男「走ってはいけない条例」(23)
信じられるか?こんな馬鹿げた条例が制定されたんだ。走ると、トラブルの原因になるだとか、靴がすり減るだとか、子どもの言い訳みたいな理由で。しかも恐ろしい事に、違反者はその場で死刑。ここ日本だぜ?実際に走って、自警団に目の前でやられた奴もいる。人々がそんな非日常を強いられて三年が経った。今、走ろうとする人間はいなくなった。「一部」を除いて…
男「やべえ、今日も遅刻する!」ダダダッ
自警団「!居たぞ!あいつだ!」ガーッ
男「へっ、元陸上部の俺に、スケボーで追い付こうなんざ百年早い!」
自警団「おい待て!応援を頼む!」
男「おいおい、今日は本気か?」
白バイ「そこの、止まれ!」
男「止まったらなぶり殺しだろ!やだね!」ダッ
男「角を曲がって、ゴミバケツにダイブ!」ガサッ
自警団「くそっ。あのガキめ、どこへ消えた」
男「よし、いなくなった。さあ、もうすぐゴールの学校だ」タッ
…教室
男「セーフ!おはよう!」
女「アウトだから」
男「なんだよ」
女「今日も走ったでしょ」
男「いいじゃんかよ、捕まってないんだし」
女「あんたねぇ…鬼ごっこじゃないんだしさぁ。死にたいの?」
男「余裕余裕!死ぬわけないない!」
先生「hr始めんぞ」ガラッ
男「ほらほら、席につけよ」
女「もう…」
先生「その前に、男。お前、走ってきたそうだな」
男「え?」
先生「皆さん、こちらです」
自警団「探したぞ、ガキ」ゾロゾロ
男「なっ!嘘だろ先生!」
先生「いくら教え子とはいえ、私もルールを守らない者はしかるべき罰を受けるべきだと思うのだ」
男「なんだよそれ!くそっ!」バッ
女「窓から逃げた!4階なのに!?」
男「うおぉぉお!」ダンッ
自警団「に、逃がすな!追え!」ガーッ
女「お、男…」
男「はぁ、はぁ…」タタタ
自警団「ははは、どうした!息が上がってるぞ!」ガー
男「ここまでか…あぁ!?」ヒュンッ
自警団「き、消えた!」
男「いてて…マンホールが落ちたのか?不幸中の幸いってやつだな」スクッ
男「ってなんだここ!?家具が置いてある…」
男「畳にちゃぶ台、ブラウン管テレビ、黒電話…」
おっさん「誰だ、お前は」
男「うわっ、誰?ここの住人?もしかしてマンホールの妖精か?」
おっさん「んなわけねーだろ」
おっさん「ここは走者軍団、ランナーズハイのアジトだ!」ビシッ
男「…」
おっさん「…」
男「なあ、出口どこ?」
おっさん「ふっ、お前もランナーズハイに加入すれば教えてやろう」
男「勧誘はよそでやれよ」
おっさん「俺からすればお前がよそ者なんだが」
男「大体なんだよ掃除屋軍団て。ここがアジトとか…怪しさの塊だな」
おっさん「失礼な。走者軍団の素晴らしさ、熱く語ってやる。聞け」
男「やだね」
走者軍団ランナーズハイ!それは、街中を堂々と駆け回り、追っ手から逃れる命懸けのやりとりを楽しむ、クレイジーなチームなんだぜ!
男「なんだぜ!じゃねえよ。意味なく走りたくないし」
おっさん「意味はある。自警団にも走者を捕まえるノルマがあって、達成出来なければ自警団への経費は削減されてしまうのだ!」
男「なんで知ってんだよ」
おっさん「つまり、わざと走って捕まらずにいれば、いずれは条例を無くす事が出来るという寸法だ!」
男「だからなんで分かるんだよ」
おっさん「俺も自警団だった時期があってな…」
男「そうかそうか、じゃあ加入するから出してくれ」
おっさん「じゃあここにサインを」ムキッ
男「腹筋に書くのかよ…こうか?」カキカキ
おっさん「アヒッ!ウホホッ!はあはあ、オッケーだ!さあ、ちゃぶ台に乗れ」
男「なんなんだよまったく」
おっさん「鳥になってこい!ちゃぶ台返し!」ガシャアッ
男「うおわぁぁ!」ピョーン
男「ああ、出られた。気分最悪だ。おっさんに絡まれるし、学校にはもう行けないだろうし…」
男「もう帰ろう」スタスタ
男宅
男「はぁ、ただいま…もう昼か」
おっさん「よお」
男「うわぁぁぁ!なんで居るんだよ!」
おっさん「さっき加入したろう?ランナーズハイに。俺自身にサインしたから、お前の居場所、行き先が分かるのさ」
男「どうしてだよ!帰れよ!ちゃぶ台とか持ってくんなよ!」
おっさん「カタいこと言うな…早速だが、走るぞ」ガッ
男「ちょっ、おい!離せ!」
おっさん「今時間は巡回があるからな!走るにもってこいだ!」
面白い ④
おっさん「ああ、いい天気だ…絶好の疾走日和だ!そうだ、メンバーを紹介しよう」
男「なんなんだよ!俺を巻き込むなよ!」
女「ちょっと父さん!なんで男君を巻き込んでるの!?」
おっさん「メンバーの一人である我が娘だ!」
男「えっ?待て待てどういう展開?これマジ?」
女「男…無事だったんだ」
男「えっ、学校は?しかも父さんって」
女「男が心配で、保健室に行く振りをして探してたの…でも、良かった。無事に逃げ切って、しかもランナーズハイに加入してくれてるなんて」
おっさん「さあ行くぞ男君!」グイッ
男「誰か今の状況を教えてくれー!」
自警団「むっ!あの三人組、走っているぞ!追え!」
おっさん「ははは!命懸けなのに清々しささえ感じるぞ!男君!」ズドドド
男「おい手を離せよ!走りにくいぞ!」タッタッ
女「意味なく走る男より、意味のある走りをする男、素敵だよ!」タタタ
男「お前らよくそんな余裕でいられるな!」
自警団「くそっ速い!応援を呼べ!」ガーッ
おっさん「ペース上げるぞ、ついて来れるか!?」ギュンッ
男「ちきしょー!やってやるよ!」グオッ
白バイ「止まれ!」
男「へっ、一番小回りが効くのは、人間の足だぜ!」
おっさん「その通りだ!乗り物に頼っては狭い路地も満足に動けまい!」
女「きゃっほー!」
白バイ「ちっ!hq!発砲許可願います!…了解!」ジャキッ
男「やべえ!撃つ気だ!」
おっさん「屋根に登るぞ!」ダンッ
女「ほっ!」ダンッ
男「な、なんてジャンプだよ…俺はよじ登るしかないな…!」グッ
男「よし!登った!」
おっさん「ふははは、いい調子だな男!素晴らしいセンスだ!さては初めてではないな?」ピョーン
男「おっさんは化け物並みに場慣れしてるけどな!」ピョーン
戦車「追えーっ!」キュラキュラ
男「せ、戦車!?」
女「相手も相当追い込まれてるみたい」
おっさん「そりゃそうさ、これだけ応援要請をして捕まえられないんだ、焦りもするだろう」
男「みんな、一旦別れないか?」
おっさん「そうだな、戦車は少しマズい。バラバラに行動し、アジトへ戻るぞ!」
男「なんでこういう事になったのか」
戦車「撃てーっ!」キュラキュラ
男「今朝走らなければこうはならなかったかもな」ドーンドーン
戦車「くそ!何故当たらない!」
男「悔やんだ所で、こうなった事は仕方がない!おっさんの言うことを信じてみるか!」
戦車「hq!空中からの応援を頼む!」
おいこらhqてwww
よろしい、後方に司令部を構える旧式な自警団など敵ではない!!
バラバラバラ
戦闘ヘリ「目標を補足、機銃掃射!」ガガガガガ
男「ヘリが来てたのか!残念だったな!銃弾なんかじゃ追いつけないぜ!」ゴオォォッ
戦闘ヘリ「くそーっ、なんてスピードだ!すばしっこいネズミめ!」ガガガガガ
戦車「これだけ応援を要請しても仕留められないなんて…有り得ない!」
男「よっ!」サッ
戦車「屋根から降りたか!家ごと潰していくぞ!」ゴシャガシャッ
男「うおっ!無茶苦茶だ!…あった、マンホール!」ピョン
戦闘ヘリ「目標ロスト、帰投する」
戦車「見失うだなんて…バカな…」
おっさん「とうっ!」ビュッ
戦車「なんて跳躍だ!まるで忍者だ!」
戦闘ヘリ「対象捕捉不能、さらなる援護を要請する」
おっさん「ふはは、現代技術では追いつけないだろう!」
戦闘機「マッハには追いつけないだろう?」キーン
おっさん「アメリカの兵器じゃないか!汚いぞ!」
戦闘機「仕留めるぞ…ミサイル発射!」バシュッバシュッ
おっさん「チャンス!ミサイルを踏み台だ!」ピョンピョン
戦闘機「バカな!人間じゃない!来るな!」
おっさん「ダイナミックエントリィーッ!」ドギャアアア
戦闘機「操縦不能!離脱する!」
戦車「戦闘機でも無理だったか…撤退だ!」
おっさん「ちょっとやりすぎたか!さ、アジトへ向かおう」
ワロ ④
アルティメットoさんww④
女「私が女だからって油断してるみたいね」スタタタタ
自警団「待て!」バンバンバン
女「発砲している人を待ってたら死んじゃうでしょ!」ピタッ
自警団「えっ止まった」
女「えいっ前蹴り」グオッ
自警団「あっきゃ!?」グチャッ
女「スケボー、借りるよ!」ガーッ
自警団「」ピクピク
女「二人は大丈夫かな?」
…アジト
女「あっお父さん、男、無事だったね」
おっさん「ふふふ、奴らに大打撃を与えてやったぞ」
男「本当にこれでいいのか?」
おっさん「ああ、奴らは援護を要請して対象を始末出来なければ、厳罰を受けるからな」
男「ははっ、いいザマだな」
おっさん「しかし男よ、こんな数分の間に走りがかなり上達したな」
男「おっさんと女を見てたら俺にも出来る気がしてな」
おっさん「ふっ、まさにセンスの塊だ!すこし休憩したら、また走ろうじゃないか」
男「もちろんだ」
女「男もハイになってきたみたいだね」
ほ
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