河童「最近さ……」川獺「どうした?」(7)

河童「人間の子供が僕の姿見ても全く怖がらないんだよ……」

川獺「別にいいじゃねーか。お前人間好きだろ?」

河童「いや、その通りなんだけどさ……でもさ、妖怪見たら誰しも普通警戒とか恐怖したりするだろ?」

川獺「まあ、そうだな」

河童「僕みたいに大人しい妖怪相手だったら軽いノリで接しても大丈夫だけどさ、中には危険な奴もウヨウヨいるじゃないか」

川獺「だから心配だってのかい?」

河童「そうなんだよ……でも、どうして急に怖がらなくなったんだろう?前はそうでも無かったんだけどな」

川獺「そりゃ、あれだお前。最近人間の子供の間で妖怪をモチーフにしたゲームが流行ってるからに違いねぇよ」

期待

河童「あー……そのパターンか…」

川獺「前にもあったよな。鬼太郎だが何だか流行った時に」

河童「うーん……参ったなあ、それじゃあどうしようもないかな…」

川獺「俺らにまで飛び火しなけりゃいいけどな」

河童「どういうこと?」

川獺「人間の子供が妖怪に怪我でもさせられてみろ。すぐに危険生物の調査が行われて山が住みにくくなっちまうぞ」

河童「それは嫌だな……」

川獺「特にもうすぐ夏休みだろ?なおさら危険じゃないか」

河童「虫取りのことか?」

川獺「そう、虫取り。あれはよろしくない」

河童「本格的にやる子は日が沈んだ後か登る前に来るからね」

川獺「夜の山はマジでヤバいのにな。街灯とかついてても気休め程度にしかならないし」

河童「夜は妖怪の領域だからね。昼間手出ししない連中も夜にむこうからやってくるとなると容赦しないからね」

川獺「まあ、大体そういう場合は命まで刈り取られて人間も事故として扱うから飛び火する可能性はほとんどないがね」

河童「本当にいつから人間は山を恐れないようになっちゃったのかねえ」

川獺「今更嘆いたって仕方ないけどな」

河童「そうだね」

川獺「しかし、あれだね。こういうパターンの時に一番危険なのってやっぱり天狗だよな」

河童「ああ、何か大体の人間のイメージじゃただの鼻が長くて顔が赤いおっさんなだけであまり害はないって思われてるもんね」

川獺「あいつら普通に人間殺すわ、食うわでむっちゃ危ないのにな」

河童「凄い傲慢だしね」

川獺「というか、俺らが言うのもアレだが妖怪って理不尽な奴が多いからな」

河童「だねー」

川獺「うわんとか酷いもんだよ。いきなり『うわん』って言われて『うわん』って返さなきゃ死ぬって……」

河童「都市伝説のトンカラトンのほうがまだ『トンカラトンって言え』って言う分良心的だよね」

川獺「予め知ってなきゃ即死のパターンが多いよな」

河童「あとアレだよね。案外筋肉で解決できる場合も多いよね」

川獺「ああ、あるある。侍が刀振るえば化ける系の妖怪は大体死ぬよな」

河童「どんな恐ろしいものでも力押しで意外とどうにかなっちゃんだよね」

川獺「多分日本くらいなんじゃないか?妖怪が筋肉負けるのなんて」

河童「最近の日本人は幽霊を信じてるのに妖怪は信じてないって人が増えてきてるらしいよ」

川獺「妖怪と幽霊の違いとか凄い曖昧なのにな」

河童「なんでだろうね?幽霊がいるのなら妖怪がいたっておかしくないのに……」

川獺「そもそも日本人はそこらへん昔から適当だから仕方ないんじゃないか?今もクリスマスとお盆の両方やってるし」

河童「そんな適当な国だから僕たち妖怪もたくさん生まれたのかもね」

川獺「かもな……そろそろ日が落ちてきたな」

河童「それじゃあ僕らもそろそろ帰るか」

川獺「こんなとこで俺たち二人でうだうだ喋ってたって何も変わらないのにな。何やってたんだか……」

河童「じゃあ、またね」

川獺「おう」

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