベルトルト「僕は、ユミルに恩を感じている」

ユミル「…どうした、急に?」

ベルトルト「故郷に連れ帰っても君を守れる自信がない、多分…無理だと思う」

ユミル「誰もそんな事、期待しちゃいねぇよ」

ベルトルト「…」

ベルトルト「そっちへ行ってもいい?」

ユミル「は?なんでだよ…来るな!!」

ベルトルト「…もう、来ちゃった」ニコッ


ユミル「…」

ベルトルト「ねぇ、ユミル…」ソッ…

ベルトルト「人は生命の危機を感じると、子孫を残そうとして性欲が強くなるんだって」

ベルトルト「だからこれは、今日の戦闘のせいなんだ…」チュッ

ユミル「…ん!」ググッ…

ベルトルト「んん…っ…ぷはっ…」

ユミル「なに…すんだよ…ライナーに言いつけるぞ…」パッ

ベルトルト「唇が触れ合う感触も知らないまま、僕らの故郷で死ぬつもりだったの?」

ユミル「馬鹿にすんな、キスぐらいしたことあるよ。私だってな」

ベルトルト「…クリスタと?」

ユミル「いや、ちゃんと男だよ」

ベルトルト「僕の知ってる人?」


ユミル「何でそんなこと聞くんだ?」

ベルトルト「君が好きだから」

ユミル「はいはい、分かったよ」

ベルトルト「全然分かってない!僕は本気で言ってるんだ」

ユミル「…本気、ね」

ユミル「じゃ、アニはどうすんだよ。自分がモテた気になって両天秤を掛けるつもりか?」

ベルトルト「アニを好きな僕を丸ごと飲み込んで全部好きになってくれないかな?ユミル」

ユミル「そういうのは苦手なんだ。私は浮気を許せるほど心の広い女じゃない」

ベルトルト「でも君がクリスタを愛している事実も含めて、僕は君の全てが好きなんだ」

ユミル「その考え方は互いを不幸にするだけだ。冗談でもそういう事は言うな」

ベルトルト「ユミル、変だね。その返答の仕方じゃまるで…」

ユミル「まるで?」


ベルトルト「僕に気があるみたいだ。アニの事が無ければ僕の告白を受けてくれた?」

ユミル「思い込みが激しいな、お前。騙されやすいだろ?…気でも触れたか」

ベルトルト「ねぇ、ちゃんと答えてよ。僕の問いに」

ユミル「はぁ…お前が私のどこに惚れたのか知らないが、」

ユミル「この先お前の故郷で私が生き残れたら…そうだな、受け入れる事も考えてもいい」

ユミル「ただし、アニの事は別だ。二股は嫌いだ。生理的に受け付けない」

ベルトルト「両方無理な提案だね。君だって二股じゃないか、僕とクリスタの間で」

ベルトルト「死ぬ前に僕が君の処女を散らそうか?僕も君に童貞を捧げるよ」

ユミル「いらねぇよ!なんでそんなに極端に話が飛ぶんだよ……」

ベルトルト「マルコとキスしたくせに…」ボソッ

ユミル「はっ?」

ユミル「…お前、見てたのか?あの時」


ベルトルト「うん…」

ユミル「外は真っ暗だったのに、見えたのか?」

ベルトルト「僕が食堂に置いたランタン、持って行ったじゃない。君」

ユミル「…」

ベルトルト「マルコの事が好きだった?」

ユミル「嫌いじゃなかったよ。私の気が変わるまでいつまでも待ってるって言ってた」

ベルトルト「そう…残念だったね。彼の事」

ユミル「あいつ真面目だったからな。本当に何年でも待っていそうだったから…」

ユミル「これはこれで、こちらとしては一区切りついた」

ベルトルト「君の中で甘酸っぱい思い出になったかい?」

ユミル「まぁな、これも人生のスパイス。人並みに恋愛を経験するのも悪くないだろ?」

ユミル「クリスタ…いや、ヒストリアは今どうしているんだろうな……」


ベルトルト「戻ってもいいよ。ライナーには僕から言っておく。あの時のお礼もしたいし」

ユミル「お礼?…何のお礼だ?」

ベルトルト「僕の誕生日ケーキを焼いてくれたお礼」

ユミル「あれは『クリスマスケーキ』だよ。結果的にお前の誕生日ケーキになったけど…」

ベルトルト「どっちでもいいんだ…。君が僕のために甘い物を作ってくれた」

ベルトルト「大切なのはこの事実だから」

ユミル「ふ~ん…」

ベルトルト「もっと時間があればな、もっと早く君に恋していれば…」

ベルトルト「君の初めてのキスの相手は、僕だったかも知れないのに」

ベルトルト「この気持ちを自覚したのはまさに君がマルコにキスをする瞬間でね」

ベルトルト「突然に君への片思いが始まった訳だけれど僕は完全に出遅れていた」

ユミル「マルコが死んだのって、お前…わざと狙った訳じゃないよな?」


ベルトルト「わ、わざとじゃないよ!!そんなことするもんか!」

ベルトルト「それどころか僕は104期生、全員に生き残って欲しいとすら思ってたんだ」

ベルトルト「壁内の全人類を抹殺するためにあの壁を壊したのに矛盾してるよね」

ユミル「マルコにも言ったが、私はクリスタ…ヒストリアを愛しているんだ」

ユミル「やっぱりお前の気持ちには応えてやれない」

ユミル「男とばっかりつるんでたから少し女に優しくされて舞い上がっちまっただけだ」

ユミル「お前の恋は偽物だ、私の事は忘れろ。アニを助け出して上手くやれよ、お前ら」

ベルトルト「…」

ベルトルト(アニの事は好きだよ。恋心なのかは分からないけど、失くしたくない物だ)

ベルトルト(君の事も好きだ。君の命を守りたいからここから逃げて欲しかったのに)

ベルトルト「この恋が偽物かどうか、もう一度自分の胸に聞いてみる」

ユミル「へっ?」


ベルトルト「本物だったら僕も待つよ。君の気持ちが僕に向くまで、気長にね」

ベルトルト「だから本物かどうか確かめるために、もう一度僕とキスをしよう」ススッ…

ユミル「あ、ライナーだ!!…ラ、ライナーこっちだ!」ブンブン

ベルトルト「えっ!どこどこ!?」キョロキョロ…

ベルトルト「…って居ないじゃないか、ユミルの嘘つき!もう雰囲気ぶち壊しだよ!」

ユミル「お前な…私の気持ちも考えろよっ!少し頭を冷やせ、この馬鹿野郎が!!」






ベルトルト「君が好きだから」マルコ「大好きなんだよ!ユミル」

(ベルトルト「ユミル、処女で死ぬのは寂しいよね」X`mas SP 修正版)

                ― 完 ―


最後まで読んでくれてありがとう

〆の会話も甘めに修正しました。アニとの二股設定はやめました
22cmのバナナはどこで活用するかを完全に忘れてしまったため触れていません

もしこの話をまとめられる方がいらっしゃいましたら旧スレタイとの併記をお願いします
修正前の話をまとめてくださった奇特なまとめサイト様がございましたので、杞憂かとは
思いましたが念のため書き添えておきます


管理人さま 

修正再掲で申し訳ありません。次にこちらでスレを立てる時は新規を持って来ます

ありがとうございました

乙!

乙!面白かった。

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