楓「なんだろう…ワクワクしてます」 (12)

初投稿になります。よろしくお願いします。


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寮の楓の部屋 朝

楓(なんだろう……今日は何かありそうな気がする)

楓(胸がざわつく……変)

楓(動悸? 息切れ? そんな訳はないし)

楓(……二日酔いでもないはず……)

楓「……朝の6時……眠いけれろ、くじけない」ガラッ

楓(ここ数日雨が続いたけれど、今日は気持ちのいい快晴)

楓(梅雨だから仕方ないけれど、雨が続くと憂鬱だからよかった)

楓(梅雨……梅……梅酒が飲みたい)

楓(今日の仕事が終わったらプロデューサーを誘って飲みに行こう)

楓「さて、お仕事に行かないと」

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事務所への道

チュンチュン

楓(日差しが気持ちいい……お仕事前に胸がわーくわーくする)

楓(でも……なんでしょう、今日はいつもより気持ちが弾む気がする)

楓(特別な日でもないはずなのに……なんでだろう)

楓(いつものお仕事の日。なのに、どうして……ウキウキしちゃうんでしょうか)

――――――
事務所の入り口

楓「おはようございます」

ガタガタ

楓「?」

楓(何か騒がしい)


P(まずい、楓さんが来たぞ)ヒソヒソ

蘭子(突然の来訪者!? くっ、我が手に宿りし供物を……あー、どこか置き場所ないー?)ヒソヒソ

裕美(蘭子ちゃん落ち着いて、楓さんに気づかれるよ)ヒソヒソ


楓(? みんないるのかな)

ちひろ(楓さん、おはようございます!)

楓「ちひろさん、おはようございます」

楓「あの、もう誰か来ているんですか?」

ちひろ「え、ええ、プロデューサーさんと蘭子ちゃん、それに裕美ちゃんがもう来てますよ」

楓「何か物音がしますけど、何をしているんでしょうね?」

ちひろ「さ、さあ、また変なことでもたくらんでるんでしょうね」

楓「……ちひろさん、汗が出てますよ」

ちひろ「な、なんでもないですよ。あー、そうだ、今日は特売の日なんで、準備してきますねー」

楓「あ……」

楓「行っちゃった」

――――――
事務所


P「よーし、みんな隠し終わったな」

蘭子「闇より生まれし漆黒のヴェールを纏った隠匿の術は完璧よ」

裕美「う、うん。大丈夫だと思うけど」

楓「何が大丈夫なんですか?」

蘭子「ひゃあ!?」

楓「みなさん、おはようございます」

蘭子「お、おはようございます」

裕美「蘭子ちゃん素に戻ってるよ!」

蘭子「ハッ! 煩わしい太陽ね!」

楓「ふふ、今日も元気そうですね」

P「はははは、そりゃもう、朝早くから元気100倍ですよ」

裕美「そ、そうだよね」

楓(……なんだか態度がよそよそしい)

楓「そういえば、今日は蘭子ちゃんはお休みのはずでしたよね」

蘭子「!?」

楓「どうして事務所に来たの?」

蘭子「わ、我が魂が城を訪れよと告げていたのだ」

楓「? えーと」

蘭子「む、魂をひきつける波動が! 今参るぞ!」ガタガタッ

楓「あ、蘭子ちゃん、そんなに慌てると――」

蘭子「はうっ!?」ビタン

裕美(派手に転んだ……)

P「大丈夫か、蘭子」

蘭子「うう……まさか我が漆黒の衣が脚を封じるとは」

P「怪我はないけど、少し冷やしたほうがいいな」

蘭子「治癒の魔法を……」

P「わかった、行くぞ」テクテク

裕美「はあ……蘭子ちゃんも慌てすぎだよ」

楓「ところで、裕美ちゃん」

裕美「え、何!?」

楓「さっきからポケットから、何かキラキラしたものが見えてるけど、新しいアクセサリー?」

裕美「え、あ、これは……そうだよ、新しいのを作ってきたんだ」

楓「また蘭子ちゃんに頼まれたんですか?」

裕美「えっとそれは……ちょっと違うかな」

楓「違う? それじゃあ別の人へのプレゼント?」

裕美「うん。あ、そうだ。私も蘭子ちゃんの様子を見てくるね」

楓「はい。行ってらっしゃい」

楓(……なんだろう、今日はみんなの態度が少し変な気がする)

楓(気のせいかしら)

P「楓さん」

楓「プロデューサー、蘭子ちゃんはもういいんですか?」

P「はい、裕美が面倒を見てくれてますし、大丈夫ですよ」

P「それより、今日の仕事ですけど、そろそろ出発しませんか?」

楓「もうですか? 予定の時間よりは大分早いですけれど」

P「こういう日は早めに行動するに限ります」

楓「ふうん……」

P「どうかしましたか?」

楓「いえ、なんか皆さん余所余所しいですし、何かあったのかと思って」

P「ははは、何もありませんよ。むしろ、何かあるのはこれからです」

楓「?」

――――――
夕方

楓「ふう……」

楓(お仕事も無事に終わったけれど、今日はプロデューサーの態度もちょっと変だった)

楓(それに、朝から胸のワクワクがおさまらない)

P「お疲れですか、楓さん」

楓「はい。仕事で全力を披露したから披露困憊です」

P「まだ大分元気じゃないですか」

楓「ふふ、わかりますか」

P「それはよかった。あいつらも喜びますよ」

楓「あいつら?」

P「すぐにわかりますよ」

――――――
事務所

ガチャ

楓「お疲れ様です!」

蘭子「くくくっ、待ちわびたぞ、この聖誕の日の主役よ!」

楓「蘭子ちゃん?」

ちひろ「ふふ、お帰りなさい、楓さん」

裕美「えっと、お疲れ様です」

楓「えっと、皆さん、どうしたんですか?」

楓(なんだかたくらんでそうな顔をして、囲んで何をするつもりなんだろう)

P「それじゃあ」

ちひろ「せーの!」

P「「「楓さん、誕生日おめでとうございます!」」」

蘭子「聖誕の日に我ら闇と光の遣いの祝福を!」

パンパンパン(クラッカーを鳴らす音)

楓「へ……」

楓(あれ、何が起こってるの?)

ちひろ「6月14日。誕生日おめでとうございます、楓さん」

楓「たんじょう……び」

楓(そうだ……すっかり忘れていたけれど、今日は私の誕生日)

楓「そういえば、そうでしたね」

楓(……あれ、そもそも私って何歳でしたっけ?)

楓(菜々ちゃんよりは年下のはずですけど)

裕美「あの、楓さん、どうしたんですか?」

楓「ごめんなさい、突然のことでびっくりしちゃって」

蘭子「我らの奇襲は間違いだったのか?」

楓「そんなことないわよ、ありがとう、蘭子ちゃん。それに皆さん」

ちひろ「さあ、ささやかですけれどパーティの準備もできていますよ」

裕美「プレゼントも用意したんだ。喜んでくれるとうれしい……かな」

楓「ふふ、ほんとうに、ありがとう」

楓(自分でもすっかり忘れていたのに、覚えててくれるなんて……)

――――――
数時間後

ちひろ「それじゃあ、蘭子ちゃんと裕美ちゃんは送っていきますね」

P「すいません、お願いします」

裕美「プロデューサーも遅くならないようにね」

蘭子(……眠い)

ガチャ

P「ふう……楽しいパーティでしたね」

楓「ええ、お酒が飲めないのが残念でしたけどね」

P「そう思って、用意しておきましたよ。冷蔵庫から持ってきますね」

楓「ふふ、いつものことですけれど、準備がいいですね」

――――――

P「それじゃあ、乾杯」

楓「はい、乾杯」コクコク

楓「はあ……やっぱり祝い事にはお酒が欠かせませんね」

P「あの子たちがいる間はお酒は出せませんからね」

楓「そうですね……」

楓「それにしても」

P「?」

楓「誕生日をお祝いされたのなんて、何年ぶりでしょうか」

P「楓さん?」

楓「ここだけの話ですけれど、私は今日がどんな日か、忘れていました」

P「はは、社会人になって1人になって、忙しいと忘れてしまうこともありますよ」

楓「はい」

楓「ただ漠然と生きていると、忘れてしまいます」

楓「家を出て、1人暮らしをして、仕事を始めて。気がついたらそれだけを繰り返していると、忘れてしまいます」

楓(それに、祝ってくれる人もいませんでしたし)

楓(ただなんとなく勉強をして、たまたまモデルにスカウトされて、言われたままに仕事をして)

楓(生きてはいるけど、ただ生きているだけになったら、気がつけば自分のことすら忘れていた)

P「まあ、そんなもんですよ。俺も忙しい時期はさっぱり自分のことは忘れます」

楓「アイドルたちの誕生日はしっかり覚えていますけどね」

P「そりゃ、誰かのお祝いは楽しいですから」

楓「……自分のはともかく、なんで人の誕生日は忘れないんでしょうね」

P「?」

楓「今日のあの子たちにしても、私の誕生日をまるで自分のことのように喜んでました」

楓「なんででしょうね?」

P「そりゃあ、楓さんが好きだからですよ」

楓「好き?」

P「好きな人の祝い事だったら、自分の事以上に嬉しいでしょう」

楓「そうですね」

楓(言われてみると、昔は自分の誕生日も、家族の誕生日もうれしかった)

楓「ところでプロデューサー」

P「はい?」

楓「プロデューサーは、私の誕生日を嬉しいですか?」

P「そりゃあ、当然ですよ」

楓「ふふっ、よかった」

楓(誕生日……今年は忘れてたけど、来年は忘れないでいられそう)

楓(祝ってくれる人がいて、その人たちと大切な一年を過ごせた日なら、絶対に忘れない)

楓(それに……朝から感じてた胸の高鳴りは、無意識に期待していたのかもしれない)

楓「来年も楽しみにしていいですか?」

P「ええ、もちろんです」

以上となります。
短いですが、お付き合いいただきありがとうございました。

乙!

奈々さんより年下
奈々さんは17歳
つまり楓さんは15歳くらいかな

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