天に煌めく天の川。

そのすぐ側に、天の神様が住んでいました。

神様は弓の達人でもありました。



海未「みんなのハート、打ち抜くぞーっ☆」


海未「バァンっ☆」



……ね？　流石は神様でしょう？
　

　
神様には一人娘がいました。

その名前を織姫と言いました。



ことり「織姫ですっ」



織姫は大変働き者の娘でした。

機を織るのがとても上手で、みんなの着物を作る仕事をしていました。



ことり「海未ちゃん、新しい着物が出来たよ」


海未「！？　これを私が着るのですか！？」



神様は織姫が作るヒラヒラでフリフリの斬新な着物が少し苦手でした。
　

　
そんな織姫ももう年頃の娘。

神様は織姫にお婿さんを迎えてあげようと思いました。



海未「誰か良い相手はいないでしょうか」



神様は悩みました。

そして色々と探し回り、ある若者が目にとまりました。



穂乃果「ファイトだよ！」



その若者は天の川の岸辺で、家族で牛を飼って生活をしていました。

その名前を彦星と言いました。
　

　
穂乃果「ゆきほー。おちゃー」


雪穂「自分で淹れてよ！」



彦星はあまり働き者とは呼べない若者でした。

しかし、真っ直ぐな心と太陽のような笑顔で

みんなから愛される人物でした。



海未「穂乃果……嗚呼、穂乃果……」



神様もすっかり彦星の虜です。

彦星ならば織姫の良いお婿さんになってくれると確信した神様は

早速２人を引き合わせました。
　

　
穂乃果「ことりちゃん！」


ことり「穂乃果ちゃん！」



２人はお互いを一目見ただけで好きになりました。



海未「……」



実は、もしも２人が上手くいかなければ

自分が彦星と結婚しようという目論みが神様にはあったのですが

それは一瞬で潰えました。
　

　
めでたく２人は結婚しました。

そして楽しい楽しい夫婦生活が始まりました。

２人はとても仲良しです。

しかし

仲が良すぎるのも困ったもので



ことり「穂乃果ちゃん……」


穂乃果「んっ、ダメだよ、ことりちゃ……ぁんっ」



２人はチュンチュンしてばかりで、全く働かなくなってしまったのです。
　

　
朝から晩までチュンチュン、チュンチュン。



睡眠・食事・チュンチュン。



チュンチュン、チュンチュン、チュンチュン、チュンチュン……

　

　
やがて

神様のもとへ皆が文句を言いに来るようになりました。



凛「凛に可愛い着物を作ってくれるって言ったのに！」


花陽「牛が病気になってしまって、田んぼを代掻き出来ません！」


雪穂「お姉ちゃんが働かない分が全部私に来てるんだけど！」



２人を陰ながらに見守っていた神様でしたが

皆の訴えを聞き、すっかり怒ってしまいました。
　

　
怒った神様は、すぐに２人のもとへ向かいました。



海未「ことり！　穂乃果！」



大きな声で叫びながら、２人の住む家へと入ります。

そこで神様が目にしたのは

チュンチュン真っ最中の２人でした。
　

　
海未「！？」


ことほの「「あっ……」」


海未「はっ……破廉恥ですっ！！」



こういった事に全く耐性の無い神様でしたが

このことが神様のさらなる怒りを買ってしまいました。
　

　
海未「働かずに一日中ちゅ、チュンチュンしているなんて……」


海未「あなた達は最低ですっ！！」


海未「２人には罰を与えます！」


海未「あなた達は、天の川の東側と西側……」


海未「別々に暮らしなさいっ！！」


ことほの「「ええーっ！？」」



神様は織姫を連れて帰り

彦星もまた、天の川の岸辺の実家へと帰らされました。

こうして２人は川を隔てて離れ離れになってしまったのです。
　

　
連れ戻された織姫はとても悲しそうでした。



ことり「穂乃果ちゃん……」



彦星に会えない寂しさを紛らわそうと

織姫は機織りを始めます。



ことり「穂乃果ちゃんに会いたいよぉ……」



しかし、涙が溢れて来るばかりで

仕事はちっとも捗りません。
　

　
彦星もまた

織姫に会えない悲しみと、後悔の念に苛まれていました。



穂乃果「私がもっとちゃんとしてれば……」


雪穂「お姉ちゃん！　牛に餌あげてきてよ！」


穂乃果「あげてどうなるの……」


雪穂「はあ？」


穂乃果「私……牛飼い、辞める」


穂乃果母「あんた、それ本気で言ってんの？」


穂乃果「げっ！？　お母さん！？」


穂乃果母「バカなこと言ってないで仕事する！」


穂乃果「は、はいぃ！！」



しかし賑やかな家族とで忙しい稼業のせいで

織姫ほど悲しみに飲まれることはありませんでした。
　

　
毎日、毎日。

悲しそうに川の向こうを見つめる織姫。

そんな織姫を見て、神様は言いました。



海未「もしもあなたが、以前のように一生懸命に働くのならば」


海未「一年に一度。七月七日の夜にだけ、彦星と会う事を許しましょう」


ことり「ほんと！？」



それからというもの

織姫は彦星に会える七月七日を楽しみに

一生懸命に機を織り、みんなの為に着物を作るようになりました。
　

　
神様は彦星にも同じことを伝えました。



海未「もしあなたが以前のように……」


海未「……」


海未「……以前よりももっともっともっと一生懸命に働くのならば」


海未「一年に一度。七月七日の夜にだけ、織姫と会う事を許しましょう」


穂乃果「ほんと！？」


穂乃果「私やる！　やるったらやる！」



彦星も織姫と会える日を楽しみに

一生懸命に牛の世話をしました。
　

　
そして七月七日。

約束の日が来ました。



ことり「穂乃果ちゃん！」


穂乃果「ことりちゃん！」



再会に、２人はとても喜びます。

織姫はこの日の為に、彦星へ立派な羽衣を作ってきていました。



ことり「穂乃果ちゃん。これ、受け取って？」


穂乃果「すごーい！　綺麗だね！」


ことり「穂乃果ちゃんのこと想って、一生懸命作ったの」


穂乃果「ありがとう！」
　

　
穂乃果「穂乃果も何かお返ししないと……」


ことり「あ、それなんだけどね」


ことり「もし良かったら、ことりのお願い、ひとつだけ聞いてくれる？」


穂乃果「うん、いいよ！」


穂乃果「穂乃果に出来ることなら何でも言って！」


ことり「それじゃあ……」



織姫は恥ずかしそうに彦星に身を寄せると

耳元でそっと囁きました。
　

　

ことり「ことり、穂乃果ちゃんとチュンチュンしたいなぁ」


穂乃果「え！？」

　

チュンチュンww

　
ことり「ダメぇ……？」


穂乃果「だ、ダメっていうか……」


穂乃果「穂乃果たちはチュンチュンし過ぎたせいで離れ離れにされちゃったんだから、少しは我慢しないと……」


ことり「もう一年も我慢したよ？」


穂乃果「でも……」


ことり「穂乃果ちゃん……」


穂乃果「……ちょ、ちょっとだけなら」



織姫のとろけるような甘い声に

とうとう彦星は首を縦に振ってしまいました。
　

　

そして２人は


天の川に架かる大きな橋の下へと消えていきました

　

　
２人の様子を窺っていた神様は、最早溜息も出ませんでした。



海未「まったくあの２人は……」



またすぐに説教をしてやろうと思いましたが

２人がこの日の為に、約束を守って一生懸命働いたのも事実です。



海未「今回は初めてですからね」


海未「特別に、大目に見てあげましょう……」
　

　
神様は去り際に

２人を覆い隠すように、天の川に厚い雲を被せていきました。



海未「これなら、地上から見られることもないでしょう」



七夕の日に空を覆い

地上の人たちが星を見るのを邪魔する雲には

こんな事情があったのです。



むかしむかしのお話です。
　

おつ

乙
ちょっと雲の上行ってくる

神様乱入はまだか

乙

人類がなぜ宙を目指すのか理解できた

僕も一生懸命働くので二人に会わせてください！

　

それから


幾千、幾万の時が流れました。

　

　
天に煌めく天の川。

その畔に

宇宙で一番輝く星になりたいと願う少女がいました。
　

　
今日は７月７日。

地上の人々が夜空を見上げる日です。

少女は毎年この日に天の川を訪れ

自分をみんなに見てもらおうと

一番目立つこの場所で、その身をいっぱいに輝かせます。
　

　


「にっこにっこにー☆」


　

　
少女は頑張って輝きました。

しかし

その光は天の川の波に飲み込まれ、混ざり合い

地上に届く頃には、どれが少女の光なのか分からなくなってしまいます。

少女はそれを知りません。
　

　
少女が自分で分かるのは

「また誰にも見てもらえなかった」

という結果だけです。

悲しくなった少女の目から、涙がちょっぴり零れます。
　

　


その年の七夕は雨が降りました。


　

　
次の年の７月７日。

天の川へやって来た少女は

対岸に誰かがいることに気が付きました。
　

　
目を凝らしてよく見ると

そこにいたのは女の子でした。

女の子は岸辺に立ち

川の流れを眺めているようでした。
　

　

少女が様子を窺っていると

女の子は歌を歌い始めました。

　

　


「愛してるばんざーい」


　

　
とても綺麗な声でした。

とても優しい歌でした。

女の子が歌うのに合わせるように周りに光が集まっていきます。

そうして生まれた輝きは

少女がこれまでに放ったどんな光よりも

ずっとずっと大きく強く見えました。
　

　
少女はそれを見ていられませんでした。

光を纏う女の子に背を向けて

少女は走り出しました。

走る少女の目から涙が零れました。
　

　


その年の七夕は雨が降りました。


　

待ってるよ

穂乃果「むむむむむ…」

ことり「穂乃果ちゃん？難しい顔をしてどうしたの？」

穂乃果「あ、ことりちゃん。実はね、ランチパックのツナマヨとチョコをどっちを先に食べようか悩んでて…」

穂乃果「私としてはやっぱり甘いものは最後にとっておきたい、でも今は無性にチョコが食べたい気分でもあるんだ！」

穂乃果「今すぐ食べてしまうべきなのか、最後にとっておくべきなのか…！」

ことり「うーん、そうだね～」

ことり「あ、だったら二つとも一緒に食べてみるのはどうかな～？こうやって重ねて食べるの～♪」

穂乃果「それだ！！ナイスだよことりちゃん！」

穂乃果「ようやくランチパックにありつける♪いっただきまーす♪」ﾊﾟｸｯ

～スピリチュアルな味がした～

誤爆