にこ「人という漢字」 (258)

シリアスあり。


ドロドロあり。

胸糞的な展開もあり。


これらがダメな人は読まないことを推奨します。


呼称はアニメ基準です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403687901




 いつからだっけ。
 自分とは対照的な、まるで太陽のような輝きを宿す人が、自分の側にいないと、自分を保てなくなったのは。赤い瞳が自分に向いていないと狂いそうになったのは。





 いつからだっけ。
 自分とは対照的な、全てが完璧な少女がいないと私というものが形成出来なくなったのは。その紫色の瞳に依存をしていたのは。



 いつからやろう。
 気づいたら見ていたのは。
 小さく、それでも大きく跳ね回るその姿を愛おしく感じ始めたのは。





 いつからだっけ。
 自分を支え続けてくれた人を、友達として見れなくなったのは。叶わない想いを、想い続けたのは。緑色の瞳を普通の目で見れなくなったのは。




 いつからでしょう。
 不器用で、どんなことにも真っ直ぐ立ち向かうその姿に惹かれて行ったのは。アクアブルーの瞳に吸い込まれそうになってきたのは。

 
 


 


三年生教室


希「それでなーにこっちがなぁー」



絵里「へぇ…」


希「ん?どうしたんえりち」

絵里「いえ…なんでもないわよ?」

希「そう?なんか変だよ?」

絵里「……誰のせいよ」ボソッ


絵里(希は……にこのことが……)





希「ん?」


希「今度にこっちと遊び行こうかなーなんて」

絵里「そ、そう。いいわね。応援してるわ」

絵里(希は悪くない…悪いのは、こんなことを考えている、私)




希「ありがとなー」エヘヘ

絵里(……にこのことを話している時の希はこんなにも、楽しそう)


絵里(……今まで散々支えて貰ったんだから、私が、支えてあげなきゃ…)




絵里(支えて貰った相手の恋は……応援、しなきゃ。私がワガママ言っていいことじゃ、ない)



絵里(勝手に希を好きになって、見返りを求めるなんて私は最低ね)

希「えりち?」

絵里「えっと、なんの話だったかしら?」

希「酷いなー、にこっちと遊び行きたいなーって話してたんよ」


絵里「あ、ああそうだった、わね」





 
◇◇



真姫「あ……あの」



絵里「ん?真姫?」


希「どうしたん?三年生の教室まで来るなんて珍しいやん」


真姫「ちょっと、相談が、ある、というか」


絵里「相談?」


希「なんでもどうぞー」



真姫「三年生にしか、相談出来なく、て」

絵里「……深刻なこと?」


真姫「私の、中では」

絵里「……」



真姫「えっと……えっと、私、私……」


真姫「ふぅー……ふぅー……私」


希「落ち着いて?」

真姫「う、うん。誰にも言わないで?えっと、私」


真姫「――にこちゃんのことが好き、なの」




希「え――」



絵里「…………」



希「そ、そう、なんや」


希「へ、へえ!知らなかったなぁ、うん」

真姫「……」


絵里「本当、なの?」


真姫「うん……」




希「へ、へぇーそうやったんや。いいね!応援するよ!」





希「じゃあまず計画やね――」

◇◇





希「あはは、まさか真姫ちゃんがにこっちのこと好きだなんてねー」


絵里「……」

希「ん?どうしたんえりち」


希「ねえ…黙らないでよ」


絵里「……」

希「ねえ……」



絵里「希、なんで、あなたはいつもいつも、そうなのよ」


絵里「他人ばかり気にして、自分は損しかしない」



希「……ウチが真姫ちゃんに勝ってるとこなんて、それこそ胸くらいしかないんよ」

絵里「……なんで、なんで勝負しないのよ」


希「別に、いいやん?これがウチなんよ」

絵里「……」



 本当は知ってる。

 勝つとか負けるとかそんな問題じゃなくて、希がにことくっついたら真姫はどうなるのか。希はきっとそれが気がかりなんだと。





希「ウチ、帰るね」

絵里「あ……」





 希が好きな人のことを諦めた。

 本当はもっと希の背中を押してそうさせないようにすべきだった。


 でも希がにこのことを諦めてくれて、喜んでいる自分がいた。

絵里「最低……最低よ、私は」



 私には希の隣に居る資格なんて。




海未「…あの…」


絵里「え!?う、海未?」


海未「……今、ダメでしたか?」


絵里「いやそんなことは……いつから居たの?」


海未「希が出ていって絵里が一人で俯いてるところから」


絵里「そう…」


海未「あの、大丈夫、ですか?」


海未「私で良ければ力に――」

絵里「――ありがとう、でも必要ないわ」


海未「そう、ですか」




絵里「で、海未はどうしてここに?」

真姫「はい、ちょっと恋愛関係の曲を真姫と作っていたら、なんだか思い詰める様な表情をした後、急に飛び出して…」



絵里(なるほど、海未と恋愛曲作りがきっかけになって行動を起こしたのね)



海未「真姫を見ませんでしたか?」



絵里「さっき、ここに来たわよ。でもどこに行ったかは…」



海未「そう、ですか」



海未「あ、あの。絵里話は変わるんですけど…」


絵里「なあに?」


海未「えっと、えっと、こここ今度二人でどこかへ行きませんか?」


絵里「…?二人で?まあ別に構わない、けど……」



海未「ほ、本当ですか!本当ですね!?言いましたからね!」

絵里「え、ええ……」



海未「では、また今度!」ペコリ



絵里「なんだったのかしら……」

◇◇


希「おはよう、えりち」


絵里「え、ええ」


希「どうしたんー?」


絵里「なんでもないわ」


希「そっか。今日にでも真姫ちゃん、行動起こすといいねー」




絵里「本当に、いいの?」



希「いいって言ったやん?」

放課後 真姫の家

にこ「……どうしたのよ急に」


真姫「別に…」


にこ「はあ?」


にこ「何も用が無いのに私を呼んだの?」


真姫「いや、用は、あるけど」


にこ「じゃあなに?」




真姫「…………紅茶、飲む?」

にこ「なによそれ、まあ……頂くわ」







にこ「で、話って?」

真姫「どうだったさっきの紅茶?」



にこ「美味しかったわ。ってそれより!質問に答えて」


真姫「でしょー、割と良い紅茶なのよ」



にこ「ねえ」

真姫「だから」



にこ「ふざけてんの?」

真姫「」ビクッ



真姫「…ごめんなさい。ふざけてるつもりは無いの。ちょっと、相談、ていうか」



にこ「相談…?真姫が相談?あはは、なにそれ」




真姫「何で笑うのよ!!」



真姫「馬鹿にしないで!!」



にこ「ふーん、じゃあどんな相談なんだろ」グイッ

真姫(ひ……ち、近い)

真姫(言わなきゃ、言わなきゃ、好きだって、言わなきゃ)






真姫「女の子同士で付き合うとかってにこちゃんは……どう思う?」



にこ「な、なによ急に」

真姫「ど、どう思うって聞いてんでしょ!?」



にこ「えっと…まあ、人それぞれ、なんじゃない?」



真姫「そう……」



にこ「……」

真姫「……」

にこ「な、なんで黙るのよ」




真姫「……き」

にこ「ん?」

真姫「…好き」

にこ「なにが?」



真姫「あぁもう!なんでここまで言ってもわかんないのよバカ!!」



にこ「はぁ?意味わかんないわよ!言いたいことあるならはっきりいいなさいよ!!」



真姫「バカ!バカ!にこちゃんのことが、好きだって、言ってんのよ!!」


にこ「……え?」



真姫「あ……えっと…」


◇◇

希の家


希「ん?メール?」


真姫メール『にこちゃんと、無事付き合うことになりました。背中を押してくれた希のおかげよ。本当にありがとう』





希「は…はは……そうだよね。なにを期待してたんやろ、ウチ」




希「真姫ちゃんがにこっちに振られるとでも思っとったんかな。そうすれば自分がにこっちの隣に行けるってそう思ったんかな」


希「うぅ……にこっち……好き。好きだよ」



 応援している。


 それはきっと言葉だけだったんだ。実際は、真姫ちゃんがにこっちち振られる。


 そう期待していたんだって、分かってしまった。





 このドス黒い感情は、消えてくれそうになかった。


◇◇


翌日

にこ「はぁ!?どういう意味よ!?」


にこ「私は真姫のことちゃん付けで呼ぶの恥ずかしいのよ!!」


真姫「いいでしょ別に!?他の人と同じ様に呼ばれるのは嫌なの!」







希「あの二人がくっついてくれて良かったわー」



絵里「希……」

絵里「無理、してない?」


希「……ねええりち」

希「ウチも、ワガママ言っても、ええんかな」




絵里「え……?」


希「今まで散々人のことを考えて生きて来た。でも、でも、今回は胸が、張り裂けそう、なんよ」



希「どうすれば、いいんかな」


希「もう、遅いのは、分かってるのに」




絵里「希……」



希「ごめん、トイレ行ってくるね」




絵里「……」


海未「最近希、元気無さそうですね?」

絵里「そうね」




海未「絵里まで元気じゃないと、私は悲しいです」

絵里「そう?」

海未「はい」

海未「元気出して下さい。あ、この前の話覚えていますか?」



海未「明後日休日ですし、出かけたいなーなんて、考えているのですが…」チラッ


 やっぱり、まだ諦めきれて、ないのよね。希は。


 でも、今しか希を振り向かせられるチャンスは。


海未「……絵里?」

絵里「え!?あ、ああなんの話?」





海未「――いえ……なんでも、ありません」


一ヶ月後





真姫「にこちゃん……ちょっと、今日って携帯持ってなかったの?」

にこ「え?持ってたけど?」

真姫「……」

にこ「え?どうしたの?」



真姫「なんでメール返してくれなかったの?」


にこ「え?あぁごめんね。マナーモードでバイブオフにしてたから気がつかなかった」


真姫「寂しかった」

にこ「だからごめんね?」



真姫「次はすぐ返して」

にこ「無理に決まってるでしょ?授業中なんて」




真姫「…どうして?」

にこ「どうしてって…あんたね…」

海未「どうしたのですか?」


真姫「……なんでもないわ」

真姫「じゃあ私先屋上行ってるから」スタスタ


にこ「あ……」

海未「…?」


にこ「なんで怒ってるんだろう…」

海未「なんだか不機嫌そうでしたが……」

にこ「だよね…」


にこ(授業中にメール返せなかったこと怒っていたのかな?)

海未「なんだか最近の真姫、素直になりましたね」


にこ「あー、うん、確かに」

海未「前とは随分印象が違いますし。前は大人っぽい感じでしたが、今は……」



にこ「子供っぽい?」

海未「…まあ、そんな感じです」

にこ「私たちより年下だから子供っぽく見えるだけなんじゃない?」



海未「うーん…」

にこ「真姫ちゃんもすぐ機嫌直すと思うし、練習始めましょう」

にこ「ええ」

◇◇



屋上

BiBi


にこ「あれ?絵里と真姫ちゃんだけ?」

絵里「突然だけど今日はユニット別にわかれて練習するわよ」



にこ「はぁ!?どうして急に!」

絵里「ここ最近練習してなかったから、そろそろ練習しないと忘れちゃうでしょ?」

にこ「別に今する必要性は…」

絵里「いいから」



絵里「言っておくけど、カップルの中に私一人って中々辛いんだからね?」



にこ「別に気なんて使わなくてもきいわよ」

にこ「絵里に対する態度が変わる訳じゃあるまいし」

絵里「まあそうね」



絵里(にこは、ね……)チラッ

真姫「」ブスー




絵里「まあそれで、私たちは屋上を使うことに決めたから」

にこ「なに勝手に決めてんのよ!」

絵里「別に構わないでしょう?」

にこ「まあ…そうだけど」


真姫「ごちゃごちゃ言ってないで早く初めましょうよ」


絵里「そうね、じゃあ柔軟から」

絵里「真姫とにこは最近サボってるんじゃないかしら?」


にこ「だ、大丈夫に決まってるでしょう?」

絵里「じゃあ座って足開いてー?」

にこ「わ、分かったわよ」



絵里「はい倒してー」

にこ「うーー、くくく、ぎぎ」

絵里「ダメね」



絵里「押すわよ」グー

にこ「あぁ…ぅぅ」

絵里「ほらほら、全然ダメよ?」




真姫(にこちゃんが、絵里に!?)

真姫「……!!!さ、触らないで!!」ギロッ



絵里「…え?」

真姫「……あ、ご、ごめんなさい」

うむ

真姫(今、私何をした?)

絵里「どうしたの?」

真姫「な、なんでもいいでしょ!!」

にこ「…真姫ちゃん?」




絵里(一瞬だけど、様子がおかしかった…?)

真姫「……」カミノケクルクル


絵里「……まあこれからは定期的にユニット練習があるかもしれないから、その時はよろしくね」



真姫「え、ええ…」

真姫(さっき…私……頭が真っ白になって…それで)



絵里「ほらにこ続きやるわよ」

にこ「うぇー、大丈夫だって」



真姫「」ギリリ



練習終了後



穂乃果「海未ちゃーんことりちゃーん早く帰ろー」


海未「全くせっかちなんですから」


ことり「ちょっと待ってー」


凛「凛とかよちんはもう帰るにゃー」

花陽「引っ張らないでー!」





にこ「……」

真姫「……」

にこ(なんか気まずい…)


真姫「ねえ…どうして今日、絵里に柔軟の時押して貰ってたの?」



にこ「どうしてって…あっちが強引にやってきただけでしょ?」



真姫「全く嫌がる素振りを見せなかったのはどうして?」

真姫「にこちゃんが嫌なら私、助けるわよ」



にこ「嫌がるって…何言ってるのよ。嫌がる理由なんてどこにもないじゃない」



真姫「……あっそ……私なんてそんな程度の存在だったのね」



にこ「えぇ?どこから解釈したらそう繋がんのよ…」



真姫「……」


にこ「最近おかしいわよ?大丈夫?」




真姫「うん……ねえ…抱きしめて?」

にこ「全く…本当急ね」ギュー

真姫「…ありがと」




真姫「私、にこちゃんと二人で居る時が一番幸せよ」


にこ「私も」


真姫「にこちゃんが居れば私はそれでいいの」

真姫「もし何かあっても、私はにこちゃんだけ見るわ。今、にこちゃんが居なくなったら私、多分死ぬから」



にこ「う、うん」



にこ(なんだか、いつもより、変というか…なんというか…重い…?)



真姫「じゃあそろそろ帰りましょうか」

ガチャ



希「あー、ごめーんにこっち!」

にこ「びっくりしたぁ」



にこ(抱きしめてるとこ見られなくて良かった…)

希「昨日貸したノート返してくれん?」



にこ「あぁ…ごめんね」

にこ「はいありがとう」




希「どういたしましてー、また何かあったら言ってな。いつでもにこっちの味方やからー。じゃあ!」




真姫「……」ギリリ



真姫(なんで…なんで希とはそんなに親しげに話すのよ。私と二人の時は、全然、笑わなかったくせに……)



にこ「全く…返すの忘れちゃうなんてやっちゃったわねー」

にこ「まあ希は優しいから何も言わないけど、色々迷惑かけちゃってるしねー」



真姫「……もし何かあったら私に相談して」


にこ「ん?」


真姫「希には相談しないで、私に相談して!」




にこ「え、え?それって」



真姫「にこちゃんが悩んで居ることがあるなら全部解決してあげる」



真姫「希より、優しくなる。もっとにこちゃんに優しくする」



にこ「う、うん…」



真姫「じゃあ私、先に帰るから」



にこ「ちょっと!ねえ!」



にこ「行っちゃった…最近様子が変ね」

ドロドロ系嫌いなはずなのに読んでしまう

すっげー楽しい

にこの家




にこ「うーん…なにがいけないんだろう……」


にこ「相談するなって言っても、真姫ちゃん本人のことを本人に相談するわけにもいかないし…やっぱり絵里と希に相談しようかな…絵里からにしよう」



にこメール「ねえ絵里、なんだか最近真姫ちゃんの様子が少しおかしい気がするんだけど、どう思う?」

絵里メール「うーん、そうねぇ。確かにそうかもしれないわ。今日もちょっとあったし」

にこメール「何かあったの?」

絵里「私がにこの柔軟の時押してたら、めちゃくちゃ睨まれて…怖かったわ」

にこメール「そんなことが…ありがとうまた今度話しましょう」



にこ「この件で真姫ちゃんは不快な思いをした。だから練習終わった後嫌がる素振り見せなかったのはなんでかなんて聞いてきたのね…」



にこ「なんで不快な思いをしたか、まではわからないわね…」




にこ「あ、メール」


真姫メール「寂しい」


にこ「真姫ちゃん?」



にこメール「大丈夫?」

俺メール「寂しい」

>>30
俺メール「大丈夫?」

真姫メール『無理』


にこメール『頑張って!』


真姫メール『うん……でも、朝まで、待てない』


にこメール『…じゃあどうしよう…』



にこ「あ、そうだ、電話すればいいんだわ」




にこ「もしもし」




真姫「………ひっぐ、うぅ、ぁぁぅ、にこ、ちゃん」



にこ「――ど、どうして泣いてんのよ!?」



真姫「寂しい。にこちゃんと離れたくない。ひっぐ、うぅ、にこちゃぁん」



にこ(一体どうしたって言うのよ…)



真姫「好き、ごめんね、辛く当たっちゃって。でも、でもにこちゃんが他の人と話しているとなんだか自分が自分じゃないような気がして、何を言っているのかわからなくなるの…ごめんね、ごめんね。でも、見捨てないで、なんでも、するから!」




にこ(な、なに!?なんでこんな…)

にこ「えっと……私が見捨てるわけないでしょ?安心して、だから泣き止んで?」


真姫「うん……」



にこ(私が、私が真姫ちゃんを支えてあげないと)



にこ「眠れそう?」



真姫「…無理かも」



にこ「そっか、じゃあこうやって話してる?」



真姫「うん」



真姫「ねえ…明日、どこか行かない?」


真姫「会いたい」



にこ「もちろん、いいわよ」


翌日


にこ「とりあえず駅集合って言ったけれどもう来てるかな?」


にこ「あ、居た」


真姫「あ……」


にこ「どうしたのよー、なんで目線落とすわけ?」


真姫「昨日は、ごめんね。あんなに取り乱しちゃって」


にこ「誰でも泣きたい時くらいあるわよ」


真姫「ありがとう。でも、なんだか最近、カッとなるというか、そうなったら自分を抑えられないというか……」



にこ「そんなこと考えないで、ポジティブに行こう?」


真姫「ええ…」



真姫「あ、そののストラップ……」


にこ「えへへ、付けて見たのよー。これいいでしょ」


真姫「うん、お揃い……えへへ」



にこ「まあ真姫ちゃんから貰ったものだし当然よね」







にこ「――このカバンには真姫ちゃんからの物しかつけないから」







真姫「ほん、と?」

にこ「ええ」



にこ「どこか行きたいところとかある?」


真姫「にこちゃんと一緒に居られればどこでもいいわ」


にこ「何よそれ…まあ私も似たようなもんだけど…でもそれが一番困るのよねー」


にこ「……あ、CDショップでも行ってみない?」


真姫「そうしたいなら私もそうしたい」

にこ「じゃあ行こー」


◇◇



CD屋

真姫「こんなところ来たの久しぶりだわ」

にこ「あれ?そうなんだ意外」


真姫「私自身はそこまでCDを買いには来ないしね。どちらかと言うと親の趣味がそのまま…て感じだから」



にこ「あーだから、最初の方はクラシックしか聴かないとか言って気取ってた訳ね」


真姫「気取ってるって何よ!」


にこ「かっこつけてる真姫ちゃんかわいー」


真姫「うるさい!」


真姫「私だって最近の曲くらいわかるわよ」


にこ「へーそうなんだー」



真姫「なによその適当な感じ」




真姫「なに見ているの?」

にこ「アイドルの新曲が出たのよねー」

真姫「あ…テレビで見たことある、気がする」

にこ「最近注目なのよー。もしかしたら紅白とかに出ちゃうかも?」

真姫「ふーん。アイドル、か」


真姫「アライズはプロのアイドルと大差ないって聞いたことがあるけれど他のスクールアイドルはどうなの?」


にこ「…うーん正直なところ、やっぱり差はあると思う。幾つもオーディション受けてそれを突破してきてる人達だからねプロってのは。勿論もうほとんど差はないって言う人もいるけどね」



真姫「やっぱり凄いのね」



真姫「…にこちゃんに取ってのアイドル、スクールアイドルっていうのは、どんなもの?」






にこ「そりゃあもちろん、夢だし、『私の存在意義』みたいなものね」






真姫「……そう」

真姫「アイドルのどんなところが好き?」

にこ「全部好きよ。見た目も歌もパフォーマンスも」


にこ「全て兼ね備えていないと一流とは言わないんだから」


真姫「むぅ」ギュッ



真姫「そんなに嬉しそうに語られると、嫉妬しちゃうんだけど」

にこ「嫉妬?アイドルに?」

真姫「そう」


にこ「流石にそれは……私が好きって言ってるのは間違ってもお近づきになれないからよ?」


にこ「これは憧れの好きであって、真姫ちゃんに向けるものとは違うよ?」



真姫「…それなら、いいけど」


真姫「じゃあ少し近いところを比較に出して、アライズのセンターの人がにこちゃんを好きって言ったらどうする?」


にこ「…そんなことは万に一つもないとはいえ、私がそんなの受け入れるわけないじゃない…」


にこ「ていうか、なんでツバサなのよ!」


真姫「好きなんでしょう?」


にこ「アイドルとしてに決まってんでしょ?」


真姫「――なら、私とµ’sどっちが好き?」


にこ「――は?」


にこ「本気で、言ってるの?」


真姫「あ…嫌、ごめん。どうかしてたわ…」



にこ「…………比べられないわよ」

真姫「え?」


にこ「µ’sは私にとってはまさに"存在理由"だもの。µ’sがあるから今の私が居るの」


にこ「そして真姫ちゃんは今の私にとってはとても大切な人。一番大切な人。でも、µ’sとは比べられない」


真姫「ごめんなさい…」


にこ「……二度とこんなこと訊かないで」


~~~♪♪

にこ「誰からメールだろ」




希メール『暇ぁー、ねえ今日どこかへ行かない?』



にこ(なんだ希か…)



にこメール「今日は用事あるからまた今度ねー」



真姫「誰から?」

にこ「……ただの迷惑メールよ」

真姫「本当…?」

にこ「うん」

にこ「さ、次はどこ行く?」






 この時になんで迷惑メールなんて言ってしまったのか、わからない。

 ただこの時に正直に話していたとしてもきっと、結果は変わらなかっただろう。

◇◇



希「んー用事かぁ……仕方ないか」



希「真姫ちゃんとデートかな」


希「…………」ギリリ



希「にこっちがダメなら……うーん、えりち"でも"誘ってみようかなぁ」



◇◇


絵里「ん?」


絵里「希からメール?」



希『ウチ暇なんやけど、どこか行かない?』


絵里「え!?」


絵里「え!?希からお誘い!?」


絵里メール『行く行く!!』

絵里「やった…今まで何度か遊びに誘ったけど、希からのお誘いは初めて…」


絵里「……今だけは希の一番になれるのよね?」


絵里「ふふ」


絵里「支度しないと!」


プルルフルルルル




絵里「海未から電話?」



絵里『もしもし』



海未『あ…ええええ絵里』



絵里『どうしたの?そんなに慌てて』




海未『あ、あの今日、用事がなければ、二人でどこか、いいいい行きませんか?』

海未ちゃん……

海未は救われそうにないな


絵里『二人で…?うーん、ごめなさい。ちょっと今日は用事があるの』



海未『あ…そ、そうですか』


絵里『また今度ね?』


海未『はい……わかり、ました』


海未『では…』



絵里「海未…急にどうしたのかしら」


絵里「"そんなこと"より、早く支度しないと」




◇◇


帰り道


真姫「今日はごめん…」

にこ「昨日はごめんの間違いでしょう?」


真姫「まあそうなんだけど」

にこ「…なんだか最近素直ね?」

真姫「うん…」

にこ「…………」

真姫「心配かけて、ごめんね」


にこ「いいわよ、別に気にしなくて。その代わり、私が何かあったらちゃんと支えなさいよ?」




真姫「ええ、絶対、支えて見せるわ」




にこ「頼もしくて何よりよ。でもまーた真姫ちゃんが泣きついて来たら私が相談なんて出来ないなー」



真姫「…も、もう泣かないわよ!」

にこ「……ごめんね、ごめんね。でも、見捨てないで、なんでも、するから!」モノマネー


にこ「…似てた?」


真姫「んもう!最っ低よ!にこちゃんなんて知らない!!」


にこ「からかっただけじゃんー、怒らないでー?」

真姫「……」


にこ「あ、あれ?」

真姫「ねえ…」

にこ「あ…」



真姫「このまま帰ったら、多分、私、また泣いちゃう」



にこ「……」


にこ「…ったく、仕方ないわねー。本当手間のかかる後輩」ギュッ




真姫「…ん、ありがと」

にこ「いつまでこうしてよっか?」

真姫「……ずっと」



にこ「ずっとって、馬鹿なの?」

真姫「馬鹿はそっちでしょ?」

にこ「やめちゃうよ?」

真姫「…ごめんなさい」

にこ「謝りすぎ…」

真姫「好き」

にこ「……私もよ」





にこ(……もういいわよね、一ヶ月だもん)


にこ「真姫ちゃん」

真姫「え?」


にこ「――んっ」チュッ


真姫「……んぐぅ」


にこ「んっ、はぁっ、んちゅ」

真姫「ちょっ……にこちゃ……んぅ」

にこ「んぁっ、んちゅ、んんぅ」



にこ「ぷはぁっ……はぁはぁ……元気、出た?」


真姫「ん…激しすぎ」

真姫「初めてだったのに」



にこ「あ、ごめん…」


にこ「でも、止まれなくなったっていうか」



真姫「ねえ――もう一回して」


にこ「いいの?」


真姫「うん」


にこ「んぅ」





真姫「はぁっ、うんぅ…んちゅ、ちゅぱ……はぁっ…ちゅぱちゅぷ」




にこ「んんんぅ……ぬちゅ…ちゅぷ、ちゅぱ」




真姫「んぁ…ひこひゃん…長い………っちゅぷ、はぁん」




にこ「ちゅぷ、ちゅっ、チュプ、っ……ぷはぁっ……はぁっはぁ…」

真姫「はぁ…はぁ…」


真姫「長いわよ…」


にこ「好き」


にこ(ヤバイ、止まれ、ない)


にこ「はぁ…はぁ…ね、ねえ、今から真姫ちゃんの家に行っていい?」



真姫「え?」


にこ「お願い。恋人らしいこと、したいな、なんて」ギュッ


真姫「え?な、何か分からないけど……う、うん」



にこ(ここまでしといて止まれるわけないじゃない…きっと真姫ちゃんもいいっていうわよね?)


◇◇



 希と遊んだ帰り道。


 真姫とにこが激しく絡み合っているところに、偶然遭遇した。

絵里「ハラショー……」




希「……あんなの見たくない。あっちいこ」



絵里「希……」



希「……そういえばあの二人ってくっ付いてからどのくらい経つんやっけ」

絵里「一ヶ月くらいじゃなかったかしら」

希「じゃあ燃え盛る時期やねえ」

絵里「でもなんだか、最近真姫の様子が変な気もするのよね……」

希「……やっぱり?」


絵里「ええ…今日ユニット練習したでしょ?そこでちょっと…」

この少しずつ手遅れになっていく感じ好き

希「えりちもなんや…」

絵里「も?」



希「いやあウチもな。今日帰る時、にこっちにノート返して貰いに行ったんやけど…そこで真姫ちゃんと二人きりでいてな…まあそこでちょっと…」



絵里「やっぱり、少し変よね。なんだか怯えているみたい」


希「うん」

希「それはそうとえりち」




希「"同性が遊びに誘う"なんていたって普通のこと、やんな?」





絵里「え?ええ、まあ」


希「そうだよね。ウチ、諦めないよ」



絵里「え……」


希「にこっちのこと、まだ好きやから。チャンスがあれば、モノにする準備は出来てるから」


希「チャンスも、作り出して見せるよ」

>>51
訂正

絵里「今日ユニット練習したでしょ」×

絵里「昨日ユニット練習したでしょ」⚪︎


希「今日帰る時」×

希「昨日帰る時」⚪︎

 それは私に言っているのか、と言いたくなった。


 ここ一ヶ月フリーの希を遊びに行くという、形でデートに誘ったりもした。


 告白すればいいじゃないかって?

 出来るわけない。



 私と二人で居る時も、いつでもにこのことを考えている人に告白なんて。



 結局、私のことなんて見ていないんだ。


 なんで、私じゃダメなの?


 なんで?希と一番長くいたのは私だし、にこなんかよりも希のことを分かってあげられる。


 なのに、なんで……なんで!!




希「なんであの時、真姫ちゃんに協力しちゃったんやろね…」




希「じゃあ、ウチ、今日は帰るね」




絵里「あ…」


 待って。



 言えなかった。


 チャンスにも出来たはずの今日。


 やっぱりチャンスすら作り出せない、モノにできなかった。

◇◇







海未「はぁ……絵里に断られてしまいました…用事があるなら仕方ないですが…ショックです」


海未「おとなしく今日は日舞の道具でも買ってくるとしますか」


海未「ん?あれは、にこと真姫」



海未「デート、ですか」


海未「幸せそうですね。羨ましい……です」



海未「私も、絵里と、あんな風に……」

絵里『ねえ海未』

海未『な、なんですか?』


絵里『手繋いでもいい?』


海未『え?はははははい!!』


絵里『海未の手あったかい。あれ、ちょっと汗書いてるんじゃない?』


海未『あ、ご、ごめんなさい!!すぐ離しますから』


絵里『ううん、私、そんな海未も好きよ?』








海未「それは反則ですよぉぉぉおおお!!!!」



海未「はっ……」


 街中で一人。

 叫んでいる少女。


 不審に思われたのは言うまでもありません。

 小さくなりながら、路地裏に逃げこみました。






海未「何をしているんです、私は…」


海未「ん…あれは」



 路地裏の向こう。

 大通りから一つはずれた道に、知っている金髪が揺れた様な気がしました。


海未「絵里?」



 路地を走り抜けると、やはりそこには見知った金髪。



 しかしその隣には、見知った二つのおさげが揺れていました。







海未「絵里……希…と。はは……なる、ほど」


海未「なんで気がつかなかったのでしょう。二人がそういう関係、だと」





海未「私の恋は、始まってすら、いなかった、なんて」


 絵里が楽しそうに笑う顔。
 それは希にのみ向けられるものでした。


 諦めるべき。




 相手がいる人を奪うほど、私は強くて卑怯な人間ではありません。

 しかし、身体は勝手に絵里と希を追いかけているのでした。




◇◇




公園



絵里(希と別れてから、すぐに帰る気にはなれないわね)



絵里(かといって、こんな公園で休んでいてもなんの意味もないんだけど)


絵里「はぁ……」

海未「……お疲れ様です」


絵里「え!?う、海未?」

海未「たまたま通りかかったらここに居たので…」




絵里「そ、そう」

海未「用事は済みましたか?」


絵里「ええ…まあ」

海未「そうですか」


 海未は少し間を置いたあと、私の隣に座ってきた。


海未「一ついいですか?」


絵里「ええ」







海未「絵里は、希と付き合っているのですか?」


絵里「え!?ど、どうしたの、急に」

海未「実は、今日見たんです。お二人が楽しそうに歩いているところ」


絵里「そう……」

絵里「ごめんね、今日は」


海未「いえ……」



絵里「私は希とは付き合ってないわ」


海未「……!?」



絵里「希には、好きな人がいるの。希がその人を見なくなるまで、私は動くことは出来ない」


海未「……それって、辛く、ないですか?」

海未「好きな人を目の前にしても、何も出来ないなんて」


絵里「ええ、そうね」



海未「……私は絵里みたいには出来そうに、ありません」




海未「目の前で好きな人が苦しんでいるのを見ていられるほど、私の心は強く、ないんです…!」

絵里「……海未?」


海未「私――絵里のことが好きです」





海未「もう苦しまないで下さい…!絵里、私じゃダメ、ですか?」





 真っ直ぐな琥珀色の瞳。

 飲み込まれてしまいそう。


 海未とのことを考える。しっかり者でみんなのリーダーになれて、でも打たれ弱いところもあって。そんなところが可愛い。


 でも、でも。





絵里「――ごめんなさい」






 きっとこれが、惚れた者の弱み、なんだろう。



百合のドロドロ展開大好きだわ

◇◇


真姫の部屋


にこ「あれ、そういえば、真姫ちゃんの部屋に来るの初めてな気がする」

真姫「確かにそうかも、大体にこちゃんの家だったしね」


にこ「ウチだと兄弟がうるさいから、私はこっちの方がいいな」ギュッ



真姫「でも、兄弟も可愛いじゃない」

にこ「二人きりの方が、いいし」


真姫「まあ、ね」


 雰囲気に飲まれている。




 なんだか、もう、真姫ちゃんの唇しか目に入らない。




 いいよね?恋人の部屋で二人きり、この雰囲気。いいのよね?



にこ「んぅ……」



 気づいたら唇を合わせていた。



真姫「もう、ひこひゃん…はら……んうぅ…ちゅぱ……はぁぁ…」


 舌を入れて、絡ませる。


にこ「んぐぅ……ちゅぷ、ぴちゃ……っはぁ……」



にこ「んんんんぅ……ぷはぁっ……」


真姫「…はぁ…はぁ……」

真姫「にこちゃんからこういうことしてくるとは、思わなかった」


にこ「そう?」

真姫「私が行動起こさなきゃかなーって思ってた」


にこ「……ねえ」


真姫「ん?」


にこ「私ね、真姫ちゃんと一番恋人らしいことしたいな……なんて」


真姫「え?どういう、こと?」


にこ「……エッチなこと、したいな、なんて」

真姫「え……エッチな、こと?」



 形式的な許可申請。


 もうここまで来たんだ、止まれるはずがない。




にこ「いいでしょ?」


 最早真姫ちゃんの反応を確かめる前に服の中に手を入れる。




真姫「え!?い、いや、それ、は……」


モニュモニュ





真姫「い、いっ…や…やめ、て」



 下着の下、少し硬くなってる場所を手で転がす。





真姫「んぅ…んっ……あっ……やめっ……て…」




にこ「気持ちいいんでしょ?もっと気持ちよくしてあげる」

 真姫ちゃんの下半身に手を伸ばす。


真姫「やめ…て…ほんっ、とにぃ……」


にこ「もう濡れてるね……」


 下着の隙間から、真姫ちゃんの秘部に向かう。そこはもう濡れていて、きっともう準備は出来てる。



 真姫ちゃんの下着の下に指を滑り込ませる。



にこ「指、入れるね」


真姫「やっ……止めて!!」バンッ


 え?

 突き飛ばされた。

 思考が追いつかない。


 肩の辺りに感じる鈍痛が真姫ちゃんがしたことのなによりの証拠だった。





にこ「真姫ちゃん……?」


真姫「うぅ……ひっぐ……ごめん」

 気持ちよすぎるから、止めてそう言うことだと思っていた。でも、それは違った。




 最初から、最初から嫌がっていたんだ。


 真姫ちゃんの涙がその証拠なんだろう。

 真姫ちゃんの顔なんて見てなくて、ただただ身体しか見ていなかった。






にこ「……ごめん」



真姫「うううぅ……ひっぐ、ひっぐ……あぅぅ」




真姫「ごめんね、怖い、怖いの」


真姫「こういうこと、わかん、なくて」




にこ「……早まった私が悪かったの。本当にごめん…」



真姫「見捨てない、で。頑張る、から。エッチなことも出来るように頑張る、から」




にこ「ごめんね、ゆっくりで、いいから」




真姫「うん…うん……!」

一時間後


真姫「もう帰るの?」


にこ「今日は、長くいる気分じゃないから」


真姫「私のせい…?」

にこ「……ううん。私のせい」



 何も知らない真姫ちゃんに私は何をした?

 無理やり犯そうとした。



 性行為は、そんなに軽々しくしていいことじゃないのに。止まれなかった。真姫ちゃんを見ていると、そういう感情が抑えられなくなった。


 最低だ。



 少なくとも今日は泊まったりする気分には、なれない。




真姫「また来てくれる、わよね?」


にこ「もちろん」


にこ「今日は、ごめん……じゃ!」


真姫「あ……」





 今日の出来事が私たちの関係に亀裂を入れたのは、間違いない。

なるほど

翌日



穂乃果「あれどうしたの?元気ないよ海未ちゃん」



海未「え?ああ……ちょっと色々…」

穂乃果「何かあったら言ってね!」


海未「はい……」



海未(穂乃果に無駄な気遣いをさせてしまいました)






海未『絵里、私、諦めませんから』


海未『絵里が振り向いてくれるまで、私、頑張ります』





海未「あんなこと言ってしまいました…」


穂乃果「あんなこと?」


海未「な、なんでもありません!!」

◇◇


三年生教室


希「にこっちー」ギュッー



にこ「な、いきなりなにすんのよ!」

希「なんだか可愛かったからついー」


にこ「ったく…」


希「あ、ねえねえこれあげるー」


にこ「ん、なにこれ」



希「お守り!悪運退散!!良運うぇるかむな素晴らしいものなんよ!」

希「にこっちのためにウチが特性で作ってあげたんよ」


にこ「あ、そうなの?まあなんだか信用出来ないけど、付けて置くわね」





 にこっちはすぐにカバンを取り出す。真姫ちゃんのカバンについていたキーホルダーやストラップとお揃いの物が幾つか付けられていた。

 そして、少し間が空いて考える素振り。


 しかし、無防備にもその横にウチのお守りを付けてくれるようだ。



 ――それ、真姫ちゃんとの大切なカバン、とかじゃないん?ふふふ。




あああ…

希「あれ?そのカバンて普段部室に置いてるやつ?確か遊び行く時にも使ってたような」

にこ「そうよ、今回はちょっとね」




 本当、優しいなぁにこっちは♪


 後はこの爆弾をいつ爆発させるか、やね。



 チャンスは自分で作らんと、巡って来ないから。



にこ「あ…ヤバ…」


希「どうしたん?」


 にこっちは携帯を取り出し、画面を見た後、すぐに額に手を添える。





にこ「メールめっちゃ来てる…」

希「迷惑メール?ダメやなぁ、変なサイトばっかり見てるんやろー?」


にこ「違うわよ!!」


にこ「これ」


 メール履歴の画面をウチに突き出してくる。




希「これ、は……」



 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。
 西木野真姫。




希「なに、これ」


にこ「全部、真姫ちゃんからのメールよ」



にこ「見てわかるでしょ?」


希「えっと、さっきは、授業中やんな?」

ヒエッ・・・

にこ「そうよ。やっちゃったわ……また真姫ちゃんが怒っちゃう」


 二人の関係は想像以上に癒着しているらしい。


 普通こんなことがあればドン引きして別れるなんてこともありえるのに、にこっちは平然としている。




希「辛く、ないの?」


にこ「まあ、多少は。でも、私が悪いところもあるしね」



真姫「……」


にこ「ま、真姫ちゃん…!?」


 ははは、流石真姫ちゃん、やね。


 授業合間の十分休みにまで三年生教室まで来るなんて。





真姫「メール……」

にこ「ご、ごめん…授業中寝ちゃってて…」



真姫「私のこと好きじゃなくなったの……?」ギロッ




真姫「やっぱり、昨日のことが……?」ジワッ




にこ「ち、違うの!!」

にこ「違うから、ね?泣かないで」





 傍目から見ていて、とても面倒くさそうやね。

 正直、ウチだったら耐えられないわ。




真姫「それに……」キッッ



希「う……や、やっほー」


 こっわー。

真姫「どうしてメールも返してくれないで、希と話しているのよ……」


にこ「いや、これは……」




希「にこっちやって、ずっと暇なわけやないんやから、仕方ないんじゃない?」




真姫「うっさいわね……部外者は、黙っててよ……」




 う……。



キーンコーンカーンコーン




真姫「あ、また来るわ」



にこ「……はぁ」

希「大丈夫?」

にこ「まあ、なんとか」



にこ「真姫ちゃんがごめんね?」


希「いいよいいよ、気にしてない」


にこ「私の、せいだから。全部私が悪いから。本当、ごめん」


希「にこっち……?」

◇◇


放課後

BiBi


真姫「……」

にこ「……」


 にこちゃんとは喧嘩っていう形になっちゃったの、かな。

 私が悪い、わよね。


 謝らなきゃ。私に魅力が足りないから?エッチなことさせてあげなかったから?

 どうすれば。





絵里「…あれ」

絵里(なんだかありないほど、ピリピリしているのは気のせい?)


真姫「にこちゃん柔軟――」




にこ「――絵里ー柔軟しましょう」


絵里「え、ええ。分かったわ」



真姫「えっ……?なん、で?」

 にこちゃんが、自分から絵里に…?

 そんな、嫌、嫌だよ。


 にこちゃんに触れないで、私の、私だけの……!



真姫「うぅ………」



絵里「え…?真……姫?」


にこ「どうしたのよー、早く押してよ絵里ー」


 にこちゃんがこっちを見るより早く、私は駆け出していた。

◇◇

音楽室

Lily White



凛「りんりんりんがべー」


海未「どうして日本人読みになるのですか!もっと、舌を巻いて!」

凛「りんがべー」

海未「はぁ……」


凛「無理だよー!英語苦手だもん!!別にこのままでも大丈夫でしょ?」

希「まあ、凛ちゃんらしさが出てていいんやない?」


凛「大体なんで凛の歌に英語入れるんだろー、海未ちゃんたらー」





海未「はぁ……じゃあ休憩しましょうか」


凛「水飲んでくるーっ」



希「あはは……元気、やね」

海未「そうですねー」

海未「希、ちょっといいですか」

希「ん?」


海未「負けませんから」

希「え、な、なにが?」


海未「現時点では負けているかもしれませんが、絶対、絶対、あなたには、負けません」




海未「私も水を飲んできます」


希「あ……」



希「水筒なら、ここにあるのに……」


希「なんやったんやろ」


希「……胸…?」


希「いやいや、流石にいきなり15cmくらい大きくなるなんてありえないし……」



希「うーん」



ガチャ



真姫「あ、の、希……」


希「ん?真姫ちゃん、どうしたん?」


 目が合いそうになるとすぐに目を逸らした。


 泣いてた……?


真姫「ごめん、ここリリホワが使ってたの忘れてた」


真姫「じゃあ」


希「待って」ガシッ




希「相談、乗ろうか?」


真姫「希は…いや…」


希「そっか、でも楽になるかもしれんよ?」


希「協力したいとも思うから、ね?」


真姫「……分かった」




 敵情視察。大切なことやん♪

◇◇



空き教室


にこ「あ……」


真姫「……」



 あの後、希が真姫ちゃんをここに連れて来たらしい。

 絵里の話によると、ここで解消した方がいいから、とのこと。



 きっと絵里と希が協力してくれたんだ。



真姫「……ねえ、私のこと、好き?」



にこ「……好きよ。だけど」




にこ「真姫ちゃん、最近変わったっていうか…」


真姫「え……」

にこ「なんにも私の自由にさせてくれないし、信頼、されてないのかなって。それに、なんだかいつもみたいに、笑わない、から」



にこ「私と居ても、楽しくないのかなって」



真姫「違う、そんなんじゃない!」

真姫「どうして、どうして分かってくれないの…!」



真姫「エッチなことさせて上げなかったから!?」


真姫「どうして、どうして……好きよ、私は……!」




 どうして、だろう。

 真姫ちゃんのこと、好きなのに。好きって言われても、あんまり感じるものがない、や。




 疲れちゃった、のかな。

おおもう……

にこ「"真姫"……もう私達……」



真姫「いや!!!いやぁ!!聞きたくないっ!!!!」



 そんな真姫ちゃんを見てたら、ここから先の言葉は出てこなかった。


 やっぱり、まだ、好き、だから。

 きっとさっきまでのは気の迷い。

 こんな状態で、真姫ちゃんを放っておけない。普通の状態に戻るまで、私が支えてあげないと。




にこ「まーきちゃん!!なに、勘違いしてるのぉ?私は真姫ちゃんのことさ、一番大切だから、ね?泣きやんで?」




真姫「本当?」

にこ「ええ」ギュッ


 きっと真姫ちゃんを傷つけた。

 最低だ。私は。
 

◇◇


希「ふふ……今回は逃れた、かぁ…」


希「でも、チャンスは近いうちに巡って来そう、やね」



希「それにしても、本当、真姫ちゃんが弱い娘で、助かった、かもねー」




希「真姫ちゃんの話を聞いて、大体分かったし今日から本気ださんとね♪」

◇◇


希の家


希「さ、爆弾爆弾っと」



希メール『大丈夫やった?』


希「お、返信早いやん」


にこメール『まあ、うん』

希メール『そっか。良かった。辛いこととかない?』

にこ『……私なんかが、真姫ちゃんの恋人で、いいのかな』



希「ふふ…」


希メール『何かあったん?』


にこメール『明日の朝、話を聞いてくれない?希にしか話せなくって……』

希メール『うん…分かったええよ』




希メール『あ、ウチがあげたお守りつけてる?つけてくれてたら嬉しいなぁー。もしかしたら解決するかもー?』


にこメール『まあつけてるけど、それで解決したらいいんだけどねぇ』






希「ふふ……ノーアウト満塁、やね」




希「真姫ちゃんも誘っておこー」


希「ウチがにこっちと会う三十分後くらいがいいかな?」


◇◇

翌日 朝 部室



希「にこっち、おはよう。早かったね」


 扉は少し開けておいて…と。



にこ「待たせる訳にも行かないし」


希「…で、話って?」



にこ「昨日は話し合いの場を作ってくれて、ありがと」


希「いいっていいって」

にこ「……私、真姫ちゃんに酷いこと、した」



にこ「嫌がってる真姫ちゃんに、なんにも知らない真姫ちゃんに乱暴した」



にこ「私、私なにやってるんだろう……!!」

 真姫ちゃんの言ってた『エッチなことさせてあげなかった』ってのは、ここやね。


希「それは、性的なこと?」


にこ「っ……ええ……軽々しくしていいこと、じゃないのに」



にこ「傷つけちゃった…!それに私と居ると真姫ちゃんが不幸になるんじゃないかって……」



にこ「どんどん、真姫ちゃんが真姫ちゃんじゃなくなるような、そんな感じが、して!!!」




にこ「私がっ!!!!私のせいなのっ!!!!全部全部!!全部全部っ!!!」


にこ「私が変なことしたからっ!!」





希「……にこっち、多分疲れてるんやないかな。真姫ちゃんとの生活に」


にこ「そ、そんなこと、ない!」



希「大丈夫」ギュッ



にこ「ふぇ……」


希「安心して、いいから」



にこ「うぅ…希……」ギュッ





 あー、かわいいなぁ。




 こんな可愛いにこっちを独り占めにするなんて、羨ましいなぁ。




 ――ねえ?まーきちゃん?




真姫「……っ!!!!」





 ナイスタイミーング。

 扉開けてて良かった。



 ありゃ、もうどこかへ行ったみたい、やね。


 時間指定してもやっぱ早めに来るなんて、真面目やね。



希「……にこっち、真姫ちゃんと距離置いてみるってのは、どう?」


にこ「え……そんなこと、ダメ…」


希「そっか、にこっちの好きなようにしたらええよ。きっと、良い結果になるから」



 にこっちの隙を見る。その隙ににこっちの携帯を抜き取る。




にこ「じゃあ、私行くから」


希「またねー」



ガチャ




希「ふぅ、後は携帯電話をにこっちのカバンのそばに置いて…と」


希「真姫ちゃんなら次の時間にでも部室に来るはず。そしたら、この携帯にもカバンにも……」





希「おっけー、爆弾設置かんりょー」

ドキドキする

いや~物語作るのがうまい!
なぜか涙ぐみながらすっごいドキドキしてるよ

◇◇


 朝のホームルームが終わった直後、私は駆けていた。にこちゃんと希が二人きりで、居た部室目掛けて、だ。




 なんで、なんで、あんなことをしていたのか。もしかしたら何かあるのではないか。そんな勘が働いた。



ガチャ



真姫「誰もいない、わね」



真姫「あれ、にこちゃんのカバンが机の上にのっかってる?」


真姫「珍しいわね――ん?なに、このお守り」


真姫「いつだったか、にこちゃん、このカバンには私があげたものしか付けないって…」




真姫「――私、こんなのあげたこと…」

 にこちゃんに対する疑心が私の中で少しずつ膨らんでいった。




真姫「これは、にこちゃんの携帯?」


 携帯を手放して置いておくなんて、無警戒すぎる。



真姫「……見ても、いいわよね。別に何も、ないだろうし」


真姫「恋人だし」


真姫「恋人……だもん」





真姫「パスワード…か。にこちゃんの誕生日とか?」




真姫「ヒットしちゃったわ……簡単すぎるわよ」



 パスワードを無事アンロックした後、私は携帯では定番のメール履歴へと進む。

真姫「ここ、かな?」


 メールBOXを開く。



真姫「えっ……希……?」


 メールBOXには希が私と同じくらいの頻度でメールをやりとりしている様子が記録されていた。

 とても、楽しそう。



 なんで、こんなのって…。



 その中にはさっきの見慣れないお守りのこともメールに書いてあった。



にこ『――真姫ちゃんからの物しかつけないから』






真姫「っ……!!!!嘘、つき。嘘つき!嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきぃ!!!!」



 カバンについていた希のお守りを力づくで引きちぎる。

真姫「はぁっ…はぁっ…」



 ここまで何回もメールをやりとりして、しかも朝のこと。



 携帯の中を調べれば調べるたびにこちゃんの周りには希が付いて回っていた。




真姫「朝見たのは、なに?」

真姫「嫌だ……朝、にこちゃんと希……」






 さっき部室では何が起きていた?


 ――にこちゃんと希が抱き合っていた。


真姫「いやぁぁあああああっ!!!」


 にこちゃんが?希に?

 嘘、嘘、嘘。




 メールを読み進めて行くと、先日にこちゃんと二人で出かけた時のメールもあった。


 これって……。


にこ『ただの迷惑メールよ』





真姫「あ……あ……なんで、どう、して?」

真姫「なんで、迷惑メール、なんて言ったの?」



 離れていく?にこちゃんが?私から?

 嫌だ、嫌だ、そんなこと、したら、おかしくなっちゃう。




真姫「うあああああああっ!!!」

のんたんこええ

◇◇



真姫「希っ……!!」


希「ん?」


真姫「どういう、つもり!?」

希「なにが?」


真姫「どういうつもりかって聞いてんのよ!!!」


希「……だからなにが?」




真姫「とぼけないで!私の私のにこちゃんを奪おうとしてるくせに!!」




希「んー?なんのこと?」



真姫「朝の部室でなにやってたの!?」




希「そういえば真姫ちゃんと目が合ったっけ……」

真姫「私にアレを見せるつもりで呼んだの?」



希「いやー違うんやけど、成り行きっていうか」



真姫「ふざけないでよ……にこちゃんの恋人は私なの!!手を出さないで!?触らないで!!私の、私だけの人なの!!!」


希「……勘弁してくれない?あの朝だけなんよ。あんなことしたの。本当ごめんな。他ににこっちに必要以上に絡んだりもしてないし、メールだってそんなにしてな――」




真姫「嘘よ…!!」


 私はにこちゃんの携帯を取り出し、希に突きつける。


真姫「許さないわよ…!人の恋人奪おうとして、なにが楽しいのよっ!!!」




希「あら……」


真姫「これはなに?何度も何度もメールして、電話までして!そんなににこちゃんとの会話が楽しい?しかも遊びにも誘って。恋人がいる人に普通そんなことする!?」


希「うーん……"同性"にメールすること、"同性"を遊びに誘うこと。これがおかしいこと?」




真姫「っ…………で、でも!!」

希「にこっちのこと、信用してないんや?」




真姫「な、なにを…」




希「だってそうやない?普通信用してたら人の携帯なんて見ないやん?」




真姫「ぁ…………ち、違う!違う!違う違う違う違う違うっ!!!!!」




希「信用してるなら束縛なんてしないし、授業中もメールなんて送り続けないよね?」




真姫「好きなんだから、当たり前よ」



希「好きっていうのは建前で、本当は怖いだけなんやない?にこちゃんが他の人と話すのが、他の人と関係が出来るのが」





真姫「っ……」

希「真姫ちゃんさ、第三者から見てて、ちょっとワガママなんやない?自分の意見だけ通して、にこっちの都合なんて考えない」




希「――女が束縛して色々要求とかするのに、男がエッチなこと要求してきたら断る、みたいな」






真姫「っ…………!!!!」


真姫「ち、ちが……それ、は」





希「まあただの例え話やけどね」


希「でもそんなことがなければ、にこっちがウチに真姫ちゃんのことについて相談するなんてこと起こらないわけやん?」


真姫「そう…だん?」

真姫「私のこと、で?」




希「色々、悩んでたみたいよ」



真姫「ぁ……あ、ウソ…」

 力が入らない。目眩がする。息が苦しい。

 私がワガママばかり言ってたから、にこちゃんに無理、させたんだ。それが無ければ希になびくことなんて無かった。



希「じゃあ、ウチ、行くわ」



 

真姫「嫌、いやよ……」


真姫「……やっぱり、私が悪いのよね。魅力がないから、エッチなこともさせてあげずに、私は自分のワガママばっかり…」



真姫「ふふ…そうよね」


真姫「いいこと思いついたわ」


真姫「最初から受け入れれば、良かったんだ」



真姫「にこちゃんの為なら、別に私なんかどうなっても。ふふふ」



真姫「あは」






超期待

いいぞー

◇◇





海未「えーり」


絵里「うわ、どうしたの?」


海未「一緒にお昼でもどうですか?」

絵里「え、ええ…じゃあ」



 希もいないしね。



海未「あの、今日の放課後一緒に歌詞作り手伝ってもらえ、ませんか?」


絵里「え…でも、真姫は…?」



海未「絵里がいると、捗る、かなと思いまして」




海未「ダメ、ですか?」ウルッ

絵里「あ、うん。分かった。うん」


 私って、押しに弱いのかしら。

◇◇

屋上

真姫「にこちゃん……」


 屋上の建物に寄りかかる。


真姫「準備するから、にこちゃんが来たら、すぐ出来るよう、に」



真姫「えへへ。待っててね」



真姫「どうやる、んだろ」


真姫「とりあえず、触ってみよ…」



  にこちゃんにやられそうになったように、下腹部に手を伸ばす。


真姫「でも、胸も触った方がいいのかな。……わかんないわよ…」





 右手はそのまま下腹部へ。左手は胸へと向かわせた。


真姫「んっ………んぅぅ…にこちゃん……」モニュモニュ




真姫「ちょっと…湿ってきた?これでいいのよ、ね?」



 胸を弄ってたら、下腹部に湿り気を感じた。これでいいのか分からないけれど、やるしかない。


真姫「頑張るわ、私」


真姫「ふぁっぁ……この上のとこ、気持ち、いぃ」クチュクチュ


真姫「んんんぅっ………あんまり、濡れ、ない。もっと、もっと」


真姫「ぁぁっ、もっと、もっと、これじゃにこちゃん、振り向いて、くれないぃ」クチュクチュ


真姫「ふぁっ…これで、いい、のかなぁっ。んんんぅっ……」


真姫「あ……いい、かな。結構濡れて、きた?……」



ガチャ

◇◇


にこ「授業中のメールなんだったのかしら」



 何故か携帯を部室に置いてきてしまった様で、すぐに取りに行った。

 それは2時間目が終わった後のことで、すでにそこにはメールが来ていた。




真姫メール『今日放課後、練習始まる前、屋上に来て』



にこ「言われるがままに屋上来ちゃったけど」

にこ「誰もいないじゃない」




真姫「――にこちゃん」


にこ「え?真姫、ちゃん?」

真姫「こっちこっち」


 真姫ちゃんの声が聞こえたのは物陰の奥。


にこ「なんでこんなとこに――え?」

 物陰の奥。
 真姫ちゃんが居た。







 ――下着を履いていないスカートをめくりあげながら。


にこ「な、なに、してるのよ」


真姫「にこちゃん、私"がんばった"よ?」


真姫「ほら、こんなに濡れたのよ。にこちゃんとエッチなことしよう、ってそう思って」



 下半身を露出させた真姫ちゃんは、秘部を開いて私に見せてくる。

 直視は出来なかったが、確かに濡れていることは確認できた。




にこ「あ……あ…」



 なにをしている?目の前の真姫ちゃん、は。


 頑張る?



 頑張らせてしまった?



 違う、そうじゃない。頑張らせちゃ、ダメなのに。こういうことは相手に頑張らせたら……!

真姫「朝の部室で、希と一緒に居たのは見なかったことにするから」



 見られて、た…?



真姫「希から貰ったお守りも見なかったことにする」


にこ「あ、あれは、仕方なく…!」



真姫「……希と、あんなに楽しそうにメールしているのに!?相談なんかもしているのに!?」



にこ「なんで、私が希とメールしてたこと、知ってるの?」


真姫「携帯を……」


にこ「見たの?」



真姫「ごめん……でもにこちゃんが好き、だから。でもにこちゃんは私のこと好きなのか、わからな、くて」

真姫「……前に私言ったじゃない!相談は希にしないでって!!」



にこ「……」


真姫「ねえ、なんで私と遊んでいる時、CDショップに居た時、迷惑メールだなんて言ったの…?」


にこ「っ……それは」

真姫「なに?それはなに?なにか良い弁解でもあるの?ねえ教えてよ!!」

にこ「……」


真姫「そういうことも、全部、見なかったことにする、から」



真姫「私、これからはにこちゃんのことしか考えないから。にこちゃんのしたいことなら全部してあげる。全部全部、だからだから」






真姫「――ね?気持いいことしよ?」


 真姫ちゃんは泣いていた。

 私が希とメールだったり、必要以上親しくしたせいで。泣かせてしまった。また泣かせてしまった。



真姫「エッチなこと、私にいっぱい、していいから」



真姫「頑張るから。にこちゃんがしたいこと全部させて、あげるから」ポロポロ



にこ(震えてる……)



真姫「なんとか言ってよ……」



真姫「ほら、見て?こんなにぐちょぐちょになったよ?私の大事なところ?ね?準備オッケーだから」




真姫「めちゃくちゃにしてもいいから!にこちゃんになら、いいからぁっ!!!」

真姫「だから、また私と――」



にこ「――ごめん」





真姫「え……」


 なんにも知らなかった真姫ちゃんをこんなに、してしまった。純粋だった真姫ちゃんにこんな淫らなことをさせてしまった。

 壊してしまった。

 私なんかが、一緒に居る資格なんて、ない。


にこ「ごめんね、こんなことまでさせて、私のせい」


真姫「違う、違う…全部私が望んでいるの!」

 何度も泣かせた。今だって泣かせている。



 私といると――不幸になる。



にこ「前は言えなかったけど、"真姫"」



真姫「ちゃん…ちゃんて付けてよ」

にこ「……真姫…私たち」


真姫「ねえっ……!」


 その先を言おうとした時、真姫が飛びついてきた。




真姫「んぐぅっ……言わへなひんらからぁっ……ちゅぷっ…ちゅぱ、んんぅ、チュル、っはぁ」


 飛びついて来た真姫ちゃんに強引に唇を唇で塞がれる。
 舌も絡みつかせてくる。でも、涙が私の口元に垂れて来るんだ。





 私はそっと真姫ちゃんの肩を押して距離を取る。

真姫「な、なにしてるの?エッチなことしようよ!?ねえ、ねえっ……!!」



真姫「ね?ね?もうぐちょぐちょだから、大丈夫だから!!!」



 真姫ちゃんは私の手を取って、自身の秘部にあてがう。



真姫「ほら、でしょ……?弄って、いいよ?ね?ね?」


 出来ないよ。だって。





 ――もう濡れてないよ?真姫ちゃん。


 無理してるって、証拠だよ。


 もう、終わりにしようか。





にこ「ねえ"真姫"……もう別れよう?」

なんか心が痛むのにスクロールの手が止まらない

いいねぇ

いいね

死人出そうですね…

こりゃ真姫ちゃん自殺ルートですかね点

こういう雰囲気たまらない

◇◇


希「ふふ…ほーむらーん」




◇◇


放課後 部室


絵里「ここは、こうがいいんじゃない?」


海未「あ!うーん……確かにそうかもしれません。ならここはこうして…」



海未「絵里と一緒だと捗りますね」ニコッ


絵里「そ、そう、ね」



 な、なんだか最近海未が積極的というかなんというか……。


絵里(一度告白、されてるのよ、ね……)





絵里(チャンスは、モノにするもの……)

海未「絵里…そんなに見ないで下さい。恥ずかしいです……」



絵里(私も、怯えてばかりじゃダメよね)

絵里「ご、ごめん」


海未「絵里、やっぱり私絵里のことが諦められなく――」


絵里「……海未。私も、頑張ってみる、わ」



海未「え……」


絵里「海未を見ていたら、勇気が貰えたっていうか」


絵里「私がこんなこと決心したのは、海未のおかげよ。海未が私に対して、真っ直ぐぶつかってくれるから」


海未「それは、のぞ――」



ガチャ

まき→にこ←のぞ←えり←うみか
五人だと少なくとも一人あぶれちゃうな…でも読んじゃう
こういうの待ってた期待

希「やっほー」



希「あ、ここって歌詞作る場所やったっけ。ごめんな~邪魔して♪」

絵里「希……なんだかテンション高いわね?」


希「そりゃあもちろん!!!」




希「――チャンスが巡って来たんやもん」





絵里「え……」



 嫌な、予感がした。

 激しく嫌な予感。


希「後はモノにするだけやん。えりちのおかげ、や」


希「背中押してくれて、ありがと」




絵里「え……それって」

絵里「海未……ちょっと、席を外して、もらえる?」


海未「……わかりました」


ガチャ

希「どうしたん?海未ちゃん外にやって」




 私が立ち止まっている間に、希は進んでいた?自らの目標のために。それが誰かのモノだったとしても。

 チャンスが巡ってきた。それは、やっぱり。





絵里「――にこと、真姫、どうなったの?」



希「んー、別れたみたいよ」





 やっぱ、り。

 希を止める為の鎖はもう無い。

絵里(希が……希が手の届かない所へ、行って、しまう)



絵里(嫌…いやぁ……)


 考えただけで涙が出てきた。

 いずれこうなることは分かっていたはずなのに、どうして今まで行動出来なかったのか。



希「ちょ、なんで泣いてるん?あの二人が別れたのがそんなに辛かった?」


絵里「違う、の……」


絵里(今しか、今言うしか)

絵里「希……話が、あるの」

希「うん……」


絵里「私、私ね、希のことがずっと――」







希「――ねえ、先にいい?」


絵里「え…?」

希「――ウチ、にこっちのこと『大好き』なんよ」





絵里「ぁ……」


希「これを聞いて、何か言うことある?」

絵里「っ………!!無……い…です」








希「そっか。今まで支えてくれてありがとね。『好きよ』えりち」





希「……"じゃあね"」


ガチャ


 嘘、でしょ。


 言わせてすら、貰えない。なんて。



 希の中に私は、いないんだって。そう本人から宣言、されてしまった。現実を突きつけられて、しまった。





絵里「うぅ……うあぁぁぁぁ!!」

◇◇

同時刻 部室前

海未「希がにこのことが好き……?」




海未「そういうこと、だったんですね」


ガチャ


希「盗み聴きは良くないよー?」


海未「の、希……」



海未「それについては、謝ります」


海未「どうして、どうして絵里に何も言わせてあげなかったのですか?」




希「……えりちには海未ちゃんがおるやろ?」


これどういう結末になるんや…想像つかないなすげえ

いいね
続きが楽しみです

鮮血の結末だけは...

海未「気づいてた、んですか」


希「負けないって言われてから少し後にね」

希「ウチに告白さえしなければ、まだ海未ちゃんにもチャンスはある」



海未「そんな、そんなことで……絵里を傷つけたんですか……!!」


希「後は、海未ちゃんが癒してあげて?」


海未「最低です……!あなたは…変わってしまいました」





希「お互い様、でしょ?」


希「ウチ、もう行くね」


スタスタ

絵里「うぁぁぁぁっ」



海未「……くっ…」


 好きな人が苦しんでいる声を聞いているのはなによりも苦痛でした。





ガチャ



海未「絵里…」


絵里「うぁっ……えっぐ……海未…」


海未「泣かないで下さい、好きな人に泣かれると、私も、苦しいです」ギュッ



絵里「だって…だってぇ」




 そこには生徒会長の面影など少しも残っていませんでした。

 綺麗な顔をぐちゃぐちゃにして、まるで赤子の様に泣きじゃくる絵里。

面白い

少女漫画を読んでるようだ
面白い

海未「希じゃないと、ダメですか?私が支えます。絵里が希を忘れられるまで。それじゃ、ダメですか?」



絵里「……」



 もう絵里は声も上げません。ひたすらに虚ろに、虚ろにあるだけ。



海未「絵里…私ならあなたのそばにいられます。何があっても嫌いになんてなりません?ね?辛かったですよね?」



絵里「……」


海未「答えて、下さい、絵里ぃ…」


海未「もう辛いことはやめましょう?辛いことばかりじゃないですか。絵里が絵里がおかしくなっちゃいます。ねえ絵里」




 いつまでも虚ろな絵里。私の声など聞こえてない、かのように希が居た場所を見つめている。

海未「絵里……んぅ……ちゅっ…んんぅ」



 何をしても反応しない絵里。


 そして私は、絵里にキスをした。
 それはとても背徳的で、それはいけない、こと。



 これならこれなら反応してくれるはず、なんです。


 嫌なら、嫌、と。



絵里「……」



海未「うぅ……絵里……こっちを見て下さい。絵里……私、あなたのことが好きなんです。どうすればいいですか?」




海未「どうすれば、私を見てくれますか?」

海未「どうすれば、そばに居てくれますか?」


海未「どうすれば、そばに置いて貰えますか?」




海未「教えて、下さい……んちゅ……ン……ぁ…ちゅぷッ」

海未「えへへ、私ファーストキスなんです」

 好きな相手と、自分からとはいえ口付けを交わす。至上の時間のはずなんです。そう至上の時間のはずなのに。




 ――どうしてこんなにも涙が出るんでしょう。





海未「っ……!!希は、もういないんですよっ…!!なんで、なんで、絵里……!」





 答えない絵里に私は自分の感情をぶつけます。わかっているのに、分かっているはずなのに。自分に勝ち目がないなんて。



海未「んはぁっ……ちゅ………ッ、んぁ……」



海未「何か、何か言って下さい…。何か言ってくれないと、私まで、おかしくなっちゃいます…」



海未「嫌なら、嫌なら嫌って言って下さい…!」

海未「んんぅッ……はぁっ、絵里、絵里ぃ」




 希、あなたがここまで強い人だなんて思いませんでした。

 私が一瞬でも勝とうだなんておこがましいことだったのかもしれません。


 絵里をこんなにしてしまうほど、あなたの存在は、大きかった、のですね。




 その時、部室に二つゴムが置いてあるのを見つけました。






海未(希、じゃないとですか……。なら、私が……私が希になれば、いい?)


 ゴムを手に取り、希がやってる様に二つおさげを作ります。


 いつかのPV撮影の時、髪型を同じにしたら区別が付かなくなる。そう言われたのを、思い出したからです。


絵里「うぅぅ……希ぃ……」


 しばらく虚ろにあった絵里が、久しく言葉を口にしました。それはきっと愛する人の名前。



海未「え……えりち」




絵里「え……」


海未「どうしたん?早く泣きやんで?」





 すぐに泣きやんでくれた。

 抱きついてくれた。


 ああ……私は、自分を捨てればいいんですね。希のマネをすればいいんですね。


 絵里が抱きついてくれている、絵里が求めてくれている。それなのに、涙は止まりそうにありませんでした。

 

◇◇


真姫の家



 世界が灰色に見えた。

 にこちゃんがいない世界はどれもこれも暗く淀んでいる。



真姫「えへへ……にこちゃん、好きだよ」


 目の前にはにこちゃんがいる。そうきっといるんだ。


 でもなんでだろう。なんで、にこちゃんが目の前にいるはずなのに灰色なんだろう。


真姫「好き」


真姫「にこちゃんは?」


 居もしない相手に対する問い。返ってくるはずがなかった。



真姫「聞こえないよ?にこちゃん」


 それでも私は虚空に向かって問いかけ続けた。


翌日




希「真姫ちゃんは休み、と」

希「まあ当然やね」




希「さて、どう攻めて行こうか…」



にこ「希、ちょっと話があるんだけど」



 全部がウチに良い方向に進んでる気がするわ♪

 にこっちの性格、ウチ良くわかってるつもり、だよ?


 押しに弱いって結構致命的だと、思うんよ。

 さあ頑張れウチ。

◇◇


空き教室





 希には全部話さなきゃ。

 真姫から聞いたことだけど、あの子が私に告白出来たのは希が協力してくれたおかげ、らしい。


 楽しい一ヶ月をくれたのは希のおかげでもあるんだ。



にこ「あの、希」


にこ「色々、ありがと」




 あれ、なんでだろ。

 なんか、目が熱い?


にこ「真姫のこと導いてくれたり、私の相談乗ってくれたり、本当に本当に」



 なんで、なんでこんなに目が熱い?



にこ「ありが、と――」





希「」ギュッ

ヤバイなぜかニヤニヤが止まらない
のんたんは少し少女漫画のヒールっぼいな

 え……?なに?なんなの?


 なんで、希?


にこ「ど、どうした、の?」

希「泣いてもいいんよ?」

希「辛いこともあったよね?」



にこ「止めて……そんなこと、しないで、本当に、泣いちゃう、から」


希「ウチには好きなだけ、甘えてくれてもいいから。……ね?」


 まるで母親のような抱擁感。
 安心した。ここでなら私がどうなっても、きっと大丈夫。


にこ「う……ぅ……うぅうぅぅ」




希「よしよし」

にこ「希ぃ……」


 真姫の人格を危うく変えてしまいそうになった馬鹿な自分への涙。


 あの楽しかった日々を思いだしたくなかった。――それはもう今の私にとって苦痛でしかない。


 一ヶ月前までの楽しそうに笑う真姫と、昨日の真姫。その対比。


 私がそばにいることで、あの人を変えてしまった。おかしくしてしまった。


 償いなんて、出来るものじゃない。






 ――早く違う楽しいことで、上書き、したい。

にこ「私のせいで、真姫を壊しちゃった。ごめん、ごめん。私の、私のせいで!!!」


希「大丈夫、大丈夫だから」


にこ「真姫の顔を思い出すたびに辛くなるの。胸が苦しくなるの、どうしよう、どうしよう!」


にこ「忘れなきゃ、忘れないとなのに」


にこ「苦しい、苦しいよぉ!!」

にこ「希ぃ……」




希「うん……大丈夫、大丈夫やから。ウチがついてるから」

今のところ希が一番最低だな 次点でにこ?

◇◇


希「落ちついた?」


にこ「ええ……」

希「良かった」




希「――ねえ、ウチな、好きな人がおるんよ」


にこ「え?」

希「相談乗ってくれる?」




にこ「なんで、今。失敗した直後の私なのよ?それでも、いいの?」



希「いいんよ」

希「でね、ウチの好きな人――目の前におるんよ」


にこ「え……?」キョロキョロ



希「――にこっち、大好き」




 希の甘美な囁きは私の脳を満たしていった。

いいねこういうの大好き

◇◇


3日後

非常階段


絵里「ねえ希…?」


海未「は――なあに?」


絵里「好きー」

海未「うちもやでー」



 ――希がにこと恋仲になった、と聞いたのは2日前のことでした。




 それを聞いた瞬間から、現実逃避をするように絵里は私を求めてきました。

 正確には、東條希、という名の園田海未を。



 二人きりになると、『希ごっこ』をしよう、と毎回のように誘って来ます。

 希のテンションも、エセ関西弁も、最初は恥ずかしかったですが、すぐに慣れました。


 きっとスクールアイドルとして活動してきた成果、ですね。



 幸い二人きり以外の時はいつもの絵里。いつもの私、ということで通っています。



 ただ私が東條希に成っていない時、絵里は前のように笑わなくなりました。希とも話すことはない様に見えました。






絵里「ねえ、希今度どこか行く?」


海未「いいね、えりちとだったらどこでもええよ♪」

絵里「ねえ、希。キスしよぉ?」


海未「うん…ええよ」


絵里「んちゅ……ちゅる、っちゅっぅ……ぐちゅ……はぁっ、ッぁ」


絵里「のぞみぃ……のぞみぃ」


海未「んぁっ……ちゅぷっ、っちゅぁっ」




 キスの最中も、私のことなんて全く目に入っていないようでした。キスをしているのは私ではなく、希だとそう自身の中で変換して。




 私はこれでいいんです。

 私という人間を求めてくれなくても、東條希というフィルターを通して求めてくれれば。

 

 私はきっと――幸せなんです。







穂乃果「むむ……」

◇◇
屋上

希「にこっち、顔についてるよー?」

にこ「あ、ありがと」


希「かわいいなぁ」


にこ「からかわないでよ!」


にこ「……ねえ、真姫は今日も休み?」

希「……気になるん?」


にこ「µ’sの仲間、だし」

希「そう、よね」


にこ「やっぱり私のせいで――」

 

希「そんなことないよ」





にこ「でも、でも、これ、見て」


にこにーはおかしくしたからこそ、責任取るべきだろ
いや、その事実に耐えきれなくて希に逃避してるのは分かるけどさ



穂乃果ちゃんもそこで登場か…

穂乃果ちゃんみんなを救ってくれるかながんばれ

 にこっちはいつだったかと同じように、メール履歴をウチに見せてくる。


 ――そこは真姫ちゃんからのメールで埋め尽くされていた。

にこ「私が…私のせいなのよ。ダメ。ごめん。ごめん」




希「真姫ちゃん……いつまで、にこっちを縛れば気がすむん…」





にこ「私のせい、真姫がこうなったのも全部、全部っ!!!!!」


にこ「ごめん、ごめんね真姫ちゃん。ごめんね」



にこ「ごめん、ごめん、ごめん、ごめんごめん…」


にこ「私が、責任とらなきゃ」


にこ「責任、責任、とら、なきゃ…」


 焦点が定まらない目で、頭を抱えて激しく振っている。まるで言霊を発して呪術でもしているかのようだ。

真姫は自爆だろ
元々狂ってたし

希「真姫ちゃんが落ちつくまでそっとしておいてあげよう?」




希「電話とかは?」

にこ「くるよ…」

希「出ない方がええね」



 これはにこっちと真姫ちゃんの関係がどうとかじゃなくて、単純ににこっちが、壊れかけて来ている、から。



 完全に精神がやられたら……そんなことはさせない。

 真姫ちゃんを弱いだなんて言ったこと、取り消すよ。



 まさか、こんなに真姫ちゃんが手強い、なんて。



 いつまで、いつまでにこっちのなかにいるん?出ていってよ。
 にこっちはもうウチの、ウチのなんやから。


 真姫ちゃん――お願いだから。


希「にこっちを想ってのことなんよ?ね?ウチら、恋人やん?」

にこ「うん、ありがと……希」







穂乃果「むむむ……」


今までの流れからして責任取るなんて頭にないだろうなぁ 傷つけるだけ傷つけて自分の身可愛さに逃げただけだし

>>168
キモイ~ッ!!(;>_<;)

(・8・)…………

というか海未ちゃん、それでいいのか(。>д<)

傷つけたのは事実だけど、真姫ちゃん自身がおかしくなってたのも事実。
どっちもどっちだわ

穂乃果がみんなを救ってくれるのを信じてる

>>169君に言われる筋合いないね
あとそれブーメランw

◇◇

printemps


穂乃果「むむむ」

ことり「んぅ~」


花陽「うーん」




穂乃果「一体何が起こってるの?」

ことり「わからないよ」

花陽「……」



穂乃果「真姫ちゃんはここ二日くらい来てないし、絵里ちゃんと、あの海未ちゃんまで練習サボっちゃうし。海未ちゃんは絵里ちゃんの前では希ちゃんみたいな格好してるし」




穂乃果「希ちゃんとにこちゃんもずっと二人でお話してて練習出ないし」




花陽「実質活動しているのは、私たちとここにはいない凛ちゃんだけ…」

穂乃果「なんなの?……私が知らない間に何があったの?µ’sに何があったの?」



ことり「とりあえず、真姫ちゃんのとこに凛ちゃんがお見舞い行ってるから、明日それを聞いて……」


穂乃果「……なんだか、嫌な予感がするんだ…」


ことり「穂乃果ちゃん……」



花陽「BiBiは全滅。lily whiteは凛ちゃんだけ」



花陽「人間関係か何か…なのかな」


穂乃果「みんな、みんな仲良しだったよ?どうして?」


ことり「仲良し、すぎたからとか?」


穂乃果「どういう、こと?」


ことり「ここ最近、誰かが付き合った付き合ってないとか、そういうことが多すぎた気がするんだ」

花陽「確かに」



ことり「……裏で色々あった、のかも」


ことり「複雑な何かが」

スレタイから金八先生みたいな流れに…

やっぱプランタは最高だわ

ラストが予想できない
少しでも幸せになってくれればいいが

真姫ちゃんは元々おかしくて
希がいるから、どうしたって真姫ちゃん
おかしさから壊れただろうから
にこにーはあまり悪くないけど
別れても真姫ちゃん良くはならないし
真姫ちゃんのために二人で堕ちていく
共依存ルートがみたかった

これはべるい

◇◇


凛「お邪魔しまーす!!」


凛「真姫ちゃんのお母さんには許可とったし、えっとこっちがお部屋かな」


凛「ここかな。入るよー?」



ガチャ


真姫「にこちゃん!?」


凛「え?いや…」


真姫「にこちゃん!!」



 部屋を開けた瞬間、真姫ちゃんが凛に飛び込んできた。


 にこちゃん、と叫びながら。
 どうして?凛は凛、だよ。



真姫「戻ってきてくれたんだ。嬉しい……本当に、寂しかったの。にこちゃん、にこちゃんぅ……」

頼むから凛ちゃんまでおかしくならないでくれ…

プランタンだけが救いになりそうだな

真姫「戻ってきてくれたんだ。嬉しい……本当に、寂しかったの。にこちゃん、にこちゃんぅ……」



凛「ちょっ、真姫ちゃん違うよ……?凛だよ……?」



真姫「え……ぁ……凛……凛?」


凛「大丈夫…?」

真姫「ぁ…あ……ごめ、ん」


凛「うん」


 
 真姫ちゃんが明るみに出てきたことによってその顔を良く見ることが出来た。

 凄い、クマだ。



真姫「出て行って……」


凛「え…」

真姫「にこちゃんじゃないと、意味がないのっ!!出て行って!!!!!」




バタン‼︎‼︎

凛「真姫ちゃん!?」


真姫「うるさいっ!!!」


凛「っ……!!!」



凛「せっかく来たのに、それは酷いよ!!!」

真姫「……凛じゃ、意味、ないの」



凛「……」イラッ

凛「っ……!!真姫ちゃん、よく聞いて?にこちゃんはね、もう、戻ってこないよ?」



凛「希ちゃんと、付き合ってるん、だって」




 凛がそれを口にした時、凛はすぐに悟った。

 ああ、これを言ったのは、失敗だったって。

 扉の奥からは発狂する声が聞こえる。暴れる声が聞こえる。泣き叫ぶ声が聞こえる。



凛「真姫ちゃん!!みんなで!またみんなでスクールアイドルやろう!?にこちゃんが誰かと付き合ってたって、にこちゃんがいなくなるわけじゃないよ!?」




真姫「人のモノになったにこちゃんなんて、意味ないのぉっ!!!」



凛「ひぃ……ご、ごめん…こんなこと、言うんじゃ、なかった」

 



凛「こんなの……もうにこちゃんにしか、救えない、よ……」

◇◇



にこの家


にこ「……」



ピロリン



にこ「43通目」


ピロリン


にこ「44」

ピロリン


にこ「45……」


 今日はいつにも増して真姫からのメールが多い。

 でもその内容を見る気にはなれなかった。

 自分が壊してしまった真姫の叫び声を聞いているようで。

にこ「ごめん、ね」




プルルルルルル



にこ「電話…………真姫、ちゃん」




にこ「やめ、て、やめてやめてやめてやめてやめて!!ごめんなさい、謝る、からぁ」


にこ「もう、私を解放してよっ。また思い出しちゃうよ、真姫ちゃんのこと…!!」


プルルルルルルル


 出たら、戻れなくなりそうな。

 私は、今希の恋人。

 ダメ、ダメだよ。希も言ってた、私の為にも、電話には出ない方がいいって。


 ダメ、ダメ。







にこ「――もしもし」

真姫「にこちゃん……」


にこ「真姫…………"ちゃん"?」


真姫「出てくれたん、だ」



 真姫ちゃんの声が耳を通して脳に伝わる。身体が暖かくなり、なんだか安心する。




真姫「戻って、来て?私、にこちゃんがいないと、側にいないとおかしくなっちゃう。眠れない、ご飯も食べられない。助けて」



真姫「希と付き合ってるん、だって?」


にこ「……ぅ」



真姫「いいよ?別に?でも、私それだとどうにかなっちゃう。お願い、戻ってきて?にこちゃんがにこちゃんがいないと、ダメなの。生きていけないっ……!」




真姫「――ねえ助けて?」






 ブチッ。



どうすればよかったんだってばよ

 電話を切る。真姫ちゃんの声が途切れる。

 あれ、なんだか、不安。とてつもなく不安。おかしい、おかしい。




にこ「うああああああああっ!!!」



にこ「やめてやめてやめて!!!」


 狂ってる。狂ってる。こんなことした私を許す?おかしい、おかしいよ。



 あぁ、もっと、もっと、真姫ちゃんの声、真姫ちゃんの声が聞きたい。



 違う、違う。そんなことない!恋人は希なんだそう、希。希の声が聞きたい。



にこ「希……希ぃ……助けて」



プルルルルルルル


にこ「お願い、出て」

 ふと思い出した。



 前に真姫"ちゃん"が電話で私に泣きついて来た時。こんな気持ちだったんだろうか。




にこ「もう、もう出てこないでよ、真姫ちゃんっ!!」


 そんな時、恋人の声が聞こえた。



希『もしもーし』




 ああ、希、希の声。安心。安心。安心……しな、い?


 希の声。恋人の声、それでも私の不安感は拭えそうにない。



にこ『希、なんか不安なの。どうしよう、どうしよう。私が私じゃなくなる、みたいなっ!!!!』


にこ『私、私、おかしくなってるのかな!?ねえ、ねえっ!!教えてよっ!!!』


希『……にこっち。安心して?大丈夫大丈夫やよ?』


にこ『無理、無理!!希、ごめんね。私真姫"ちゃん"の電話に出ちゃった、なんでかわかんないのっ!』




にこ『身体が、勝手に……ごめん、ごめなさい……!!ごめんごめんごめんごめん……』

希『にこっち……』


 希の声を聞いているうち、自分の中に少しずつ膨らんでいる感情に目を背けた。



希『にこっちはウチの恋人。大丈夫、にこっちが嫌な思いをするならウチが助けてあげる』


希『明日、放課後話し合おう?にこっちを守ってあげるから』

希「今日はずっと話してる?」

にこ「ううん……大丈夫」
 
希「そっか」

にこ『本当、ありがと』


希『うん、いいんよ。じゃあ』


ツーツーツー





にこ「……」


 胸に残ってる不安感。なんだろうこれは。希の声を聞いても、希に安心させてもらっても、消えない。



プルルルルフルル



にこ「まき……ちゃん?」


 自然と手が携帯に伸びた。聞きたい、まきちゃんの声。まきちゃん。まきちゃん。まきちゃん。



真姫「えへへ……また出てくれたね」


真姫「好き。好き好き、好き、好き、好き。ねえ、私にこちゃんのことが好きでもうどうにかなりそうなの。戻ってきて?戻ってきて、抱きしめて」


 あぁ、真姫ちゃんの声。
 身体が暖かくなる。




にこ「あ…れ?」


 真姫ちゃんに対して、違和感を感じない。ついさっきまでは狂っているように感じたまきちゃんに、今はそんなことは感じなかった。

にこ『まきちゃん……』


真姫『どうしたの?』



にこ『治ってくれたんだね、まきちゃん。まきちゃん。嬉しい。ごめん、おかしくしちゃって。私のせいで』





にこ『――好き』





 この時すでに、希と話していた時に膨らんでいた感情が私を支配していた。


 ああ……ごめん。ごめん、希。

 今気がついた。今更気がついた。ようやく気がついた。




 私もまきちゃんがいないと、おかしくなるんだって。おかしくなってるんだって。もうとっくに、こわれてたんだって。




 まきちゃんが治った。まきちゃんが普通に感じた。





 ――それはきっと、私もおかしくなっちゃったっていう確かな証拠なんだろう。





にこ『"全部終わらせたら"、まきちゃんのとこに行く、から』

ヒェッ

◇◇


にこ『まきちゃん、いいの?本当に?』

真姫『にこちゃんがいればそれで、いい』

にこ『なら、まきちゃんの分も、出しておく、ね』



真姫『いいの?』




にこ『今まで辛い思いをさせてきたのは私。だから最後に汚れるのは私だけでいいの』




真姫『違う!辛い思いをさせたのはわた――』



にこ「みんなに憎まれるのは私だけでいい」



ツーツーツー



にこ「筆ペン筆ペン…と」

にこ「出されるのは経験あるけど、まさか自分が出すことになるなんて、ね」

◇◇


穂乃果の家


printemps with 凛






凛「もうダメだよ……」


凛「真姫ちゃんは、普通じゃない」


ことり「どういうこと?」

凛「凛を見て、にこちゃんにこちゃんって言いながら抱きついてきて…」



穂乃果「……」


凛「凛じゃ、意味ないって。にこちゃんじゃないと、意味ないって」



凛「どうして、どうしてこんなことにっ」

ナニを出すんですかね

それもしかして…
今はぷらんたんしか止められる人がいないか…?

凛「終わっちゃうよ……µ’sが、壊れちゃうよっ…!」



穂乃果「させない……µ’sは、µ’sはみんなの夢、なんだ」




穂乃果「私が守る、守ってみせる。なにがあったって」



ことり「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「ごめん、暗くなっちゃったね!!」



穂乃果「私はµ’sの、リーダーだもんね!一応!!」


穂乃果「もう、私が暗くなったらダメなのにね!」


穂乃果「明日みんなで話し合おうか!」




穂乃果「ね?凛ちゃんも酷いこと言われたけど、真姫ちゃんもきっと悪気があるわけじゃないっ!!」



穂乃果「笑って!!笑っていこう!!」



穂乃果「だって、私達9人はずっとそうしてきたんだからっ!」

退部…

穂乃果心折れるわ……

翌日 部室




穂乃果「答えてよっ!!!」



希「……」


 今までのこと、µ’sが徐々に崩壊していったこと。
 穂乃果ちゃんは気づいていたみたい。ついに堪忍袋の尾が切れた、そんなとこやろか。



 久しぶりに部員のほとんどが集まったことも原因やね。


 まあここに居て練習する気があるのは何人、おるんやろね。





穂乃果「海未ちゃん!!」


海未「っ……」


穂乃果「どうして練習に出ないの?」

海未「それは……」チラッ


穂乃果「絵里ちゃんが関係あるの?」


穂乃果「絵里ちゃん…?」




絵里「……」


 ここのところ、えりちはずっとこうだ。


 何を話しかけても反応しないことが多かった。


 ただ、海未ちゃんの問いかけには答えることが多い。


 あと、ウチの問いかけにも。


希「えりち?」


絵里「え?ど、どうした、の?」


希「……」




絵里「希、どうしたの?ねえ?どうしたの?」

絵里「私に何かよう?」


希「あ、ごめん、なんでもないんよ」フルフル


 穂乃果ちゃんに向かって首を横に振る。えりちはそういうことが聞ける状態じゃない、と。



 ごめん、えりち。




穂乃果「何が、何があったのさ……一体!!」



穂乃果「なんで、みんな答えてくれないの?どうして?どうしてなの?」




ことり「凛ちゃんにね、昨日お見舞いに行って貰ったんだ真姫ちゃんの」


ことり「それでね、なんて言われたと思う?」



凛「にこちゃん以外は、必要、ないって…!」

 一瞬凛ちゃんが声を張り上げる。




 真姫ちゃんは、やっぱり、まだ…。

海未「真姫が……?」



海未「でも、にことは……」



 あぁ、そんなにウチを見んでよ。みんな。


穂乃果「何か知ってる?」


希「……多分、にこちゃんに依存しすぎてたんや」


希「自分の側にいなくなったら途端におかしくなる。きっと、そんな感じ」



穂乃果「……そんなことで」



希「……そんな、こと?」


穂乃果「だって、私たちはずっと頑張ってきたのに!そんな、そんなことで!!!」


 あぁ…穂乃果ちゃんは純粋な子やね。

 恋幕に関して、人がどれだけ変わるか。どれだけ汚くなるか、この子は知らない。

希「…そう、ね……」





ガチャ




希「……にこっち?」



にこ「希……」



 突如として現れたにこっちは真っ先にウチの方に来る。ああ、嬉しいな。


希「どうしたの?」


 ウチの問いかけ。


 にこっちは悲しい表情でそれに答えた。決心した顔。何かを捨てる覚悟。

 そんなものをにこっちから感じた。


希「な、なんとか言って……?今からでも話し合いにいく?守るよ?ウチ」



穂乃果「ちょっと、にこちゃ――」


にこ「外野は黙ってて」



にこ「恋人同士のことなの」

希「っ……」



 なんでにこっちの言葉が胸に突き刺さる?みんなの前で恋人宣言、最高のはずやん?


 それなのに、なんで。



 まるで逃げ道を全て断たれたような。

 なんでにこっちはウチのことを見ていないの?



にこ「ねえ希。私ね。決めたことがあるの」


希「え……」



 いや、いやだよ?


 ウチを見て?


 見てよ、やだ、言わないで。



 ――助けて、誰か。みんな、助け、て。


あー、何回も出されたってあれのことか

にこ「私、まだ真姫ちゃんが好きなの」


にこ「短い間だったけど、ありがとう」


希「ひぃ……嫌……」


希「ひどい、よ」




にこ「ごめん。あんたには色々よくして貰った。本当にありがと」

希「うぅ……うぅぅぅぅぅ」



 突きつけられた死刑宣告。


 どうしてだろう。どうしてこうなったんだろう。




絵里「のぞ……み……?」




海未(え……?)



にこ「ごめん…」

海未「絵里…?」

誘導が得意で自分からは言えないだけに
思ってた通りにいかないとあっさり闇堕ちしそうでかわいい

絵里「ねえ……恋人同士の話は、終わった…?」



希「……えりち?」



にこ「なに?」


絵里「どういう、つもり?」


にこ「どうって、こういうつもりよ」

絵里「希のことが、好きだったから付き合ったんじゃないの?」



にこ「……」

絵里「どうなのよ…!」


にこ「わかん、ない」


絵里「っ……!!!!」


パシーン‼︎




 にこっちがそう答えた瞬間、えりちの平手がにこの頬を直撃していた。


にこ「っ…なに、すんのよ」

絵里「こっちのセリフよ」

穂乃果「や、やめてよ!!ねえ!!」


絵里「黙ってて」


穂乃果「う…そん、な」



絵里「希は、ずっとずっとあなたが好きだった!それを、弄んだの?真姫と別れて希と付き合ったのに、やっぱり真姫が好きだからって?」




絵里「ふざけないで……」



にこ「……」



絵里「私ね、希が好きなの」



絵里「好きな人が泣いてるところを見てられるほど、私は強くない。強くないのよ……!!!!」ギュッ







希「ぅ……えりち…」

海未(……あぁ……やっぱり、私は希には、なれないん…ですね)


海未(あんなものを見せられたら…私は……)



海未(結局絵里の中に私はいなかった。ずっとずっと、希しかいなかった。それが現実、なんですね)



海未(あぁ……希には、勝てません、でした)




絵里「……ごめん、海未。あんなこと、させて。もう、しないから。本当にごめんなさい」


海未「……して、下さいよ。私は、それでいいです、から」



海未「そばにいられれば……絵里のそばにいられれば私はそれでいいですからっ!!」








絵里「――ごめんね」


海未「うぁ……ぅぅぅう」



すごいいいドロドロ…
にこまきみたいにここからまた変わるかもしれないんだよなあ

にこ「……穂乃果」



穂乃果「…なに?」


にこ「これ」



 
 にこっちはえりちとの言い争いを切り上げると、今度は穂乃果ちゃんに何かを渡した。


 白い封筒のようなものが二つ。




穂乃果「……っ!!どういう、つもり?」


にこ「見てわからない?退部届」

 え…?退部届?


凛「はぁ!?どういうこと?」


ことり「にこちゃん!!」


にこ「どうしたもこうしたも、こういうこと」


穂乃果「……なんでかわからない、私は頭も悪いからなんでこうなったのかわからない。でも!!」


ビリィ‼︎



穂乃果「これは認められないことくらい、わかるよ」

にこ「……あーあ。せっかく書いたのに、私と」


にこ「まきちゃんの分も」




にこ「別に破いてくれても構わないけど、私……いや――私達、もうここには来ないから」

ことり「どうして!?おかしいよにこちゃん!!」




にこ「……希なら、わかるんじゃない?」

ほのかわいそう

絵里ちゃんも海未ちゃんのこと弄んだけどね

 ウチなら?ウチならわかる?

 真姫ちゃんの分も一緒に書いたってことは。



希「真姫ちゃんがあれば、それでいいって…?」


にこ「そういうこと」


穂乃果「意味が、意味がわからないよ!!!」


穂乃果「真姫ちゃんがいればいいなら、今まで通りのµ’sじゃいけないの?真姫ちゃんやにこちゃんが一緒に踊るµ’sじゃ…!」


にこ「……ごめん。私、もう行くね」


穂乃果「待ってよ…!!ここにあるにこちゃんの私物は?アイドルグッズは!?」


にこ「あぁ……全部、あげる」




穂乃果「っ……」


絵里「アイドルが世界で一番大切なんじゃなかったの…!?」


にこ「……今は、違う。大切なものがあるの」


にこ「私が支えなきゃ。私じゃなきゃ、私じゃなきゃ、ダメなの」


希「っ……にこっち……」


希「行かないで、よ……」


にこ「……私がいなかったら、まきちゃんは壊れちゃう」




花陽「……違う。それはあなたの弱さを真姫に押し付けているだけ…」



にこ「そうかも、ね。私もまきちゃんがいない何日か、おかしくなりそうだったもん」





にこ「私最近ね、人っていう漢字は凄いって思ったの。私は真姫ちゃんに支えて貰わないとダメ、真姫ちゃんは私に支えて貰わないとダメ」





にこ「まさに、人らしい。人間らしい、じゃない?」




にこ「私は8人も支えられない、支えて貰わなくても構わない」



にこ「まきちゃんを支えられればそれでいい、まきちゃんに支えて貰えばそれでいい」





にこ「私、本当の意味で人で良かったって思ったわ。あはは。」




絵里「なに……言ってるのよ」


希「そっか……ウチが手を出しても出さなくても」



希「――にこっちはとっくに壊れてたん、やね」






 この日µ’sは崩壊した。

◇◇


穂乃果「みんな……なんで座ってるのさ!!!」



穂乃果「早く!早くにこちゃんを追いかけようよ!!」


穂乃果「ねえ!?なにしてるの!?ねえみんな!!!!」




一同「……」





穂乃果「っ……!!」


穂乃果「みんなにとってµ’sはそんなものだったの!?たったこれだけのことで壊れるものだったの!?」


穂乃果「ねえ……」


 涙が、出そうになった。

 ダメだ、泣いたら、完全に終わる。私だけでも、私だけでも前を向かなくちゃ。




穂乃果「もう、いいよ。私が行く!!私が取り戻してくる、にこちゃんを」

にこまきすばらしいけど、穂乃果がかわいそす

◇◇

校門




穂乃果「にこちゃんっ!!!」


にこ「……穂乃果」


 µ’sの太陽が。音ノ木の太陽が、駆けてきた。


 その輝きは幾分か弱い。



にこ「なにか用?」


穂乃果「戻って来て」


穂乃果「みんなの夢が、壊れちゃう…」



にこ「ごめんね」



にこ「戻る気はないの」

穂乃果「っ…なんで!!!あんなに、みんなでがんばってきたのに!」



穂乃果「なんにも、出来なかった。気づいて、あげられなかった。私は私をリーダーとして選んでくれたみんなに……なんて言えばいいかわかんない」



穂乃果「ねえにこちゃん、またアイドルについて教えて?」


にこ「……あんたは私みたいになっちゃダメよ」



にこ「今のあんた酷い顔よ」


穂乃果「っ……」



にこ「スクールアイドルなんでしょ?」



穂乃果「違う!!私達は、9人でっ!!」

穂乃果「みんなの力になれなかった。なんにも出来なかった。私は私は…ここでにこちゃんも失ったらどうすれば、どうすれば…!!」


穂乃果「待ってよっ………!!!」



にこ「――私は9人もいらない。まきちゃんさえいればそれでいいの」


穂乃果「そん…な」


にこ「じゃあね」


 穂乃果から遠ざかる。

 


 背後で、叫ぶ声が聞こえた。でも大丈夫、まきちゃんの叫び以外は、私の心まで、届かない。




 太陽の様な光は、すでになくなっていた。

◇◇



 全部、終わった。

 みんなは私のこと、なんて言うかな?きっとズタズタに言うんでしょうね。



にこ「お邪魔しまーす」



 真姫ちゃんの家はいつ来ても広い。羨ましい限りね。

 全部終わらせて、夢すら断ち切ってここにいるというのに、なんだか心地いい。



にこ「なんでかな」



にこ「入るよー?」





真姫「――にこちゃん!!」

どうしてこうなった…

実は割りとのんたんが悪い


 扉を、開けようと確認を取った時、扉の向こうからまきちゃんが飛び出してきた。




にこ「うわっ……ったく急に抱きついてこないで」

 まきちゃんの感触、まきちゃんの匂い。

 それらを感じるたびに身体が生き返っていく気がした。



にこ「動けないから、ね?」


真姫「うん、でもやだ」


にこ「もう……」



真姫「にこちゃん、にこちゃんにこちゃん、にこちゃんの匂いだ、にこちゃんの感触だ、にこちゃんの声だ。もう、もう離さないんだから」



にこ「はいはい、分かった分かった」




にこ「全く子供じゃないんだから…」


真姫「えへへ…」

ハッピーエンドだな(錯乱)

好きな人と一緒に堕落するのは幸せだろうな

◇◇





にこ「真姫ちゃん、眠いの?」


真姫「んぅ……ちょっとだけ」



 部屋を暗くして、二人でベッドに横になる。

 流石は真姫ちゃんのベッド。二人で寝ても狭さは感じない。


 暗い空間に私とまきちゃんの二人きり。ああ、まるで二人だけの世界に居るみたい。

 音も聞こえない、光もない。完全に隔絶された世界。でもそこにはまきちゃんがいる。


 そうなれば、いいのに。




にこ「あんまり寝てなかったの?」



真姫「にこちゃんがもう私のとこに来てくれないって思うと、辛くて」

真姫「――でも、信じてたよ?」



にこ「そっか。ありがとう」


にこ「これからはずっと近くにいるよ?」
 

にこ「回り道して、待たせてごめんね?」

 まきちゃんの頬、顎を撫でる。

にこ「んぅ……」

 ことりがついばむようなキスをする。前のような深いものじゃなくても、私は満たされた。


真姫「ぅん……」


真姫「ちょっと、眠い…や」


にこ「いいよ?寝ても?見ててあげるから」


にこ「ふぁぁ……私も眠くなってきたかも」



真姫「ありがと……でもねえ私のこと、好き?」

にこ「好きだよ」

にこ「アイドルよりも、µ’sよりも、なによりも。私はまきちゃんが好き」


にこ「まきちゃんは私の『存在意義』だから」


 いつからか、私の存在意義は変わっていた。

 

真姫「嬉しい」



真姫「ん……にこ、ちゃん、おや、すみ」


真姫「すぅ……すぅ」



にこ「可愛い……」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ



 私の携帯だ。マナーモードにしておいてよかった。してなかったら真姫ちゃんが起きてしまうところだ。


にこ「電話?」

にこ「穂乃果……か」



 µ’sの象徴。µ’sのリーダー。あんなことを言ったのにまだ私に電話をかけてくるなんて。


 本当凄いよ。




 私は高坂穂乃果と映し出されている画面をみながら、携帯電話の電源を落とす。

 決別。


 あの子には笑って生きて欲しい。

ハッピーエンドだな


にこ「はぁこれで、本当に終わっちゃった」


にこ「全部、終わったよ?まきちゃん」


真姫「すぅ……すぅ…」


 やはりここ数日寝ていなかったのか、まきちゃんはすぐに静かな寝息を立て始めた。

 それはいつものような安らな顔。あぁ、まきちゃんは戻ってくれたんだね?それとも、私がまきちゃんみたいになった、のかな?



にこ「ねえ……?まきちゃん、全部終わって、全部終わらせて私と二人きりになって、どう思う?」


真姫「すぅ……すぅ……んん…にこ、ちゃん……」



にこ「ふふ…………幸せ、だとうれしいな」




 え?私?私はね。



 ――もちろん幸せだよ。



 私も眠くなってきた。そろそろ眠ろう。


 隣にはまきちゃんがいる。それだけで生きていられる。






にこ「おやすみ、まきちゃん」












終わり

終わりです。
当初はにこまきドロドロ書こうと思ってたら、私が大好きな退廃的な感じなのになってました。にこにとってはハッピーエンドですよね。




読んでいただけた方ありがとうございます。レスが励みになりました。

プランタンは最後まで希望だったな
にこのカップリング全般的に好きな俺得スレだった乙


誰がクズだの言い合いが起こると思うが面白かった



海未ちゃんは幸せになれるのかな
この穂乃果なら何とかしてくれるか


プランタン以外スクールアイドル続けなさそうだな

読んで頂きありがとうございました
以下宣伝。






にこ「真姫ちゃんが新しいことを覚えたらしい」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1394909747

希「国立音ノ木坂学院µ’sのある日の日常」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52075536.html


真姫「は……?西木野真姫……君…?」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52077961.html


真姫「オーガズムが止まらない病気?」
真姫「オーガズムが止まらない病気?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401616977/)




よろしければ読んで頂けると嬉しいです。


次は、宣伝した最後のスレのやつの続きで、海未ちゃんに生やしてしまおうかと。シリアスだけどエロエロを目指したい。

オーガズムの人だったのか


面白かった!

最近海未ちゃん生やされたり男になるSSが多い気がするぜ

楽しみに待ってる


終始好みの雰囲気で面白かった


主が書くやつって何か独特な雰囲気あるわ


それぞれのメンバーのその後はどうなったんだろ

おつ

完全にDV夫と妻だわ

なんか三年生に壊された感じする

乙 爛れてるな~にこまき もっと壊しても面白そう


ドロドロ苦手なはずなのに最後まで読んでしまった…面白かったよ

やはりオーガズムの方かw面白かった乙
のぞえりはくっつきそうだし海未ちゃんは穂乃果ちゃんか凛ちゃんが救ってくれたと信じてる


ゾクゾクする展開だった

本当に良かったです
またあなたの作品を読みたいですね

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月27日 (金) 23:30:07   ID: xrKkTAkC

見ててゾクッとした

2 :  SS好きの774さん   2014年07月04日 (金) 01:08:09   ID: m8ar6nVG

怖いほど名作

3 :  SS好きの774さん   2014年07月12日 (土) 04:34:14   ID: -CUHQ7MO

凄まじかった 穂乃果ぁ・・・

4 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 12:27:07   ID: swCx-4rw

怖すぎィ!

5 :  SS好きの774さん   2014年08月04日 (月) 01:59:40   ID: 11Q_FUUx

海未ちゃんは乙

6 :  SS好きの774さん   2014年09月04日 (木) 17:42:23   ID: fWiua7i8

これってエロゲーとかならバッドエンドだよな
結局、一番傷ついたのは穂乃果な気がする。

7 :  SS好きの774さん   2016年03月19日 (土) 14:01:12   ID: QN2ClYS4

にこちゃんクズすぎる

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