上条「え?」 (8)






俺は反射的に声を出してしまった。
俺の目の前にいるのは真っ白い服きた女の子だった。しかも外人。しかも銀髪。服装から多分シスター。
布団を干すときのようにくの字でベランダに引っかかっている。
……意味わかんねぇ。ここ七階なんだが…… くの字ってことは屋上からでも飛び降りたのか? 不幸だ。俺の家自殺現場になっちゃったのかよ。
まだ住みはじめて一年も経ってないのにもう引っ越し考えないといけないのかよ。昨日はビリビリのせいで家電全部死ぬし、今日に至っては人が死んでんねんぞ? 

あ、でも別に死んだというわけじゃねえか。そういえばここ八階建てだったわ。
一階ぐらいだったら飛び降りても大丈夫か。いや、大丈夫じゃねえか。くの字になってるし。くの字ってことは飛び降りて鉄製の柵の上にそのまま落ちたってことだろ? 
うわ、考えただけで痛そうだわ、普通に死ねるわ。内臓とかヤバいだろ。

なんで飛び降りるかな。ホントやめてくれよ全く。親からもらった命なんだから大切にしろよなマジで。
つーか人の家で身投げしないでお願いだから。気分悪くなるから。神様ってホント意地悪だよな。俺のこと親の仇ってぐらいに嫌ってるよな絶対。

ってこんなこと考えてる場合じゃねえ!!

俺は素早く携帯を取り出す。そしてアンチスキルに通報を――――

「あれ?」

よく見たら可愛い顔してるな……じゃなくてコイツ全然怪我してないんだけど。痛がってもないんだけど。つーか寝てね? 
え、なんなの? 普通こういうのってヴェルサイユの赤い雨みたいに血がブシャっと飛び散ってるもんじゃない?
血だけじゃなくてもっと色んなものも飛び散ってるってもんじゃない?

青髪ならこの『色んなもの』に反応して小便とかクソキモイこと言うんだろうな……ってどうでもいいわ!!
何でコイツ無傷なんだよ。何でこんな昼寝してるネコみたいな顔してるの。ここ七階だよ? 加えて他所様のベランダ。プラスαで引っかかってるのはシスターっぽい外人。
なんだこれ? とりあえず様子見するか。

「お、おーい。だ、大丈夫か?」

「……」

へんじがない。ただのしかばねのようだ。とかいうお約束は置いといて本気で意味が分からん。これは不幸なのか? いや不幸か。
先生からラヴコールもとい補修のお知らせで緊急招集されたのに、この『まるで意味が分からんぞ!!』って叫びたくなるような状況のせいで遅刻確定したよ。
小萌先生、多分このカオスな状況を処理し終わったときには夕暮れ時になってると思います。ごめんなさい、すべては神様が悪いのです。

つーかこの状況マジで何なん? アンチスキルに連絡したほうがいいのか? あ、でもやめよ。『朝起きたらベランダにシスターが引っかかってて――――』なんて説明したところで理解してくれないだろ。
ていうか完全に変態の妄想ですありがとうございました。……でもこんなことが本当に起こるなんてな。
なんか全国の中学二年生の心を持った大きい友達たち、もしくは思春期真っ盛りの少年たちにに空から降ってくる系ヒロインは実在したぞと高らかに知らせてやりたい。

あれ、待てよ。知らせちゃダメじゃん。考えたらヤバくね? コレ。この状況誰かに見られたらヤバくね? 俺がこの状況を作ったようにしか見えなくね? 
美少女を連れ込んでベランダで吊るしている男にしか見えなくね?

このままこのシスター放置してるとヤバくね。ここ男子寮だしヤバくね。サッサと叩き出したほうが良くねコレ。

有言実行。上条さんはやるときはやるのです。






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402157378






「おい、起きろ。何があったのか知らないけど、まず先に外に出てくれ
理由は後でき――――」

「ォ――――――――」

お?

「……おなかへった」

「は?」

ノリで日本語で話しかけちゃったけど通じたな良かった……じゃなくて!! 何て言った今?

「……おなかへった、って言ってるんだよ?」

「え?」

待て。待て待て待て待て待てぇ!! 上条さんに考える時間をくれぇ!! もう上条さんの脳内キャパはゼロよ!!
何言ってるか分からん、いや分かるんだけど分からん。何て言うか言葉ととしては通じてるんだけど日本語としては通じてないというか
つまり言葉としては通じてるけど言葉は通じてないってことなのオーケー? 理解できた? できねぇよクソが。

「もしかしたら言葉が通じてないのかな? 日本語じゃダメなのかな? でも日本語話せてたし通じてると思うんだけど……」

「いや日本語でOKです。はい」

なんか敬語になってしまった……外国人と話す時ってそいつが日本語話せてもなんか緊張するよな。
気まずいとかじゃなくて何て言うのだろう。
そうだなぁ……レストランで注文頼んで自分の料理が出てくるときの緊張感。アレとよく似てる気がするのは俺だけ?

俺がそんなことを考えていると、白い少女が俺を見て『わけわかんない』みたいな顔して首を傾げた。
やめろ恥ずかしい。そんな目で見んじゃねぇよ、自分が馬鹿みたいに思えてくるから。まあ馬鹿なんだけど。










「じゃあなにか食べさせてくれると嬉しいな」

「ああ、分かった。じゃあまず外に出てくれ。そしたら上手い飯食わせてやるよ」

食わせるわけないだろ。明らかにこの子はヤバい。関わってはいけない類の子だ。俺は正直、電波女とか痛い娘に対して一般人より寛容であると自負している。
『宇宙人と交信している』とかいう女の子や『私、魔法使い』とかいう女の子とかにも引いたりせずうまく付き合っていく自信がある。なぜならまあ、ここは能力開発とかブッ飛んだ最先端技術を扱う学園都市であることと、こういう子たちは
一応、常識の範囲内でしか行動できないからだ。

言動や行動がちょっと変でも人の常識というものを超えたりはしないのだ。だが今目の前にいるこの女の子は違う。この子は七階の俺のベランダに引っかかって、飛び降りだと思ったら無傷で恰好もなんか修道服
みたいなこの町では場違いな服着てて、しかも一番最初に発した言葉が『おなかへった』だ。

ヤバすぎだろぉぉぉぉおっぉぉ!!!!! 何? 何この子? アクティヴすぎない? 電波や痛い娘だってまさか屋上から飛び降りて無傷ってことはありえんし
最初に『おなかへった』なんて言わんだろぉぉぉぉぉ!!!!

学園都市に来てから結構、非日常的なことには慣れてきたと思ったのにこの子がその感覚を全てをぶっ壊したよ。完膚なきまでに徹底に。まあ、以上の事がこの子と関わってはいけない理由だ。
というわけでお前に食わせるタンメンもねぇ!!!

「本当? ありがとうなんだよ」

そう言って白い少女はするりと鉄柵からベランダに降り、その長い髪を揺らしながら俺の横をすり抜けていった。そして彼女の後ろを俺がついていく。
俺がわざわざ後ろについたのは向かい側の寮に住む人間にこの子を見られるのを防ぐためであって別に他意はない。
髪の毛からいい匂いがしたからとかじゃない。マジで関係ない。マジだよ? ホントだからね?

「お邪魔しますなんだよ」

「あ、ああ」

お、意外と礼儀正しいな。へぇー感心感心。俺の中では外国人ってなんかズカズカ部屋に上がり込むイメージがあったんだけどな。
意外とこの子は謙虚というかなんというか……でてこねえ、ボキャ貧すぎない?俺。つーか飯たかってる時点で謙虚じゃねぇじゃん。
おし、さっさと追い出そう。

「よーし、じゃあそこまっすぐ行ってねー」

俺は限りなく甲高い声で言う。猫撫で声っていうのか?気分はまるで幼稚園の先生。
この子は頭はあんまり良くなさそうだ。だからなるべく優しい親切な感じを出しといて、この子が玄関でた瞬間速攻鍵を閉める。
最高の作戦だな。俺って頭良いね。流石だね。

「ごっはん♪ ごっはん♪」

俺の前でニコニコしながら廊下をトコトコ歩いているこのロリシスターは俺の謀略にはまっているとはつゆも気づいていないようだ。シメシメ。
俺がニヤついていると突然、少女が立ち止まったので躓きそうになったのを踏みとどめる。








「そういえば君の名前聞いてないんだよ。教えてほしいかも
私の名前はインデックスって言うんだよ」

「え、ああ、俺は上条当麻だ。つーか何? インデックス? 目次?」

「正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumなんだよ。魔法名はDedicatus545だね
見てのとおり教会の者です、宗派はイギリス凄教だよ」

「ああそうなんだへー」

適当に棒読みで返す。
なんか本名インデックスとか魔法名とか言ってる。そういう設定なんだろうなぁ、いやこの子の場合本気でそうだと思ってるだろうな。
やっぱり関わっちゃいけないみたいだわ。

「むー なんか信じてなさそう」

少女がジト目で俺を見てくる。やべぇ結構可愛い……はっ!! なんかトリップしかかってた。いかんいかん青髪じゃないんだから
俺のタイプは黒髪ロングで年上のお姉さん(寮の管理人が理想)だからロリに見られて興奮するなんて性癖は持ち合わせてない……多分。
とりあえず適当に返しとくか。

「信じてる信じてる。佐村河内ぐらい説得力あるよマジでホントに」

「ホントに?」

「あ、ああ」

やめろ、純真無垢な眼で俺を見つめるな。ちょっと心が痛い。

「……」

え、なんか黙っちゃったんですけど。なんか俺やっちゃったか? 
まさか俺の企みバレた? いやまさかな。

「ありがと」

「え?」

え、何? 今度はなんか感謝されたんだが。









「とうまだけかも、私のこと信じてくれたの」

グサッ。痛え、痛えぇよ。主に心が。結構キタよ。そんな目で俺を見ないで。
名前呼びも結構痛いよマジで。

「それに見ず知らずの私にご飯食べさせてくれるなんて……
優しい人なんだね、とうまは」

クリティカルヒット。会心の一撃。急所に当たった。ヤバい泣きそう。

「だから、あり――――――――」

「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあああああ!!!!!」

ごっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!
致命傷くらったぁっぁぁあっぁぁぁぁぁああああああ!!!!!無理だろもう。良心の呵責がやべえよ。


「なんで謝るの? とうまは何も悪くないよ?」

「あががががががががががっがあがああああああああああ」

「とうま?」

「本当にすいませんでしたぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

俺は力いっぱい叫びながら正座し頭を床に着ける。つまり土下座。
マジでゴメン、インデックスぅ…ごめんなさい、ごめんなさい……

「と、とうま何してるの? そ、そんなのいいよ」

「お前が許しても俺が許せねえ!! お詫びに腹膨れるまで食べてってくれホントに!!」

頼むぜホントに。そうでもしないと俺も生きてけねえよ……
この日、俺の家の冷蔵庫の中身はすっからかんになった。







投下終了

これは再構成かな?

とりあえずこのスレの方向性を知りたいな(>_<)

これ、趣旨はそのうちわかんのかな
あと酉つけたら?

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom