~オークの家~
『女騎士お断り』
ゴブリン「なんだ、この貼り紙? セールスお断り、みたいだな」
オーク「あまりにもしつこいから、きちんと意思表示することにしたんだよ」
ゴブリン「しつこいって? 女騎士が?」
オーク「ああ」
オーク「あの女、毎日のように家に押しかけてきて」
オーク「『くっ、殺せ!』とか『私の体が目当てなのか!』とかいってくるんだ」
オーク「いい加減、相手するのイヤになっちまってよ」
ゴブリン「そりゃ大変だな……」
オーク「だが、あれでも一応騎士だし、礼儀みたいなもんは身につけてるだろうから」
オーク「こうしておけば現れないと思ってよ」
ゴブリン「なるほどな」
ゴブリン「──おっと、もうこんな時間か。そろそろ帰るわ」
ゴブリン「んじゃな」
オーク「おう」
ゴブリン「今度はオイラの家にも遊びに来いよ」
オーク「そうさせてもらうぜ」
バタンッ……
オーク「……」
オーク「さぁて、ゆっくり読書でもするか」
オーク(今日は女騎士は現れない……)ペラ…
オーク(あの貼り紙、ちゃんと効果はあったみたいだな)
オーク(そりゃそうだ、『お断り』とまで書かれてのこのこ来れるわけが──)ペラ…
ピンポーン……
オーク(ん、なんだろ? ゴブリンの奴が忘れ物でもしたのか?)
オーク「はい」ガチャッ…
オーク「!」
女棋士「将棋を打つぞ、オーク!」
オーク「……」
オーク「……どちらさまで?」
女棋士「私は女棋士だ。女騎士ではないから、この家に入れるはずだな?」
オーク「……ま、どうぞ」ギィィ…
女棋士「私を巧みに棲み家に誘い込んで……いったいどうする気だ!?」
オーク「なにいってんだ」
オーク「アンタ、将棋やりにきたんだろ?」
オーク「ウチにも将棋盤くらいあるし、さっそくやろうぜ」
女棋士「な、なんだと!?」
女棋士「くっ……。まぁいい、やろうではないか」
オーク「押し入れの奥にしまっちゃったから、ちょっと待っててくれ」
オーク「んじゃ、先手後手を決めよう」
オーク「せっかくだし駒振ってくれよ、女棋士」
女棋士「駒を……振る?」
オーク「ん、振り駒を知らねえのか?」
女棋士「!」ギクッ
女棋士「も、もちろん知ってるとも!」
女棋士「だが、特別に今回はキサマにやらせてやろう!」
オーク「……どうも」
オーク「……」ジャラッ
オーク「五枚のうち表が二枚……ってことは、アンタが先手だ」
オーク「お願いします」ペコッ
女棋士「お願いする」ペコッ
女棋士「……」
オーク「どうした? いきなり長考か?」
女棋士「くっ!」パチッ
オーク「……」パチッ
オーク「……」パチッ
女棋士「……」パチッ
オーク「……」パチッ
女棋士「……」パチッ
オーク「……」パチッ
女棋士「……」パチッ
オーク「おい」
女棋士「え?」
オーク「銀は横に動かせねえぞ」
女棋士「くっ!」
女棋士「シルバーが横に動かせないことぐらいお見通しだ! ほんのジョークだ!」パチッ
オーク「ふうん……」
オーク「……」パチッ
女棋士「……」パチッ
オーク「……」パチッ
女棋士「……」パチッ
女棋士「お、おのれ……私の兵たちが次々に捕虜にされていく……!」
女棋士「なんという屈辱だ!」
女棋士「くっ!」パチッ
オーク「!」
オーク「お、飛車ゲット」スッ
女棋士「あっ!」
女棋士「くっ、待て!」
オーク「待たねえよ」
オーク「だいぶ持ち駒がたまってきたな」ジャラジャラ…
オーク「ドミノ倒しならぬ、将棋倒しができちゃうくらいだ」チョンッ パタタタタッ
女棋士「くっ……!」
女棋士「オークの容赦ない凌辱で、もはや私の陣は壊滅寸前……!」
女棋士「だが、私は起死回生の策をひらめいたぞ!」
オーク「なに?」
女棋士「フッ……ここだっ!」パチッ
女棋士「……」ドヤァ…
オーク「……」
オーク「これ、二歩じゃん」
女棋士「え?」
オーク「歩を同じ縦列に二枚置くと、負けになるんだよ」
女棋士「!」ガーン
女棋士「くっ、詰め!」
オーク「いや、詰むっつうか、アンタが勝手に自滅したっつうか……」
オーク「まぁ……もうそろそろいいか」
オーク「あのさ、あえて黙ってたんだけどさ」
オーク「一応棋士っぽい格好してるけど……アンタ、棋士でもなんでもないだろ?」
女棋士「!?」ドキッ
オーク「汗が滝のように出てるけど、大丈夫か? ポカリスエット飲むか?」
女棋士「い、いつからだ……!」
女棋士「いつ気づいた!?」
オーク「最初からだよ」
女棋士「!」
オーク「あのな。普通、将棋は“打つ”じゃなくて“指す”っていうんだよ」
オーク「ちなみに“打つ”っていうのは碁だからな」
オーク「勉強になったか? ……女騎士」
女騎士「くっ、殺せ!」
オーク「ったく、なんでこんなバカなマネしたんだよ」
女騎士「だって……オークが『女騎士お断り』なんて貼り紙するから……」
オーク「ハァ……」
オーク「分かったよ。また変装されても面倒だし、あの貼り紙は外すよ」
女騎士「本当か!」パァァ…
オーク「ただし今後は、俺をエロブタみたいに扱うのはやめてくれ。いいな?」
女騎士「くっ、分かった!」
オーク「よし、だったら今日は俺が将棋を教えてやるよ」
女騎士「おお、ありがたい!」
~ HAPPY END ~
おしまい
ハッピーエンドは最高だ
乙
たまにはこういうのもいい
おつ
くっ、乙!
おつ
なんだこのいい話
理由つけて会いに来たかっただけにしか見えんw
乙
おつ
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