姉「…さよなら、妹」 (67)

※百合注意

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妹「んしょっ、と……それじゃ、行ってきまーす!」

母「うん、行ってらっしゃい。 気をつけてね」

妹「はーい!」

母「朝から元気ねぇ」

姉「そうだね」

母「あら、おはよう」

姉「うん、おはよ。 妹は朝練?」

母「そそ。 それより姉、昨日も遅くまで起きてたでしょ」

姉「……あー、やっぱりバレた?」

母「そりゃ分かるわよ……ドアから明かりが漏れてたし」

姉「でも、遅れてる分の授業を取り戻さなきゃいけないし」

母「……熱心なのは良いけど、体を大切にしなさいよ?」

姉「……うん、わかってる。 ごめんなさい」

母「ううん、謝ることじゃないの。 でも……」

姉「うん、大丈夫、もう分かってるから」

母「姉……」

姉「それじゃ、着替えてくるね」

母「……ええ、行ってらっしゃい」

父「お、今日は学校行くのか?」

姉「うん、調子良いみたいだし」

父「気を付けてな」

姉「うん、ありがとう」

父「また倒れられたら、こっちも倒れてしまいそうだからな」

姉「そんなに心配しなくても大丈夫、多分今日は」

父「まあ、姉がそう言うなら、信じるとするか」ハハハ

姉「うん、それじゃあ行ってくるね」

父「行ってらっしゃい」

母「ちょっとあなた、車の鍵知らない?」

父「車の鍵?」

母「ええ、昨日そこの棚に置いたはずなんだけど……」

父「ああ、すまんすまん、最後に私が使ってからカバンに入れたままだ」ゴソゴソ

母「もうっ、ちゃんと戻しておいてっ!」

父「ははは、悪い悪い」チャリ

私は心臓が弱い。

いつも車で学校への送り迎えがあるし、体育は見学してる。

病気がちという理由で、お母さんたちは私ばかりを構っていて、妹に申し訳ない気持ちでいっぱい。

でも、そのことで謝っても、

『気にしてないから大丈夫。 わたしの心配より、自分の心配をしなきゃだめだよ』

と言って、逆に心配される。

妹は、こんな私にいつも優しくしてくれる。

母「はい、学校着いたわよ」

姉「うん、ありがとう」

母「気をつけて行くのよ?」

姉「分かってる。 じゃあ行ってくるね」ガチャ

母「行ってらっしゃい」


ブロロロロ


姉「ふう……」

友「あ、姉!」タタタ

姉「あ、友ちゃん、おはよう」

友「おはよー、もう大丈夫なの?」

姉「うん、調子は良いみたい」

友「そっか」

姉「ごめんね、なんか私、心配かけてばっかりだよね」

友「謝ることじゃないよ、ね?」

姉「……うん、ごめんね」

友「いいっていいって、ほら、教室行こ?」

姉「うん」

──────────────




友「ん~~っ、やっと昼休みかぁ」

姉「お疲れ様」

友「ほんと疲れたよ~……」

姉「ほとんど寝てたのに?」

友「うるさいよっ! ほら、早くパン買うよ!」

姉「はいはい……うわ、今日は人多いね」

友「購買、朝やってなかったからねぇ」

姉「私が友ちゃんの分も買ってくるよ。 何がいい?」

友「クリームパンで!」チャリ

姉「ふふ、分かった」

友「お願いねー!」

「ん、あれ、友先輩?」

友「うん?」

妹「こんにちは」ペコ

友「あ、妹ちゃん、こんちわー」

妹「今日は購買、人多いですね~」

友「妹ちゃんはもう買ったの?」

妹「ええ、なんとか」

友「希望のものは買えた?」

妹「残り一つでしたが、なんとか買えましたよ」

友「ふぅん、何買ったの?」

妹「これです」ガサガサ

友「これは…………これ……は……」

妹「クリームパンです」

姉「友ちゃん、友ちゃん、クリームパン売り切れだったよ!」

妹「え、お、お姉ちゃん!?」

姉「あ、妹」

友「orz」

~屋上~

姉「売り切れてたから、これ、代わりに買ってきたんだけど」ガサガサ

友「……ジャムパン?」

姉「うん、マーマレードのやつ。 好きでしょ?」

友「ああぁぁありがとう心の友よおおぉぉ~~~っ」ギュウウゥゥ

姉「もう、大げさだよ」

妹「…………む」

友「ところで、今日はほんとに調子いいみたいだね」

姉「ん、信じてなかったの?」

友「信じろと言われましても……ねえ」

妹 コクコク

姉「む、むぅ、妹まで……」

妹「お姉ちゃん、油断は大敵だよ」

姉「うん……でも、油断してなくても……」

友「本人の意思とは関係なしだもんね……はむはむ」

妹「……」

姉「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

妹「……大丈夫じゃないから、心配してるの」

姉「……うん、ごめんね」

友「あははっ、なんか夫婦みたいだよ、アンタたち」

姉妹「 「……っっ、げほっ、げほげほっ!」 」

姉「なっ、何言ってるの友ちゃんっ!」

妹「そうだそうだ!!」

友「え、えー……ご、ごめん、軽い冗談だったんだけど……」

姉「まったく……」モグモグ

友「まあ、いい妹さんを持ったよ、姉は」

姉「……うん」

妹「えっ、ちょっ、ちょっとなんでそんな話になるんですか!?」

友「何より機転が効くのよ。 次期部長候補かな」

姉「部長直々に推薦かぁ」

友「私が三年になったら、後はヨロシク!」ポン

妹「えええ!?」

姉「うん、妹ならできるよ、頑張って」

妹「無理無理っ、絶対無理っ!!」

姉「どうして? 優しいし、気遣い上手。 部活でも活躍してるんでしょ?」

友「してるねぇ」

姉「ふふっ、もっと自分に自信を持って、ね?」ナデナデ

妹「あ、あぅぅ……///」

姉「んー……えいっ」ギュウッ

妹「ふわあぁっ!?///」

友「」ダラダラ

妹「おっ、お姉ちゃん、友先輩が鼻血噴いて倒れてるよっ」

姉「うわー……制服にかからなくて良かったね」フキフキ

妹「ねえ、この量ってやばそうだけど……大丈夫なのかな」フキフキ

姉「まあ、明らかに顔色悪いし、貧血だろうけど……」

友「はっ!?」パチッ

姉「大丈夫みたいだし」

妹「すごい血液の生成がはやいんだね、きっと……」

友「なんか今、とてもいい百合を見たような気がする!」

姉「ゆ、ゆり……?」

妹「さすがに屋上には生えてないと思いますが……」キョロキョロ

友「いやいやそっちの百合じゃないんだ」

姉「そっちのって……どっちの?」

友「ふふ……そうだな、百合の蕾は育てるに限るし……」ブツブツ

姉「友ちゃん……さっきの鼻血の勢いで、床に頭ぶつけちゃったんだね……」

妹「友先輩……」

キーンコーンカーンコーン

妹「あ」

姉「予鈴だね」

友「んーーーっ、よし、戻るかぁ」

姉「うん」

妹「お姉ちゃん、またおうちでね」

姉「うん」

友「また部活でね~」

妹「はーい」

───────────────




~帰り道~

妹友「最近、友先輩怠けてきてない?」

妹「わたしもそう思う」

妹友「なんか、妹に頼りっぱなしだよね~」

妹「ほんとにねぇ」

妹友「やっぱり次期部長は妹かな?」

妹「わたしには向いてないよ~」

妹友「そう? むしろ、妹以外に適役はいないと思うよ?」

妹「またまた……それじゃ、また明日ね」

妹友「うん、また明日~」

妹「ただいまー!」

母「おかえり」

妹「お腹すいたー!」

母「はいはい、もう夕食できるから、姉呼んできて」

妹「はーい」

~姉の部屋前~

コンコン

妹「お姉ちゃん、ご飯だよ」

シーン……

妹「……あれ、お姉ちゃん?」コンコン

シーン……

妹「……?」カチャ

姉「……」

妹「あれ、勉強してた……?」

姉「……」

妹「へ? ちょっと、お姉ちゃん?」トテトテ

妹(……? 机に突っ伏して───?!)

妹「おっ、お姉ちゃん!? お姉ちゃん、大丈夫!?」ユサユサ

姉「……ん、んぅ…………ぁれ、いもぉと……おはよぉ……」クシクシ

妹「」

姉「んん……ありゃ、寝ちゃってたぁ……ふわあぁ……」

妹「…………お姉ちゃんの、ばかっ」ギュウッ

姉「んん……?」

妹「でも……良かったぁ……」

姉「……なんか、ごめんね」ナデナデ

妹「……ううん、わたしが早とちりしただけだから」

姉「……ありがとね、妹」

妹「え?」

姉「心配してくれて」

妹「……そんなの、当たり前でしょ」

姉「そうかな?」

妹「もうっ、そんなの誰でも心配するよっ」

~リビング~

母「それじゃ、食べて」

姉「うん、いただきます」

妹「いただきまーす!」

姉「はむ……うん、美味しいね」

母「ふふっ、ありがとう」

妹「んー」ムグムグ

母「姉、今日はどうだった?」

姉「調子良かったよ」

母「そう、ならいいんだけど」

~夕食後 姉の部屋~

姉「よし、明日の準備はおっけー、と」トントン

姉(明日は学校行けるかな……)キイ

姉(また倒れたりしたら……怖いなぁ)

姉(でも、学校には行きたいし……)

姉「はぁ……なんで、こんな体なのかな」

姉(ちゃんとした体で、生まれてきたかったなぁ……)

姉(妹みた、い、に…………)

~妹の部屋~

妹「えーっと、本、本……」ゴソゴソ

妹「……ん? この本は……」パラパラ

妹「……あっ、お姉ちゃんが貸してくれた本、返すの忘れてたっ!!」

妹「やばー……これだけかな、これだけだよね」ガサゴソ

妹「そうみたい……やばやば、お姉ちゃん、怒ってなければいいけど……」バタバタ

~姉の部屋前~

コンコン

妹「お姉ちゃーん」

シーン

妹「……げ、もう寝ちゃったのかな」

妹「お姉ちゃーん?」コンコン

シーン

妹「……本を返すだけだし、いいよね」カチャ

妹「失礼しまー……って、起きてたの?」

姉「…………」

妹「もー、また机で寝てるの? 風邪ひくよ~」ツンツン

姉「…………」

妹「……え? お、お姉ちゃん?」ユサユサ

姉「…………」

妹「……!! お、お母さんっ!!」バタバタ

───────────────




~病室~

姉「…………ぁ、ぁ……?」パチ

妹「……!!」

姉「あ、れ…………いもうと……?」

妹「良かった……おねえちゃん……」

姉「……また?」

妹「うん……」

母「……大丈夫?」

姉「あはは……こればっかりは、対処のしようも無いかな」

母「そうね……」

姉「どうしたの?」

母「……ううん、何でもないわ」

姉「そう?」

~数時間前~

医者「お久しぶりです」ペコリ

妹「どうもです」

母「ええ、ご無沙汰してます」

医者「できれば、ご無沙汰したままのほうが良かったのですが……再び、ですね」

母「ええ……先生には、何度もご迷惑を」

医者「いえ、気にしないでください…………それで、ですね」

母「はい」

医者「姉さんの、状態なのですが……」

母「……はい」

医者「率直に申し上げますと……恐らく、かなり危険な状態でしょう」

母「……やはり、ですか」

医者「早急な入院をおすすめしますが……どうでしょうか」

母「……お願いします」

───────────────




姉「今度は、どれぐらい眠ってたのかな」

妹「七時間くらい、かな」

姉「……お母さんたちは、ずっとここにいたの?」

母「ええ、そうよ」

姉「……ごめんなさい」

妹「お姉ちゃんが謝ることじゃないよ、仕方ないもん」

姉「うん……」

母「……それでね、姉」

姉「うん」

母「入院、することになったのよ」

姉「……そっか」

母「嫌じゃないの?」

姉「ううん、もう、これ以上迷惑はかけられないから」

妹「お姉ちゃん……」グスッ

姉「もう、どうしたの? 私は大丈夫だよ、妹」

妹「……うん」

それから、地獄の入院生活が始まった。

何が地獄かっていうと、とにかく暇。 ヒマ。

検査とかもあるけど、そんなに頻度は高くない。

個室だし、たまに来る看護婦さんは、忙しいだろうからあんまり引き止められないし。

学校が終わる時間帯になれば、友達がお見舞いに来てくれて楽しいし、嬉しいけどね。

でも……やっぱり、一番嬉しいのは……。

コンコン

姉「どうぞー」

カチャ

妹「お姉ちゃん」ヒョコッ

姉「あ……妹」

妹「えへへ、また来たよ」

姉「無理して来なくても良いんだよ?」

妹「ううん、無理してないし」

姉「そう……ごめんね」

妹「わたしが好きで来てるんだから、謝らないで」

姉「……うん」

妹「それで……これなんですけど」ゴソゴソ

姉「……妹、絶対これ目当てで来てるでしょ」

妹「ちっ、違うよっ!」

姉「もう、宿題くらい自分でやんなきゃだめだよ?」

妹「う、うぅ……だって、お姉ちゃんの説明がわかりやすいんだもん……」

姉「……もう、しょうがないなぁ」

妹「うぐぐ」カリカリ

姉「ふふ、頑張って」

妹「めんどくさいぃ……」シクシク

姉「ん、じゃあ終わったらお見舞いでもらったお菓子でも食べよっか」

妹「頑張るっ!」ガリガリガリガリ

姉「お菓子効果すごい……」

妹「うまうま」モグモグ

姉「今日は早かったね?」

妹「お菓子のためだもん」モグモグ

姉「ふふっ……まだまだ子供だね」

妹「むっ、そんなことないもん」

姉「そんなんじゃ、知らないおじさんとかにお菓子で釣られちゃうんじゃないの?」

妹「釣られないよっ」

姉「あははっ、妹ならありそう」

妹「絶対無いってば!」

姉「心配だなぁ、これじゃあまだまだ死ねないかな」

妹「…………死なないでよ?」

姉「まだ大丈夫だよ、きっと」

妹「……お姉ちゃんが死んじゃったら、わたしも追いかけるから」

姉「ダメ」

妹「やだ」

姉「私は、死にたくて死ぬわけじゃないんだからね」

妹「……わかってるもん」

姉「けど、妹は生きてられる」

妹「……」

姉「もったいないよ」

妹「……じゃあ、絶対、死んじゃヤだから」

姉「そうだね、生きてたいな」

妹「こういうときぐらい、約束するって言ってよ」

姉「…………ごめん、なさい」

妹「……寂しいよ、お姉ちゃん」

姉「……」

妹「お姉ちゃんが、おうちにいなくて……すっごく静かで……」

妹「それで、もし、お姉ちゃんが死んじゃったら……わたし……っ」グスッ

姉「……大丈夫、また、帰れるよ」ナデナデ

妹「……っ、おねえちゃんっ……」ギュウッ

姉「よしよし……」ナデナデ

妹「……おねえちゃん、いい匂い」

姉「え?」

妹「ふんふん……んー」ギュー

姉「ちょ、ちょっと、匂い嗅がれるのはさすがに恥ずかしいよ」

妹「……む」ムニュ

姉「ん?」

妹「……おっきい」ムニムニ

姉「ひゃあっ!? ちょっ、こらあっ」ペチペチ

妹「むーっ、お姉ちゃんが全部持ってっちゃったから、わたしがぺったんこになっちゃったんだよ!」

姉「え、え? 私のせい?」

妹「そう、お姉ちゃんのせい」

ポッポー ポッポー ポッポー

姉「……あ、もう18時だよ」

妹「……」

姉「ほら、もう帰らないと。 お母さんが心配するよ?」

妹「……」ギュ

姉「もう……私は大丈夫だから」ナデナデ

妹「……お姉ちゃんの大丈夫は、信用できないもん」

姉「……自分でもそう思う」

妹「……また明日、来るからね」

姉「無理して毎日来なくていいんだよ?」

妹「さっきも言ったでしょ、無理なんかしてない」

姉「……うん、ありがとう」ナデナデ

妹「ん……えへへ……」

姉「気をつけて帰ってね」

妹「……お姉ちゃん」

姉「うん?」

妹「あのね……?」

姉「うん」

妹「……ううん、何でもないっ! じゃあ、また明日ね!」ガチャ

姉「そう? うん、またね」

パタン

姉(何を言おうとしてたんだろ……)

ガチャッ

姉「!?」ビクッ

妹「そ、そのっ……お姉ちゃん」パタン

姉「い、妹……? どうしたの?」

妹「あ、あのあの、えっと」

姉「と、とりあえず、落ち着いて」

妹「う、うん……すーはー……」

姉「それで?」

妹「あ、あのね、その……」

姉「うん」

妹「そ、そのっ、あのっ………す、すっ、好きだよっ、お姉ちゃんっ!」

姉「え?」

妹「そっ、それだけだからっ!! また明日っ!!」ガチャッ

姉「えっ、えっえっ、ちょっ」

バタンッ

姉「……え?」

姉「す、好き……好き、って………?」

姉「……~~~~っ!!///」ガバフッ

姉(あわわわわっ、うそうそ、まさか、妹が……)ドキドキ

姉(私のことが好き? 妹が?)ドキドキ

姉(え? え? なになに、どっち? 家族として? それとも……)

姉(でもでも、そんな、家族としてならあそこまで恥ずかしがることはないと思うし……)

姉(え、じゃ、じゃあ、好き、って……)

姉「うあぁぁもう、全然元気じゃんか私の心臓っ!!」ドキドキ

~翌日~

姉(全然寝れなかった……)

コンコン

姉「どうぞー……」

看護婦「起きてますか?」カチャ

姉「おはようございます」

看護婦「おはようございます、検温の時間ですよ」ピッ

姉「はい」ゴソゴソ

看護婦「顔色があまり良くありませんが……大丈夫ですか?」

姉「ちょっとよく眠れなくて……」

看護婦「何か、悩み事でも?」

姉「いえ、悩みっていうものでもないんですが」ピピピッ

看護婦「ふむ、平熱、と……」カキカキ

看護婦「お疲れ様でした、今日はよく眠れますように」ナデナデ

姉「あ……」

看護婦「それでは」ペコリ

───────────────




友「いやいや、最近後輩たちが妙に生意気でさ」

姉「友ちゃんがちゃんと部活やってないからなんじゃない?」

友「……やってるもん」

姉「よく妹から愚痴を聞くけど?」クスクス

友「ぐっ……」

姉「先輩がちゃんとしないと、示しがつかないでしょ?」

友「精進します……」

姉「頑張って」

友「ぐぬぬ……おっと、それじゃ、そろそろ帰るね」

姉「来てくれてありがとね」

友「いやいや、当然ですってばさ」

姉「ばいばい」

友「うむ、また明日」カチャ

妹「あっ」

友「うをっ!?」ビクッ

姉「妹!?」

友「妹ちゃんか、びっくりしたぁ」

妹「こ、こんにちは」ペコリ

友「姉のお見舞い?」

妹「あ、えっと……」チラ

姉「あ……」

友「んじゃま、私は帰るから。 あとは任せたよ妹ちゃん!」ポン

妹「は、はぁ、わかりました……?」

妹「……」

姉「……とりあえず、座って?」

妹「あ、うん……」ストン

姉「……」

妹「……」

姉「……えっと、宿題は?」

妹「あっ、えと、今日は、ないの」

姉「そう……」

妹「……でも、テストも近いし、勉強しよっかな、って」ゴソゴソ

姉「そっか」

妹「……」カリ

姉「あんまり進んでないね」

妹「……集中できなくて」

姉「ん、と……ごめん、今日はお菓子ないや」

妹「やっ、別に、お菓子のためにやってるわけじゃないからさ」

姉「でも、このままだとずっと集中できないままかもしれないし……」

妹「んーん、大丈夫。 なんとかするから」

姉「……」

妹「……」カリ

姉「……ね、もし、よかったらだけど」

妹「ん?」

姉「……えっと、このページが終わったら……キス、してあげよっか?」

妹 ガリガリガリガリガリガリ

姉「ええっ!? は、早くない!?」

妹「終わった!」ピラッ

姉「う、うそ……ほんとに終わってる……」

妹「じゃ、じゃあ、その……ご褒美、ちょうだい?」

姉「ちょ、ちょっと待って、まだ心の準備が……」

妹「……じゃあ、わたしからするね」

姉「え、えっ、ま、まっ、んんっ」チュ

妹「んふ……はぁ……」

姉「あ、ぁ……///」

妹「準備、できた?」

姉「え?」

妹「まだ、お姉ちゃんからのご褒美、もらってないよ?」

姉「えっ!? だ、だって、今ので……」

妹「お姉ちゃんからはされてないもん」

姉「うぅ……」

妹「ん……ほら、はやくぅ……」

姉「……っ」ドキドキ

妹「まだぁ……?」

姉「ん、ん……」チュ

姉「ぷは……」

妹「えへへー……///」ギュウ

姉「うあぁ、恥ずかしいぃ……///」

妹「もー、お姉ちゃんが言ったことでしょ?」

姉「まさかあんなに早く終わるなんて思ってなかったんだもん……」

妹「だって、あんなこと言われたら誰だってやる気出すよ」

姉「うぅ、まだドキドキしてる……」ドキドキ

妹「……うん、感じるよ。 すっごく早くなってるもん。 それに、心電図の音も聞こえるし」

姉「言わないでぇ……」

妹「えへへ、お姉ちゃん、かわいいっ」ギュー

姉「うぅぅ……///」

妹「ねぇねぇ、お姉ちゃん」

姉「え?」

妹「その……もう一ページやったら、もう一回キス、とか……」

姉「……うん、いいよ」

妹「いいの!?」

姉「う、うん……がんばって」

妹「うんっ!」

妹「……むぐぐ」カリカリ

姉「……」

妹「ぐぬぬ……うわあっ!?」ビクッ

姉「……妹」ギュー

妹「お、お姉ちゃん……?」

姉「……好きだよ、妹」

妹「……!?///」ボシュー

姉「勉強中にごめんね……でも、どうしても伝えたくて」

妹「……集中、切れちゃった」

姉「うえ、ごめんなさい……」

妹「大丈夫、今日の勉強はこれでおしまいだから」パタン

姉「え、キスはいいの?」

妹「キスも好きだけど……抱きしめられるのも、好きだもん」スリ

姉「ねえ、妹」

妹「なに?」

姉「どうして、急に告白する気になったの?」

妹「……だって、想いを伝えられずにお別れなんて、嫌だったんだもん」

姉「……そっか」

妹「お姉ちゃん、死なないって約束してくれないから、だからっ……」

姉「ん……」

妹「……お姉ちゃん、ぎゅってして」

姉「……っ」ギュウ

妹「ぁっ、はぅ……お姉ちゃんに抱きしめられるの、好き……///」

───────────────




私と妹が、お互いの気持ちを伝え合ってから一週間。

入院生活にもだんだん慣れてきて、暇つぶしもうまくできるようになれた。

病院内を歩き回ったりとか。 看護婦さんに怒られちゃったけど。

でも、外出は許可してくれない。 当たり前のことかもしれないけど。

妹とお出かけしたりとか、いろいろやりたいことがあるのに。

───────────────




姉「……んー」ゴロン

姉(入院……いつまでなのかな)

姉(……ずっと、このままなのかな)

姉(家に帰って……お母さんの料理を食べて……妹とおしゃべりして……)

姉(やりたいことはいっぱいあるのに……なんで……)

姉(なんで………私なのかな)

姉「……っ」

姉「なんで……なのかなぁ……」

姉「……っ、ひっく……」グスッ

姉「……?」グラッ

姉「ふえ……? ……」

───────────────




医者「ん、今日の卵焼き、少ししょっぱいかも」モグモグ

バタバタバタ

看護婦「先生っ!!」バターン

医者「どうしたの?」

看護婦「姉さんの意識が……」

医者「……分かったわ、すぐに行くから。 あなたはお母さんに連絡して」

看護婦「はいっ」

───────────────




母「先生……姉は……」

医者「……なんとも、言えません」

母「……」

医者「……今回が、山場かもしれません」

母「そん、な……」

医者「あとは……姉さんが、どれほど頑張れるかにかかっています」

医者「医者なのに……無力な私で、申し訳ありません」

母「いえ、先生は、手を尽くしてくださいました」

母「本当に、ありがとうございます……」

~病室~

バタバタ ガチャッ

妹「はぁっ、はぁっ、お姉ちゃんはっ!?」

母「妹……」

妹「……っ! お姉ちゃんっ!!」

姉「……」

妹「お姉ちゃんっ、起きて、起きてよおっ!」ユサユサ

妹「死んじゃ……死んじゃやだよぉ……っ」

母「………お母さん、お父さん迎えに行くから」

妹「やだ、やだ……っ、死んじゃ、やだぁっ……」ギュウ

母「……」

妹「お願い、起きて、起きてよおっ!」ポロポロ

妹「グスッ……まだ、一緒にいたいよぉっ……」

妹「まだ……お話したいよぉっ……」

妹「おねえちゃん……おきてよぉ……っ」

姉「…………っ、ぅぁ」ピクッ

妹「……!?」

姉「……っ、はぁっ……」

妹「……お、おね、ちゃ………?」

姉「はぁっ………えへへ、また、眠っちゃった、かな」

妹「……~~~~っ!!」ギュウッ

姉「はぁっ、はぁっ……ごめん、ね……」ナデナデ

妹「おねえ、ちゃん……っ」

姉「……もう…………無理、かも……」

妹「え……?」

姉「ごめんね、妹……私、もう、だめ、みたい……」

妹「う、うそ……でしょ……?」

姉「最後に、妹に会えて……良かった……」

妹「まだ、まだ最後じゃないもんっ!!」

姉「ごめん……なさい……私……」

妹「だめ、だめ……頑張ってよ、お願い……っ」

姉「いもう、と………」

妹「やだ……やだよ……」

姉「……ごめん、ね………いも………」カクンッ

妹「……!? お、お姉ちゃんっ!? お姉ちゃんっ!!」


ピーーーーーー


妹「え………ぁ……ぁ………っ」

父「妹っ、姉は……」ガチャッ

妹「……」

父「……」

母「う……うそ……?」

妹「…………おね、ちゃ……」

妹「うそ……だよ、ね……?」

妹「また……起きて、くれるよね……?」

妹「また起きて……ごめんねって……大丈夫だよって……」

妹「また……また…………ひっく……」

母「妹……っ」

妹「グスッ……どうして、お姉ちゃんが……どうして、どうしてっ……ふぇぇっ……」ポロポロ

妹「おねえちゃんっ……おねえちゃんっ……わたし、やだよおっ……」

妹「おねえちゃんがいなきゃ、やだよぉっ!」

妹「死なないでって、言ったのに……約束もしてくれなくてっ……ばかっ、おねえちゃんのばかばかばかっ!!」

妹「ばかっ……だいっきらい……っ」

母「……」ギュ

妹「ひっく……ひっく……」

母「……お姉ちゃんは、良く、頑張ったわ」ナデナデ

妹「ひっく……グスッ……」

父「姉も……精一杯生きたんだ」ナデナデ

妹「うん……ひっく……」

……………………………。

……………………。

……………。

……なんだろう、この感じ。

体がふわふわしてるような、そんな感じ。

辺り一面、全部真っ白。

何も見えない。

私はもう、死んだのかな。

……もう、妹には、会えないのかな。

もっと、伝えたいことがあったのに。

もっと、一緒にいたかったのに。

……ごめんね、妹……。

……ここは、どこなのかな。

あ、ちょっと見えるようになってきたかも……?

妹「……っ、ふえぇっ……おねえちゃん……っ」


……私の体にしがみついて泣きじゃくる妹の姿と、その傍らで泣いているお父さんとお母さんの姿があった。

これは、どういうことだろう。

私は死んだはずなのに。

どうして、目の前に妹がいるのかな。

妹がしがみついてるのは……私の、死体なのに。

……あれ、自分の手が、透けて見える……?

……。

……そっか、私、幽霊になっちゃったのか。

やだなあ、幽霊は苦手なんだけど。

でも……未練がありまくりだったし、しょうがないのかも。

───────────────




それから私は、妹を見守り続けた。

最初の一週間ほどは、妹はすぐに涙ぐんだり、泣いたりしていた。

その度に、私も泣いた。

けれど、ひと月を過ぎるとあまり泣かなくなり、笑顔が見られるようになった。

妹が笑顔になる度に、私も笑顔になった。

だんだんと元気になっていく妹を、私は、嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちで見ていた。

けれど、私を思い出すのか、たまに涙ぐむこともあった。

部屋で一人、泣いている時もあった。

そんな時、私はただ、そばにいるだけだった。

触れることができないから。 生殺しにも程があるよ、神様。

そのまたしばらくあと、妹はほぼ完全に元気になった。

部活でも活躍してる。

友達とわいわい話してるところを見て、ちょっぴり嫉妬した。

そして、ほっとした。

もし私が死んだら、妹がどうなってしまうかを想像すると、気が気じゃなかったから。

もしかしたら塞ぎ込んじゃうんじゃないか、とか、いろいろ考えちゃってたし。

でも、そんな心配は必要なかったね。

いい友達を持ったね、妹。

今、私は妹の部屋にいる。

妹は、音楽を聞きながら、ベッドに寝っ転がって雑誌を読んでいる。

すごくリラックスした表情で、見ていて微笑ましい。

この姿でいることも案外悪くないな、と思わせてくれる。

もっ、もちろん、お風呂とか、そういうのとかは覗いてない。

妹が寝たら、ちゃんと部屋からでて、元私の部屋にもどるし。

……ちまちま寝顔を覗きには来たけど。

やっぱり、妹から離れたくないなぁ。

でも、ずっとここにいることは、きっと妹にとって良くない。

それに、私に寂しさが募っていくだけ。

妹に触りたい、抱きしめたい。

でも、それをさせてくれないのが、神様のいじわるなところ。

ここに、ずっとはいられない。

……それに、もう、妹に私は必要ない。

これから妹は、卒業して、入学して、卒業して、就職して。

その合間合間に、恋をして。

妹自身の人生を歩んでいく。

その中で、妹にとって私は、思い出の人になるだけ。

……もう、見守る必要もないね。 今までも、そうだったのかもしれないけど。

妹は、強かった。

それだけが分かれば、お姉ちゃんは十分だよ。

……さよなら、妹。











妹「…………お姉ちゃん?」









………………え?

……え、今、呼ばれた?

気のせい? え、気のせい?

うわわわ、もう、せっかく消えかけてたのに、また元に戻っちゃったよ。

もう、やだなあ。 せっかく決心がついたのに。


妹「お姉ちゃん……?」キョロキョロ


…………。

……気のせい、じゃない……?


妹「え、お姉ちゃん……? いる、の……?」キョロキョロ


ば、バレた……なんで?

姿とかは見えないようにしてたんだけど……バレたら、しょうがないかなぁ。

……いいよね?

今だけ……いいよね?

姿を、見せても。

一応、ほかの部屋に声が聞こえないように部屋に膜を張っておく。 霊力ってやつ?


妹「どこ……? お姉ちゃん……?」

姉『……』フッ

妹「……え……?」

妹「……え、え……? う、うそ……」フルフル

姉『……妹』

妹「おねぇ……ちゃん………?」ポロポロ

姉『あー……もう、泣かないと思ったんだけど』

妹「ごめっ……ごめ、なさ……っ」グスッ

姉『……もう、泣かないでよ……私まで、泣いちゃうよぉ……っ』ウルウル

妹「おねえちゃん……ずっと、ずっと会いたかった……っ」

姉『うん……』

妹「ほんとに、ほんとにほんとに、お姉ちゃん……?」

姉『こんな姿だけど……そうだよ』

妹「良かった……また、会えた……」

姉『……どうして気づいたの?』

妹「……お姉ちゃんの声が、聞こえたの」

姉『私の?』

妹「なんか、さよなら、って……だから……」

姉『……そっか』


聞こえちゃったんだ。

私の声が。

妹「……ねえ」

姉『うん?』

妹「……行っちゃうの……?」

姉『……』

妹「遠くに……行っちゃうの……?」

姉『……ここには、いられないの』

妹「……っ、ならっ、なら……!!」

妹「わたしも……わたしも、連れてってよ!」

姉『妹……』

妹「嫌だよ、いなくなっちゃうなんて、いやだよぉ……っ」

妹「ひとりは、ひとりは、やだよぉっ……」

妹「せっかく……想いが伝えられたのにっ……」

妹「ずっと、ずっと、一緒にいたいよぉっ……」

姉『ごめんね、妹』

妹「……!」

姉『私だって、ずっと一緒にいたいよ』

姉『せっかく妹が気づいてくれたのに、消えたくない』

妹「じゃ、じゃあ……」

姉『でも、でも……だめなの』

妹「……え」

姉『私のことは……忘れて』

妹「……そんな」

姉『死んだ人にいつまでも固執しちゃ、ダメ』

姉『妹は、私の分まで生きてほしいの』

妹「そんな、そんなのって……っ」

姉『ごめんね、妹……』

妹「やだっ!! わたし、ぜったい、ぜっっっったいお姉ちゃんを忘れないもん!!」

姉『妹……』

妹「だって、だって……だって、おねえちゃん……っ」

姉『妹……おねがい、最後くらい……おねえちゃんの言うこと、聞いてよ……っ』ウルウル

妹「だって、だって、わたし……おねえちゃんが、好きなんだもん……っ」ポロポロ

妹「大好きなんだもん……ひっく……っ」

姉『……っ、いもうとの、ばかぁっ……』ギュウッ

妹「ふえ……っ」

姉『やめてよ…………はなれられなく、なっちゃうよぉっ……』ポロポロ

妹「おねえちゃん……」ギュ

姉『わたしだって、わたしだって……いもうとが好きだよ、大好きだよ』

姉『でも、でも…………わたしはもう、しんじゃったから……だから……っ』

妹「おねえちゃんっ、ひっく、やだよぉっ、いかないでよぉっ!」

姉『ごめん……ごめんなさい、妹ぉっ……』

妹「やだ、やだやだっ、うわああああぁぁんっ!!」

───────────────




妹「ひっく…………ふえぇっ……ひっく……」

姉『ん……よしよし……』ナデナデ

妹「ん……そういえば、おねえちゃん、さわれるんだね……」

姉『……え、あ、あれ? なんで!?』

妹「え、な、なに?」

姉『い、今まで何回も触ろうとして触れなかったのに……!?』

妹「……触ろうとしてたんだ」

姉『……あ、いや、その』

妹「えへへ、いいよ……お姉ちゃん……」ギュウ

姉『む、むぅ……』

姉『……』ナデナデ

妹「……ね、お姉ちゃん」

姉『うん?』

妹「……ごめんなさい」

姉『え?』

妹「わがままばっかり言って……」

姉『……ううん、私も思ってたことだから』

妹「……でも、やっぱり行っちゃうんだ」

姉『……うん』

妹「……ね」

姉『うん?』

妹「……ありがとね、お姉ちゃん」

姉『……え?』

妹「こんなわたしを好きになってくれて……甘えさせてくれて……」

妹「ありがとう、おねえちゃん……ありがとう……っ」

姉『いもうと……っ』ギュ

妹「これが、言いたかった……ずっと……」

姉『うん……』

妹「ずっと……」カクン

姉『え? 妹!?』

妹「……すぅ……すぅ……」

姉『……ふふ、泣き疲れちゃったかな』

姉『ありがと、か……』ナデ

妹「ふぁ……」

姉『……こちらこそ、ありがとね、妹』

姉『好きだよ、妹……ん……』チュ

妹「んぅ……」

姉『ぷは……おやすみ』

時計を見ると、ちょうど夜中の二時半を指していた。

妹に布団をかけ、寝顔を見つめる。


姉『……この時のためにも、今まで見守ってた甲斐があったかな』

姉『なんだか、すっごく嬉しいかも』ナデナデ

妹「んん……」

姉『……けど』


ここで、お別れだね。

今まで本当にありがとう、妹。

あなたのおかげで、私は逝けそうです。


姉『……また、どこかで会えるといいね』ナデ

妹「ん……おねえちゃん……」



姉『……さよなら、妹』

おわりです。
このSSは、
姉「…ただいま、妹」
の別ルートです。
だいぶ前に書いて某所に投下しましたが、こちらに投下するのを忘れていました。


ありがとうございました。

乙 泣いた


悲しすぎる……
その後が無いからすごく悲しい

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