とある国に石炭を売る少女がおったとさ。
比較的大きな街で場違いな商売少女。
少女「石炭、石炭はいりませんか?」
しかし買う人はいません。
誰も買う人などいないのです。
少女「石炭、石炭はいりませんか?」
少女は必死に呼び込みます。
誰も見向きもしません。
では何故少女は石炭を売るハメになったのでしょう?
そんなの私に聞かれてもわかりません。
少女「そうよ、なんで私が石炭なんか売らないといけないのよ……。」
少女「石炭はいりませんか?」
すると一人の男が立ち止まります。
男「お嬢ちゃん、どうして石炭なんか売っているんだい?」
少女「じ、実は………」
男「今年が何年だと思ってるんだ?」
少女「20××年です………。」
男「そうだ。今や脱原発と騒がれている時期だ。」
少女「まあ、そうですね………。」
男「何故後進的なことを?」
少女「だって発電所とか製鉄所とかのため?」
男「…………」
少女「あと、セメント工業の人も売りますし!」
男「あのさ………」
少女「なんでしょう………?」
男「ここがどこかわかってる?」
少女「えー、渋谷ですね、あはははは…………。」
男「こんな東京の大都会の路上で石炭を売る少女がどこにいる?!」
少女「はーい!私でーす!」
男「………」
少女「最初京都で売ってたんですけど、周りから出て行けって言われてしまいまして……」
男「それでここに?」
少女「」コクリ
男「そりゃじきにここも立ち退きを要求されるな………。」
少女「………でしょうね。」
男「俺は用件あるからじゃな。」
少女「………」
1週間後・秋葉原───
男「あの女の子いなくなったな………。」
男「さてと、目的のソフトは………。」
ワイワイガヤガヤ
男「ん?何かあっちのほうが騒がしいぞ?」
少女「はいはーい。石炭ボールはいかがですかー?」
男「石炭ボールって何だよ……」
少女「石炭ボールは燃料としても強盗撃退用でも活用できる優れものでーす!」
男「げ、あいつ!!」
少女「あ、この前のお兄さん!」
男「お前そこで何してるんだよ!」
少女「石炭ボールを売ってるの」
男「石炭ボール……、意味わかんねえよ!!」
女「すみません、この青色の石炭ボールをください。」
男「青?!」
少女「どうもまいどありー♪」
女「ありがと!」
男「おい、石炭と言えば黒一色だろ?」
少女「残念。黒、赤、青、緑、黄の5色があります。」ニコ
男「1個200円……高いような安いような……」
少女「確かに採掘コストから考えればギリギリの値段よ?」
男「でもバーベキュー使うなら普通の炭がいいんだけど。」
少女「そう?でも石炭なら燃費はぐんっと良いわよ?」
男「燃費云々の問題じゃねえだろ…」
少女「そうかな~。石炭の燃費は悪くないのに~。バーベキューに最適よ?」
男「でもまあ……その黒の石炭ボールをもらう……」
少女「まいどあり~♪」
男「まあ…うん……」
男「買ってしまった……」
男「意味もなく買ってしまった。」
それから2週間後、男はまた秋葉原へ行きました。
しかし少女の姿はありませんでした。
そんなある日のこと───
男「何で俺がお前のために家具一式を揃えなければならぬのだ!」
友「いやあすまんなあ。どうしても家を出て行けって言われたからな。」
男「だからと言って俺を駆り立てるなよ……」
友「いやいや、すまんすまん。」
男「俺はお前の部下か!しもべか!」
友「下僕だな。」
男「大して意味が変わってねえ………」
友「さて家具屋についたぞ。」
男「ところでどんな家具を買うつもりなんだ?」
友「いやな、面白い家具がネットで流れてて俺もそれに乗ろうと思ってよ。」
男「お前は恐らく間違った時流に乗っかってるな………」
友「目的のところまで行くよ。」
男「あいよ」
………
……
…
友「じゃーん!どうだ面白い家具だろ~?」
男「……………」
友「どうした………?」
男「せ、せ、せ………」
友「せ、だけじゃわかんないぞ?」
男「石炭家具って何だよ!意味わかんねえよ!」
友「でもイカすだろ?」
男「お前のセンスがわかんねえ!」
友「触れても汚れないというから、ま、嬉しいわな。」
男「俺は理解すらできてねえ!」
そして石炭家具騒動から数ヶ月後のこと───
男「あーあー、バイト結局長続きしなかったな………」ハァー
男「どこか良いバイト先はないだろうか?」
男「求人情報誌で見ても何かいいのが無いんだよな………」
男「ん………?石炭運搬の仕事………?」
男「俺はもう石炭にはコリゴリなんだよ。でも時給は1000円か………。」
男「この不景気の中では景気のいいくらいお金を出してくれるな……」
男「それくらいの重労働か……」
男「でも応募してみよ!」
………
……
…
面接当日───
男「まずい緊張するなあ……」ドキドキ
コンコン
男「あ、はい。」
少女「こんにちは~、入りますね。」
男「はい、て、えええええ?!」
少女「ありゃま、貴方はあの時のお兄さんじゃないですか~。」
男「俺のことよく覚えてたな……」
少女「まあね、えへへ」ニコニコ
男「ところでお前はここで何をしているんだ?」
少女「それはこっちのセリフよ~。」
男「俺はな、バイトの面接ってことでここに来たんだよ。」
少女「そうなんだ~。」
男「じゃあお前は?まさか面接官とは言わせねえぞ?」
少女「ピンポーン、だいせいか~い。当たった君には石炭ネックレスをあげる~。」
男「いやいや、石炭ネックレスってなんだよ!」
少女「うちのグループ会社が作った装飾品なのに~。」
男「ええ………」
少女「今注目のアイテムよ?」
男「石炭ボールに石炭家具、そして石炭ネックレスときたか。」
少女「そそそ。今ね、石炭で作られた家もあるわよ?」
男「はぁ?!石炭で作られた家?!」
少女「そう、その名も『石炭ハウス』、良い名前でしょ?」
男「ん~………、どこかの某議員の建てたなんとかハウスみたいだけど、どういうものなんだろうか…」
少女「はは~ん。信用してないんだ~。」
男「石炭で作られた家だろ?耐震性とかどうなるんだよ?」
少女「そこらへんのことは建築士や科学者の手であっという間に解決したわ。」
男「日本の科学はかなり進歩したんだねえ……」
少女「ところで面接したいんだけど、本気で面接受ける気あるの?」
男「そりゃあもちろん。お金が欲しいし。時給1000円なんかかなり魅力的だ。」
少女「そう?ありがとう~。」
少女「じゃあ採用しちゃうね~。」
男「はや!俺まだ履歴書すら出してないのに……」
5年後───
少女(成人)「では状況の報告をお願いします。」
社員a「家具部門のほうでは子供用の机ではコストがきついようです。」
少女「そうですか。やはり机は一人用や二人用のほうがいいみたいですね。」
社員a「私もそう思います。」
少女「ではできるだけ皮膚や耳に害がないような机の製作をお願いします。」
社員a「わかりました。」
少女「次の部門、報告をお願いします。」
社員b「スポーツ部門ですが、野球のほうでは2軍のほうでテストとして石炭バットを使用してもらってます。」
少女「木と比べてどうでしたか?」
社員b「飛ぶ感触があまりしない、壊れやすい、との酷評をいただいております。」
少女「強度を上げることはできませんか?」
社員b「頑張ってあげてみて木製バットのような強度・飛距離向上を目指します。」
少女「ゴルフのほうはどうですか?」
社員b「そちらのほうは論外でしたね…。」
少女「と、言うと?」
社員b「うまくクラブが作れません。そちらのほうは廃止のほうにまわします。」
少女「そうですか…。わかりました。クリケットやテニスあたりも攻めてみましょうか」
社員b「そちらのほうがよいかと思います。」
少女「では頑張ってください。」
社員b「ありがとうございます。」
少女「電化製品部門はどうですか?」
男「石炭パソコン、石炭キーボード、石炭マウスはなかなかの売り上げです。」
少女「木で作ったキーボードを上回る期待感ありですね!」
男「しかし、他社のパソコンと比較すると壊れやすいそうで……」
少女「なんとかなりませんか?」
男「技術者とかけあってみます。」
少女「他にはありませんか?」
男「石炭掃除機は破裂して怪我人が4名出ました。」
少女「あら………、それ今報告するんですか?」
男「え、あ、すみません……。」
少女「その破裂事故はいつ起きたのですか?!」
男「い、1週間前に………」
少女「何故1週間前に言わなかったの?!」
男「申し訳ありません!」
少女「石炭テレビの件といい、石炭風呂といい、何故もあなたはこのようなミスをしでかすのでしょうか…。」
男「石炭冷蔵庫も失敗に終わりました……。」
少女「もう事後報告は飽き飽きです。反省しなさい。」
男「申し訳ありません!」
少女「賠償・補償問題が出てきましたのであなたも責任をとってくださいよ。」
男「はい……」
少女「石炭ブームが来たと思えば電化製品部門ではトラブルばかり、どうすればいいのか考えるだけで頭が痛い……」
石炭が生んだ2人の男女の出会い。
少女と男の石炭を使った戦いはこれからも続く……………かな?
終わり
よく燃えそう
マッチ一本で街が消えるブームだな
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