良子「おう、どうした」
やえ「実は……」
やえ「……」モジモジ
良子「どうした、そんなに深刻なことなのか」
やえ「い、いや、そういう訳じゃないんだけど……」
良子「そうか。だったらもったいぶらずに教えてくれよ」
やえ「う、うん……」モジモジ
良子(なんなんだ……)
日菜「おつかれさまー」ガラッ
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良子「おう日菜。おつかれ」
日菜「おつかれさまー」
日菜「あら、やえちゃんも来てたのねー。おつかれさまー」
やえ「お、お疲れ様……」
良子「やえ、日菜なら俺より良い聞き手になってくれるんじゃないか?」
日菜「ん?なんのことー?」
良子「いや、やえが聞いてほしいことがあるらしいんだが、中々内容を話してくれないんだ」
やえ「ちょ、ちょっと!そんなすぐ告げ口しなくても……」
日菜「あらー、そうなんだー」
日菜「事情を聞いちゃった身としては、どんな内容なのか教えてほしいなー」
やえ「う……ま、まあ別に日菜にも相談しようと思ってたから別にいいんだけど……」
良子「さあ、話して貰おうか」
やえ「う、うん……」
やえ「実は……」モジモジ
由華「お疲れ様です」ガラッ
やえ「!」
やえ「ごめん、話はあと。練習の準備をしましょう」イソイソ
良子「えっ?」
良子「なんなんだよ一体……まあ別にいいが」
良子「準備するか」ガタッ
日菜「……」
日菜(ははーん)
ふんふむ
部員「おつかれさまでしたー」
部員「おつかれさまでしたー」
ーーーーーーーー
良子「やえ、お疲れ」
やえ「良子。お疲れ様」
良子「どうだ。全国に向けて調整は順調か?」
やえ「うーん……」
やえ「まあまあ、というところ」
良子「そうか。まあ、焦らずやると良いと思うぜ」
やえ「ありがとう」
良子「ところで」
良子「練習前に言いかけたこと、ちゃんと聞かせてくれないか」
やえ「あ、ああ……」
やえ「そうね……」モジモジ
良子「待て、日菜も呼ぼう」
良子「おーい」ブンブン
日菜「」スタスタ
日菜「おつかれさま。どうしたの?」
良子「やえに練習前の話を聞こうと思ってな」
やえ「……」モジモジ
日菜「うーん……」
日菜「やえちゃん、もしかして、由華ちゃんに関係あるんじゃない?」
やえ「!」
日菜「あっ、動揺したー」
やえ「っ……」
良子「そ、そうなのか……」
日菜「由華ちゃんが部室に来た時、焦ってたもんねー」
やえ「うっ……」
良子「相変わらず鋭いな……」
日菜「ふふっ、やえちゃんのことならお見通しよー♪」
やえ「やはり日菜の目はごまかせないか……」
やえ「かと言って自分から言い出したこと、もとより隠す気は無いわ」キリッ
やえ「とりあえず、聞いてほしい」
やえ「実は……」
良子「……」
日菜「……」ゴクリ
良子「……」
良子「つまり、由華に何か恩返しがしたい、というわけだな」
やえ「まあ、まとめるとそういうこと」
良子「確か団体戦後は、まず俺らだけでミーティングをして、やえが監督を呼びに言ったんだよな」
日菜「そのあと、ゆかちゃんがお手洗いと言って席を立って」
良子「結局やえと監督と一緒に戻ってきたんだったな」
日菜「その時にゆかちゃんとやりとりしてたんだねー」
やえ「ま、まあ……」
やえ「その時由華にすごく励まされたから、何かお礼がしたいと思って」
やえ(……)
やえ(さすがに抱きつかれて大泣きしたことは言えないな……)
日菜「それであの時やえちゃんテンションが高かったのねー」
やえ「えっ?そうだったかな」
良子「だろう。いつになく取り乱してたじゃないか」
良子「ちょうど通りがかった阿知賀女子の連中に対して『おっおまえらっ、全国で無様なマネしたら承知しないかんな!!』って」
良子「こっちまで動揺したぜ」フフッ
日菜「おさえるの大変だったんだからねー」
やえ「あ、あれは、やっぱりどうしても悔しくなって……」カァァァ
良子「まあ、気持ちは勿論分かるぜ。あいつらには頑張って貰わないと困る」
日菜「まあまあ、それはそれとして」
日菜「ゆかちゃんにどう恩返しをするか、ということよねー」
やえ「ま、まあ、そういうこと」
日菜「うーん……」
日菜「正直言って、何をしてもゆかちゃんは喜ぶと思うわよー?」
やえ「えっ」
やえ「そうかな……」
日菜「そりゃもうー」
日菜(ゆかちゃんはやえちゃんにゾッコンだから、とは言わないほうがいいのかしらー)
良子「恩返しねえ……」
良子「果たして何がいいのやら」
日菜「改めてそういうことするのって、照れない?」
やえ「!?」ドキッ
やえ「……うん。正直なところ」
やえ「それでも、何かしてやりたい気持ちの方が、今は強い……」
日菜「ほほーん」
やえ「……何で嬉しそうなの」
日菜「べつにー♪」
紀子「どうした。何の話をしている」
日菜「あら、のりちゃん。良いところに来たわー」
紀子「……何だ」
日菜「実はねー、やえちゃん、由華ちゃんに恩返しがしたいんだってー」
紀子「!?」
紀子「……ほう」
紀子「小走。ついにその気になったか」
やえ「そ、その気って、どういうことよ……私はただ、お世話になったお礼を……」
紀子「……」
紀子「まあ、良い」
紀子「そういうことなら協力させて貰う」
日菜「そう来なくっちゃー♪」
やえ「よ、よろしく……」
良子「そうと決まれば考えてやるか。そこが気になって全国でぬるい麻雀打たれても困るしな」
やえ「そんなことはしないから安心して」
良子「頼もしいな。それなら助かるが」
やえ「勿論。まかせて」
良子「おう。頼むぜ」
良子「なんにせよ、恩返しか。こういう場合、贈り物とかが良いのかな」
紀子「いや、物では無い」
紀子「物に頼るようでは駄目だ」キッ
良子「お、おう……すごい剣幕だな」
日菜「さすがのりちゃん。スイッチ入ったわねー♪」
日菜「わたしも、物をあげるより何かしてあげるほうが良いと思うわー」
良子「何か、か……しかし、してあげられることなんて何かあるかね」
紀子「……そこが難しい」
日菜「そうよねー……」
やえ「ごめん……私の個人的なくだらないことに付き合わせて……」
日菜「くだらなくないよっ!」キッ
紀子「うむ」キッ
やえ「!」ビクッ
良子「!?」ビクッ
やえ「そ、そう、ありがとう……」
やえ「すごい勢いだからビックリしたわ……」
良子「ああ、こっちまで驚いたぜ……」
良子「しかし、いざ恩返ししようとするとなると難しいな……」
日菜「うーん……」
日菜「あっ」
日菜「確か、今度夏祭りがあるわよねー」
紀子「!?」
良子「確か、そうだな」
日菜「それに行くのよー」
紀子「なるほど……それだ」
やえ「それって、遊びに誘ってるだけじゃ……それで恩返しになるのかな……」
日菜「充分なるわよー」
日菜「ただし」
日菜「ちゃんとやえちゃんから誘うこと。話の流れとかじゃなくて、明確に誘う目的で話しかけること」
日菜「それなら恩返しにきっとなるわー♪」
紀子「……」コクッ
やえ「そ、そう……」
やえ「難しそうだな……」
日菜「覚悟を決めたんでしょー?それくらいしないとー」ニヤニヤ
紀子「……乗り越えるべき壁だ」
やえ「そ、そう……」
やえ「難しそうだけど……」
やえ「ちょっと頑張ってみる……」モジモジ
良子「……久々になんだかよく分からん方向に行ってる気がするが、まあいいんじゃないか」
日菜「そうと決まれば早速行動ねー♪」
やえ「う、うん……」
やえ「だけど、ちょっと心の準備を……」ソワソワ
日菜「そんな大げさなー、告白するわけじゃあるまいしー」ニヤニヤ
やえ「!?」ドキッ
やえ「そ、それはもちろん、そうだけど……」カァァァ
日菜(ふふっ♪)
紀子(……素晴らしい)
良子「おや、噂をすればなんとやらだ。由華が帰ろうとしてるぞ」
日菜「ナイスりょうちゃん、よく見つけてくれたわー♪」
日菜「ほら、行った行ったー」オシダシ
やえ「ちょ、ちょっと……!」フラフラッ
ーーーーーーーーーー
由華「……」
由華(全国個人戦を最後に、やえ先輩たちも引退するんだ……)
由華(今はまだ一緒に練習出来てるけど、もうじきそれも出来なくなる)
由華「……」
由華(……寂しいな)
由華(……)
由華(……帰るか)ガタッ
やえ「ゆ、由華!」
由華「!」ビクッ
由華「や、やえ先輩。お疲れ様です」
やえ「お、お疲れ様……」
由華「……どうしたんですか?」
やえ「い、いや、あの……」
やえ「その……」モジモジ
由華「……?」
やえ「……」
やえ「……」キッ
やえ「今度の休み……少しヒマない……?」
由華「えっ……?」
由華「えーと……特に予定は無いですけど、何かあるんですか?」
やえ「その日、夏祭りがあるでしょう?」
由華「あ、そうでしたね」
やえ「実は……」モジモジ
やえ「い、一緒に行ってくれないかと思って……」イソイソ
由華「……!」ドキッ
由華「……い、良いんですか?」
由華「全国に向けた調整とか、勉強とか、いろいろ忙しいんじゃ……」
やえ「た、たまには息抜きも必要だから……」
やえ「そ、それに……」
やえ「……」
やえ「お世話になったから、そのお礼をしたいと思って……」モジモジ
由華「……!」
由華「お、お礼だなんて、そんな……」
由華「お礼をされるようなこと、私は何もしてないですよ……」アセアセ
由華(私がお礼をしたいくらいなのに……)
やえ「わ、私がそう感じたからいいの」
やえ「そ、そういうわけで、一緒に行ってくれるとありがたいというか……」
やえ「私とふたりで祭りに行くことがお礼になるかどうかわからないけど……」
由華「……!」
由華(ふたりきり、なんだ……)
やえ「も、もし良ければ、どう、かな……?」
由華「……」
由華「もちろん、喜んで」ニコッ
由華「楽しみにしてますね♪」
由華(とっても)
由華(……とっても)
由華「……あっ」
やえ「?」
由華「ひとつ、お願いしてもいいですか……?」
やえ「えっ」
やえ「う、うん……何?」
由華「お祭り、浴衣で行きましょう」
やえ「ああ、そうね……そうしましょうか」
由華「ありがとうございます」ニコッ
由華「とびきりのを準備しますね♪」
やえ「うん……こちらこそありがとう」
やえ「じゃあまた」ソソクサ
由華「はい。お疲れ様でしたっ!」
…………
……
…
やえ「……」スタスタ
やえ「」ピタッ
やえ「……言ってきた」
日菜「おつかれさまー」
日菜「がんばったわねー♪」
紀子「……立派だ」
やえ「い、いや……」
やえ(……確かに、想像以上に緊張したけど)
良子「なんにせよ、とりあえず誘うことには成功したわけだ」
良子「ところでお前、浴衣なんて持ってるのか?」
やえ「!?……」
やえ「実は、持ってない……」
やえ「その場の勢いで了承したけど……」
やえ「冷静になって考えたら、浴衣で行くのもなんだか恥ずかしいな……」カァァァ
やえ「……って」
やえ「由華との話聞いてたの!?」
良子「ああ……すまんな」
日菜「ごめんねー」
やえ「くっ……」
やえ「まあいいわ」
紀子「とにかく、浴衣を見繕う必要があるな」
日菜「ゆかちゃんたってのお願いなんだから、いいものを選ばないとねー」
やえちゃんかわいい
やえ「遊びに行くのに浴衣なんてほとんど着たことないからどんなものを選べばいいのか……」
日菜「わたしたちが一緒に選ぶわよー」
やえ「!」
やえ「い、良いの……?」
日菜「もちろんー」
紀子「当然だ」
日菜「かわいい浴衣選びがゆかちゃんへの恩返しに繋がるのよー♪」
やえ「そう……私はよくわからないから有難い話だけど」
日菜「そうと決まれば早速出発ねー」
良子「い、今から行くのか?」
日菜「もちろん、善は急げよー♪」
日菜「やえちゃんは大丈夫?」
やえ「わ、私は大丈夫……」
やえ「しかし日菜、行動派ね……」
日菜「やえちゃんのためだものー」ニコッ
紀子「よし……出発だ」
ーーーーーーーーーーーー
由華「……」
由華「……」ドクン
由華(やえ先輩が、誘ってくれた……)
由華(夏祭り……)
由華(浴衣まで着てくれる……)
由華「……」ドクン
由華(……嬉しい)
由華「……」
由華(嬉しい……)ドクン
由華(嬉しい……)
由華「……」ドクン
由華「嬉しい……」ドクン
由華(楽しみだ……)ソワソワ
由華(どうしよう……本当に、楽しみだ……!)ソワソワ
ーーーーーーーーーーー
ーーーーー
ザッ
紀子「……ここだ。ここで浴衣を選ぶ」
日菜「いい感じのものが揃ってるのよねー」
良子「ついては来たものの、例によって俺は戦力外だ。どれが良くてどれが悪いかよくわからん。ふたりとも頼んだ」
日菜「おまかせあれー♪」
やえ「……恩に着るわ」
紀子「大したことでは無い。やりたくてやっている」
日菜「あっ、来て来てー、これなんかどうかしらー」
紀子「木村、流石だ。早いな……」スタスタ
良子「ほんと、こういうときは頼りになる連中だな……」スタスタ
やえ「そ、そうね……」スタスタ
すいません、詰まったのでここで止めます
完全に勢いで立ててしまいましたが、やる以上はどうにか読めるものにできればと思います
明日以降また投下します
乙です
日菜「やえちゃん、これなんかどうー?」
やえ「ん……」
やえ「た、確かにかわいい、かも……」
日菜「でしょうー?」
紀子「小走。これも中々のものだ」
やえ「ん、そうね……」
良子「いい具合に賑わっているな……」
良子「……ん?」
やえ「……」
良子「やえ、迷ってるのか?」
やえ「えっ?……ま、まあ……そうね……」
良子「試着してみるのはどうだ」
日菜「そうねー。そうしましょうー」
やえ「し、試着って……」
やえ「して良いのかな……」
良子「ああ、確かに……」
良子「よし。ちょっと聞いてくる」
良子「俺も何かの役に立たないといけないしな」
やえ「あ、ありがとう……」
日菜「助かるわー♪」
紀子「……うむ」
良子「俺も
何の違和感も感じなかった
良子「よし。ちょっと行ってくる」スタスタ
スイマセーン
日菜「こういう時は頼りになるわねー♪」
やえ「そ、そうね……」
紀子「……戻って来たぞ」
良子「おう」
良子「どうやら良いらしいぞ」
日菜「ほんとう?やったねー」
やえ「う、うん……」
やえ「ありがとう、良子」
良子「お安い御用さ……いやほんとに」
日菜「ふふーん、それじゃあ早速」
紀子「……試着して、貰うこととする」
やえ「えっ?う、うん。それは勿論そうだけど……」
やえ「何か、妙に張り切ってない?」
日菜「いやいやそんなことないよー。ささ、入った入った」グイグイ
やえ「ちょ、ちょっと……」ヨタヨタ
日菜「それではごゆっくりー♪」シャッ
良子「……」
良子「また強引に入れ込んだな……」
日菜「さて、これからやえちゃんの浴衣姿が見られるわけだけど」
日菜「……楽しみねー♪」
紀子「……」コクッ
良子「そうなのか……相変わらず俺にはよくわからんな……」
ーーーーーーー
やえ「全く……」
やえ「なんで日菜があんなに張り切ってるんだ……」
やえ「よく分からないけど……まあいいか」イソイソ
やえ「……ん?」
やえ(困ったな……ひとりじゃ上手く着られない……)
やえ(よく考えたら、これが正しい着方かどうかも分からないな……)
やえ(……)
やえ(仕方ない、か……)
日菜「これもかわいいわよねー」
紀子「うむ」
日菜「よし、次はこれとこれを着て貰いましょうかー」
良子「ううむ……どれも同じに見える……」
やえ「日菜、いる?」
日菜「ん?」
日菜「やえちゃーん?どうしたの?」
やえ「ちょ、ちょっと、入って来て貰える?」
日菜「?うん、良いわよー」
日菜「というわけで、お呼びがかかったのでいってきますー」シャッ
紀子「うむ」
良子「なんだろうな……浴衣の着方がわからない、とかか」
紀子「有り得るぞ」
紀子「それに、慣れていないと一人で着付けをするのは難しいのではないか」
良子「ああ……それもそうだな」
日菜「やえちゃん、どうしたの?」
やえ「じ、実は、上手く着られなくて……」
やえ「手伝って貰えると有難い……」
日菜「あー、そういうことー」
日菜(言われてみればひとりで着るのは難しいわねー)
日菜「ではさっそくー」
シャッシャッ
日菜「よし。できたー」
やえ「ありがとう」
日菜(これは……)
日菜「かわいいわー、やえちゃん♪」
やえ「そ、そう?ありがとう……」カァァァ
日菜「……でも」
やえ「」ブカブカ
日菜「少しサイズが大きいかしらねー」
やえ「た、確かに……」
日菜「とりあえず、みんなに見てもらいましょうかー」
紀子「上田、お前にはこれが似合うと見るぞ」
良子「そうかい。しかし、俺が浴衣って柄じゃないだろう」
紀子「……何事も、やってみなければ分からないものだ」
良子「そうかな……」
日菜「おまたせー」シャッ
日菜「じゃーん♪」
紀子「……!」
やえ「……」
やえ「……ど、どう?」
紀子「……」ゴクリ
紀子「……素晴らしい」
良子「おお。まあまあ良いんじゃないか?」
良子「しかし……」
やえ「」ブカブカ
良子「ブカブカだな」
日菜「やっぱり……」
良子「もっと小さいサイズが良いだろう。お前はチビッ子だからな」
やえ「う、うっさいわね!アンタ以外はみんな大差ないわよ!」
日菜「まあまあー」ドウドウ
日菜「とりあえず他の物も試着していきましょうかー」
良子「ああ、そうだな」
やえ(また着替えるのか……)
やえ(だけど、普段浴衣なんて着ないからな……)
やえ(これはこれで、少し楽しいかも知れない)ニコッ
やえ「ど、どうかな」
紀子「うむ。最高だ」
良子「うん。良いんじゃないか」
やえ「……アンタ、本当にちゃんと見て言ってる?」ジトッ
良子「み、見てるよ!」アセアセ
良子「ただ俺の感想としてどうしても月並みになってしまうんだ」
やえ「そう。それは悪かったわね」
良子「いや、こちらこそ」
日菜「うーん……けっこう着たわねー」
日菜「正直言って、どれもこれもとってもかわいいんだけど」
日菜「どう思う?のりちゃん」
紀子「……私は、最初に着た浴衣が一番と見る」
日菜「そうかー。わたしもそうだなー」
良子「最初のやつか。あのブカブカの」
良子「それなら俺が別のサイズないか聞いてくる」
良子「ちょっと待ってろ」サッ
スイマセーン
日菜「やえちゃんは、どれがよかった?」
やえ「私は……」
やえ「……どれも良かったからちょっと決めきれないな」
やえ「でも最初に着た浴衣をちゃんとしたサイズで着たいとは思う」
日菜「そうー。なら、それ次第ねー♪」
やえ(サイズ、あると良いな……)
やえ(しかし、いろいろと着たから既に割と満足なんだよな)ズゥーン
コチラヲドウゾー
良子「サイズ、あったぞ」
日菜「ほんとうー?さすがりょうちゃん♪」
良子「流石なのは店員と品揃えだがな……」
良子「なんにせよ、ちょっと着てみたらどうだ」
やえ「うん。そうね」
やえ「ありがとう」シャッ
良子「どういたしまして」
良子「ふう……」
良子「そういや紀子は浴衣着たりしないのか?」
紀子「普段着で着るようなものでは無いからな」
紀子「しかし……祭りなどの機会に着られるものなら着てみたいという気持ちはある」
良子「そうか」
シャッ
やえ「おまたせ」
紀子「……」
良子「……」
日菜「わたしはこれで決まりでいいんじゃないかと思うけど、どう?」
紀子「うむ……うむ……」コクコク
良子「これは見事だな……」
良子「バッチリだと思うぜ」
日菜「決まりねー♪」
日菜「やえちゃん、とってもかわいいわよー♪」
やえ「……」
やえ「ありがとう」ニコッ
やえ「皆がいなかったら、こんなに可愛いもの着られてなかったと思う」
日菜「とんでもないー」
紀子「これを以て喜ばせる相手は巽だ」
紀子「……もっとも、勝算は高い。心配は不要だ」
やえ「勝算って、大げさな……」
やえ「でも、皆を信じる」
日菜「ゆかちゃん、きっと喜ぶわー」
やえ「うん。本当にありがとう」
良子「まずは一件落着か」
ワイワイ
??「……」ジーッ
??「……」サッ
…………
……
…
スタスタスタスタ
由華「……」
由華「……」
由華(やえ先輩の浴衣姿、見ちゃった……)
由華(遠目からだったけど……)
由華(……)
由華(……かわいかったな)
由華「……」ドクン
由華「……」ドクン
由華(私も……)
由華(私も、ちゃんと準備しないと)キッ
…………
……
…
やえ「今日の練習は終了です。お疲れ様でした」
一同「おつかれさまでした!」
ワイワイ
日菜「やえちゃーん」
やえ「日菜」
日菜「いよいよ明日ねー」
やえ「うん」
やえ「なんだか緊張するな……」
日菜「ふふっ♪」
日菜「ところで、待ち合わせ場所とか決めてるの?」
やえ「いや、まだ……」
やえ「確かに、話しておかないといけないか」
日菜「でも、ゆかちゃんもういないわよー」
紀子「木村なら急いだ様子で出て行ったぞ」
やえ「紀子」
日菜「きっと明日の準備ねー」
やえ「そうか……」
やえ「まあ、あとで連絡取るからそれは大丈夫」
日菜「そうー」
良子「いよいよ明日か。楽しみだな」
やえ「良子」
良子「頑張れよ」
やえ「べ、別にお礼をするだけだから頑張るとか無いわよ……」
良子「それもそうだな」
ワイワイ
由華「……」スタスタスタスタ
由華(急げ……急げ……)スタスタ
由華(時間をかけて、じっくり準備するんだ)スタスタ
由華「……あっ」ピタッ
由華(しまった……待ち合わせ場所とか決めてない……)
由華(今から戻るか……)
由華「……」
由華(いや、ダメだ。メールにしよう)スッ
由華(「お疲れ様です。明日は何時集合にしましょう?それと場所も決めましょう」っと……)
由華(よし。送信)ピッ
由華(さて、急いで帰らないと)スタスタ
由華「……」スタスタ
由華「……あっ」ピタッ
由華(そういえば、やえ先輩メール打つの苦手だったような……)
由華「……大丈夫かな」
日菜「やえちゃんもそろそろ帰って、準備したほうがいいんじゃない?」
やえ「うん。そうする」サッ
ピロリロリロ
やえ「あっ……メールか」サッ
やえ「……由華からだ」
日菜「明日の待ち合わせの話?」
やえ「うん」
やえ「場所と時間……こっちで決めてしまうか」
やえ「……」
良子「……」
良子「どうした。返さないのか」
やえ「い、今時間と場所を考えてるの!」
良子「そうか……」
やえ「……」
やえ「……よし」サッ
やえ「……」スッ
やえ「……」スッ
良子(やけにゆっくりな動作だな……)
やえ「ん……」アセアセ
良子「……?」
良子「やえ……お前」
やえ「どしたー」アセアセ
良子「お前もしかして、メール打てないのか?」
やえ「!?」ドキッ
やえ「し、失礼な!打てるわよ……」
やえ「ただほんの少し、苦手というだけで……」
良子(そうだったのか……)
日菜「それは知らなかったわねー」
紀子「うむ……」
やえ「うっ……」
良子「俺が代わりに打ってやろうか?」
やえ「ん……」
やえ「……」
やえ「いや、いい」
やえ「これは自分でやらなきゃいけない」スッ
やえ「……」スッ
やえ「……」スッ
良子「そうか……」
良子「確かにその方が、由華も喜ぶのかもな」
やえ「……」スッ
やえ「……」スッ
…………
……
…
由華「よし、だいたい揃ったか。後は……」
由華「普段しないけど、髪留めがほしいな……」
由華「確かこの辺に、しまったかな、と……」ガサガサ
ピロリロリロ
由華「あっ、メール」サッ
由華「……やえ先輩だ」
「おつかれさま。あしたは6じごろにえきまえにしゆうごうにしましよう」
由華「……やっぱり全部ひらがなだ」ズーン
由華「あの時戻って直接話すべきだったかな……それか電話したほうが良かったかな……」ソワソワ
由華「……でも」
由華「……」
由華(あの時間、日菜先輩や良子先輩、紀子先輩もまだ一緒にいたはず)
由華(浴衣を選んでたくらいだから、明日の事もきっと知ってる)
由華(メールの代打ちをお願いすることは出来たはず)
由華(……それでも、やえ先輩は自分で頑張って打ったんだ)
由華(時間をかけて、きっと他の皆さんと別れた後もひとりで必死に打ったんだ)
由華「全部ひらがなだけど……」フフッ
由華「……」
由華「……嬉しいな」キュン
由華(……うん)
由華(明日は、きっと楽しくなる)
今日はここで止めます
続きは明日以降書きます
乙
やえさんが可愛く見える
乙です
>>36
誤り訂正します
紀子「木村なら急いだ様子で出て行ったぞ」
とありますが正しくは
紀子「巽なら急いだ様子で出て行ったぞ」
です。失礼しました
ガヤガヤ
やえ「……」
やえ(お、落ち着かないな……)ソワソワ
やえ(浴衣を着て外を歩けるのは楽しいけど……)
やえ(やっぱり少し恥ずかしい……)ソワソワ
やえ「……ん」
由華「お疲れ様ですっ!」タタタタ
やえ「由華……」
由華「すっ、すいませんっ!……遅れてしまって……」ハァハァ
やえ「たったの2分で遅れたうちに入らないわよ……」
やえ「そ、それより大丈夫?息があがってる……そんなに急がなくても良かったのに」
由華「だ、大丈夫ですっ!体力には自信あるので、平気ですよ」スッ
由華「それに、やえ先輩を待たせるわけにはいきませんし」ニコッ
やえ「……!」ドキッ
やえ「そう……」
やえ「そ、それじゃあ、行きましょうか……」
由華「はいっ!」
やえ「……」
やえ「そ、その……」ドキドキ
由華「……?」
やえ「ゆ、浴衣……可愛い……じゃない」
由華「……!」
由華「……ありがとうございますっ!」パァァァ
やえ「い、いえ……」ドキドキ
やえ「……」
やえ(な、なんだこの感覚は……)
やえ(……わけがわからないな)ドキドキ
由華「……」ドクン
由華(やった……)ドクン
由華(……やった!)ドクン
由華(やえ先輩にほめてもらえた……!)ドクン
由華「……」
由華(嬉しいな……)ドクン
由華「……」
やえ(……ん?)
やえ「髪留め」
由華「えっ」
やえ「普段してないわよね?髪留め」
由華「えっ、ええ……」
由華「変、ですか……?」
やえ「いや。むしろ……」
やえ「……良いと思う」ドキドキ
由華「……!」
由華「ありがとうございますっ!」パァァァ
由華「……」
由華(どうしよう……ほめられてばっかりだ……)
由華(昨日準備に時間かけたかいがあったな……)
由華(それにしても……)
由華(さっきは焦っててやえ先輩のことちゃんと見てなかったな……)
由華「……」マジマジ
やえ「……?」
由華「……」マジマジ
由華(どうしよう……)
由華(遠目から見た時より、すごくかわいいっ……!)
やえ「どしたー」ヒョイッ
由華「!」ドキッ
由華「い、いや、すいません、あのっ……」アセアセ
由華「……あ、あまりにかわいいから、つい、見とれちゃって……」ドキドキ
やえ「!」ドキッ
やえ「そ、そう……」
やえ「あ、ありがと……」ドキドキ
??「……」ジーッ
…………
……
…
??「……」ジーッ
??「……」
??「……行ったか」
ガサガサ
良子「しかし、本当にこんなことして大丈夫なのかよ……」
日菜「うーん……」
日菜「あんまり良くはないわねー」
紀子「万一見つかれば小走に説教されるだろうな……」
良子「おい……」
良子「じゃあ何で来たんだよ」
日菜「そうしてまで、見る価値があるのよー」
紀子「その通りだ」
良子「そうか……もう何も言わん。せめてバレないように気をつけようぜ」
日菜「もちろんー♪」
良子「しかし、ふたりとも浴衣か。祭り自体も楽しむ気満々じゃねえか」
日菜「それはもうー」
日菜「のりちゃんもかわいいわよー♪」
紀子「す、少し照れるものだな……」
良子「紀子、良かったな。公に浴衣を着られる機会があって」
紀子「……うむ。そうだな」
良子「まあなんだ、似合ってると思うぜ」
紀子「!」ドキッ
紀子「な、なんだ……お前、どういう風の吹き回しだ」ドキドキ
良子「な、なんだよ!普通に褒めただけだろ……素直に喜んでくれ」
紀子「そうか……」
紀子「その言葉、有り難く頂戴しておこう」フッ
良子「そうしてくれ」
日菜「ふふっ♪」
日菜「さて、わたしたちも移動しましょうー」
良子「そうだな」
スタスタスタスタ
支援
ガヤガヤ
由華「わぁー……」
由華「凄く賑わってますね!」
やえ「そうね」
やえ(さて……)
やえ(こうして祭りに来てみたはいいものの)
やえ(ここからどうしたら良いかちゃんと考えてないな)ズーン
やえ(さて、どうしたものか……)
由華「見てください、出店がたくさん出てますよ!早速回りましょう!」
やえ「あ、ああ、そうね。回りましょう」
やえ(由華、ノリノリだな……)
やえ(しょうがない、まずは由華に任せてしまうか)
良いコンビだ
みんな可愛い
由華「やえ先輩、わたがしですよ!」
やえ「そうね。祭りの定番ね」
由華「さっそくひとつ♪」
スイマセーン
やえ(由華、行動派だな……)
やえ(私はあまりこういう所には来ないからな……調子が出るにはもう少し時間が要りそうだ)
マイドー
由華「買っちゃいました」
やえ「まあ、今日は甘いものは別腹ということで」
由華「そうですよね♪」
由華「ん……」サウサウ
由華「おいしいですよ、やえ先輩!」パァァァ
やえ「良いわね」フフッ
由華「やえ先輩もどうですか?」
やえ「えっ」
やえ「い……良いの?」キラキラ
由華「も、もちろん!」
由華(あまりわたがしに興味ないように見えたけど、食べたかったんだ……)フフッ
由華「どうぞ!」サッ
やえ「ありがとう」
やえ「!」フガッ
由華「あっ!」
やえ「」フガフガ
由華「すっ、すいません……!」アセアセ
由華(渡す勢いが強すぎた……!)
由華「すいません……大丈夫ですか?」
やえ「え、ええ……」フキフキ
やえ(カッコ悪いところ見せてしまったな)
由華「つい勢いつけ過ぎちゃって……」ズーン
やえ「いいからいいから……」
由華「……」チラッ
由華「あっ」
やえ「ん?」
由華「鼻にまだ残ってますよ」サッ
やえ「!」
やえ「だ、大丈夫だいじょうぶ!自分で取るからっ……!」フキフキフキフキ
由華「あっ……」
やえ「と、とれてる……?」ドキドキドキ
由華「うーん……はい。バッチリです!」
やえ「そう。良かった」
やえ(……)
やえ(あ、危なかった……)ドキドキ
やえ(由華にとってもらうのはさすがに……なんだかこそばゆくて変な感じが……)ドキドキドキドキ
やえ(……)
やえ「つ、次行きましょう次!」サッ
由華「はっ、はい!」ビクッ
由華「あっ、射的ですよ」
やえ「本当だ」
ヌボーッ
由華「あの景品……」
由華「欲しいですね」キッ
やえ「くまのぬいぐるみか……」
やえ「よし。少しやってみようか」
由華「良いですか?」
やえ「ええ。二人でやれば取りやすくなるでしょう」
由華「ありがとうございますっ!」
マイドー
やえ(さて……)カシャカシャ
ピタッ
やえ(うーん……)
やえ(……ここ!)パシッ
ポロッ
やえ(ぐっ……)
やえ「なかなか難しいわね……」
由華「……」シーン
由華「……はっ!」パシイッ
ピシッ
オオアタリー!!
やえ「おお!由華、上手いわね」
由華「い、いえ、それほどでも」カァァァ
由華「ただ、射的は少し得意なんですよ」エヘッ
やえ(やるな……)
良子「焼きそばとアメリカンドッグ、あと今川焼をひとつ」
マイドアリー
良子「悪い悪い。待たせたな」
紀子「おい……」
良子「どうした」
紀子「そんなに食べるのか」
良子「祭りと言ったら食べ歩きだろう」
紀子「……量の問題を言っているのだ」
良子「言うほど多くないぜ。最近の祭りは値段に対して少ないものばかりだ」
紀子「知った風な口を……」
日菜「それよりあのふたり、けっこう楽しんでるみたいだよー」
良子「どれ……」
やえ「」ワイワイ
由華「」キャッキャッ
良子「……遠目から見ても仲が良いと分かる程度には、楽しそうだな」
紀子「……うむ。素晴らしい」
日菜「順調そうで何よりだわー♪」
良子「今度はどこに行くんだろうな……」
日菜「あの方向の先には……」サウサウ
良子「いつの間にわたがしを……」
日菜「かたいことは抜きっ!」サウサウ
紀子「……巨大なくまがいるな」
良子「あの、こどもが入って中で跳び跳ねて遊ぶやつだな。何故か祭りには常に出現するよな」
日菜「こどもはああいうのに熱中するからねー」サウサウ
紀子「お前は小さい頃、あの中で大将を張っていたのではないか。上田」
日菜「あはっ、似合うー♪」
良子「似合うとは失礼な!……まああれだ、たしなむ程度だ」
良子「って、まさかあいつらあれに入るつもりなのか!?」
紀子「そんな訳は無い。左に曲がった」
良子「だよな……」ホッ
良子「やえなら普通に入れそうな気がして焦ったぜ……」
紀子「いや、流石にそれは無いだろう」
良子「そうかな」
日菜「さすがに自分から入ることはしないだろうけど」フフッ
日菜「やえちゃんがあれに入ってる絵を想像するとなんだかおもしろいわねー」
良子「ははは、そりゃそうだな」
紀子「上田、後で説教だな」
良子「俺だけかよ!?」
日菜「……っと、油断してたら見失いそうねー」
日菜「わたしたちも向こうに行きましょうー」
良子「そうだな」
紀子「うむ」
良子「しかし、なんだかんだで祭りも楽しめてるな」
日菜「そうねー。高校最後の夏だし、純粋に来て良かったかもねー♪」
良子「だな」
紀子「……」コクッ
良子「今日は花火も上がるんだったか」
日菜「そうよー。あと一時間くらいかしらねー」
良子「そうか。それなら、この面子で花火まで見てみますかね」
日菜「そうねー」
紀子「うむ」
良子「……」スタスタ
紀子「……」スタスタ
日菜「……」スタスタ
日菜「……あっ、やえちゃんたち見つけた」ササッ
良子「おっと」ササッ
紀子「……」ササッ
良子「あれは……」
日菜「どうやら金魚すくいをしようとしてるみたいねー」
すいません、きりが悪いですが今日はここで止めます
続きは明日以降書きます
乙
乙です
ポイポイ
やえ「……」
由華「金魚すくいですね。少しやってみますか」
やえ「……そうね」
マイドー
由華「と、言ってはみたものの、私金魚すくいは苦手なんですよね、っと……」サッ
ベリッ
由華「ああ、ダメか……すぐ破けちゃうんですよね」テヘッ
由華「……やえ先輩?」チラッ
やえ「……」ピトッ
ギャラリー「おいおい、金魚に見向きもせずポイをずっと濡らしてるぜ」
ギャラリー「いや……あれは、予めポイをまんべんなく濡らすことで破れにくくする高等技術!」
ギャラリー「なにィ……?」
やえ「……」シーン
やえ(ポイの強度、金魚のサイズ、配置……)
やえ(これでは取ってくださいと言っているようなもの……)
やえ(なめられたものね……)フッ
やえ(……)
やえ(……)キッ
やえ「ニワカは相手にならんよ!」ポイポイポイポイ
ギャラリー「すげえ!大量の金魚があっという間に!」
ギャラリー「これが玄人の技、か……!」
やえ「……」タプタプ
由華「おおーっ……」
やえ「……ちょっとはしゃぎ過ぎたか」カァァ
由華「やえ先輩、凄いですね……!」
やえ「金魚すくいは昔から少しやってたから」
由華「そうだったんですね」
やえ「……流石にこんなに飼えないな」
やえ「ちょっと返してくる」サッ
由華「えっ、すくった金魚って返せるんですか?」
やえ「うん。特に問題ないわ」
やえ「ちょっと待ってて」サッ
由華「……」
由華「……ふふっ」
やえ「……」スタスタ
由華「かなり返しましたね」
やえ「そうね。まあ、3匹いれば充分でしょう」
由華「ふふっ、そうですね」
やえ「かといって、どうやって面倒を見たものか今から頭が痛いけど」
由華「あっ、部室で飼うのはどうですか?」
やえ「部室で?」
やえ「でも、私はもうすぐ引退だし、邪魔になるわ……」
由華「引退後も部室に立ち寄る良い理由じゃないですか♪」
やえ「えっ」
由華「それに、私も一緒に世話しますよ!」
やえ「そう……」
やえ「名案かも知れないわね。少し考えておくわ」
由華「お願いしますっ♪」
由華「……」
由華「……あっ」
やえ「?」
由華「そろそろ花火の時間ですよ!」
やえ「ああ、もうそんな時間か……」
由華「私、良い場所知ってるんですよ。そこに行きましょう」
やえ「さすがね」
由華「いいえ、それほどでも……」テレッ
由華「では時間もあまりないので。こっちです」サッ
やえ「うん」スタスタ
やえ(お礼をするという目的のはずが……)
やえ(由華にリードされっぱなしだな)フフッ
良子「やえのやつ、凄かったな……」
紀子「あのような特技があったとはな……」
日菜「おどろきねー……」
良子「しかし、本当に部室で飼うことになったりしてな」
紀子「巽が上手く機転を利かせた形になったが」
日菜「やえちゃんに引退後も部室に来てもらうように、ねー」
良子「なるほど」
日菜「もし実現したら、わたしたちも混ぜてもらいましょうー」
良子「そうだな」
良子「なんだかんだで、まだ部室には行きたいからな」
日菜「うん……」
紀子「……」
紀子「おい。二人が移動を始めたぞ」
良子「おっ」
紀子「あの方向は……」
日菜「神社があるわねー」
良子「あの長い石段のか」
日菜「あそこは良いスポットだからねー」
紀子「そこから花火を見る気か……」
日菜「さすがにそこまで追いかけるわけにはいかないかー……」
日菜「ここからはふたりの世界ということで、今回はこのへんでやめておきましょうかねー」
紀子「うむ」
日菜「わたしたちは別の場所からみましょうー。いいとこ知ってるんだー♪」
良子「おっ、やるね」
紀子「……行くか」
日菜「よーし、しゅっぱつー♪」
……
…
由華「ここです」
やえ「良い場所って神社のことだったのか……」
由華「このあたりに座りましょう」サッ
やえ「うん」サッ
由華「……ここだとにぎやかな声が遠いですね」
やえ「そうね……」
由華「……」
やえ「……」
やえ「……ぬいぐるみ、重くない?」
由華「重くはないですよ。かさばりはしますけど」エヘッ
由華「良い記念になりました。やえ先輩とふたりで来たお祭りの、最高の記念です」
やえ「……」
由華「……やえ先輩」
やえ「……ん」
由華「……引退しても、また部室に来てくれますか?」
やえ「……」
やえ「……いつまでも先輩に頼ってはいけない。自分達で次のステップに踏み出せねば晩成高校の部員たりえない」
由華「……」
やえ「……」
やえ「……と、言いたいところだけど」
やえ「良いことか悪いことか、団体戦以降少し力が抜けたみたいで、あまりそういう風には思えなくなってしまったな」
由華「……」
やえ「引退は確かに訪れるものだけど、今はもう少しだけ、皆と関わりたいという思いが強い」
やえ「……由華が良いと言ってくれるのなら、もう少しだけ、部室に顔も出そうと思う」
由華「……!」パァァァァ
由華「むしろこっちがお願いしたいくらいなんですから……」
由華「……やえ先輩さえ良ければ、こっちはいつも、いつでも……大歓迎ですよ……!」
由華「……ほんとに、だいかんげいですから……」グズッ
やえ「……」フッ
やえ「由華。私はまだ現役なんだから泣くのは早いと思うんだけど」
由華「……!」ハッ
由華「そっ、そうですね……!すいません……」カァァァァ
やえ「いいわ」フフッ
やえ「……あっ」
ヒュルルルルルル
ドーーーーン
由華「わぁ……」
やえ「……」
やえ「すごい……ここからは本当に綺麗に見えるのね」
由華「そうなんですよ!とっておきの場所です」ニコッ
ヒュルルルルル
ドーーーーン
由華「たまやーっ」
やえ「……」
やえ(最後の夏、か……)
やえ(結局これが由華に対する恩返しになったか分からないけど)
やえ(逆にモチベーションを上げられてしまったな)フフッ
やえ(1日でも長く部員でいる……個人戦を戦うのにこれ以上の理由は要らない)
やえ(どんな敵が相手でも、見せつけるしかないわね)
やえ(……王者の打ち筋を)
ドーーーーーン
由華「たまやーっ」
やえ「……」チラッ
やえ「……」フフッ
やえ(……たまやー)
ーーーーーーーーーーーー
やえ「これからグループに分かれて特打ちを行います 」
良子「今から特打ちをやるのかよ!?今日は随分厳しいな……」
日菜「これまで以上に張り切ってるわねー」
紀子「夏祭りで巽から何か刺激を得たのだろう」
やえ「早速準備しましょう」キビキビ
由華「……♪」
良子「確かに由華も何だか楽しそうな顔してるな」
日菜「個人戦が控えてるし、やる気があるのは喜ばしいことだけどねー」
良子「まあ、確かにそうだな」
紀子「……むっ」
やえ「みんな」サッ
やえ「現役でいられる時間は残り少ない。頑張りましょう」
日菜「もちろんー♪」
紀子「うむ」
良子「そうだな」
良子「でもまあ、引退しても部室には来ようぜ。金魚の世話俺達も手伝うからさ」
やえ「ああ、ありがとう。でもそれはまだ検討中で……」
やえ「えっ」ピクッ
由華「!?」ガタッ
日菜(あっ……!)
紀子(ば、馬鹿者……!)
やえ「あ、アンタ達……まさか……」ワナワナ
由華「良子先輩……もしかして……!」タタッ
良子「あっ」
良子(しまった……!)
やえ「見てたの!?」
由華「みてたんですかぁっ!?」
カンッ!
終了です
ありがとうございました
乙です
乙
可愛いなチクショー
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