ちなつ「お姉さん……あかりちゃんを、私にくださいっ!!」 (46)

あかね(……私は……何をしているのかしら)

昼下がりの図書室。

重ねた唇を離して、あかねは思った。

隣の彼女、徹夜でレポートを仕上げて体力も限界だという吉川ともこは、口づけされたことにも気づかず、穏やかな図書室の光の中で相変わらず眠り続けている。

背もたれに身体を預け、まるで幼い子供のように。


可愛かったから、という理由では済まされないことをしている。
気づいていないから、という理由では許されないことをしている。


あかね「好きよ……ともこ」

ともこ「…………」すぅ


起きている時に言えばいいのに。

あかり(本当に……何をしているのかしら)


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あかねは、自分で自分が何がしたいのかわからない。

それは心に余裕がないからだ。

穏やかに器用に日々を過ごす彼女だが、心の奥底では何かに追われるように焦っていた。


誰にも相談できない。

だってもう、大人なのだから。


あかね(そう、私は大人になってしまう)


人は、望まなくても、年月という距離を刻一刻と進み続ける。
そんな中、同じ速度で進んでいるはずなのに、離れていくものがあった。


あかね「あかり……」


答えを出さなければいけない。

いつまでも、このままではいけないのだ。


あかね(あかり……おねえちゃんを……助けて……)


内なる叫びは、隣で寝ている幼い子供には届いていない。



―――彼女は純粋すぎる。

雨足強まる帰り道、1本の傘の中でこちらに身を寄せるように歩いてくれるあかりを見ながら、ちなつは思った。

周りの人までもを自然に笑顔にする、真っ白な天使のような子。

小さいけど、暖かくて、みんなこの光に見惚れる。

私も、この純粋さに惚れたのだ。

静かにみんなを魅了する灯り。

独り占めしたいとずっと思っていた。

私だけを照らす灯りになってほしいと。


だから先日、ついに告白した。

ちなつ「あかりちゃん……私と付き合ってください」

あか り「ちなつちゃん……?」


勇気を出した。全てが壊れるかもしれなくて、怖かった。

でも帰ってきたのは、案の定というか、期待していたものとは違って。

あかり「えっと……あかりそういうの疎くてよくわからないんだけど、あかりはこれからも、ちなつちゃんとずっと仲良くしていきたいと思うから、よろしくね!!」

ちなつ「…………うん……///」

……やっぱりちゃんと伝わってない。けど、これで良いんだという気もした。

こんなあかりちゃんが、私は好きなのだから。


こうして私は晴れて、現在あかりちゃんと付き合っている。

でも彼女は相変わらずふわふわで、その目には私以外もたくさん映っている。


―― ―私は、あかりちゃんを、独り占めしたいんだよ?

無邪気に笑っているとき、誰かと話すとき、嬉しいことを教えてくれるとき。

私は隣で、静かにテレパシーを送っている。

誰かを愛するばっかりで、

愛されることを知らない私は、

受けたことのない愛情を夢見て、

彼女を―――


そうして何度も唇を重ねようとして、

いつもそこで思いとどまるのだった。


ちなつ(ちがう……私が本当に望んでいるのは、こんな形じゃない……)


純白の天使を隣で見ながら、今日もちなつは小さく溜息をつく。

このつかず離れずの関係が、時間とともに密になってくれることを望んで。

ちなつ「んーー……あかりちゃん、今日なんか元気 無くない?」

あかり「えっ? そ、そうかな?」

ちなつ「うん……いや、なんとなくだけど」

あかり「大丈夫大丈夫。あかりは今ちなつちゃんと一緒に居られることが嬉しいなって思ってたところなんだから」

ちなつ「そ、そうなの?」


あかり「ちなつちゃん……ちなつちゃんは、あかりが “大好き” って言ったら、どう思う?」

ちなつ(えっ、来た……!? やっと気づいてくれたの!?///)

ちなつ「あっ、あかりちゃん、私も大好きだよ!!」ぎゅっ

あかり「わぁっ、ど、どう思うか聞いてるのに~!///」

ちなつ「そんなの、嬉しい以外ないよ!! だって私もあかりちゃんが大好きなんだもん!!」

あかり「ありがとう、ちなつちゃん……///」


ちなつ(やっぱりあかりちゃん、ちょっとずつだけど変わってきてくれてる……!)

ちなつ(……雨に感謝しなきゃ♪)

ちなつ(この雨と、傘を忘れてくれたあかりちゃんに)


恋心の階段を少しずつ登って行くあかりを見ているのが、嬉しくて仕方ない。

ちなつ「…………」

あかりとの距離が少しずつ近くなっていくのを感じるのと同時に、引っかかってくることがある。


ちなつ(あかりちゃんに、私だけを見てもらうには、あの人と話す時がいつか来る……)

告白する前からも思っていた、

赤座あかねという存在。


ちなつ(私は……お姉さんになんて言ったらいいんだろう……)

ちなつ(お姉さんにとって、私って何?)

ちなつ(負けないわ……あかりちゃんのためだもの)


あかり「ちなつちゃん、家までついてきてもらってありがと~」

ちなつ「いいのいいの。あかりちゃんと一緒に帰るのが私の楽しみなんだから」

あかり「それじゃあまた明日。……あ、もしかしたら今日電話するかも」

ちなつ「ほんと!? わかった、待ってるよ!」

あかり「うふふ……それじゃあ」ぱたん


ちなつ(やっぱり……ちょっとずつ、積極的になってくれてる……!///)

あかりが積極的になる度に、ちなつは確かな愛を感じられる気がして、嬉しくて仕方なかった。

ちなつ(告白して、正解だった……!)



あかね「あらあら、いつのまにこんな天気になってたのかしらね」

ともこ「ごめんね、あかねちゃん……私が全然起きないから」

あかね「うふふ、いいのよ。ともこは昨日頑張ったんだから」


昼間の柔らかな日差しはどこへ行ったか、突如立ち込めた暗雲が強い雨を降らせている。

折り畳み傘も何もないともこは、家までの道のりをあかねの傘に 入れてもらいながら歩いていた。


ともこ(あかねちゃんに……傘貸してあげたいぐらいなのに)

いつもこうだ。

私は不器用で、彼女はとても器用。

彼女が私にしてくれることは全部、私が彼女にしてあげたいこと。

そんな彼女が、ずっとずっと好き。


ともこ(大好きなんだよ、あかねちゃん)

声に出さずに、隣でいつも思っている。

似たようなタイトルが他にあった気がするけど関係あるのかな

この想いの限界は、すぐそこまできていた。

今日も、このまま複雑な気持ちを抱えて家まで辿り着いて、そのまま張り裂けそうな胸を抑えながら後ろ姿を見送るのだろう。


ともこ(嫌、離れたくない―――)

毎日、この別れる時間がとてつもなく苦しい。

ずっと一緒にいたいの 。

一緒にいればいるほど、何故かその想いは募ってゆく。


―――それは彼女が、私を見ていないから。


ともこ「…………」ちらっ

あかね「…………」


隣を歩く彼女は、最近ずっと虚ろな目をしている。

こんなに器用な彼女だが、隠すことができないのか、毎日隣にいる私にはその変化がわかる。

ともこ(相談して欲しい……)

ともこ(私を頼って欲しい……!)

ともこ(私じゃダメなの……? 私は相談するに値しない程度の存在なの……?)


あかねとは長い時を過ごしてきた。

私はあかねに何でも相談する。

あかねはそうではないのか?


こっちを向いてほしい。

その目で私を見据えてほしい。


ともこ(あかねちゃん、あなたはどこを見ているの?)

ともこ(どこに向かっているの?)


ともこ(いつもこんなに近くにいるのに……あなたをとても遠くに感じる)


私を見て。

私だけを見て。

お願い、苦しいの。


ともこ(あかねちゃん……あかねちゃんにとって、私って何……!?)ぎゅっ

あかね「はい、ついたわ。それじゃあともこ、また明日ね」

ともこ「あ、あ… ………」


行ってしまう、行ってしまう。

伝えなきゃ。

振り向いてもらわなきゃ。

いつまでも隣にいるためには。

彼女と対等になるためには。


あかね「それじゃあ」

ともこ「嫌ぁっ!!!」ばっ


自宅の前だというのに、

気づいたら、全てを投げ出して彼女を抱きしめ、唇を奪っていた。


あかねは驚きに目を見開きながら、勢いで飛んでいった傘もバッグもそのままに立ち尽くす。

土砂降りの中、ともこは唇を押し付けながら、強く強くあかねを抱きしめる。


ともこ「うっ……うぅぅ……うっ」

そして顔を胸にうずめて、崩れるように泣いた。

ともこ「ごめんさない……ごめんなさい……! 」

あかね「…………」


ともこ「もうだめ……大好きなの……!!」


どんどん強まる雨にたちまちのうちに二人はびしょ濡れになり、あかねの顔は水を含んだ髪が垂れ下がって見えない。


ともこ「答えを出してほしいの……あなたにとって私は何!? 今までの時間は何だった!? 私は……私は……!!」


ずっとしまってきた感情が一気に溢れる。
伝えたいことはたくさんありすぎて、でも泣き声が邪魔して少しずつしか出て来ない。


ともこ「あかねちゃん、最近ずっと元気ない!! なのに私に一言も相談してくれない!! なんで!? 私じゃダメなの!?」

ともこ「このままあかねちゃんが遠くに行っちゃうんじゃないかって、毎日毎日ずっと心が痛いの……!!」ぎゅっ

あかね「…………」


ともこ「お願い、私を……!!」


ともこ「私を好きと言って!!!」


あかね「…………」

ともこ「私……いつまでも待つわ……!」


最後にきゅっと抱きしめる腕に力を入れ、ともこは走って逃げた。

唐突で一方的だったけど、ありのままの気持ちを伝えたいという思いを止めることはできなかった。


これでもう、この人の隣にはいられない。

もう自分から近づいてはいけなくなった。


―――すべてが終わってしまうかもしれない。


ああ、お 願い、どうか、


ともこ(どうか私を迎えに来て……!)

ぷるるるる……

ともこ(きゃっ、電話……いけないいけない)ぐすぐす


ともこ「もしもし、よしか」がちゃ


「ちなつちゃん、おかえり。今日はありがとね」


ともこ(この声……あかりちゃん……!!)


あかり「あのね、ちなつちゃんに、ずっと聴いて欲しかったことがあるの」

あかり「さっき……あかりは今日元気無かったって言ってくれたでしょ?あれ、正解だよ……ずっと悩んでることがあってね」

あかり「ごめんね……今日相談しようと思ってたんだけど……」


ともこ「あ、あの……!」

あかり「ちなつちゃんの前で言ったら、泣いちゃい そうだったから……!」


ともこ(泣く……!?)


ずっと伝えたかったことなのだろう、通話相手の声も聞かずに、あかりは一方的に喋り続ける。

その声色から、電話越しのあかりが泣いてしまっていることは容易に想像できた。

あかり「あのね、この前おねえちゃんが、泣きながらこんなことを言ってきたの……」

ともこ(あ、あかねちゃんが……?)


『あかり……私のことを好きと言って……!!』


ともこ(!!!)びくっ


あかり「あかりはよくわからなかったんだけどね」

あかり「何回 “大好きだよ” って言っても、おねえちゃんは泣き止んでくれなかったの……」


あかり「教えてちなつちゃん……あかりは……あかりは何をしてあげればいいのかなぁ……」


これだ。

ともこ(あかねちゃんの悩みは……これなのね……!)

ともこ「もしもしっ?」

あかり「あっ、あれっ? ちなつちゃんじゃない……!?///」

ともこ「ごめんねあかりちゃん、私、ともこよ。でも良かった……!」

あかり「あっ、ちなつちゃんのお姉さん……!」

ともこ「ありがとう、教えてくれてありがとう!」

あかり「えっ、あぁ……///」

ともこ「あかねちゃんは……まだ帰ってないわよね!」

ともこ(そうよ……まだきっと……そこにいる気がする……!)


あかり「えっと、あかりさっきまでちなつちゃんと一緒に帰ってたから、そろそろちなつちゃん着いたと思ったんですけど……いませんか?」

ともこ「えっ? ちなつもまだ、帰ってきてないのよ……?」

あかり「ええっ!? 別れてから結構たったのに……!」

ともこ「あっ!」

ともこ(も、もしかしたら……!!)


ともこ「 ごめんなさいあかりちゃん、あかねちゃんはまだうちの前にいると思う! たぶんちなつもそこにいるわ!!」

あかり「ちなつちゃん家の前……?」

ともこ「お願いっ、あかりちゃんも今すぐにこっちに来て欲しいの!!」

あかり「ええっ?」


ともこ「あかりちゃん……あかりちゃんだけが、あかねちゃんを助けてあげられるんだわ!!」


あかり「おねえちゃんを……助ける……!?」



気づいてた。

ともこの気持ちは、ずっと前から。

まったく不器用なんだから。

こんなに思い切っちゃって、ばかね。

そんな不器用なあなたが、私は大好きよ。

きっとあなたは、今のが私たちのファーストキスだと思っているのでしょう。

私はもう何度か、あなたの唇をもらってしまっているのに。


あかね「うふふふ…………」

あかね(ともこに相談……できるわけないじゃない……)


あかね(私は、ともこのことで悩んでいるのよ……)

あかねの心の天秤には、あかりとともこが乗っている。

ずっとずっと、その天秤を眺めていた。

今までずっとあかりひとすじ、あかりのことしか考えてこなかった自分。

けれど、ケジメを付けなければいけないときが来ていた。

私がどれだけあかりが好きで、あかりがどれだけ私を好きでも、私たちは姉妹。

あかりだけを好きでい続けることは、あかりにとって良くない……


それを認めたくなかった。

泣きたくて泣きたくて仕方ないとき、いつもともこは側にいてくれた。


ともこは私のことが好きだって、わかってる。

不器用で、おっちょこちょいで、でも私のことをずっと考えてくれている。

そんなともこが、私も大好き。

あんまりにも可愛いから、気づかれないように何回もキスした。

キスをする度に、天秤の、ともこの受け皿に気持ちが乗る。

しかしともこに傾こうとするとき、天秤はあかりの受け皿に、あかりとの今までの思い出を勝手に乗せていく。

そうしてずっと均衡し、どっちに傾くこともなく揺れ続けているのだった。


あかね「…………」


同じ天秤にかかっていい二人じゃないのに。

自分で触れるのも怖すぎるほどに、あかりは大きな存在で。

どうすればいいか、わからない。


あかね(まだ……必要な答えを聴いていないの)

あかね(でも……その答えって何なのかもわからなくなってしまった)

あかね(私は……私は一体何が欲しいの……?)


あかね( “大好きだよ” って言われても、ダメだったじゃない……!!)がくっ


だってあかりは、そういう子なんだもん。


あかね「あかり……!!」



いつも優しくて、たくさん気を回してくれる、自慢の姉。

そんな姉が今、この土砂降りの中、人目も気にせず大声で泣き、女性と唇を合わせていた。

取り残されてなお、落ちた傘を拾おうとしないその女性は……あかりの姉、あかね。


見間違えはしない。激しい雨に打たれているが、あかねは間違いなく泣いている。


ちなつ(どういう、こと……?)


二人がどういう関係なのか、ちなつは詳しくは知らなかった。友人同士ということだけ。

ではなぜともこはあかねとキスをしたのか。

なぜともこも、あかねも泣いているのか。


打ち付ける雨音にも掻き消されなかったほどの大きな叫び。


『私を好きと言って!!!』

うまくイコールで結びつけられない光景に考えを巡らせるのはやめて、ちなつはあかねの側に駆け寄った。


ちなつ「あの、お姉さん……!」だっ

あかね「あら……ちなつちゃん……」


ちなつ「……ごめんなさい、濡れちゃいましたね……」

あかね「うふふ……いいのよ……」


バッグと傘を渡す。しかしあかねはそれを受け取らずに、ちなつの肩に手を置いた。


あかね「ちなつちゃん」

ちなつ「は、はいっ」


あかね「…………」ぎゅっ

ちなつ「わ、わっ///」


びしょ濡れの 身体で、あかねはちなつを抱きしめる。

抱きしめるというより、ちなつにもたれかかるようにして。

あかね「ふふ……あかりと同じくらいの大きさね……」

ちなつ「お、お姉さん……?///」


あかね「…………うぅ……っ……」


あかね「うっ……ふっ、うぅぅうううっ……!!」ぽろぽろ


ちなつ「!!!」


あかね「あっ、ああぁ……ぅああぁぁあ……」


泣いている。

自分より何歳も年上の人が。

私の胸で泣いている。


ちなつ「お姉さん……大丈夫ですか……?」


あかね「ちなつちゃん……!」


あかね「私を助けて……!!!」ぎゅっ

ちなつ「っ!!」

ちなつ「ど、どうい うことですか!?」


あかね「……ふ、ふふ……」

あかね「ごめんなさい……いいの……いいのよ……」ぐすぐす


身体に力をいれて、体制を立て直す。

あかねの真っ赤に泣きはらした目は、ちなつをしっかり見据えていた。


あかね「ちなつちゃん」


あかね「この前、あかりに教えてもらったわ……付き合うことになったって、本当?」

ちなつ(あ……!!///)


あかね「あかり、喜んでたわ……あんなに嬉しそうなあかりを見たのは久しぶりだった……」

あかね「ふふ……まだいまいち意味もわかってないでしょうに……ばかね……///」


ちなつ「…………」ごくっ


あかね「ちなつちゃん……」


あかね「本 気なのね?」

ちなつ「!!!」

ちなつ(あかねさんにとって、私って……?)


ライバルか、

邪魔者か、


ちなつ(……邪魔なわけない!)

だって、こんなにも泣いている。

あんなに大きいと思っていた人が、私の目の前でこんなに小さくなっている。

ちなつ(あかねさんも……私にとって大切な人だ!)


ちなつ(お姉さん……あなたを含めて、あかりちゃんを貰います)


あかねに認めてもらうんだ。

わたしのために、

あかりのために、

そして、あかねのために。


あかね「いいのよ、言って?」


あかね「私は、もういいの」にこっ


ちなつ「お姉さんっ―――!!」 ぎゅっ



ちなつ「あかりちゃんをっ、私にくださいっ!!!」



ちなつとあかねは、激しい雨の中で抱き合いながら泣いている。

泣きながら、強い意志を持って叫んでいた。

電話を切って、急いで外に出てきたともこは息をのむ。

妹のこんな姿は、見たことがなかった。


ちなつ「あかりちゃんを、私にくださいっ!!!」


ちなつ「あかりちゃんが大好き!! あかりちゃんの全てが欲しい!! 私だけを見てほしいっていつも思ってた……!!」


ちなつ「お姉さんがあかりちゃんを大切に思っているのはわかります! 私も同じです! 私も……私もあかりちゃんを守っていきたい!!」


ちなつ「お姉さん……ごめんなさい……!!」


あかね「…………!!」

あかねの目が見開かれた。

さっきまであかねを支えるようにしていたちなつは、今度はあかねにもたれるように泣きついている。


あかね「ちなつちゃん……よくできました」ぎゅっ


ともこ「ちなつ……まさか、あかりちゃんのこと……!!」はっ


あかね「……ともこ、そこにいるのね。こっちにきて?」

ともこ「!」どきっ


ともこ「あ、あの……あかねちゃん……!」

あかね「いいの……何も言わなくていい」


あかね「……二人とも、ありがとう……」ぎゅっ


あかねは二人を抱きしめる。


あかね「うふふふ……まったくもう、姉妹揃って思い切りの良さがすごいのね……///」にこっ

ともこ「あっ……!///」

ちなつ「お姉さん……!///」


あかねは、いつもの笑顔に戻っていた。

あかりによく似た、あの周りを明るくさせる太陽のような笑顔だ。

あかね「あなたたちのおかげで、答えが見えた気がするわ」

あかね「本当にありがとう……二人のおかげよ」

あかね「もう大丈夫……私はもう大丈夫だから」ぽんぽん


ともこ「あかねちゃん……良かった……!!」ぎゅっ


あかね「ともこ、ちなつちゃん。二人に出会えて、本当に良かったと思うわ……///」


あかね「二人とも、大好きよ! !」ぎゅっ

ともこ「!!」

ちなつ「!!」


ともこ「そ、それじゃああかねちゃん……!///」

あかね「うふふ……ともこ。私も、ともこが大好き。あなたに相談できなかったのは……あなたのことで悩んでいたからよ」

ともこ「そうだったの……?」

あかね「ともこったら、自分の中で悩みが膨らみすぎて、爆発しちゃったのね。でも……嬉しかったわ」

あかね「さっきのお返事、するわね?」


あかね「私も、ともことずっと一緒に歩いていきたいと、思っています」


ともこ「!!」


ともこ「あ、あかねちゃん……うぅぅ……!」ぽろぽろ

ちなつ「おねえちゃん……よかったね……///」

あかね「ほらほら… …もう、妹の前じゃない。そんなに泣いちゃって」なでなで

ともこ「嬉しい……嬉しいわ……!///」ぎゅっ


「あの……おねえちゃん」

あかね「っ!!?」


後ろからかけられた声に思わず振り返ると、そこには濡れた髪を額にはりつけ、息を切らして背中を上下させるあかりがいた。


あかね「あ……あかり……来てたの!?」


あかり「おねえちゃん、聞いてほしいことがあるの!!」

「あれから……ずっと考えてたの」


「人を好きになるということ」


「あかりは、皆のことが大好き。大切に思ってる。でも、ちなつちゃんと付き合うようになってから、 “本当の好き” が見えてきたと思うの!」


「それは、他の人にはあげられない特別な気持ち! 自分が心に決めた人にだけあげたいと思う気持ちのこと!」


あかり「あかりは……あかりはそんな気持ちを、ちなつちゃんに持っているのっ!!」

ちなつ「!!!」


あかね「でも、おねえちゃん……! おねえちゃんにも、それとは違う、特別な気持ちがある! 今までずーっと一緒に過ごしてきて、言葉じゃ伝えられないくらい、大きな大きな気持ち!!」


「忘れないで……! どれだけの時がたっても……あかりはずっと、おねえちゃんの妹なの!!」


「おねえちゃんのことが大好き!! 今までも、これからもずっと!!!」


あかね「!!!!」

雨は、いつの間にか止んでいた。


あかねの顔に、まばゆい光がささる。


そして雲の切れ間からこぼれた柔らかな光が、たちまちのうちに四人を包んだ。


そしてその光よりも大きく輝く笑顔で、あかねはあかりを抱きしめた。


泣いていた四人が、みんな笑顔になれた。



四人はそのまま吉川家に入り、その日はあかねもあかりも泊まることになった。

四人とも、今日はひと時も離れたくなかったのだ。


ちなつ「あかりちゃん、寝ちゃいました」がちゃ

あかね「ありがとう、ちなつちゃん。こっちにいらっしゃい?」ぽんぽん


ちなつ「………… 」ぽすん

あかね「ふふ……私にはともこよりちなつちゃんの方がしっかりして見えるわ。ともこも見習わないとね?」

ともこ「うふふ……ちなつは私の自慢の妹ですもの」

ちなつ「は、恥ずかしいよ……///」


あかね「本当に……良い妹を持ったわね、お互い」


あかね「まあ私にとっては、3人とも妹みたいなものかしら?」くすっ

ともこ「も、もうあかねちゃん……///」

あかね「私……いまとっても幸せ」なでなで

ちなつ「…………///」


あかね「ちなつちゃん。これからあかりをよろしくね?」

ちなつ「はっ、はいっ!!」

あかね「私もこれから、二人のことを応援します。大丈夫……ちなつちゃんならきっと、あかり と一緒にどこまでも頑張っていけると思うわ」

ちなつ「~~~~!!」うるうる


ともこ「うふふ……よかったわね、ちなつ」

ちなつ「お姉さん、ありがとうございます……!」

あかね「あら、言い忘れてたわ」ぱんっ

ちなつ「……?」


あかね「……こほん」



あかね「ちなつちゃん……ともこを、私にください」

ともこ「きゃっ!///」どきっ


あかね「ああよかった。これずっと言いたかったのよね」

ともこ「も、もう……恥ずかしいじゃない……!///」

ちなつ「はい……おねえちゃんを、よろしくお願いします」

あかね「ええ。任せてね♪」

ともこ「はぁ……それにしても、ちなつがあかり ちゃんと付き合ってたなんて。おねえちゃん知らなかったわ? 言ってくれればよかったのに」

ちなつ「お、お姉さんにバレるのが怖くて……///」

あかね「うふふ……でもあかりが私に教えてくれちゃったから、その心配も意味なかったわね」


ちなつ「わっ、私だって、おねえちゃんがあかねさんをこんなに好きだったなんて知らなかったよ!」

ともこ「そ、そんなの……ちなつに言えるわけないじゃない……?///」

あかね「そうよ。ともこはこの中で一番恥ずかしがり屋さんなんだから」

ともこ「も、もう……!///」

あかね「ともこ」ずいっ

ともこ「?」


あかね「私、誰かを好きになったら止まらない性格だから、覚悟してね?」

ともこ「えっ……!?///」

あかね「大好きよ! ともこ!!」ちゅっ

ともこ「んんーー!!?///」ばたん

ちなつ「きゃーー!!///」


あかね「ともこ、さっきのが私たちのファーストキスだと思ってるでしょ? 本当は私、あなたが寝ているときにたくさんキスしちゃってるから、あれ初めてじゃないのよ♪」

ともこ「えぇーーー!!?」

あかね「でももう初めてなんて関係ないじゃない?これから飽きるほど私とできるんだから♪」んーっ

ともこ「ち、ちなつ! 見ちゃダメ! お部屋に戻ってー!///」ばたばた

ちなつ「おっ、お邪魔しましたあ!!」ばたん



「はあ、よいしょっと」


戻ってきた。


「まったく……おねえちゃんたちはすごいなあ……///」

「あかりちゃんも、もう少し夜更かしできるようになってね」なでなで


ちなつちゃん……あかり、ほんとはまだ寝てないんだよ。


「今日はありがとう、あかりちゃん……あかりちゃんの気持ちを全部受け止められるように、私も明日から頑張るね」


「はぁ、寝よっと!」がばっ


あかり、もっと夜更かしできるようになる。

ちなつちゃんよりも長く起きて、寝ているちなつちゃんの顔を、ずつとずっと見ていたいの。

ちなつちゃんに告白されてから、気づくことができた。


誰かを好きになるということ。


あかりは今までも皆が大好きだったけど、
どうやらその好きと、皆の言っている好きは違ったみたい。


その意味が、だんだんわかってきた気がするの。


だって、あかりは前と同じようにちなつちゃんと一緒にいるけど、


前よりももっと、心が痛いときがあるの。


でもね、痛くていいと思う。ちなつちゃんの隣で、どんどん膨らんでく気持ちに胸が痛くなるのが、とっても嬉しいの。

今日はありがとうちなつちゃん。

あかりは今、とっても幸せ。


ちなつちゃんのおかげだよ。大好き。


あのね、ちなつちゃん、

私のこの “大好き” は、ちなつちゃんだけへの “大好き” なんだよ……?


こんな気持ち、初めてなの。

今も、とっても胸が苦しいよ。

だから、お願い。

ずーっと、私の隣にいてね?


ちゅっ


ちなつ「…………」すぅすぅ

あかり「おやすみ、ちなつちゃん……///」



~fin~

ありがとうございました。


ちなあかとともあかの幸せを祈って!

あかりちゃん誕生日おめでとう!

乙!
あかり、誕生日おめでとう

おっつりん


あかりちゃんほんとうに誕生日おめでとう!

素晴らしかった
そしてあかりちゃん誕生日過ぎちゃったけどおめでとう!

姉妹ダブルカップルっていいですよね!

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