ポルナレフ「むっ、すまなかった。配慮が足りなかったな。こんな狭い部屋だと少々キツイか」
ミスタ「いやいや!そうじゃねーって!」
ポルナレフ「ならどうした。香水が気になるなんて、そんな柄でもないだろうに……! ああ、なるほど……」
ミスタ「……」
ポルナレフ(さてはトリッシュと……まだまだ子供だと思っていたが、彼も青春真っ盛りという所か……)
ミスタ(トリッシュにワキガだっつって言われてから、街歩くのも電車乗んのも気が気じゃねえんだよな……)
ポルナレフ「そういうことなら協力しようじゃあないか」
ミスタ「ほんとかよポルナレフ!」
ポルナレフ「私にも覚えがあるからな。下手なものを選んで失敗するよりは、大人の助言があった方がいいだろう」
ミスタ「えっ!ポルナレフ、あんたも『経験』があるのか!?」
ポルナレフ「?(デートでの失敗ということか?) ……初めのうちは色々やらかしたこともあったよ。私も若かったからな」
ミスタ「い、今は……?」
ポルナレフ「さすがにもう落ち着いたよ。この香水なんかはエチケットというか……まあ紳士の嗜みというやつだ」
ミスタ「そっか……感謝するぜポルナレフさん!あんたの話を聞いて勇気が湧いて来たぜ!」ガシィッ
ポルナレフ「??(よほど不安だったということか…?) な、なら良かった。今度一緒に買い物に出かけようじゃないか」
ミスタ「ああ! 楽しみにしてるぜ!」パアァッ
フーゴ「ミスタ、どこへ行ってたんです? 休憩と言って随分帰ってこないからどこで油売ってるのかと思いましたよ」
ミスタ「ふ~んふふ~んふ~んふ~ん♪」
フーゴ(なんだか妙に機嫌が良くて気持ち悪い……近づかないでおこう……)
ミスタ「今度の金曜日、ポルナレフとの買い物が楽しみだぜ!」
ジョルノ「さて、デパートの化粧品売り場に来たわけですが」
ミスタ「いやいやいや、なんでお前がいるんだよ」
ジョルノ「? いけませんか?」
ミスタ「お前仮にもギャングのボスなんだからしょうもないことでほいほい表出てくるなよ!」
ジョルノ「しょうもないことでほいほい表へ出てこれないようでは、まだまだこの街を治めるギャングのボスとは言えませんね」
ポルナレフ「それは一理あるな」
ミスタ「くっ……(これじゃあポルナレフに色々と相談できねえじゃねえか……)」
ミスタ「そもそも!これは俺の個人的な買い物なの!プライベート!付いて来たってなんも面白えことなんかねえっての!」
ジョルノ「うちの所有物である亀と組織の№2を連れ出しておいて、プライベートだから付いてくるなというのは、組織の一員としていささか思慮に欠けた発言だと思いますよ」
ポルナレフ「私はちゃんと君の許可をもらったじゃないか」
ジョルノ「許可は出しましたが僕がついて行かないとは言ってません」
ミスタ「ああああもう、お前はどうしてそうなんだ!!」
ポルナレフ(意外と面倒くさいなこの子……)
ジョルノ「それで? 今日はわざわざこんな所までポルナレフさんまで連れて来て、何を買うつもりなんですか?」
ミスタ「それは……」
ポルナレフ「香水だよ。ミスタをより男前にするための特別な香りを選びに来たのさ」
ジョルノ「へえ……ミスタが香水……」
ミスタ「……」
ジョルノ「後学のためにも、僕も最後までご一緒させていただきますね」ニコッ
ミスタ(こいつ分かってて最後までついてきやがるつもりだ……!)
ポルナレフ「さて、どういうものがいいかな」
ミスタ「色々あってわかんねーぜ。あっこれなんてカッコイイな」
ポルナレフ「こらこら、瓶のカタチで選んでるんじゃないぞ。中身の方が重要だからな」
ミスタ「つってもよお、こんなの最初は瓶のカタチで選ぶしかねえだろ~?」
ポルナレフ「いくつかでいいんだ。まずは嗅いでみろ。それで気に入ったものがあればその系統から掘り下げていく」
ミスタ「系統みたいなもんがあるのか?」
ポルナレフ「大まかにはわけられるな。香水選びで一番大事なのは、まずは好きな香りの系統を見つけることだ。ファッション同様好きな物=似合う物とは限らないが、他人の目を気にして自分が好きでないものを選んでも、結局は使わなくなってしまうからな」
ミスタ(『他人の目を気にして』……)
ジョルノ「ちなみにポルナレフさんは何を付けてらっしゃるのですか?」
ポルナレフ「これはディオールのファーレンハイトだ。少し癖のある香りだろう?」
ジョルノ「ええ、でもとてもいい香りですね。あまり一般的な男性向け化粧品の香りでないというか……」
ミスタ「あ、なんかそれわかるぜー。オッサンの匂いって感じの奴だろ?組織の上の連中がみんな同じ匂いしてたぜ」
ポルナレフ「それはたぶんムスクのことだろうな」
ミスタ「ムスク?」
ポルナレフ「男性向けの香水としては一般的な香りだ。かくいう私も若い頃は憧れたものだが、何分皆がこぞって付けるものだからどうにもな……あと付け方の下手な奴が多いからそういう認識を持たれてしまうのだろう」
ミスタ「へええ。じゃあムスクはやめておいた方がいいのか?」
ポルナレフ「いや、だから言ったろう。付け方の下手な奴が付けるから嫌な印象を与えているだけだ。思い返してみればいい。匂いのきつかった連中というのは酷く汗をかいていたり、脂が浮いていたり、酒やたばこのにおいが混じっていたりしただろう?」
ミスタ「確かにそんな奴ばっかだったな」
ポルナレフ「自分に染みついた嫌な匂いが気になるんだろうな。下手な連中というのは100%そういう嫌な匂いを香水の香りで打ち消せると思っているんだ。だから過度につけて、キツイ匂いにキツイ匂いを重ねる。それじゃあ臭いわけだ」
ミスタ「! 嫌な匂いは香水じゃ打ち消せねえってのか!?」
ポルナレフ「香水は香りを重ねるものであって、打ち消すものではないよ」
ミスタ「!!」
ジョルノ「……だからいろんな種類がある、ということですね?」
ポルナレフ「そういうことだ」
ミスタ「? どういうことだよ?」
ポルナレフ「つまり、自身の匂いと重ねていい匂いなるものを探せばいいんだ。香水はつけたそのままが匂いになるわけじゃない。自分の匂いと混じりあって初めて、香水というものは香るんだよ。ミスタ」
ミスタ「!!」
ミスタ(そうか……オレぁいつの間にか、『匂いを打ち消せない』という事実にビビっちまってたぜ……)
ミスタ(香水の匂いで100%隠さなくったっていい……このワキガだってオレに一部分……ワキガの匂いも含めて、一つのオレの匂いにしちまえばいいってことなんだな!)
ミスタ「分かったぜポルナレフ!オレ、ちょっと色々と見てくるぜ!」ダッ
ジョルノ「……」
ポルナレフ「……」
ジョルノ「行ってしまいましたね……」
ポルナレフ(彼の突っ走り具合……昔の自分を思い出すなあ……)
ジョルノ「ミスタが戻ってくるまで僕たちはあっちで少し休んでいましょうか」
ポルナレフ「そうだな……」
ジョルノ(ミスタが今日二人で香水を買いに行くことは分かっていた……だが僕はそれを阻止しなければならない。なぜなら、ただでさえ一度気付いてしまってから彼のワキガが気になるというのに、それに香水だなんて付けられた日には鼻が曲がってしまう……)
ジョルノ(ポルナレフさんはトリッシュのワキガ発言を聞いていないせいか、彼の体臭にまだ気づいていないようだ……二人が香水を買うのをそれとなく阻止し、適当に言いくるめてデオドランドを買わせなくては……!)
ミスタ「待たせたぜ!」
ジョルノ「遅いですよミスタ。ポルナレフさん、待ちくたびれて部屋に引っ込んでしまいましたよ」
ミスタ「悪い悪い、おーいポルナレフ、ちょっと見繕ってくれよ」
ポルナレフ「おおその声はミスタか。随分時間がかかったな」
ミスタ「いちいち商品の前に亀を出すわけにもいかねえからな。あんたの言ってた系統ってやつ、一通り掻っ攫ってきた」
ポルナレフ「それはやる気だな。どれ、見せてくれ」
ミスタ「あんたの言ってたムスクってのはやっぱ好きじゃねえしオレには合わねえみたいだったぜ」
ポルナレフ「お膝元だけあってブリガリが多いようだが…うむ、悪くないぞ。付けてみて良いと思ったのはどれだった?」
ミスタ「これと…これ、かな。なんか最後の方は色々嗅ぎ過ぎて鼻が馬鹿になったみたいでよー」
ポルナレフ「なるほど、シトラスとスパイシーか…」
ジョルノ(シトラスはまずい……想像しただけでもヤバいことになりそうだ…)
ポルナレフ「シトラスはいいんじゃないか?」
ジョルノ「!!」
ミスタ「ほ、ホントか? それ実を言うと結構気になってたんだよな!」
ジョルノ(マズイ、このままではミスタのワキガ臭に柑橘系の匂いが混ざってエライことに……オレンジが食べられなくなってしまうじゃあないか……!)
ジョルノ「ミスタ、僕はこっちのデオドランドの方……」
ポルナレフ「ただな、ミスタ」
ミスタ&ジョルノ「!」
ポルナレフ「ここのブランドならミント系のものがあったと思うが、私はこっちのシトラスよりもさらにそちらの方が、君の匂いに合うんじゃないかと思うぞ」
ジョルノ(え……ミント……?)
ミスタ「シトラスとミントじゃ全然違うぜ」
ポルナレフ「ブランドで気に入るということもあるのだよ。騙されたと思って一度試してくるといい。手にはもう色々付けただろうから、今度は肘の内側に付けてみるんだ。体温の高い場所だから、体臭と混じった時の匂いがよく分かる」
ミスタ「お、おう」ダッ
ポルナレフ「いいものが見つかるといいな」ニッコリ
ジョルノ「……」
ミスタ「付けさせてもらってきたけど、どうだ?自分じゃイマイチわかんなくなってきたんだが……」
ジョルノ(あれ!?いつもの酸いような匂いが全然気にならない……!?)
ポルナレフ「なかなかさっぱりしていいじゃないか。シトラスの時と比べてどうだ?」
ミスタ「シトラスの時の方が付けた感はあったけど、時間が経つと確かにこっちの方が馴染む感じはするな」
ポルナレフ「香水はつけた瞬間と馴染んだ後では大分匂いが変わるからな。今の感じだと香水を付けましたといういやらしさも無く、よく馴染んでいると思うよ」
ジョルノ(確かに、さっきのシトラスなんかではまだワキガの『酸い』とシトラスの『酸い』が鬩ぎ合っている感じがした……だがこれは、ミントの爽やかさがワキガの負の部分を包み込み、体臭と混じりあってさらに上のレベルへと匂いを押し上げている……!)
ミスタ「すげえぜおい!こんないい香りが元からオレの体臭だった感じがしてきたぜ!」
ポルナレフ「さすがにそれは無いけどな……はは」
ミスタ「ありがとうポルナレフ!さっそくこれ買ってくるよ!」
ポルナレフ「気に言って頂けて何よりだ」ニッコリ
ジョルノ「……」
【後日】
トリッシュ「あら?」
フーゴ「どうしました?トリッシュ」
トリッシュ「なんだかいい香りがしたのよ、香水の。あんまり強くないからふわっとだけど。フーゴつけてるの?」
フーゴ「いいえ、僕はつけてませんよ」
トリッシュ「じゃあジョルノがつけていたのの残り香かしら」
フーゴ「ジョルノが?つけているの思ったことはないけどなあ……」
ミスタ「おい、この間言ってた報告書ようやく上がったみたいだぜ」
トリッシュ「……?」ツカツカ
ミスタ「お、おい……なんだよ」
トリッシュ「???」クンクン
ミスタ「っ!?」
トリッシュ「なあんだ、ミスタだったのね。いいものつけてるじゃないの」
ミスタ「え!わ、わかる?」
トリッシュ「わかるわよ。オンナを舐めないでよね」
フーゴ「えっ?フーゴ、香水付けてるんですか!?」
ミスタ「悪かったなあオレがつけてて……」
トリッシュ「あら、私はいいと思うけど」
フーゴ「!?」
ミスタ「! き、キツクねえか……?」
トリッシュ「全然。よく似合ってるんじゃない?なかなかセンスいいじゃない、ゲランなんて」
ミスタ「そ、そうかよ……」
トリッシュ「まあポルナレフさんのセンスだろうけどね」
ミスタ「そこまでわかっちまうのかよ!」
トリッシュ「だってフランスのブランドだもの。あの人いつも香水付けてるし」
ミスタ「オンナってのはすげえな……」
フーゴ「……」
トリッシュ「ねえミスタ」
ミスタ「?」
トリッシュ「前言ったこと、気にしてたんなら謝るわ。でも気にすることなんてなかったのよ。私、本当にそんなに嫌だと思わなかったんだから」
ミスタ「え?」
フーゴ「?」
ミスタ「それって、どういう……」
トリッシュ「でも!ポルナレフさんの見立て、ばっちりだしせっかくだからつけなさいよ。それで少しは大人の男っぽく見えないこともないこともないかもだから」
ミスタ「それ結局見えてねえじゃねえか!」
フーゴ(やれやれ……)
ジョルノ「ポルナレフさん」
ポルナレフ「なんだね、ジョルノ」
ジョルノ「貴方、もしかしてミスタのワキガのこと、気付いてらしたんじゃないですか?」
ポルナレフ「ワキガ?何のことだね?私はただ、ミスタがトリッシュの眼が気になると言うから、その要望に合うものを紹介しただけだよ」
ジョルノ「……」
ポルナレフ「隠すよりも魅せる方が、花が多くて素敵だと思わないかね、ジョルノ」
【終】
初めてのスレ立てでした
おやすみありがとうございました
あのベンキ男がよくぞここまで…乙
乙ー
ポルナレフかっけー
ディ・モールト!
素晴らしいSSでしたよ、グラッツェ!
ポ・・・ポルナレフかっけえ・・・
乙!
フーゴ「えっ?フーゴ、香水付けてるんですか!?」
ここはちょっと笑ったw
乙。面白かった
乙乙
このポルナレフはできる男だ…
>>23
あまりの衝撃に混乱したんだよ
乙
やだ…かっこいい…
乙
レスありがとうございます。
初めてなので色々とミスもありましたが、読んで頂けて嬉しいです。
完結の報告が自分ではできなかったので、どなたかして頂けるとありがたいです。
よろしくお願いします。
間違えた…お恥ずかしい…
よろしくお願いします
えっ
このクオリティで初めてなの
上の間違いでお察しの通り
報告ありがとうございます。
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