あずさ「今日は私の……」 (72)

事務所へ向かう道

あずさ「~♪」

あずさ「うふふ、なんだか今日は楽しみだわ」

あずさ「だって今日は……うふふ」

あずさ「でも、この歳になると悲しい気持ちも出てくるわねぇ」

あずさ「それにしても、みんな覚えていてくれてるかしら?」

あずさ「私の、誕生日♪」


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道中

あずさ「困ったわぁ~」

あずさ「ルンルン気分で歩いてたら、迷っちゃった……」

あずさ「今日は早くから竜宮小町の取材があるから、早めに出たけれど」

あずさ「このままじゃ間に合わないわ」キョロキョロ

?「おーい! あずささーん!」

あずさ「あら? プロデューサーさん?」

P「ふぅ、すぐに見つかってよかった」

あずさ「どういうことですか? なんでプロデューサーがここに?」

P「竜宮の取材、前倒しでやるって連絡メール、見ました?」

あずさ「え? メール? あら……ごめんなさい。見ていませんでした」

P「やっぱりですか」

P「律子が言ってたんですよ、いつも早めの時間に来るあずささんがこの時間に来ないなんておかしいって」

あずさ「それで、迎えに来てくれたんですか?」

P「はい」

あずさ「どうしてここに居るってわかったんでしょうか?」

P「ん~、勘です」

あずさ「勘、ですか」

P「何度もあずささんを探しているうちに、ここにいるんじゃないか? って読めるようになってきてですね……」

あずさ「なるほど、それであの、プロデューサーさん、今日は……」

P「すいません。ちょっと時間ギリギリなんで、タクシーでテレビ局に直接向かってくれますか? お金は渡すんで」

あずさ「は、はい」

タクシー拾い後

P「じゃ、俺は仕事あるんで、今日も頑張ってくださいね!」

あずさ「はい」

ブロロロロロ

あずさ(プロデューサーさん、誕生日のこと気にもとめてくれなかったわ)

あずさ(でも、時間がギリギリって言ってたし、そういう話をしている余裕が無かっただけよね)

あずさ「今日も頑張りましょう~」

テレビ局前

あずさ「どうもありがとうございました~」

ブロロロロロ

あずさ「さて、中に入ればいいのよね」

律子「あずささん」

あずさ「あら?」

律子「待ってましたよ」

あずさ「え? どうして私がテレビ局に直接やってくるってわかったんですか?」

律子「プロデューサー殿からの連絡ですよ」

あずさ「なるほど」

律子「っと、話してる場合じゃないです! 早く来てください!」グイグイ

あずさ「は、はぁ」

楽屋

伊織「遅いわよ! あずさ!」

亜美「もう! 遅刻するんじゃないかって心配してたYO→!」

あずさ「ご、ごめんなさい二人共」

律子「メール、確認してなかったんですね? それもプロデューサーから聞きました」

あずさ「すいません」シュン

律子「あー……、反省しているようですし、無事間に合いましたから、これ以上は説教しません」

律子「ただし、次からは気をつけてください」

あずさ「はい」

あずさ(浮かれすぎてて、朝から問題ばかり……今日は良くない日なのかしら?)

収録終了

律子「バッチリだったわ! みんな!」

伊織「あったりまえじゃない!」

亜美「早く終わらせなきゃ行けなかったしね!」

あずさ「誕生日プレゼント、スタッフさんとかから貰っちゃったわ」ゴッソリ

亜美「ほうほう、では亜美からも! これを渡そう!」

あずさ「あら? これは?」箱

亜美「まぁまぁ、開けてからのお楽しみってやつだYO!」

あずさ「うふふ、そうね」パカッ

ビヨーン

あずさ「きゃあ!?」

亜美「あっはっはっは、引っかかったYO→!」

あずさ「び、びっくり箱?」

亜美「そうだよ」

あずさ「もう、亜美ちゃん、本当にびっくりしたじゃない」

亜美「まぁまぁ、でも、それはホントのプレゼントじゃないんだー」

あずさ「?」

亜美「えーっと」ガサゴソ

亜美「はい、これ!」

あずさ「これは……可愛らしい封筒ね」

亜美「開けていいYO!」

あずさ「……」ペリッ

あずさ「なんでも言うこと聞く券、一回のみ有効?」

亜美「そうだよ!」

亜美「最初はなんか物とか渡そうって考えたんだけど……あずさお姉ちゃんみたいな人には何渡せばいいかわからなくて、それに、亜美、今お小遣いすっからかんでピンチなんだYO→!」

亜美「で、これにちたの!」

あずさ(可愛らしいイラストが描かれてる。これ、相当時間かけて描いたものね……)

あずさ「あら? なんでも? じゃあ何を頼もうかしら~」ニヤニヤ

亜美「あ! 無理なこともあるって書くの忘れた!」

あずさ「じゃあ、一生私の道案内とかどうかしら?」

亜美「嫌じゃないけど……」

あずさ「冗談よ、冗談。亜美ちゃんの大事な人生、そんなことに使わせるわけないじゃない」

亜美「もー! からかったなー!」

あずさ「まぁ、有効期限も無いし、ゆっくり考えるわぁ」

亜美「完全にあずさお姉ちゃんのペースだYO……」

あずさ(これは使わないで、大事にしまっておきましょう)

亜美「こうやって、プレゼント渡す時間作るために、お仕事早く終わるように頑張ったんだからね!」

あずさ「そういえば、伊織ちゃんと亜美ちゃんはこのあとまだお仕事があったわね」

律子「はい、あずささんには、今日はこのあと仕事を入れてありません」

あずさ「そういえば、そう言われてましたね」

あずさ「ひょっとして、誕生日だから?」

律子「その通りです。事務所のみんなから、ちゃんと当日にプレゼントを貰えるように、と考えての事。誕生日くらいのんびりすごして貰いたいという理由からです」

あずさ「なるほど」

律子「あ、私からもプレゼントありますよ」スッ

あずさ「……」ジーッ

律子「私は亜美じゃないんですから、警戒しないで開けてください……」

あずさ「そ、そうですね! では」パカッ

あずさ「これは……オルゴールですね」

律子「はい」

あずさ「曲は何の曲なんでしょうか?」

律子「回してみれば、わかりますよ」

あずさ「そうですね、では」

~~♪ ~~♪

あずさ「隣に…、ですね」

律子「そうです」

律子「特注で作ってもらったんです。歌詞の意味とかを考えると、あまり誕生日に向いてないかも……、とは思ったのですが」

律子「あずささんのソロ曲の中でも一番知名度のある曲ですし、だから」

律子「……気に入っていただけたでしょうか?」

~~♪

あずさ「この~坂~みち~を、のぼるたびに~」

律子「え?」

あずさ「大変気に入りました」ニコッ

律子「よかったぁ……」

律子「あ、このオルゴールを音源にして、隣に…オルゴールアレンジなんか……」

あずさ「ダメですよ~、このオルゴールはもう私だけのものです~」

律子「あはは、すいませんつい」

あずさ「仕事柄、仕方ないですね、ところで」

あずさ「伊織ちゃんも、何か持ってきてくれたの?」

伊織「ここには無いわ」

あずさ「え? ここにない?」

あずさ「そ、それって、私専用のジェット機とか、マンションとか、プライベートビーチとか?」

伊織「んなわけないでしょ!」

伊織「私をどんなキャラだと思ってるのよ!」

あずさ「うふふ、冗談よ、冗談」

亜美「今日のあずさお姉ちゃんは冗談が多いYO→!」

あずさ「そう?」

伊織「私から送るプレゼントは、事務所に用意してあるわ」

あずさ「そんなに大きなものじゃないの?」

伊織「そうよ」

律子「とりあえず、みんな一旦事務所に戻るわよ」

事務所

竜宮「ただいまー」

小鳥「あ、みんな、おかえりなさい。あずささんはこんにちわ」

春香「おかえりなさーい!」

千早「おかえりなさい」

春香「あ、あずささん、これなんですけど……」

伊織「待ちなさい!」

春香「え?」

伊織「今は私がプレゼントを渡す番なの」

千早「そうなの?」

律子「ま、まぁ伊織はこのあとすぐに取材だし、優先してあげて? ね?」

春香「はーい」

冷蔵庫前

あずさ「この中にあるの?」

伊織「ええ、予定では既にあるはずだわ」

あずさ「予定では?」

伊織「新堂に頼んで、届けてもらったの」

あずさ「なるほど~」

伊織「まぁ、開けてみなさいよ」

あずさ「は~い」

ガチャ、ゴソゴソ

あずさ「あらあら、ずいぶんと可愛いラッピングのされた箱ね~」

あずさ「伊織ちゃんもやっぱり可愛い趣味持ってるのね~」

伊織「そ、それはお店の人が勝手に包装しただけよ!」

あずさ「かなり上質なリボンや紙を使ってるみたいだし、破らないでこれはとっときましょう」シュルシュル

あずさ「さぁ、中身は何かしら」パカッ

あずさ「……」

あずさ「」ガクブル

伊織「」ニヤリ

あずさ「ね、ねぇ伊織ちゃん、これはゴージャスセレブプリンなんでしょ?」

伊織「違うわ」

伊織「それは、超ゴージャスセレブプリンよ」

あずさ「超……ゴージャスセレブプリン、なんなの、それは?」

伊織「説明するのも面倒よ、勝手に想像しなさい、って言いたい流れだけど、ちゃんと説明するわ」

伊織「あ、ちなみに超って書いてスーパーって読むからね?」

あずさ「誰に言っているの?」

伊織「こっちの話よ」

伊織「それはね、一年に6個しか作られない伝説のプリンなの」

あずさ「一年に、6個……」ゴクリ

伊織「二ヶ月に1個ね、しかも、本店で直接予約することしかできない」

伊織「当然年明けの開店当日、数秒で予約は終了するわ」

伊織「だから、本当は違うプレゼントを渡すつもりだったわ、でも」

伊織「私のもとに、ある情報が入ってきたの」

伊織「超ゴージャスセレブプリンが、1個予約キャンセルされた……と」

伊織「翌日の開店と同時に、新堂に向かわせたわ、そしたら」

伊織「本当に、1個あったのよ」

あずさ「でも、二ヶ月に一個だったら、私の誕生日に間に合わないんじゃ?」

伊織「そのへんは店も融通きかせてるみたいよ? 二ヶ月のあいだなら、どのタイミングでも作れるって話」

あずさ「そうなのね」

あずさ「ちなみに、お値段は?」

伊織「んー、通常の50倍かしら」

あずさ「!?」

あずさ「そ、そんな高価なもの受け取れないわ!」アセアセ

伊織「にひひ、冗談よ、冗談! さっきの仕返し、本当は5000円ちょっとくらいだったかしら」

あずさ「それでも高いような……」

伊織「気にしなくていいの! それが私からの誕生日プレゼント! 味わって食べなさい!」

あずさ「わ、わかったわ」

亜美「なんかどっかの漫画で聞いたようなセリフ回しがあった気がするYO」

伊織「気のせいじゃない?」

律子「伊織、あんたはもう仕事よ、亜美はもうちょいゆっくりしてていいわ」

伊織「それじゃあ、私は行くわ」

伊織「あ、そういえばほかの二人は言ってなかったわね」

伊織「誕生日おめでとう、あずさ」

あずさ「ありがとう、伊織ちゃん」

亜美「あ、わ、忘れてたわけじゃないよ!」

律子「そうです! 決してプレゼント喜んでもらえてホッとして忘れたわけじゃ!」

あずさ「あら? そんなこと聞いていませんよ~」

亜美律子「うぐ」

亜美「ごめんなさい」

律子「肝心な言葉、忘れてました」

亜美「お誕生日おめでとう! あずさお姉ちゃん!」

律子「おめでとうございます、あずささん」

あずさ「うふふ、二人共、ありがとうございます♪」

亜美「いやいや~、って、そういえばはるるん、あずさお姉ちゃんになんか渡そうとしてなかった?」

千早「春香? 春香なら、事務所の奥に行っちゃったけど……」

あずさ「そうなの?」

亜美「それよりあずさお姉ちゃん! 早く食べちゃいなよ~! 温くなったら美味しくないよ?」

あずさ「え、でも勿体無くないかしら」

律子「気持ちはわかりますが、賞味期限があるので……」

あずさ「それでは、一口」スッ

パクッ

あずさ「……」

あずさ「」ブルブル

亜美「どうしたの!?」

あずさ「お、美味しすぎるわ……」

あずさ「よくグルメリポーターさんが味を表現してるけど、そんなことは到底不可能、そう言い切れるほど、美味しい、としか言えない……」

カチャ

あずさ「あとはお昼ご飯のあとのデザートとして食べましょう」

あずさ「空腹時にこれを食べるのは、危険すぎるわ……」

亜美「あずさお姉ちゃんがここまで言うとは」

律子「一体、どんな味なの?」

あずささん誕生日おめでとう!!

支援!

千早「……あの」

あずさ「千早ちゃん?」

千早「お取り込み中申し訳ないんですが、その、私もこのあとすぐレッスンでして」

千早「ですから、これを受け取ってください!」バッ

あずさ「ありがとう、千早ちゃん」

あずさ「中身見るわね」ガサ

あずさ「CDね」

千早「あの、それは私の尊敬している歌手の方の、一番気に入っている曲の入ったCDでして」

千早「えっとその……」

千早「ごめんなさい! 今まで歌のことばかり考えていたから、プレゼントもそれに関連したものになっちゃいました!」

あずさ「これは、千早ちゃんが私のために、って選んでくれたものでしょう?」

千早「え? は、はい」

あずさ「その気持ちだけでも、とーっても嬉しいわ、それに、765プロの歌姫である千早ちゃん一押しの曲を聞けば、私自身の歌の参考になるだろうし」

千早「そ、そういうことは考えてなかったのですけれど……」

あずさ「そうなの? まぁ、なにはともあれ、プレゼントありがとう、千早ちゃん」ニコッ

千早「はい! あずささん、誕生日おめでとうございます!」

千早「それでは、私はレッスンに行ってきます!」

亜美「あっという間に行っちゃったYO」

あずさ「これは、家に帰ったらすぐに聞きましょう」

あずさ「それと、春香ちゃんも何か用あったみたいだし、お話してきましょう」

あずさ「春香ちゃ~ん」

春香「!」サッ

あずさ「春香ちゃん?」(何か、隠した?)

春香「ど、どうしたんですかあずささん?」

あずさ「さっき、何か渡そうとしてたわよね?」

春香「え? 気のせいじゃないですか?」アセアセ

あずさ(嘘が下手ね)

あずさ「じゃあ、なんで両手を不自然に後ろに隠してるのかしら?」

春香「えっと、その……背中が痒いんですよ~」

あずさ「春香ちゃん」

春香「……」

春香「……これです」スッ

あずさ「これは、可愛いラッピングがされた袋ね、中は、何が入っているのかしら?」

春香「たいしたものじゃないです」

あずさ「……私への誕生日プレゼント?」

春香「そう……ですけど」

春香「失敗しちゃって、とても見られたものじゃないですよ?」

春香「だから、捨てちゃいます」

あずさ「だめ!」ヒョイ

春香「あ! なにするんですかあずささん!」

あずさ「どんなものでも私は受け取るわよ~!」バッ

あずさ「……クッキー」

春香「そうですよ」

あずさ「これ、本当に失敗したものなの?」

春香「……」

あずさ「Happy Birthday、って書かれたものや、ハート型や、私の似顔絵が描かれたクッキーが入っているけれど」

あずさ「いつも渡してくれるクッキーよりも、ずっと、手が凝っているんじゃないかしら」

春香「でも、伊織のプレゼントには敵いませんよ」

春香「私のお菓子作りは趣味、相手はプロ、味なんて……比較出来るわけないじゃないですか」

あずさ「……」

あずさ「いただきます」

春香「!」

あずさ「……」モグモグ

あずさ「うん、美味しい」

春香「気をつかって言ってくれてる……ってわけじゃないのはわかります、けど」

春香「素人の作ったお菓子ですよ? そんなものより、伊織のプリンの方が」

あずさ「春香ちゃんは何か勘違いしているわね」

あずさ「確かに、あのプリンはとても美味しかった」

あずさ「それで、春香ちゃんのクッキーは美味しい」

春香「やっぱり……」

あずさ「でも、プロの人の物って、お客様に向かって気持ちを込めて作ったものでしょ?」

あずさ「これは、春香ちゃんが私『だけ』に対して気持ちを込めて作ってくれたクッキー」

あずさ「総合的に見れば、互角、いやそれ以上なんじゃないかしら?」

あずさ「あ、もちろん、伊織ちゃんのプレゼントも嬉しかったわよ?」アセアセ

あずさ「というか、私は何をもらっても嬉しいって言ったし……その」アセアセ

春香「」フルフル

あずさ「春香ちゃん?」

春香「あはははっ、あずささん落ち着いてください」

あずさ「え? え?」

春香「ごめんなさい、あずささんの必死な姿がなんだか面白くって、でも、それだけ私のクッキーが評価されてるんだなって」

春香「よかったです」ジワッ

あずさ「春香ちゃん」

春香「ヴぁい……」グスグス

あずさ「プレゼント、どうもありがとう、大切に食べるわね!」

春香「うわあああん! あずざざんごぞ、おだんじょうびおべでどうございばず!」

あずさ「は、春香ちゃん!?」

春香「保存料じようじでまぜん! ずぐにだめべじゃっでぐだひゃい!」

あずさ「いえ、その……日数を掛けて食べるって意味じゃなくて……」

春香「わがっでばすー! うれじぐでないでるだげでずー!」

あずさ「あらあら」ギュ

春香「あずささん……」

あずさ「落ち着くまで、こうしてあげる」

あら~


~~~

あずさ「どう? 落ちついた?」

春香「はい、すいません。取り乱しちゃって」

あずさ「いいのよ、それだけ一生懸命私のために作ってくれてたってことでしょう?」

春香「はい」

あずさ「なら、良いのよ、それより……」

春香「?」

あずさ「そこの二人共~、隠れてないで出てらっしゃい~?」

春香「!?」

真「あ、あはは……バレてたか」

雪歩「あぅ」

春香「真!? 雪歩!? い、いつからそこに!?」

真「えーっと……」

雪歩「うわあああああん! って泣いた辺りから……」

真「っていうか春香の泣き声、事務所中に響いてたよ?」

春香「……」

春香「わ、わわわ、私レッスンあるんだったー! 急いでいかなきゃー! じゃあねみんなー!」ダダダッ

真「逃げちゃった」

雪歩「む、無理もないね」

あずさ「春香ちゃんに悪いことしちゃったかしら?」

雪歩「う~ん」

真「あずささんは、悪くない……と思いますよ?」

あずさ「そうかしら……」

真「春香のことは時間が解決してくれますよ!」

雪歩「そうですぅ!」

真「あ、ちなみに亜美と律子は空気を読んだのか、そそくさと出て行っちゃいました」

あずさ「は、はぁ……」

真「では、さっそく本題に入ろうと思います!」

雪歩「これを!」

ゆきまこ「受け取ってください!」

あずさ「は、はい」

あずさ「真ちゃんからのは、大きい、熊のぬいぐるみね」

真「あはは、大きいから包装とかできなくって~、そのまま渡すことにしちゃいました!」

真「可愛い服とかも考えたんですけど、サイズちょっとわからないし……」

真「でも、そのぬいぐるみも可愛いですよね! 大切にしてください!」

あずさ「真ちゃん、気合入っているわね~」

あずさ「ん~、そうね。ベッドのそばにでも置いてあげましょう」

あずさ「プレゼントありがとう、真ちゃん」

真「はい、気に入ってもらえて嬉しいです!」

あずさ「いえいえ~、それで、今度は雪歩ちゃんの方を見てもいいかしら?」

雪歩「は、はいぃ!」

あずさ「えーっと」ゴソゴソ

あずさ「お茶の葉ね」

雪歩「は、はい! 私のお気に入りのお店の、一番好きなお茶の葉なんですぅ!」

雪歩「事務所で淹れてるお茶は経費の都合とかであんまりいいものじゃないから」

雪歩「だから、あずささんにいいお茶を飲んでもらいたいんですぅ!」

あずさ「うふふ、それじゃあ早速淹れてもらおうかしら?」

雪歩「え?」

あずさ「私はお茶の淹れ方、あまり分からないもの、熟知した雪歩ちゃんが淹れてくれた方が、良い味を引き出せるわ」

雪歩「あ、はい! それじゃ! 淹れてきますぅ!」

真「待った! 一言忘れてるよ!」

雪歩「あっ」

ゆきまこ「お誕生日、おめでとうございます!」

あずさ「どうも、わざわざありがとう~」

~~~

あずさ「雪歩ちゃんのお茶と、クッキー、合うわね~」ズズッ、モグモグ

真「良いなぁ、僕もクッキー食べたい」

雪歩「ダメだよ真ちゃん、あれはあずささんの為に作ってきたものなんだから」

雪歩「ちなみに真ちゃんのお茶は事務所のやつだから」

真「えぇっ!? ひどい!」

雪歩「だってあれはあずささんの為に買った奴だもん」

真「うぅ……」

ガチャ

響「はいさーい!」

貴音「どうも」

真「あ、響と貴音」

響「おー、真、雪歩、あずささん」

貴音「三人でお茶をしていたのですか?」

雪歩「そんなところです」

貴音「なにやら美味しいそうな匂いが、くっきーでしょうか?」

あずさ「そうよ~」

貴音「美味しそうです」

響「ダメだぞ貴音、あれは春香が作ってきたやつだ! あずささん専用のだ!」

あずさ「あら? なんでわかったの?」

響「いま手に持ってるクッキー、思いっきりHappy Birthdayって書いてあるぞ……」

あずさ「あ、そうね」

響「というわけで貴音! 自分たちも誕生日プレゼントを渡すぞ!」

貴音「承知しております」

あずさ「みんな用意してくれているのね? 私うれしいわぁ」

響「ふふん、自分完璧だからな! だからあずさの役に立つ奴を持ってきたぞ!」ゴソゴソ

響「はい、どうぞ!」つ箱

あずさ「ありがとう、響ちゃん」

あずさ「開けましょう……、と思ったけど貴音ちゃんが早く渡したいって感じで居るわね」

貴音「い、いえ?」ウズウズ

あずさ「とりあえず、受け取りましょう」

貴音「残念ですが、つい先ほど手に入れてきたので、包装しておりません……」

貴音「ですが、受け取っていただきましょう!」バッ

あずさ「これは……」

あずさ「二十郎、一ヶ月無料券」

貴音「はい、本日より有効となっております」

貴音「店長殿が、特別にご用意してくれました」

あずさ(貴音ちゃん、ラーメン大好きだものね)

貴音「おすすめは『メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ』です」

響(貴音のカタカナが、ちゃんとカタカナになってる……)

あずさ「そ、そうなの~? でも、私には量が多くないかしら?」

雪歩「あ、あれは取材の時の見たけど、流石に食べられないよぅ」

貴音「なんと……」

貴音「喜んでもらえると、思ったのですが……」シュン

あずさ「貴音ちゃん、おすすめは無理、だけれども、食べに行くわよ?」

貴音「本当ですか!」ガタッ

あずさ「う、うん」

貴音「では早速、今日のお昼にでも」

響「え、貴音、券貰うついでに食べてきたんじゃないの?」

貴音「別腹です」

真「あはは……」

あずさ「じゃあ、貴音ちゃん、二人で食べに行きましょう!」

あずさ「さすがに毎日は食べられないけどね……」

貴音「あずさ、お誕生日おめでとうございます」

あずさ「どうもありがとう」

響「……なんかわすれてないかー?」

あずさ「あ」

響「うがー!」

響「自分もプレゼント渡したのに~! なんでそれを忘れちゃうんだ~!」

あずさ「ごめんなさい、響ちゃん。話題が変わったら、つい、ね?」

響「ま、まぁ今日は特別に許してやるぞ!」

響「それより、早く箱を開けるんだ!」ワクワク

あずさ「はいはい」(うふふ、私よりもはしゃいでるわね、響ちゃん)

あずさ「あ、サンダルね」

あずざ「私のイメージカラーと同じ色」

響「そうだぞ! コンビニとか行くときにいちいち靴履くの面倒だろ? だから、履きやすいサンダルを買ったのさー! それに、これからの時期にぴったり!」

響「どうだ? 完璧だろ!」

あずさ「サイズ、合うのかしら?」

響「なんなら今すぐ履いてみればいいぞ!」

あずさ「それでは」

あずさ「ちょうどいいわね」

あずさ「それに、歩きやすいし、今日みたいな服装ならこのまま外に出ても平気ね」テクテク

響「あ~、だめだぞ! 一人で外に行っちゃ!」

あずさ「そうね、迷子になったら大変だもの」

響「昼に二十郎行く時履いてってくれても……って思ったけど、結構距離あるから、それはやめてくれさー」

あずさ「わかったわ、慣れてきたら、距離を伸ばしていきましょう」

あずさ「それじゃあ、靴を履き戻して、っと」

貴音「ちょうど良い時間です、二十郎へと行きましょう」

響「あ、自分も時間に余裕あるから、ついて行って良いか~?」

あずさ「もちろん」

雪歩「あ、すいません」

真「僕たちお昼のあとすぐに取材あるんで、外食いけないです」

あずさ「いえいえ、おきになさらずに」

あずさ「また別の日に、二十郎に付き合ってもらうわ」ニコッ

真(なんか道連れみたいな言い方……)

響「って、自分まだ言ってないぞ!」

響「あずささん、誕生日おめでとう!」

~~~

あずさ「た、食べ過ぎたわ……」

響「じ、自分もだぞ」

貴音「わたくしは腹八分目で済ませましたが」

あずさ「あ、あれで?」

響「貴音、恐ろしいぞ」

P「おーい、響、貴音、このあと取材だ」

あずさ「! プロデューサーさん」

響「うっぷ、そうだった」

貴音「それでは行きますか」

あずさ「ま、待ってくださいプロデューサーさん、あの……」

P「あずささんは律子が言ってたとおり、ゆっくりしていて大丈夫です」

あずさ「そ、そうじゃなくて」

P「よし、行くぞ二人共」

ひびたか「はーい」

ガチャ

あずさ(行っちゃった)

あずさ(おめでとう、どころか、誕生日って単語さえ出てきてなかったわ)

あずさ(覚えていてくれてないのかしら……)

あずさ(……)

あずさ「って落ち込んでちゃダメよ、ほかのみんなからプレゼントもらっておいて、こんな顔しちゃ!」

あずさ「デザートに、超ゴージャスセレブプリンを食べましょう」

あずさ「うふふ、デザートは別腹よ♪」

~~~

あずさ「美味しかった……」

あずさ「恐ろしいくらい、美味しかったわ」

あずさ「……ふぁ」

あずさ(なんだか、食後だからか眠くなってきちゃったわ)

あずさ(ちょっとだえ、ちょっとだけソファで横になりましょう)

あずさ「……zzz」

~~~

あずさ「……ん」

あずさ(あら、私寝ちゃってたのね)

あずさ(起きましょう……ってなんだか体が重いわ)

あずさ「あら?」

美希「むにゃむにゃ……」

あずさ「美希ちゃんが、私の胸を枕にして寝てる」

美希「おにぎり……、ん~、具はメロン?」

真美「あ、あずさお姉ちゃん起きた!」

やよい「おはようございます! いや、こんにちわがいいのかな?」

あずさ「あ、おはよう二人共、それで、この状況は一体……?」

真美「あー、そこ、いつもミキミキが寝てるソファでしょ?」

やよい「それで、美希さんが、あずささんに、場所取られたー! だから仕返しなのー、って」

あずさ「こういうことに?」

真美「ソッコーで寝ちゃったから、引き剥がすとあずさお姉ちゃんも起きちゃいそうだったし」

やよい「それで、そのままにしちゃいました」

あずさ「なるほどね」

あずさ「美希ちゃん、退くわね~?」サッ

美希「むにゃあ」

真美「睡眠ゾッコー!」

やよい「美希さんは本当によく寝ますね!」

真美「んっふっふ~、それでは重大発表のお時間です!」

やよい「え? え?」

真美「もう、やよいっち! わかってるでしょ?」

やよい「? 発表って、プレゼント渡すんだよね?」

真美「ああぁぁぁ、それを言ったらおしまいだよー!」

やよい「はわわ、内緒にするの忘れてました!」

真美「そのための重大発表だったのにー!」

やよい「あぅぅ……、ごめんなさい」

あずさ「あのー二人共、内緒って言ってるけど、もう私、いろんな人からプレゼント貰っちゃったから」

あずさ「検討はついてた……かなって」

真美「……」

真美「そーだよね! 今更だったね!」

やよい「う、うん!」

真美「それじゃあ仕切りなおして、誕生日プレゼントを渡そー!」

真美「まずはやよいっちー!」

やよい「えっ!? 私ですか!?」

やよい「はわわ、えっとええと……これです!」バッ

やよい「受け取ってくださーい!」

あずさ「はい、受け取りました!」

あずさ「可愛い封筒ね、何が入っているのかしら」

あずさ(亜美ちゃんと同じ流れね、あとは中身がどう違うのか)

あずさ「もやしパーティー招待券」

やよい「うっうー! そうです、あずささんを家のもやしパーティーに招待してあげようと思って!」

やよい「プロデューサーさんとかに聞いて、空いてる日にちに調整してあるので」

やよい「ぜひ! 来てください!」

あずさ「やよいちゃん」

やよい「あれ? もしかして、無理ですか?」

やよい「うぅ……そうですよね、家小さいし、あずささんみたいな大人の女の人はもやしパーティーしたくないですね」シュン

あずさ「むしろ逆よ?」

やよい「え?」

あずさ「やよいちゃんの兄弟とお話したり、一緒にご飯食べるなんて、お母さんになれたみたいじゃない」

やよい「え? それってどういう……」

あずさ「じゃあ、もやしパーティーの日は私はお母さん役で~」

やよい「いいんですか!?」

あずさ「もちろん♪」

やよい「うっうー! 嬉しいです、それじゃああずささん、もやしパーティー参加特典として……」

やよい「ハイ!」

やよあず「たーっち!」ペチン

やよい「えへへ」

あずさ(お母さんか……私も、もうそんな年齢なのね)

あずさ(言っておいてあれだけど、若返りたいわぁ)

美希「あふぅ……なんか楽しそうだね~」ポケー

真美「あ、ミキミキ、起きたんだ?」

美希「これだけ横で大声出されたら、流石に目が覚めちゃうの」

やよい「ご、ごめんなさい」

美希「気にしてないから大丈夫だよ」

美希「あ、あずさに渡すものあったんだ」ガサゴソ

美希「はい、これ」

あずさ「まぁ、美希ちゃんもプレゼントを」

美希「当たり前なの、開けてみて?」

あずさ「は~い」

あずさ「ネイルアート?」

美希「そだよ、あずさは今でもキラキラしてるけどそれをつければもっとキラキラ出来ると思うな」

あずさ「で、でも私の歳でそんな……」

美希「細かいことは気にしないの」

あずさ「こ、細かいことって……」

美希「あー、でも初めてだと付け方わかんないよね? 美希が付けてあげるの、時間あるし」

真美「ちょーっとまった!」

美希「ん?」

真美「ちょっと、まだ真美がプレゼント渡してないよ!」

美希「そうだったの? 寝てたからわからなかったの」

真美「関係ないよー! ネイルアートは真美がプレゼントを渡してから!」

真美「というわけで、これをどうぞー!」

あずさ「どうもー」

あずさ(ん? この箱……亜美ちゃんと同じ)

あずさ「えーっと?」

真美「まぁまぁ、遠慮せずに開けてくださいな!」

あずさ「は、はーい」パカッ

ビヨヨーン

あずさ「……」

真美「……」

あずさ「きゃ、きゃああ(棒)」

真美「お姉ちゃん」

あずさ「な、何かしら?」

真美「無理して驚いたふりしなくてもいいんだよ?」

あずさ「うっ」

あずさ「……実はね、これと同じ箱を、亜美ちゃんが」

真美「なるほど……」

真美「んー、被っちゃったかー」

真美「でも、本当のプレゼントは被らないよ~!」

真美「なんだって、亜美よりも真美の方がお姉ちゃんだし! 大人の女ってやつをわかってるからね!」スッ

あずさ「それじゃあ、開けさせていただきます」パカッ

あずさ「指輪ね」

あずさ「これ、結構高いんじゃない? 綺麗……」

真美「んっふっふ~、お小遣い大奮発して買っちゃいました~!」

美希「ねぇ、真美」

真美「何? ミキミキ」

美希「それ、ちゃんとサイズ合わせてあるの?」

真美「え?」

あずさ「あら、人差し指に入らない……」

真美「……」

あずさ「薬指も……ダメ」

あずさ「あ、小指、小指に入ったわ!」

真美「あずさお姉ちゃん」

あずさ「見て見て、似合ってるかしら?」

真美「ごめんなさい」

あずさ「え?」

真美「サイズのこと忘れて、真美に合うサイズで買っちゃった……そんなんじゃ、ダメだったよね……」

やよい「真美ちゃん……」

真美「せっかく、喜んでもらおうと思ったのに」グスッ

美希「ん~、美希的には、小指でも全然アリだと思うな」

真美「え?」

あずさ「そうよね~、さりげなく、付けていられるっていうか」

真美「え? 本気で言ってるの?」

あずさ「本気よ? そもそも私、最初に聞いたじゃない、似合ってる? って」

真美「そ、そういえば」

あずさ「それでどう? 似合ってるかしら?」

真美「うん! すごく似合ってるよ!」

あずさ「それならよかったわ」

真美「これなら、あずさお姉ちゃんが言ってる、運命の人、もきっとすぐ見つかるよ」

あずさ「……」

真美「お姉ちゃん?」

あずさ「え、ええそうね!」

やよい「それでは、三人一緒にあずささんのお誕生日お祝いの言葉を言いましょう~!」

真美「オッケー!」

美希「わかったのー」

やよい美希真美「あずささちゃん、誕生日おめでとう! なのー!」

美希「ちょ、ちょっと! 呼び方がめちゃくちゃなの!」

真美「うあうあー! 合わせなきゃダメだったよ!」

やよい「やり直しますか?」

あずさ「大丈夫! みんなの気持ちは十二分に伝わったわ」

~~~

あずさ(その後、しばらく美希ちゃんたちとお話して、ネイルアートしてもらって)

あずさ(小鳥さん達の定時がやってくる頃)

小鳥「あずささん」

あずさ「はい?」

小鳥「社長がお呼びです」

あずさ「え? 社長が?」

小鳥「私も呼ばれています、一緒に社長室へ行きましょう」

あずさ(そういえば、二人からはまだプレゼント、受け取ってないわね)

あずさ「わかりました」

社長室

社長「おっほん、よく来てくれた。音無くん、三浦くん」

あずさ「そんな、同じ事務所内じゃないですか、大げさですよ~」

社長「それもそうだね」

社長「で、話なんだが、このあと、時間は空いているかい?」

あずさ「え? は、はい」

社長「三浦くんが良ければなのだが、一杯飲みに行こうじゃないか」

小鳥「はーい! 私は賛成です!」

社長「音無くん」

小鳥「すいません」

あずさ「あの」

社長「ん?」

あずさ「プロデューサーさんは、来るんですか?」

小鳥「あー、えっとですね」

社長「済まないんだが、まだ仕事が残っているようでね。私は明日に回しても構わないって言っておいたんだが……」

あずさ「そうですか……」

あずさ「……」

あずさ「お言葉に甘えて、一杯行きましょう」

社長「本当かね!?」

あずさ「はい!」

小鳥「やったやった! 社長の奢りですよ! 奢り!」

社長「キミィ……」

~~~

あずさ(そんなわけで、私は社長、音無さんと共に飲みに出た)

あずさ(いつものたるき亭、だと思ってたのだけれど……)

あずさ「あの~、今日はどこへ?」

社長「特別な場所だよ」

あずさ「そうなんですか?」

社長「そうだよ、なんてったって、今日は君の……」

小鳥「げふんげふん」

社長「なんでもない……とりあえずついてきてくれたまえ」

あずさ「は、はい」

~~~

あずさ「あれ? ここって」

あずさ(以前、みんなで来た)

社長「別の場所をとも考えたのだが、やはり一押しで行くべきだと思ってね」

社長「さあ、入った入った」

あずさ(私は言われたとおり、中に入った)

あずさ(数人が振り返ってこっちを見たが、すぐにまた話に戻った)

社長「前回はお酒を振舞うことができなかったが、今回はできる」

社長「ワインは飲めるかね?」

あずさ「多分飲めます」

社長「そうか、それでは、少し待っていてくれ」

あずさ(社長、お店の人の方に行っちゃった、呼べばいいんじゃないかしら?)

あずさ(それに、なんだか店の中心の席で、一人だとすごく気まずい)

あずさ(あれ? そういえば小鳥さんは?)

バチン

あずさ「あら? 暗く……」

コツコツコツ

あずさ「あれは、小鳥さん」

あずさ「もしかして、あの時と同じ歌を?」

小鳥「本日も、お集まりいただきありがとうございます」

小鳥「また、ご協力を大変感謝します」

小鳥「それでは……」

~~~♪ ~~~♪

あずさ「え? この曲は……」

店内 Happy birthday to you,

   Happy birthday to you,

   Happy birthday, dear azusa,

   Happy birthday to you.

パチパチパチパチ

あずさ「え? え? え?」

小鳥「驚かせちゃいましたか」

社長「まあ、無理もない」

あずさ「小鳥さんに社長、あの、これは一体?」

社長「ん? 歌の通りだよ?」

小鳥「誕生日おめでとうございます、あずささん」

社長「お誕生日おめでとう、三浦くん」

あずさ「あ、ありがとうございます!」

あずさ(その後、ワインを飲みながら社長と小鳥さんとお話をした)

あずさ(場の雰囲気を読んでか、小鳥さんはほろ酔いといったところで調整していた)

あずさ(私は、とても嬉しかったんだけど、ひとつだけ悔しいことがあって、少し飲みすぎてしまった)

小鳥「大丈夫ですか、あずささん」

あずさ「はい、理性はちゃんと残ってるし、歩けますよ~」

社長「音無くん、すまぬが駅まで送っていってもらえんかね? これは少し心配だ」

小鳥「言われなくても、私も同じこと思ってました」

小鳥「あずささん、送りますよ~」

あずさ「は~い」

~~~

駅前

小鳥「少しは酔い覚めましたか?」

あずさ「はい」

あずさ(結局、あの人に何も言われず、今日を終えてしまうのね)

あずさ「あの、やっぱり事務所に……」

小鳥「事務所? もうだいぶ夜遅いですよ? 何か忘れ物でも?」

あずさ「みんなからもらったプレゼントが」

小鳥「あ、あれなら大丈夫ですよ。別の日に持って帰れば」

あずさ「……そうですね」

小鳥「?」

あずさ「なんでもありません、小鳥さん、私と違う電車ですよね? だからここでお別れです」

小鳥「あ、そうですね、それでは」

小鳥「気をつけて帰ってくださいね」

あずさ「わかってますよ~」

あずさ「……」

あずさ「事務所に戻りましょう」

あずさ「きっと、待っているわ」

~~~

あずさ「あれ? こっちじゃない?」

あずさ「あらら? さっき通った道ね」

どこかの広場

あずさ(困ったわ……昼間と景色が違うように見えるから、全然わからない)

あずさ(道を聞こうにも、人もいないし)

あずさ「はぁ……」

あずさ(もう、こんな時間。日付変わっちゃう)

あずさ「終電逃したらまずいわね、今ならまだ駅まで戻れるかしら」

サーン

あずさ「ん?」

アズササーン

あずさ「あら? この声」

P「あずささん!」

あずさ「ぷ、プロデューサーさん!?」

P「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ……」

あずさ「だ、大丈夫ですか、そんなに息を荒くして」

P「かなり……走り回った……ぜぇ……もので」

あずさ「は、はぁ」

P「ってもう時間がない!」

あずさ「え?」








P「あずささん、お誕生日おめでとうございます!」




あずさ「えっと……」

P「はあ、なんとか間に合った」

あずさ「あの、事態が飲み込めてないのですけれど」

P「ああ、説明しますよ」

P「昼間はあえて、誕生日のことに触れなかったんですけど」

P「それで、本来なら小鳥さんや社長と一緒に飲みに行く予定だったのですが」

あずさ「仕事で来られないって」

P「そうだったんですよ、大誤算でした」

P「仕事終わって、予約してあったケーキ買って、その時には既に時間が」

あずさ(あ、左手に大きな袋持ってる、ホールケーキかしら?)

P「諦め半分で、あずささんに電話したけどでないものでして」

あずさ「あ、携帯の電池切れてる」

P「やっぱりか、それで小鳥さんに電話したんですよ」

P「そしたら、駅で別れたあとだって」

P「もう、がっくりですよ」

P「でも、小鳥さんが最後に、あずささんが事務所に戻りたいって言ってたらしいので、もしかしてと思いまして」

あずさ「それで私と出くわしたと?」

P「いや、ここに居るって勘が働きました」

あずさ「ふふっ、朝もそれを言っていましたよね」

あずさ「でも、そこまでするなら、なんで最初から飲みに来なかったんですか?」

P「えっと……それは」

あずさ「誕生日だからって、特別扱いはできないってことだったんでしょうか?」

P「違います!」

P「あずささんにプレゼントを贈るためだったんです!」

あずさ「え?」

P「ソロライブです」

あずさ「はい?」

P「あずささん単独の、大規模ソロライブを取ってきたんですよ!」

P「どうしても、誕生日プレゼントとして、それを送りたかったんです!」

あずさ「プロデューサーさん」

あずさ「ありがとう、ございます」

あずさ(プロデューサーさんは、本気で、私にプレゼントを贈るために頑張ってくれた)

あずさ(けど、それはアイドルとしての私へのプレゼント)

あずさ(運命なんて、可能性なんて……)

P「と、これはアイドルとしてのプレゼントです」

あずさ「えっ」

P「それとは別に」スッ

あずさ「これは?」

P「開けていただけますか?」

あずさ「……」パカッ

あずさ(ネックレスだった。高価そうな、けれども、装飾店にならどこにでも売っていそうな)

P「気に入りませんでしたか?」

あずさ「え? そんなことは」

P「無理もないです。店員さんに何も聞かず、男の趣向で勝手に選んだものです」

あずさ「それって、私のために?」

P「当たり前じゃないですか!」

あずさ(どこにでも売ってそうだなんて、とんでもない)

あずさ(これは、プロデューサーさんが選んでくれた、大切な……大切な……)

あずさ「プロデューサーさん」

P「は、はい」

あずさ「つけていただけますか?」

P「え、俺がですか!?」

あずさ「嫌ですか?」

P「そういうわけでは! あずささんはアイドルで、俺は男ですよ? それを、ネックレスなんかつけてる場面、誰かに見られたら」

あずさ「あたりに誰もいません」

P「……確かに」

あずさ「それに、遅刻しました」

P「え?」

あずさ「誕生日に、プレゼントもらえませんでした」プクー

P「あ、えっとそれはその……」

あずさ「ですから!」

あずさ「その罪を償うということで、プロデューサーさんの手でつけてください」

P「わ、わかりました」

あずさ「それじゃ、後ろ向きます」

あずさ「……」ドキドキ

カチャカチャ、カチッ

P「つけましたよ」

あずさ「それでは」クル

あずさ「率直な感想をどうぞ」

P「綺麗です!」

あずさ「あ、ありがとうございます///」

P「それと、その爪も綺麗ですね」

あずさ「え?」

あずさ(あ、これは美希ちゃんがつけてくれた)

P「美希もつけてますよね、ネイルアート? でしたっけ」

あずさ「もう、女の子と話している時に、ほかの女の子の名前を出すのはダメですよ~」

P「す、すいません」

あずさ「くすっ、冗談です」

あずさ「社長や小鳥さんは触れもしなかったんですけどね、なんででしょう?」

P「見る目がないんじゃないですか?」

あずさ「言いつけちゃおうっかな~?」

P「嘘です!」

あずさ「うふふっ、プロデューサーさん面白いですね」

P「完全にあずささんのペースですね」

あずさ「それじゃあこのまま私のペースで」

あずさ「困ったわぁ~、私の家までの電車、もうないわぁ~」

P「げっ!? 本当だ!?」

あずさ「誰か、泊めてくれないかしら~」チラチラ

P「いや、それはさすがにまずいですって! 色々と!」

あずさ「困ったわぁ~」

P「……」

あずさ「困ったわぁ~」チラチラ

P「……今なら、俺の家なら間に合います」

あずさ「はい」

P「ぶっちゃけ汚いです」

あずさ「はい」

P「……お酒は飲みません」

あずさ「はい」

P「部屋も、別々の部屋で寝ます、てか俺台所で寝ます」

あずさ「はい」

P「絶対に、ぜーったいに手を出しませんので!」

あずさ「手をだすって、誰に出すんですか? 手をだすってどう言う意味ですか~?」

P「ああああああああああ!」

あずさ「冗談ですよ~」

あずさ「でも、お泊りは本当ですよ?」

あずさ「そんな大きなホールケーキ、ひとりじゃ食べられませんから!」

P「はい」

数日後

雪歩「プロデューサー、お茶ですぅ」

P「おう、ありがとな、雪歩」

美希「あ、そのネックレス綺麗だね、あずさ」

あずさ「あら? 美希ちゃんもそう思う?」

美希「うん、なんていうか見た感じは普通だけど、雰囲気が違うの」

あずさ「それを見抜くなんて、さすがはライバルね~、まぁ私が一歩リードしてるけれどね、うふふ」

美希「?」

P(ライバル? 何の話をしてるんだ?)ズズズー

あずさ「これはね~」


あずさ「運命の人からもらった、誕生日プレゼントなの♪」

P「!?」ブフーッ

END

以上で終わりです!

あずささん誕生日おめでとうございました!

自分もホールケーキ買ってお祝いしてました!

おつおつ

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