女「男ー! 午前だよ! 起きよ起きよ!」
男「んー」
女「ねーねー! 私が来たんだよ? 晴れて恋人関係になれた彼女の私が来たんだから起きてよー!」
男「んーん」
女「ほうら! 起きて起きて!」
男「んん!」
女「んひっ?!」
男「……」
女「お、怒った? ごめんね。眠いんだよね。……また来るから帰るね」
男「……何時?」
女「午前」
男「午前何時?」
女「3時」
男「……おいで」
女「どこに?」
男「ここ。布団の中。はい」
女「……お邪魔します」
男「ん」
女「あ、布団の中あったかい」
男「ん、おやすみ」
女「うん」
男「……」
女「……」
男「…………ぐぅ」
女「ちっがーう! 寝ないの! 起きるの!」
男「んーん」
女「ほらほら! 午前だよ!」
男「あーっもう! 午前だからなんだよ! 今は夜中だよ!」
女「だからね、起きよ?」
男「午前3時に人を叩きおこしに来る人がいる?! 普通いますか?!」
女「だって眠れないんだもん」
男「だからって俺の睡眠時間を奪ってくれなくてもいいじゃん!」
女「しーっ、大声はご近所様に迷惑だよ」
男「女じゃなかったら手足ふん縛って窓から投げ捨ててるところだ」
女「けっこう元気になったみたいだけど目は覚めた?」
男「……覚めたよ」
女「じゃあじゃあ、暇潰ししよ?」
男「……」
女「男?」
男「暗記ゲーム?」
女「今回はちゃんとトランプを持ってきました。ほら」
男「頭を使う遊びは眠気誘うよ」
女「トランプ持ってきてませんでした。えい」
男「痛っ、投げないで」
女「暇潰しできなきゃ寝るんでしょ?」
男「暇だから寝ると思ってるの?」
女「男が寝たらつまんなくなる」
男「どうすればいい?」
女「体を動かそう」
男「んな阿呆なこ……」
女「ん?」
男「散歩をしよう」
女「ばっちこい」
女「んふー、夜風がぬくい」
男「まだ肌寒いと思う」
女「やっぱりもう夏なんだね」
男「俺の中じゃまだ春の折り返し地点にも達してないんだけど」
女「夜ってくらいね」
男「暗いだろうね。夜だし」
女「ねね」
男「なに?」
女「今は頭使っても眠くならないよね?」
男「ねらないね。きっと」
女「星座当てゲーム!」
男「ええー、全然知らないんだけど」
女「大丈夫大丈夫」
男「あの星座の名前は?」
女「いきなり?」
男「カウントは10からです。9、8」
女「早い早い。どれ?」
男「あそこの外灯の奥」
女「あれはねー、えっと……みずがめ座?」
男「みずがめ座って春の星座だったっけ?」
女「今は夏だよ」
男「まだ春だって」
女「では、みずがめ座の学名はなんでしょうか?」
男「学名?」
女「カウントは3からです」
男「短い?!」
女「3、2、1……」
男「ア、アクエリアス!」
女「正解。まあ、序の口ですもんね」
男「難易度はわりかし低いね」
女「ではでは、第2問」
男「お空に見向きもしないでクイズが進んだ」
女「南の三角座の学名は」
男「ちょっと待って」
女「なに?」
男「その名前すらも初耳なんだけど」
女「……」
男「……」
女「南十字座の学名は」
男「それも今知った」
女「……」
男「……」
女「南冠座の」
男「なんでマイナーどころだけを引っ張ってくるの? そして執拗に南で縛るのはなんで?」
女「だって当てられたら悔しいから」
男「変なところで意地を張ってもいいいけど、俺は帰って寝るぞ」
女「分かったよ。簡単な問題出せばいいんでしょーだ」
男「そこで不貞腐れる理由が分からない」
女「猟犬座の学名はなんでしょうか?」
男「猟犬座も聞いたことないけど、なんとなく答えられそう」
女「ほほう」
男「猟と犬だから……ハンティングドッグ?」
女「あー……惜しい」
男「まあ、単純な単語の組み合わせじゃ無理ですよね。正解は?」
女「正解はカナス・ベナティキでした」
男「なんだって?」
女「カナス・ベナティキ」
男「宝くじの当選番号を予測しろと言われたような気分だった。俺の答えはかすってもいなかったし」
女「ちなみにハンティングドッグは英名でした」
男「だから惜しいと」
女「第3問いく?」
男「付き合おう」
女「ありがとう」
男「難しかったら帰る」
女「男が気分良く成る為に難易度をぐぐぐっと下げます。嬉しいね」
男「前もって言われなければもっと嬉しかった」
女「ででん!」
男「ででん?」
女「ヘラクレス座があります」
男「どこに?」
女「えっと、あそこらへん?」
男「あそこらへんね」
女「学名はな」
男「ヘラクレス」
女「……」
男「ヘラクレス」
女「……正解」
男「睨むなよ」
女「つまんないの。深読みして引っかかればよかったのに」
男「横文字はそのまま使ってそうなイメージだから。カシオペアもカシオペアでしょ?」
女「そうだけど……つまんない」
男「はいはい。当ててごめんなさいね」
女「どこまで歩く?」
男「ゲームは終わり?」
女「2勝1敗で私の勝ち越し」
男「逆。勝ち越したのは俺の方」
女「公園まででいいよね。ベンチあるし座りたい」
男「座りながらしばらく喋ったら帰るよ」
女「うん。ふわぁー……」
男「もしかして眠くなってきた?」
女「あと30分は粘れる」
男「無理しなくていいから」
女「大丈夫。男がいるから頑張る」
男「そういえば、なんでこんな夜も遅くに俺のところに来たの?」
女「バニラアイス食べてたらなんか無性に会いたくなって」
男「バニラアイスで?」
女「きっと共通点が何かあったんだと思う。私には分からないけど」
男「俺にもさっぱり」
女「男ー、おんぶー」
男「とうとう眠気で歩行もままならなくなったのね」
女「お姫様おんぶ」
男「ごめん。抱っこしか知らない」
女「しゃがんで」
男「はいはい。どうぞ」
女「うえへへへ、男の背中」
男「お姫様おんぶだから女が独り占め状態だよ」
女「独占禁止法に抵触しちゃうから怒られちゃうね」
男「誰も欲しがらないから安心して堪能しな」
女「うん。……男」
男「ん?」
女「ベンチにお布団ある?」
男「たぶんきっとおそらく絶対ないな」
女「お布団……」
男「我儘」
女「だって……お姫様だもん……」
男「はいはい」
女「男」
男「ん?」
女「おやすみなさい」
男「おやすみ」
女「んんー! いい天気! 朝だよ! 男!」
男「んんー……」
女「朝だよ朝! 大事な大事な土曜日の午前が過ぎ去っちゃうよ!」
男「後5分」
女「しかし私はそれを許さない。あーさーだーよー!」
男「……何時?」
女「6時」
男「……」
女「寝癖凄いね」
男「起きないとダメ?」
女「お姫様が暇です」
男「また暇なのか」
女「余を楽しませるのじゃ」
男「じゃあさ」
女「うん」
男「散歩をしよう」
女「ばっちこい」
終わり
本命で出すつもりの小ネタを掌篇でがつがつ消費してる気がする
乙乙
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