勇者「定年退職……?」 (25)


勇者「……どういう事ですか、国王陛下」

王「そのままの意味だ、理解せい」

勇者「しかし、我が身は未だ天界の神より与えられし使命を全う出来てはおらず、魔王という人々を脅かす存在をそのままにしてなど!!」

王「……それだ、勇者よ」

勇者「……は…それとは…」

王「勇者よ、そなたは確かに強く…人としては最強であろう…先代の王の頃より挙げた武勲も数知れず、そなたを勇者と認めぬ者などこの世界に只の一人も居らぬだろうて」

勇者「……はっ、有り難き御言葉」

王「だが、だ……それはそなたが勇者としての啓示を標され、神、精霊…様々な加護を授かった唯一無二の存在だからだ、違わぬな?」

勇者「……仰有る通りでございます……私は異界より召喚されし時、勇者としての力全てを授けられ、それにより魔を滅する人々の希望としての生を歩んで参りました、もし……この力が無いとするならば私は只の人に過ぎませぬ」

王「それも、年老いた…な」

勇者「……はっ…」

王「……勇者よ、もう楽になれ……そなたでは魔王は倒しえぬよ…」

王「その力、次の世代へと受け継がせて……その者に希望を託すのだ」

勇者「……しかし…!!」

王「くどい!!そなたの意は端から聞くつもりなどない!!」

勇者「……っ!!」ギリッ

王「………加護継承の儀は三月後…女神と精霊王、大地の四獣の力が最も強くなる日に執り行う、それまで悔いの残らぬよう精進するも良し……時が来るまで大人しくしておるのも良し、そなたの好きにせよ」

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………城下町、酒場

勇者「………」カラン

戦士「………強い酒を飲んでおられますね勇者殿、お身体に障りませぬか?」

勇者「構うものか……どうせ死ぬ事も出来ぬ身だ……ッ…」グイッ

戦士「ですが……」

勇者「…戦士よ、お前が私と共に旅を始めてから…何年経った?」

戦士「はっ、五年と少しであります」

勇者「………この旅は充実していたか?」

戦士「無論です、我が父……勇者殿と最も長く旅を続け、魔王の右腕と諭される竜族の長と相討った偉大な父と同じよう勇者殿の友とし、仲間として旅を続けられた事、私はこれ以上の幸福は存在しないと、心より思っておりますゆえ」

勇者「……父…か、懐かしいものだ…」カラン

戦士「………何故、そのような事を?」

勇者「すまなかったな、戦士よ……お前の父を死なせてしまったのは私だ」

戦士「……何を言います、父はただ…自らの使命を全うしたに……」

勇者「違う……私が弱かっただけだ」

戦士「………勇者殿…」

勇者「……戦士よ、頼みがある」

戦士「……は、なんでしょう」

勇者「………私は、近く勇者ではなくなる」

戦士「………それは……」

勇者「言葉通りだ、今日の招集はそのような話でな」

戦士「…………」

勇者「……これより、お前を旅から外す……そして…」ドサッ

戦士「……これは?」

勇者「礼金だ、受け取っておけ」

戦士「勇者殿!!私はこのような物の為に貴方と共に居た訳では!!」ガタッ

勇者「話を最後まで聞くんだ戦士よ、まだ終わっておらん」

戦士「………続きを…」スクッ

勇者「……私は、これより一人で魔王討伐へと向かう……それが、私の最後の戦いとなるはずだ」

戦士「………連れていって貰う訳にはいかないのですか」

勇者「駄目だ、私一人ならば……敗北しようと女神の加護により蘇れるが、他の者は[ピーーー]ばそこで終わりだ」

戦士「しかし、いくら勇者殿であっても単独でなど勝機は…!!」

勇者「無かろうな、分かっている」

戦士「ならば、何故!!私は父と同じく死せる覚悟など出来ております!!」

勇者「………戦士、よく聞け……新たな勇者が現れた時…まだ何も知らぬ幼子が見知らぬ世界にただ一人放り出される恐怖……想像出来るか?」

戦士「………勇者殿?」

勇者「……私は、恐かったよ」


勇者「だから戦士、私が魔王討伐の最後の機を逃した時は、守ってくれないか、何も知らぬ幼い希望を」

戦士「………」

勇者「…頼む」

戦士「………勇者殿は、御無体な事を私に押し付けますね………私に父を越えるなと、そう言っておいでです」

勇者「…すまんな、戦士」

戦士「……いえ、勇者殿よりの最後の頼み、しかと心得ました」

勇者「………ああ、ありがとう」

戦士「……ならば、今宵は別れの酒……にならないよう祈ります」カラン

勇者「そうだな…そう願う」

…………

…………翌日

勇者「…………」


僧正「行かれるのですね?」

勇者「……僧正か……」

僧正「昔のように僧侶で構いませんよ、勇者」

勇者「そういう訳にもいかないだろう、貴女にも立場がある」

僧正「……相変わらず頑固者ですね勇者、貴方と最も長く時を過ごしたのは私だと言うのに」

勇者「………ふぅ…敵わんな…昔から諭されてばかりだ」

僧正「……ふふっ、これでも一時は愛し合った同士です、貴方の事ならお見通しですよ」

勇者「……すまんな」

僧正「……いいえ、貴方は使命を全うする事に命を掛けて、私はその重荷になれないと思い至ったまで……今更気にする事は有りません」

勇者「………そうか…」

僧正「…………」

勇者「………」

僧正「………賢者とは?」

勇者「これからだ、あいつの話を聞いてみなければ分からないが………恐らく俺はこの世界を去らねばならない」

僧正「……継承の儀」

勇者「……ああ、その儀式が俺の命を奪う物にしろ、元の世界に帰還させる物にしろ……な…」

僧正「………どうにもならないのですか?」

勇者「それは俺次第だな、魔王を倒しえれば……次の勇者など要らない、留まる事も選べるだろうさ」

なんか流れだと倒してもまた次の魔王が出る気がするんだが……

僧正「………思い出しますね、貴方がこの世界に来た日の事」

勇者「………あぁ、そうか……」

僧正「…はい、この教会の裏手……小さな丘の上で私は貴方に出会いました」

勇者「………お互いに若かった……というか子どもだったな…」



………………


…………



ー50年前ー



僧侶『………んしょ……んん……』チャプ

ブン…ブン!!

僧侶『………?なんの音かしら?』カタッ

ハッ!!

僧侶『…………』コソッ



勇者『……だぁ!!ハッ!!』ガンッ!!


剣士『もっと踏み込め!!剣に振り回されるな!!』

勇者『んなこと言っても剣なんかゲームん中でしか…クソッ!!』ブンッ!!

剣士『だから、甘い!!』ガッ!!

勇者『ぐがっ!?』ベシャ


僧侶『……あっ…!!』ビクッ

剣士『………折角の加護もこんな才の無い小僧に与えてしまっては無駄も良いところだな……』

勇者『…く…そ……』グググ……

剣士『……少し休憩にする、そこの覗き見してる見習い僧!!』

僧侶『ふぇ!?は、はい!!』ビクッ

剣士『すまないが手当てをしてやってくれないか?癒しの術は使えるのだろう!?』

僧侶『は、はい…少しなら!!』タタタッ

剣士『なら頼む、一月程で仕上げねばならんので無駄に休ませる訳にもいかないからな…』スタスタ

勇者『……ち、ちっくしょう……こっちはわけわかんないまま連れて来られたってのに…!!』グググ…ベシャ

僧侶『う、動いちゃダメだよ!!今癒しをかけるから…』

勇者『………今度は回復魔法かよ……なんなんだよここは…家帰せよちくしょう……』ジワッ

僧侶『………?』キョトン

……………

…………



期待

…………

勇者「あの時の俺は泣き言しか言ってなかったな……」

僧正「仕方がないでしょう、まだ年端も行かぬ少年に勇者の使命は重すぎました」

勇者「………そうだな、だが……俺は必死に耐えた………剣士…戦士の父親からの稽古、賢者…以前は魔法使いか……との魔法の修得……それが終わってからの長い旅も」

僧正「………帰りたい一心で?」

勇者「……ああ」

僧正「………そうでしょうね…何時からでしょう、貴方が元の世界へと帰還するのを諦めたのは」

勇者「何時だったかな……まぁ、とにかく…俺は元の世界へと帰ることが逆に怖くなった、とっくに居場所なんてなくなっているだろうからね」

僧正「…………」

勇者「君には話した事があったよな、俺の世界は平和で、剣や魔法なんて存在しない所だった、俺は……そうだ、中学生になったばかりの頃にここに来て、勇者とされた」

僧正「はい、どんな暮らしだったのかとか、お父様の事を尊敬していた、お母様の優しさに甘えてばかりだった、少し年の離れたお姉様に可愛がられていて鬱陶しく思っていた…とか色々聞きましたよ?」クスッ

勇者「………よく覚えてるな…そこまで詳しく話してたのか……まぁ、他にも仲の良い友人、クラスメイト……自分が幸せなのだと感じていた程度にはな…それだから、俺は向こうの世界へ未練が強かった」



勇者「………だからこそ、ある時怖くなった。もし、向こうの世界に帰るとして、俺の知っている人達は生きているのか?両親は、姉さんは………友達は?いや、もし生きてくれたとして、そのそこに俺の居場所は有るのか?」


僧正「………勇者」


勇者「………俺は…それを確認でるほどの勇気は既にない」

勇者「……っと、すまない…僧侶の前ではつい愚痴ってしまうな」

僧正「いいえ、私にしか話せないのでしょう?幾らでもお聞きしますよ」

勇者「………ありがとう」

僧正「ふふ、どういたしまして」クスッ

勇者「………」


僧正「………」

勇者「……そろそろ行くよ、今までありがとう、僧侶」

僧正「……はい」

勇者「………君は、俺の支えだったよ……本当に」スタスタ


僧正「………」


僧正「……また、逢える日を待ち望んでいます、あなた」

………

賢者「そろそろ来ると思っておったぞい勇者」

勇者「ああ、王家直属の国家魔導師のお前が継承の儀の主任だろうと思ったからな、どうなんだ?」

賢者「ズバリじゃな、流石に腐れ縁の仲ではお見通しじゃのう」

勇者「世話話は後で良い、詳しく説明してくれ」

賢者「ふむ、なら言うがの………この継承の儀は50年に一度、必ず行われている」

勇者「………だろうな、勇者は不滅の魂を持つが、寿命による死にだけは抗えない」

賢者「……うむ、年老いて…力が満足に使えぬ勇者では魔王は打倒出来んからな、これは仕方ない事なのだろうのう…」

勇者「………かつて魔王を滅ぼした勇者も存在しない、がな…」

賢者「………コホン……まあそうじゃがな、だが人の寿命を考慮すると逃す訳にはいかんのも事実じゃよ、勇者…今回見逃して次の時まで勇者やれるかい?」

勇者「無理に決まってる、今でさえ体力がおちてきて辛く感じるのに百歳越えてまで剣なんぞ振れる訳がない」

賢者「そういう事じゃな、お前さんがこの世界に留まりたいって思うとるのは承知しとるが事情が許さんよ、残念だがの」

勇者「……そうだな」

勇者「一応確認しておくが……俺は元の世界へと戻されるって事で良いのか?」

賢者「そうじゃな…勇者が居た世界と、この世界を繋ぐ扉を開く時、勇者の中にある加護の力を使わねばならん」

勇者「……つまり?」

賢者「加護の力を勇者から引き剥がし、その力が扉へと変化する、と説明すれば良いかのう?」

勇者「その瞬間俺は只の人に戻る訳か」

賢者「完全ではないがの、本当の意味で勇者としての力がなくなるのは、向こう側へと渡った勇者、それに付いた加護の一欠片が新たな勇者へと移った時、お前さんはただのジジイになる」

勇者「…………あの眩い光か、あれに包まれた瞬間に俺はこの世界へと渡った」

賢者「経験者の方が理解が早いのぅ、国王の若造は途中で説明聞くの放棄しよったわ」

勇者「………だいたい把握した、やはり俺はこの世界には留まれない、か…」

賢者「…………気を悪くせんでくれな、ワシも辛いんじゃ、飲み仲間が居なくなるからの」

勇者「分かっているさ、酒なら僧侶を誘ってやってくれ、あいつはああ見えて俺より酒に強い」

賢者「お断りじゃね、30年遅いわ」プイッ

勇者「今でも良い女だろう」

賢者「……そう思うのなら別れたりせんでずっと一緒に居てやりゃ良かったんじゃ馬鹿者が」

勇者「………そうだな、すまない」

勇者「……さて、聞きたい事は聞いた、そろそろ行くとするよ賢者」

賢者「……本当に一人で行く気か?」

勇者「ああ」ガチャ

賢者「運命に抗うのを放棄するようなものじゃぞ」

勇者「…………そう、なんだろうな」

賢者「…………まだ気にしとるのか?剣士の事を」

勇者「否定はしない、あれは俺の未熟故に起きた事だからな」

賢者「………誰も咎めとらんというのに、頑固者が…」

勇者「………俺もそう思う、じゃあ……また後でな賢者」

賢者「出来れば儀式が必用無くなる事を願っとるよ、不可能だろうがの」ペッ

勇者「………そうだな、では……」


バタン

賢者「…………馬鹿者めが……」


……数日後、魔王の居城。


勇者「……………」コツコツ



魔王「……………早かったな、勇者よ」

勇者「貴様の配下がただの一匹も襲って来ないのだ、早く到着もする」

魔王「無駄だからな、お前の力持ってすれば10日も掛からず城中の配下を皆殺しに出来る」

勇者「………こちらとしては手間が省けて助かったがな……見くびるなよ魔王」ジャキ

魔王「………ふん、私はおまえの力を見くびった事などないよ、歴代最弱の勇者よ」

勇者「…………」

魔王「……少し話しをしよう、以前も言ったが私はおまえと友になりたいのだ、酒は飲めるな?」スタスタ

勇者「………っ…」ググッ

ダンッッ!!

魔王「……無意味な事は嫌いなのだがな……やれやれだ…」スッ

ガギィィィン!!

勇者「………っ!!ハァ…!!」ヒュッ

ズガガガガガガッッ!!!!

魔王「また衰えたか?剣速も重さも以前より萎えている」ギィン!!

勇者「………くっ!!」ザザッ!!

魔王「全盛期ですら一太刀も浴びせられなかったのに今更どうなる訳がなかろう?悪いようにはせん、付き合え勇者よ」カツカツ

勇者「………く…そ……」ギリッ

魔王「西の国の百年物の酒だ、手に入れるのに苦労した」キュッ

勇者「…………」

魔王「……案ずるな、奪った物ではない…ささやかではあるが人間と魔族も交易なりなんなりを行っているからな、これはそこから買い付けたものだ」

勇者「……そうではない、魔王…貴様はどういうつもりだ?俺と貴様は敵同士、互いに滅ぼし合う存在だろう」

魔王「ふふ……敵か、面白い事を言う」クスッ

勇者「…面白い?」

魔王「ああ、気を悪くしたなら謝ろう勇者よ……お前達からすればそうだったのだと思ってな」

勇者「…………」

魔王「そうだろう?敵とは対等な存在の事を差す、お前は私と対等なのか?あ、いや……実力での意味でだがな、存在の格としてはお前はもちろん私と同格だよ」

勇者「………侮辱にしか聞こえんな」

魔王「ふふ、拗ねるなよ勇者よ……その年でまだ可愛げがあるとは貴重な奴だ」

魔王「………さて、何から話すべきかな…」

勇者「……下らん話を聞きにここに来た訳ではないぞ、魔王」

魔王「ならば国へ帰り、ただ運命に従い元の世界へと帰還するのか?」

勇者「……貴様…」

魔王「近いのだろう?継承の儀が」クスッ

勇者「……………」ギリッ

魔王「私を殺す事は諦めろ、先程の打ち合いで理解は出来ているだろう?」

勇者「…………」

魔王「……ひとつ捕捉するなら、私は誰にも殺せないのさ……かつての勇者達、お前より強かった歴代の勇者達にも無理だったのだからな、しいてあげるなら神ぐらいのものさ、私を滅する事が出来るのは」

魔王「……私とお前はほぼ同質の存在だからな」

勇者「……同質?」

魔王「やっと反応したか、無視されるのも中々辛かったぞ」

勇者「…………」

魔王「…っと、すまんな、少し浮かれていたようだ……話を戻すが私とお前はほぼ同質の呪いによって魔王、それに勇者として存在していると言うことだ」

勇者「……呪い?」

魔王「勇者の加護の事だ、それはある意味呪いといって差し支えなかろう、人としての運命をねじ曲げ、生き地獄へと落とす最低のな」

勇者「…………」

魔王「それさえなければ、と思った事はないか?何故自分が勇者なのか、何故何も知らぬ、訳も分からぬままに戦う運命を背負わされるのか、何故……死ぬ事すら叶わず魔を狩り続けなくては成らないのか?何故全てを投げうち、友を、師を、愛する者と共に過ごす幸福をかなぐり捨てて、倒せもしない者と戦い続けなくては成らないのか?」

勇者「………っ……」ギリッ

魔王「………そして、己の全てを捧げ切った後で、全てが通りすぎた後に……棄てられるように帰還させられる」

勇者「………それ…は…」

魔王「……そんなものを加護と、神からの恩恵とお前は言えるのか?私は言えないぞ」

勇者「…………」

ねる(´・ω・`)大して長くはならんなこれ、じゃね



待ってる

禁書以外で初めて見た


魔王「正直に答えてみろ勇者よ、その力はお前の望みを叶えたか?」

勇者「…………………」

魔王「……頑なな奴だ、ここまで言われ尚私の言葉を否定したいか?」

勇者「……俺は、貴様を許す事ができない……!!例え貴様の言う通りなのだとしても人々を苦しめ続けた者の言葉など…!!」

魔王「……………ふぅ、勇者は民の為に在れ…という奴か……私が聞いているのはお前の本心であり、そんな下らない建前ではないのだがな……」カタッ

勇者「それが今の俺の全てだ!!貴様にとやかく言われる謂れ等ない!!」

魔王「………哀れな奴め………」フゥ

勇者「もう良いだろう魔王、こんな戯れ言に俺を付き合わせるな…!!」

魔王「私としてはお前の言う決戦というものの方が戯れなのだがな………その気になれば私は指1つ動かさずともお前の身体を粉々に吹き飛ばせる」

勇者「……っ……」

魔王「お前との戦いで私はお前を殺した事はなかったな、何故か分かるか?」

勇者「…………」

魔王「無駄だからだ、何度殺そうが蘇る不死者などいちいち殺してられんからな」

勇者「………」

魔王「それに私はお前を気に入っている、こうして話の場を設けられた勇者はお前が初めてだからな」

勇者「…………」ギリッ

魔王「……そう怒るなよ、こうして抵抗が無駄だと理解させねば剣ばかり振り回して話すら纏まらんからな」

勇者「………先程、俺と貴様は同質の存在と言ったな、どういう事だ」

魔王「ん、ああそれか…かいつまんで説明するとだな、我らは二つの大いなる意思によりそれぞれ生み出された存在だ、似たような力を与えられてな」

勇者「……大いなる意思…」

魔王「女神と邪神と言えば簡単だな……我らは互いの神から力を与えられて、争うように仕組まれている」

勇者「…………」

魔王「……何故か、とは聞かんのか?まあ、話すがな………神と言うのはまさしく圧倒的な力を持つ存在でな、お互い憎しみ合い滅ぼそうとしているのだが………その力故に互いが戦い合うとせっかく造り上げた世界を滅ぼしかねないのだ、自ららも相打って消滅するかもしれんな」

勇者「………俺達は、代理者か」

魔王「その通りだ、神々の勝手な都合で争わされているのが我らだ、迷惑な話だな」フゥ


勇者「……1つ疑問がある」

魔王「ん…言ってみろ」

勇者「俺達が争う事のメリット、神々はそれを何処に感じている」

魔王「……遊び、賭け……もしくは単純に暇潰しかもな」

勇者「…なんだと?」

魔王「………と、言いたい所だが実際は違う、また話が戻るのだが我らは同質の存在だと伝えたな?」

勇者「…………ああ」

魔王「我らの戦う本当の意味は互いの加護、もしくは呪いを奪う事にある」

魔王「私の呪い、それは永遠に朽ちぬ肉体だ」

魔王「不滅の魂と永遠に衰えぬ肉体……その二つを持つ存在をお前はなんと呼ぶ?」

勇者「…………神…」

魔王「…そうだ、神々は均衡を崩す第三の神を造り出す為に、我らに戦い奪う事を強いているのだ」

勇者「…………」

勇者「………なら、何故貴様は俺から奪う事をしない?」

魔王「………そうだな、確かに簡単に奪う事が出来る、だがな」

勇者「…………」

魔王「……何故私がそんな下らん事に加担せねばならん?」

勇者「…………それが使命ではないのか?」

魔王「そんなものに愚直に従い、奴隷の如く神に垂頭しろと?冗談ではないな」フンッ

勇者「だから殺さないのか、俺を」

魔王「別の理由もあるが、まあそんなところだ」

勇者「…………」

魔王「それでもお前は私に刃を向けるのか?」

勇者「………」

ほし

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