僕の名はアルミン・アルレルト
至って普通の人間……のはずなんだけど、違うらしい。
昔、親友のエレンという男の子の父親からある宣告を受けた。
「君は特殊な力を持っている。未来が見えるんだよ君には」
??? 彼は冗談を言うような人とは思えなかった。
しかし、彼が言ってることは信じられないこと。
当然ながら理解に苦しんだ。
たまに、彼の言葉を思い出しながら何年か過ごしてきたが「未来が見える」ような出来事がはかった。
ーーーーーーー僕が訓練兵となるまでは。
一応支援
「ううっ……!」
突然の頭痛に体が揺らぐ。
と同時に脳内に鮮明なビジョンが出現した。
『祖父がつけてくれました!』
『逆だ、コニー・スプリンガー。貴様の心臓は右にあるのか?』
『蒸かした芋です』
「な、なんだったんだ今のは……?」
頭痛が収まり、僕の頭に残ったのはハゲと話す僕を含めた三人の人間の姿だった。
僕以外の人間はみな、見たこともないまったくの他人だった。
訓練兵団への入団は明日へ迫っていた。
期待や緊張などの感情を胸の底へ沈めて、僕は眠った。
『君は特殊な力を持っているんだ。未来が見えるんだよ君には』
『ど、どういうこと?』
『すぐに分かるさ』
「……またか」
最近になってよく昔の夢を見るようになった。
もう日は出かけていた。
早々と支度を済ませ、僕は入団式へ向かった。
「ん?あの人……見覚えがあるぞ……」
僕の視線の先に居たのは、先日頭痛と共にやってきたビジョンの中に存在したハゲが居たのだ。
そしてハゲは僕の元へ歩いてきた。
「貴様は何者だ!」
そうハゲは僕に質問してきた。
「シガンシナ区出身、アルミン・アルレルトです!」
「そうか!バカみてえな名前だな!親がつけてくれたのか?」
「祖父がつけてくれました!」
………ん?初めて言った台詞のはずなのに、なぜか聞き覚えがあるぞ
………あのビジョンだ。このハゲといい僕の台詞といい、なぜかこの前見たビジョンの内容が現実になっている気がする。
でも、あのビジョンには続きがーーーー
「逆だ、コニー・スプリンガー。貴様の心臓は右にあるのか?」
「蒸かした芋です」
間違いない。この前のビジョンが現実になっている。
『君は特殊な力を持っている。未来が見えるんだよ君には』
今になってエレンの父親ーーーグリシャの言葉が現実味を帯びてきた。
なぜ今になって?
そもそもなぜこのような力が?
なぜこのことを昔の彼は知っていたのか?
延々と思考を繰り返せど、真実はグリシャの胸の中だろう。
いくつも沸いてきた問いの答えは、いずれグリシャ本人に会えた時に聞くことに決め、このことに関して考えるのはやめた。
ズキン
「うっ………」
懐かしい痛み……件のビジョンを見る際にも襲われたあの痛みだ。
そして、またビジョンは僕の頭にはビジョンが現れた。
そこには絶望の表情を露わにする親友、エレンの姿があった。
『ワグナー、イェーガーとベルトの交換をしろ。』
ハゲがそう言ったあと、話の内容から察するにワグナーと思わしき金髪の男性とエレンのベルトが交換された。
その直後エレンの表情は希望に満ちていた。
『イェーガーのベルトが破損していた。ここが壊れるなどーーーー
ここでビジョンは終わった。
現実世界では教官……ハゲに各々厳しいことを言われていた。
何も言われていない人も居ることに気が付いたが、特に気にしても意味はないと判断してビジョンについて考えることにした。
ハゲとバカしか見えないのかと思った
とは考えたものの、やはりヒントが何もなくては分かるものもなかなか分からない。
ビジョンにも居た、入団式中に芋を食いだした女性を尻目に食堂で軽い自己紹介のようなものを各自で行っていた。
「君、さっき教官に何も言われてなかったけど、どこの出身なの?」
グループの中の一人がエレンに問う。
「そこのアルミンと同じ、シガンシナ区出身だ」
「ってことは見たのか!?超大型巨人を!」
「ああ、壁から頭を出すぐらいの大きさだった」
「俺は壁を乗り越えーーーーー
エレンは彼らと話し、辛い記憶を思い出しながら、自分の持つ決意をより強固なものとした。
その最中エレンと"ジャン・キルシュタイン"と名乗る者と一触即発の事態になった。
が、エレンの家族のような存在であるミカサがそれを抑えた。
そのあとはみな、自分の部屋へ行きルームメイトと挨拶を交わし、明日行われる適性検査へ向けて体を休めた。
「これより立体機動の適性検査を行う!これが出来ない者はクソの役にも立たん!開拓地へ移ってもらおう!」
その後は腰にベルトを巻き、それを使って吊られて体制を維持出来るか、という簡単なテストを行った。
こんなもの誰にでも出来………いや、エレンには向いてないのかな?
そこには昨日見たビジョンのように、絶望した顔をしたエレンの姿があった。
そういえばビジョンの中でハゲが「ベルト」という単語を口にしていた気がする。
「ねえ、エレン」
「な、なんだよアルミン。笑いにきたのか?」
彼の顔には光は一切なく、ひどく絶望した色だけが見受けられた。
「もしかしてだけどさ、ベルト壊れてたりとかしてない?」
「ん?……おお!アルミンありがとな!!お前の言うとおりベルトが壊れてたよ」
この後彼は教官にそのことを報告、新しいベルトに取り替えてもらい、適性検査は無事クリア出来た。
「これで、良かったのかな?」
僕が考えるに、あのビジョンは『僕がベルトの故障を指摘しなかった場合の未来』だったのだと思う。
真偽を確かめる術は無いが、そういうことにしておく他なかった。
その後三年間、ビジョンを見ることはなかった。
そして、ちょうどその時期に……
僕が住んでいたシガンシナ区を、地獄に変えた原因である……あの超大型巨人が突如現れたのだ。
そしてーーーー
「うあっ………」
またあの頭痛が久方ぶりにやってきた。
訓練兵時代にかなりの胃痛に悩まされてきた僕は
「いつまで痛みに耐えなければならないんだろう……」
などと一人、苦笑いしていた。
『スピード昇格間違いなしだな!』
『よくもトーマスを!!!』
『一緒に外の世界を………』
どれもエレンに関するビジョンだった。
最後のものは……巨人の口の中に居るエレンだった。
考えたくはないが捕食される寸前なのだろう。
このビジョンだけは現実にしてはならない。
だがしかし、どうすればエレンは食べられずに済むのか?
いくら考えても案が一つも浮かばない。
「くそっ……エレンの命が懸かってるのに……!」
焦りのせいで冷静な判断が出来なくなっていた僕にはエレンを守る作戦は考えつかなかった。
ここで考えても無駄、そう結論付けた。
「トロスト区に侵入してしまった巨人を掃討しながらでも考えてやるっ……」
思わず声に出てしまっていたらしい。
エレンが僕に声をかける。
「ん?何を考えるんだ?」
「え!?な、な、なんでもないよエレン!」
「そうか、変なアルミンだな」
「あはははは…」
君の死について考えていた、なんて言えるわけがなかった。
世界は残酷だった。
僕に決意を固める時間も与えてくれず、気づけば戦場に立っていた。
「……スピード昇格間違いなしだな!」
!!!!
聞き覚えのある台詞に少し動揺してしまう僕。
もうすぐでエレンは……いや、僕はそれを止めるんだ。
いつまでも守られてばかりじゃないって事を僕が、今ここで証明してみせる!!!!
「ああ……間違いない」
「倒した巨人の数で勝負しないか?」
「言ったな、トーマス。数をちょろまかすなよ!」
トーマスとエレンがいくつか言葉を交わしたあとに、僕たち34班は与えられた任務を遂行するため、前進した。
「あ、あそこの巨人飛んでくるぞ!奇行種だ!」
誰かがこう言った後、仲間であるトーマス・ワグナーは……巨人に捕食されてしまった。
トーマスを食らった巨人は僕たちをあざ笑うかのようにその場を離れようとした。
「よくもトーマスを!!!」
エレンの言葉に僕は心臓が絞まる、そんな感覚を覚えた。
僕が見たビジョンではエレンが巨人の口内に行く、その直前のシーンはここだったのだ。
「待って!!!いけないよエレン!!!!エレェェェェェン!!!」
恐らく今までの生涯で最も大きな声を出して、親友、エレンの行動を制止させようとした。
しかし、仲間を殺された怒りのせいで僕の声はエレンの耳には届かなかった。
間もなくエレンは奇行種を追う途中で左足を食いちぎられ、僕を除く34班のみんなも巨人の餌となってしまった。
そして僕も巨人の餌になろうとしていた。
僕が巨人に飲まれる前に見たエレンの姿は食いちぎられた足から大量の血を流し、動かなくなってしまった姿だった……
「結局僕は誰も守れぬまま、死ぬのか………そんなの……残酷すぎるよぉ……」
このまま僕は丸飲みにされてしまった。
巨人の胃の中で母に助けを乞う者の姿を見ながら、僕は生涯を終えた。
ミカサ「そんな……エレンが死ぬなんて………アルミンまで……また、家族を失った……」
この日、ミカサ・アッカーマンは自分で自分を殺め、それ以来人類は巨人の餌となるしかなかった。
やがて人類は滅亡した。
「!!!……はぁっ……はぁっ」
「大丈夫かアルミン。ひどくうなされてたぞ?」
僕、アルミン・アルレルトは凄い悪夢を見ていた気がする。
祖父が心配をしてくれたが「大丈夫だよ、ありがとう」
と言うと安心したようで穏やかな面持ちになった。
あまり夢の内容は思い出せない、けれども凄くイヤな感じだった。
今日もいつものようにエレン、ミカサと三人で遊ぶ予定があるのを思いだした。
少しモヤモヤするが、気分を新たにしエレン達を迎えに彼の家へと訪れた。
グリシャ「お、アルミン君じゃないか。少し話があるんだけれども大丈夫かな?」
彼はエレンの父親。
なぜ僕に話が?
なんの話だろう?などと、考えるより早くに
「はい、なんでしょう?」
無意識に口が動いていた。
グリシャは神妙な面持ちをしながら僕にこう話した。
「君は特殊な力を持っている。未来が見えるんだよ君には」
完
一応蛇足しときますと
・エレンは巨人化出来ない
・エレンは足を食いちぎられて屋根の上にて出血多量で死亡
・アルミンの「いつもとは逆にエレンを守りたい」って思いが強すぎてループしてる
ハルヒのエンドレスエイトみたいな物と解釈してもらって大丈夫です
・未来予知能力=今までループしてきたアルミンが見てきたもの
みたいな世界観で書きました
乙
無限ループは怖い
さあ二週目に行こうか!
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