凛「新しい」あずき「ユニット」裕子「ですか?」 (156)

~会議室~

こんこん

あずき「失礼しまーす……。あっ」

凛「あっ、あずき」

裕子「あずきちゃん! こんにちはっ」

あずき「凛ちゃんに……。裕子ちゃん? これは……?」

P「よく来たな、あずき。大事な話があるから、とりあえず座ってくれ」

あずき「は、はいっ」

裕子「大事な話……!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412512497

凛「そう、それだよプロデューサー。いきなり呼び出して、大事な話ってなんなの?」

裕子「ま、まさかっ、クビ!? 嫌ですっ、まだ私はサイキックを極めていないのにっ!」

P「極めてないって、身につけてはいるのかよ。……それはさておき、心配しなくていいぞ、悪い話じゃない」

あずき「そ、そうなのっ!? よかったー、あずき、また怒られるのかと」

P「またって、そんなに怒ってないだろ、人聞きの悪い……。いいか、これからお前たち3人には」


P「新しい、ユニットを組んでもらうことになった」


凛「新しい」

あずき「ユニット」

裕子「ですか?」

凛「……え」

あずき「えっ」

裕子「えっ!」


「「「えええええええええぇぇっ!!?」」」

この3人って!?

PKヴィ(ry

堀子「と、突然ですね、プロデューサー!」

P「そうか? 俺からしたらずっと考えてきたことだったから、そうでもないんだが……」

凛「私はそんな話一言も聞いてないよ……」

あずき「でもでもっ、1人で活動するより楽しそうだよねっ」

堀子「うーん……。それは、そうかも?」

凛「……どうしてこの3人なのか、聞いてもいいかな? 適当に選んだわけではないよね?」

P「ん? 敏腕プロデューサーとしての勘」

凛「……プロデューサー?」ぴきっ

あずき「……敏腕?」

P「怒るな凛。半分くらいは冗談だ。あとあずき、そこに疑問符をつけるのはやめてくれ。悲しくなるから」

あずき「あははっ、こっちも冗談だよっ? でもプロデューサーは、半分は本気ってことですねっ」

裕子「それで、どうしてこの3人なんですか?」

P「ん? そうだな……。収まりが良かったから、かな?」

凛「収まり?」

P「ああ。ダンスにボーカルにビジュアルは勿論、性格や年齢とか、いろんな面を考えてのことだ」

凛「年齢? 確かに私たち、年は近いかもしれないけど」

あずき「性格とかって、全然違うよね……?」

P「それはそうだ。性格に関しては、むしろ特色があった方がいいくらいだと考えてるからな」

凛「ああ、そっか。なるほど」

P「だから、お前たちさえ異存がなければ、すぐにでもユニットとして活動してもらおうと思うんだが……。どうだ?」

凛「どうだ? って言われても。私は別に構わないけど」

あずき「勿論あずきもOKだよっ!」

裕子「私もです!」

P「ん、それじゃ決まりってことで。これからのことはまた追って伝えるから、今日はとりあえず自由時間ってことでいいぞ」

堀子「お休みなんですかっ!?」

P「一応、断られる可能性も考えてはいたからな。俺は今からユニットの結成報告と、これからのプロデュース予定を詰めなくっちゃいけないんだ」

凛「あ、そっか。私たちの返答次第でプロデューサーの予定が変わっちゃってたんだ」

P「そういうことだ。というわけで今日は、自主練なんかは歓迎だけど……。まだ何も決まってないわけだし、3人で遊びにでも行ってくればいいんじゃないか?」

PKバリアン?(すっとぼけ)

凛「遊びに、ねぇ……」

P「なんだ、不安か? 凛。大丈夫だよ、このユニットはいいユニットになる。そんな気がするんだ」

あずき「そうだよ、こんなに素敵なメンバーが揃ったんだもん! 私たち3人で、『ユニットでトップアイドル大作戦』の始まりだよっ!」

凛「あずき、それ、そのまんまじゃない……。ふふっ、でもそう言われると、私も少しやる気になってきたかな」

裕子「視える……。視えますよ、プロデューサー! このユニットで、私のサイキックパワーが高まっていく未来が!」

P「おー、そうか。じゃあ頑張ってなー」ひらひら

裕子「あーん! 適当に流さないでくださいよう!」

堀子……一体何者なんだ

>>11
全部手打ちなのになんでこんなことが起きてるのか分からない……。ご指摘どもです
書き溜めてる部分全部見直してきます

裕子Pのみなさまごめんなさい……

確かにどうやったら堀子なんて打ち間違いをするのか

しょーもないミスですみません
結局他の部分は大丈夫っぽかったので再開していきます

この凛ちゃんもしかしてめっちゃふさふさしてないですか?(名推理)

あずき「……行っちゃったね、プロデューサー」

裕子「まさか、ユニット結成とは! 全く予想していませんでした!」

凛「そうだね。自由時間でいいとは行ってたけど……。どうしよっか。ふたりとも、今日は何か予定ある?」

あずき「あずきは自主レッスンするつもりだったから、特には無いよっ!」

裕子「私もほとんど同じです!」

凛「それじゃあ、親睦会と結成会を兼ねてカラオケでもどうかな? せっかくだしさ」

裕子「おおっ、いいですね! エスパーユッコのサイキック美声を披露しますよ!」

あずき「あずきも賛成っ! カラオケだったら、歌のレッスンにもなるもんね!」

凛「じゃあ、そうしよっか。……これからよろしくね、ふたりとも」

あずき「こちらこそっ」

裕子「よろしくお願いします!」

>>15
ま、まだ、スプーンが当たってないから……


~カラオケルーム~

凛「~~♪」

あずき「うわーっ! 凛ちゃん、やっぱりうまーいっ!」

裕子「むむむ。やっぱり歌唱力では凛ちゃんが飛び抜けていますね!」

凛「ちょっと、やめてよ……。そんなに言うほどじゃないってば。裕子もあずきも上手かったじゃない」

裕子「いやあ、これからユニットとして活躍していくうえで、これは立派な目標になりますから!」

あずき「うん、だよねっ。……えへへっ♪」

凛「……ど、どうしたのあずき、にやにやしちゃって」

あずき「えっ!? あずき、にやにやしてたっ?」

凛「してたしてた」

裕子「それはもう、満面の笑みでしたよ!」

あずき「えへへ……。だってあずき、こういうの嬉しいんだもん」

凛「こういうの、って?」

あずき「今まであずき、事務所でおるすばんとか、お仕事行くみんなを見送ることが多かったからさっ」

あずき「こうやって近くに目標ができたり、みんなで頑張ろう、ってなんか嬉しくって!」

裕子「そうですね! やっぱり私も、1人よりも頑張れる気がします!」

凛「あずき……」

凛「うん。私が目標なんて大それたものかどうかは置いといて。みんなで、頑張りたいよね」

裕子「じゃあ次は、あずきちゃん! 凛ちゃん目指して、歌っちゃいましょー♪」

あずき「よぉし! 凛ちゃん目指して歌唱力アップ大作戦! いっくよー♪」

凛「ちょ、だから、私が目標って……」

あずき「~~♪ ~~♪♪」

凛「……ふふっ。ま、いっか」

~レッスンルーム~

あずき「……」たん、たたんっ

凛「……」くるっ

裕子「……」とん、とんっ


P「や、どうも。お疲れ様です」

トレーナー「これは、プロデューサーさん! 様子を見に来られたんですか?」

P「ええ。どうですか? あの3人」

トレーナー「とってもいい感じですよ。3人とも、歌もダンスも、特に苦手というわけではないみたいですし」

P「そうですか。それはよかったです」

トレーナー「それに……。特にあずきちゃんですが」

P「? あずきがどうかしたんですか?」

トレーナー「モチベーションがすっごく高いみたいで。いつもノルマ以上のことをしようと頑張るので、ペースを調整するのが大変なんです。勿論いい意味でですけどね」

P「もともと、やる気はすごくある子でしたから。分かりやすい目的ができて、嬉しいんでしょう」

トレーナー「ああ、なるほど……。ところで、しばらくはスケジュールに余裕はあるんですよね?」

P「しばらくどころか、当分はありますよ。まだデビューすることが決まっただけで、仕事の売り込みはここからですからね」

P「大事なユニットですから、実力をしっかりつけてから表に出したいと思っていますし」

トレーナー「でしたら……。ひとつ考えがあるんですが、聞いてもらえますか?」

P「?」

NGもTPもフリスクも結成してない前提?

裕子「ふーっ! 今日も疲れましたー!」

凛「最近、ちょっとずつレッスンがハードになってきてるね……。それに着いていけるようになったのは、嬉しいことだけど」

裕子「これはもしや、デビューも近いってことでしょうか!?」

あずき「……!」

凛「だといいね。……ってあずき、どこ行くの?」

あずき「あずき、今日のところミスが多かったから……。もうちょっとやっていこうかなって」

裕子「ま、まだやるんですか!? ただでさえ今日のレッスンはきつかったのに……」

凛「大丈夫なの? 明日もあるんだよ?」

あずき「うんっ。もうちょっとでデビューって考えると、じっとしてられなくって!」ぴょこん

凛「……あはは」ぱちっ

裕子「……ふふ」にっ

凛「分かったよ、じゃあ飲み物だけ買っていくから、先に行っててくれる?」

裕子「はいっ! 準備して、待ってますねっ!」

あずき「えっ? 二人とも、帰るところだったんじゃあ……」

裕子「ここで帰ったら、あずきちゃんに差をつけられちゃいますからねっ!」

凛「私も、デビューのときに悔いが残るようにはしたくないからさ。あずき、下の自販機のスポーツドリンクでいいよね?」

あずき「……うんっ!」

~事務所~

あずき「おはようございまー……。わぁっ! ちひろさん!」

ちひろ「あらあずきちゃん、おはよう♪ ……どうかしたの?」

あずき「ちひろさん、今日は髪を下ろしてるんですねっ!」

凛「え? どれどれ……。わ、本当だ。初めて見たかも」

ちひろ「ああ、これですか? ふふっ、たまには気分転換もいいかと思いまして」

裕子「すっごく似合ってますよ!」

ちひろ「あら、ありがとう裕子ちゃん♪」

あずき「いいなぁ、綺麗だなぁ……」

凛「そういえばちひろさんは、どうしていつも三つ編みなの? 下ろしてるのも似合ってると思うけど」

ちひろ「えっ? ……そうですねぇ、やっぱりお仕事をするときに楽だからですかね」

あずき「まとめてた方が、楽なんですか?」

ちひろ「ええ。やっぱりちょっと邪魔になっちゃうことも多いですし。凛ちゃんなら分かるんじゃないですか?」

凛「うーん、そうだね。ちひろさんは事務仕事をしてることも多いし、書類なんかするときは気になっちゃいそう」

ちひろ「です。だから、この方が楽なんですよね」

裕子「あずきちゃんみたいに、お団子にするのはどうですか?」

あずき「わっ、あずきもそれ見て見たーいっ! ちひろさんとお揃い大作戦っ♪」

ちひろ「お、お団子ですか……。そうですねぇ、頭が重くなっちゃうと首とか肩が凝っちゃいそうなんですが……」

あずき「」きらきら

ちひろ「……たまにはいいかもしれませんね。今度してみることにしましょうか♪」

あずき「やったぁ!」

あずき「凛ちゃんと裕子ちゃんもどうかなっ? みんなでお揃い大作戦だよっ!」

裕子「むむ……。私、お団子はあまりしたことが無いんですが」

凛「わ、私も……? 私はいいかな、きっと似合わないから」

あずき「ええーっ、そんなことないよぅ」

ちひろ「凛ちゃん、とっても綺麗なストレートですよねぇ」

裕子「髪質とかもすっごく良さそうですし、癖とかもなさそうでとっても羨ましいです!」

凛「いや、そんなことないよ……? 毎朝寝癖とか、大変だし」

裕子「寝癖? でも、凛ちゃんが寝癖つけて来たところ見たことないです」

凛「これでも毎朝格闘してるんだよ……」

凛「みんなもあるでしょ? 毎朝起きたら静電気がばちばちで大変だったりとか」

あずき「せい」

ちひろ「でん」

裕子「き?」

凛「えっ……。……ないの?」

あずき「た、たまにならあるけどっ、そんな毎朝とかはないかなっ」

ちひろ「私はくくって寝ることが多いですから、あまり無いですねぇ」

凛「ええ、そんな……」

裕子「髪に電気が蓄えられるなんて……。やっぱり凛ちゃんには新たなサイキックの目覚めが……!」

凛「そんな能力いらないから!」

あずき「すごーい、それなら困ったときは、凛ちゃんの髪で充電させてもらわないとねっ」

凛「あずきも悪ノリしない!」びしっ

ちひろ「利用法を考えますから、自由自在に放電できるようになったら教えてくださいね♪」

凛「ちひろさんまで……」がくり

ちひろ「しかし、静電気ですか……。凛ちゃんはくくって寝たりしないんですか?」

凛「うーん、なんかちょっと苦手で……。下ろしてる方がよく眠れる気がするんだよね」

あずき「でも、あずきも寝るときは下ろしてるけど、そんなに静電気とか気になったことないなぁ」

凛「そうなの? うーん……。じゃあ、何が原因なんだろう」

ちひろ「髪質や、疲労が原因だって聞いたこともありますけど……。そんなにあずきちゃんたちと差がつくとは思えませんしねぇ」

裕子「ふっふっふ……。私には分かりましたよ、その原因が!」

あずき「え?」

凛「本当? 教えてよ、裕子」

裕子「ええ、このエスパーユッコが教えてしんぜましょう。ずばり!」

凛「ずばり?」

裕子「凛ちゃんは、寝相が悪いのでは!」

凛「へっ」

ちひろ「ああ、なるほど。それなら静電気が溜まるのも説明がつきますね」ぽむ

あずき「凛ちゃんが寝相が悪いって、なんだか意外な気がするねっ」

凛「や、ちょっと……。勝手に決めないで……」

裕子「しかし、他に原因は考えられません!」

あずき「じゃあ、今度みんなでお泊り会しようよっ! そうしたら本当に寝相のせいかどうか確かめられるよっ!」

裕子「それはナイスアイデアです! 私たちで、凛ちゃんの謎を解き明かしてみせますよ!」

凛「うええ……?」

ちひろ「ふふっ。3人とも、とっても仲が良いんですね♪」

あずき「もちろんだよっ!」

~会議室~

P「さて、3人にはデビュー前の基礎特訓として、ここしばらくいつもよりハードなトレーニングを積んでもらったわけだが……」

凛「やっぱり、特別なトレーニングだったんだね。量が明らかに違うから、分かってはいたことだけど」

裕子「もしかして、そろそろデビューのお声が!?」

P「ああ。トレーナーさんと俺の見立てでは、合格だ」

あずき「! それじゃあ……!」

P「ああ。近々新人としてライブに出てもらうことになる。まずはこの3人だけじゃなくて、他の新人と一緒にだけどな」

凛「顔見せみたいな感じ?」

P「ん、そう捉えてもらってもいい。曲は前々から練習してもらっているのと同じやつだ」

>ちひろ「利用法を考えますから、自由自在に放電できるようになったら教えてくださいね♪」

ちひろさんも自由自在に放電できるのでは?(中の人感

あずき「…………や」

凛「?」

裕子「??」

あずき「やったーーーーーっ!!!」

凛「あずき?」

あずき「あ、ごめんっ! つい大きな声で……」

P「あずきにとっては、何より嬉しいニュースだろうしな。気にするな」

裕子「あずきちゃん、人一倍頑張ってましたもんね」

あずき「えへへっ、ほんとに嬉しいよっ、凛ちゃんっ、裕子ちゃんっ!」

凛「よしよし。これからも頑張ろうね」ぽんぽん

P「単独デビューはもう少し先になるかもしれないが……。ちなみに、活動に関して何か希望とかはあるか?」

裕子「希望ですか? もしかして、何でも叶えてくれるんですかっ!?」

P「ええと、裕子の希望はまあ、置いておくとして……できる範囲でな」

裕子「やんわり断られましたっ!? まだ何も言っていないのにっ!」

凛「希望と言われても、抽象的過ぎるかな。私たち自身の曲とかが決まるのは、まだ先の話なんでしょ?」

P「そうだな。だから、まだなんとなく考えておくくらいのことでもいいのかもしれないけど」

あずき「あ、あのぅ……」おず

P「お、あずき。何かあるのか?」

凛「??」

あずき「そのぅ……。衣装とかは、どうなるのかな、って」

裕子「わぁ、衣装! あずきちゃん、何か着たいのがあるんですか?」

P「衣装……。ああ、そっか」

凛「心当たりがあるの、プロデューサー?」

P「ああ。あずきの家は呉服屋だもんな」

あずき「うんっ。いつか、和服みたいな衣装が着れたらいいな、って」てれてれ

裕子「ええっ!? あずきちゃんのおうちって、お洋服屋さんなんですかっ!?」

P「あれ。知らなかったんだっけ」

凛「知らないよ……。でも、和服か。悪くないかもね」

あずき「でしょでしょ!? えへへー、実は密かに、憧れだったんだ♪」

裕子「わ、私は和服が似合うのかどうかは不安ですが……。でも、いつかあずきちゃんのおうちの服を着て、ライブができたりしたら最高ですね!」

あずき「大丈夫だよっ! 私が裕子ちゃんに似合うのを見繕ってあげるからっ!」

P「へー、そんなこともできるのか。流石だな」

あずき「えっへん。任せてよっ!」

凛「あずき、すごいなぁ……」

P「何言ってるんだ凛。凛だって、よく家のお手伝いをしてるそうじゃないか」

凛「そんなことないよ。手伝いって言ったって、ただ座って常連さんとお喋りしてるだけだし」

あずき「? 凛ちゃんのおうちって、何をやっているんですか?」

凛「うち? ただの花屋だよ。小さな」

裕子「えー! お花屋さんですかっ!? すごーい!」

凛「すごくないって……。そういう裕子こそ、どうなのさ」

裕子「わ、私のうちですか!? うちはほら、その……」

あずき「?」

P「なんだ裕子、秘密にしたいのか? 裕子の家は」

裕子「わーっ! わーっ! それよりそれより、私、お花屋さんのお話がもっと聞きたいですっ! ほ、ほらほら、お花屋さんって言ったら、女の子の憧れの職業ですもんね!」

凛「……?まあ、それはいいけど、その慌て方はちょっと気になるな……?」

あずき「あずきも、裕子ちゃんの話が気になるよっ!」

P「だよなぁ。隠すようなことじゃないのに。裕子のご両親は立派に」

裕子「にゃーっ! 駄目ですってばっ!」

凛「なんでそこまで頑な……。ま、無理に聞きたいとは言わないけどさ」

裕子「駄目なものは駄目なんですっ。サイキック黙秘権っ!」

裕子(サイキッカーが身元バレなんて、恥ずかしいじゃないですかっ!)

P(……なんて思ってるんだろうけど、まあいいか。黙っておいてやろう)

~街~

裕子「んーっ! 久しぶりの、オフだーっ!」

凛「本当、久しぶりって感じだね」

あずき「えへへ、なんだか最近、ずっと一緒に居るような気がするねっ!」

裕子「確かに、そうかもしれません! たまのオフも、こうして一緒に遊びに行くようになりましたし」

凛「これだけ一緒に居れば、テレパシーにでも目覚めそうな気がするよね」

裕子「なんですとっ! 凛ちゃんも、まさかサイキックに目覚め始めているのですか!」

あずき「えー! ずるいよ! あずきだけ仲間はずれーっ!」

凛「え、いや、冗談なんだけど……。いろいろと突っ込みたい気がするけど、まぁいいや」

あずき「ところで、今日は凛ちゃんが買いたいものがあるって話だったけどっ! 一体何を買いに来たのかなっ?」

凛「ん? うーん……。特に何を決めて、ってわけじゃないんだけど」

裕子「? でも、アクセサリーショップに行きたいっていうのは決まっていたわけですよね?」

凛「そうなんだけどね。何と言うか、その……」

あずき「?」

凛「せっかくこれだけ仲良くなったわけだしさ。何か、3人でお揃いのアクセサリーでも持ちたいな、ってさ」

あずき&裕子「!」

裕子「ふふっ」にやにや

あずき「ふふふふ……」にやにや

凛「……何、二人とも。顔キモいよ」

あずき「いやあ。だって、ねぇ。裕子ちゃん」

裕子「ええ。ねぇ、あずきちゃん」

凛「な、なに。なんなの?」

裕子&あずき「凛ちゃんって、意外とロマンチストなんだなぁって!」

凛「そ、そんなんじゃないよ。私はただ……」

裕子「いえいえ、みなまで言いますまい。このエスパーユッコには、全てがまるっとお見通しですから!」

あずき「えへへ。あずきもすっごく嬉しいよ! 凛ちゃんがそんな風に思ってくれてたなんて!」

凛「……あー、もう。ほら、二人とも立ち止まってないで、さっさと行くよ」

あずき「照れてるねっ」

裕子「照れてますねっ!」

凛「……ほんとに置いてっちゃうからね」

あずき「あっ、凛ちゃん、待ってよーっ!」

~ショップ~

裕子「お店に着いたわけですけど……」

あずき「うーん。なかなか、みんなでお揃いって難しいものだね」

凛「ステージに上がっても、身につけていられるようなものがいいんだけど……。そうすると、種類も限られちゃうし、ね」

裕子「こっちの指輪なんてどうですか?」

あずき「いい感じだと思うけど、これってペアリングみたいだから……」

裕子「あっ、そうか。3人だと少し変ですかね。……凛ちゃん、ちなみに好きな色とかはあるんですか?」

凛「私は、蒼が好きかな? でもなかなか、ピンと来るものがなくて」

あずき「ああっ!!」

裕子「!?」

凛「どうしたの、あずき? いいの見つかった?」

あずき「ううん……。それよりあずき、2人に伝えなくちゃいけないことが……」

裕子「伝えなくちゃいけないこと、ですか?」

あずき「うん……。実はあずき、今月もうお小遣いがなくって、あんまり高いものは買えないかも……」しゅん

凛「そうなの? もともと、あんまり高いものは買うつもりじゃなかったけど……。ちなみにどのくらい?」

あずき「うぅ、これだけしか……」ぱか

凛「……」

裕子「これだと……。今月も残りまだ少しあることを考えると、確かにあまり大したものは変えませんね」

あずき「うち、お母さんが厳しいから前借りとかもできなくって。今思い出したの。本当にごめんっ!」

凛「ちょっとなら貸すこともできるけど……。それもあまり良くは思われなさそうだね」

裕子「身につけるものだと、お母さんもすぐ気付くでしょうしね。どうやって買ったの? って聞かれちゃいます」

あずき「多分、そうだと思う……。うぅ、せっかくの凛ちゃんのナイスアイデアなのにーっ!」ぶんぶん

凛「じゃあ、出直しかな? せっかくだし、今日は品定めして帰ろうよ」

裕子「そうですね! 今度はお小遣いを貯めて、また来ればいいんです!」

あずき「うん……。ごめんね、二人とも」

凛「気にしなくていいって。ウィンドショッピングも、楽しいものだよ」

裕子「ええ!」

凛「しかし……。値段を気にしないで見るとなると、一気に欲しいものが増えちゃった気がするね」

裕子「この棚のここからここまで! なんて、一生に一度は言ってみたいですよね……うひひ」

あずき「あははっ。あずきも大人になったら、こんなネックレスとかするようになるのかなー」ぴらっ

あずき「…………」ぴしっ

凛「……あずき、値札めくったまま止まっちゃってるけど、大丈夫?」

裕子「! 凛ちゃん、あずきちゃん、こっち着てください!」

凛「裕子? 何か見つけたの?」

あずき「…………」かちーん

凛「あずきも固まってないで、行くよ?」

あずき「あ、う、うんっ!」

裕子「凛ちゃん、あずきちゃん、これ! お揃いで、どうですか!?」

あずき「これ……。ヘアピン?」

凛「そっか。これならそんなにお金もかからないね。いつも持ち歩けるし」

あずき「凛ちゃん、青じゃないけどいいの?」

凛「別にいいよ。絶対蒼じゃないといけないってわけでもないから」

あずき「そっかぁ。それにしても、綺麗な色……。ワインレッド、って言うのかな? これ、あずきに似合うかなぁ?」

裕子「そう、そこなんです! 私がこれをチョイスした理由は!」

凛「ワインレッド……。ああ、なるほど」

あずき「えっ? 凛ちゃん、何か理由があるの?」

凛「うん。それにしても……裕子。私のことをロマンチストだなんて、人のこと言えないじゃない」ぷぃっ

裕子「やっぱり、そうですかね? えへへ」

あずき「何っ? 何っ? あずき、分かんないよーっ!」あたふた

裕子「ロマンチストって言ったって、凛ちゃんほどじゃないですけどね。ね、あずきちゃん?」

凛「そんなことないよね? ね、あずき?」

あずき「ちょ、ちょっと待ってよっ! そもそもあずきは何がロマンチストなのかも分かんないんだってばっ」

裕子「えっ」

凛「……ひょっとして、マジで言ってる?」

あずき「マジも何も、本当にわかんないよっ!」

裕子「あれあれ。リーダーがそんなことじゃあ、困りますね!」

凛「そうだよ、リーダー。しゃんとしてよ」

あずき「リーダー……? ……えっ、えええっ!!?」

凛「あれ、知らされてないの? このユニット、あずきがリーダーになることになったって」

裕子「プロデューサーからメール、来てましたよね?」

あずき「め、メールっ? あずき、見てないよっ!?」

あずき「それに、あずきがリーダーなんて、そんな……! あずきより、凛ちゃんや裕子ちゃんの方がふさわしいんじゃ」

凛「そんなことないよ、あずき。私は、このユニットのリーダーはあずきしかいないと思ってる」

あずき「えっ?」

裕子「プロデューサーからのメールにもありましたよ。あずきは弱音も吐かずにずっときついトレーニングを頑張ってるから、トレーナーさんと相談した結果だって」

凛「私も裕子も、いつもあずきには引っ張っていってもらってるから。私は、先頭に立って引っ張っていくような性格じゃないし」

裕子「あずきちゃんと一緒だから、私たちは頑張れるんです。その力は、リーダーに相応しいものだと、私は思います!」

あずき「2人とも……」

凛「だから、これ、お揃いで買おうよ。ね?」

あずき「……うんっ! あずき、絶対絶対絶対、大事にするねっ!」

裕子「ええ! 私たちの、アイドル第一歩です!」

あずき「えへへっ。『お揃いで友情アップ大作戦』だね、凛ちゃん!」

凛「そ、そんな大層な作戦名をつけるつもりじゃなかったんだけど……。ま、いっか」

裕子「友情パワー、いい響きですね! 燃えてきましたーっ!」

あずき「あずきがリーダー、かぁ……。えへ、えへへ……♪」

~事務所~

あずき「……」かりかりかり

裕子「……」かりかりかり

凛「……」かりかりかり


P「おーい、あずきー? ……って、いたのか3人とも。何やってるんだ?」

凛「見てわかるでしょ。勉強だよ、勉強」

裕子「レッスンに夢中で、次のテストがまずいんですよー!!」

あずき「ううぅ……」

P「そうか、テスト週間ってやつか。……そんなにやばいのか?」

凛「まあ、私と裕子はまだなんとかなる範囲なんだけど……。あずきが」

P「そうなのか、あずき?」

あずき「だ、だってっ! レッスンが楽しくて、学校の勉強なんてやってる暇なかったんだもんっ!」

凛「正確には、勉強の時間はあったけど、それを全部レッスンと睡眠に使っちゃった……。だよね」

裕子「あずきちゃん、私たちの中で一番頑張ってましたからね……。リーダーに決まってからは、より一層でしたし」

P「おいおい、まさか学校の授業をサボったりはしてないだろうな?」

あずき「さ、さぼっては、ないけどっ」

裕子「けど?」

あずき「…………夢の国、大作戦?」

凛「……それは流石にまずいよね」

P「まあ、待ちに待った瞬間だったわけだから、張り切りすぎるのも分かるが。うちの事務所は、学業も両立するって条件の子が多いのは知ってるよな?」

P「高校、大学に行きながら、勉強や部活を頑張ってるって子も多い。それに、あずきの場合は尚更だろう?」

あずき「う、うん……」

凛(……?)

P「だから、もうちょっと両立できるよう頑張れ。今回のテストが終わるまでは、レッスンも軽めにしてもらうよう言っておくから」

あずき「そ、そんなっ! 今が大切な時期なのにっ」

P「だからだよ。今の状態で両立に苦しんでて、デビューなんかできるわけないだろ? ほんとは事務所に来るのを禁止にしたっていいくらいだけど……」

あずき「そ、それは嫌だよっ! 絶対嫌っ!」

P「……だよな。だから、妥協案ってところだ。まずは目の前のテストを乗り切ること、いいな?」

あずき「……はい」

裕子「大丈夫です、あずきちゃん! 私も教えられるところは教えますから!」

凛「私も、得意科目くらいは協力するよ」

あずき「裕子ちゃん、凛ちゃん……」

凛「……それに、私たちも勉強するんだから、どっちにしろ今そんなにレッスンはできないって」

裕子「あずきちゃんの熱意は私のテレパシーでびんびん感じました! だからみんなでいい点を取って、また思いっきりレッスンできるようにしましょう!」

凛「テレパシーなんてなくても感じてるって……。でも、いいこと言うね、裕子。私もおんなじ想いだよ」

あずき「……うんっ! ありがとう、二人ともっ」

~レッスンルーム~

凛「さぁ、あずき。答えを、聞かせて欲しいな?」

あずき「……」

裕子「ふふん。私には、聞かずとも分かっていますけどねっ!」

あずき「……!」

凛「……あずきが私以外を選ぶなんて、ありえない」

裕子「あずきちゃんの想いは、私が一番わかっていますから!」

凛「それは勘違いだよ、裕子。あずきと一番近い位置にいるのは、私」

裕子「そんなことありません! あずきちゃんと私は、深い深いテレパスで繋がっているんですから!」

あずき「……じゃあ」

凛「!」ぴくっ

裕子「!」

あずき「勝者、凛ちゃん!」

凛「よしっ」ぐっ

裕子「えええっ!? そんな、どうしてですか!?」

あずき「んっとね、2人とも振り付けのミスとかはほとんどなかったんだけど」

裕子「けど?」

あずき「裕子ちゃん、ちょっとアレンジが多かったかなって。明日は他の人も一緒に踊るんだから、基本に忠実な方がいいと思うんだ」

裕子「はっ! 確かに、言われてみればそうですっ!」

凛「最初だからね。私も、それがいいと思うな。……それじゃあ裕子、チョコレート奢りね」

裕子「ああああっ!! 忘れてましたっ!!」

凛「『せっかくだから、何か賭けませんか!?』って言ったの裕子じゃない……」

P「よ、やってるな」

あずき「あ、プロデューサー! 見に来てくれたのっ?」

P「ああ、明日は大事なデビューの日だからな。あんまり疲労とかを残さないように、今日は早めに切り上げるんだぞ」

凛「デビューって言っても、他の新人と一緒に前座として踊るだけでしょ? 大したことないよ」

P「まあ、それはそうだけどな。頼もしいこと言ってくれるじゃないか」

あずき「ほんと、凛ちゃんすごい……。あずきなんて、今から手が震えちゃってるのに」

P「うん、それが普通だよ、あずき。……裕子はどうなんだ?」

裕子「ふふ、私にかかればそんなもの、屁でもありませんよ!」

あずき「裕子ちゃん、スプーン上下逆に持ってるけど……」

裕子「はっ!? いや、これはですね! ユッコですから!」

P「いや、意味分からんし……」

あずき「凛ちゃんは、緊張とかどうしてるの? あずき、もし失敗しちゃったらって考えると、もう……」

凛「うーん……。何も失敗したって命をとられるわけじゃないんだから、そんなに思いつめなくてもいいと思うんだ」

あずき「それは、そうだけど……」

凛「もっとも、今日失敗しちゃった裕子は私にチョコレートを取られるわけだけど」

裕子「ああ! うやむやになったと思ってたのに!」

P「なんだ、賭けでもしてたのか?」

凛「うん。明日のライブのメニューで勝負して、負けたらお菓子奢りって。審判はあずき」

P「そりゃいいな。そうやって条件をつけて本番並みのプレッシャーで練習していれば、段々メンタルも鍛えられていくと思うぞ」

あずき「うーん……」

P「俺に言わせれば、この前のテスト週間の方がよっぽど大変だと思うんだが」

裕子「それは全然違うと思いますけど……」

P「それに、凜も言ったけど明日はただの前座だから。出番も一曲しかないし、失敗しないことより、楽しむことを考えるといい」

P「……待ちに待った、機会なんだろ?」

あずき「! うんっ!」

裕子「そうですね! さすがプロデューサー、いいことを言います! よっ、敏腕プロデューサー! 日本一!」

P「……褒めても凛へのお菓子は肩代わりしてやらんぞ」

裕子「ああっ、なぜバレてるんですか! まさか、私のテレパスが開花して!?」

P「はいはい」

凛「それはそれとして、頑張ってる私たちにプロデューサーからご褒美くらいあってもいいと思うんだけどなー」

P「何っ!? やめろ、せめて給料日過ぎてからにしてくれ!」

凛「……マジな感じだね、プロデューサー」

あずき「……ぷっ。あははっ!」

凛「あずき?」

あずき「そうだよね。この3人で、やっと同じ舞台に立てるんだもんね。楽しまなきゃ、損だよねっ♪」

裕子「!」

凛「うん、その意気だよ、あずき!」

あずき「みんなで、がんばろーっ!」

~翌日・ステージ~

あずき(ライトが、熱いのかなぁ)

あずき(ほとんど覚えていないんだけど、ぼんやりと考えていたのはたぶんそんなことだったと思うんだ)

あずき(お客さんの居る前で踊るのも、歌うのも、これが初めてで)

あずき(決して多いとは言えないんだろうけど、あずきたちみたいな新人に向けて大きな声で応援してくれる人がいて)

あずき(振り付けとか歌詞とか衣装とか立ち位置とか。凛ちゃんと裕子ちゃんのこととか一緒に踊る他の人たちのこととか)

あずき(いっぱいいっぱい考えることがあって、ふとした瞬間心がからっぱになったみたいな瞬間があって)

あずき(そのとき、感じたんだ。なんか、熱いなぁ、って)

あずき(夏の日の登下校でかく汗とは違う。レッスンでかく汗とも違う)

あずき(みんなの心がないまぜになったみたいな、とっても気持ちいい汗と、その熱さ)

あずき(なんだか、心地いいな、って。不安や緊張でいっぱいいっぱいになってた心が、すとんと栓が抜けたみたいになって)

あずき(代わりに入ってきたのは、熱い、熱い、熱い気持ちで)

あずき(結局、何をどう踊ったのか、どう歌ったのか、全く覚えていないまま、あずきたちの初めてのステージは終わったんだっ)

あずき(あとから聞いたら、ちゃんとレッスン通りできてたみたいだから、ほっとしたけど)

あずき(そのときのことを覚えてないなんて、勿体無いかな、って今では思う)

あずき(とにかく、あずきが初めてのライブに関して覚えてることは、これだけ)

あずき(そのあとのことは、よおく覚えてるんだけどねっ!)

~控え室~

裕子「おー、わー、っ、たー!!」ばたん!

凛「ふぅ……。やりきった、かな。本番はやっぱり、違うね」

裕子「私、頭が真っ白になっちゃいました……。ちゃんとできてたかどうか、心配です」

あずき「うん……。あずきも、そんな感じ」

P「なんだ、覚えてないのか? けっこう盛り上がってたのに」

裕子「む、夢中でしたからね」

ちひろ「3人とも、とっても可愛かったですよ♪ 映像、ちゃぁんと撮ってありますから後で見ましょう?」

裕子「プロデューサー、ちひろさん!」

あずき「見てたんだ……」

P「そりゃあ、勿論。みんなの頑張りが伝わって来て、よかったよ」

ちひろ「ええ。私なんて、少し泣きそうになっちゃいました」

P「なんにせよ、これでいっぱしのアイドルってことだ。俺も一人前だと思って扱うから、そのつもりでな」

あずき「は、はいっ!」

P「うん、良い返事だ。それじゃあ今日は……。思いっきり、お祝いといくか!」

ちひろ「飲み物とお菓子を用意してありますから、好きなだけ食べてくださいね!」

裕子「やったぁ! プロデューサー、ちひろさん、太っ腹です!」

凛「……お祝いとかしちゃっていいの? 単なる新人のデビューってだけで、そんな大々的なことじゃないと思うんだけど」

P「この事務所の伝統みたいなものだから、気にするな。その代わり、これからは頑張ってもらうことになるぞ?」

あずき「もちろんっ!」

裕子「やりますよー!」

凛「うん。……頑張るよ」

あずき(こうして、あずきのアイドルとしての活動が始まった)

あずき(凛ちゃんに裕子ちゃん、ちひろさんにプロデューサーさん。いい仲間に、とっても良い人たちに囲まれて)

あずき(あずきたちのアイドル人生は、ずっとずぅっと、順調に進んでいくと思ってたんだっ)


あずき(……このときは、まだ)

あと半分くらいではありますが、今日はこの辺で
ずるずるいくのもあれなので、来週に残り半分を投下して終わるつもりです
きっとお気付きの方も多いと思いますが、某所某Pの組み合わせにインスパイアされております
大分不穏な感じで終わっていますが最後はハッピーエンドの予定なので、
好みの展開だという人がいれば引き続きお付き合いいただければ幸いです
きょうお付き合いいただいた方、特にレス下さった方は本当にありがとうございました!

ではー

>>1
PKヴィ(ry好きです
楽しみに待ってます

乙でした
来週も楽しみにしています


あずきのいるSS久々に見た、嬉しい

これは俺の感なんだが、この凛は髪が多い気がするんだ…

>>1です、すみません、明日は所用で来られそうになくなってしまいました
翌日月曜日の夕方~夜にかけて来られたら来ます

もしひょっとして万が一にでも待っておられた方がいらっしゃいましたら本当にすみませぬ

まつてるよ

報告ありがとう

待ってる

>>1です

レスくださったお二方はありがとうございました、感謝です!

お礼、お詫び代わりではないですが、お好きなアイドル等おられれば、次にssを書くとき登場させようと思うので
もしもご希望があればIDの変わらないうちに適当に書いておいていただければと思います
ご希望のシチュエーション等あれば、それもどうぞ

では、長くなりましたが再開していきます

~??~

裕子「ふっふっふ……。凛ちゃん。もう逃げられませんよ?」じりっ

凛「や……。やだやだ。あずきお願い、裕子を止めてよ」

あずき「それはできないよっ? ……だって、凛ちゃんが悪いんだもん」がし

凛「えっ。やだ、ちょっと、あずき、離し」

あずき「離さないっ」

裕子「えへへ、ありがとうございます、あずきちゃん。それじゃあ、遠慮なく」

凛「待って! 待ってよ! 裕子、そんなひどいこと、ほんとに」ぶんぶん

あずき「暴れちゃだめだよ、凛ちゃん」がしっ!

裕子「大丈夫です、痛くはありませんから!」わきわき

凛「や、やだっ! やだっ……!」ばたばた

裕子「こちょこちょこちょこちょ……!」

凛「……っ! っ! ……!」

裕子「むむむっ? なかなか耐えますねっ?」

凛「ぜった、いっ! 笑ったり、しないっ……!」じたばた

あずき「もー、暴れちゃだめだってばっ。今回の罰ゲームはくすぐりにしようって言ったの凛ちゃんだよっ」

裕子「『まさか私が負けるなんて……!』そう言いたそうな顔ですね、凛ちゃんっ?」こちょこちょ

凛「そんなこと思っ……! や、ちょっ、……っ!」ぴくん

裕子「お、ここですか? うりうりっ」こちょこちょ

凛「だ、めっ……」ぴくんぴくん

P「……何やってんだ、お前ら」

凛「!!?」

あずき「あ、プロデューサー! 見ての通り、凛ちゃんこちょこちょ大作戦だよっ?」

P「何だよその訳の分からん作戦は」

裕子「いつものレッスンの罰ゲームなんですけどね。凛ちゃん、なかなかくすぐり強くて……」

凛「こ、こんなのに負けたりしないもん」

P「またしょうもない罰ゲームを……」

あずき「凛ちゃんが言い出したんだけどねっ。自分が強いから提案したんだったら、ずるいっ!」

P「くすぐりなぁ……。弱い人は弱いけど、強い人は強いっていうよな」

P「俺も足の裏なんかくすぐられるとすごく弱かったもんだけど」

凛「!!」

裕子「ふむん、足の裏ですか。それは盲点でした」

P「そうか? 意外とポピュラーだと思うけどな」

凛「も、もういいでしょ! 十分くすぐられたし、私がそんなに弱くないって分かったんだから!」じたばた

あずき「わ、ちょっと凛ちゃん。暴れないでって」

凛「これ以上面白いリアクションとか取れないって! ね?」

裕子「……まさか、凛ちゃん?」

凛「……な、なにかな? 裕子?」

裕子「靴下の上から……。すーっ」

凛「ひゃっ!」

あずき「えっ」


裕子「……」

凛「……」

裕子「あずきちゃんっ」

あずき「合点!」がしいっ

裕子「ふふふ、ついに私のハンドパワーに凛ちゃんが屈するときが来ましたね……!」

凛「ま、待って裕子、お願い!」

凛「それだけは、勘弁してくれない……かな」

裕子「えー? 嫌だと言われてやめていたら、罰ゲームになりませんよ?」

凛「……お、お願い。他のことならなんでもするから……。今裕子にそんなことされたら、私」

裕子「……しょうがないですね。私はしがないサイキッカーであって鬼じゃないですし、そこまで言うならやめておきましょうか」

裕子「」ぱちっ

あずき「!」こくん

凛「あ、ありがとう、裕子……。私、裕子のこと、信じてたよ」

裕子「ええ。……ただし、あくまで『私は』ですけどね」がしっ

凛「えっ」

凛「……裕子、なんで足を、ちょ、まさか」

裕子「そのまさかです! 選手交代ですよ、あずきちゃんっ!」にやっ

凛「う、うそつき! 裕子のうそつきっ!」じたばた

あずき「凛ちゃん、覚悟ーっ! 裕子ちゃん直伝、さいきっく靴下脱がしーっ!」

凛「直伝って何っ! あ、ちょ、ひっ……」

P「あーあー……」

~10分後~

凛「ひぅ、うぅぅ……」ぴくぴく

裕子「あー、楽しかったです! たまには凛ちゃんの罰ゲームもいいですねっ」

あずき「凛ちゃん、とってもいいリアクションだったねっ」

凛「うぅ、もうお嫁にいけないよ……」

裕子「そのときは私がもらってあげます!」

あずき「あずきたちも、いつまでも凛ちゃんに負けているわけにはいかないからねっ」

P「ふたりとも、頑張ってるんだなぁ」

あずき「毎日遅くまでレッスンしてるもん!」

凛「ふたりの努力がよく分かったよ……。できればこんな形で分かりたくなかったけど……」


裕子「これから罰ゲームは毎日これでもいいかもしれませんね!」

凛「裕子、お願いだからそれだけはやめて……。私、そのうち死んじゃうから」

P「ふむ、それくらいのプレッシャーの方が本番に近い練習になるかもしれないな」

あずき「次はビデオカメラとか用意しておくのもいいかもねっ」

凛「……今なら怒りの力で超能力に目覚められる気がするよ……。髪くらいなら、逆立てられるかな」

裕子「怒髪天ってやつですね!」

凛「そうしたらその髪で、みんなをぐるぐる巻きに拘束してやるんだから。ふふ、ふふふ……」

P「凛、何をわけのわからないことを言ってるんだ……?」

凛「冷静に突っ込まないでよ。だいたい、元はと言えばプロデューサーが余計なことを言わなければこんなことには……」

P「お、おう……。なんかすまん」

凛「ふ、ふふ、ふふふ……」

~事務所~

裕子「むむむむむむん……!」ぐぐぐっ

凛「……裕子、なにやってるの? 変な声出して」

あずき「あ、凛ちゃん! 今ね、裕子ちゃん、超能力のこーじょーじっけん? っていうのをやってるんだって!」

凛「超能力の向上実験……?」

あずき「うんっ! なんか、この5枚の中から星のカードを当てるんだって!」

凛「ああ、なんか見たことあるね……。裕子、こんなのも持ってたんだ?」

裕子「本当は、星じゃなくて、なんでもいいからマークが当てられればいいそうなんですが……。どうしても私は、星を当てたいんですっ!」

凛「どうして?」

裕子「なんか☆のマークって、願いが叶うような気がするじゃないですか!」

凛「ああ、なるほど……。つまり裕子は、超能力を芽生えさせるって願いを叶えたいわけだ?」

裕子「い、いいえっ!? わわわわわたしは、純粋なサイキッカーですから、そんな願いは込めてないですけどっ!!?」

あずき「裕子ちゃん、声裏返ってるよ……?」

凛「あはは……」

凛「……!」ぴこん

凛「ねえ。じゃあ、私もやってみていいかな?」

裕子「勿論いいですよ! ふふん、もっとも、超能力を開花させるにはそれはそれは長い修行が必要ですけどね……」

凛「ふぅん。この星のカードを当てればいいんだよね」きゅっ

凛「……うん。それじゃ、あずき、カード混ぜてくれるかな?」

あずき「はいはーいっ! 凛ちゃんの超能力開発大作戦、だねっ!」まぜまぜ

裕子「このエスパーユッコをもってしても、この試練は並大抵のものではありません……。まずはこつこつと経験を」

ひょいっ

凛「はい、星」

裕子「」

あずき「わーっ! 凛ちゃん、すごーいっ! もう一回、もう一回っ♪」まぜまぜ

裕子「ま、まぁ、確率論で言っても、狙ったカードを引ける確率は1/5ですからね……」ぴく

凛「ええと……。これ」ひょい

あずき「わーっ! また星だねっ! これで1/25!?」

裕子「よ、4%くらいなら、充分日常生活でも」ぴくぴく

凛「それから、これで1/125」ひょい

裕子「」

凛「これで……1/625かな」ひょい

裕子「」

凛「次は……。なんだろ、1/3125?」ひょいっ

あずき「凛ちゃん、計算はやーいっ!」

凛「☆が願いを叶えるマークって言うなら、私の願いも叶いそうかな? ふふっ」

裕子「」


裕子「」

裕子「な、なななななぜ! まさか、凛ちゃんは本当のエスパーっ!?」がくがく

あずき「本当だよっ! すごいよ、凛ちゃんっ!」

凛「ふふ、ふふふっ。そんなに真っ青な顔しないでよ、裕子」

裕子「え……」

凛「トリックだよ、トリック。このカードのここ、よく見てみて?」

あずき「……? あっ」

裕子「な、何か目印が……!? これって……」

凛「リップクリームだよ。初めに端っこに薄く塗っておいたんだ」

凛「透明だから、ぱっと見ただけじゃ分からないけど、こうして触ると」

ぺと

凛「粘着性があるから、こうして分かるってわけ。ま、このカード、ラミネートしてあるみたいだから拭いたらすぐ落ちるかなって思ったからさ」

裕子「ず、ずーるーいー!! いんちきじゃないですか!!」

凛「ふふっ、裕子の驚く顔が見たくって。仕掛けを思いついちゃったから、つい。予想以上に焦った顔するから、驚いたよ」

裕子「驚きすぎて死ぬかと思っちゃいましたよ! ぽんぽんぽんぽん星のカードを引くんですもん!」

凛「ふふっ、ごめん。裕子が願いを叶えるマークとか言うから、引いてみたくなっちゃったんだ。この前のお返しになったかな?」

裕子「まだ根に持ってたんですね……」

凛「そんなことないよ」

あずき「う、嘘っぽい……」

凛「……ま、冷静に考えて4回も5回も同じカードを続けて引けるわけがないよね」

裕子「そうですよ! 私なんて、まだ一回も星のカード引けたことないんですから!」

凛「あはは、それは大変だね」



凛「……えっ」

凛「い、一回も?」

裕子「はいっ。なのに凛ちゃんは目の前で何度も引いちゃうものですから……。むぅ」

あずき「えいっ。……わーっ! あずきも星のカード引けちゃった!」

裕子「ええっ!? あずきちゃんまで!? まさか、またトリックなんじゃあ……」

あずき「違うよーっ! あずき、ちゃんと引いたもん! えへへ、これであずきの願いも叶うかな?」

裕子「む、むむむ……。どうやらこの訓練において、私は一歩も二歩も遅れを取っているようですね……」


凛(いや。いやいや、まさかね)

凛(きっとこのカードは買ったばかりとか、今日開けたばかりとか、そんなオチのはず)

凛(……だよ、ね?)

裕子「凛ちゃーん。今日のお仕事の衣装ってどれでしたっけ?」

凛「デビューライブのときと同じやつじゃなかったかな? 裕子の分もそっちの衣装室にあると思う」

裕子「分かりました、ありがとうございます! ……それにしても、ちょっとずつですが仕事が増えてきましたね」

凛「そうだね。今のところ、順風満帆と言って、いいのかな」

裕子「プロデューサーはそう言っていましたよ? みんなはよくやってくれている、って」

凛「どうかな。プロデューサー、それしか言わないからね……」

裕子「あはは、それもそうですね。でも、あずきちゃんを見てたら、そう言いたくなるのも分かります」

凛「うん。最近、よく思うんだ。このユニット、あずきがリーダーでよかったって」

裕子「凛ちゃん、奇遇ですね! 私も同じことを考えていました」

凛「ああやって周りに元気を振りまくことができるのは、誰にも真似できない、あずきだけの魅力。そう思うよ」

裕子「はい!」

P「お、凛、裕子」

凛「あ、プロデューサー」

裕子「おはようございます!」

P「そろそろ出かけるけど、準備できてるか? 忘れ物無いようにな」

裕子「あれ、もうそんな時間ですか?」

凛「私たちはできてるけど、あずきがまだだよ。というか、まだ来てないんじゃないかな」

P「…………」

裕子「? どうかしたんですか、プロデューサー?」

P「いや。とにかく、車に乗ってくれ。移動しながら話そう」

凛「乗ってって……。まだあずきが来てないんだってば。聞いてなかったの?」

P「……あずきは、今日はお休みだ」

凛「……え」

裕子「ど、どうしたんですか? 体調でも崩したんですか?」

凛「私たち、そんな話聞いてないけど……。明日は来れるのかな」

P「明日も来れない。……もしかすると、もうずっと来れないかもしれない」

凛&裕子「!?」

裕子「ど、どういうことですか!?」

凛「あずきに、何かあったの!?」

P「とりあえず移動だ。行こう」

裕子「……?」

~車中~

凛「謹、慎……?」

P「まあ、平たく言うとそんな感じだ。親御さんから直接連絡があった」

裕子「い、いったいどうして?」

P「単純に、成績や素行の問題だそうだ。あずきがアイドル活動に全力を傾けていて、居眠りしたり、学業が少し疎かになってしまっていたのは知ってるだろ?」

P「あずきもかなり頑張って立て直したみたいだが、あずきの母親は、かなり厳しい人みたいでな」

P「それに、あずきに家業を継いでもらうってことも考えてるみたいで。将来に悪影響が出るくらいなら、今のうちに辞めさせた方がいいんじゃないかということだそうだ」

裕子「あずきちゃんの家、そんなに厳しかったんですね……」

凛(そっか。あのときのプロデューサーの言葉は、そういう……)

裕子「じゃあ、ちゃんと両立できるようになれば、また再開できるんですかね?」

P「いや。……もう復帰させる気はないと、きっぱり言われてしまった」

凛「! あずきもそれに納得したの!?」

P「母親の話だと、そう言ってはいたが……。あずき本人とは、話すらさせてもらえなかった」

裕子「そんな。あずきちゃんの意志はどうなるんですか!?」

P「そこは、家庭の都合だからな……。ましてあずきはまだ未成年だ。親御さんにあれだけはっきり拒絶されてしまっては、俺たちがどうこうできる問題じゃない」

裕子「……で、でも! 今から上手く両立していけるようになるかもしれないじゃないですか!」

P「俺もそう言って説得しようとしてみたんだけどな……。取りつく島もなかったよ」

裕子「と、とにかくあずきちゃんに電話を……」pi

凛「そうだね。あずきの気持ちを、あずきの言葉で聞きたいよ」

P「……ああ」

prrrr prrrr

裕子「……。出ま、せん…………」

凛「……きっと、いつか折り返してくれるはずだよ」

P「そうだな。そろそろスタジオに着くから、とりあえず2人は今日の仕事を頑張ってくれ。いつも通りにな」

凛「うん」

裕子「はい……」

~翌日・事務所~

裕子「……結局、あずきちゃんとは連絡が取れませんでしたね」

凛「メールもLINEも返信がないとなると……。携帯電話、使えないのかな」

ちひろ「あずきちゃん、心配ですね……。せめて元気な声を聴けたらいいんですが」

裕子「せっかく、せっかく上手く行きはじめてたのに。ちょっとずつだけど、ラジオやテレビのお仕事も入ってきて、あずきちゃん、毎日すっごく楽しそうにしてたのに……!」

凛「ちひろさんは、何か知らないの?」

ちひろ「残念ながら、私も何も……」

凛「……私」

ちひろ「?」

凛「私、このままあずきが居なくなるなんて、納得できない」

ちひろ「……はい。あのあずきちゃんが、自分から辞めたいって言うはずないですもんね」

裕子「そうです! 私は絶対信じませんっ!」

prrrrr

ちひろ「ごめんなさい、ちょっと電話に出るわね」

凛「あずき……」

裕子「あずきちゃんっ……」

ちひろ「はい、CGプロダクションの千川がお受け……」

ちひろ「あ、あずきちゃん!?」

凛「!」

裕子「!?」

ちひろ「ちょ、ちょっと待って。今スピーカーフォンにするから。そう、隣に凛ちゃんと裕子ちゃんもいるから!」

あずき『凛ちゃん、裕子ちゃんっ』

凛「あずき!」

裕子「あずきちゃん! よかったぁ」

あずき『いきなり休んじゃって、ごめんね。携帯も没収されちゃってて……。全然連絡取れなかったんだ』

凛「やっぱり……」

あずき『家ですることは、ずっとお母さんに見張られてて……。2人の電話番号も確かめられなかったから、友達の携帯を借りてCGプロの電話番号を調べて、今かけてるの』

裕子「そんなこと、いいですよ! それより、いつ頃戻って来られそうなんですか?」

あずき『……っ』

あずき『……』

凛「あず、き?」

あずき『……あずき、もう、アイドルやめなきゃいけないかも』

裕子「っ! そんな!」

あずき『お母さんが、言うんだ。……あずきが無理して続けたら、2人に迷惑がかかっちゃうんだ、って』

裕子「め、迷惑なんて、そんなことないですよ! 私たち、待ってますから!」

ちひろ「あずきちゃん。お母さんは、説得できそうにないんですか?」

あずき『もう、気持ちは固まっちゃってるみたいで。あずきが家でちょっとダンスの練習しようとするだけで、すっごく怒られるの』

あずき『何にも許してくれないんだ。……もう、もう無理だよ』

裕子「そんな……」

ちひろ「……」

あずき『ごめんね、凛ちゃん、裕子ちゃん。あずきっ……』

凛「待って、待ってよ、あずき。一つだけ聞かせて」

あずき『えっ』

凛「あずき自身は、どう思ってるの? まだ、続けたいと思ってるんだよね?」

あずき『……!』


あずき『あずき、は。あずきはっ……!』


ぷつっ


凛「あずき? あずきっ!?」

つー、つー、つー

凛「切れた……」

裕子「……。あずきちゃん……。半ば、諦めてしまっている感じでしたね」

ちひろ「よっぽど、厳しく言われたのかしら」

凛「…………」

裕子「私たちも諦めるしか、ないんでしょうか……。うううっ!」

ちひろ「難しそうな、状況だけれど……」

凛「……」

裕子「……っ」

凛「……でも。家が許してくれないだけで、あずきの心は絶対に、まだアイドルをやりたいって思ってるはずなんだ」

裕子「!」

ちひろ「……ええ。最後のあずきちゃんの声、そんな感じでした」

凛「……私は、諦めたくない。また3人で、絶対に同じステージに立ちたい」

裕子「凛、ちゃん……」

凛「きっと、私たちにも何かできることがあるはずだよ。一緒に探そう」

裕子「……ええ、ええ! このエスパーユッコともあろうものが、後ろ向きになりかけてしまっていました! 諦めたら何も始まりません!」

ちひろ「凛ちゃん、裕子ちゃん……」

ちひろ「…………」ぐっ

ちひろ「そうね、私たちにできることを探しましょう。要は、ご両親が許可をくださればいいわけですから……」

裕子「やっぱり、お母さんに直接訴えかけるのが一番いいんではないでしょうか!」

ちひろ「でも、それはあまりやりすぎると逆効果になっちゃわないかしら」

裕子「う、それを言われると……」

ちひろ「あの、ですね。実は私に」

凛「……ねえ。一つ考えがあるんだけど、聞いてもらってもいいかな」

ちひろ「!」

裕子「凛ちゃん、何かいいアイデアがあるんですか?」

凛「うん。少し思いついたことがあって。こういうのはどうかな……」

ちひろ「……!」

裕子「なるほど……。そのくらいなら、私たちにもできそうですね!」

凛「ぱっと思いついたアイデアだから、うまく行くかどうかは保障できないけど……」

ちひろ「…………」

裕子「それでも、何もしないよりはいいはずですっ!」

凛「問題は、プロデューサーだね……。こんなこと勝手にしたら怒られるかもしれないから、内緒にしておかないと」

ぽか

凛「!」

裕子「!」

P「全部聞こえてるぞ」

凛「ぷ、プロデューサー……。聞いてたの」

P「聞いてたというか、聞こえてた。……いいぞ、やっても」

凛「え」

裕子「本当ですかっ!?」

P「ああ。俺だって今回のことは納得いってないし、できることはやろうと思ってたんだ」

凛「でも、もしも逆効果になったり、悪い影響が出たりしたら」

P「いいよ、2人がそうしたいんだろう? 責任は俺が取るから、お前らは好きにやってみろ。やりすぎない程度にな」

凛「プロデューサー……。ありがとう」

ちひろ「……うん。頑張ってね、凛ちゃん、裕子ちゃん。私たちもできる限り、協力するから」

裕子「はいっ!」

P「うん、ちひろさんが着いてくれるなら百人力ですね」

ちひろ「ひゃ、百人力かどうかはわかりませんけど……! でも、持てる力は全てふるっちゃいますよ!」

凛「あ……。そういえばさっき、ちひろさんも何か言いかけてなかった?」

裕子「あ、そうでした! 他にも案があるなら、それを……」

ちひろ「……。いえいえ、何でもありません。私は凛ちゃんたちのお手伝いをします、というだけですよ」

凛「そっか。ありがとね、ちひろさん」

裕子「頼りになります!」

ちひろ「いえいえ」

凛「……みんなで、絶対あずきを呼び戻そう」

裕子「はいっ!」

ちひろ「ええ!」

凛「……こんなこと言うのは、ちょっと恥ずかしいけど」

裕子「?」

凛「ここは、あずきにちなんで言わせてもらうね」



凛「……『あずきのアイドル復活大作戦』、開始だよ」



裕子&ちひろ「!」

「「「おーっ!」」」

一旦休憩
今日中には終わりますー

待ってます

ひとまず乙

遅くなりました
再開していきます

~・~

凛(……と、言っても)

凛(私が思いついたのは、そんなに特別なことではなくて)

凛(たった3つのことだった)


「今話題のアイドル、渋谷凛ちゃんと堀裕子ちゃんに来てもらいましたー!」

凛「よろしくお願いします」

裕子「今日はリーダーがお休みですけど、2人で頑張っちゃいますよー!」

「はい、よろしくお願いしまーす!」


凛(ひとつは、私たちは3人のユニットだと繰り返し強調し続けていくこと)

凛(一度、2人で活動するのが当たり前という雰囲気になってしまえば、あずきが戻って来辛くなってしまうし、起用もしてもらいにくくなる)

凛(あずき自身が、もう戻ってこられないと諦めてしまうこと。それだけは、避けたかったから)

「凛ちゃんは、今やってみたいこととかあるのかな?」

凛「やりたいこと、ですか。今はこうして番組に出させていただいたり、レッスンを積むことでいっぱいいっぱいですが……」

「あはは、まだデビューしたばかりだもんね。デビュー衣装すごく可愛かったけど、着てみたい衣装とかはあるの?」

凛「はい。今日はいないですが、実はあずきの実家は呉服屋をやっているので……。いつか和服なんかを着られるといいなと思います」

「へえ、和服! いいなー、凛ちゃん長い黒髪だから、和服とか似合いそうだよね」

凛「あはは、ありがとうございます」


凛(ひとつは、あずきがアイドルを続けることで、たくさんのメリットがあるのだと訴えかけること)

凛(決してアイドル活動は、あずきの将来の足かせなんかじゃない)

凛(あずきにも、あずきのお母さんのお店自体にもメリットがあるのだと主張し続けること。ただそれだけ)

凛(あとは、あずきがお母さんを説得できることを信じて)

凛(私と裕子はまず、その2つを念頭において、露骨にならない程度に毎日活動し続けていった)


凛(……そして、もうひとつ)

~桃井家~

あずき「」かたん

「……あら、あずき。勉強は終わったの?」

あずき「……うん、今日の分は。お母さんは、まだお仕事?」

「仕事の、書類……。まあそんなところね。それより、終わったのなら早く寝なさい」

あずき「……うん。……あ」

\さあ、続いての問題は……。今売り出し中のこの2人に挑戦していただきましょう!/


「いけない、テレビ点けっぱなしだったわね」

\頑張るよ/

\サイキックパワーで華麗に答えてみせますっ!/


あずき「…………っ!」

あずき「…………っ!」

「……あずき。まさか、まだ未練があるとか言うんじゃないでしょうね?」

あずき「……ううん」

あずき「お母さんの言う通り、2人に迷惑をかけちゃうのは、嫌だから……」

「そう。ならいいわ」

あずき「うん……」

あずき「……? ……っ!!!」

「……あずき、そこをどいて。消せないから」

あずき「! ちょ、ちょっと待ってっ!」

「待たないわよ。早く」

あずき「ちょっとくらい待ってよっ!」


あずき(まさか、まさかっ……! ううん、間違い、ないっ)

あずき「あの、ヘアピンっ……!」


「あずき? ……あずき?」

あずき(……まだ、諦めてないんだ)

あずき(……まだ、2人とも、あずきを待ってくれてるんだ)

あずき(……だったら!)

「……あずき!」

あずき「お母さん、ちょっと散歩に公園行ってきてもいいかなっ!」

「は? ……夜も遅いんだから、やめておきなさい」

あずき「ちょっとくらいいいでしょっ! 何でもかんでも勝手に決めないでよ! この前だって、友達の電話も勝手に切っちゃうしっ!」

「なっ、あれは……!」

あずき「とにかく、ほんの少しだからっ! 行ってきます!!」

「あ、こら、あずき!」

あずき(……あずき、諦めかけてた)

あずき(一番頑張らなきゃいけないのは、あずきなのにっ。凛ちゃんも裕子ちゃんも、頑張ってるんだから!)

あずき(私だって、諦めないっ!)


\それじゃあお二人には、こちらの9個のカードの中から、挑戦する問題を選んでいただきます。どれにしますか?/

\えへへ、実はもう、選ぶカードは決まってるんです!/

\ほほう、それじゃあ早速、お二人の選択を聞かせていただきましょう/


あずき(成績を元に戻して、ううん、元の成績よりアップするくらい頑張って)

あずき(それでも同じくらいレッスンを続けてたら、お母さんだって認めてくれるはずだもん!)


\いくよ、裕子/

\いいよ、凛ちゃん!/

\せー、のっ!/


あずき(『あずきのアイドル復活大作戦』、開始だよっ!!)


『『星っ!!』』

~事務所~

P「凛たちが動き始めてから少し経ちましたが……。あずき、音沙汰ないですね」

ちひろ「ええ。……実のところ、うまくいくと思いますか? この作戦」

P「どうでしょう。これで上手く行くのが一番いいとは思いますが……。そう、甘くはないですかね」

ちひろ「やっぱり、ですか」

P「……珍しく、止めなかったんですね、2人のこと」

ちひろ「えっ」

P「勝算の低い勝負は、あまりしない人じゃないですか。ちひろさん」

ちひろ「……そう、ですね。こんな気持ちになるのは、すごく新鮮です」

ちひろ「それこそが、あの2人……。いいえ、あの3人の、魅力なんだと思います」

P「ええ」

ちひろ「……」

ちひろ「…………」ぐっ

P「? ……ちひろさん? どうか、しまし」

ちひろ「プロデューサーさんっ」

P「はい、何でしょう?」

ちひろ「……あの。これを」

P「?」

P「! これは……!」

~桃井呉服店~

「女性の和服の着付けは、前に教えたわよね? 今日は、実際のお客さんにもやってみてもらうから」

あずき「ええっ!? そんな、あずきなんてまだ……」

「ぐちぐち言わない。私があずきくらいの年のころには、もう同じことをやってたわよ」

あずき「そ、そんなこと言ったって……」

「いつも言ってるけど。一番大事なのは、お客様の心に寄り添うこと。いいわね?」

あずき「……はい」

「高校、大学の卒業くらいまでは自由にさせておこうかと思っていたけど」

「……ふん、最初からこうしておけば良かったわ」

あずき(最近、お母さんは学校が終わったらすぐ、お店の手伝いをさせるようになった)

あずき(そして、それが終わって帰ったら勉強と、その日のお店でやったことの復習……)

あずき(隠れて公園でダンスや歌の練習をしてたのが、ばれちゃったのかもしれない。全然、あずきに自由な時間をくれなくなった)

あずき(結局今のあずきがレッスンにあてられるのは、朝学校に行ってからと、休憩時間くらい)

あずき(うう、このまま、じゃあ……)

「はい、できました。よくお似合いですよ、お客様」

婦人「あらほんと? 桃井さんはいつもそう言われるけど、信じていいのかしら」

「もちろんですとも。誂えたように着こなしておられますよ。ねえあずき?」

あずき「……えっ? あっ、うん!」

「何ぼーっとしてるの。今のちゃんと見てたんでしょうね」

あずき「は、はいっ!」

婦人「まぁまぁ。これが噂の娘さんね?」

「まだまだ未熟者ではありますので……。ご容赦ください」

婦人「いいのよ~」

婦人「それにしても、まだまだ遊びたい盛りでしょうに、お手伝いなんて偉いわねえ」

あずき「……」

「ええ。早く経験を積んで一人前になってもらわないと、おちおち隠居もできませんから」

婦人「ふふ。ずいぶんと期待しておられるのね」

あずき「期待……」

「……お会計は以上になります。今後ともご贔屓に」

あずき「ありがとう、ございました……」ぺこ

婦人「ええ、ありがとう。あずきちゃんも、頑張ってね」

あずき「……はい」

婦人「あ。そういえば、外で何か人がたくさん集まっていたみたいだけど、今日はなにか催し物でもあるのかしら?」

「え? いえ、そのような予定はございませんが……」

婦人「あら、そうなの? 何か、舞台のようなものが組まれていたようだけど」

「舞台……?」


~~♪


あずき「!!!」

婦人「あ、ほら。この音楽、そこからじゃないかしら?」

「……?」

「この音楽、どこかで聞いたことがあるような……」

あずき「っ!」

だっ!!

「! こら、あずきっ!」

婦人「……あらあら」

あずき(この曲、この曲、この曲っ……!)

あずき(間違い、ないっ……!)


(こうやって近くに目標ができたり、みんなで頑張ろう、ってなんか嬉しくって!)

(ええ! 私たちの、アイドル第一歩です!)

ぜぇ、ぜぇ

(ふふっ。3人とも、とっても仲が良いんですね♪)

(これだけ一緒に居れば、テレパシーにでも目覚めそうな気がするよね)

はっ、はっ

(なんにせよ、これでいっぱしのアイドルってことだ)

(みんなで、がんばろーっ!)


あずき「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

あずき(凛ちゃん、裕子ちゃんっ……!)


裕子「みなさーん! 今日は私たち、ゲリラライブでやってきましたーっ!」

凛「集まってくれたみんな、ありがとう。今日は目一杯盛り上げていくよ」


あずき「……やっぱり!」


P「……来たな、あずき。待ってたよ」

あずき「ぷ、プロデューサー! これは一体……?」

P「『あずきのアイドル復活大作戦』なんだと。あの2人が企画した、ゲリラライブだ」

あずき「!」


凛&裕子「…………!」

P「あの2人も、あずきが来たことに気付いたみたいだな」

P「向こうに簡易の更衣室と、あずきの衣装が用意してある。勿論、あずきが出演する予定にはなっていないから、出たくなければ出る必要はないけど」

P「……どうする?」


凛「……」にこっ

裕子「……」ぴょんぴょんっ

あずき「!!」


あずき「……行って、きますっ!」だっ

P「おう、行ってらっしゃい」


P「……ふう」

「……あなたが責任者? これは、どういうことかしら」

P「これは、桃井さん。ご無沙汰しております」

「! あなた、CGプロダクションの……!」

P「はい」

「そう、これも貴方の策略というわけ? あずきをアイドルに復帰させよう、という」

「こんなところで無理矢理ライブまで開催して……。許可を取るのも大変だったでしょうに」

P「…………」

「でも残念だけど、あずきは戻さないわ。あの子にとってアイドル活動は重石にしかならないから」

P「失礼ながら、今日の目的はあずきを復帰させることではありませんよ」

「は?」

P「それに、今日のことは私の発案でもありません。あずきの仲間が考えて、やりたいと言ったことです」

P「勿論行動に移したのは私ですし、責任も私が取りますけどね」

「……!」

P「あの子たちからの伝言を伝えますね」

P「『一度でいいから、私たちとステージに立つあずきを見てください。お願いします』だそうですよ」

「ステージに立つ、あずき……?」

P「特等席、用意していますよ」

凛「……さあ、ここでスペシャルゲストの登場だよ」

裕子「みんなが待ってたあの人が、今日だけ、久しぶりの限定復活です!」


凛&裕子「私たちのリーダー、あずきーっ!!」


「「「「わぁぁぁぁぁっ!!」」」」


「……!」

P「……」にこ

あずき「えへへ、こんにちはっ! すっごく久しぶりですっ! 心配おかけしましたっ!」

凛「私たちも、実は会うのは久しぶりなんだよね」

裕子「はいっ! あずきちゃん、元気そうで何よりですっ!」


\あずきー!!/

\あずきちゃーんっ!/


「……あずき」


あずき「わぁ、ありがとーっ!」

凛「それじゃあ今日は、久しぶりに3人で歌わせてもらうよ」

裕子「今日来てくださった皆さんは、大ラッキーですよっ!」

あずき「一日限りのサプライズ、プロジェクトAっ! いっくよーっ!」



わああああああっ!


わああぁっ……!


わぁぁ…………


たたたっ

P「……お、来たな」

あずき「プロデューサーっ!」

P「お疲れ、あずき。すごいな、ブランクもあっただろうに、息ぴったりだったじゃないか」

凛「死ぬほど練習した曲だったからね」

裕子「私たちにかかれば、こんなものですよっ!」

P「そっか。さすがだな」

「……で。これが最後のライブということで、いいのかしら?」

あずき「……っ!」

凛「あずきのお母さんですよね? 初めまして。……あずきの姿、見てもらえましたか」

「ええ。この子がこんなに好かれているなんて、驚いているわ」

あずき「……!」

裕子「当然ですっ! あずきちゃんは私たちの、頼れるリーダーですからっ!」

「頼れる、ねぇ……」

凛「今日は、お騒がせしてしまってすみません」

裕子「……私たちは、私たちのあずきちゃんに対する想いを聞いて欲しくて、こうしてやって来ました!」

「……想い?」

裕子「はい。私たちは、これまでずっとあずきちゃんと一緒に頑張ってきたんです」

裕子「あずきちゃんと一緒だったから、ここまで来れました」

裕子「あずきちゃんが先頭に立って手を引いてくれたから、今まで頑張れました」

凛「このユニットは、3人でひとつなんです」

凛「あずきが居なければ成立しないし、あずきが居ることで私たちはひとつになれる」

凛「あずきが居なくなるなら、私たちは私たちじゃなくなってしまう」

「……!」

凛「……そして、私たちにはひとつ、夢があります」

「……夢?」

裕子「デビューの少し前に、3人で話したことがあるんです」

裕子「『いつかあずきちゃんのおうちの服を着て、ライブができたりしたら最高ですね!』って!」

裕子「あずきちゃんに、似合う和服を見繕ってもらって、その衣装でライブをする、って!」

あずき「!」

「……!」

凛「3人でその夢を叶えよう。そう私たちは、これに誓ったんです」

きらっ

「それは、あずきが最近いつも身に着けてるのと同じ……?」

「まさか、そのヘアピンの、色……!」

凛「……」

裕子「……」

「そう。貴方たち、随分と粋なことを考えるのね」

あずき「!?」

凛「……ちょっと照れくさいですけどね」

裕子「発案者は凛ちゃんですけどねっ」

凛「これを選んだのは裕子でしょ?」

あずき「ね、ねぇっ! お母さんもその色の意味、分かるのっ!?」

「…………はぁ?」

凛「え」

裕子「ええっ」

凛「……あずき。まさかとは思うけど、まだ分かってなかったの?」

裕子「これはびっくりですね……」

あずき「だ、だってっ! ワインレッドの意味なんて、誰も教えてくれなかったじゃんかーっ!」

「ワインレッド、ねぇ……」

凛「……ふふっ。違うよ、あずき」

裕子「そういうことじゃないんです」

あずき「???」

「……はぁ。私が教えてあげるわ、あずき。ワインレッドは、言い換えれば」



「あずき色、でしょう?」



あずき「!!!」

まつてた

あずき「…………っ!」

あずき「じゃあ、じゃあ、2人は」ぽた

あずき「本当に、ずっと、あずきと、一緒だって、言い続けてっ……!」ぽた、ぽたっ

凛「ふふっ。この分だと、半分くらいしか意図は伝わってなかったみたいだね」

凛「……もっとも、半分伝わっていれば十分だけどさ」

裕子「私たちのテレパシーも、まだまだということですかねっ」

「…………」

あずき「……お母さんっ!! やっぱり、やっぱりあずき、2人と一緒に、アイドル続けたいよっ!」

あずき「3人で叶えたい夢があるんだもん! こんな風に、待っててくれる友達がいるんだもん!」

あずき「だから。だからっ……!」

「……夢、ねぇ」

「……あずきがみんなの分の和服を見繕うって? その衣装でライブをするって?」

あずき「そ、そうだよっ!」

「友達の想いも充分汲むことができない半人前のあなたに、それができるのかしら?」

あずき「なっ! それは関係ないでしょっ!?」

「関係あるわよ。呉服屋で一番大事なのは、お客様の心に寄り添うこと。いつもそう言っているでしょう?」

あずき「う、うう……。でもっ」

「アイドルとしても、呉服屋の娘としても、まだまだ半人前のあなたに、そんなことはさせられないわ」

あずき「そん、なっ……!」

「当たり前よ、もしあずきに下手なことをされてうちの評判が下がりでもしたら、大変じゃない。……だから」

あずき「……?」


あずき母「もしもそんな機会が来たなら、あなたじゃなくて私にさせなさい。……いいわね?」

あずき「!」

凛「それって……」

裕子「あずきちゃんっ」

あずき「お母、さんっ……!?」

あずき母「ふん。二度目はないから。何かに夢中になって、何かを疎かにすることがないようにしなさいよ」

あずき「うん、うんっ……! ありがとう、お母さんっ!!」

裕子「よかったね、あずきちゃんっ……!」

P「……」

あずき母「……で」

P「……」

あずき母「これも貴方の望み通りというわけかしら?」

P「何の話です?」

あずき母「とぼけないで。これを送ってきたの、貴方でしょう?」

ぱさっ

あずき母「あの子がアイドルを続けることによって生まれる利益? 興味深い資料だったわ」

あずき母「それだけじゃない。……うちの経営状況、棚卸資産から土地、建物の減価償却、果ては数年後の予定利益と損害。よく調べたものね」

P「桃井さんの様子を見ていると、どうやら必要なかったみたいですけどね」

あずき母「……どうかしらね」

あずき母「しかしこれだけの情報、まともな手段じゃ手に入らないはずだけど……。いったいどんな手段を使ったのかしら?」

あずき母「案外、調べたら後ろ暗いところが出てきたりして、ね」にっ

P「……」

ちひろ「その人は何もしていませんよ」

P「! ちひろさん」

あずき母「? 貴方は」

ちひろ「その情報を調べたのは、全部この私です。その人に何も後ろ暗いことなんて、ありません」

あずき母「貴方が、一人で? まさか」

ちひろ「本当ですよ」

あずき母「……待ちなさい。今、ちひろ、と言ったかしら」

P「えっ? ええ」

あずき母「ちひろ、ちひろ……。……まさか、あの、」

ちひろ「……私の、名前は」

ちひろ「CGプロアシスタント『千川』ちひろです。以後お見知りおきを♪」

あずき母「千……。そう、そういうことね」

P「……?」

あずき母「ふっ。よくよくあの子も、引きがいいのか悪いのか……。変な事務所に引っかかったものだわ」

ちひろ「変な、ってどういう意味ですかっ!」ぷん

あずき母「こちらの話よ」

あずき母「……ふふ。なんだか全て都合よく動かされてしまった気はするけれど」

あずき母「それじゃあ、プロデューサーさん、それに千川さん。これからもあの子のこと、お願いしますね」

P「ええ。必ず、トップアイドルにしてみせます。来る日には、ご協力お願いしに伺いますね」

あずき母「? ……ああ、さっきの話ね。いつでもお待ちしていますよ」

P「では、私もこれで」

あずき母「……ああ、そうだ。最後にひとつ。あの2人に伝えてくれないかしら?」

P「凛と、裕子にですか? なんでしょう」

あずき母「『特等席へのご招待、ありがとう。これからも応援しているわ』と」

P「……! ええ、必ず」

~事務所~

あずき「……と、いうわけで」

あずき「CGプロに帰ってきました、桃井あずきですっ! これからもよろしくお願いしますっ!」

ぱちぱちぱちぱち

P「良かったな、あずき」

凛「うん。良かった……」

裕子「…………」

ちひろ「本当に、良かったですね」

あずき「うんっ。みなさん、心配かけちゃって、すいませんでしたっ!」

裕子「……う」

凛「? 裕子?」

裕子「うわ゛ぁぁぁぁぁぁん! よか゛った゛よぉぉぉぉぉ」

凛「!?」

あずき「裕子ちゃんっ!?」

凛「ちょ、ちょっと裕子……。裕子が本人より泣いちゃってどうするの」

あずき「そ、そうだよっ、やめてよっ。あずき、だってっ……」うるっ

裕子「だって、だっで……。私、絶対、絶対また、3人で一緒にアイドルやりだかったがらぁっ……!」

あずき「!」

凛「裕子……」

凛「うん、うん。そうだね」ぎゅっ

あずき「ありがとう、裕子ちゃん……。あずき、とっても嬉しいよっ!」ぎゅぅっ

P(……裕子)

ちひろ「『超能力なんか無くたって、お前のその優しい心が、他の誰にも真似できない能力だよ』なんて」

P「!!?」

ちひろ「そう言いたそうな顔をしてますね、プロデューサーさん?」

P「お、驚きました……。一字一句違わず正解ですよ。……どうして分かったんですか?」

P「もしかしてちひろさんが本当のエスパーでした、なんてオチなんじゃ」

ちひろ「まさか。そのくらいは分かりますよ。何年一緒に働いてると思ってるんですか」

ちひろ「……分かるように、なったんですよ」

P「そう、ですか。……流石に臭すぎですかね、こんなことを思うのは」

ちひろ「いえ。私は好きですよ、そういうの♪」


裕子「ほんと゛に、ほんと゛に、よか゛った゛よぉぉぉぉぉ……!」ずび

あずき「うん、うんっ……!」

凛「ほら、もう。鼻、噛みなよ。裕子、ったらっ……!」

 


~数ヵ月後・ライブ会場~

ワァァァァァァァッ!!

凛「ふふっ、盛り上がってくれてるみたいだね」

裕子「今日は私たちのライブに来てくれて、ありがとうございますっ!」

あずき「私たちも、今日という日をすごく楽しみにしてきたんだっ」

凛「楽しいことも、しんどいこともたくさんあったけど」

裕子「今日はその集大成にしちゃいますっ!」

あずき「えへへ。それじゃあ今更必要ないかもしれないけど、ここで一応自己紹介をさせてもらうねっ!」

あずき「まずはこのユニットのキュート担当っ! 桃井あずきだよっ!」

ウォォォォォォォッ!!

裕子「はいはいっ! 続けて、サイキック担当、ほり…… あいたっ!」

凛「こら。真面目にやりなさい」

裕子「ぶー……。凛ちゃんは、つれないですねっ」

裕子「それじゃあ改めまして! パッション担当、堀裕子ですっ! エスパーユッコって呼んでくださいね!」


凛「はぁ、全く……。クール担当、渋谷凛だよ。今日はみんな、目一杯楽しんでいってほしいな」

あずき「みんなも私たちも心の底から楽しめちゃうような、あずきのとっておき大作戦、披露しちゃうよっ! 慣れない衣装だから、裾踏んづけて転んじゃったらごめんねっ!」

裕子「みんなまとめてサイキック! ユッコのサイキックパワーで、翻弄しちゃいますっ!」



それじゃあ、いくよ

私たち

3人、揃って――――――!!





おわり

PKヴィオレット売名、なんて。以上で終わります
上でも述べてますが、某Pにインスパイアを受けて書いております
書いてみて改めてわかったことですが、この3人、ほんとに収まりがいいんです
本家とは少し路線が違いますが、少しでもこの3人の魅力が伝わっていれば嬉しいです。いつか公式化される奇跡を信じて

長くなってしまいましたが、お付き合いいただいた方がいればありがとうございました
おやすみなさい

乙でした
PKヴィオレットのファンになります

乙でしたー
なかなかよかったですよ

さすがにIDは変わってたけど>>71です
一応杏をリクしときます、無理にとは言いませんがね(期待の眼差し

乙でした

乙、ワインレッドはついぞわからなかったんであずきと同じ反応になったわ
ちょっと泣きそう、PKヴィオレット流行れ

レス下さった方ありがとうございます、感想いただけて嬉しいです

>>153
杏了解です、たぶん「安価でアイドルたちとのびのび~」というスレタイになると思いますが、
あまり期待せずにお待ちくださいー

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom