妹「なんだかわかんないけど、お兄ちゃんのそばには、私がいるからね！」

兄「うん…」ぽろぽろ

妹「お兄ちゃん大好き！」

兄「ありがとう…」ぽろぽろ


夜
妹「一緒に寝よ…？」

兄「…おいで」

兄「妹もいつかは彼氏ができて、結婚して家を出るなんてことを考えたら、寂しいな…」なでなで

妹「ふぇ？」

兄「今だけ、だな。甘えてくれるのは」

妹「私は、お兄ちゃんの傍にずっといるもん…っ」

兄「ほんとう？」

妹「うん！」

兄「今そう言ってくれるだけでも嬉しいよ」ぎゅ…

妹「むぅー」

兄「行って来まーす！」

妹「お兄ちゃん、お仕事頑張ってね！」

兄「うん！妹も今日は土曜だから学校休みだけど、外出るときは気をつけるんだよ？」

妹「まかせて！」ふんす！

兄「…ふふっ」

外

兄「そうだ、妹のためにも、俺はちゃんと生きて、働かなきゃいけないんだ…」


仕事場

おじさん「次これ運んでー！」

兄「はーい！」

同僚「まだ年齢でいったら高校生なのに、よく働くよなぁ」

同僚２「けなげだなぁ」



兄「ありがとうございました！」

上司「ほら、これ」

兄「缶詰がいっぱいと…お菓子…？」

兄「上司…！」

上司「妹さんと食べな」

兄「ありがとうございます！」


家
兄「ただいまー」

兄「…」

兄「妹…？」

兄「妹ー！」がらっ

妹「…」横たわる

兄「…寝てる？」

妹「…」

兄「血と…精液の臭い…？」

妹「…」

兄「…」

兄「…」

兄「おはようございます！」

上司「おう！昨日のやつ妹さんは喜んでたか？」

兄「はい！」

上司「よかった！」ぐっ


兄「はあ、はあ…」

同僚２「相変わらずあいつはよく働くな…。あ、涙が…」

同僚「おいおい…ぐすっ」


兄「ただいまー！」

妹「…」

兄「ほら、缶詰のサバの味噌煮だぞ」

妹「…」

兄「はい、あーん」

妹「…」

兄「こぼしちゃダメだろ、妹…」

本日未明、T県H町の家で、１２歳の少女の死体が発見されました。
近隣の住人が異臭を感じ、通報したという経緯です。
少女の死体は一週間ほど放置されており、また暴行されたあとがあることから、
警察は兄である…容疑者を逮捕し、事情を聴いています。

警察「だからお前がやったかどうかを聴いてるんだよ！答えろや！」

兄「妹…大丈夫かな、俺一人帰れなくて。一人でご飯つくってまってればいいけど…心配だな」

警察「おいこらあ！」

がちゃっ

警察２「部長、実は、DNA鑑定の結果…」

警察「…」

兄「妹…帰ってきてないな…心配」

兄「妹、妹は将来どんなひとと結婚したい？」

兄「お兄ちゃんみたいなひと！」

兄「お兄ちゃんみたいにダメな人間はダメだよ。妹にはもっと素敵なひとが…」

兄「そんなことないもん！お兄ちゃんと結婚するの！」

兄「え？俺と結婚するの？」　

兄「…」

兄「…」



兄「おはようございます！」

上司「！？兄、もう大丈夫なのか？妹さんが…」

兄「妹のことですか？あいつ、家出しちゃって、帰ってこないんですよー。まあ、親代わりの俺がしっかりしてないから…」

上司「…」ぽろぽろ

兄「上司？」

上司「休め、お前は休め…！」ぽろぽろ

包丁「…」

兄「…」じぃ…

包丁「…」


兄「本当はわかってるさ、妹がレイプされたあと殺されたこと、妹はもうこの世にいないこと、俺はこの世でひとりきりなこと」

兄「でも、その現実を認めてしまったら、俺は…」

兄「おはようございます！」

上司「兄！？もういいのか！？」

兄「ええ、事件をいつまでも引きずっても、しょうがないですから」

上司「兄…」

うわあ…

わ、わからん

家

兄「疲れた…」ふらふら

兄「寝るか」すやすや


次の日

兄「」ぼーっ

兄「もう仕事いく時間…」

兄「…」

兄「…」

…

夜

兄「…」ふらふら

不良「おい、てめえ見てんじゃねえよ」

兄「…」

不良「おい！」げしっ

兄「…」

兄「…」コンクリートを持ち上げる

不良「え、ちょ…」

がん！

がん！がん！

兄「お前か…俺の妹を殺したのは…」

がん！がん！

兄「幼い頃に親2人なくしてよぉ…」

がん！がん！

兄「親戚中たらいまわしにされててよぉ…」

がん！がん！

兄「やっと中学卒業して、自立できて、妹には大学まで行かせるつもりだったのによぉ…」

がん！がん！

兄「俺にはなんの希望もなく、ただ妹が幸せになって、結婚でもしてくれればと思ってたのによぉ」

がん！がん！

兄「狂いそうになる精神を必死に抑えてよぉ！」

がん！がん！

兄「俺が生きる理由も、ルールを守る理由も、もはやなにもねえんだよお！！！！」

がん！！！

肉と血の塊「…」

兄「…」


終わり