律子「だまし続けて」 (23)


P「お疲れ様、律子。最高のステージだったよ」

律子「……どこがですか」

P「可愛かった。お客さんを魅了してたな」

律子「プロデューサー殿には、そう見えたんですか?」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403534596


P「俺だけじゃない、あの場にいた全員がそう思ったよ」

律子「……ダメダメでしたよ、今日の私は」

P「ダメダメ?」

律子「『livE』は2回踊りを間違えたし、『魔法をかけて』なんて歌詞を間違えてます」

P「ああ、そうだった」


律子「あれ、気づいてたんですか」

P「そりゃあ、律子の練習はずっと見てきたし」

律子「それで良く『最高のステージ』なんてお世辞、吐けますよね」

P「お世辞なんか言わないよ、俺は本当にそう思ったんだ」


律子「それじゃあ。教えてください、プロデューサー殿」

P「え?」

律子「あんなに失敗を重ねた今日のライブが、
   どうして貴方にとって『最高のステージ』なのか」

P「律子なら分かると思うけどな」


律子「私なら?」

P「だって自己分析、得意だろ」

律子「得意というか、自己分析は趣味なんです。
   どんな人達が私のファンになってくれているのか」

P「分析データを元に、パフォーマンスも変えてる。努力してるよ」


律子「無理ですよ、『なぜ私は私なんだろう』って歌うぐらいですから」

P「えらいネガティブだな」

律子「教えてください、プロデューサー」

P「仕方ないな。そんじゃ、隣、座るぞ」

律子「……そういえば、ステージに座ってて、邪魔じゃないですかね?」


P「鍵はもらったから気にすんな」

律子「分かりました。じゃあ、聞いていいですか」

P「おう。1曲目、『livE』はかなり盛り上がったろ」

律子「踊りは散々でしたけどね」


P「律子のミスに気づいたのは、律子自身だけじゃなかったんだよ」

律子「私自身だけじゃない、って?」

P「ファンは熱心に、ステージに立つ律子を見ていた」

律子「……ごまかせたと思ったのに」

P「律子は『ごまかした方が良い』って、そう思ったのか」


律子「当たり前ですよ。ファンに見せなきゃいけないのは完璧なステージなんですから」

P「それは、自己分析をした結果か?」

律子「ええ、そうです。私のファンはアングラなモノを好む、完成品を見たい人達だ、って思ってます」

P「うーん、そっか。そういう考え方もありだと思う」

律子「違いました……?」


P「ファンってさ、もちろん完璧なモノを見たいって気持ちがあるけど、
 基本的にはそのアイドルやアーティストが好きで、応援したいから見に来るんだよな」

律子「応援」

P「そう。普段滅多に失敗しない律子がダンスを間違えたら、ファンは異変に気づくだろ?」

律子「そう、ですね」

P「律子を支えてやりたい、応援したい、って思って、精一杯の歓声を送る」

りっちゃん誕生日おめでとう!!

支援!


律子「……確かに、どの曲も、失敗した後に声が大きくなったような、そんな気がします」

P「声援だよ。みんな律子が好きだから、頑張ってやり切って欲しいんだ」

律子「歌詞を間違えたあとは、歌ってくれてました」

P「『魔法をかけて』の大合唱、楽しそうだったよな」

律子「お客さんも、後私も……楽しかったです」


P「なあ、律子」

律子「はい」

P「お前は本当に、今日のステージが失敗だって思ってたのか?」

律子「……え?」

P「なんだか無理に『ダメダメだった』って言ったような、そんな気がしたんだよ」


律子「……褒められたものじゃないのは、事実ですよ」

P「そうかな」

律子「プロデューサー殿に求められたクオリティの7割ぐらいしか、出しきれていませんでした」

P「確かにクオリティで言えば、それぐらいかな」

律子「正直に言うと」


P「ああ」

律子「楽しかったですけど、失敗続きのステージを『楽しかった』なんて言ったら、
   プロデューサー殿を不快にさせてしまうかな、って思ったんです」

P「不快になんかなるわけないだろ」

律子「そうですか?」

P「完成度、確かに大事だよ。
 でもそれ以上に大切なのは、お客さんも自分も楽しめるようなステージを創りあげること」


律子「……ですね」

P「だから俺は言ったんだ、『最高のステージ』だって」

律子「……ありがとうございます、プロデューサー殿」

P「律子は自分に自信をもっと持ったほうが良いな」


律子「自信ですか?」

P「うん、いまの律子に加えるエッセンスとして」

律子「エッセンス……」

P「自分はこのホールに集まったお客さんを魅了できる、それだけの力がある、って」


律子「そういえば私、あんまり自分のこと、信頼してないです」

P「だろ。勿体無いと思うよ、俺は」

律子「……あなたが私を褒めてくれるから」

P「ん?」


律子「プロデューサー殿が私を褒めてくれるから、
   私は自分に自信が無いことを、忘れられるのかもしれません」

P「……」

律子「これからも、私に魔法をかけてください」

P「俺、律子に魔法をかけられるかな、ずっと」

律子「信頼してます。だから」


「これからも私のことを、だまし続けてくださいね!」


http://i.imgur.com/O1chBXn.png
律子、お誕生日おめでとう。ありがとうございました。

乙です

可愛い過ぎる

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom