【ラブライブ】絵里「絶えぬ愛に歯止めの哀を」 (84)




シリアス・欝方面

絵里と亜里沙

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「ん……」

軽く欠伸をしながら目を開けると

見覚えのない天井が目に映る

それに加えて

右手も、左手も、右足も、左足も

どこを動かしてもジャラッと金属音が響く

これでは自分では何もできない

食事も、お風呂も……当然、お手洗いにだっていけない

「夢ね」

もう一度目を瞑ってみたけれど

両手足から伝わってくる鉄の冷たさと重さがもう一度開かせる

「……嘘」

昨日までの何の変哲もない日常から

私は突如として――切り離されてしまった

ヤンデレアリーチカ?


こんなありえない状況が現実だと

寝ぼけた頭が理解するまでそうは時間かからなかった

「っ!」

右手を強く引き上げると

頭に届くか届かないかくらいのところでガシャンッと鎖の限界に到達する

左手も同じ位置までしか動かせず

両足なんかは膝を曲げることすらままならない

不安にかられながら

首だけを動かして辺りを見渡す

私が拘束されているベッド以外には何もない

「一体なんなの……?」

冷や汗が額を伝って流れ落ちていく

ドアはあっても窓はなく、体が動かせないからその先に行くこともできない

焦っていく思考

それを収めるためにふっと息を吐く

解るのは私が監禁されているということ

少なくとも自分が知らないどこかで有ると言う事

焦るだけ……無駄だということ


監禁しているんだから観察くらいしてるだろう。と

何度か呼んでみたものの反応はない

「……どうしたいのよ」

このまま餓死させるつもり?

そんな酷い殺され方するような恨みは買ってないはずなんだけど

「何が目的?」

答えは返ってこない

明かりは天井の古臭い蛍光灯の光だけ

時間の流れを全く知覚させないのがまた精神を削っていく

「怖い……」

電気まで消されるのではと

心が不安と恐怖に煽られ、目元へと水分が奪われていくのを感じて目を瞑る

「ここで弱いところを見せたらつけ込まれるわ……頑張らないと」

表面上ではそう強がれても

心の中はもう、不安で一杯だった


起きてからどれくらいの時間が経っただろうか

少なくとも1時間は経ってる……はず

「悪戯なら今ならまだ許してあげる……だから……っ」

下腹部の内側

言辛い場所で小さな湖がまた水位を上げたのを感じて全身に力を込める

横になっているのが唯一の救い

立たされてたらもうダメだったかもしれないわね

「ねぇ……もう止めましょう?」

答えはない

「いるんでしょう?」

答えはない

「お願――ぁっ」

体の奥底から

ピチョンッと聞こえるはずもない音が響き

強く唇と瞳を噛み締めて

両足を捕らえる鎖を限界まで引き伸ばしながら身悶える

高校三年にもなってお漏らしなんて屈辱なんていうレベルではなく

その焦りが理性を押し退け口を開く

「もう私の負けでいいから! 何かしたなら謝るから、だからっ、だからお手洗い行かせて!」

羞恥心でさえも払い除けて

口にするのさえ躊躇うような事を叫ぶ

だけど答えはなく

溜まりに溜まった湖は川となり干からびて

別の場所へと大きな染みを作り上げた


生温かい感覚が下着と密着する臀部を這いずり

嘲笑うようなアンモニア臭が鼻をつく

「なによ……なんなのよ……」

もう限界

もう嫌

なによ……なんなのよ

「なんでこんなことするのよ!」

その叫びにも沈黙を保つ犯人に苛立ちを覚え

両手を縛る鎖に悲鳴を上げさせる

「私がなにかしたなら直接言いなさい! こんなことしないで……こんなことっ」

自分がさせられたことが

その感覚が感触が心も体も蝕んでいき

弱い部分を見せてはダメだと思っていたのに……

涙を堪えることができなかった

中断
スマホだからID変わると思うので識別酉

期待

繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb繧ゅb

期待

いきなり急展開だな

支援


酸性の刺激が皮膚を痛めて耐え難い痒みが私を襲い

自分の今の状況に絶望することをそれが阻む

「……………………」

遮断された音

繋がれた四肢

拙い光

知ることのできない時間

今まで当たり前だったものが失われて行く

「……希、穂乃果、海未、ことり、凛、真希、花陽、ニコ、アリサ」

もう会うことは出来ないのかしら

このまま惨めで、醜く

汚らしい姿のまま朽ち果てるのかしら……

一周回って落ち着いた心からの涙が落ちる

「……みんな」

目が覚めてから推定2時間

早くも諦めが見え隠れする私の思考に対して

目を強く瞑って深呼吸

「諦めるのだけはダメ。絶対……ダメ」

まだまだこれからだったんだから

みんなでμ’sのライブを……最高のライブをするんだから

「私、頑張るから」

きっと助けが来てくれる

それまでどんなことでも耐えてみせる

そう強く決めて屈しかけた心を立て直すと

それを待っていたかのように

ゆっくりと金切り声を上げながら扉が動く

そこから現れたのは――

「…………………え?」

「おはよう。お姉ちゃん」

亜里沙

私の妹の絢瀬亜里沙

その表情は行方不明の姉を見つけて喜んでいるようなものではないと

すぐに気づく

「まさか……貴女なの?」

主語のない言葉

普通なら何が? と返してくるであろうそれに

アリサは大きく頷いて言葉ではない答えとする


――絢瀬絵里を監禁したのは、絢瀬亜里沙だ。と


その確定的とも言える答えを

私は信じたくなくて

触れない首を横に振る

「……なんの冗談なの?」

「冗談じゃないよ」

「嘘よね?」

「ううん」

ここまで来て冗談でしたというのも

ひどすぎる話ではあるけれど

これが冗談でもなんでもなく真面目な出来事ならもっと酷い

だから冗談と言って……と小さな祈りを捧げた言葉は

アリサに容易く切り捨てられてしまった

それでも3度目の正直だと問う

「……本当に?」

「お姉ちゃんがいけないんだよ。μ’sなんていうところに入ってから構ってくれなくなっちゃうんだもん」

虚ろな瞳、悲しげな声

紛れもない本気であることを染み込ませるには十分すぎるほどだった


「だからってこんなこと……」

「だから?」

「あり――」

「お姉ちゃんにとってはその程度のことなんだね」

普段のアリサからは想像もつかないほどの冷めた瞳が向けられ

私の動けない両肩を両手が掴む

「亜里沙にとっては凄く辛いことだったのに!」

「っ!」

瞳が見開かれ

掴む手に力が込められ指が食い込んでいく痛みに顔を顰める

そのおかげなのかアリサは小さく謝ると

すぐに肩から手を離す

「でも、お姉ちゃんがいけないんだから……」

「アリサ……?」

中途半端に言葉を途切ったアリサの視線を追うと

行き着く先は私の下腹部……よりも少し下

大きなシミが広がる場所だった


中断

ふむ


「お姉ちゃん漏らしたんだね」

「っ……仕方ないじゃない」

軽く睨んではみたものの

アリサは全く気に止めずに微笑む

私がはしたなくお漏らししたことが嬉しいのだとしたら狂ってるわね

自分の妹だからという優しさでそれを口にはしまいと思った

でも……

「んっ……ジュルッ」

「な、何してるの……?」

アリサは答えず

布に染み込んだ水分が吸い上げられる不気味な音が返ってくる

「ちょっと……」

「ズズズ……んふふ」

「ちょっと……やめなさい。アリサ……やめなさいっ!」


大きく鎖を揺らして威嚇して

出来る限り足を閉じる

それでもアリサの下品な行いを止めることはできない

「お願いだから止めて……」

「……なんで?」

「気持ちが悪いからよ」

自分の排泄物を

目の前で……というかは疑問だけれど

そうでなくとも

飲まれているというのは気色が悪い

「でも、美味しいよ?」

「っ……狂ってるわ」

「そうかもしれない……でも」

アリサは湿らせた唇を私へと近づける

そこから僅かに漂うアンモニアの臭い

止めて……止めて……

心が拒絶反応に蠢いて、体も逃げようとして……鎖に締め上げられる

「アリサ……嫌、嫌っ!」

「……狂わせたのはお姉ちゃんだよ」

重なった唇から

酸味の強い嫌な水が流れ込む

その味とその臭いの酷さ

常識離れしたその異常な行いに

私の気まで狂ってしまいそうだった


ロマンも何もない

汚れた水分の口移しを

何回……したのかしら

少なくとも数えられないほどはしたと思う

ううん、もともと数えられる精神状態ではなかったかもしれない

飲まされたものを吐き出そうとしても

横になった状態では喉元までせり上がってそのまま戻っていく

「……どうして、どうしてこんなことするのよ」

「お姉ちゃんが亜里沙のモノになってくれないから」

「だからこんな酷いことするの? お漏らしさせて、それを飲まさせるの!?」

「飲ませたのは気持ちが悪いなんて言うからだよ。こんなに温かくて、優しくて、すっきりとした味わいなのに」

「狂ってるわよ……本当、アリサ、貴女狂ってるわ」

否定と拒絶を織り交ぜたその暴言も

アリサは恍惚とした表情で聞き流すのに

「……みんな」

「っ!」

μ’sのみんなに関することだけは

絶対に聞き逃さない


ベッドを大きく軋ませて

アリサが私の体に馬乗る

「まだ……μ’sの事気にするの?」

「アリサ?」

「まだ……μ’sの事気にするの?」

アリサの瞳が濁っていく

一色に染まっているからか綺麗にも見えそうだけれど

そのあまりにも狂気じみた様子に体が震える

「誰に会いたい?」

「え?」

「誰に会いたい?」

繰り返す

壊れたように。ではなく壊れているから繰り返す

会いたい人はいる

会って今すぐ助けてと言いたい

でも、ここでだれかの名前を口にすれば確実に悪いことが起こる

直感でそう感じた私は首を振る

「アリサがいればそれでいいわ」

「そうだよね! お姉ちゃんには亜里沙だけでいいよね!」

アリサはそのたった一言で

ころっと表情も雰囲気もなにかもを一転させる

単純だからこそ簡単なのね

いい方向に運ぶのも、悪い方向に運ぶのも

でもそのどちらもが……私にとっては最悪でしかない

逃げ場はどこにもない

誰かが助けてくれるまで……私は正気でいられるのだろうか

その問に答えてくれる人はいない


時間ができたらちょくちょく進めていく
中断

こわe
あかんよー、これはあかん


「そうだ。お姉ちゃんのために御飯持ってきたんだった」

「御飯……今は何時?」

「時計がないから判らないんだね」

「……………………」

服装は制服

夜は家で寝てたはずだし

体の経験からして朝起きるのは間違いないはず

つまり……今は朝

「どうかしたの?」

「……なんでもないわ」

「もしかして、今が朝だって考えてる?」

「どうかしら」

アリサを揺さぶっても得はないかもしれない

でも、何もしなければ何も動かない

面倒なことにならない程度に揺さぶりボロを出させて

出来る限り情報を集める

自分を保つためにも――

「……………………ふふっ」

その意思をあざ笑うかのような笑みをアリサは浮かべながら

私の頬にそっと手を充てがう

「今は夕方だよ。お姉ちゃん」

「……え?」


「驚いた? そんなはずないって思った? あはは。お姉ちゃんの驚いた顔素敵ッ!」

「ッ…………」

揺さぶるつもりが揺さぶられた?

考えていることを晒してしまった

不安と恐怖を暴かれたっ

焦って頭の中が白くなっていく中

清々しいほどの笑顔でアリサは私を見つめる

「少し強い睡眠薬飲ませれば起きる時間はずれるよね。制服なのは放課後かもしれない」

「それは……」

「不安? 怖い? 何も解らなくなっていく?」

「………………」

完全に手玉に取られたのだと理解するのはあまりにも簡単で

その思考でさえも罠なんじゃないかと不安になって

動悸がだんだんと激しくなっていく

頭が真っ白になって、視界もアリサただ一人に奪われる


「アリサがお姉ちゃんの全てになってあげる」

「全て……?」

「起きるのも寝るのも、食べるのも飲むのも、お風呂も、お手洗いも……時間も、話し触れ合える唯一の人にも。とにかく全部だよ」

普段見ていたらほっこりとしそうな良い笑顔

でも、今の私は呆然とする以外にできることが見つけられなかった

本気だと分かっていた

狂気じみていると分かっていた

でもどこかで些細な綻びが生まれているだろうと楽観視していた

「…………………」

「ふふっ」

でも、これは風さえ通る隙もない

完璧に密封された最悪の計画

アリサは自分なしでは生きられなくするつもりなのね

私の全てを奪って……でも、奪ったままではなくチラチラと見せてくる

与えられるのは自分だけだと……見せつけたいかのように


「今何時なの?」

「教えなーい」

「……アリサ」

「時間の感覚が解らなくなるって怖いよね」

アリサはまるで経験者のように

物思いに耽りながら呟く

その哀愁漂う雰囲気はリアリティが強く

本当に経験したのではとさえ錯覚する

「亜里沙は時間どころか食べ物の味さえ解らなかった」

「そこまで……」

「うん。それほどお姉ちゃんが構ってくれないことが辛かったし苦しかったし悲しかったし寂しかった」

「………………」

「でもそのおかげでお姉ちゃんを独り占めにする計画を立てられたんだから……我慢した甲斐があるよね」

それを嬉しそうな笑顔で言えるあたり

もう治りそうにないほど壊れちゃってるのね


「だからお姉ちゃんも頑張って堪えて! 希望がないと折れちゃうかもしれないから。亜里沙が絶対助けるって約束しておくね!」

「貴女がこうしてるのに……貴女が助けるってどういうことよ」

こんな辛い状況に堪えて

結果助けてくれるのがその犯人?

吹き上がる怒りが

堪える理性を押しのけて飛び出す

「ふざけないで!」

「お姉ちゃん?」

「いい加減解放して……嫌よ。もう嫌! 堪えた結果何も救われないのに希望もなにもないじゃない!」

「………………」

「この歳でお漏らしだってした! それを飲みさえした! もう十分でしょ! 貴女を今後一切蔑ろにしな――」

大きな破裂音にも似た音が響き

頬がピリピリと痛み出す

私は本気で怒った。本気で嫌だった

でもその怒りの熱が一瞬で冷めてしまうほど冷酷な瞳で

アリサは私のことを見下す

「亜里沙のいうこと聞かないとダメだよお姉ちゃん」

「アリ……サ……」

「罰として今日から裸だよ」

「まっ――」

着ていた服に鋏が通り

それは躊躇なく下着さえも切り裂き、私の素肌が顕になっていく

ありさこえー


「ハラショー……」

「っ……ぅ……」

じわりと目頭が熱くなっていく

こんなの無理……泣かないなんて無理だわ

でも……でもっ

ぎゅっと目をつむって押さえ込む

隠したくても隠せない体は

妹だし別に恥じるようなことではないと無理やり言い聞かせる

「次の罰は恥ずかしいことだからね。言うことには従った方が良いよ」

「……もう、後戻りはできないわよ。アリサ」

「なんで戻らなくちゃいけないの? お姉ちゃんが構ってくれない日常なんか要らない」

「……………………大嫌い。貴女なんて」

「知ってる。だから構ってくれなかったんだもんね。でも、お姉ちゃんには亜里沙しかいないからきっと。大好きになれるよ」

それは一種の洗脳でしょう?

言うだけ無駄なのは考えるまでもなく

頭の中で消化してアリサを睨む

でも、それさえも嬉しそうに亜里沙は微笑んだ


一旦ここまで

こわe

なぜsageてるんだ?


服を切り取られたことで肌が晒され

慣れ始めていた肌の痒みが刺激されて思わず呻く

最悪なことに

それを気付かれないほど運が良くなかったらしい

アリサはニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべながら

私の両腿に軽く触れる

「ひぅ……っ……」

「さっきので痒くなっちゃったんだね」

痒み以外の刺激に飢える足が

アリサの手の感覚を敏感に伝えてくる

でもそれは爪を立てることなく

痒みをかき消すどころか私の感覚を焦らす


「良い匂いがする……ふふっ」

「っ…………」

うっとりとした壊れた微笑みを浮かべながら

アリサは私の太腿の部分に顔を近づける

止めて……気持ち悪い、嫌!

そう叫びたい気持ちと

お願い……なんでも良いから痒みを止めて!

懇願したい気持ちが交錯する

それさえも……計画のうちだったらしい

ゆっくりと顔を上げたアリサは

私のことを優しく見つめると微笑む

「掻いて欲しい?」

「そんなこと……」

「たった一言お願いしてくれれば掻いてあげるんだよ? 強がらないほうがいいと思うんだけどなー」


痒みを軽減することのない絶妙なタッチで私の太腿に指を走らせる

それはむしろ

擽ったさを生み出して私の欲する気持ちを増幅していく

「どうする?」

「っ…………」

痒い、くすぐったい

我慢できない

欲しい……掻いて欲しい

ピリピリと走る刺激が私の思考回路に混ざり込み

強引に口を開かせる

「ァ……っ……アリ……」

「ん?」

「くっ……」

嘲笑するような視線と

自分の唇が震えるのを感じる

屈するの……? ここで?

そんなの……

「ぃ……言わないッ!」

「良いの? 痒いんじゃないの?」

「だとしても貴女に屈するのは嫌!」


願いを零してしまいそうな唇を

強く強く噛み締める

残念でしょう? 屈すると思っていたんでしょう?

私も諦めかけていた

でもね

「貴女のその目が私の反抗心を強くした」

「………………」

「貴女のおかげよ。ありがとう」

「………………」

黙り込むアリサに対して

私は笑みを浮かべながら挑発する

そこに宿した負けないという強い意志を感じたのか

アリサは少しだけ驚いたように私を見つめた


「……ハラショー」

「なに?」

「やっぱりお姉ちゃんは素敵だなぁって」

キョトンとした表情で一言呟き

そのあとすぐに嬉しそうな笑みをアリサは浮かべる

でもそれは予想通り

この程度で全部やめてくれるほど簡単ではないのは

妹だからこそ理解していた

ここは一手打ち勝ったということを――

「ひぁぁっ!」

「んふ」

痒みのある右の太腿をざらついていてねっとりと温かい感触が這う

それは求めてやまなかった感覚

意識の外かつ視界の外で無防備な部分を突かれたせいか

頭を狂わせるほど強いそれに体が仰け反って鎖が大きく音を立てる

真姫の漢字間違えないように


アリサの涎が私の太腿を伝ってシーツに落ち

浮き上がったお尻の部分がベッドに戻る

舌が這って行った部分を妬んでか

その周囲が私の頭に訴え掛ける

早く、早く、早く! 早くッ!

こっちも、あっちも、全部、全部っ、全部ッ!

羞恥心も何もかも捨て去って求めてしまえと

「くっ……………」

「これでもまだ断る?」

「アリサ……最低、貴女本当、大嫌いッ!」

ピリピリと比較的軽かった催促信号は

チクチクと針を刺すような痛みへとシフトし

やがてその痒みの部分に全神経が収束していくような感覚が脳を打つ


ダメ……無理

なにこれ……我慢できないっ

ガシャンガシャンと

私の代わりに鎖が悲鳴を上げる

「最低、最低っ……最低ッ!」

「そんなこと言うならやってあげないよ?」

「っ……ぅ……うぅっ……」

ほんのちょっとだけ与えられて

それ以降は焦らされたまま放置?

そんなことされたら気が狂うかもしれない

「うーん。何も言わないって言うことは良いのかな。じゃぁまたね」

「っ!」

アリサは残念そうに良いながら

私の横から立ち去っていく


「待って!」

「…………………」

アリサは立ち止まらない

そのまま

数歩歩いた程度でドアの前に着き

ドアがまた金切り声を上げ始める

待ってって言ったのに

なんで……なんで……

そこまで、そこまで私を……ッ

「っ……お願いします待ってください!」

「…………ん?」

「お、おね……お願い……お願い……しますっ……」

悔しい、悔しい……ッ

屈辱だわ……こんなのっ……でも、でも仕方ないじゃないっ

耐えられるわけないじゃないッ!

「私の太腿を掻いて下さいっ! お願いします!」

「ハラショーっ、えへへっ」

スタスタと足音が戻ってくる

私の視界の中にアリサが戻ってくる

「掻くだけでいいの?」

「え……?」

「一言いへば……ひへはへふよ?」


アリサは自分の舌をべーっと見せながら指を差す

言葉は変になったものの言いたいことは解った

お願いすれば舐めてくれる

またあの感覚を与えてくれる……

弱った理性を簡単に押しのけて

ごくっと喉が鳴る

「ほら……どうする?」

「っ…………」

駄目よ。ダメ

絶対にダメ

ここから先を求めたらそれこそ終わるッ

だから断らなきゃ、断るの

あの感覚は気持ちが良かったでも、それは罠だからっ

そう考えに考える私の頭をアリサが撫でる

「よく言えました」

「え?」

「気持ちが良かったんだね。お姉ちゃん」


「どういうこと……?」

「うん?」

意味が解らない

何を言ってるの?

私はまだ何も言ってない

言って……ないはずなのに

「私、まだ何も……」

「言ったよ」

「……え?」

「言ったよ。舐めてくださいって」

アリサの目は嘘をついている目じゃない

アリサが嘘をついていないっていうことは

私が舐めてくださいとお願いしたっていうのは……

「っ……ぅ……ぁあ……ああああっ」

「ふふっ」

思考が否定の言葉を並べ立てる中で

私は無意識に願った……?

さっきの刺激を?

結局アリサには勝てない?

理性を保ったまま

思考と心は冒されていく?

浸り、染み込んだ絶望が嗚咽となってこぼれ落ちていく

それをアリサは宥めるような瞳で見つめながら

流れていく涙をペロッと舐める

それがまた私の心を強く痛めつけた


中断
sageなのはageるような内容じゃないから
でもageた方が良いならageる


>>14訂正
×「……希、穂乃果、海未、ことり、凛、真希、花陽、ニコ、アリサ」
○「……希、穂乃果、海未、ことり、凛、真姫、花陽、ニコ、アリサ」


>>40
確認してたはずなんだけど即興だからか見落としたみたいだ、すまん
不慣れなので他にもおかしい点あったら指摘してください

>>1のsage進行はよくあるでしょ
名前も訂正すれば大丈夫

こんなスレをsageるなんてとんでもない!
上げる(荒れる)べきだ!

アリチカこわい


心も、頭も

その行為には否定的なはずなのに

体は正直にゾクゾクと快感を感じ

アリサの舌が太腿をなぞるたびに変な声が漏れる

「んふふふ……」

「はぁっぁ……ぅ……」

「お姉ちゃん可愛い」

普段なら照れるようなその言葉

でも今は屈辱的でしかない

太腿を舐められて、それによがって、

絶え間無い刺激に口を閉じる余裕がなく溜まっていく唾液が

吐き出す空気とともにこぼれだしているだらしのない姿

それをアリサは可愛いと言っているのだから


「もう……終わらせて。そんな焦らすようにやらないで……」

「それはダメ」

焦らしながら長く染み込ませるやり方

それは私が屈したということをじっくりと責め立てるように感じて

辛くて悔しい……なのに

体は敏感に反応してしまう

馬鹿みたいな声を零して仰け反らせてしまう

心と思考を置き去りにして

体がアリサに擦り寄っていくのを感じる

それを……アリサの絶妙なタッチが私自身の体を使って心に教え込む

「お姉ちゃん……ぁ――」

「っ……ふぁ……ぁ……んっ」

伸ばされた舌が私の太腿から流れるように登っていき

その先の女性である証明にもなる部分を掠る


「舐めて欲しい?」

「っ――バカにしないでっ」

舐められてる

体だけでなく心まで

私がこれだけで全部を委ねてしまうような人間だって

「残念」

「……もう良いわ。だいぶ落ち着いたから」

これ以上委ねると

さっきと同じようなことをされそうだと臆病になった思考が逃げる

それをアリサが気づかなかったわけはないと思う

でも、アリサは不気味な笑みを浮かべるだけで頷く

「それなら良かった。お姉ちゃんの体を綺麗にするのは亜里沙の役目だから、汚いなって思ったら言ってね」

「ええ……極力言わないわ」

「むぅ……お姉ちゃんってば酷い」


酷いなんてどの口が言うのかと

睨んでもアリサの笑みは崩れない

その強固さがまた恐ろしい

私がみんなのことを口にすると怒る

なのに、反抗的な態度をとっても

アリサの元から逃げ出したいというようなこと以外は笑みを浮かべる

怒るか喜ぶかの2つ

怖いというより……気味が悪いって言うべきかしら

「……………………」

「さっきの屈服したお姉ちゃん可愛かったけど、今の反抗的なお姉ちゃんも素敵だよ」

「貴女に言われても嬉しくない」

「じゃぁ、お姉ちゃんは暫く嬉しいって思えないね。言ってくれるのは亜里沙だけなんだから」

ニコニコと笑いながらアリサは告げる

そうね、暫くね

私が貴女から救われるまでの辛抱

そうやって反抗しながらも

耐え切れないかもしれないと

私は心の中の不安をぬぐい去ることはもうできない

一度の敗北が私の精神に鎖を繋いでしまったからだ


「……アリサ」

「うん?」

「ご飯はまだなの?」

「そうだったね」

アリサは苦笑して鞄からタッパーを取り出す

半透明の器で中身は見えないけど

アリサの手料理で間違いないとは言える

その予想通りアリサは笑顔で手作りだよ。と言うと

ペリメニを箸で摘んで私へと差し出す……なんてことはなく

自分の口に放り込む

「……食べさせてって懇願させるつもり?」

「そんなことはしないよ。食べなきゃお姉ちゃん死んじゃうもん」


じゃぁなんで自分で食べてるのよ

懇願させるつもりないなら必要ないじゃない

自分が優位に立ってるということの証明?

必要ないわよそんなの……

アリサを見ている自分が段々と惨めに思えて来て

頭の中の言葉が止まる

「ねぇアリサ」

「モグモグ……ん?」

「それ、私に食べさせてくれるんじゃないの?」

今が夕方なのだとしたら私は朝食は愚かお昼ご飯すら食べていない

そう思うと美味しそうな匂いも相まってお腹がはしたなく声を上げる

「ん」

「……え?」

アリサが飲み込むことなく口を窄めて私へと顔を近づける

それが意味することはすぐに解った


口移し

アリサが咀嚼して私と唇を合わせて

噛み砕いた食べ物を流し込んでくるという作業のような行為

「本気……?」

「ん」

「そんなにキスがしたいの?」

「ん」

アリサはニコニコと気味悪い笑みを浮かべたまま

私の問いに頷く

断ればどうなるのかしらという好奇心のようでそうではない感情に悩みながらも

アリサは死なせる以外ならなんでもするというのが私を怯ませて

仕方がなく口移しを承諾する


可愛かったアリサの顔が私に近づく

それに対して

恥ずかしいなんて感情は沸かず

早く終わってとさえ思った

それを解っているからか

アリサの唇は私の唇に触れると

1mmずつゆっくりと、丁寧に押す

私の乾いた唇とは違って

ぬるっと湿ったアリサの唇の感触は皮肉にも気持ちがいい

密着することで唇が歯の上を滑るようにずれて

露出した歯をアリサの舌がこじ開けていく

「……ん」

「んぁ……」

唾液に浸ることで飲み物に変貌したペリメニが

どろっとした雑炊みたいに流れ込む


それだけでもあまり良くはないのに

呆然とする舌にアリサの舌が絡む

表をつぅーっと確かめるように

裏を剃り上げるようにさっと舌が這っていく

「あーぁぃ……」

「んっ」

口の中をアリサに蹂躙されていくのを感じながらも

窒息しないようにと飲み込むことを優先させる

それもアリサの狙いだったんだろうけど

その隙をついて

偶然を装ってアリサの舌を噛もうとしたのがバレた……わけではないだろうけど

もう少しでというところでアリサの舌が逃げる

艶々したアリサの舌を思わず目で追うと

濁った色の私達が混ざり合った糸がその先から垂れて

私の口の中に隠れる舌上に落ちているのを感じて

吐き出すこともできずに飲み込む

自分がしているのが食事なのか、キスなのか……解らなくなりそう


中断


「ん……はぁ……」

ようやく最後の口移しが終わり

アリサの顔は糸を引いたまま私から離れていく

大人とは言えない

でも確かな色香を漂わせるアリサは恍惚とした表情を浮かべながら

それを人差し指で絡め取りそのまま咥える

「美味しい……お姉ちゃんの味」

「変なこと……言わないで」

「あはは、ごめんね」

アリサは調子良く笑って

荷物を整理すると、ベッドから腰を上げる

もういなくなってくれる

そう喜びそうになったことを悟ったのか

アリサは嫌味な笑みを浮かべて私を見つめる


「亜里沙がいなくなったらお姉ちゃんはこの薄暗い部屋で一人だよ?」

「貴女がいるよりはマシだわ」

「……そっか」

強がったわけではなく

本心からアリサの存在を拒絶する

一緒にいた時間がどれくらいかも解らないけれど

総じていてくれて良かったとは思え……

「っ」

「ん?」

思えなかったわけではない

そう続こうとしたことが目を見開かせる

アリサとのみだらな行為

それが体はもちろん、頭でも良しとなりかけているのだと

気づいた瞬間だった


そこまで屈しやすい人間だったのかと

そこまで弱い人間だったのかと

自分を改めて見つめ直しながら振れない首を振る

私に与えてくれる人間がアリサだけしかいないということは解ってる

でもだからって

行為すべてを認めるなんてありえないわ

すべてを許し、すべてを歓迎し、受け入れるなんてありえないッ

ぎゅっと握りこぶしを作ると

鎖が聞きなれた金属音を響かせる

「……さっさと帰ったら」

「ふふっ、強がってるお姉ちゃん格好良いっ!」

「強がってなんか――」

パリンッ!

何かが砕けた音が響いて

アリサが視界を覆ったのか暗闇に包まれる

「ひっ……あ、アリサ!」

「また明日ね」

少し離れたところから聞こえるアリサの声

その闇が覆われたのではなく

蛍光灯を破壊されたものだとようやく気づく


「ま、待って、アリサ!」

声は聞こえてこない

もう出て行った?

嘘……嘘っ

こんな真っ暗な部屋に……?

私が暗いの苦手だって知ってるのに?

「アリサ! いないの? ねぇ、アリサ!」

どんなに叫んでも返事は来ない

静寂に包まれつつある部屋に

忙しなく暴れる鎖の音が響く

「いや……嫌ッ!」

不安に声が震える

どんなに暴れても、叫んでも

自分の存在しか感じられない恐怖に涙が溢れ出す


「ごめんなさい、強がった! なんでもするから電気つけて! お願い! アリサぁっ!」

自分の耳でも鬼気迫っていると感じるその声に対して

ドアが開く金切り声とその隙間から入り込む光が返ってくる

「怯えてるお姉ちゃんも可愛い」

「あ、アリサ……」

まだいてくれた

明かりが部屋を照らしてくれてる

そのことにほっとしたのも束の間

光のせいでシルエットしか見えないアリサが手を振る

それはお別れの合図

「アリサ……ちょっと。う――」

光の奥へとシルエットは動き

言葉が終わるよりも早く扉は無情に遮断する


「あっ……あぁっ……」

ガシャンガシャン

カシャンカシャン

カチャ……カチャ……

段々と騒ぐ気力も失われていき

鎖のぶつかり合う音が小さくなって

最終的には暗い部屋が静寂に包まれる

「グスッ………いや……だれか、助けてぇ……」

静寂を破る自分の惨めな嗚咽

裸であること

監禁されていること

それらすべての恐怖を

ブラックホールが吸い込んで凝縮する

「たすけてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

全身全霊をかけた叫び

それでも何かが動くことはなかった


恐怖と不安に寝ることも出来ず

どれだけ時間が流れているのかを確認することさえもできず

ただただ……ぼーっとアリサが来るのを待ち続ける

「早く……はやく……」

朝? 昼? 夕? 夜?

時間がわからない

いつ来るのかわからない

もしかしたら来ないかもしれない

希望のない忍耐に精神が壊れてしまいそうで

発狂してしまいそうで

扉の位置さえも見失ったのは何秒、何分、何時間まえだったか

「助けて……助けて……」

その言葉はみんなでも、警察でもなく

ただ一人この場所を知っているアリサにだけ向く


それからしばらくして

キィィィィィ……と

人によっては不快な音と一緒に

目が潰れてしまいそうな程目映い光が差し込む

「ぁ……」

「おはよう。お姉ちゃん」

アリサはそう言ってスタンドライトを設置すると

LEDの明るい光で部屋を明るくして扉を閉める

「大丈夫だった?」

「アリサ……アリサ……っ」

アリサがライトを破壊した張本人だと解っているはずなのに

私をここに閉じ込めた犯人だと理解しているはずなのに

私はアリサが来てくれたことが嬉しくて、嬉しくて

涙ながらに笑みを浮かべる

「もう大丈夫だよ。お姉ちゃん」

「っ……馬鹿っ……馬鹿……っ」

更新きたか


アリサの温かい抱擁に包まれて

安堵の息を漏らす

もう大丈夫、もう怖くない

極限まで追い詰められた心は

アリサに擦り寄って行く

動物の調教には飴と鞭だと何かで聞いた覚えがある

苦手な暗闇に放置するという鞭

明かりを伴い、震える体を抱きしめるという飴

「怖かった……ほんと……私っ……」

「そうだよね……苦手だもんね」

アリサの優しい声に揺らされる

頭では騙されてはダメだと解っていても

心も体もアリサという救世主に魅せられてしまった以上

どうすることもできずに涙を流す

救われたことの嬉しい涙

諦めざるを得ないことへの、嘆きの涙

混ざり合った末のそれは無色透明で

当たり前なのにも関わらず、私にはそれが自分のようにも思えた


「お姉ちゃん」

「なに?」

「キスしたいな」

アリサの唐突な願い

私は何の違和感も感じずに黙って目を瞑る

受け入れないことが怖い

受け入れることで得られる快感が欲しい

拒絶を嫌い、許容を求める

そんな私の心と体は

未だ真面目に動こうとする思考を放棄させてしまう

……ううん。あるいは思考でさえももう

アリサの手の中に堕ちたのかもしれない

「素直だね……お姉ちゃん」

「ダメ?」

「ううん、嬉しいよ」

今なんでもって言った?
なら僕とらぶらぶせっくすしよう!絵里ちゃん


アリサが嬉しそうに笑うと

顔が近づいてきているのを知らせるように

甘い吐息が私の頬を駆け、鼻腔を擽り、体の中に染み込んでいく

「……アリサ」

「?」

「私………貴女が嫌い」

「知ってる」

その言葉の余韻などなく

ふっくらとしていて、潤っていて

柔らかくて、でも確かな弾力を持つ唇が重なる

自分の唇が潰れていくのを感じながら

アリサの唇が潰れていくのも感じ取る

「ん……ふ……」

「っ……ん……」

吐き出される息は

私の吐息と混じり合ってとけていき

潜り込むアリサの舌は私の舌と絡み合い、繋がって

まるで一本のつながりのようにも感じる


「ぁ……ぇ……んぇ……」

「んっ……ぅ……」

舌だけを動かし、絡め合い

自分の舌はアリサのモノに

アリサの舌は自分のモノに塗り替えていく

満遍なく舐め合うと

口の中から抜け出したアリサの舌を追い

舌を限界まで伸ばして捕らえる

「ぁぇっ」

「ぁー……ぇ」

唇の端からこぼれていく唾液も

顔に滴る唾液も気にすることなく

互の口の外で舌を混じり合い、

争っているかのように絡み合わせる


心と体が奪われていく中で

こうしている間は何も考えなくて済むのだと気づく

頭の中が真っ白になって

体が一つになって、心も一つになって

アリサが私で私がアリサ

希の言葉を借りるならスピリチュアルな感覚に浸る

そしてそれこそが私が私を保つための救い

そう思えてならない

監禁されていること、自由がないこと、何もかもを忘れて没頭できる時間

ステップを踏むように唇を合わせ、ターンするように舌を絡めながら

熱っぽいアリサの瞳に同じく欲に浸る目を向ける

2人で1人と言っても過言でもない今の私たちは

それだけで言葉を交わし、アリサは自分の裸体を晒すと

私の頭の方に恥部が被さるように跨る


「アリサ……貴女」

「亜里沙はもう我慢できない……ずっとずっと、我慢してきたんだもん」

ゆっくりと降ってくるアリサの大切な場所

艶々としたそこからは優しい石鹸の香りに混じって

昨日散々感じた酸性の匂いと淫靡な匂いを感じ

熱っぽい体が刺激され

視界を霞ませるせいか夢にも思えてくる

まだ微妙な生え具合の陰毛をくすぐったく感じながらも

アリサの恥部にキスして陰唇の隙間に舌をねじ込む

「っ! ひぁっ!? 」

ビクッとアリサの体が震えたけれど

抑えるすべもなく無視して少し腫れた陰核に舌を絡める

「だ、ダメ……お姉ちゃ……っぁ……」

「んふふっ」

「ひぅっ……くすぐっ……」

あぁ、これなら勝てるかもしれない

そう思ってすぐに

どうでも良い……と考えを消し去る

絡めていたアリサの敏感な部分を締め上げることで

舌のざらつきで削るだけでなく圧迫し、すりつぶし、捻って

いくつもの刺激を一度に迸らせる

「っぁああぁぁぁ――っ」

アリサの言葉は空気に消え

溢れ出した快感の飛沫が私の顔に降り注ぎ、力を失った体が私にのしかかった


けれどもそれでまた刺激を受けたアリサは悲鳴をあげ

陸に上がった魚みたく勢いよく腰を跳ね上げる

「あ、ぁ……ぁ……」

「…………ゴクッ」

ポタポタと滴るいやらしい液体を口を開けて迎え入れ、飲み込むと

酸味と辛味の交わった不思議な味が口いっぱいに広がっていく

今まで味わったことのないそれは

酩酊作用でもあったのか

体はより熱く、視界はぼやける

「はぁ……はぁ……っ……」

「はぁ、はぁ……」

2人して荒い呼吸になりながら

互の性器を見つめたまま喉を鳴らす


「ねぇ、お姉ちゃん」

「なに? アリサ」

「……あるんだけど」

アリサは含みを持たせてそう言うと

床に放置していた鞄から少しだけ反り上がった棒状の何かを取り出す

それが何かなどではなく

自分の知識の中にあるものであることを知り

受け入れるべきではないことを理解しながら頷く

「良いわよ」

「ありがと、お姉ちゃん」

拒絶したところで何かが変わるわけはない

先延ばしにできるようなことでもない

ならもういっそ様々なものを手放し、諦念を抱き、受け入れてしまおうと思った

忘却の果てにある空白という白炎に身を焦がし

救いのない世界で救われようと思った


快楽に身を委ねようとする私の下腹部は疼き

まだかまだかとよだれを滴らせる

アリサは少し弱った笑みを浮かべながら

ためらいなく自分の女性器にそれをねじ込む

「んぐっ……うぁあっ! 痛っ……あっはぁあああっ!」

「……アリサ」

「へ、平気……だよ……」

ポタポタと純血が私の恥部に降り

アリサの女性器からはみ出したそれが私の割れ目に触れる

自慰をしたことないわけがなく

すでに自分の体が準備できていることを理解し

それを教えるために微笑む

「いくよ、お姉ちゃん」

ゆっくりと、丁寧に、慎重に、

私の体内の肉壁を押し広げながらそれは侵入し

ズルズルと這うような感覚に体が痺れる


その気持ちがいいとも思えるような感覚も束の間

一瞬だけピリッと軽い痛みが走り

続いて指を紙で切ったようなじんわりと広がる痛みが神経を駆け巡る

「っ!」

「痛い……?」

アリサの心配そうな声を聞きもせずに首を振る

このまま躊躇っていたら、留まっていたら

空白の幻想から現実に返されてしまいそうな気がして

先を促すように自ら腰を上げる

「……解った」

アリサは額に浮かぶ汗を拭うと

にこっと優しい笑みを浮かべて勢いよく貫く

収束した痛みが内側から外へと轟き、強く噛み締めた歯がガリッと音を出す


痛みに耐えて現実から逃れきり

まだ微かな痛みを感じる女性器でキスをして

ゆっくり離れると

ぬちゃぁ……と不気味な音が漏れる

今度は少しだけ早くキスをすると

重なった瞬間にペチッと小さな空気を孕んだ泡が破裂する

「お姉ちゃん……大好き」

「アリサ……大嫌い」

本来愛し合う者同士が行う行為に没頭しながらも

私たちは互いに揃わない感情をぶつけ、体を動かす

私はアリサに監禁され、自由を奪われ、みんなを奪われた

アリサは私からは絶対に「好き」という感情を向けては貰えない

その現実から逃れるために私たちは没頭する

「ぁっ……んっ……あっはぁっ……あぁっ」

「んっ……んぅ……っは……あっ」

快楽に喘ぎながら

私が微笑みをアリサに向けるとアリサもまた頬笑みを浮かべる

けれどそれの意味するものは

喜ではなく

怒でもなく

楽でもなく

「っ……あはっあっ……んっ」

「んっ……っあぁぁっ……」

アリサの頬を、私の頬を……哀しみの涙が伝っていく

にも関わらず、私達は淫猥な水音を奏でながら、嬌声という名の歌声を響かせていた


終わり


ある意味共依存。狂依存


絵里は亜里沙がこんなことしている現実から逃避するため
亜里沙は愛されていると錯覚するために快楽に逃げたという話

大層乙である
絵里がだんだん壊れていく様が良かった


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